(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069106
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】光源装置、エキシマランプの点灯回路、エキシマランプの点灯方法
(51)【国際特許分類】
H05B 41/288 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
H05B41/288
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180725
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 稔
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 繁樹
【テーマコード(参考)】
3K072
【Fターム(参考)】
3K072AA10
3K072AC01
3K072BA03
3K072DD01
3K072GC04
3K072HA02
(57)【要約】
【課題】構成要素となる素子の耐圧マージン等を大きく確保する必要がなく、かつ、点灯動作が安定した光源装置を提供する。
【解決手段】直流電圧源と、直流電圧源に接続された一次側巻線と、エキシマランプに接続された二次側巻線とを有するトランスと、直流電圧源と、一次側巻線と、寄生ダイオードを含むスイッチング素子とが直列に接続されてなり、スイッチング素子と並列に接続されて回生回路を構成するダイオードを有する閉回路と、スイッチング素子のON/OFF制御を行う制御部と、スイッチング素子に流れる電流を検知する電流検知部とを備え、制御部は、スイッチング素子をOFF状態からON状態に遷移させる第一ステップと、第一ステップの後、電流検知部で検知した電流の値が所定の基準値を超えるとスイッチング素子をON状態からOFF状態に遷移させる第二ステップとを実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキシマランプと、前記エキシマランプを点灯するための点灯回路とを備えた光源装置であって、
前記点灯回路は、
直流電圧源に接続された一次側巻線と、前記エキシマランプに接続された二次側巻線とを有するトランスと、
前記直流電圧源と、前記一次側巻線と、スイッチング素子とが直列に接続されてなり、前記スイッチング素子と並列に接続されて回生回路を構成するダイオードを有する閉回路と、
前記スイッチング素子のON/OFF制御を行う制御部と、
前記一次側巻線に流れる電流を検知する電流検知部とを備え、
前記制御部は、
前記スイッチング素子をOFF状態からON状態に遷移させる第一ステップと、
前記第一ステップの後、前記電流検知部で検知した電流の値が所定の基準値を超えると、前記スイッチング素子をON状態からOFF状態に遷移させる第二ステップとを実行することを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記エキシマランプの始動後における前記所定の基準値が、前記エキシマランプの始動時における前記所定の基準値より低く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記直流電圧源の出力電圧を測定する電圧測定部と、前記一次側巻線に流れる電流を測定する電流測定部と、前記電圧測定部が測定した前記直流電圧源の出力電圧の値と、前記電流測定部が測定した前記一次側巻線を流れる電流の値とに基づいて前記一次側巻線のインダクタンス値を算出する演算部とを備え、
前記制御部は、前記演算部が算出した前記インダクタンス値と、前記一次側巻線に流れる電流の値に基づいて前記所定の基準値を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記電流検知部が測定した前記一次側巻線に流れる電流をI1、前記演算部が算出した前記一次側巻線のインダクタンス値をLtとしたときの、1/2×Lt×(I1)2の値に基づいて前記所定の基準値を決定することを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記所定の基準値は、前記二次側巻線に流れる電流に基づいて決定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項6】
エキシマランプを点灯するための点灯回路であって、
直流電圧源に接続された一次側巻線と、前記エキシマランプに接続される二次側巻線とを有するトランスと、
前記直流電圧源と、前記一次側巻線と、スイッチング素子とが直列に接続されてなり、前記スイッチング素子と並列に接続されて回生回路を構成するダイオードを有する閉回路と、
前記スイッチング素子のON/OFF制御を行う制御部と、
前記スイッチング素子に流れる電流を検知する電流検知部とを備え、
前記制御部は、
前記スイッチング素子をOFF状態からON状態に遷移させる第一ステップと、
前記第一ステップの後、前記スイッチング素子に流れる電流の値が所定の基準値を超えると、前記スイッチング素子をON状態からOFF状態に遷移させる第二ステップとを実行することを特徴とするエキシマランプの点灯回路。
【請求項7】
点灯回路を用いたエキシマランプの点灯方法であって、
前記点灯回路は、
直流電圧源に接続された一次側巻線と、前記エキシマランプに接続された二次側巻線とを有するトランスと、
前記直流電圧源と、前記一次側巻線と、スイッチング素子とが直列に接続されてなり、前記スイッチング素子と並列に接続されて回生回路を構成するダイオードを有する閉回路とを備えており、
