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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069104
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180721
(22)【出願日】2021-11-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000140694
【氏名又は名称】株式会社加藤建設
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩邦
(72)【発明者】
【氏名】倉田 実
(72)【発明者】
【氏名】牧野 貴哉
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB05
2D040CA01
2D040CB03
2D040CD01
2D040EA27
2D040FA13
2D040FA17
(57)【要約】
【課題】混合撹拌処理後の処理土の流動値を適時把握可能として改良体の品質のばらつきや施工性の低下を抑制することができる地盤改良方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る地盤改良方法は、カメラCMによって混合撹拌処理後の処理土SLの表面を撮影し、この撮影した混合撹拌処理後の処理土SLの流動性を演算装置PUにより数値化処理すると共に、この数値化処理した混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xと、予め定められた管理流動値BXとの差分を演算することにより、混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xが管理流動値BXの範囲内となるよう水/固化材比を補正する。これにより、予め処理土を採取しておいてモルタルフロー試験等の予備試験を行うことで処理土SLの流動値を測定する従来の地盤改良方法と比べて、試験者の熟練度、測定機器の整備状況、処理土の採取箇所による測定値の誤差等の発生を抑制できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンとして機能する建設機械のブーム及びアームの先端部に上下方向へ周回移動する混合撹拌翼を有する混合撹拌ヘッドを備えた地盤改良装置により、原地盤を掘削しながら原土とスラリ状固化材を混合撹拌して前記原地盤の強度の増加を図る地盤改良方法において、
前記地盤改良装置は、
スラリ状固化材を圧送する第1ポンプと、水を圧送する第2ポンプとからなる2系統を有し、前記第1ポンプから圧送されるスラリ状固化材と、前記第2ポンプから圧送される水と、を合流させてスラリ状固化材と水の混合比率である水/固化材比を調整可能に構成されたポンプと、
混合撹拌処理後の処理土の表面を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した前記混合撹拌処理後の処理土の流動性を数値化処理し、この数値化処理された前記混合撹拌処理後の処理土の流動値と、前記混合撹拌処理後の処理土の流動値を管理する手段として予め定められた管理流動値と、の差分を演算する演算装置と、
を備え、
前記混合撹拌処理後の処理土の流動値が前記管理流動値の範囲外となった場合に、前記第1ポンプから圧送されるスラリ状固化材量と前記第2ポンプから圧送される水量のいずれか一方、又は前記第1ポンプから圧送されるスラリ状固化材量と前記第2ポンプから圧送される水量の両方を調整することにより、前記混合撹拌処理後の処理土の流動値が前記管理流動値の範囲内となるように前記水/固化材比を補正する、
ことを特徴とする地盤改良方法。
【請求項2】
請求項1に記載の地盤改良方法において、
前記第1ポンプから圧送されるスラリ状固化材量は固定されていて、
前記水/固化材比の補正は、前記第2ポンプから圧送される水量を増減させることによって行う、
ことを特徴とする地盤改良方法。
【請求項3】
請求項2に記載の地盤改良方法において、
前記地盤改良装置は、前記演算装置の演算結果に基づき前記第2ポンプを駆動制御し、前記第2ポンプから圧送される水量を自動的に増減させる、
ことを特徴とする地盤改良方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の地盤改良方法において、
前記地盤改良装置は、運転室内に表示装置をさらに有し、
前記演算装置により演算された前記混合撹拌処理後の処理土の流動値は、前記管理流動値と共に前記表示装置に表示される、
ことを特徴とする地盤改良方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の地盤改良方法において、
前記地盤改良装置は、運転室内に、前記第2ポンプから圧送される水量を増減する水量増減ボタンを有する、
ことを特徴とする地盤改良方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の地盤改良方法において、
前記混合撹拌翼は、チェーンを介して周回駆動され、
前記混合撹拌処理後の処理土の流動値は、前記カメラにより撮影した前記処理土の移動速度と、前記チェーンの移動速度との相関により求められる、
ことを特徴とする地盤改良方法。
【請求項7】
請求項6に記載の地盤改良方法において、
前記処理土の移動速度は、前記処理土の移動に係る前記カメラの撮影時間と、前記カメラにより撮影された映像のうち所定の特徴点からの前記処理土の移動量と、に基づいて算出される、
ことを特徴とする地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントやセメント系固化材と水とを混練りしたスラリ状固化材を原地盤中に吐出させて撹拌混合することにより原地盤の強度増加を図る地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原土とスラリ状固化材を混合撹拌処理して原地盤の強度増加を図る従来の地盤改良方法としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
