(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069035
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ゴム弾性体の接地面観察方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
G01B11/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180590
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】宮本 学
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA51
2F065AA65
2F065BB05
2F065BB16
2F065CC13
2F065DD06
2F065FF04
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM04
2F065PP13
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】手間を要することなく簡便にゴム弾性体の表面に多数の目印を設ける。
【解決手段】本発明のゴム弾性体1の接地面観察方法は、ゴム弾性体1の接地面2に目印6を形成する目印形成工程と、目印6を形成したゴム弾性体1が路面に接した接地面2を撮影装置13により撮像する撮像工程とを備える接地面観察方法において、目印形成工程は、複数の針状部材22をゴム弾性体1に押し付けて複数の穴4を形成する穴形成工程と、複数の穴4に塗料5を注入する注入工程とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム弾性体の接地面に目印を形成する目印形成工程と、
前記目印を形成した前記接地面を路面に接触させた状態で撮像する撮像工程とを備える接地面観察方法において、
前記目印形成工程は、複数の針状部材を前記ゴム弾性体に押し付けて複数の穴を形成する穴形成工程と、複数の前記穴に塗料を注入する注入工程とを有するゴム弾性体の接地面観察方法。
【請求項2】
前記ゴム弾性体は、複数のサイプを有し、
複数の前記穴の間隔が、最も近接する位置における前記サイプの間隔より小さい請求項1に記載のゴム弾性体の接地面観察方法。
【請求項3】
前記注入工程は、平面に塗料を塗布する工程と、複数の前記穴が形成された前記ゴム弾性体を、前記平面に塗布された塗料に押し付けて複数の前記穴に塗料を注入する工程とを備える請求項1又は2に記載のゴム弾性体の接地面観察方法。
【請求項4】
前記穴形成工程は、ベースと前記ベースから突出する複数の前記針状部材を有する穴開け治具を用いて複数の前記穴を形成する請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム弾性体の接地面観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム弾性体の接地面観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの接地面を構成するゴム弾性体の変形解析のため、ゴム弾性体の表面に多数の目印を設け、ゴム弾性体に剪断変形を与えながら多数の目印とともにゴム弾性体の表面を撮影し、多数の目印を含むゴム弾性体の画像を解析してゴム弾性体の接地面を観察する方法がある。
【0003】
このような方法において、ゴム弾性体の表面に直接塗料を塗布して目印を形成すると、ゴム弾性体に剪断変形を与えた際に目印の塗料が剥がれ落ちて正確に接地面を観察することができないおそれがある。また、ゴム弾性体の表面に直接塗布された塗料は、ゴム弾性体と摩擦係数が異なるため、アイス路面等の摩擦係数の低い路面における変形解析を行う場合のように精密な観察が要求される場合にその要求を満たすことが困難である。
【0004】
そこで、特許文献1には、レーザ加工によってタイヤ表面に設けた穴に色部材を注入することで、タイヤ表面に目印を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、レーザ加工によって多数の穴を設ける必要があり、穴加工に手間がかかる。そこで本発明は、手間を要することなく簡便にゴム弾性体の表面に多数の目印を設けることができるゴム弾性体の接地面観察方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態のゴム弾性体の接地面観察方法は、ゴム弾性体の接地面に目印を形成する目印形成工程と、前記目印を形成した前記接地面を路面に接触させた状態で撮像する撮像工程とを備える接地面観察方法において、前記目印形成工程は、複数の針状部材を前記ゴム弾性体に押し付けて複数の穴を形成する穴形成工程と、複数の前記穴に塗料を注入する注入工程とを有する方法である。