前記スイッチング素子をOFF状態からON状態に遷移させる第一ステップと、
前記第一ステップの後、前記スイッチング素子に流れる電流の値が所定の基準値を超えると、前記スイッチング素子をON状態からOFF状態に遷移させる第二ステップとを有することを特徴とするエキシマランプの点灯方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置に関し、特にエキシマランプを備えた光源装置に関する。また、本発明は、エキシマランプの点灯回路及び点灯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体バリア放電ランプを、フライバック方式の点灯回路によって点灯する技術は、従来知られている(例えば、特許文献1参照)。フライバック方式の点灯回路は、基本的にFET等のスイッチング素子を1個しか必要としないため、低コストであるという経済的利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-223384号公報
【特許文献2】特開2020-92968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のフライバック方式の点灯回路は、入力電圧のバラつきや始動時の挙動によって、エキシマランプの電極間に印加される電圧が所定の閾値に対してバラついてしまうという課題が存在していた。以下、当該課題について、図面を参照しながら説明する。
【0005】
図8は、従来のフライバック方式の点灯回路100の構成を示す回路図であって、
図9は、従来のフライバック方式の点灯回路100の動作における、動作開始時の制御信号G(t)、トランス130の一次側巻線L1に流れる一次側電流I1、トランス130の二次側巻線L2に誘起される二次側電圧V2の時間変化を示すグラフである。
図9の制御信号G(t)のグラフは、Highレベル(以下、他の図面における各信号のHighレベルについても「Hレベル」という。)が、スイッチング素子122をON状態に制御していることを示し、Lowレベル(以下、他の図面における各信号のLowレベルについても「Lレベル」という。)が、スイッチング素子122をOFF状態に制御していることを示している。
【0006】
図8に示すように、点灯回路100は、直流電圧源121と、スイッチング素子122と、制御部124と、トランス130とを備える。そして、トランス130は、一次側巻線L1と二次側巻線L2とを備え、二次側巻線L2の端子が光Ry1を出射するエキシマランプ10が備える電極(11,12)のそれぞれに接続されている。
【0007】
点灯回路100は、制御部124から出力される、所定の時間間隔でON/OFF制御が切り替わる制御信号G(t)に基づいて、スイッチング素子122がOFF状態からON状態、又はON状態からOFF状態に切り替わる。
【0008】
点灯回路100は、スイッチング素子122がOFF状態からON状態に切り替わり、直流電圧源121に接続されたトランス130の一次側巻線L1に一次側電流I1が流れ始めることで動作が開始する。その後は、
図9に示すように、制御部124が所定の時間間隔でスイッチング素子122のON/OFF制御を繰り返す。
【0009】
フライバック方式の点灯回路100は、エキシマランプを点灯させるために消費されなかったエネルギーによって、トランス130の一次側巻線L1に電圧が誘起され、直流電圧源121の負極側から正極側に向かって電流が発生する。このため、点灯回路100は、FETで構成されたスイッチング素子122の寄生ダイオード122dが、トランス130の一次側巻線L1に発生した電流を回生させるための回生回路を構成している。
【0010】
点灯回路100は、
図9のグラフが示すように、一時的に一次側電流I1の値が負、すなわち、直流電圧源121の負極端子から正極端子に向かう方向に、回生回路を通して電流が流れる期間が存在する(以下、回生回路を流れる当該電流は「回生電流」と称される。)。
【0011】
ところで、動作開始時の点灯回路100は、まだ一度も発光していないので、一次側巻線L1には回生電流が発生していない。したがって、動作開始直後に一次側巻線L1に発生する一次側電流I1は、
図9に示すように、ほぼ0から上昇し、スイッチング素子をON状態からOFF状態に切り替えるまでの時間(時刻t1から時刻t2)にわたって単調増加する。この時の一次側電流I1の増加する傾きは、直流電圧源121の出力電圧V
cc、一次側巻線L1のインダクタンス値L
tより、V
cc/L
tとなる。
【0012】
しかしながら、スイッチング素子122がON状態で維持される時間は、通常、回生電流が発生している状態において、一次側電流I1が所定の電流値に達するまでの時間に合わせるように設計される。したがって、動作開始時の回生電流が発生していない状態では、スイッチング素子122をON状態からOFF状態に切り替える際に、
図9の時刻t2に示すように、一次側電流I1の値が所望の値I
tよりも大きくなってしまう場合がある。
【0013】
スイッチング素子122がON状態からOFF状態に切り替わった時の一次側電流I1が増加すると、二次側巻線L2に誘起される二次側電圧V2のピーク値が増加する傾向がある。このため、上述したような場合は、エキシマランプ10の電極(11,12)間に、回生電流が発生している場合と比べて高い電圧が印加されることになる。
【0014】
