(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069090
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】浄化装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20230511BHJP
B01F 23/20 20220101ALI20230511BHJP
B01F 25/42 20220101ALI20230511BHJP
【FI】
C02F3/12 A
B01F3/04 Z
B01F5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180701
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】391059883
【氏名又は名称】日本アルシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(72)【発明者】
【氏名】藤野 清治
【テーマコード(参考)】
4D028
4G035
【Fターム(参考)】
4D028BB02
4D028BC03
4D028BC12
4D028BC24
4D028BC26
4D028BD01
4D028BD06
4G035AB15
4G035AC08
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】シンプルな構造でありながら、処理効率および省エネルギー性に優れた浄化装置を提供する。
【解決手段】浄化装置1は、円筒状の浄化槽2と、ポンプ3に接続され、ポンプ3の圧送によって浄化槽2に原水を供給する原水供給管4と、浄化槽2において好気性微生物の作用によって浄化された処理水を放流する放流管7とを備え、原水供給管4の途中に、空気が導入される空気導入口4bが設けられるとともに、空気導入口4bと原水供給管4の供給口との間にスタティックミキサー6が設けられており、スタティックミキサー6によって、原水と空気とが混合されて浄化槽2に供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の浄化槽と、ポンプに接続され、該ポンプの圧送によって前記浄化槽に原水を供給する原水供給管と、前記浄化槽において好気性微生物の作用によって浄化された処理水を放流する放流管とを備える浄化装置であって、
前記原水供給管の途中に、空気が導入される空気導入口が設けられるとともに、該空気導入口と前記原水供給管の供給口との間にスタティックミキサーが設けられており、
前記スタティックミキサーによって、前記原水と前記空気とが混合されて前記浄化槽に供給されることを特徴とする浄化装置。
【請求項2】
前記浄化槽は、槽内の空間を分割する円筒隔壁を有し、前記円筒隔壁の内部と外部は前記円筒隔壁の下端の開口部で連通しており、
前記原水供給管は、前記浄化槽の高さ方向に対して直交する向きで前記円筒隔壁の内部まで挿入され、前記円筒隔壁の内壁面に沿わせて配置されていることを特徴とする請求項1記載の浄化装置。
【請求項3】
前記浄化装置は、前記浄化槽内の被処理水を槽外で循環させる循環管を有するとともに、前記循環管が前記原水供給管に接続され、前記循環管に導入された前記被処理水が前記スタティックミキサーを通過して前記浄化槽に再度供給される循環経路を有しており、
前記円筒隔壁の内部であって、かつ前記原水供給管の上方には、前記浄化槽内の前記被処理水を前記循環管へ導入するための漏斗が設けられており、該漏斗は、開口部を上方に向けて設置されていることを特徴とする請求項2記載の浄化装置。
【請求項4】
前記円筒隔壁の内径寸法は、前記浄化槽の内径寸法の50%~80%であることを特徴とする請求項2または請求項3記載の浄化装置。
【請求項5】