地盤改良の施工に際しては、処理土を採取して予備試験を行うことで、水/固化材比や固化材添加量等を決定する。ところが、現位置における処理土の土質性状は必ずしも前記予備試験における土質性状と同じとは言えず、むしろ変化していることのほうが多い。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の地盤改良方法では、混合撹拌処理後における処理土の流動値(例えば「テーブルフロー値」)を測定し、この流動値が予め定めた管理流動限界値を超えている場合には、当該スラリ状固化材の水/固化材比を増減させて混合撹拌処理後における安定処理土の流動値が常に前記管理流動限界値の範囲内に収まるように管理することで、安定した施工性や安定処理土の品質を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006―63786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の地盤改良方法によれば、混合撹拌処理後の処理土の流動値を、モルタルフロー試験機等を用いて測定している。このため、試験者の熟練度や測定機器の整備状況、処理土の採取箇所によって測定値に誤差が生じてしまう点で、改善の余地が残されていた。
【0007】
また、前記処理土の流動値の測定に要する労力や時間を鑑みれば、1日に数回もの試験を実施することは困難であり、混合撹拌処理後における処理土の流動値を把握することは困難である。このため、施工中の土層の変化に対して水/固化材比の変更の対応が遅れ、造成される改良体の品質のばらつきや施工性の低下を招くおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、前記従来の地盤改良方法の技術的課題に鑑みて案出されたものであって、混合撹拌処理後の処理土の流動値を適時把握可能として改良体の品質のばらつきや施工性の低下を抑制することができる地盤改良方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、その一態様として、ベースマシンとして機能する建設機械のブーム及びアームの先端部に上下方向へ周回移動する混合撹拌翼を有する混合撹拌ヘッドを備えた地盤改良装置により、原地盤を掘削しながら原土とスラリ状固化材を混合撹拌して前記原地盤の強度の増加を図る地盤改良方法において、前記地盤改良装置は、スラリ状固化材を圧送する第1ポンプと、水を圧送する第2ポンプとからなる2系統を有し、前記第1ポンプから圧送されるスラリ状固化材と、前記第2ポンプから圧送される水と、を合流させてスラリ状固化材と水の混合比率である水/固化材比を調整可能に構成されたポンプと、混合撹拌処理後の処理土の表面を撮影するカメラと、前記カメラで撮影した前記混合撹拌処理後の処理土の流動性を数値化処理し、この数値化処理された前記混合撹拌処理後の処理土の流動値と、前記混合撹拌処理後の処理土の流動値を管理する手段として予め定められた管理流動値と、の差分を演算する演算装置と、を備え、前記混合撹拌処理後の処理土の流動値が前記管理流動値の範囲外となった場合に、前記第1ポンプから圧送されるスラリ状固化材量と前記第2ポンプから圧送される水量のいずれか一方、又は前記第1ポンプから圧送されるスラリ状固化材量と前記第2ポンプから圧送される水量の両方を調整することにより、前記混合撹拌処理後の処理土の流動値が前記管理流動値の範囲内となるように前記水/固化材比を補正する。
【0010】
なお、前記混合撹拌処理後の処理土の流動値と前記管理流動値との差分の演算については、混合撹拌処理時に常時行ってもよく、また、例えば施工範囲の切り替わり時など、当該演算が必要なタイミングで適時行ってもよく、改良する地盤や改良体の品質等に応じて任意に決定することができる。
【0011】
また、前記第1ポンプから圧送されるスラリ状固化材量の調整、及び前記第2ポンプから圧送される水量の調整については、前記演算装置の演算結果に基づき、前記地盤改良装置が自動で行ってもよく、また、例えば前記地盤改良装置を操作する作業者(オペレータ)が手動で行ってもよい。
【0012】
また、前記作業者(オペレータ)が手動により前記第1、第2ポンプの調整を行う場合、前記第1、第2ポンプの吐出量を増減するための手段(例えばボタン)は、前記地盤改良装置の運転室に設けられていてもよく、また、前記第1、第2ポンプの設置箇所に前記第1、第2ポンプに付随して設けられていてもよい。
【0013】
このように、本発明では、カメラによって混合撹拌処理後の処理土の表面を撮影し、この撮影した混合撹拌処理後の処理土の流動性を演算装置により数値化処理すると共に、この数値化処理した混合撹拌処理後の処理土の流動値と、予め定められた管理流動値との差分を演算することで、混合撹拌処理後の処理土の流動値が管理流動値の範囲内となるように水/固化材比を補正することとした。この方法によれば、混合撹拌処理後の処理土の流動値を演算装置により演算し、水/固化材比を補正することが可能となる。これにより、予め処理土を採取しておいてモルタルフロー試験等の予備試験を行うことによって処理土の流動値を測定する従来の地盤改良方法と比べて、試験者の熟練度、測定機器の整備状況、処理土の採取箇所による測定値の誤差等の発生を抑制することができる。
【0014】
また、前記従来の方法では、1日に何回も試験を実施することができないため、混合撹拌処理後の処理土の流動値を適時補正することができず、施工中の土層の変化に対して水/固化材比の調整の対応が遅れてしまうおそれがあった。これに対し、本発明では、混合撹拌処理後の処理土の表面を撮影することで、当該混合撹拌処理後の処理土の流動値を監視することが可能となる。これにより、混合撹拌処理後の処理土の流動値が管理流動値の範囲内となるよう水/固化材比を適時補正することができ、造成される改良体の品質のばらつきや施工性の低下を抑制することができる。