また、二次側巻線L2に誘起される電圧が大きくなることによって、一次側巻線L1に戻されるエネルギーが大きくなり、回生電流が大きくなる(
図10の時刻t2x)。そうすると、今度は、スイッチング素子122をON状態からOFF状態に切り替える時(時刻t4)に、一次側電流I1が所望の値に到達しなくなってしまう場合が発生する。
【0015】
時刻t4において、一次側電流I1が所望の値に到達しないと、今度は、時刻t4xにおいて発生する回生電流が小さくなり、時刻t6において一次側電流I1の値が、再び所望の値Itよりも大きくなってしまう。その後は、上述した動作が繰り返される。
【0016】
上述した動作により、特に点灯動作開始時に、エキシマランプ10の電極(11,12)間に印加される電圧が所望の電圧値に対して大きくなったり、小さくなったりを繰り返す動作が発生してしまう。また、当該動作に伴って、回生電流の電流値や、スイッチング素子122の入出力端子間に発生する電圧が、同様に大きくなったり、小さくなったりを繰り返すことになる。
【0017】
従来の点灯回路100の設計は、上述したような動作を想定し、特にスイッチング素子等に関して耐圧マージンを十分に確保するために、例えば、高耐圧な素子が搭載される場合がある。しかしながら、高速スイッチングを実現するためのFET素子等は、高耐圧な素子ほど高価となり、点灯回路100の材料コストが高くなってしまう。
【0018】
点灯回路100の設計コストを抑えつつ、スイッチング素子122の耐圧マージンを十分に確保するための方法としては、スイッチング素子122がON状態で維持される時間を短くし、一次側電流I1のピーク値が低くなるように調整することが考えられる。しかしながら、一次側電流I1のピーク値が低くなるように調整してしまうと、二次側巻線L2に誘起される二次側電圧V2が小さくなり、エキシマランプ10を点灯させるために必要な電圧に到達しなくなる可能性が高くなる。特に、電源のバラつきや、動作開始時の挙動により、二次側電圧V2の電圧値が極端に低くなる動作が発生すると、動作を開始してもエキシマランプが点灯しない事態が発生してしまうおそれがある。
【0019】
以上のように、所定の時間間隔でスイッチング素子のON/OFF制御を行うフライバック方式の点灯回路は、直流電圧源の出力電圧バラつきや、点灯動作開始時の挙動によってトランスに流れる電流や、スイッチング素子の端子間に発生する電圧にバラつき生じる。そして、このようなバラつきに対応すべく、各素子の耐圧マージン等を十分に確保した設計を行おうとすると、点灯回路は、材料コストの増加や、エキシマランプの電極に対して点灯に必要な電圧を印加できない、といった課題に直面してしまうことが多かった。
【0020】
さらに、近年では、菌やウイルス等(以下、「菌等」と略記する場合がある。)の不活化に、紫外光を利用する技術の開発が進められている。本出願人も、誘電体バリア放電ランプの一種であるエキシマランプを用いた、菌等の不活化処理を行う技術が開発されている(例えば、上記特許文献2参照)。
【0021】
そして、最近では、コロナウイルス感染症の流行等により、菌等の不活化処理が可能であると共に、人や動物に対する影響が極めて低い、波長が190nm~240nmの紫外光を利用した菌等の不活化処理が注目されている。そして、当該波長範囲の紫外光を出射する光源として、エキシマランプが期待されており、エキシマランプが搭載された不活化装置は、人が往来する空間での使用が進められている。
【0022】
しかしながら、波長が190nm~240nmの紫外光は、低圧水銀ランプから出射される紫外光等に比べると人体に対する影響が極めて低いとはいえ、利用者によっては、長時間にわたって高い照度で紫外光が照射され続ける状況を回避したい場合が考えられる。また、本願出願時においては、人体に照射される紫外線の積算照射量は、ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists:アメリカ合衆国産業衛生専門官会議)で定められている規制値以内にすることが推奨されている。
【0023】
このような理由から、エキシマランプを搭載した不活化処理用の光源装置は、菌等の不活化処理に要する光強度の紫外光を出射しつつ、人に対する積算照射量がACGIHによって定められた規制値を超えることがないように設計することが求められている。また、紫外光による不活化処理を行う光源装置は、照射対象物や照射対象領域における積算照射量を管理しやすいように、できる限り一定の光強度で紫外光を出射できることが期待される。
【0024】
本発明は、上記課題に鑑み、構成要素となる素子の耐圧マージン等を大きく確保する必要がなく、かつ、点灯動作が安定した光源装置を提供することを目的とする。また、本発明は、構成要素となる素子の耐圧マージン等を大きく確保する必要がなく、かつ、エキシマランプを安定的に点灯させるための点灯回路及び点灯方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の光源装置は、
エキシマランプと、前記エキシマランプを点灯するための点灯回路とを備えた光源装置であって、
前記点灯回路は、
直流電圧源に接続された一次側巻線と、前記エキシマランプに接続された二次側巻線とを有するトランスと、
前記直流電圧源と、前記一次側巻線と、スイッチング素子とが直列に接続されてなり、前記スイッチング素子と並列に接続されて回生回路を構成するダイオードを有する閉回路と、
前記スイッチング素子のON/OFF制御を行う制御部と、
前記スイッチング素子に流れる電流を検知する電流検知部とを備え、
前記制御部は、