【発明の効果】
【0008】
上記本発明では、上記の特徴を備えることにより、ゴム弾性体の表面に多数の目印を簡便に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図6】ゴム弾性体の接地面観察に用いられる装置の一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
本実施形態は、ゴム弾性体1が試験路面11に接した接地面2に生じる歪みを測定する例を示す。
【0012】
本実施形態の方法は、
図1に例示するように、ゴム弾性体1を作製する工程(ステップS1)、ゴム弾性体1の接地面2に複数の穴4を形成する穴形成工程(ステップS2)、複数の穴4に塗料5を注入して複数の目印6を形成する注入工程(ステップS3)、及び複数の目印6が形成されたゴム弾性体1を試験片として測定機10用いて接地面2に生じる歪みを測定する測定工程(ステップS4)を含む。
【0013】
(1)ゴム弾性体1の作製工程
ゴム弾性体1は、加硫ゴムを所定形状に成型することで作製される。本実施形態では、
図6に示すように、ゴム弾性体1が直方体形状をなし、測定機10の試験路面11に押し当てられる接地面2に複数のサイプ3が設けられている。サイプ3は、溝幅が1.5mm以下の細長い溝である。なお、本実施形態では、サイプ3がゴム弾性体1の周縁部を貫通するように設けられているが、ゴム弾性体1内で終端してもよい。また、サイプ3の全体が直線状をなすサイプ3であるが、横断面形状が波形をなす波形部を含むサイプであってもよい。
【0014】
(2)穴形成工程
穴形成工程では、ゴム弾性体1の接地面2に
図2及び
図3に示すような複数の穴4を形成する。
【0015】
具体的には、穴開け治具20に設けられた複数の針状部材22をゴム弾性体1の接地面2に押し付けて、複数の穴4を接地面2に形成する。穴開け治具20は、
図4に示すように、平板状のベース24には一方の面24aから突出する複数の針状部材22が設けられている。穴開け治具20は一方の面24aがゴム弾性体1の接地面2に対向するように配置され、その後、一方の面24aが接地面2と面接触するように穴開け治具20及びゴム弾性体1の少なくとも一方を移動させる。これにより、穴開け治具20の一方の面24aに設けられた複数の針状部材22がゴム弾性体1の接地面2に同時に突き刺さり、複数の穴4が接地面2に一度に形成される。
【0016】
本実施形態では、穴4の平面形状が円形であるが、矩形や三角形など任意の形状とすることができる。穴4の直径は、例えば、0.2mm以上1mm以下である。複数の穴4の直径は全て同一であってもよいが、所定の範囲内で種々の直径の穴4があってもよい。穴4の深さは、例えば、0.1mm以上1mm以下である。隣り合う穴4の間隔は、穴4同士が重なり合わない間隔であればよく、例えば、0.2mm以上1.5mm以下である。
【0017】
また、本実施形態のように接地面2に複数のサイプ3が形成されている場合、隣り合うサイプ3の間隔、つまり、隣り合うサイプ3で最も近接する位置におけるサイプ3同士の距離より隣り合う穴4の間隔が小さいことが好ましい。
【0018】
また、穴4は、ゴム弾性体1の周縁部からの距離が0.2mm以上1.5mm以下の領域にゴム弾性体1の周縁部に沿って複数設けられていることが好ましい。
【0019】
(3)注入工程
注入工程では、穴形成工程でゴム弾性体1の接地面2に形成した複数の穴4に塗料を注入する。具体的には、
図5(a)に示すように、まず。平板部材30の一方の平面30aに塗料を塗布して塗膜32を形成する。なお、塗膜32の厚みはゴム弾性体1に形成した穴4の深さより大きいことが好ましい。
【0020】
次いで、
図5(b)に示すように、複数の穴4を形成したゴム弾性体1の接地面2を、平板部材30に形成した塗膜32に押し付ける。これにより、接地面2に設けられた複数の穴4の内部へ塗料5を一度に注入することができる。
【0021】
次いで、
図5(c)に示すように、ゴム弾性体1の接地面2を平板部材30から離した後、接地面2に付着した塗料7を拭き取る。これにより、穴4の内部へ注入された塗料5が残り、ゴム弾性体1の接地面2に
図5(d)に示すような塗料5が注入された穴4からなる目印6が複数設けられた試料片が得られる。
【0022】
(4)測定工程
上記のように複数の目印6を接地面2に形成したゴム弾性体1を試験片として、
図6に示す測定機10を用いて、ゴム弾性体1が試験路面11に接した接地面2に生じる歪みを測定する。なお、本発明に係る接地面観察方法で使用される測定機の構成は、これに限られるものではない。
