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特開2023-69004ワーク供給システム、ワーク供給方法及びワーク供給プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069004
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ワーク供給システム、ワーク供給方法及びワーク供給プログラム
(51)【国際特許分類】
   B65G 59/04 20060101AFI20230511BHJP
   B65G 47/91 20060101ALI20230511BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B65G59/04
B65G47/91 A
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180533
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩永 洋志
【テーマコード(参考)】
3C707
3F030
3F072
【Fターム(参考)】
3C707AS02
3C707AS03
3C707BS12
3C707CS04
3C707DS01
3C707FS01
3C707FT02
3C707FT11
3C707KT01
3C707KT06
3C707NS10
3F030AA04
3F030AB04
3F030BA02
3F030BC02
3F072AA28
3F072GA10
3F072GD05
3F072KD03
(57)【要約】
【課題】ワーク群の積載位置にかかわらず最上位のワークのみを保持できるワーク供給システム、ワーク供給方法及びワーク供給プログラム。
【解決手段】ワーク載置台上に積載されたワーク群から最上位のワークを搬送可能に構成されたワーク供給ロボットと、ロボット制御部とを備え、前記ワーク供給ロボットは、前記最上位のワークを保持するロボットハンドを含み、前記ロボット制御部は、前記ワークに対する前記ロボットハンドの保持位置を特定する保持位置特定処理と、前記保持位置特定処理により特定された前記ロボットハンドの前記保持位置に最も近いワークの部位を特定する最近傍部位特定処理と、前記最近傍部位特定処理により特定された最近傍部位と対向する対向部位を回転中心として特定する回転中心特定処理と、前記回転中心特定処理により特定された前記対向部位を中心として前記最上位のワークを前記ワーク群から剥離させるロボットハンド制御処理とを行う。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク載置台上に積載されたワーク群から最上位のワークを搬送可能に構成されたワーク供給ロボットと、
ロボット制御部と
を備え、
前記ワーク供給ロボットは、前記最上位のワークを保持するロボットハンドを含み、
前記ロボット制御部は、
前記ワークに対する前記ロボットハンドの保持位置を特定する保持位置特定処理と、
前記保持位置特定処理により特定された前記ロボットハンドの前記保持位置に最も近いワークの部位を特定する最近傍部位特定処理と、
前記最近傍部位特定処理により特定された最近傍部位と対向する対向部位を回転中心として特定する回転中心特定処理と、
前記回転中心特定処理により特定された前記対向部位を中心として前記最上位のワークを前記ワーク群から剥離させるロボットハンド制御処理と
を行う
ワーク供給システム。
【請求項2】
前記ワークの前記最近傍部位及び前記対向部位は、前記ワークの辺である
請求項1に記載のワーク供給システム。
【請求項3】
前記回転中心特定処理は、前記最近傍部位特定処理において、2以上の最近傍部位を特定した場合には、最長最近傍部位と対向する対向部位を回転中心として特定する
請求項1又は2に記載のワーク供給システム。
【請求項4】
前記回転中心特定処理は、前記最長最近傍部位が2以上ある場合、周辺に障害物がある前記最長最近傍部位と対向する対向部位を回転中心として特定する
請求項3に記載のワーク供給システム。
【請求項5】
前記ワークの前記最近傍部位及び前記対向部位は、前記ワークの角である
請求項1に記載のワーク供給システム。
【請求項6】
前記ロボット制御部は、前記ワークを包含する矩形となるよう前記ワークの形状を近似する矩形近似処理を更に実行するよう構成され、
前記最近傍部位特定処理は、前記矩形近似処理により近似された矩形に基づいて最近傍部位を特定する
請求項1~5のいずれか1項に記載のワーク供給システム。
【請求項7】
前記ロボットハンド制御処理は、前記最上位のワークを前記最上位のワークの前記対向部位を中心として回転させた状態において、所定の待機時間前記最上位のワークを保持するよう構成されている
請求項1~6のいずれか1項に記載のワーク供給システム。
【請求項8】
ワークに対するロボットハンドの保持位置を特定する保持位置特定処理工程と、
前記保持位置特定処理により特定された前記ロボットハンドの前記保持位置に最も近いワークの部位を特定する最近傍部位特定処理工程と、
前記最近傍部位特定処理により特定された最近傍部位と対向する対向部位を回転中心として特定する回転中心特定処理工程と、
前記回転中心特定処理により特定された前記対向部位を中心として前記最上位のワークを前記ワーク群から剥離させるロボットハンド制御処理工程と
を備える
ワーク供給方法。
【請求項9】
ワークに対するロボットハンドの保持位置を特定する保持位置特定処理と、
前記保持位置特定処理により特定された前記ロボットハンドの前記保持位置に最も近いワークの部位を特定する最近傍部位特定処理と、
前記最近傍部位特定処理により特定された最近傍部位と対向する対向部位を回転中心として特定する回転中心特定処理と、
前記回転中心特定処理により特定された前記対向部位を中心として前記最上位のワークを前記ワーク群から剥離させるロボットハンド制御処理と
をロボット制御部に実行させる
ワーク供給プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク供給システム、ワーク供給方法及びワーク供給プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワーク処理部を含んでいるワーク取扱装置が知られている(特許文献1等)。ワーク処理部は、複数枚のワークを積重しておくワーク積重部に近接して最上位のワークを持ち上げてほぼ垂直状態に保持する。また、ワーク処理部は、保持したワークの所望の面をワーク取扱ロボットが把持できるよう構成されている。
