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特開2023-69044圧電素子駆動回路及びそれを備えたワーク搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069044
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】圧電素子駆動回路及びそれを備えたワーク搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/80 20230101AFI20230511BHJP
   H02N 2/14 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H01L41/04
H02N2/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180608
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕彦
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681AA07
5H681BB03
5H681BB14
5H681BB17
5H681CC02
5H681DD23
5H681FF30
5H681FF38
(57)【要約】
【課題】電圧リンギングの発生を防止しつつ、圧電素子を高周波数で駆動可能なように前記圧電素子の充電を迅速に行うことができる圧電素子駆動回路を提供する。
【解決手段】圧電素子駆動回路1は、圧電素子2に対して充電を行う。圧電素子駆動回路1は、電気的に直列に接続されたリアクトル11及び第1スイッチング素子SW1を有し、電源2から供給される電流を還流させて、圧電素子2に対して一定の電流を供給する電流源として機能する還流回路10と、電源3と還流回路10との間に位置し、還流回路10に流れる電流が一定になるように、電源3から還流回路10に対する電流の供給を制御する第2スイッチング素子SW2と、を備える。還流回路10は、圧電素子2に対して、第1スイッチング素子SW1の駆動によって前記一定の電流を供給可能に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子に対して充電を行う圧電素子駆動回路であって、
電気的に直列に接続されたリアクトル及び第1スイッチング素子を有し、電源から供給される電流を還流させて、前記圧電素子に対して一定の電流を供給する電流源として機能する還流回路と、
前記電源と前記還流回路との間に位置し、前記還流回路に流れる電流が一定になるように、前記電源から前記還流回路に対する電流の供給を制御する第2スイッチング素子と、
を備え、
前記還流回路は、前記圧電素子に対して、前記第1スイッチング素子の駆動によって前記一定の電流を供給可能に接続されている、
圧電素子駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電素子駆動回路において、
前記圧電素子から前記還流回路の前記リアクトルに電流を流す放電回路をさらに備える、
圧電素子駆動回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電素子駆動回路において、
前記第1スイッチング素子は、前記還流回路内で電流を還流させる際にオン状態になる一方、前記還流回路から前記圧電素子に電流を供給する際にオフ状態になり、
前記第2スイッチング素子は、前記リアクトルに流れる電流に基づいて駆動制御される、
圧電素子駆動回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の圧電素子駆動回路において、
ブリッジ回路を構成する複数のスイッチング素子を有し、前記複数のスイッチング素子の駆動によって、前記還流回路から前記圧電素子への電流の供給及び前記圧電素子から前記還流回路への放電を制御するスイッチング回路をさらに備える、
圧電素子駆動回路。
【請求項5】
超音波の周波数帯域の駆動周波数によってワークを搬送するワーク搬送装置であって、
請求項1から4のいずれか一つに記載の圧電素子駆動回路と、
前記圧電素子駆動回路によって充電される圧電素子と、
を備える、
ワーク搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子に対して充電を行う圧電素子駆動回路及びそれを備えたワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子に対して充電を行う圧電素子駆動回路が知られている。このような圧電素子駆動回路として、例えば特許文献1に開示される圧電素子駆動装置が知られている。
【0003】
前記圧電素子駆動装置は、圧電素子と、圧電素子に直列接続されたコイルと、前記圧電素子と前記コイルの直列回路に第1の電源を接続する第1のスイッチ手段と、前記圧電素子と前記コイルの接続点と接地電位を短絡させる第2のスイッチ手段とを備える。前記圧電素子駆動装置は、前記圧電素子の駆動季刊初期において同時に第1及び第2のスイッチ手段を所定時間導通させ、その後第2のスイッチ手段のみを遮断して圧電素子への充電を行う。
【0004】