前記スイッチング素子をOFF状態からON状態に遷移させる第一ステップと、
前記第一ステップの後、前記電流検知部で検知した電流の値が所定の基準値を超えると、前記スイッチング素子をON状態からOFF状態に遷移させる第二ステップとを実行することを特徴とする。
【0026】
エキシマランプは、発光管と、発光管に対して電圧を印加するための一対の電極を備えた光源である。そして、本明細書における「始動時」とは、電極間に電圧を印加することで、エキシマランプを消灯状態から点灯状態に遷移させるための動作である始動動作を行っている時をいう。
【0027】
また、本明細書における「始動後」とは、エキシマランプの始動動作を実行した後、電圧印加を繰り返すことで、所望の範囲内の強度で紫外光を安定して出射できる状態をいう。
【0028】
また、本明細書において、「電流の値が所定の基準値を超えた」とは、予め設定されている電流の閾値を、検知した電流値が超えた場合はもちろん、検知した電流の値に基づいて算出される他のパラメータ(例えば、電力値やインダクタに蓄積されているエネルギー、所定の抵抗素子で変換された電圧値等)が所定の基準値を超えたか否かによって、間接的に電流の値が所定の基準値を超えた場合をも含む。
【0029】
ここでの回生回路を構成するダイオードは、スイッチング素子が半導体素子であった場合に形成される寄生ダイオードであっても構わない。
【0030】
上記構成とすることで、スイッチング素子をON状態からOFF状態に切り替える制御は、所定の時間間隔で実行されるのではなく、スイッチング素子に流れる電流の値が所定の基準値に達すると実行される。
【0031】
したがって、スイッチング素子がON状態からOFF状態に切り替わった瞬間の一次側電流の値が常に一定となり、トランスの二次側巻線に誘起される電圧のバラつきが少なくなる。そして、エキシマランプから出射される紫外光の強度が安定する。
【0032】
さらに、二次側巻線に誘起される電圧が一定となることから、一次側巻線に発生する回生電流の値も一定となる。したがって、スイッチング素子の入出力端子間に印加される電圧が、所定の基準値に対して大きくなったり小さくなったりすることが発生しなくなる。したがって、スイッチング素子の選択において、検討すべき耐圧マージンが小さくなり、素子選択の自由度が大きくなる。つまり、上記構成の光源装置は、より安価なスイッチング素子を選定することができ、材料コストを抑えることができる。
【0033】
なお、波長190nm以上240nm未満の紫外光は、人や動物の皮膚や目に紅斑や角膜炎を起こすことはなく、紫外光本来の殺菌、ウイルスの不活化能力を提供することができる。特に、従来の紫外光源とは異なり、有人環境で使用できるという特徴を生かし、屋内外の有人環境に設置することで、環境全体を照射することができ、空気と環境内設置部材表面のウイルス抑制・除菌を提供することができる。
【0034】
本発明の光源装置は、上述した菌やウイルスの不活化処理に用いられる紫外光源の点灯回路として利用することができる。このため、本発明の点灯回路は、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「あらゆる年齢の全ての人々が健康的な生活を確保し、福祉を促進する」に対応し、また、ターゲット3.3「2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶すると共に、肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する」に大きく貢献するものである。
【0035】
上記光源装置は、
前記エキシマランプの始動後における前記所定の基準値が、前記エキシマランプの始動時における前記所定の基準値より低く設定されていても構わない。
【0036】
始動後に、エキシマランプの発光管内で発生している放電は、始動時に発光管内で放電を発生させるために必要な電圧より低い電圧の印加によって維持することができる。このため、省電力化やランプの長寿命化の観点から、始動後に発光状態が安定したエキシマランプの電極間に印加する電圧は、できる限り発光管内の放電を維持するために必要な最小限の電圧値とすることが好ましい。
【0037】
上記光源装置において、
前記制御部は、前記直流電圧源の出力電圧を測定する電圧測定部と、前記一次側巻線に流れる電流を測定する電流測定部と、前記電圧測定部が測定した前記直流電圧源の出力電圧の値と、前記電流測定部が測定した前記一次側巻線を流れる電流の値とに基づいて前記一次側巻線のインダクタンス値を算出する演算部とを備え、
前記制御部は、前記演算部が算出した前記インダクタンス値と、前記一次側巻線に流れる電流の値に基づいて前記所定の基準値を決定するように構成されていても構わない。
【0038】
さらに、上記光源装置において、
前記制御部は、前記電流測定部が測定した前記一次側巻線に流れる電流をI1、前記演算部が算出した前記一次側巻線のインダクタンス値をLtとしたときの、1/2×Lt×(I1)2の値に基づいて前記所定の基準値を決定するように構成されていても構わない。
【0039】
上記構成とすることで、点灯回路は、トランスの製造上のインダクタンス値のバラつきの影響が抑制される。したがって、光源装置は、スイッチング素子をON状態からOFF状態に切り替える基準値がトランスの個体バラつきや紫外光の強度の変動が抑制される。
【0040】
上記光源装置において、
前記所定の基準値は、前記二次側巻線に流れる電流に基づいて決定されるように構成されていても構わない。
【0041】