【0023】
測定機10は、試験片であるゴム弾性体1を接地させるための試験路面11と、ゴム弾性体1を支持する支持装置12と、ゴム弾性体1の接地面2を撮影する撮影装置13と、接地面2に生じた歪みを算出する処理を行う処理装置14とを備える。
【0024】
試験路面11の少なくとも一部には、透明部11aが設けられている。透明部11aは、例えばアクリルやガラスなどの透明な板材で形成される。透明部11aの表面は、平面により形成される。支持装置12は、試験路面11に対して垂直となる方向(
図6の上下方向)に沿ってゴム弾性体1を往復動自在に構成され、ゴム弾性体1と試験路面11との間隔に応じた荷重がゴム弾性体1に入力される。また、支持装置12は、駆動力や制動力、スリップ角、キャンバー角などをタイヤに付与した状態を模した剪断応力をゴム弾性体1に付与するための公知の機構を有している。
【0025】
撮影装置13は、複数の(本実施形態では二台の)カメラを備える。複数のカメラは、それぞれ試験路面11のゴム弾性体1とは反対側に配置され、試験路面11に接地させたゴム弾性体1の接地面2を、透明部11aを介して撮影することができる。本実施形態において撮影装置13を構成するカメラは高速度カメラであるが、これに限られない。
【0026】
撮影装置13は、第1の状態でゴム弾性体1の接地面2を複数のカメラにより撮影する第1撮影工程と、第1の状態とは異なる第2の状態でゴム弾性体1の接地面2を複数のカメラにより撮影する第2撮影工程とを行う。
【0027】
本実施形態では、例えば、試験路面11に接地面2を当接させてタイヤを転動させた状態を模した力をゴム弾性体1に付与する第1の状態とし、その試験路面11上でタイヤに制動力を付与した状態を模した力をゴム弾性体1に付与する第2の状態として、第1の状態から第2状態へ変更したときの接地面2の変形を歪みとして算出する。
【0028】
つまり、撮影装置13は、第1撮影工程において撮影した第1の状態のゴム弾性体1の接地面2の画像(以下、第1撮影画像)と、第2撮影工程において撮影した第2の状態のゴム弾性体1の接地面2の画像(以下、第2撮影画像)を処理装置14へ出力し、処理装置14において接地面2の変形を算出する。
【0029】
処理装置14は、コンピュータから構成され、撮影装置13から入力される第1撮影画像及び第2撮影画像に基づいて、接地面2に生じた歪みを算出する。処理装置14は、例えばデジタル画像相関法を用いて撮影した画像を解析して接地面2の変形を算出する。処理装置14は、第1及び第2撮影画像のパターンマッチングを行うことにより、複数の目印6からなる模様の変位量を求め、そのゴム弾性体1の変形を歪みとして算出する。なお、撮影装置13において撮影した画像に基づいて処理装置14がゴム弾性体1の接地面2の変形を測定する手法は、上記したデジタル画像相関法以外にも、フーリエ格子法やサンプリングモアレ法等を用いることができる。
【0030】
(5)効果
以上のような本実施形態のゴム弾性体1の接地面観察方法では、複数の針状部材22をゴム弾性体1の接地面2に押し付けて複数の穴4を形成するため、簡便にゴム弾性体1の表面に多数の目印6を設けることができる。
【0031】
また、本実施形態では、複数の針状部材22を有する穴開け治具20をゴム弾性体1の接地面2に押し付けることで、複数の針状部材22がゴム弾性体1の接地面2に同時に突き刺さり、複数の穴4が接地面2に一度に形成されるため、ゴム弾性体1の接地面2に多数の目印6を短時間に形成することができる。
【0032】
また、本実施形態では、複数の穴4を形成したゴム弾性体1の接地面2を、平板部材30の一方の平面30aに形成した塗膜32に押し付けることにより、複数の穴4の内部へ塗料5を一度に注入することができるため、ゴム弾性体1の接地面2に多数の目印6を短時間に形成することができる。
【0033】
また、本実施形態では、隣り合う穴4の間隔が隣り合うサイプ3の間隔より小さくなるように、ゴム弾性体1の接地面2に複数の穴4を設けているため、サイプ3によって区切られたゴム部分にそれぞれ複数の目印6を形成することができる。これにより、サイプ3によって区切られたゴム部分ごとに、複数の目印6からなる模様の変位量を求めることができ、各ゴム部分の変形を精度よく算出することができる。
【0034】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1…ゴム弾性体、2…接地面、3…サイプ、4…穴、5…塗料、6…目印、10…測定機、11…試験路面、12…支持装置、13…撮影装置、14…処理装置、20…穴開け治具、22…針状部材、24…基部、30…平板部材、32…塗膜