これにより、前記圧電素子駆動装置では、前記圧電素子の充電及び変形の終了タイミングにおいて、前記圧電素子の寸法歪のオーバーシュート及びリンギングを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-58282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている圧電素子駆動装置では、コイルに電流をためて該コイルによって圧電素子を充電するため、電気的に直列に接続されたコイル及び圧電素子に電源から電圧を印加した際のLC共振に起因する電圧リンギングの発生を防止することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている圧電素子駆動装置では、圧電素子を充電する際に、まずコイルを充電する必要があるとともに、前記圧電素子を放電させる際に前記コイルから前記圧電素子に電流が流れないように、前記圧電素子の充電後に前記コイルにためられている電流を放電する必要がある。そのため、前記圧電素子駆動装置では、前記コイルに電流をためて放電するまでに時間を要する。よって、前記圧電素子の充放電に時間を要する。
【0008】
また、前記圧電素子は、容量性負荷であるため、誘導性負荷のコイルと直列接続されることにより、2次フィルタ特性の負荷になる。よって、回路内での電圧及び電流の変化は緩やかになり、前記圧電素子の充放電に時間を要する。
【0009】
このように、前記圧電素子駆動装置では、前記圧電素子の充電に時間を要し、前記圧電素子駆動装置は、例えば100kHz以上の高周波振動で圧電素子を駆動させる用途には適していなかった。
【0010】
本発明の目的は、電圧リンギングの発生を防止しつつ、圧電素子を高周波数で駆動可能なように前記圧電素子の充電を迅速に行うことができる圧電素子駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る圧電素子駆動回路は、圧電素子に対して充電を行う圧電素子駆動回路である。この圧電素子駆動回路は、電気的に直列に接続されたリアクトル及び第1スイッチング素子を有し、電源から供給される電流を還流させて、前記圧電素子に対して一定の電流を供給する電流源として機能する還流回路と、前記電源と前記還流回路との間に位置し、前記還流回路に流れる電流が一定になるように、前記電源から前記還流回路に対する電流の供給を制御する第2スイッチング素子と、を備える。前記還流回路は、前記圧電素子に対して、前記第1スイッチング素子の駆動によって前記一定の電流を供給可能に接続されている(第1の構成)。
【0012】
これにより、リアクトルを有する還流回路に流れる電流が一定になるように、第2スイッチング素子の駆動によって、電源から前記還流回路に電流を流すことができる。しかも、第1スイッチング素子の駆動によって、前記還流回路から圧電素子に一定の電流を供給することができる。よって、前記還流回路は、前記圧電素子に対して一定の電流を供給可能な電流源として機能する。
【0013】
したがって、前記圧電素子に対して前記還流回路から一定の電流を供給して、前記圧電素子を迅速に充電することができる。しかも、前記還流回路が電流源として機能することにより、LC共振による電圧リンギングの発生を防止できる。
【0014】
よって、上述の構成により、電圧リンギングの発生を防止しつつ、圧電素子を高周波数で駆動可能なように前記圧電素子の充電を迅速に行うことができる圧電素子駆動回路を実現できる。
【0015】
前記第1の構成において、前記圧電素子駆動回路は、前記圧電素子から前記還流回路の前記リアクトルに電流を流す放電回路をさらに備える(第2の構成)。
【0016】
これにより、圧電素子を放電する際に、前記圧電素子から還流回路のリアクトルに電流を回生することができる。よって、前記圧電素子を放電しつつ前記還流回路に流れる電流を一定にすることができる。したがって、前記圧電素子を充電する際には、前記リアクトルを放電させることなく、前記還流回路から前記圧電素子に対して一定の電流を迅速に供給することができる。
【0017】
上述の構成により、前記圧電素子を迅速に充放電可能な圧電素子駆動回路を実現することができる。
【0018】
前記第1または第2の構成において、前記第1スイッチング素子は、前記還流回路内で電流を還流させる際にオン状態になる一方、前記還流回路から前記圧電素子に電流を供給する際にオフ状態になる。前記第2スイッチング素子は、前記リアクトルに流れる電流に基づいて駆動制御される(第3の構成)。
【0019】
第1スイッチング素子の駆動により、還流回路から圧電素子に対する電流の供給を制御できるとともに、第2スイッチング素子の駆動により、前記還流回路内に流れる電流を制御することができる。
【0020】
よって、電圧リンギングの発生を防止しつつ、圧電素子を高周波数で駆動可能なように前記圧電素子の充電を迅速に行うことができる圧電素子駆動回路を実現できる。
【0021】
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、前記圧電素子駆動回路は、ブリッジ回路を構成する複数のスイッチング素子を有し、前記複数のスイッチング素子の駆動によって、前記還流回路から前記圧電素子への電流の供給及び前記圧電素子から前記還流回路への放電を制御するスイッチング回路をさらに備える(第4の構成)。
【0022】
これにより、圧電素子に対して還流回路から正の電流または負の電流を供給することができる。すなわち、ブリッジ回路を構成する複数のスイッチング素子を有するスイッチング回路の駆動によって、前記還流回路から前記圧電素子に対して、正の電流または負の電流を流すことができる。よって、前記圧電素子に対して印加する電圧の絶対値を小さくすることができるため、低い耐圧のスイッチング素子を用いることが可能になる。よって、比較的安価なスイッチング素子を用いることができ、圧電素子駆動回路の製造コストの低減を図れる。
【0023】
本発明の一実施形態に係るワーク搬送装置は、超音波の周波数帯域の駆動周波数によってワークを搬送するワーク搬送装置である。このワーク搬送装置は、上述の各構成を有する圧電素子駆動回路と、前記圧電素子駆動回路によって充電される圧電素子と、を備える。
【0024】