上記構成とすることで、制御部は、二次側巻線に誘起されている電圧、すなわち、エキシマランプの電極に印加されている電圧が所望の電圧値に収束するように、一次側電流の値を調整する。したがって、上記構成の点灯回路によれば、エキシマランプの電極に対して印加される電圧がより安定することになり、エキシマランプから出射される光の強度がさらに安定する。
【0042】
本発明の点灯回路は、
エキシマランプを点灯するための点灯回路であって、
直流電圧源に接続された一次側巻線と、前記エキシマランプに接続される二次側巻線とを有するトランスと、
前記直流電圧源と、前記一次側巻線と、スイッチング素子とが直列に接続されてなり、前記スイッチング素子と並列に接続されて回生回路を構成するダイオードを有する閉回路と、
前記スイッチング素子のON/OFF制御を行う制御部と、
前記スイッチング素子に流れる電流を検知する電流検知部とを備え、
前記制御部は、
前記スイッチング素子をOFF状態からON状態に遷移させる第一ステップと、
前記第一ステップの後、前記電流検知部から前記検知信号が入力されると、前記スイッチング素子をON状態からOFF状態に遷移させる第二ステップとを実行することを特徴とする。
【0043】
本発明の点灯方法は、
点灯回路を用いたエキシマランプの点灯方法であって、
前記点灯回路は、
直流電圧源に接続された一次側巻線と、前記エキシマランプに接続された二次側巻線とを有するトランスと、
前記直流電圧源と、前記一次側巻線と、スイッチング素子とが直列に接続されてなり、前記スイッチング素子と並列に接続されて回生回路を構成するダイオードを有する閉回路とを備えており、
前記スイッチング素子をOFF状態からON状態に遷移させる第一ステップと、
前記第一ステップの後、前記スイッチング素子に流れる電流の値が所定の基準値を超えると、前記スイッチング素子をON状態からOFF状態に遷移させる第二ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0044】
本発明の光源装置によれば、構成要素となる素子の耐圧マージン等を大きく確保する必要がなく、かつ、安定した点灯動作が行える光源装置が実現される。また、本発明のエキシマランプの点灯回路及び点灯方法によれば、構成要素となる素子の耐圧マージン等を大きく確保する必要がなく、かつ、エキシマランプを安定して点灯させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】光源装置の外観の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】光源装置の外観の一例を模式的に示す斜視図であり、
図1から一部の要素を除去した図面である。
【
図3】フライバック方式の点灯回路の一構成例を示す回路図である。
【
図4】点灯回路の始動時モードX1と定常動作時モードX2での、一次側電流、制御信号、及び二次側電圧のタイミングチャートである。
【
図5】フライバック方式の点灯回路の一構成例を示す回路図である。
【
図6】制御信号、一次側電流、二次側電圧及び二次側電流の時間変化の一例を模式的に示すタイミングチャートである。
【
図7】フライバック方式の点灯回路の別構成例を示す回路図である。
【
図8】従来のフライバック方式の点灯回路の構成を示す回路図である。
【
図9】従来のフライバック方式の点灯回路の動作における、制御信号、一次側電流、二次側電圧の時間変化を模式的に示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の光源装置、エキシマランプの点灯回路、及びエキシマランプの点灯方法について、図面を参照して説明する。なお、光源装置に関する以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0047】
(光源装置1)
図1及び
図2は、光源装置1の外観を模式的に示す斜視図である。ただし、
図1及び
図2に図示される構造は、あくまで一例であり、本発明に係る光源装置1の構造は、任意である。
【0048】
図1及び
図2は、それぞれ光源装置1の外観の一例を模式的に示す斜視図であり、
図2では、説明のために、
図1から一部の要素が除去されている。光源装置1は、
図1に示すように、点灯回路2と、一方の面に光取り出し面7が形成された蓋部5と、本体ケーシング部6とを備える。
図2に示す例では、光源装置1は、複数の発光管13と、各発光管13に対して電圧を印加するための電極(11,12)からなる、エキシマランプ10を備える。電極(11,12)は、それぞれ接続部(11a,12a)を介して電源線(3,4)に接続される。そして、電源線(3,4)は、点灯回路2に接続されている。
【0049】
発光管13は、石英ガラス等の誘電体で構成されており、内部には所定の発光ガスが封入されている。電極(11,12)間に、例えば1kHz~5MHz程度の高周波電圧が印加されると、発光管13を介して発光ガスに当該電圧が印加される。このとき、発光ガスが封入されている放電空間内で放電プラズマが生じ、発光ガスの原子が励起されてエキシマ状態となり、この原子が基底状態に移行する際にエキシマ発光を生じる。このエキシマ発光によってエキシマランプ10から出射された光が、光取り出し面7から光Ry1として光源装置1の外側へと出射される。
【0050】
光源装置1から出射される光Ry1の波長は、発光管13内に封入される発光ガスの物質に依存して決定される。例えば、発光ガスとしてKrClを含む場合、光源装置1から出射される光Ry1は、主たるピーク波長が222nm近傍のスペクトルを示す。発光ガスにKrBrが含まれる場合には、光Ry1は、主たるピーク波長が207nm近傍のスペクトルを示す。発光ガスにArFが含まれる場合には、光Ry1は、主たるピーク波長が193nm近傍のスペクトルを示す。