【0003】
特許文献1のワーク取扱装置では、ワーク処理部が、ワーク積重部に積重されている最上位のワークの端縁部を把持してほぼ垂直状態になるように回動させる。特許文献1のワーク取扱装置であれば、最上位のワークのみをめくるように持ち上げることができ、ワークが2枚以上同時に持ち上げられる可能性を低減できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-38521号公報
【特許文献2】特開2018-120388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、載置場所の中央の直上に設置された1台のカメラにより載置場所全体を撮影すると共に、該撮影されたワークの画像に基づいてワークの位置及び積載高さを特定し、該特定されたワークの位置及び積載高さの情報に基づいてワーク保持用ロボットを制御するよう構成されている加工システムが知られている(特許文献2等)。このような構成を備えることにより、載置場所上のどこにワークを積載してもワークの位置を把握し、ワーク保持ロボットがワークを保持することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1のワーク取扱装置では、ワーク処理部は、常にワーク積重部の決まった箇所でワークの端縁部を把持し、回動させるため、ワーク積重部上の特定の箇所にワークを積重する必要があり、上述した加工システムの利点を活かすことができないという問題がある。
【0007】
本発明の一態様は、ワーク群の積載位置にかかわらず最上位のワークのみを保持できるワーク供給システム、ワーク供給方法及びワーク供給プログラムである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るワーク供給システムは、ワーク載置台上に積載されたワーク群から最上位のワークを搬送可能に構成されたワーク供給ロボットと、ロボット制御部とを備え、前記ワーク供給ロボットは、前記最上位のワークを保持するロボットハンドを含み、前記ロボット制御部は、前記ワークに対する前記ロボットハンドの保持位置を特定する保持位置特定処理と、前記保持位置特定処理により特定された前記ロボットハンドの前記保持位置に最も近いワークの部位を特定する最近傍部位特定処理と、前記最近傍部位特定処理により特定された最近傍部位と対向する対向部位を回転中心として特定する回転中心特定処理と、前記回転中心特定処理により特定された前記対向部位を中心として前記最上位のワークを前記ワーク群から剥離させるロボットハンド制御処理とを行う。
【0009】
本発明の一態様に係るワーク供給方法は、ワークに対するロボットハンドの保持位置を特定する保持位置特定処理工程と、前記保持位置特定処理により特定された前記ロボットハンドの前記保持位置に最も近いワークの部位を特定する最近傍部位特定処理工程と、前記最近傍部位特定処理により特定された最近傍部位と対向する対向部位を回転中心として特定する回転中心特定処理と、前記回転中心特定処理により特定された前記対向部位を中心として前記最上位のワークを前記ワーク群から剥離させるロボットハンド制御処理工程とを備える。
【0010】
本発明の一態様に係るワーク供給プログラムは、ワークに対するロボットハンドの保持位置を特定する保持位置特定処理と、前記保持位置特定処理により特定された前記ロボットハンドの前記保持位置に最も近いワークの部位を特定する最近傍部位特定処理と、前記最近傍部位特定処理により特定された部位と対向する対向部位を回転中心として特定する回転中心特定処理と、前記回転中心特定処理により特定された前記対向部位を中心として前記最上位のワークを前記ワーク群から剥離させるロボットハンド制御処理とをロボット制御部に実行させる。
【0011】
本発明の一態様によるワーク供給システム、ワーク供給方法及びワーク供給プログラムによれば、特定されたロボットハンドの保持位置に最も近いワークの部位と対向する対向部位を回転中心として最上位のワークをワーク群から剥離させることにより、ワーク載置台上のどこにワーク群が積載されていても最上位のワークのみを保持できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係るワーク供給システム、ワーク供給方法及びワーク供給プログラムによれば、ワーク群の積載位置にかかわらず最上位のワークのみを保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るワーク供給システムを示す概略図である。
図2図2は、第1実施形態に係るワーク供給ロボットのロボットハンドを示す概略図である。
図3図3は、第1実施形態に係る制御装置を示す機能ブロック図である。
図4図4は、第1実施形態に係るワークの矩形近似処理を示す概略図である。
図5図5は、第1実施形態に係るワーク及びロボットハンドの矩形近似処理を示す概略図である。
図6図6は、第1実施形態に係るワークの最近傍部位特定処理を示す概略図である。
図7図7は、第1実施形態に係るワークの回転中心を示す概略図である。
図8図8は、第1実施形態に係るワークの最近傍部位が複数ある場合の処理を示す概略図である。
図9図9は、第1実施形態に係るワークの周辺に障害物がある場合の処理を示す概略図である。
図10図10は、第1実施形態のワーク供給システムを用いたワーク供給方法の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、第1実施形態に係る最上位のワークの剥離動作を示す概略図である。
図12図12は、第1実施形態に係る最上位のワークの剥離動作を示す概略図である。
図13図13は、第1実施形態に係る最上位のワークの剥離動作を示す概略図である。
図14図14は、第2実施形態に係るワークの最近傍部位特定処理を示す概略図である。
図15図15は、第2実施形態に係るワークの回転中心を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
[第1実施形態に係るワーク供給システムの全体構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係るワーク供給システムを示す概略図である。
図1に示すように、第1実施形態に係るワーク供給システム1は、概略的には、ワーク載置台10上に積載されたワークW群から最上位のワークWtを搬送可能に構成されたワーク供給ロボット100を備える。ワーク供給ロボット100は、最上位のワークWtを保持するロボットハンド120を含んでいる。