【0015】
また、前記地盤改良方法の別の態様として、前記第1ポンプから圧送されるスラリ状固化材量は固定されていて、前記水/固化材比の補正は、前記第2ポンプから圧送される水量を増減させることによって行う、ことが望ましい。
【0016】
本発明によれば、第1ポンプから圧送されるスラリ状固化材量は固定として、第2ポンプから圧送される水量を増減させることにより、スラリ状固化材の水/固化材比の補正を行う。これにより、水/固化材比の補正により固化材量が減少するおそれがなく、原地盤の全領域において、規定量の固化材が含まれることとなり、改良体の必要な強度及び良好な品質を確保することができる。また、水/固化材比の補正により固化材量が増加することもないため、必要以上の固化材を消費せず、不経済を招来するおそれもない。
【0017】
また、前記地盤改良方法のさらに別の態様として、前記地盤改良装置は、前記演算装置の演算結果に基づき前記第2ポンプを駆動制御し、前記第2ポンプから圧送される水量を自動的に増減させる、ことが望ましい。
【0018】
本発明によれば、演算装置の演算結果に基づいて第2ポンプから圧送される水量を自動的に増減させる。これにより、本発明では、演算装置の演算結果に基づいて作業者(オペレータ)が手動で第2ポンプの送水量を調整する必要がなく、作業者(オペレータ)の負担を軽減することができる。
【0019】
また、前記地盤改良方法のさらに別の態様として、前記地盤改良装置は、運転室内に表示装置をさらに有し、前記演算装置により演算された前記混合撹拌処理後の処理土の流動値は、前記管理流動値と共に前記表示装置に表示される、ことが望ましい。
【0020】
本発明によれば、演算装置により演算された混合撹拌処理後の処理土の流動値が、管理流動値と共に運転室の表示装置に表示される。このため、作業者(オペレータ)は運転室において、混合撹拌処理後の処理土の流動値が管理流動値の範囲内にあるか否か、また混合撹拌処理後の処理土の流動値が管理流動値からどれだけ乖離しているか、を監視することができる。また、第2ポンプを手動で制御する場合には、補正量が的確に把握されることで、第2ポンプの送水量を適切に増減させることができる。
【0021】
また、前記地盤改良方法のさらに別の態様として、前記地盤改良装置は、運転室内に、前記第2ポンプから圧送される水量を増減する水量増減ボタンを有する、ことが望ましい。
【0022】
本発明によれば、運転室内に、第2ポンプから圧送される水量を増減する水量増減ボタンが設けられている。このため、第2ポンプから圧送される水量を手動で増減する場合は勿論、当該水量を自動で増減する場合も水量増減ボタンにより微調整することが可能となる。これにより、混合撹拌処理後の処理土の流動値を所望の値に調整可能となり、造成される改良体の品質のばらつきや施工性の低下をより効果的に抑制することができる。
【0023】
また、前記地盤改良方法のさらに別の態様として、前記混合撹拌翼は、チェーンを介して周回駆動され、前記混合撹拌処理後の処理土の流動値は、前記カメラにより撮影した前記処理土の移動速度と、前記チェーンの移動速度との相関により求められる、ことが望ましい。
【0024】
本発明によれば、混合撹拌処理後の処理土の流動値を、カメラにより撮影した処理土の移動速度と、混合撹拌翼を駆動するチェーンの移動速度との相関によって求める。このように、カメラで撮影した処理土の移動速度に加えて、混合撹拌処理後の処理土の流動値に影響を及ぼす混合撹拌翼の移動速度、すなわちチェーンの移動速度を加味して混合撹拌処理後の処理土の流動値を求めることにより、当該混合撹拌処理後の処理土の流動値をより的確に算出することができる。
【0025】
また、前記地盤改良方法のさらに別の態様として、前記処理土の移動速度は、前記処理土の移動に係る前記カメラの撮影時間と、前記カメラにより撮影された映像のうち所定の特徴点からの前記処理土の移動量と、に基づいて算出される、ことが望ましい。
【0026】
本発明によれば、処理土の移動速度は、処理土の移動に係るカメラの撮影時間と、カメラ撮影された映像のうち所定の特徴点からの処理土の移動量と、に基づいて算出する。このように、本発明では、カメラ撮影された映像のうち、例えば処理土に混じる石など、他の箇所と比べて特徴的な目印となる箇所を特定し、当該特徴点からの処理土の移動量に基づき処理土の移動速度を算出することで、何ら特徴のない箇所における処理土の移動量に基づいて処理土の移動速度を算出する場合と比べて、処理土の移動量をより的確に測定でき、処理土の移動速度をより的確に算出することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、混合撹拌処理後の処理土の流動値を演算装置により適時演算して、水/固化材比を補正することが可能となる。これにより、予め処理土を採取しておいてモルタルフロー試験等の予備試験を行うことにより処理土の流動値を測定する従来の方法と比べて、試験者の熟練度、測定機器の整備状況、処理土の採取箇所による測定値の誤差の発生等を抑制することができる。
【0028】
また、本発明では、混合撹拌処理後の処理土の表面を撮影することにより、当該混合撹拌処理後の処理土の流動値を監視することが可能となる。これにより、混合撹拌処理後の処理土の流動値が管理流動値の範囲内となるように水/固化材比を適時補正し、造成される改良体の品質のばらつきや施工性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る地盤改良装置の構成を示す概略図である。
図2図1に示すトレンチャの拡大断面図である。
図3図1に示す管理モニターの画像図である。
図4図1に示す演算装置の構成を現したブロック図である。
図5図1に示すカメラにより撮影された映像が出力された映像モニターの画像図である。
図6】TF値(実測流動値)と処理土の移動速度の相関を示すグラフである。
図7】TF値(管理流動値)と改良深度の関係を示すグラフである。
図8】室内配合試験によるTF値と水/固化材比の相関を示すグラフである。