【0051】
光源装置1は、光Ry1の波長を長波長側に変換する目的で、発光管13の管壁や光取り出し面7に、蛍光体が塗布されているものとしても構わない。
【0052】
また、発光管13の管壁や光取り出し面7は、人体に対する影響が小さい波長帯の紫外光を透過し、人体に対する影響が大きい波長帯の紫外光を透過しないようなフィルタが構成されていても構わない。当該フィルタは、例えば、波長が190nm~240nmの紫外光を透過させ、波長が240nm以上の紫外光を透過させないように構成された、誘電体多層膜フィルタ等を採用し得る。
【0053】
(点灯回路2)
図3は、点灯回路2の一構成例を示す回路図である。点灯回路2は、
図3に示すように、直流電圧源21と、スイッチング素子22と、電流検知部23と、制御部24と、トランス30とを備える。
【0054】
トランス30は、一次側巻線L1と二次側巻線L2を備える。トランス30の一次側巻線L1が備える端子のうち、第一端子a1は直流電圧源21の正極側端子に接続され、第二端子a2は、直列に接続されたスイッチング素子22と、電流検知部23が備える抵抗R1とを介して直流電圧源21の負極側端子に接続されている。
【0055】
本実施形態のスイッチング素子22は、
図3に示すように、電界効果トランジスタで構成されており、寄生ダイオード22dを備えている。寄生ダイオード22dのアノードは、抵抗R1を介して直流電圧源21の負極側端子に接続されており、カソードは、トランス30の一次側巻線L1に接続されている。
【0056】
本実施形態では、この寄生ダイオード22dが回生回路として機能する。なお、このスイッチング素子22は、制御部24によってON/OFF制御される。制御内容の詳細については
図4以下の図面を参照して後述される。
【0057】
なお、スイッチング素子22は、寄生ダイオード22dを備えないIGBTやリレー素子等を採用し、ダイオード素子単体をスイッチング素子22と並列に接続することで回生回路を構成しても構わない。
【0058】
直流電圧源21は、例えば、商用電源をAC/DC変換するAC/DCコンバータ(不図示)によって構成されるものとしても構わない。点灯回路2が備える平滑コンデンサ25は、電圧波形を平滑化するために設けられている。また、直流電圧源21は、電池で構成されても構わない。
【0059】
本実施形態の電流検知部23は、
図3に示すように、抵抗R1を備え、スイッチング素子22に流れる一次側電流I1を検知し、制御部24に入力するための検知電圧V
inを出力する。
【0060】
制御部24は、コンパレータ24aと、コンパレータ24aの比較用電圧(Vt1,Vt2)を生成する電圧生成部24bと、コンパレータ24aが出力する出力信号S1に基づいて制御信号G(t)を生成する信号生成部24cとを備える。制御部24としては、例えば、制御ユニットであるCPUやMPU等を採用し得る。
【0061】
コンパレータ24aは、
図3に示すように、電流検知部23から出力された検知電圧V
in(=R1×I1)と、電圧生成部24bが生成する基準電圧V
t1とを比較し、比較結果に対応する出力信号S1を信号生成部24cに対して出力する。
【0062】
本実施形態における制御部24は、点灯動作開始時に実行される始動時モードX1と、始動時モードX1後、エキシマランプ10の点灯状態を維持するために実行される定常動作時モードX2とを実行するように構成されている。詳細は、
図4を参照しながら後述されるが、定常動作時モードX2は、始動時モードX1に対して、一次側電流I1の閾値が低く設定されているモードである。
【0063】
以下、制御部24が実行する制御について、タイミングチャートも併せて参照しながら説明する。
【0064】
図4は、点灯回路2の始動時モードX1と定常動作時モードX2での、一次側電流I1、制御信号G(t)、及び二次側電圧V2のタイミングチャートである。
図4の制御信号G(t)のグラフは、Hレベルが、スイッチング素子22をON状態に制御していることを示し、Lレベルが、スイッチング素子22をOFF状態に制御していることを示している。
【0065】
図4に示されている二次側電圧V2は、
図3の第二電極端子b2の電位に対する、第一電極端子b1の電位に対応する。
【0066】
以下の説明において参照される図面に図示された電圧や電流の変動を示すグラフは、
図4の二次側電圧V2のグラフと同様に、本発明の主たる動作の説明に影響しないオフセットや、スイッチング動作によるスパイクノイズ等は表されておらず、理想的な波形の一例が模式的に表されている。また、二次側電圧V2が所定の電圧(本実施形態では0V)に対して+側に振れるように構成するか、-側に振れるように構成するかは、エキシマランプ10の仕様や点灯回路2の構成等に応じて適宜任意に設定して構わない。
【0067】
制御部24は、光源装置1に電源が投入されて動作が開始すると、エキシマランプ10点灯させるための始動時モードX1の実行を開始する。
【0068】
制御部24は、始動時モードX1の実行を開始すると、信号生成部24cが制御信号G(t)をLレベルからHレベルに切り替えて、スイッチング素子22をOFF状態からON状態に切り替える(当該動作が第一ステップに対応する)。
【0069】
そして、
図4に示すように、徐々にトランス30の一次側巻線L1に流れる一次側電流I1が増加する。この時の一次側電流I1の増加する傾きは、直流電圧源21の出力電圧V