前記円筒隔壁が円錐台形状であることを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれか1項記載の浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浄化装置に関し、特に、好気性微生物による活性汚泥法を利用した浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物化学的酸素要求量(以下、BODという)や浮遊物質濃度(以下、SSという)を高める高濃度の窒素成分やリン成分、有機物質などの汚濁物質が含まれる排水は、河川の汚染や赤潮発生など、環境汚染の原因となっている。従来、このような高濃度の汚濁物質を含む排水の処理方法として、微生物により汚泥を処理する活性汚泥法(生物化学的処理)が広く利用されている。
【0003】
一般に活性汚泥法は、浄化槽内を曝気して好気性微生物の活性を促進させることで、汚濁物質を分解、除去する方法である。活性汚泥法では、好気性微生物に対して、空気をできるだけ多く接触させることが重要である。例えば、特許文献1の生物処理装置では、原水に含まれる有機物をより効率的に処理するため、溶存酸素水に含まれる空気の気泡をポンプによって微細化して、浄化槽に送り込むことで、微生物によって効率よく接触酸化されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の生物処理装置では、浄化槽内で担体を浮遊させ、この担体に活性汚泥を付着増殖させて上澄み水とフロックとを分離させている。しかし、この装置では、浄化槽に浮遊させる担体や、支持床、担体の流出を防止するためのメッシュ板などが必要となり、装置の構造が複雑になりやすい。また、空気の気泡を微細化させ、また被処理水に溶解させるために、撹拌用のポンプを用いているが、省エネルギー性の面でも改善の余地がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、シンプルな構造でありながら、処理効率および省エネルギー性に優れた浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の浄化装置は、円筒状の浄化槽と、ポンプに接続され、該ポンプの圧送によって上記浄化槽に原水を供給する原水供給管と、上記浄化槽において好気性微生物の作用によって浄化された処理水を放流する放流管とを備える浄化装置であって、上記原水供給管の途中に、空気が導入される空気導入口が設けられるとともに、該空気導入口と上記原水供給管の供給口との間にスタティックミキサーが設けられており、上記スタティックミキサーによって、上記原水と上記空気とが混合されて上記浄化槽に供給されることを特徴とする。
【0008】
上記浄化槽は、槽内の空間を分割する円筒隔壁を有し、上記円筒隔壁の内部と外部は上記円筒隔壁の下端の開口部で連通しており、上記原水供給管は、上記浄化槽の高さ方向に対して直交する向きで上記円筒隔壁の内部まで挿入され、上記円筒隔壁の内壁面に沿わせて配置されていることを特徴とする。
【0009】
上記浄化装置は、上記浄化槽内の被処理水を槽外で循環させる循環管を有するとともに、上記循環管が上記原水供給管に接続され、上記循環管に導入された上記被処理水が上記スタティックミキサーを通過して上記浄化槽に再度供給される循環経路を有しており、上記円筒隔壁の内部であって、かつ上記原水供給管の上方には、上記浄化槽内の上記被処理水を上記循環管へ導入するための漏斗が設けられており、該漏斗は、開口部を上方に向けて設置されている。
【0010】
上記円筒隔壁の内径寸法は、上記浄化槽の内径寸法の50%~80%であることを特徴とする。
【0011】
上記円筒隔壁が円錐台形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の浄化装置は、浄化槽と、原水供給管と、放流管とを備え、原水供給管の途中に、空気が導入される空気導入口が設けられるとともに、空気導入口と原水供給管の供給口との間にスタティックミキサーが設けられており、そのスタティックミキサーによって、原水と空気とが混合されて浄化槽に供給されるので、別途の動力源を用いなくても、比較的微細な気泡を生成できるとともに高濃度酸素水が得られることで、浄化槽内で好気性微生物の活性を促進できる。これにより、シンプルな構造でありながら、処理効率および省エネルギー性に優れた浄化装置になる。
【0013】