これにより、高周波数で駆動する圧電素子によって高周波の振動を発生可能なワーク搬送装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態に係る圧電素子駆動回路によれば、電源から供給される電流を還流させる還流回路は、圧電素子に対して、第1スイッチング素子の駆動によって一定の電流を供給可能に接続されている。また、前記圧電素子駆動回路は、前記電源と前記還流回路との間に位置し、前記還流回路に流れる電流が一定になるように、前記電源から前記還流回路に対する電流の供給を制御する第2スイッチング素子を備える。
【0026】
これにより、前記還流回路は、前記圧電素子に対して一定の電流を供給可能な電流源として機能する。したがって、前記圧電素子に対して前記還流回路から一定の電流を供給し、前記圧電素子を迅速に充電することができる。よって、電圧リンギングの発生を防止しつつ、前記圧電素子を高周波数で駆動可能なように前記圧電素子の充電を迅速に行うことができる圧電素子駆動回路を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施形態1に係る圧電素子駆動回路の概略構成を示す回路図である。
図2図2は、電源から還流回路内に電流を供給する圧電素子駆動回路の電流供給モードの動作を示す図である。
図3図3は、還流回路内で電流が還流する圧電素子駆動回路の還流モードの動作を示す図である。
図4図4は、還流回路から圧電素子に対して電流を供給する圧電素子駆動回路の充電モードの動作を示す図である。
図5図5は、圧電素子から放電回路に電流を流す圧電素子駆動回路の放電モードの動作を示す図である。
図6図6は、圧電素子駆動回路において、第1スイッチング素子、第2スイッチング素子及び第3スイッチング素子の動作と、リアクトルに流れる電流及び圧電素子の電圧との関係を示す図である。
図7図7は、ワーク搬送装置の一例であるパーツフィーダの概略構成を示す図である。
図8図8は、ボウルフィーダの進行波発生部の構成を模式的に示す図である。
図9図9は、リニアフィーダの進行波発生部の構成を模式的に示す図である。
図10図10は、本発明の実施形態2に係る圧電素子駆動回路の概略構成を示す回路図である。
図11図11は、電源から還流回路内に電流を供給する圧電素子駆動回路の電流供給モードの動作を示す図である。
図12図12は、還流回路内で電流が還流する圧電素子駆動回路の還流モードの動作を示す図である。
図13図13は、還流回路から圧電素子に対して正の電圧を印加して圧電素子を充電する圧電素子駆動回路の第1充電モードの動作を示す図である。
図14図14は、還流回路から圧電素子に対して負の電圧を印加して圧電素子を充電する圧電素子駆動回路の第2充電モードの動作を示す図である。
図15図15は、圧電素子駆動回路において、第1スイッチング素子、第2スイッチング素子及びスイッチング回路のスイッチング素子の動作と、リアクトルに流れる電流、圧電素子の電圧及び電流との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0029】
[実施形態1]
(圧電素子駆動回路の構成)
図1は、本発明の実施形態1に係る圧電素子駆動回路1の概略構成を示す図である。この圧電素子駆動回路1は、例えば、ワーク搬送装置の駆動手段である圧電素子2の駆動を制御する。ワーク搬送装置は、圧電素子2によって搬送部に進行波を発生させて、該進行波によりワークを搬送面上で搬送する。ワーク搬送装置の一例であるパーツフィーダ100の詳しい構成は後述する。なお、圧電素子駆動回路1は、ワーク搬送装置以外の装置において駆動手段として用いられてもよい。前記ワーク搬送装置は、超音波の周波数帯域の駆動周波数によってワークを搬送する構成であれば、どのような構成を有していてもよい。
【0030】
圧電素子2は、一対の電極に電圧が印加されることによって歪が生じる逆圧電効果の特性を有する。圧電素子2は、一対の電極に電圧が印加されることにより、前記一対の電極間に電流が流れて電荷が蓄えられる。そのため、圧電素子2を電圧によって伸縮させる場合には、圧電素子2に対して充放電を行う必要がある。
【0031】
圧電素子駆動回路1は、圧電素子2に対して電流を供給して圧電素子2を充電させるとともに、圧電素子2を放電させる。なお、圧電素子駆動回路1は、圧電素子2の充電のみを行ってもよい。この場合には、別の回路によって、圧電素子2の放電を行えばよい。
【0032】
圧電素子駆動回路1は、電源3に対して電気的に接続されているとともに、圧電素子2に対しても電気的に接続されている。圧電素子駆動回路1は、還流回路10と、放電回路20と、電圧検出回路30と、第2スイッチング素子SW2とを有する。
【0033】
還流回路10は、電源3と圧電素子2との間に位置し、電源3から供給された電流が回路内で還流するとともに、圧電素子2に対して一定の電流を供給する。すなわち、還流回路10は、圧電素子2に対して一定の電流を供給する電流源として機能する。
【0034】
還流回路10は、リアクトル11と、ダイオード12と、第1スイッチング素子SW1とを有する。リアクトル11、ダイオード12及び第1スイッチング素子SW1は、電気的に直列に接続されていて、第1スイッチング素子SW1がオン状態の場合には電気的にループ状の回路を構成する。
【0035】
リアクトル11は、還流回路10内に流れる電流をエネルギーとして蓄えるとともに、還流回路10内に一定の電流を流す。リアクトル11は、圧電素子2の充電時でも流れる電流が大きく変動しないように、圧電素子2の充電時の電気的エネルギーよりも十分に大きい電気的エネルギーを蓄えることができる。すなわち、リアクトルLの電気的エネルギーが圧電素子2の充電時の電気的エネルギーよりも十分に大きくなるように(L*I2/2>>C×V2/2:Cは圧電素子の静電容量、Vは充電時の圧電素子電圧)、要求される仕様等に応じて、リアクトルL及び圧電素子2は選定される。
【0036】
ダイオード12は、還流回路10において電流の流れる方向がリアクトル11に向かって流れる方向になるように構成されている。第1スイッチング素子SW1は、リアクトル11とダイオード12との間に位置する。