【0016】
また、ワーク供給システム1は、ワーク載置台10に積載されているワークW群を特定するためのカメラ50と、ワーク供給ロボット100及びカメラ50を制御可能な制御装置200を更に備える。さらに、第1実施形態に係るワーク供給システム1は、曲げ加工機等の加工機を更に備えていてもよく、加工機と共にワークWの自動加工システムを構成してもよい。
【0017】
[ワーク供給ロボットの構成]
ワーク供給ロボット100は、ワーク載置台10と、ワークWの搬送先(例えば、加工機等)との間に配置されており、ワーク載置台10上でワークWを保持し、そのワークWを加工機等の搬送先に向けて搬送するように構成されている。
【0018】
具体的には、ワーク供給ロボット100は、図1に示すように、ワーク供給ロボット100を移動させるための移動機構160と、ワークWを保持可能なロボットハンド(robotic hand)120と、ロボットハンド120をワークWに対して接近又は離間させるアーム部140とを含んでいる。
【0019】
移動機構160は、床面上に敷設されたレール部160aと、レール部160a上に沿って移動可能なベース台160bと、ベース台160bを駆動させるベース台駆動手段(図示せず)とを有する所謂直動機構であり、制御装置200の後述するロボット制御部230からの制御信号に基づいて、床面上においてワーク供給ロボット100を移動させるよう構成されている。なお、移動機構160は、種々の公知の構成を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0020】
アーム部140は、一端部が移動機構160のベース台160bに連結されると共に、他端部がロボットハンド120に連結されており、制御装置200のロボット制御部230からの制御信号に基づいて、ロボットハンド120をワークWに対して接近又は離間させるよう構成されている。第1実施形態において、アーム部140は、6軸の制御軸を有する多関節アームであり、ワーク載置台10からのワークWの搬送だけではなく、加工機等へのワークWの搬送(搬入)、ワークWの加工(曲げ加工)の補助、及び、加工機等からの製品(曲げ加工品)の搬送(搬出)等を実行可能に構成されている。なお、アーム部140は、種々の公知の構成を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。また、アーム部140は、上述した6軸の制御軸を有する多関節アームの構成に限定されず、種々の公知の構成を任意に採用することが可能である。
【0021】
図2は、第1実施形態に係るワーク供給ロボットのロボットハンドを示す概略図である。
ロボットハンド120は、図2に示すように、アーム部140の先端部に着脱可能に装着されるハンド本体122と、ハンド本体122に取り付けられ、ワークWを保持可能に構成された複数の吸着部124とを有している。ハンド本体122は、アーム部140の先端部に着脱可能に装着される装着部122aと、装着部122aに結合された第1支持バー122bと、第1支持バー122bにその長手方向に間隔を置いて設けられた複数の第2支持バー122cとを有している。なお、ハンド本体122の形状は、図示の例に限定されず、ワークWの形状等に応じて任意に変更することが可能である。
【0022】
吸着部124は、各第2支持バー122cの両末端部にそれぞれ取り付けられており、それぞれ、エアを吸引するエア吸引源(図示せず)に配管を介して接続されている。各吸着部124は、その下端部にワークWの表面に吸着可能(接触可能)な平型の吸着パッドを有しており、エア吸引源によるエアの吸引力によって、ワーク載置台10に積載されたワークW群から最上位のワークWtの表面に吸着するよう構成されている。なお、ロボットハンド120は、種々の公知の構成を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。また、ロボットハンド120は、上述した吸着方式に限定されず、種々の公知の構成を任意に採用することが可能である。
【0023】
[カメラの構成]
カメラ50は、レンズ及びイメージセンサが1つずつ配されており、図1に示すように、少なくともワーク載置台10の全体又は一部を撮影範囲として撮影可能となるよう、ワーク載置台10の上部に、カメラスタンド51等の支持部材を介して配置されている。第1実施形態において、カメラ50は、図1に示すように、ワーク供給ロボット100と干渉しない位置に配置されており、ワーク載置台10に積載されたワークW群を上方から撮影するように構成されている。
【0024】
カメラ50は、撮影した撮影画像データを制御装置200の後述する画像処理部250に供給するよう構成されている。なお、第1実施形態に係るカメラ50は、カメラ50からデジタル信号(撮影画像データ)を直接画像処理部250に出力する構成であってもよいし、カメラ50から出力されたアナログ信号(撮影画像信号)をA/Dコンバータ(図示せず)等でデジタル信号(撮影画像データ)に変換して画像処理部250に出力する構成であってもよい。また、カメラ50は、ワーク載置台10に積載されているワークW群を撮影する際にそのワークW群に照明光が照射されるよう、後述する照明設備Lと連動可能に構成されている。このような構成によれば、ワークW群のエッジが明確化され、ワークW群の外形及び位置を特定する際にワークW群のエッジが特定しやすくなるという利点がある。
【0025】
[ワーク載置台の構成]
ワーク載置台10は、図1に示すように、ワーク供給ロボット100側の端部にマグネットフロータ20が設けられている。マグネットフロータ20は、ワークW群の端面を突当て面22に突き当てた状態で、ワーク載置台10に積載すると、マグネットの磁力によってワークW群のうちの上部側のワークWを浮上させることができる。
【0026】
また、ワーク載置台10の周囲所定箇所には、端面バー(図示せず)と、積載されたワークW群に照射光を照射可能な複数個のLED(発光ダイオード:Light-Emitting Diode)等を有する照明設備Lとが設けられている。第1実施形態に係るワーク供給システム1は、照明設備Lによって、カメラ50によるワークWの特定を補助するよう構成されている。なお、これらワーク載置台10、マグネットフロータ20及び照明設備Lは、種々の公知の構成を任意に採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0027】