浄化槽は、槽内の空間を分割する円筒隔壁を有し、円筒隔壁の内部と外部は円筒隔壁の下端の開口部で連通しており、原水供給管は、浄化槽の高さ方向に対して直交する向きで円筒隔壁の内部まで挿入され、円筒隔壁の内壁面に沿わせて配置されているので、供給口から放出された高濃度酸素水が内壁面のRに沿って流れ、円筒隔壁の内部で旋回流が生じる。これにより、槽内の被処理水を撹拌することができ、好気性微生物の活性が促進され、処理効率がより向上する。また、浄化槽内を撹拌する撹拌装置を設けなくてもよいので、省エネルギー性にも優れる。
【0014】
浄化装置は、浄化槽内の被処理水を槽外で循環させる循環管を有するとともに、循環管が原水供給管に接続され、循環管に導入された被処理水がスタティックミキサーを通過して浄化槽に再度供給される循環経路を有しているので、浄化槽を大型化しなくても処理能力を向上させることができる。さらに、円筒隔壁の内部であって、かつ原水供給管の上方には、浄化槽内の被処理水を循環管へ導入するための漏斗が設けられており、該漏斗は、開口部を上方に向けて設置されているので、旋回流によって上昇した被処理水が循環管へ導入されやすい。これにより、被処理水の循環効率を向上でき、ひいては処理効率の向上を図ることができる。
【0015】
円筒隔壁が円錐台形状であるので、円筒隔壁の外部における活性汚泥の沈降速度を速くすることができ、処理効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の浄化装置の一実施形態の概略図である。
【
図4】浄化槽における被処理水および活性汚泥の循環を示す図である。
【
図5】本発明の浄化装置の他の実施形態の浄化槽の高さ方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の浄化装置の一実施形態を
図1に基づいて説明する。
図1は浄化装置の概略図である。本発明の浄化装置を用いた排水処理方法は、浄化槽内を曝気して好気性微生物の活性を促進させることで、排水中の汚濁物質を分解、除去する方法である。浄化装置1に供給される原水は、下水、産業排水、工業排水などの汚泥水でもよく、また、嫌気性微生物により懸濁物が沈殿除去された一次処理水などでもよい。
【0018】
図1に示すように、浄化装置1は、円筒状の浄化槽2と、ポンプ3と、浄化槽2に原水を供給する原水供給管4と、浄化槽2において好気性微生物の作用によって浄化された処理水を放流する放流管7と、浄化槽2内の被処理水を槽外で循環させる循環管10と、活性汚泥を排出する排出管11とを有する。本発明において、浄化槽2の内容積は限定するものではなく、小型から大型まで適応できる。内容積は、例えば1m
3~30m
3であり、好ましくは1m
3~15~m
3である。
【0019】
原水供給管4はポンプ3に接続されており、ポンプ3の圧送によって供給口4aから原水を浄化槽2に供給する。
図1に示すように、原水供給管4の途中には、空気管5に接続された空気導入口4bが設けられている。空気導入口4bから空気が導入されることで、空気導入口4bよりも下流側では、原水と空気とが混合される。なお、ブロア(図示省略)によって空気を送気する構造としてもよく、原水供給管4を管内に空気が吸気される構造としてもよい。
【0020】
本発明では、原水供給管4において空気導入口4bと供給口4aとの間に、スタティックミキサー6を設けたことを特徴としている。このスタティックミキサー6によって原水と空気とを撹拌、混合して、比較的微細気泡を生成するとともに酸素を溶解させて高濃度酸素水としている。この微細気泡を有する高濃度酸素水が浄化槽2に供給されることで、好気性微生物の活性を促進させ、処理効率が向上する。この微細気泡の大きさは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは、10μm~50μmである。なお、気泡の大きさがナノサイズ(1μm未満)であると、気泡自体が安定化するため溶け込みにくくなる。
【0021】
本発明の浄化装置では、被処理水の供給に際して、従来のような動的な撹拌手段を設けずに、静的な撹拌手段であるスタティックミキサー6を設けることでエネルギー消費を抑えることができる。また、スタティックミキサー6を原水供給管4から着脱可能に構成することで、動的な撹拌手段に比べて、洗浄やメンテナンスの手間も容易になる。
【0022】