【0037】
第1スイッチング素子SW1は、上述のように、オン状態になることにより、還流回路10を構成する。また、第1スイッチング素子SW1は、オン状態になることにより、後述するように圧電素子2の放電を行う放電回路の一部を構成する。なお、後述するように、第1スイッチング素子SW1がオフ状態になることにより、還流回路10から圧電素子2への充電が可能になる。
【0038】
このように、第1スイッチング素子SW1は、還流回路10を構成するとともに、圧電素子2の充放電を制御する。すなわち、第1スイッチング素子SW1は、圧電素子2の充放電を制御するスイッチング素子である。
【0039】
還流回路10においてリアクトル11と第1スイッチング素子SW1との間の部分が、ダイオード13を介して、圧電素子2の一方の電極に電気的に接続されている。ダイオード13は、圧電素子駆動回路1に、還流回路10から圧電素子2に電流を流すように設けられている。還流回路10において、第1スイッチング素子SW1とダイオード12との間の部分が、圧電素子2の他方の電極に電気的に接続されている。このような構成により、第1スイッチング素子SW1がオフ状態の場合には、還流回路10からダイオード13を介して圧電素子2に電流が流れる。これにより、還流回路10から圧電素子2に対して一定の電流を供給することができ、圧電素子2を充電することができる。
【0040】
第2スイッチング素子SW2は、電源3と還流回路10との間に位置し、電源3から還流回路10への電流の供給を制御する。すなわち、第2スイッチング素子SW2がオン状態の場合には、電源3から還流回路10へ電流が供給され、第2スイッチング素子SW2がオフ状態の場合には、電源3から還流回路10へ電流が供給されない。
【0041】
第2スイッチング素子SW2は、リアクトル11に流れる電流に応じて駆動制御される。具体的には、第2スイッチング素子SW2は、リアクトル11に流れる電流が所定値よりも小さい場合には、オン状態になる。これにより、電源3から還流回路10に電流が供給される。一方、第2スイッチング素子SW2は、リアクトル11に流れる電流が所定値以上の場合には、オフ状態である。よって、電源3から還流回路10に電流が供給されないため、還流回路10は一定の電流が流れるループ回路である。
【0042】
本実施形態では、第2スイッチング素子SW2は、電源3と、還流回路10におけるダイオード12とリアクトル11との間とを電気的に接続している。
【0043】
放電回路20は、圧電素子2を放電させる回路である。放電回路20は、圧電素子2から還流回路10のリアクトル11に電流を流して、リアクトル11に電流をエネルギーとして蓄える。すなわち、放電回路20は、還流回路10の一部を含む。
【0044】
放電回路20は、第3スイッチング素子SW3と、ダイオード21と、リアクトル11と、第1スイッチング素子SW1とを有する。
【0045】
第3スイッチング素子SW3及びダイオード21は、電気的に直列に接続されていて、圧電素子2の一方の電極とリアクトル11とを電気的に接続する。本実施形態では、第3スイッチング素子SW3及びダイオード21は、ダイオード13と圧電素子2の一方の電極との間と、還流回路10におけるダイオード12とリアクトル11との間とを電気的に接続する。
【0046】
第3スイッチング素子SW3及び第1スイッチング素子SW1は、オン状態になることにより、放電回路20を構成する。すなわち、第3スイッチング素子SW3及び第1スイッチング素子SW1がオン状態になることにより、圧電素子2と還流回路10のリアクトル11とが電気的に接続されて、圧電素子2内の電流が、リアクトル11に流れる。これにより、電流がリアクトル11にエネルギーとして蓄えられる。このように、圧電素子2の放電時にリアクトル11に流れた電流は、還流回路10内を還流するので、圧電素子2を過放電させることを防止できる。
【0047】
第3スイッチング素子SW3がオフ状態のときには、ダイオード13によって、圧電素子2からリアクトル11に電流が流れるのを防止できる。よって、第3スイッチング素子SW3がオフ状態のときには、圧電素子2は放電されない。
【0048】
電圧検出回路30は、圧電素子2に印加される電圧を検出する。電圧検出回路30によって検出された電圧は、図示しない制御装置に入力されて、第1スイッチング素子SW1及び第3スイッチング素子SW3の駆動制御に利用される。具体的には、前記制御装置は、電圧検出回路30によって検出された電圧が所定の電圧値以上になると、第1スイッチング素子SW1をオン状態にする。電圧検出回路30の構成は、従来の構成と同様であるため、電圧検出回路30の詳しい説明は省略する。
【0049】
(圧電素子駆動回路の動作)
次に、上述のような構成を有する圧電素子駆動回路1の動作について、図2から図5を用いて説明する。
【0050】
図2は、電源3から還流回路10内に電流を供給する圧電素子駆動回路1の電流供給モードの動作を示す図である。圧電素子駆動回路1は、リアクトル11に流れる電流が所定値よりも小さい場合に、前記電流供給モードで動作する。この電流供給モードでは、図2に示すように、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2はオン状態であり、第3スイッチング素子SW3はオフ状態である。
【0051】
これにより、図2に実線矢印で示すように、電源3から還流回路10に電流が流れる。よって、電流が還流回路10のリアクトル11にエネルギーとして蓄えられる。
【0052】
図3は、還流回路10内で電流が還流する圧電素子駆動回路1の還流モードの動作を示す図である。圧電素子駆動回路1は、リアクトル11に流れる電流が所定値以上の場合に、前記還流モードで動作する。この還流モードでは、図3に示すように、第1スイッチング素子SW1はオン状態であり、第2スイッチング素子SW2及び第3スイッチング素子SW3はオフ状態である。