図9図4に示すブロック図に基づき実行される演算処理のフローチャートである。
図10】第2ポンプから吐出される水量の補正制御状態を示す管理モニターの画像図であって、(a)は水量を減少補正を開始した状態を示し、(b)は水量の減少補正により実測TF値が計画TF値に合致した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明に係る地盤改良方法の実施形態を、図面に基づいて詳述する。
【0031】
(地盤改良装置の構成)
図1は、本実施形態に係る地盤改良装置の構成を現した概略図を示している。また、図2は、図1に示すトレンチャ4の拡大断面図を示している。なお、各図の説明では、各図中の上側であって鉛直方向上側を「上」とし、各図中の下側であって鉛直方向下側を「下」として説明する。
【0032】
本実施形態に係る地盤改良装置は、図1に示すように、建設機械であるバックホウ1を母機(ベースマシン)として構成され、履帯1bの上部に旋回可能に設けられたベース1aの前部に、ブーム2及びアーム3が回動可能に連結されると共に、このブーム2及びアーム3の先端に、混合撹拌ヘッドであるトレンチャ4が着脱可能に設けられている。バックホウ1は、計画改良深度Hまでトレンチャ4を地中に貫入し、ブーム2及びアーム3を操作してトレンチャ4を前後に水平掘進させることにより、土壌の掘削と共に固化材の混合撹拌を行う。
【0033】
トレンチャ4は、特に図2に示すように、フレーム40の上部に設けられた油圧モータ44により回転駆動される駆動輪41と、フレーム40の下端部に設けられた従動輪42と、に無端状のドライブチェーン43が巻き掛けられることにより構成されている。そして、ドライブチェーン43の外周側には、複数の混合撹拌翼45が概ね等間隔(等ピッチ)で装着されていて、当該各混合撹拌翼45には、幅方向に沿って複数のカッター刃46が並列に配置されている。
【0034】
また、フレーム40の下部には、下方へ向けて固化材を吐出する固化材吐出部47が設けられていて、例えば図1に示すポンプP(本実施形態では第1ポンプP1及び第2ポンプP2)により配管L(本実施形態では第1配管L1及び第2配管L2)を通じて圧送されたスラリ状固化材(以下、「固化材」と略称する。)が固化材吐出部47から吐出される。
【0035】
このような構成から、油圧モータ44により回転駆動される駆動輪41の回転に伴ってドライブチェーン43と共に前記各混合撹拌翼45が上下方向へと周回移動しつつ、固化材吐出部47から固化材が吐出されることにより、地盤の掘削と共に、この掘削された原土と固化材との撹拌混合が行われる。
【0036】
なお、本実施形態では、ポンプPは、固化材を圧送する第1ポンプP1と、水を圧送する第2ポンプP2と、からなる2系統を有し、第1ポンプP1から圧送される固化材と、第2ポンプP2から圧送される水と、を合流させることにより、水と固化材の比率である「水/固化材比(%)」を調整可能としている。第1、第2ポンプP1,P2としては、例えばグラウトポンプなど任意のポンプを使用することが可能である。
【0037】
第1ポンプP1は、ミキシングプラントMPに接続され、ミキシングプラントMPに貯留されたスラリ状の固化材を吸入し第1配管L1を介してトレンチャ4へと圧送する。第2ポンプP2は、水槽WPに接続され、水槽WPに貯留された水を吸入し第2配管L2を介してトレンチャ4へと圧送する。なお、第1、第2ポンプP1,P2は、バックホウ1に付設されていてもよく、また、バックホウ1とは離間して設けられていてもよい。
【0038】
ここで、前記「水/固化材比」は、第1ポンプP1又は第2ポンプP2のいずれか一方、或いは第1ポンプP1及び第2ポンプP2の両方の吐出量を調整することによって調整可能である。本実施形態では、第1ポンプP1の吐出量については固定とし、第2ポンプP2の吐出量を調整することにより「水/固化材比」を調整する態様を例示する。
【0039】
また、バックホウ1のベース1aの前部に設けられた、作業者(オペレータ)(オペレータ)の運転操作に供する運転室であるキャビン1cの上部前端には、トレンチャ4によって混合撹拌処理された混合撹拌処理後の処理土SLの表面(図1に示す撮影範囲Q参照)を撮影するためのカメラCMが設けられている。なお、このカメラCMによって撮影された映像は、キャビン1c内に設けられた映像モニターMD1(図1図5参照)に出力されると共に、キャビン1cの後部に設けられた後述する演算装置PUに出力される。
【0040】
また、キャビン1cの後部には、外部から入力される種々の検出信号を演算し処理することで第1、第2ポンプP1,P2の吐出量制御に供する演算装置PUが設けられている。この演算装置PUには、トレンチャ4の位置情報に係る信号のほか、カメラCMにより撮影された映像など第1、第2ポンプP1,P2の吐出量制御に係る信号が入力される。
【0041】
具体的には、演算装置PUは、図示外の種々のセンサ等から入力される各種のセンサ信号等に応じてトレンチャ4の平面位置、貫入深度及び掘進速度等を演算する。また、演算装置PUは、カメラCMで撮影された混合撹拌処理後の処理土SLの流動性を数値化処理すると共に、この数値化処理された混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値X(図6参照)と、混合撹拌処理後の処理土SLの流動値Xを管理する手段として予め定められた管理流動値BX(図7参照)と、の差分を演算し、この差分に基づき必要に応じて前記「水/固化材比」の調整指示値を演算する。
【0042】
そして、演算装置PUによる演算結果に基づいて前記「水/固化材比」を調整する場合には、演算装置PUにより演算された調整指示値が演算装置PUに付設の送受信機SRを介して、例えばインターネット回線やWi-Fi(無線LAN)などの任意の通信手段によって第1、第2ポンプP1,P2へと送信され、第1、第2ポンプP1,P2の吐出量が調整される。なお、本実施形態では、前述したように第1ポンプP1の吐出量を固定としているため、前記「水/固化材比」の調整には、演算装置PUにより演算された第2ポンプP2の吐出量の調整指示値が演算装置側送受信機SRを介して第2ポンプP2へ送信され、この第2ポンプP2の吐出量の調整指示値が第2ポンプP2に付設された第2ポンプ側送受信機SR2を介して受信されることで、第2ポンプP2の吐出量が調整されることになる。