[制御装置の構成]
図3は、第1実施形態に係る制御装置を示す機能ブロック図である。
制御装置200は、図3に示すように、入力部210と、表示部220と、ロボット制御部230と、カメラ制御部240と、画像処理部250と、記憶部260とを含む。また、制御装置200は、種々の公知の構成によりワーク供給ロボット100及びカメラ50と接続している。
【0028】
入力部210は、例えば、キーボード、マウス、押しボタンスイッチ、タクトスイッチ及びキーロックスイッチ等の入力デバイスにより構成されており、入力部210を操作することにより、ワーク供給システム1において通常必要とされる情報入力の機能に加え、例えば、記憶部260の後述するNC制御プログラムの選択、及び後述する回転中心LCの選択等の操作をすることができる。
【0029】
表示部220は、表示装置としてのディスプレイを有しており、ワーク供給システム1において通常必要とされる画面表示の機能に加え、例えば、NC制御プログラムを選択するための選択画面、カメラ50の撮影画像、及び回転中心LCの確認画面等を表示する。また、表示部220は、入力部210の機能を有するタッチパネルで構成され得る。表示部220がタッチパネルで構成された場合は、ユーザは、例えば表示部220を操作することにより、NC制御プログラムの選択等の各種の情報を制御装置200に対して入力可能となる。
【0030】
なお、入力部210及び表示部220の構成は、上述した構成に限定されず、これら入力部210及び表示部220に代わり同等の機能を有する構成であれば(例えば、遠隔から利用可能な表示手段や入力手段等)、これに限定されるものではない。
【0031】
カメラ制御部240は、記憶部260に記憶されている撮影プログラムに基づいて、カメラ50の撮影動作を制御するよう構成されている。また、カメラ制御部240は、カメラ50がワークW群を撮影する際に照明設備Lの照明光の照射がカメラ50の撮影と連動するよう制御する。
【0032】
画像処理部250は、カメラ50から供給された撮影画像データに基づいてワーク載置台10に積載されたワークW群の外形をエッジ検出し、エッジ検出結果からワークW群の位置(x,y)情報を算出し、算出した位置情報をロボット制御部230に供給するよう構成されている。すなわち、画像処理部250は、最上位のワークWtの位置を高精度に特定するワーク特定装置として機能することが可能に構成されている。
【0033】
ロボット制御部230は、図3に示すように、搬送制御部232と、保持位置特定部234と、矩形近似部236と、最近傍部位特定部238と、回転中心特定部239とを有する。保持位置特定部234は、ワークWに対するワーク供給ロボット100のロボットハンド120の保持位置を特定する保持位置特定処理を行う。具体的には、保持位置特定部234は、後述する記憶部260のNC制御プログラムからワークWと、そのワークWに対するロボットハンド120の保持位置との座標データを抽出し、保持位置を特定する。
【0034】
図4は、第1実施形態に係るワークの矩形近似処理を示す概略図である。
矩形近似部236は、図4に示すように、ワークWを包含する矩形RとなるようにワークWの形状を近似する矩形近似処理を実行するよう構成されている。具体的には、矩形近似部236は、記憶部260のNC制御プログラムに含まれるワークWの座標データからワークWの輪郭を抽出し、輪郭線を表す点群の座標の集まりから、その点群の外接矩形の座標を計算し、矩形Rを描画する。矩形Rのアスペクト比は、矩形近似処理を実行するワークWの形状によって異なり、矩形Rは、ワークWを内包する最小の矩形である。
【0035】
図5は、第1実施形態に係るワーク及びロボットハンドの矩形近似処理を示す概略図である。
また、矩形近似部236は、図5に示すように、保持位置特定部234が特定したロボットハンド120の保持位置が、ロボットハンド120がワークWからはみ出ていた場合、ワークWを包含する矩形RとなるようにワークWの形状を近似する矩形近似処理に加え、ワークWとロボットハンド120を包含する矩形R′に近似する矩形近似処理を実行する。このような構成を備えることにより、ワークWを剥離させる際に、ロボットハンド120のワークWからはみ出ている部分がワーク載置台10にめり込むことを防ぐことができる。
【0036】
最近傍部位特定部238は、保持位置特定部234の保持位置特定処理により特定されたロボットハンド120の保持位置に最も近いワークWの部位を特定する最近傍部位特定処理を行う。ロボットハンド120の保持位置は、具体的には、ロボットハンド120の吸着部124の吸着パッドの端部である。また、ワークWの部位は、具体的には、ワークWの辺である。
【0037】
図6は、第1実施形態に係るワークの最近傍部位特定処理を示す概略図である。
最近傍部位特定処理は、図6に示すように、矩形近似部236の矩形近似処理により近似された矩形Rに基づいて最近傍辺(nearest neibour side)NSを特定する。具体的には、最近傍部位特定部238は、矩形Rを構成する4つの辺と、各辺に最も近いロボットハンド120の吸着部124の吸着パッドの端部との距離を計算し、その距離が最短距離Lminとなる辺を最近傍辺NSとして特定する。本明細書において矩形Rの各辺と吸着部124の吸着パッドの端部との距離は、矩形Rの各辺と直交する方向に沿う距離である。なお、保持位置特定部234が特定したロボットハンド120の保持位置が、ロボットハンド120がワークWからはみ出ていた場合、ワークWからはみ出している吸着部124の吸着パッドの端部は、最近傍部位特定部238の最近傍部位特定処理から除外され、ワークW内の吸着部124の吸着パッドの端部に基づいて最近傍部位特定処理を行う。
【0038】
図7は、第1実施形態に係るワークの回転中心を示す概略図である。
回転中心特定部239は、図7に示すように、最近傍部位特定部238の最近傍部位特定処理により特定された最近傍部位NSと対向する辺を回転中心LCとして特定する回転中心特定処理を行う。また、保持位置特定部234が特定したロボットハンド120の保持位置が、ロボットハンド120がワークWからはみ出ていた場合、最近傍部位特定部238の最近傍部位特定処理により特定された最近傍部位NSと対向する矩形R′の辺を回転中心LCとして特定する。
【0039】
図8は、第1実施形態に係るワークの最近傍部位が複数ある場合の処理を示す概略図である。
図9は、第1実施形態に係るワークの周辺に障害物がある場合の処理を示す概略図である。