【0053】
これにより、図3に実線矢印で示すように、還流回路10が閉ループ回路になり、還流回路10内で電流が還流する。このときに、還流回路10内に流れる電流は、一定である。
【0054】
図4は、還流回路10から圧電素子2に対して電流を供給する圧電素子駆動回路1の充電モードの動作を示す図である。この充電モードでは、図4に示すように、第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2及び第3スイッチング素子SW3は、オフ状態である。
【0055】
これにより、図4に実線矢印で示すように、ダイオード13によって還流回路10から圧電素子2に対して一方向に電流が流れる。よって、還流回路10から圧電素子2に対して一定の電流が供給される。還流回路10は、圧電素子2に対して一定の電流を供給する電流源として機能する。
【0056】
図5は、圧電素子2から放電回路20に電流を流す圧電素子駆動回路1の放電モードの動作を示す図である。この放電モードでは、図5に示すように、第1スイッチング素子SW1及び第3スイッチング素子SW3はオン状態であり、第2スイッチング素子SW2はオフ状態である。
【0057】
これにより、図5に実線矢印で示すように、圧電素子2から還流回路10のリアクトル11に電流が流れて、電流がリアクトル11にエネルギーとして蓄えられる。このとき、電流は、ダイオード13を通って圧電素子2からリアクトル11には流れずに、第3スイッチング素子SW3及びダイオード21を通ってリアクトル11に流れる。よって、還流回路10から圧電素子2に供給された電流の一部が還流回路10に戻るため、本実施形態の圧電素子駆動回路1のエネルギー効率を向上することができる。なお、前記放電モードを、圧電素子2からリアクトル11に電流を流す回生モードとも呼ぶ。
【0058】
以上のような圧電素子駆動回路1の動作により、電流源である還流回路10から圧電素子2に一定の電流を供給できるとともに、放電回路20によって圧電素子2の電流を還流回路10のリアクトル11に戻すことができる。
【0059】
図6に、圧電素子駆動回路1において、第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2及び第3スイッチング素子SW3の動作と、リアクトル11に流れる電流I及び圧電素子2の電圧Vpiezoとの関係を示す。圧電素子2の充電時には、第2スイッチング素子SW2及び第3スイッチング素子SW3がオフ状態であり、圧電素子2の放電時には、第2スイッチング素子SW2及び第3スイッチング素子SW3がオン状態である。リアクトル11に流れる電流は、圧電素子2の充放電によって若干変動するが、ほぼ一定である。なお、リアクトル11に流れる電流が所定値よりも小さくなると、第1スイッチング素子SW1はオン状態になって、電源3から還流回路10に電流が供給される。
【0060】
(ワーク搬送装置)
次に、上述の構成を有する圧電素子駆動回路1を備えた装置の一例として、ワークを搬送するワーク搬送装置について説明する。図7は、ワーク搬送装置の一例であるパーツフィーダ100の概略構成を示す図である。
【0061】
パーツフィーダ100は、ボウルフィーダ101と、リニアフィーダ102とを有する。ボウルフィーダ101内に投入されたワークWは、ボウルフィーダ101及びリニアフィーダ102によって、適切姿勢で且つ整列された状態で、リニアフィーダ102の搬送出口に供給される。
【0062】
ボウルフィーダ101は、平面視で円形状であり、且つ、外周側が中央部に対して厚み方向に突出したボウル状である。ボウルフィーダ101は、ボウルフィーダ101内に投入されたワークWを、内面に形成された螺旋搬送部111に沿って登坂させて、リニアフィーダ102に排出する。
【0063】
リニアフィーダ102は、ボウルフィーダ101から排出されたワークWに対して整列搬送部121で整列や方向判別等を行って、適正姿勢のワークWのみを通過させるとともに、不適切なワークWをリターン搬送部122によってボウルフィーダ101にリターンさせる。
【0064】
ボウルフィーダ101は、進行波発生部112を有する。図8は、進行波発生部112の構成を模式的に示す図である。進行波発生部112は、螺旋搬送部111をたわみ振動させる。詳しくは、進行波発生部112は、第1振動部113と、第2振動部114と、第1加振機115と、第2加振機116とを有する。
【0065】
第1振動部113及び第2振動部114は、ボウルフィーダ101の本体底面の円環状の振動領域の一部を構成する。第1振動部113は、前記振動領域のうち第1領域において0°モードで振動する第1振動系を構成する。第2振動部114は、前記振動領域のうち第2領域において90°モードで振動する第2振動系を構成する。第1加振機115は、圧電素子を用いて、第1振動部113を加振する。第2加振機116は、圧電素子を用いて、第2振動部114を加振する。
【0066】
第1加振機115及び第2加振機116によって、第1振動部113及び第2振動部114を加振することにより、位相の異なる定在波が合成される。これにより、ボウルフィーダ101の螺旋搬送部111をたわみ振動させるための進行波が生成される。
【0067】
なお、特に図示しないが、第1加振機115及び第2加振機116をそれぞれ構成する圧電素子は、第1振動部113及び第2振動部114の底面に取り付けられている。
【0068】
本実施形態の構成を有する圧電素子駆動回路1は、前記圧電素子を駆動するために用いられてもよい。
【0069】
リニアフィーダ102は、進行波発生部123を有する。図9は、進行波発生部123の構成を模式的に示す図である。進行波発生部123は、整列搬送部121及びリターン搬送部122をたわみ振動させる。詳しくは、進行波発生部123は、第1振動部124と、第2振動部125と、第1加振機126と、第2加振機127とを有する。