【0043】
また、演算装置PUによる演算結果として、現在のトレンチャ4の掘進状況や第1、第2ポンプP1,P2の吐出量、混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値X及び管理流動値BX等が、キャビン1c内に設けられた表示手段である管理モニターMD2(図1図3参照)に表示される。
【0044】
(管理モニターの構成)
図3は、管理モニターMD2の画像図を示している。
【0045】
管理モニターMD2には、図3に示すように、演算装置PUで演算された演算結果を含む複数の表示窓F1~F16が、表示項目毎にレイアウトされ表示されている。具体的には、管理モニターMD2には、トレンチャ4の貫入状態を画像表示する表示窓F1と、計画された改良深度である計画改良深度を数値表示する表示窓F2と、実際の改良深度である実改良深度を数値表示する表示窓F3と、ドライブチェーンの周回速度であるチェーン速度(m/sec)を数値表示する表示窓F4と、計画された掘進速度である計画掘進速度(m/min)を数値表示する表示窓F5と、実際の掘進速度である実掘進速度(m/min)を数値表示する表示窓F6と、水平掘進距離の残量に相当する掘進残距離(m)を数値表示する表示窓F7と、が表示される。
【0046】
また、管理モニターMD2には、区画を構成する境界線の番号((1)~(6))により現在水平掘進を行っている区画を表示する表示窓F8と、水平掘進の種別(直角水平掘進又は斜角水平掘進)を文字表示する表示窓F9と、区画の境界線の番号((1)~(6))によって分割して表示され、トレンチャ4の水平掘進状態をモニタリング可能な表示窓F10と、が表示される。
【0047】
なお、表示窓F8では、図3に示すように、例えば「(4)-(5)」と表示されている場合は、境界線(4)と境界線(5)の間の区画を直角水平掘進していることを表している。一方、例えば「(4)・(5)-(5)・(6)」と表示されている場合には、境界線(4)と境界線(5)の間の区画から境界線(5)と境界線(6)の間の区画へと斜角水平掘進していることを表している。
【0048】
そして、表示窓F10では、現在の水平掘進状態におけるトレンチャ4の平面位置が視覚的に認識可能な矩形枠CLで表示されている。これにより、キャビン1c内でバックホウ1を操作する作業者(オペレータ)は、表示窓F10に太線で表示されている矩形枠CLによりトレンチャ4の現在位置を確認しながら水平掘進を行うことが可能となっている。
【0049】
また、管理モニターMD2には、表示窓F10の隣であって表示窓F2,F7,F16によって囲まれた領域に、タッチスイッチである折り返しスイッチSWが配置されている。この折り返しスイッチSWは、直角水平掘進及び斜角水平掘進時におけるトレンチャ4の掘進方向の切り替え(折り返し)を指示するもので、トレンチャ4が表示窓F10に示す折り返しラインR1,R2に到達したときにタッチすることによって、直角水平掘進から斜角水平掘進に、或いは斜角水平掘進から直角水平掘進に、トレンチャ4の掘進方向を転換することが可能となっている。
【0050】
また、管理モニターMD2には、予め設定された管理流動値BXを「計画TF値(mm)」として数値表示する表示窓F11と、演算装置PUによって演算された実測流動値Xを「実測TF値(mm)」として数値表示する表示窓F12と、第1ポンプP1から吐出されている現在の固化材量である固化材の瞬時流量(L/min)を数値表示する表示窓F13と、予め設計された固化材の累積流量である固化材の設計累積流量(L)を数値表示する表示窓F14と、施工開始から現在までの固化材の累積流量である固化材の実施累積流量(L)を数値表示する表示窓F15と、第2ポンプP2から吐出されている現在の水量である水の瞬時流量(L/min)を数値表示する表示窓F16と、が表示される。
【0051】
また、管理モニターMD2には、表示窓F16の右側に、水量調整ボタンBTが配置されている。この水量調整ボタンBTは、第2ポンプP2から吐出される水量を増減させるものであり、第2ポンプP2の水量を自動で調整する水量自動調整モードでは、自動調整後の作業者(オペレータ)による水量の微調整に供し、第2ポンプP2の水量を手動で調整する水量手動調整モードでは、作業者(オペレータ)の手動による水量の調整に供する。
【0052】
また、前記水量調整ボタンBTは、必ずしも管理モニターMD2に配置されている必要はなく、例えば管理モニターMD2とは別に独立して設けられたコントローラなど、バックホウ1のキャビン1c内の任意の箇所に配置することが可能である。さらに、水量調整ボタンBTは、バックホウ1のキャビン1cのほか、例えばキャビン1c以外の箇所として、第1、第2ポンプP1,P2の設置箇所に第1、第2ポンプP1,P2に付随して設けられていてもよい。
【0053】
(演算装置の構成)
図4は、演算装置PUの構成を現したブロック図を示している。図5は、映像取得部51で取得された映像が出力された映像モニターMD1の画像図を示している。図6は、TF値(実測流動値X)と処理土の移動速度Vsの相関を現したマップ(グラフ)を示している。図7は、TF値(管理流動値BX)と計画改良深度Hの相関を現したマップ(グラフ)を示している。図8は、室内配合試験によるTF値と水/固化材比の相関を現したマップ(グラフ)を示している。
【0054】
図4に示すように、演算装置PUは、カメラCMにより撮影された映像を取得する映像取得部51を含む。また、映像取得部51において取得された映像は、キャビン1cの映像モニターMD1にも出力される。この映像モニターMD1に出力される映像は、図5に示すように、カメラCMにより撮影された、混合攪拌処理に伴い混合撹拌処理後に処理土SLが移動する態様を表示する。