スタティックミキサーは、例えば、長方形の板を180度ねじった形のエレメントを1以上有する構造である。スタティックミキサー内では、原水中の気泡が微細化され、接触界面が大きくなることで、空気の溶解効率などが高まり、高濃度酸素水になる。スタティックミキサーとしては、周知のスタティックミキサーを用いることができる。
【0023】
一般に、20℃、1気圧の大気圧下での飽和溶存酸素量は8.84mg/Lである。スタティックミキサーを通過して供給口4aから放出される高濃度酸素水の溶存酸素量を好適な範囲とするため、原水と空気とを適切な割合で混合させることが好ましい。なお、原水の流量は、流量計F1、F2によって測定でき、空気吹込量は、空気管5に設けられた流量計(図示省略)などによって測定できる。
【0024】
図1において、浄化槽2は、底面となる基盤2aに円筒形側面2bおよび上面部2cからなる真円筒状の外観を有している。円筒形側面2bには、原水供給管4、放流管7、循環管10、および排出管11がそれぞれ接続されている。円筒形側面2bと各管の接続位置は、浄化槽2の高さ方向において、上から放流管7、循環管10、原水供給管4、排出管11の順になっている。循環管10および排出管11は浄化槽外で連結され、更にポンプ3に接続されている。ポンプ3の作動によって、浄化槽内の被処理水の循環や、活性汚泥の排出を行うことができる。
【0025】
次に、浄化槽の内部の構造について、
図2および
図3を参照して説明する。
図2は浄化槽の高さ方向断面図であり、
図3は浄化槽内を上から見た平面図である。
図2に示すように、浄化槽2は、槽内の空間を分割する円筒隔壁8を有している。円筒隔壁8は、浄化槽2の上面部2cから吊り下げられて固定されている。円筒隔壁8の上端は閉塞し、下端は開口部8aによって開口している。浄化槽2の槽内の空間は、円筒隔壁8によって内部(円筒内槽2d)と外部(円筒外槽2e)に分割され、円筒内槽2dと円筒外槽2eは開口部8aで連通している。
【0026】
円筒内槽2dの下部には水平方向に原水供給管4が配置されている。原水供給管4は、その供給口4aが横向きに配置されている。供給口4aの高さ位置(高さ方向の中央位置)は、浄化槽2の基盤2aから上面部2cまでの高さをHとすると、基盤2aから0.1H~0.3Hの高さに設置されることが好ましい。
【0027】
原水供給管4aの上方であって円筒内槽2dの上部には、漏斗9および循環管10が配置されている。漏斗9は円形状の開口部9aを有しており、その開口部9aに向けて拡径した形状である。円筒内槽2dにおいて、漏斗9は開口部9aを上方に向けて設置されている。開口部9aの高さ位置は、槽高さHに対して基盤2aから0.8Hよりも高い位置に設置されることが好ましい。
【0028】
浄化槽2の内径寸法φaは、特に限定されないが、例えば100~300cmである。円筒隔壁8の内径寸法φbは、浄化槽2の内径寸法φaの50%~80%であることが好ましい。また、漏斗9の開口部9aの開口寸法φcは、円筒隔壁8の内径寸法φbの50%~80%であることが好ましい。特に、円筒隔壁8の内径寸法φbが、浄化槽2の内径寸法φaの60%~80%であり、かつ、漏斗9の開口部9aの開口寸法φcが、円筒隔壁8の内径寸法φbの60%~80%であることがさらに好ましい。
【0029】
円筒外槽2eの上部には、全周にわたって配設された溝状の回収路12が設けられている。回収路12は放流管7に接続されている。側壁12aを超えて回収路12に導入された処理水は、放流管7から放流される。
【0030】
円筒外槽2eの下部内面は、底部に向かって縮径する傾斜面2fとなっている。浄化槽2の高さ方向断面における傾斜面2fの傾斜角は、例えば20度から60度である。また、円筒隔壁8の下端は、傾斜面2fに対して接近して配置されている。この接近して配置されている傾斜面部分において汚泥沈殿部が形成され、汚泥濃縮がなされるとともに処理水が分離される。また、円筒隔壁8の下端を接近して配置することにより、汚泥の急速強制沈降が可能になる。なお、傾斜面2fに対する円筒隔壁8の下端の距離の大小は、汚泥の種類および量により調節することが好ましい。
【0031】
円筒外槽2eの底部に堆積した活性汚泥は、排出管11より槽外へ排出される。排出管11は、活性汚泥の排出を容易にするため、排出口11aを上向きにして配置されている。
【0032】
図3は、浄化槽内を上から見た平面図である。