【0070】
第1振動部124及び第2振動部125は、リニアフィーダ102の本体底面の長円状の振動領域の一部を構成する。第1振動部124は、前記振動領域のうち第1領域において0°モードで振動する第1振動系を構成する。第2振動部125は、前記振動領域のうち第2領域において90°モードで振動する第2振動系を構成する。第1加振機126は、圧電素子を用いて、第1振動部124を加振する。第2加振機127は、圧電素子を用いて、第2振動部125を加振する。
【0071】
第1加振機126及び第2加振機127によって、第1振動部124及び第2振動部125を加振することにより、位相の異なる定在波が合成される。これにより、リニアフィーダ102の整列搬送部121及びリターン搬送部122をたわみ振動させるための進行波が生成される。
【0072】
なお、特に図示しないが、第1加振機126及び第2加振機127をそれぞれ構成する圧電素子は、第1振動部124及び第2振動部125の底面に取り付けられている。
【0073】
本実施形態の構成を有する圧電素子駆動回路1は、前記圧電素子を駆動するために用いられてもよい。
【0074】
以上より、本実施形態に係る圧電素子駆動回路1は、圧電素子2に対して充電を行う。圧電素子駆動回路1は、電気的に直列に接続されたリアクトル11及び第1スイッチング素子SW1を有し、電源3から供給される電流を還流させて、圧電素子2に対して一定の電流を供給する電流源として機能する還流回路10と、電源3と還流回路10との間に位置し、還流回路10に流れる電流が一定になるように、電源3から還流回路10に対する電流の供給を制御する第2スイッチング素子SW2と、を備える。還流回路10は、圧電素子2に対して、第1スイッチング素子SW1の駆動によって前記一定の電流を供給可能に接続されている。
【0075】
これにより、リアクトル11を有する還流回路10に流れる電流が一定になるように、第2スイッチング素子SW2の駆動によって、電源3から還流回路10に電流を流すことができる。しかも、第1スイッチング素子SW1の駆動によって、還流回路10から圧電素子2に一定の電流を供給することができる。よって、還流回路10は、圧電素子2に対して一定の電流を供給可能な電流源として機能する。
【0076】
したがって、圧電素子2に対して還流回路10から一定の電流を供給し、第2スイッチング素子SW2の駆動のタイミングに応じて圧電素子2を迅速に所定の電圧まで充電することができる。しかも、還流回路10が電流源として機能することにより、圧電素子2に対して一方向に電流を供給できるため、LC共振による電圧リンギングの発生を防止できる。
【0077】
よって、上述の構成により、電圧リンギングの発生を防止しつつ、圧電素子2を高周波数で駆動可能なように圧電素子2の充電を迅速に行うことができる圧電素子駆動回路1を実現できる。
【0078】
また、本実施形態では、圧電素子駆動回路1は、圧電素子2から還流回路10のリアクトル11に電流を流す放電回路20をさらに備える。
【0079】
これにより、圧電素子2を放電する際に、圧電素子2から還流回路10のリアクトル11に電流を回生することができる。このような圧電素子2から還流回路10への電流の回生によって、還流回路10に流れる電流を一定にすることができる。したがって、圧電素子2を充電する際には、既述の特許文献1のようにリアクトル11を放電させることなく、還流回路10から圧電素子2に対して一定の電流を迅速に供給することができる。
【0080】
上述の構成により、圧電素子2を迅速に充電可能な圧電素子駆動回路1を実現することができる。しかも、圧電素子2からリアクトル11に電流を回生できるため、圧電素子駆動回路1を効率よく駆動させることができる。さらに、上述のような電流の回生によって、放電回路20での損失も少ないため、放熱用のヒートシンクやファンを小型化できる。よって、圧電素子駆動回路1を有する装置を小型化できる。
【0081】
また、本実施形態では、第1スイッチング素子SW1は、還流回路10内で電流を還流させる際にオン状態になる一方、還流回路10から圧電素子2に電流を供給する際にオフ状態になる。第2スイッチング素子SW2は、リアクトル11に流れる電流に基づいて駆動制御される。
【0082】
上述のような第1スイッチング素子SW1の駆動により、還流回路10から圧電素子2に対する電流の供給を制御できるとともに、第2スイッチング素子SW2の駆動により、還流回路10内に流れる電流を制御することができる。
【0083】
よって、上述の構成により、電圧リンギングの発生を防止しつつ、圧電素子2を高周波数で駆動可能なように圧電素子2の充電を迅速に行うことができる圧電素子駆動回路1を実現することができる。
【0084】
本実施形態のパーツフィーダ100(ワーク搬送装置)は、超音波の周波数帯域の駆動周波数によってワークWを搬送する装置である。パーツフィーダ100は、本実施形態の構成を有する圧電素子駆動回路1と、圧電素子駆動回路1によって充電される圧電素子2と、を備える。
【0085】
これにより、高周波数で駆動する圧電素子2によって高周波の振動を発生可能なパーツフィーダ100を実現することができる。
【0086】
[実施形態2]
(圧電素子駆動回路の構成)
図10は、本発明の実施形態2に係る圧電素子駆動回路201の概略構成を示す回路図である。本実施形態の圧電素子駆動回路201は、複数のスイッチング素子SW11~SW14によって構成されるスイッチング回路220を有する点で、実施形態1の圧電素子駆動回路1とは異なる。なお、図10では、圧電素子2の電圧を検出する電圧検出回路の図示を省略する。
【0087】
図10に示すように、圧電素子駆動回路201は、還流回路10と、スイッチング回路220と、第2スイッチング素子SW2と、ダイオード230とを有する。還流回路10及び第2スイッチング素子SW2の構成は、実施形態1と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0088】