回転中心特定部239の回転中心特定処理は、図8に示すように、最近傍部位特定部238の最近傍部位特定処理において、2以上の最近傍辺NSを特定した場合には、最長最近傍辺NSと対向する辺を回転中心LCとして特定する。また、回転中心特定処理は、図9に示すように、最長最近傍辺NSが2以上ある場合、周辺に障害物(例えば、端面バー及びマグネットフロータ20等)がある最長最近傍辺NSと対向する辺を回転中心LCとして特定する。周辺の障害物情報は、例えば、後述する記憶部260のNC制御プログラムに含まれており、最長最近傍辺NSが2以上特定された場合に、優先最長最近傍辺特定パラメータとして取得されるが、これに限定されない。
【0040】
搬送制御部232は、ワーク供給ロボット100のCNC制御(コンピュータ数値制御:Computerized Numerical Control)が可能に構成されており、回転中心特定部239の回転中心特定処理により特定された対向辺を中心として最上位のワークWtをワークW群から剥離させるロボットハンド制御処理を行う。
【0041】
具体的には、搬送制御部232は、ワーク載置台10からワークWを搬送(搬出)する際に、記憶部260に記憶されているNC制御プログラムに基づいて、ワーク載置台10に積載されたワークW群から最上位のワークWtにロボットハンド120が到達するように移動機構160及びアーム部140を制御するよう構成されている。また、搬送制御部232は、最上位のワークWtにロボットハンド120が到達した際に、ロボットハンド120により最上位のワークWtを保持するようにエア吸引源を制御すると共に、保持した最上位のワークWtを回転中心LCを中心として回転させつつ持ち上げ、加工機等の搬送先に向けて搬送するように移動機構160及びアーム部140を制御するよう構成されている。
【0042】
さらに、搬送制御部232のロボットハンド制御処理は、最上位のワークWtを最上位のワークWtの対向部位を中心として回転させた状態において、所定の待機時間(例えば、2秒間等)最上位のワークWtを保持するよう構成されている。待機時間は、上述した例に限定されず、ワークWのサイズ等によって種々の任意の時間を採用可能である。
【0043】
以上の構成を備えるロボット制御部230は、最上位のワークWtを回転中心LCを中心として回転させる剥離動作を行うか否かをユーザが選択可能に構成されている。また、ロボット制御部230は、最上位のワークWtを回転させた状態で保持する待機時間を初期設定値からユーザが変更可能に構成されている。さらに、ロボット制御部230は、最上位のワークWtを回転させる際の回転角度をユーザが初期設定値から変更可能に構成されている。また、ロボット制御部230は、ユーザが上述した設定項目を確認し、設定変更を実施するための手動調整画面を表示部220に表示するよう構成されている。
【0044】
記憶部260は、ワーク供給ロボット100にワーク載置台10からのワークWの搬送(搬出)、加工機等へのワークWの搬送(搬入)、ワークWの加工(曲げ加工)の補助、及び、加工機等からの製品(曲げ加工品)の搬送(搬出)等を実行させるためのNC制御プログラムを格納する。また、記憶部260は、カメラ50を制御するための撮影プログラム、画像処理プログラム等を格納する。
【0045】
さらに、記憶部260は、ロボット制御部230にワーク供給ロボット100の制御を実行させるためのワーク供給プログラムを格納する。ワーク供給プログラムは、ワークWに対するロボットハンド120の保持位置を特定する保持位置特定処理と、保持位置特定処理により特定されたロボットハンド120の保持位置に最も近いワークWの部位を特定する最近傍部位特定処理と、最近傍部位特定処理により特定された最近傍部位NSと対向する対向部位を回転中心LCとして特定する回転中心特定処理と、回転中心特定処理により特定された対向部位を中心として最上位のワークWtをワークW群から剥離させるロボットハンド制御処理とをロボット制御部230に実行させるよう構成されている。
【0046】
以上の構成を備える制御装置200は、表示部220に、最上位のワークWtの剥離動作を行うか否かをユーザが選択可能な手動調整画面を表示するよう構成されている。また、制御装置200は、手動調整画面に、最上位のワークWtを最上位のワークWtの対向部位を中心として回転させた状態において保持する待機時間と、最上位のワークWtを回転させる際の回転角度とを更に表示する。このような構成を備える制御装置200は、ユーザが入力部210又は制御装置200のタッチパネルで構成されている表示部220を操作することで、剥離動作を行うか否かと、待機時間と、回転角度とを初期設定状態から手動で変更可能に構成されている。
【0047】
なお、回転中心特定部239の回転中心特定処理により特定された回転中心LCは、手動により変更可能に構成されている。具体的には、表示部220の手動調整画面にカメラ50によって撮影された最上位のワークWtの画像と共に最上位のワークWtを近似した矩形R,R′が表示される。回転中心特定部239が特定した回転中心LCは、矩形R,R′上に最上位のワークWtの他の辺と異なる色で強調表示される。また、ユーザが回転中心LCとして選択可能な最上位のワークWtの他の辺もユーザが識別できるように矩形R,R′上に明示される。ユーザは、入力部210又は制御装置200のタッチパネルで構成されている表示部220を操作することで、最上位のワークWtの他の辺を回転中心LCとして選択することができる。
【0048】
また、制御装置200は、ワークWの形状及び大きさと、ロボットハンド120の形状及び大きさと、ロボットハンド120の保持位置とに基づいて、剥離動作の有効性や、剥離動作の効果を最適化するために変更すべきパラメータを特定し、表示部220に表示するよう構成されてもよい。
【0049】
[第1実施形態に係るワーク供給方法]
図10は、第1実施形態のワーク供給システムを用いたワーク供給方法の一例を示すフローチャートである。
図10を参照して、以上説明したワーク供給システム1の一連のワーク供給方法について説明する。一連のワーク供給方法は、ワークWのローディング中に実行されるものである。具体的には、まず、制御装置200のロボット制御部230は、ワーク供給ロボット100がワークWを搬送するためのNC制御プログラムを記憶部260から読み出す。制御装置200のロボット制御部230の保持位置特定部234は、読み出されたNC制御プログラムからワークW群の最上位のワークWtに対するワーク供給ロボット100のロボットハンド120の保持位置を特定する保持位置特定処理を実行する(図10のS1:保持位置特定処理工程)。