【0055】
また、演算装置PUは、映像取得部51で取得された映像を画像処理することにより混合撹拌処理後の処理土の移動速度Vsを演算する移動速度演算部52を含む。ここで、移動速度演算部52は、映像フレーム間をオプティカルフローや背景差分法などの映像解析手法によって視覚的流れを推定し、映像における処理土の移動速度Vsを測定する。特に、この移動速度演算部52では、図5中の円で囲まれる特徴点SPにフォーカスし、映像の撮影時間、図5中のスケールSC及び特徴点SPの移動量に基づき処理土の移動速度Vsを演算する。
【0056】
なお、処理土の移動速度Vsの演算は、単一の特徴点SPの移動量に基づいて演算することが可能であるが、複数の特徴点SPにフォーカスして当該各特徴点SPの移動量から得られる移動速度Vsの平均により演算することが望ましい。複数の特徴点SPの移動速度Vsの平均に基づいて演算することによって、より高い精度で処理土の移動速度Vsを演算することができる。
【0057】
また、演算装置PUは、図6に示すマップを参照して移動速度演算部52で演算された処理土の移動速度Vsと、ドライブチェーンの移動速度(チェーン速度)Vcとに基づき、当該処理土の実測TF値(実測テーブルフロー値)である実測流動値Xを演算する流動値演算部53を含む。例えば、図6に示すマップにおいて、現在のチェーン速度Vcから関係式a,b,cを選択し、当該関係式a,b,cに処理土の移動速度Vsを当てはめて実測TF値である実測流動値Xを演算する。なお、前記関係式a,b,cについては、データ記録部56に予め記録されていて当該データ記録部56から読み込んでもよく、また、キャビン1c内に設置された管理モニターMD2等から直接入力するようにしてもよい。
【0058】
また、演算装置PUは、流動値演算部53で演算された実測流動値Xが予め設定された計画TF値(計画テーブルフロー値)である管理流動値BXの許容範囲(例えば本実施形態では「±5(mm)」に設定されている。)にあるか否かの判定を行う流動値判定部54と、を含む。なお、管理流動値BXは、図7に示すマップに基づき、計画改良深度Hに応じて決定される。また、管理流動値BXの許容範囲については、改良する地盤や改良体の品質等に応じて任意に設定することが可能である。
【0059】
また、演算装置PUは、実測流動値Xが管理流動値BXの許容範囲外であった場合に図8に示すマップを参照して第2ポンプP2から吐出される水量の補正値Vaを演算する補正値演算部55を含む。補正値演算部55には、データ記録部56に記録された、地盤改良の施工に先立って行われる室内配合試験のデータが入力され、この室内配合試験のデータ(図8に示すマップ参照)に基づき補正値Vaが演算される。この演算された補正値Vaは第2ポンプP2へと転送され、第2ポンプP2の吐出量が変更される。
【0060】
具体的には、補正値演算部55では、前記室内配合試験で求められたテーブルフロー値(TF値)と水/固化材比の相関関係から、TF値(mm)を「1mm」増減させるのに必要な水/固化材比(%)の変化量ΔRx(図8参照)を求める。その後、実測流動値Xを管理流動値BXに合致させるための水/固化材比(%)を求め、固化材量(L)を維持しながら当該水/固化材比とするのに必要な水量(L)である補正値Vaを演算する。なお、当該補正値演算部55における補正値Vaの詳細な演算内容については、具体的な数値を例示して後述する。
【0061】
また、演算装置PUにはデータ記録部56が設けられていて、このデータ記録部56には、移動速度演算部52で演算された処理土の移動速度Vs、流動値演算部53で演算された実測流動値X、補正値演算部55で演算された補正値Vaの実測データが記録されるほか、前記室内配合試験や前記関係式a,b,c等のデータが記録されている。
【0062】
(演算装置による演算フローの説明)
図9は、図4に示すブロック図に基づき実行される演算処理のフローチャートを示している。
【0063】
図9に示すように、演算装置PUによる演算処理では、まず最初に、初期設定(キャリブレーション)が行われ(ステップS1)、その後、カメラCMで撮影された映像を取り込み(ステップS2)、この取り込んだ映像を解析して処理土の移動速度Vsを演算する(ステップS3)。そして、この演算された処理土の移動速度Vsに基づいて当該処理土の実測TF値である実測流動値Xを演算し(ステップS4)、この演算された実測流動値Xが予め設定された計画TF値である管理流動値BXの許容範囲にあるか否かを判定する(ステップS5)。この判定がYesの場合、すなわち実測流動値Xが管理流動値BXの許容範囲にある場合には、第2ポンプP2の吐出量を調整する必要がないため、演算が終了する。一方、ステップS5の判定がNoの場合、すなわち実測流動値Xが管理流動値BXの許容範囲にない場合には、第2ポンプP2から吐出される水量の補正値Vaを演算し(ステップS6)、この演算された補正値Vaを第2ポンプP2へ送信して第2ポンプP2の吐出量を調整して(ステップS7)、ステップS2へ戻る。
【0064】
(水量の補正値の算出方法)
以下に、第2ポンプP2から吐出される水量の補正値の算出方法について説明する。なお、以下の説明では、施工現場の幅、奥行、深度がいずれも「5(m)」の改良体を地盤改良する場合を例示する。また、固化材であるセメントの比重は3.06、固化材の添加量は100(kg/m3)、水/固化材比は200(%)、時間当たりの作業量は50(m3/h)とする。
【0065】
かかる条件に鑑みれば、1m3あたりの固化材量、水量、スラリ量(固化材量と水量の合計)は、それぞれ以下に示すように、
1m3あたりの固化材量:100(kg/m3)÷3.06≒32.7(L/m3
1m3あたりの水量:100(kg/m3)×200(%)=200(L/m3
1m3あたりのスラリ量:32.7(L/m3)+200(L/m3)=232.7(L/m3
1分当たりのスラリ量:232.7(kg/m3)×(50(m3/h)÷60)=193.9(L/min)
となり、全体のスラリ量は193.9(L/min)となる。