スイッチング回路220は、還流回路10と圧電素子2との間に位置し、還流回路10及び圧電素子2に対して電気的に接続されている。スイッチング回路220は、第1スイッチングレグ221と、第2スイッチングレグ222とを有する。第1スイッチングレグ221は、電気的に直列に接続された一対のスイッチング素子SW11,SW12からなる。第2スイッチングレグ222は、電気的に直列に接続された一対のスイッチング素子SW13,SW14からなる。第1スイッチングレグ221と第2スイッチングレグ222とは、電気的に並列に接続されている。
【0089】
第1スイッチングレグ221における一対のスイッチング素子SW11,SW12の中点は、圧電素子2の一方の電極に電気的に接続されている。第2スイッチングレグ222における一対のスイッチング素子SW13,SW14の中点は、圧電素子2の他方の電極に電気的に接続されている。
【0090】
以上より、スイッチング回路220を構成する複数のスイッチング素子SW11~SW14は、ブリッジ回路を構成している。
【0091】
スイッチング回路220は、還流回路10に対して、ダイオード230を介してリアクトル11と第1スイッチング素子SW1との間に電気的に接続されているとともに、第1スイッチング素子SW1とダイオード12との間にも電気的に接続されている。ダイオード230は、還流回路10からスイッチング回路220に電流を流すように構成されている。
【0092】
(圧電素子駆動回路の構成)
次に、上述のような構成を有する圧電素子駆動回路201の動作について、図11から図14を用いて説明する。
【0093】
図11は、電源3から還流回路10内に電流を供給する圧電素子駆動回路201の電流供給モードの動作を示す図である。圧電素子駆動回路201は、リアクトル11に流れる電流が所定値よりも小さい場合に、前記電流供給モードで動作する。この電流供給モードでは、図11に示すように、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2はオン状態である。
【0094】
これにより、図11に実線矢印で示すように、電源3から還流回路10に電流が流れる。よって、電流が還流回路10のリアクトル11にエネルギーとして蓄えられる。
【0095】
図12は、還流回路10内で電流が還流する圧電素子駆動回路201の還流モードの動作を示す図である。圧電素子駆動回路1は、リアクトル11に流れる電流が所定値以上の場合に、前記還流モードで動作する。この還流モードでは、図12に示すように、第1スイッチング素子SW1はオン状態であり、第2スイッチング素子SW2はオフ状態である。
【0096】
これにより、図12に実線矢印で示すように、還流回路10が閉ループ回路になり、還流回路10内で電流が還流する。このときに、還流回路10内に流れる電流は、一定である。
【0097】
図13及び図14は、還流回路10から圧電素子2に対して電流を供給する圧電素子駆動回路201の充電モードの動作を示す図である。図13は、圧電素子2に対して正の電圧を印加して圧電素子2を充電する第1充電モードであり、図14は、圧電素子2に対して負の電圧を印加して圧電素子2を充電する第2充電モードである。
【0098】
前記第1充電モード及び前記第2充電モードでは、図13に示すように、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2は、オフ状態である。前記第1充電モードでは、スイッチング回路220のスイッチング素子SW11,SW14がオン状態であり、スイッチング素子SW12,SW13がオフ状態である。なお、第2スイッチング素子SW2はオン状態であってもよい。
【0099】
これにより、図13に実線矢印で示すように、スイッチング回路220を介して還流回路10から圧電素子2に対して一定の電流が供給される。還流回路10は、圧電素子2に対して一定の電流を供給する電流源として機能する。
【0100】
前記第2充電モードでは、スイッチング回路220のスイッチング素子SW12,SW13がオン状態であり、スイッチング素子SW11,SW14がオフ状態である。これにより、図14に実線矢印で示すように、スイッチング回路220を介して還流回路10から圧電素子2に対して一定の電流が供給される。このときも、還流回路10は、圧電素子2に対して一定の電流を供給する電流源として機能する。
【0101】
上述のように、圧電素子駆動回路201は、スイッチング回路220の動作によって、圧電素子2に対して正の電圧を印加する第1充電モードと、圧電素子2に対して負の電圧を印加する第2充電モードとを実現可能である。上述の構成により、圧電素子2に対して印加する電圧の絶対値を小さくすることができるため、低い耐圧のスイッチング素子を用いることが可能になる。よって、比較的安価なスイッチング素子を用いることができ、圧電素子駆動回路201の製造コストの低減を図れる。
【0102】
また、一般的に、圧電素子は、印加される電圧が大きくなると印加電圧に対する歪の誤差が大きくなる。これに対し、上述の構成により、圧電素子2に対して印加する電圧の絶対値を小さくすることができるため、印加電圧に対する圧電素子2の歪の誤差を小さくすることができる。
【0103】
なお、図13に示すように圧電素子駆動回路201が還流回路10から圧電素子2に電流を流して圧電素子2を充電した場合、圧電素子2の放電時に圧電素子駆動回路201が行う動作は、図14に示す動作である。一方、図14に示すように圧電素子駆動回路201が還流回路10から圧電素子2に電流を流して圧電素子2を充電した場合、圧電素子2の放電時に圧電素子駆動回路201が行う動作は、図13に示す動作である。
【0104】
