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▶ 株式会社メディカルシードの特許一覧

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  • 特開-痰除去チューブの開閉方法 図1
  • 特開-痰除去チューブの開閉方法 図2
  • 特開-痰除去チューブの開閉方法 図3
  • 特開-痰除去チューブの開閉方法 図4
  • 特開-痰除去チューブの開閉方法 図5
  • 特開-痰除去チューブの開閉方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069010
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】痰除去チューブの開閉方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
A61M1/00 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180546
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】502218570
【氏名又は名称】株式会社メディカルシード
(74)【代理人】
【識別番号】100174791
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 敬義
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 真吾
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA26
4C077BB10
4C077DD11
4C077DD21
4C077DD27
4C077EE04
(57)【要約】
【課題】チューブ開閉式の痰吸引装置において、電気的な故障が生じても患者から大量の空気が奪われないこと。
【解決方法】自由に上下する開閉装置の自重によって痰除去チューブを常に閉鎖しているが、痰吸引時に開閉装置の下部の長さを変更することによってチューブを開放し痰を除去、その後速やかに開閉装置が自重によって落下し、チューブを閉鎖する。この方法では電気的に故障が生じても、開閉装置が自重によって必ず落下するので、チューブ開放状態が継続されることはない。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
痰をチューブで除去する装置において、陰圧もしくは陽圧のかかったチューブの一部を上下に自由に動く閉鎖装置の自重で常時押しつぶしているが、除去が必要な時に閉鎖装置の下部を短くしてチューブを開放し痰を除去、もしくは下部を伸ばして閉鎖装置を上方へジャンプさせチューブを開放し痰を除去、その後自重により落下し、チューブが再び閉鎖されるチューブの開閉方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、痰を除去する際のチューブを開放、閉塞する方法であって、常時チューブを閉鎖しているが、痰除去が必要な時にチューブを開放、その後速やかにチューブが再び閉鎖する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工呼吸器を使用する患者の気管内の痰の吸引方法には、用手吸引が広く用いられている。この用手吸引法は操作者への負担が大きく、操作方法を十分理解していない操作者による医療事故も報告されている(たん吸引器を誤装着 70代男性が死亡、毎日新聞 2018年6月19日)。
用手吸引の問題点を解決するため、自動で間欠的に吸引可能な吸引システムがある。例えば特許文献1が知られている。この技術は、痰吸引のタイミングをセンサー等で検知して間欠的に所定のタイミングに自動で痰を吸引することで、用手吸引法の負担を軽減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5503094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の痰を吸引する方法には、課題があった。つまり、強力な吸引で短時間のみ吸引する間欠吸引による痰の除去方法では、粘性の高い痰を除去することが可能だが、痰を吸引するためのチューブ開放機構に故障が生じて開放状態が維持されると、強力な陰圧で連続吸引されてしまい、閉鎖回路となっている人工呼吸器内の空気がなくなり、患者は数秒で危険な状態に陥り死に至る可能性がある。
【0005】
間欠吸引でのチューブ開放機構には、たとえば電磁弁を用いた方法が考えられる。通電されると流路が解放される電磁弁の場合、痰吸引のタイミングで電磁弁に通電し痰を吸引、その後通電を終了して流路を再び閉鎖する。しかし、装置の故障によって通電状態が維持されると流路開放状態が維持されてしまい、大量の空気が吸引されることとなる。
【0006】
逆に、通電されると流路が閉鎖される電磁弁の場合、痰吸引のタイミングで電磁弁の通電を遮断し痰を吸引、その後通電して流路を再び閉鎖する。しかし、装置の故障によって無通電状態が維持されると流路開放状態が維持されてしまい、大量の空気が吸引されることとなる。
【0007】
いずれの場合も、装置本体のアラームによる介助者などへの周知が間に合わないことが予想される。一方、チューブ閉鎖状態が維持された場合には痰の吸引が不可能となるが、この状態は緊急を要する患者への影響ではなく、吸引機本体のアラーム機構によって介助者などへ周知することができる。
すなわち、装置の故障によって間欠吸引法のチューブ開放状態が発生しない機構が不可欠である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明はこのような課題を解決する為に、チューブを開閉する機構として閉鎖物質の重力による自由落下方式を考案した。すなわち、通常は重力によってチューブが閉鎖物質によって押しつぶされ、閉鎖した状態となっているが、痰を吸引するタイミングで閉鎖物質の下部を縮めることによって、チューブが開放状態となる。しかし、閉鎖物質は重力によって自由落下するため直ちにチューブを押しつぶし、閉鎖状態となる。その後、閉鎖物質の下部を元に戻すことによって初期の状態に復活する。