図3に示すように、漏斗9、円筒隔壁8、回収路12、および浄化槽2は、同心円状に配置されている。原水供給管4および循環管10は、浄化槽2の円筒形側面2bおよび円筒隔壁8を貫通して円筒隔壁8の内部まで挿入されており、
図3において原水供給管4と循環管10は互いに平行になっている。原水供給管4は、その端部が円筒隔壁8の内壁面に沿わせて配置されている。この配置により、供給口4aから放出された高濃度酸素水が内壁面のRに沿って流れ、円筒内槽2dにて旋回流が生じる。円筒内槽2dの被処理水は、この高濃度酸素水と混ざることで溶存酸素量が比較的高くなり、さらに旋回流で撹拌されることで、好気性微生物の活性がより促進される。
【0033】
ここで、一般的な浄化槽では、槽内に撹拌装置が設けられており、その撹拌装置による撹拌によって好気性微生物の活性を促進させている。これに対して、本発明の浄化槽は、スタティックミキサーによって高濃度酸素水を生成させるとともに、その高濃度酸素水の放出によって旋回流を発生させることで、動的な撹拌装置を設けなくても好気微生物処理反応の効率を向上させることができる。
【0034】
以下、浄化装置1を用いる排水処理方法について
図4により説明する。
図4は、浄化槽2における被処理水および活性汚泥の流路を説明するための図である。
図4において、斜線部分は活性汚泥の濃度が高い部分であり、矢印は被処理水および活性汚泥の循環方向を表す。
【0035】
図4において、V1~V8は、原水や循環水の流路および流量を調節するためのバルブであり、F1~F2は流量計である。バルブV1~V4は原水供給管4に設けられ、バルブV5~V7は循環管10に設けられ、バルブV8は排出管11に設けられている。なお、排出管11は途中で循環管10に接続されている。
図4の浄化装置1では、流量計F1~F2によって測定された原水の流量などに基づいて、各バルブV1~V8の開閉が行われる。バルブの開閉は流量制御装置(図示省略)によって自動で実施されてもよい。
【0036】
図4の浄化装置1には、例えば、ウェジワイヤースクリーンなどで固形分が分離された汚濁物質を含む原水が導入される。なお、導入される原水のBODおよびSSは、あらかじめ測定しておくことが好ましい。たとえば、原水として、BODが800mg/L以上、化学的酸素要求量(以下、CODという)が300mg/L以上、全窒素量(以下、T-Nという)が40mg/L以上含有する原水が挙げられる。また、ノルマルヘキサン抽出油分濃度が50mg/L以上の範囲を含む原水の処理にも好適である。
【0037】
原水供給管4の一部はポンプ3に接続されており、バルブV1~V4を開いた状態でポンプ3を作動させることにより、原水が浄化槽2内に供給される。この際、原水は、スタティックミキサー6にて空気と撹拌、混合され、高濃度酸素水となって供給口4aから放出される。空気管5から導入される空気量は、例えば原水の流量に基づいて調整される。
【0038】
上述したように、原水供給管4は、浄化槽2の高さ方向に対して直交する向きで浄化槽2に挿入され、円筒隔壁8の内壁面に沿わせて配置されている(
図3参照)。これにより、供給口4aから放出された高濃度酸素水は円筒隔壁8の内壁面のRに沿って流れ、
図4のような旋回流が発生する。旋回流は、比較的高い溶存酸素状態を有しながらゆっくりと上昇して、被処理水中の好気性微生物と次々と接触して、好気微生物処理反応である硝化反応が進行する。この反応によって生じた活性汚泥は、一部が浄化槽2の底部に沈降する。一方、円筒内槽2d内の被処理水(浄化槽2で一度処理された被処理水)および活性汚泥の一部は、循環水として、漏斗9から循環管10に導入される。
【0039】
循環管10はポンプ3を介して原水供給管4と接続されており、循環水は、スタティックミキサー6を通過して浄化槽2に再度供給される。バルブV5~V7、V2~V4を開いた状態でポンプ3を作動させることで、循環水が循環される。循環水には好気性微生物が含まれているため、この循環水を浄化槽2に戻すことによって好気性微生物の活性をより促進させることができる。また、循環水はスタティックミキサー6を通過するため、高濃度酸素水となって再度供給される。
【0040】
なお、循環水を循環させる際には、原水供給管4のバルブV1を開いて循環水と原水とを混合させてもよい。混合する原水の流量は、流量計F1、F2の測定値などに基づいて調整される。