これにより、圧電素子2から還流回路10のリアクトル11に電流が流れて、電流がリアクトル11にエネルギーとして蓄えられる。すなわち、本実施形態では、還流回路10が、放電回路として機能する。よって、還流回路10から圧電素子2に供給された電流の一部が還流回路10に戻るため、本実施形態の圧電素子駆動回路1のエネルギー効率を向上することができる。なお、前記放電モードを、圧電素子2からリアクトル11に電流を流す回生モードとも呼ぶ。
【0105】
以上のような圧電素子駆動回路201の動作により、電流源である還流回路10から圧電素子2に一定の電流を供給できるとともに、圧電素子2の電流を還流回路10のリアクトル11に戻すことができる。
【0106】
図15に、圧電素子駆動回路201において、第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2、スイッチング素子SW11,SW13の動作と、リアクトル11に流れる電流I、圧電素子2の電圧Vpiezo及び電流Ipiezoとの関係を示す。
【0107】
圧電素子2の第1充電時には、第1スイッチング素子SW1がオフ状態であり、スイッチング素子SW11,SW14がオン状態である(スイッチング素子SW12,SW13はオフ状態)。第1充電後に圧電素子2を放電する際には、第1スイッチング素子SW1がオフ状態であり、スイッチング素子SW12,SW13がオン状態である(スイッチング素子SW11,SW14はオフ状態)。
【0108】
圧電素子2の第2充電時には、第1スイッチング素子SW1がオフ状態であり、スイッチング素子SW12,SW13がオン状態である(スイッチング素子SW11,SW14はオフ状態)。第2充電後に圧電素子2を放電する際には、第1スイッチング素子SW1がオフ状態であり、スイッチング素子SW11,SW14がオン状態である(スイッチング素子SW12,SW13はオフ状態)。
【0109】
図15に示すように、リアクトル11に流れる電流は、圧電素子2の充放電によって若干変動するが、ほぼ一定である。なお、リアクトル11に流れる電流が所定値よりも小さくなると、第2スイッチング素子SW2はオン状態になって、電源3から還流回路10に電流が供給される。
【0110】
本実施形態に係る圧電素子駆動回路201は、ブリッジ回路を構成する複数のスイッチング素子SW11~SW14を有し、複数のスイッチング素子SW11~SW14の駆動によって、還流回路10から圧電素子2への電流の供給及び圧電素子2から還流回路10への放電を制御するスイッチング回路220をさらに備える。
【0111】
これにより、圧電素子2に対して還流回路10から正の電流または負の電流を供給することができる。すなわち、ブリッジ回路を構成する複数のスイッチング素子SW11~SW14を有するスイッチング回路220の駆動によって、還流回路10から圧電素子2に対して、正の電流または負の電流を流すことができる。よって、圧電素子2に対して印加する電圧の絶対値を小さくすることができるため、低い耐圧のスイッチング素子を用いることが可能になる。よって、比較的安価なスイッチング素子を用いることができ、圧電素子駆動回路201の製造コストの低減を図れる。また、圧電素子2に対して印加する電圧の絶対値が小さくなるため、印加する電圧が大きくなると電圧に対する歪の誤差が大きくなる圧電素子2において、印加電圧に対する歪の誤差を小さくすることができる。
【0112】
しかも、圧電素子2に印加する電圧の絶対値を小さくすることができるため、圧電素子駆動回路201を構成する部品として耐電圧の低い部品を用いることができる。
【0113】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0114】
前記実施形態1では、圧電素子駆動回路1は、パーツフィーダ100の圧電素子の駆動に用いられる。実施形態2の圧電素子駆動回路201を、パーツフィーダ100の圧電素子の駆動に用いてもよい。
【0115】
前記各実施形態では、第2スイッチング素子SW2は、電源3から還流回路10に電流を流す際以外、オフ状態である。しかしながら、第2スイッチング素子SW2に対して電気的に直列にダイオードを設けてもよい。これにより、第2スイッチング素子SW2は、電源3から還流回路10に電流を流す際以外で、オン状態であってもよい。よって、第2スイッチング素子SW2のスイッチング回数を減らすことができる。
【0116】
前記実施形態1では、圧電素子駆動回路1は、放電回路20を有する。しかしながら、圧電素子駆動回路は、放電回路を有していなくてもよい。この場合には、別の回路によって圧電素子の放電を行ってもよい。
【0117】
前記各実施形態では、圧電素子駆動回路1,201は、圧電素子2を放電する際に、圧電素子2の電流をリアクトル11にエネルギーとして蓄えている。しかしながら、圧電素子2の電流は、他の放電回路に対して放電されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、圧電素子に対して充電を行う圧電素子駆動回路に利用可能である。
【符号の説明】
【0119】
1、201 圧電素子駆動回路
2 圧電素子
3 電源
10 還流回路
11 リアクトル
12、13、21、230 ダイオード
20 放電回路
30 電圧検出回路
100 パーツフィーダ
101 ボウルフィーダ
102 リニアフィーダ
111 螺旋搬送部
112、123 進行波発生部
113、124 第1振動部
114、125 第2振動部
115、126 第1加振機
116、127 第2加振機
121 整列搬送部
122 リターン搬送部
220 スイッチング回路
221 第1スイッチングレグ
222 第2スイッチングレグ
SW1 第1スイッチング素子
SW2 第2スイッチング素子
SW3 第3スイッチング素子
SW11、SW12、SW13、SW14 スイッチング素子
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15