【0050】
保持位置特定処理の実施後、制御装置200のロボット制御部230の矩形近似部236は、矩形近似処理を実行する。まず、矩形近似部236は、保持位置特定処理により特定されたワーク供給ロボット100のロボットハンド120の最上位のワークWtの保持位置に応じて、異なる矩形近似処理を実行する。具体的には、ロボットハンド120が最上位のワークWtからはみ出ない場合(図10のS2にてNO)、矩形近似部236は、最上位のワークWtを包含する矩形Rに最上位のワークWtの形状を近似する矩形近似処理を実行する(図10のS3)。一方で、ロボットハンド120が最上位のワークWtからはみ出る場合(図10のS2にてYES)、最上位のワークWtとロボットハンド120を包含する矩形R′に近似する矩形近似処理を更に実行する(図10のS5)。
【0051】
矩形近似処理の実行後、制御装置200のロボット制御部230の最近傍部位特定部238は、矩形近似部236の矩形近似処理により近似された矩形Rに基づいて最近傍部位特定処理を実行する。具体的には、最近傍部位特定部238は、保持位置特定部234の保持位置特定処理により特定されたワーク供給ロボット100のロボットハンド120の吸着部124の吸着パッドの端部に最も近い最上位のワークWt(矩形R)の辺を最近傍辺NSとして特定する最近傍部位特定処理を実行する(図10のS4:最近傍部位特定処理工程)。
【0052】
最近傍部位特定処理の実行後、制御装置200のロボット制御部230の回転中心特定部239は、最近傍部位特定部238の最近傍部位特定処理により特定された最近傍辺NSの数に応じて以下の処理を実行する。すなわち、最近傍部位特定部238により特定された最近傍辺NSが1つの場合(図10のS6にてNO)、回転中心特定部239は、その最近傍辺NSと対向する辺を回転中心LCとして特定する回転中心特定処理を実行する(図10のS7:回転中心特定処理工程)。最近傍部位特定部238により特定された最近傍辺NSが複数ある場合(図10のS6にてYES)、回転中心特定部239は、最長最近傍辺NSが1つであれば(図10のS11にてNO)、その最長最近傍辺NSと対向する辺を回転中心LCとして特定する(図10のS12)。
【0053】
一方、制御装置200のロボット制御部230の最近傍部位特定部238により特定された最近傍辺NSが複数あり(図10のS6にてYES)、かつ最長最近傍辺NSが複数ある場合(図10のS11にてYES)、回転中心特定部239は、最上位のワークWtの周辺に障害物(端面バー又はマグネットフロータ20)がある最長最近傍辺NSと対向する辺を回転中心LCとして特定する(図10のS13)。
【0054】
回転中心LCが特定された後、ワークW群が載置台10に載置され、カメラ50によって載置されたワーク群が撮影される。その後、制御装置200は、カメラ50から供給された撮影画像データに基づいてNC制御プログラムを補正する。NC制御プログラムの補正と同時に、又は、補正後に、制御装置200は、ロボット制御部230の回転中心特定部239が特定した回転中心LCを表示部220に表示する(図10のS8)。具体的には、回転中心特定部239が特定した回転中心LCは、最上位のワークWtを近似した矩形R,R′上に最上位のワークWtの他の辺と異なる色で強調表示される。また、ユーザが回転中心LCとして選択可能な最上位のワークWtの他の辺もユーザが識別できるように明示される。
【0055】
また、制御装置200は、表示部220に、最上位のワークWtの剥離動作を行うか否かと、最上位のワークWtを回転させた状態で保持する待機時間と、最上位のワークWtを回転させる際の回転角度とをユーザが初期設定状態から手動で変更可能な手動調整画面を表示する。
【0056】
ユーザは、制御装置200の表示部220に表示された回転中心LCを確認する。ユーザは、回転中心特定部239が特定した回転中心LCとは異なる回転中心LCを選択したい場合(図10のS9にてNO)、制御装置200の入力部210又は制御装置200のタッチパネルで構成されている表示部220を操作することで、最上位のワークWtの他の辺を回転中心LCとして選択することができる(図10のS14)。
【0057】
ユーザが手動で回転中心LCを選択しない場合(図10のS9にてYES)、制御装置200のロボット制御部230の搬送制御部232は、回転中心特定部239が特定した辺を回転中心LCとして最上位のワークWtをワークW群から剥離させるロボットハンド制御処理を実行する(ロボットハンド制御処理工程)。一方、ユーザが手動で回転中心LCを選択した場合、搬送制御部232は、ユーザが選択した辺を回転中心LCとして最上位のワークWtをワークW群から剥離させるロボットハンド制御処理を実行する。ワーク供給ロボット100は、搬送制御部232の制御に従ってワーク載置台10から加工機へ最上位のワークWtを供給する(図10のS10)。
【0058】
図11~13は、第1実施形態に係る最上位のワークの剥離動作を示す概略図である。
ワーク供給ロボット100は、図11に示すように、アーム部140及び移動機構160が動作することでロボットハンド120が最上位のワークWtの保持位置に移動する。ロボットハンド120は、吸着部124の吸着パッドがエア吸引源による吸引力によって最上位のワークWtの表面に吸着することで最上位のワークWtを保持する。最上位のワークWtを保持したワーク供給ロボット100は、図12に示すように、制御装置200のロボット制御部230の回転中心特定部239が特定した最上位のワークWtの辺、又はユーザが手動で選択した最上位のワークWtの辺を回転中心LCとして最上位のワークWtをワークW群から剥離させる。ワーク供給ロボット100は、図12の姿勢、すなわち、最上位のワークWtを最上位のワークWtの対向部位を中心として回転させた状態で所定の待機時間最上位のワークWtを保持する。所定の待機時間の経過後、ワーク供給ロボット100は、図13に示すように、回転中心LCとして特定又は選択された最上位のワークWtの辺をワークW群から離間させ、ワーク載置台10に対してほぼ水平になるように最上位のワークWtを保持する。その後、ワーク供給ロボット100は、加工機へ最上位のワークWtを供給する。以上の工程により第1実施形態に係るワーク供給システム1によるワーク供給方法の一連の動作が実行される。
【0059】
[第1実施形態に係るワーク供給システムの利点]