cc、一次側巻線L1のインダクタンス値L
tより、V
cc/L
tとなる。
【0070】
電流検知部23の抵抗R1に流れる一次側電流I1の増加に伴って、制御部24が備えるコンパレータ24aに入力される検知電圧V
inが上昇する。なお、
図4において検知電圧V
inのグラフは図示していないが、検知電圧V
inは、一次側電流I1と抵抗R1の抵抗値に比例するので、一次側電流I1のグラフと同じ形状となる。
【0071】
一次側電流I1が増加し、検知電圧Vinが基準電圧Vt1(=R1×It1)に達すると、コンパレータ24aは、信号生成部24cに対して、Hレベルの出力信号S1を出力する。
【0072】
制御部24の信号生成部24cは、コンパレータ24aからHレベルの出力信号S1が入力された直後に、制御信号G(t)の出力をHレベルからLレベルに切り替える。これにより、スイッチング素子22は、ON状態からOFF状態に切り替わる(当該動作が第二ステップに対応する)。
【0073】
そして、スイッチング素子22がON状態からOFF状態に切り替わることで、一次側電流I1が流れなくなり、検知電圧Vinが低下してコンパレータ24aの出力信号S1のレベルがLレベルに切り替わる。
【0074】
この時、トランス30の一次側巻線L1には、エキシマランプ10で消費されなかったエネルギーによって回生電流が発生する。本実施形態では、回生電流は、スイッチング素子22が備える寄生ダイオード22dによって、直流電圧源21の負極端子側から正極端子側へと流れる。
【0075】
その後、回生電流が流れなくなると想定される時間が経過した後に、制御部24は、再びスイッチング素子22に出力する制御信号G(t)をLレベルからHレベルに切り替えて、スイッチング素子22をOFF状態からON状態へと切り替える。以降、制御部24は、上述した動作を繰り返す。
【0076】
本実施形態における制御部24は、エキシマランプ10の点灯状態が安定するまでに要すると想定される時間にわたって始動時モードX1を継続して実行した後、
図4に示すように、定常動作時モードX2に切り替わる。
【0077】
本実施形態が実行する定常動作時モードX2は、制御部24の電圧生成部24bが生成する電圧が、始動時モードX1時の基準電圧Vt1より低い基準電圧Vt2になっている点で異なる。本実施形態における制御部24が有する電圧生成部24bは、定常動作時モードX2に切り替わると、コンパレータ24aに入力する電圧が、基準電圧Vt1(=R1×It1)から基準電圧Vt2(=R1×It2)に切り替わる。ここで、電流(It1,It2)の関係は、It1>It2である。
【0078】
上記構成とすることで、
図4に示すように、制御信号G(t)の出力がLレベルに切り替わるタイミング(t2、t4)において、一次側電流I1の値は、基準電流値I
t1に揃えられる。したがって、二次側電圧V2のピーク電圧値V
p2が一定になり、エキシマランプ10から出射される光Ry1の強度が安定した光源装置1が実現される。
【0079】
また、基準電流値It1が所定の値に揃えられることで、動作開始時の挙動によってスイッチング素子22のソース-ドレイン端子間に印加される電圧が、想定の値よりも大きくなったり、小さくなったりする動作が発生しない。したがって、点灯回路2は、過剰な耐圧マージンを確保する必要がなくなり、材料コストの増加等を回避することができる。
【0080】
さらに、定常動作時モードX2において、始動時モードX1に対して、エキシマランプ10の電極(11,12)間に印加される電圧が低くなっている。このため、本実施形態の光源装置1は、エキシマランプ10への負荷が低減されて、エキシマランプ10の寿命が長くなる。
【0081】
図5は、
図3とは別の、エキシマランプ10用の、フライバック方式の点灯回路2の一構成例を示す回路図である。
図5に示す構成の点灯回路2が備える電圧生成部24bは、直流電圧源21の負極端子の電位を基準とするトランス30の二次側巻線L2の第二電極端子b2側の端子の電圧に基づいて、制御部24のコンパレータ24aに入力される基準電圧V
tを生成する。当該構成の点灯回路2は、トランス30の二次側巻線L2の第二電極端子b2側の端子の電圧が、二次側巻線L2を流れる二次側電流I2と抵抗R3とに基づいて定まる。
【0082】
本実施形態において電圧生成部24bに入力される電圧Vrは、二次側巻線L2の第二電極端子b2側の端子と、直流電圧源21の負極端子と同電位のノードとの間に、直列に接続されたダイオードD1、抵抗R2、コンデンサC1とで構成された経路のうちの、抵抗R2とコンデンサC1との間の電圧とした。つまり、電圧Vrは、二次側巻線L2から、ダイオードD1を介して抵抗R2側に流れた電流によって蓄えられた電荷と、コンデンサC1の容量値によって決定される電圧である。
【0083】
図5に示す構成とすることで、点灯回路2は、制御部24がトランス30の二次側巻線L2を流れる二次側電流I2に基づいてフィードバック制御を実行する。このフィードバック制御によって、制御部24が、二次側電圧V2の値を所望の値に収束させるように、一次側電流I1の基準値が制御する。したがって、二次側電圧V2がより所望の値で安定しやすくなる。
【0084】
電圧生成部24bの具体的な構成としては、直流電圧源21の負極端子の電位に対するトランス30の二次側巻線L2における第二電極端子b2の電圧と、所定の参照用電圧との差に基づいて基準電圧Vtの値が決定される、エラーアンプを用いた構成等を採用し得る。なお、電圧生成部24bに入力される電圧は、直流電圧源21の負極端子の電位に対するトランス30の二次側巻線L2における第一電極端子b1の電圧であっても構わない。