そして、この193.9(L/min)を2系統により「スラリ:水=6:4」として流量を分配した場合、
第1ポンプの吐出量V1:193.9×(6/10)=116.4(L/min)
第2ポンプの吐出量V2:193.9(L/min)-116.4(L/min)=77.5(L/min)
となる。
【0066】
続いて、図7に示すマップを参照すると、計画改良深度Hが5(m)の場合の計画TF値である管理流動値BXは122(mm)であるから、例えば実測流動値Xが135(mm)、図8に示すマップ(室内配合試験結果)に基づいてTF値を1(mm)上下させるのに必要な水/固化材比の変化量が2(%)となる場合、実測流動値Xを「135(mm)」から「122(mm)」にするためには、
2(%)×(122-135)=-26(%)
となり、
200(%)-26(%)=174(%)
となる。
【0067】
したがって、実測流動値Xを「122(mm)」に調整するには水/固化材比を「174(%)」とする必要があり、固化材量は変更しないことから、
1m3あたりの固化材量:100(kg/m3)÷3.06≒32.7(L/m3
1m3あたりの水量:100(kg/m3)×174(%)=174(L/m3
1m3あたりのスラリ量:32.7(L/m3)+174(L/m3)=206.7(L/m3
1分当たりのスラリ量:206.7(kg/m3)×(50(m3/h)÷60)=172.3(L/min)
となり、全体のスラリ量は172.3(L/min)となる。
そして、第1ポンプP1の吐出量V1は変更しないことから、
第1ポンプの吐出量V1:116.4(L/min)
第2ポンプの吐出量V2:172.3(L/min)-116.4(L/min)=55.9(L/min)
となり、第2ポンプP2の吐出量の補正値Vaは「55.9(L/min)」となる。
【0068】
以上の計算から、第2ポンプP2の吐出量V2を「77.6(L/min)」から「55.9(L/min)」に調整(補正)することにより、実測流動値Xを「135(mm)」から管理流動値BXである「122(mm)」に調整することができる。
【0069】
なお、かかる演算の後、この演算結果がキャビン1c内に配置される表示装置である管理モニターMD2に送信され、当該管理モニターMD2の表示に反映される(図10(a)参照)。そして、「55.9(L/min)」に調整された第2ポンプP2の吐出量V2(表示窓F16に表示される「水の瞬時流量」参照)で掘進を進めることにより、図10(b)に示すように、実測流動値X(表示窓F12に表示される「実測TF値」参照)が「122(mm)」まで低下して、管理流動値BX(表示窓F11に表示される「計画TF値」参照)と一致する。この表示をもって、キャビン1c内の作業者(オペレータ)は、実測流動値Xが管理流動値BXの許容範囲内となったことを認識することができる。
【0070】
(本実施形態の作用効果)
従来の地盤改良方法によれば、混合撹拌処理後の処理土の流動値を、モルタルフロー試験機等を用いて測定している。このため、試験者の熟練度や測定機器の整備状況、処理土の採取箇所によって測定値に誤差が生じてしまう点で、改善の余地が残されていた。
【0071】
また、前記処理土の流動値の測定に要する労力や時間を鑑みれば、1日に数回もの試験を実施することは困難であり、混合撹拌処理後における処理土の流動値を把握することは困難である。このため、施工中の土層の変化に対して水/固化材比の変更の対応が遅れ、造成される改良体の品質のばらつきや施工性の低下を招くおそれがあった。
【0072】
これに対して、本実施形態に係る地盤改良方法では、カメラCMによって混合撹拌処理後の処理土SLの表面を撮影し、この撮影した混合撹拌処理後の処理土SLの流動性を演算装置PUにより数値化処理すると共に、この数値化処理した混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xと、予め定められた管理流動値BXとの差分を演算することにより、混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xが管理流動値BXの範囲内となるように水/固化材比を補正することとした。
【0073】
かかる方法によれば、混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xを演算装置PUによって演算することで、水/固化材比を補正することが可能となる。これにより、予め処理土を採取しておいてモルタルフロー試験等の予備試験を行うことによって処理土SLの流動値を測定する従来の地盤改良方法と比べて、試験者の熟練度、測定機器の整備状況、処理土の採取箇所による測定値の誤差等の発生を抑制することができる。
【0074】
また、前記従来の方法では、1日に何回も試験を実施することができないため混合撹拌処理後の処理土SLの流動値を適時補正することができず施工中の土層の変化に対して水/固化材比の調整の対応が遅れてしまうおそれがあった。これに対し、本発明では、混合撹拌処理後の処理土SLの表面を撮影することで、当該混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xを監視することが可能となる。これにより、混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xが管理流動値BXの範囲内となるよう水/固化材比を適時補正することができ、造成される改良体の品質のばらつきや施工性の低下を抑制することができる。
【0075】
また、上述した混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xと管理流動値BXとの差分の演算や、この演算により求められた差分が管理流動値BXの許容範囲内にあるか否かの判定については、混合撹拌処理時に常時行ってもよく、また、例えば施工範囲の切り替わり時や、所定の経過時間毎ないし所定の施工距離毎、或いはバックホウ1を操作する作業者(オペレータ)が必要と考えるタイミングなど、上記演算及び判定が必要とされる任意のタイミングで適時行ってもよく、改良する地盤や改良体の品質等に応じて任意に決定することができる。