【0041】
供給口4aから放出された、循環水に基づく高濃度酸素水は、再度、旋回流を生成し、円筒内槽2dにおいて好気性微生物反応が効率的に進行する。そして、円筒内槽2dの被処理水の一部は、円筒隔壁8の開口部8aから円筒外槽2eに流入して上昇していく。円筒外槽2eでは、酸素の供給が断たれ、好気性微生物の反応が止まることで、活性汚泥はゆっくりと沈降して底部に堆積する。活性汚泥の沈降によって浄化された処理水は、回収路12に溢れ出る。浄化槽2では、円筒隔壁8によって槽内の上部が分割されているため、浄化された処理水が再度、被処理水と混ざることを防止できる。最終的に、処理水は、放流管7から放流され、施設内のトイレの洗浄水などとして再利用される。また、必要に応じて、河川や下水道などに放流されてもよい。
【0042】
浄化槽2の底部に堆積した活性汚泥は、ポンプ3によって排出管11から排出される。この活性汚泥は、浄化装置1外に排出してもよく、また、浄化槽2に再度供給してもよい。
【0043】
浄化槽2には活性汚泥が固形分換算で5,000~12,000mg/L入れられており、硝化反応が進行するにつれ、被処理水のpHなどが低下する。被処理液のpH、酸化還元電位(以下、ORPという)および溶存酸素量(以下、DOという)は処理水質測定装置(図示省略)で測定され、これらの値に基づき、原水の供給量や被処理水の循環量が定められる。具体的には、ORPを、硝化反応がなされる好気反応処理部(円筒内槽2d)において+10mV以上に維持できるように空気吹込量などを調整して被処理水を循環させる。
【0044】
本発明に係る排水処理方法の処理の場合は、少なくともBODが800mg/L以上、T-N40mg/L以上の原水であっても、処理水のBODは通常極めて低く20mg/L以下、一般的には放流水の水質として、BODが10mg/L以下での運転ができる。
【0045】
本発明の浄化装置は、
図1~
図4に示す実施形態に限定されない。
図5には、浄化装置の他の実施形態を示す。
図5は、浄化槽2’の高さ方向断面図である。
図5の浄化槽2’は、円筒隔壁8の構成以外は、
図2の浄化槽2と同様である。
図2の浄化槽2では円筒隔壁8が上面および下面が同一面積の直円筒状であったのに対して、
図5の浄化槽2’の円筒隔壁8は、下面の面積が上面の面積よりも大きい円錐台形状となっている。
【0046】
図5に示すように、円筒隔壁8が円錐台形状の場合、円筒外槽2eにおける被処理水の液面Aの表面積は、直円筒状の場合(
図2参照)に比べて大きくなる。活性汚泥の沈降速度は、液面Aの表面積が大きくなるほど速くなる。そのため、円筒隔壁8を円錐台形状にすることで、円筒外槽2eでの活性汚泥の沈降速度が速くなり、結果的に排水の処理速度を速くすることができる。また、円筒隔壁8が円錐台形状の場合、円筒内槽2dの内径は上方に向けて小さくなっている。この勾配によって円筒内槽2dで生じる旋回流が維持されやすくなり、円筒内槽2dでの撹拌を効率的に行うことができる。また、
図5に示すように、円筒隔壁8の内径が変化する場合であっても、当該内径寸法は、浄化槽2’の内径寸法の50%~80%の範囲内で変化することが好ましい。
【0047】
また、本発明に係る排出処理方法は、従来の排水処理方法と組み合わせて行うことができる。たとえば、既設の嫌気脱窒槽と本発明の浄化装置を連結させて、嫌気性微生物によって処理された一次処理水を原水として、本発明の浄化装置に供給することにより、より効果的に汚泥負荷の硝化ならびに脱窒・脱リンを行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の浄化放置は、シンプルな構造でありながら、処理効率および省エネルギー性に優れた浄化装置であるので、例えば、ビルやレストランなどの施設における浄化装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 浄化装置
2、2’ 浄化槽
2a 基盤
2b 円筒形側面
2c 上面部
2d 円筒内槽
2e 円筒外槽
2f 傾斜面
3 ポンプ
4 原水供給管
4a 供給口
4b 空気導入口
5 空気管
6 スタティックミキサー
7 放流管
8 円筒隔壁
8a 開口部
9 漏斗
9a 開口部
10 循環管
11 排出管
12 回収路