以上説明したように、第1実施形態に係るワーク供給システム1は、ワーク載置台10上に積載されたワークW群から最上位のワークWtを搬送可能に構成されたワーク供給ロボット100と、ロボット制御部230とを備え、ワーク供給ロボット100は、最上位のワークWtを保持するロボットハンド120を含み、ロボット制御部230は、ワークWに対するロボットハンド120の保持位置を特定する保持位置特定処理と、保持位置特定処理により特定されたロボットハンド120の保持位置に最も近いワークWの部位(辺)を特定する最近傍部位特定処理と、最近傍部位特定処理により特定された最近傍部位(最近傍辺NS)と対向する対向部位(辺)を回転中心LCとして特定する回転中心特定処理と、回転中心特定処理により特定された対向部位を中心として最上位のワークWtをワークW群から剥離させるロボットハンド制御処理とを行う。
【0060】
そして、第1実施形態に係るワーク供給システム1は、このような構成を備えることにより、ワークWに対するロボットハンド120の保持位置に応じて回転中心LCを選択し、最上位のワークWtをワークW群から斜めに持ち上げて剥離させるため、ワーク載置台10上のワークW群の載置場所やワークWの形状にかかわらず最上位のワークWtのみを保持できるという利点がある。さらに、本発明者は、ロボットハンド120の吸着部124の吸着パッドの端部とワークWの端部が近いほど、最上位のワークWtのみをワークW群から剥離させる1枚取りの成功率が上がるという新たな知見を発見した。第1実施形態に係るワーク供給システム1は、最近傍部位(最近傍辺NS)と対向する対向部位(辺)を回転中心LCとするため、回転中心LCがロボットハンド120の保持位置から離れている、すなわち、吸着パッドの端部とワークWの端部(最近傍辺NS)が近いため、より確実に最上位のワークWtのみをワークW群から剥離させることができるという利点を有している。
【0061】
また、第1実施形態に係るワーク供給システム1において、ワークWの最近傍部位及び対向部位は、ワークWの辺である。このような構成を備えることにより、常に設定どおりの回転角でワークWを持ち上げられるという利点を有している。
【0062】
さらに、第1実施形態に係るワーク供給システム1において、回転中心特定制御処理は、最近傍部位特定処理において、2以上の最近傍部位(最近傍辺NS)を特定した場合には、最長最近傍部位(最近傍辺NS)と対向する対向部位(辺)を回転中心LCとして最上位のワークWtをワークW群から剥離させる。このような構成を備えることにより、特定された他の最近傍部位(最近傍辺NS)と対向する対向部位(辺)を回転中心LCとする場合に比べ、より確実に最上位のワークWtのみをワークW群から剥離することできるという利点を有している。
【0063】
また、第1実施形態に係るワーク供給システム1において、回転中心特定処理は、最長最近傍部位(最近傍辺NS)が2以上ある場合、周辺に障害物がある最長最近傍部位(最近傍辺NS)と対向する対向部位(辺)を回転中心LCとして最上位のワークWtをワークW群から剥離させる。このような構成を備えることにより、最上位のワークWtをワークW群から剥離させる際に、ワーク供給ロボット100のロボットハンド120が障害物と干渉することを防ぐことができるという利点を有している。
【0064】
さらに、第1実施形態に係るワーク供給システム1において、ロボット制御部230は、ワークWを包含する矩形RとなるようワークWの形状を近似する矩形近似処理を更に実行するよう構成され、最近傍部位特定処理は、矩形近似処理により近似された矩形Rに基づいて最近傍部位を特定する。このような構成を備えることにより、ワークWが複雑な形状を有する場合であっても、矩形近似により形状を単純化することで適当な最近傍部位(最近傍辺NS)、ひいては回転中心LCを特定することができるという利点を有している。
【0065】
また、第1実施形態に係るワーク供給システム1において、ロボットハンド制御処理は、最上位のワークWtを最上位のワークWtの対向部位を中心として回転させた状態において、所定の待機時間最上位のワークWtを保持するよう構成されている。このような構成を備えることにより、最上位のワークWtに直下のワークWが張り付いていた場合であっても、その直下のワークWが自重で最上位のワークWtから剥離するため、最上位のワークWtのみをワークW群から剥離することができるという利点を有している。
【0066】
[第2実施形態に係るワーク供給システムの全体構成]
次に、第2実施形態に係るワーク供給システム1′について説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同じ機能を果たす部分には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0067】
第2実施形態に係るワーク供給システム1′において、最近傍部位特定部238は、保持位置特定部234の保持位置特定処理により特定されたロボットハンド120の保持位置に最も近いワークWの部位を特定する最近傍部位特定処理を行う。ロボットハンド120の保持位置は、具体的には、ロボットハンド120の吸着部124の吸着パッドの端部である。また、ワークWの部位は、具体的には、ワークWの角である。
【0068】
図14は、第2実施形態に係るワークの最近傍部位特定処理を示す概略図である。
最近傍部位特定処理は、図14に示すように、矩形近似部236の矩形近似処理により近似された矩形Rに基づいて最近傍角(nearest neibour corner)NCを特定する。具体的には、最近傍部位特定部238は、矩形Rを構成する4つの角と、各角に最も近いロボットハンド120の吸着部124の吸着パッドの端部との距離を計算し、その距離が最短距離Lminとなる角を最近傍角NCとして特定する。
【0069】
図15は、第2実施形態に係るワークの回転中心を示す概略図である。
搬送制御部232は、図15に示すように、最近傍部位特定部238の最近傍部位特定処理により特定された最近傍角NCと対向する角を回転中心LCとして、最上位のワークWtをワークW群から剥離させるロボットハンド制御処理を行う。
【0070】
搬送制御部232のロボットハンド制御処理は、最上位のワークWtの最近傍角NCがワークW群から剥離し、かつ最近傍角NCと対向する角がワークW群から剥離していない状態において、所定の待機時間(例えば、2秒間等)最上位のワークWtを保持するよう構成されている。待機時間は、上述した例に限定されず、ワークWのサイズ等によって種々の任意の時間を採用可能である。
【0071】