【0009】
また、痰を吸引するタイミングで閉鎖物質の下部を伸ばしてジャンプさせる方式では、閉鎖物質が上方向にジャンプしている間、チューブが開放状態となる。しかし、閉鎖物質は重力によって自由落下するため直ちにチューブを押しつぶし、閉鎖状態となる。その後、閉鎖物質の下部を元に戻すことによって初期の状態に復活する。
【0010】
閉鎖物質としては、たとえばソレノイドが該当する。通電しない状態でソレノイドの心棒が伸びた状態であり、通電時にソレノイド内部に心棒が電磁吸着される状態が該当するが、その逆の方法でもよい。
【0011】
通電時にソレノイド内部に心棒が電磁吸着される場合、痰を吸引するタイミングでソレノイドへ電流を流すことによって痰を除去するチューブを開放することができる。しかし、ソレノイドは自重によって自由落下するため、この開放状態は落下と同時に終了、閉鎖状態となる。その後ソレノイドへの通電をゆっくりと終了することによって初期の状態に戻る。
【0012】
無通電時にソレノイド内部に心棒が収納されている場合においては、通電によって心棒がソレノイドより出た状態となり、痰を除去するチューブをソレノイド自重によって閉鎖している。痰を吸引するタイミングで無通電状態にすると、心棒がソレノイド内部に収納され、その瞬間に痰を吸引するチューブが解放され痰の除去が行われる。しかし、ソレノイドが自由落下するため、この開放状態は落下と同時に終了、閉鎖状態となる。その後ソレノイドへゆっくりと通電することによって初期の状態に戻る。
【0013】
ソレノイドをジャンプさせてチューブを開放する機構では、通電時にソレノイド心棒がソレノイドより出た状態、あるいは逆に無通電時にソレノイド心棒がソレノイドより出た状態とすればよい。通電時にソレノイド心棒がソレノイドより出た状態となる場合、痰を吸引するタイミングでソレノイドへ通電すると、チューブを閉鎖しているソレノイドの心棒がその瞬間に伸びた状態となるため、ソレノイドが上方向にジャンプする。ジャンプしている間チューブは開放状態となり、痰を除去することができる。ソレノイドが自由落下しチューブを再び閉鎖したら、ソレノイドの通電をゆっくりと終了することで初期の状態に戻る。
【0014】
逆に無電時にソレノイド心棒がソレノイドより出た状態となる場合、痰を吸引するタイミングでソレノイドへの電流を遮断すると、チューブを閉鎖しているソレノイドの心棒がその瞬間に伸びた状態となるため、ソレノイドが上方向にジャンプする。ジャンプしている間チューブは開放状態となり、痰を除去することができる。ソレノイドが自由落下しチューブを再び閉鎖したら、ソレノイドへゆっくりと通電することで初期の状態に戻る。
【0015】
いずれの場合も、故障によってソレノイドへの通電が維持された場合、もしくはソレノイドへの通電が遮断された場合に痰除去チューブはソレノイド自重によって閉鎖状態となるため、連続的に大量の空気が除去されることはない。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の、チューブを開閉する機構として閉鎖物質の重力による自由落下方式を採用することによって、ソレノイドを用いた間欠式痰除去装置に故障が生じても、ソレノイド自重によって解放されたチューブが速やかに自由落下しチューブを閉鎖するため、通常の間欠式痰除去と同様の操作が行われ、大量の空気が閉鎖式呼吸回路から奪われることはなく、患者の呼吸に影響を与えない。すなわち、痰除去装置に故障が生じても患者はそのまま人工呼吸器による呼吸を維持することが可能であり、患者生命に何ら影響を生じることはない。
【0017】
本願発明の機構では、故障による痰除去不可能となる状態が維持されるが、痰除去装置にアラーム機構を設けることによって痰除去不可能を介助者などへ知らせればよい。痰吸引が10分程度行われなくても患者への生命に影響を与えることはないので、介助者などはその間に痰除去装置を交換するなど、故障に対応すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本願発明の痰除去チューブの開閉方法。
図2】ソレノイドなどの自重によりチューブが閉鎖されている図。
図3】ソレノイドなどの内部に心棒が収まった直後の図。
図4】ソレノイドなどの内部に心棒が収まった状態で自重により自由落下した時の図。
図5】心棒がソレノイドなどから出てジャンプした時の図。
図6】心棒がソレノイドなどから出た状態で自重により自由落下した時の図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明の痰除去チューブの開閉方法について、ソレノイドを使用した時を図に基づいて説明する。図1のごとく、ソレノイドは固定アームに固定され、この固定アームはアームホルダ部分で自由に回転するようになっている。ソレノイドは自由に上下に動く構造であればよいため、同様の動きを行うことができればここに示した固定アームとアームホルダに限定されない。
【0020】
ソレノイドが自重によりチューブを閉鎖している状態を横から見たのが、図2である。心棒がチューブを押しつぶしており、チューブは閉鎖状態で痰の除去はなされない。
【0021】
ソレノイドの心棒をソレノイド内部に格納した瞬間は図3のようになり、チューブが解放され痰の除去が可能となる。しかし、ソレノイドは自由に上下に動くことができるため、自重によって落下し、図4のように心棒がチューブを押しつぶして再びチューブを閉鎖する。チューブ閉鎖後はゆっくりと心棒を元の状態に戻すことによって、図1の状態に復帰する。
【0022】
一方、通常心棒がソレノイド内部に格納されている場合は、痰の除去を行うときに心棒をソレノイドの外へ出すようにすればよい。図5は心棒を外に出した後、ソレノイドが反動でジャンプした時の図である。この状態ではチューブが解放されるため、痰の除去が可能となる。しかし、ソレノイドは自由に上下に動くことができるため、自重によって落下し、図76のように心棒がチューブを押しつぶして再びチューブを閉鎖する。チューブ閉鎖後はゆっくりと心棒を元の状態に戻すことによって、図1の状態に復帰する。
【符号の説明】
【0023】
1 閉鎖物質
2 閉鎖物質固定アーム
3 固定アームホルダ
4 心棒
5 痰除去チューブ
6 チューブ固定台
図1
図2
図3
図4
図5
図6