【0076】
なお、上記の演算や判定を混合撹拌処理時に常時実施する場合には、混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xが管理流動値BXの許容範囲内にあるか否かをリアルタイムで常時監視することが可能となる。これにより、施工中の土層の変化に対して水/固化材の調整を必要なタイミングで随時実施することができ、改良体の品質のばらつきや施工性の低下を最も効果的に抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態では、第1ポンプP1から圧送される固化材量は固定として、第2ポンプP2から圧送される水量を増減させることで、水/固化材比の補正を行うこととした。これにより、水/固化材比の補正によって固化材量が減少するおそれがなく、原地盤の全領域において、規定量の固化材が含まれることとなり、改良体の必要な強度及び良好な品質を確保することができる。また、水/固化材比の補正によって固化材量が増加することもないため、必要以上の固化材を消費せず、不経済を招来するおそれもない。
【0078】
また、本実施形態では、演算装置PUの演算結果に基づき第2ポンプP2から圧送される水量を自動的に増減させることとした。これにより、演算装置PUの演算結果に基づき作業者(オペレータ)が手動で第2ポンプP2の送水量を調整する必要がなくなることから、作業者(オペレータ)の負担を軽減できると共に、作業者(オペレータ)の人為的な要因による改良体の品質の低下を抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態では、演算装置PUにより演算された混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値X及び管理流動値BXを、バックホウ1のキャビン1c内に設置された管理モニターMD2に表示することとした。このため、作業者(オペレータ)はキャビン1c内において、混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xが管理流動値BXの範囲内にあるか否か、また、混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xが管理流動値BXからどれだけ乖離しているか、を監視することができる。また、第2ポンプP2を手動で制御する場合には、補正量が的確に把握されることで、第2ポンプP2の送水量を適切に増減させることができる。
【0080】
また、本実施形態では、バックホウ1のキャビン1c内に、第2ポンプP2から圧送される水量を増減する水量増減ボタンBTを設けることとした。このため、第2ポンプP2から圧送される水量を手動で増減する場合は勿論、当該水量を自動で増減する場合にも、水量増減ボタンBTにより水量の微調整が可能となる。これにより、混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xを所望の値に調整可能となり、造成される改良体の品質のばらつきや施工性の低下をより効果的に抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態では、混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xを、カメラCMにより撮影した処理土SLの移動速度Vsと、混合撹拌翼45を駆動するチェーン速度Vcとの相関によって求めることとした。このように、カメラCMで撮影した処理土SLの移動速度Vsに加え、混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xに影響を及ぼす混合撹拌翼45の移動速度、すなわちチェーン速度Vcを加味して混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xを求めることにより、当該混合撹拌処理後の処理土SLの実測流動値Xをより的確に算出することができる。
【0082】
また、本実施形態では、処理土SLの移動速度Vsは、当該処理土SLの移動に係るカメラCMの撮影時間と、カメラCMで撮影した映像のうち所定の特徴点SPからの処理土SLの移動量と、に基づいて算出することとした。このように、カメラCMで撮影した映像のうち、例えば処理土SLに混じる石など、他の箇所と比べて特徴的な目印となる箇所を特定し、当該特徴点SPからの処理土SLの移動量に基づき処理土SLの移動速度Vsを算出することで、何ら特徴のない箇所における処理土SLの移動量に基づいて処理土SLの移動速度を算出する場合と比べて、処理土SLの移動量をより的確に測定でき、処理土SLの移動速度をより的確に算出することができる。
【0083】
本発明は、前記実施形態において例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適用対象の仕様等に応じて自由に変更することができる。
【0084】
特に、ポンプP(第1、第2ポンプP1,P2)の吐出量を調整して水/固化材比を調整を行うには、前記実施形態で例示した第2ポンプP2の吐出量のみを調整する態様のほか、第1ポンプP1の吐出量のみを調整する態様や、第1、第2ポンプP1,P2の両者の吐出量をそれぞれ調整する態様を採ることができる。
【符号の説明】
【0085】
1…バックホウ(ベースマシン)
2…ブーム
3…アーム
4…トレンチャ(混合撹拌ヘッド)
45…混合撹拌翼
P1…第1ポンプ(ポンプ)
P2…第2ポンプ(ポンプ)
CM…カメラ
PU…演算装置
X…実測流動値
BX…管理流動値
MD2…管理モニターMD2(表示装置)
BT…水量増減ボタン
Vs…処理土の移動速度
Vc…チェーンの移動速度
SP…特徴点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10