[第2実施形態に係るワーク供給システムの利点]
以上説明したように、第2実施形態に係るワーク供給システム1′は、第1実施形態と同様に、ロボットハンド120の保持位置に応じて回転中心LCを選択し、最上位のワークWtをワークW群から剥離させるため、ワークW群の積載位置にかかわらず最上位のワークWtのみを保持できるという利点を有している。
【0072】
さらに、第2実施形態に係るワーク供給システム1において、ワークWの最近傍部位及び対向部位は、ワークWの角である。このような構成を備えることにより、近似線と実際のワークがかけ離れてしまった場合でも、角を合わせればよいという利点を有している。
【0073】
また、第2実施形態に係るワーク供給システム1′は、第1実施形態と同様に、ロボット制御部230が、ワークWを包含する矩形RにワークWの形状を近似する矩形近似処理を更に実行するよう構成され、最近傍部位特定処理が、矩形近似処理により近似された矩形Rに基づいて最近傍部位(最近傍角NC)を特定するよう構成されている。これにより、ワーク供給システム1′は、第1実施形態と同様に、ワークWが複雑な形状を有する場合であっても、形状を単純化することで適当な回転中心LCを特定することができるという利点を有している。
【0074】
また、第2実施形態に係るワーク供給システム1′は、第1実施形態と同様に、ロボットハンド制御処理が、最上位のワークWtの最近傍部位(最近傍角NC)がワークWから剥離し、かつ最近傍部位(最近傍角NC)と対向する対向部位(角)がワークW群から剥離していない状態において、所定の待機時間最上位のワークWtを保持するよう構成されている。これにより、ワーク供給システム1′は、第1実施形態と同様に、最上位のワークWtに最上位のワークWtの下のワークWが張り付いていた場合であっても、そのワークWが自重で最上位のワークWtから剥離するため、最上位のワークWtのみをワークW群から剥離することができるという利点を有している。
【0075】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、第1実施形態及び第2実施形態に記載の範囲には限定されない。上述した実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0076】
例えば、上述した第1実施形態では、ワークWの最近傍部位及び対向部位は、ワークWの辺であるものとして説明し、上述した第2実施形態では、ワークWの最近傍部位及び対向部位は、ワークWの角であるものとして説明したが、これに限定されない。例えば、ワークWの最近傍部位及び対向部位は、ワークWの辺又は角以外の任意の部位であってもよい。
【0077】
上述した第1実施形態では、回転中心特定処理は、最近傍部位特定処理において、2以上の最近傍部位(最近傍辺NS)を特定した場合には、最長最近傍部位(最近傍辺NS)と対向する対向部位(辺)を回転中心LCとして最上位のワークWtをワークW群から剥離させるものとして説明したが、これに限定されない。ロボットハンド制御処理は、他の最近傍部位(最近傍辺NS)と対向する対向部位(辺)を回転中心LCとして最上位のワークWtをワークW群から剥離させてもよい。
【0078】
上述した第1実施形態では、回転中心特定処理は、最長最近傍部位(最近傍辺NS)が2以上ある場合、周辺に障害物がある最長最近傍部位(最近傍辺NS)と対向する対向部位(辺)を回転中心LCとして最上位のワークWtをワークW群から剥離させるものとして説明したが、これに限定されない。ロボットハンド制御処理は、他の最近傍部位(最近傍辺NS)と対向する対向部位(辺)を回転中心LCとして最上位のワークWtをワークW群から剥離させてもよい。
【0079】
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、ロボット制御部230は、ワークWを包含する矩形RとなるようワークWの形状を近似する矩形近似処理を更に実行するよう構成され、最近傍部位特定処理は、矩形近似処理により近似された矩形Rに基づいて最近傍部位を特定するものとして説明したが、これに限定されない。ロボット制御部230は、矩形近似処理を行わず、ワークWの形状に基づいて最近傍部位特定処理を行ってもよい。
【0080】
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、ロボットハンド制御処理は、最上位のワークWtを最上位のワークWtの対向部位を中心として回転させた状態において、所定の待機時間最上位のワークWtを保持するよう構成されているものとして説明したが、これに限定されない。ロボットハンド制御処理は、上述した状態から直ちに最上位のワークWtの対向部位(辺、角)をワークW群から離間してもよい。
【0081】
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、ロボットハンド120の保持位置は、ロボットハンド120の吸着部124の吸着パッドの端部であるものとして説明したが、これに限定されず、吸着部124の吸着パッドの中心部でもよいし、ロボットハンド120のハンド本体122の端部でもよい。
【0082】
上述した第1実施形態及び第2実施形態のワーク供給方法において、回転中心LCが特定された後、ワークW群が載置台10に載置されるものとして説明したが、これに限定されず、回転中心LCの特定前、又は、特定中に、ワークW群が載置台10に載置されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1,1′ ワーク供給システム
10 ワーク載置台
20 マグネットフロータ
22 突き当て面
50 カメラ
51 カメラスタンド
100 ワーク供給ロボット
120 ロボットハンド
122 ハンド本体
122a 装着部
122b 第1支持バー
122c 第2支持バー
124 吸着部
140 アーム部
160 移動機構
160a レール部
160b ベース台
200 制御装置
210 入力部
220 表示部
230 ロボット制御部
232 搬送制御部
234 保持位置特定部
236 矩形近似部
238 最近傍部位特定部
239 回転中心特定部
240 カメラ制御部
250 画像処理部
260 記憶部
L 照明設備
LC 回転中心
Lmin 最短距離
NC 最近傍角(最近傍部位)
NS 最近傍辺(最近傍部位)
R,R′ 矩形
W ワーク
Wt 最上位のワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15