【0085】
本実施形態の点灯回路2は、制御信号G(t)のレベルをHレベルからLレベルに切り替えるタイミングは、例えば、スイッチング素子22の寄生ダイオード22dに流れる回生電流が停止した後、ある程度の時間が経過した後に設定されていても構わない。
【0086】
また、点灯回路2は、定常動作時モードX2において、スイッチング素子22に流れる電流が0になったことを検知するための検知回路をさらに備え、制御部24が、スイッチング素子22をOFF状態からON状態に切り替えるように構成されていても構わない。
【0087】
図6は、制御信号G(t)、一次側電流I1、二次側電圧V2及び二次側電流I2の時間変化の一例を模式的に示すタイミングチャートである。点灯回路2は、
図8に示すように、定常動作時モードX2において、スイッチング素子22に流れる電流が0になった後、予め設定された時間(Ts=t3b-t3a)が経過した後に、制御部24が、スイッチング素子22をOFF状態からON状態に切り替えるように構成されていても構わない。
【0088】
点灯回路2は、基準電圧Vtの値を制御することで、スイッチング素子22をON状態からOFF状態に切り替えるタイミングを制御しているが、例えば、抵抗R1が、始動時モードX1の時よりも定常動作時モードX2の時の方が大きくなるように切り替えるような構成であっても構わない。
【0089】
本実施形態における制御部24は、例えば、コンパレータ24aから出力される信号をラッチ回路やフリップフロップ回路等によって一時的にラッチして、クロック信号等に同期して制御信号G(t)のレベルを切り替えるように構成されていても構わない。
【0090】
本実施形態の点灯回路2は、定常動作時モードX2において基準電圧Vtの値が、始動時モードX1における基準電圧Vtの値よりも小さくなるように構成されているが、基準電圧Vtが動作開始後に変化しないように構成されていても構わない。また、制御部24は、動作する時間帯等に対応するために、始動時モードX1、定常動作時モードX2とは異なる動作モードを実行するように構成されていても構わない。
【0091】
[別実施形態]
以下に、本発明に係る光源装置1又は点灯回路2の別実施形態を説明する。
【0092】
〈1〉
図9は、エキシマランプ10用の、フライバック方式の点灯回路2の別構成例を示す回路図である。
図9に示すように、本実施形態の点灯回路2が備える制御部24は、演算部24pと、電圧測定部24qと、電流測定部24rとを有するマイクロコントローラで構成されている。そして、制御部24は、
図9に示すように、スイッチング素子22と直流電圧源21の負極側端子の間のノードと、直流電圧源21の正極端子側のノードが接続されている。
【0093】
本実施形態の制御部24が備える演算部24pは、直流電圧源21の出力電圧Vccと、スイッチング素子22に流れる一次側電流I1の値に基づいて、トランス30の一次側巻線L1のインダクタンス値Ltを算出する。直流電圧源21の出力電圧Vccと、一次側電流I1とは、I1=Vcc/Ltの関係が成り立つ。したがって、制御部24は、電圧測定部24q及び電流測定部24rが任意の時間で出力電圧Vccと一次側電流I1とを測定し、演算部24pにおいて上記関係式から一次側巻線L1のインダクタンス値Ltを導出することができる。
【0094】
トランス30の一次側巻線L1に蓄えられるエネルギーは、1/2×Lt×(I1)2により算出される。そこで、制御部24は、トランス30の一次側巻線L1に蓄えられるエネルギーが一定となるように、スイッチング素子22を制御するように構成されていても構わない。なお、制御部24は、例えば、一次側巻線L1のインダクタンス値Ltと、一次側電流I1とが対応するテーブルが記録されており、当該テーブルに基づいて一次側電流I1の閾値を決定するように構成されていても構わない。
【0095】
上記構成とすることで、トランス30の一次側巻線L1のインダクタンス値Ltのバラつきの影響を受けず、スイッチング素子22がON状態からOFF状態となった時にトランス30に蓄えられているエネルギーが一定となる。つまり、本実施形態の点灯回路2は、より高い精度でエキシマランプ10の電極(11,12)間に印加される電圧を制御することができる。
【0096】
〈2〉 上述した実施形態では、直流電圧源21の負極側端子と、トランス30の一次側巻線L1との間にスイッチング素子22が接続されている場合について説明したが、この極性は反転されていても構わない。すなわち、直流電圧源21の正極側端子と、トランス30の一次側巻線L1との間にスイッチング素子22が接続されていても構わない。ここで、スイッチング素子22がMOSFETで構成される場合、nチャネル型とするかpチャネル型とするかは、接続される直流電圧源21の極性に応じて適宜選択される。
【符号の説明】
【0097】
1 : 光源装置
2 : 点灯回路
3,4 :電源線
5 : 蓋部
6 : 本体ケーシング部
7 : 光取り出し面
10 : エキシマランプ
11,12 : 電極
11a,12a : 接続部
13 : 発光管
21 : 直流電圧源
22 : スイッチング素子
22d : 寄生ダイオード
23 : 電流検知部
24 : 制御部
24a : コンパレータ
24b : 電圧生成部
24c : 信号生成部
24p : 演算部
24q : 電圧測定部
24r : 電流測定部
25 : 平滑コンデンサ
26 : 電圧生成部
30 : トランス
100 : 点灯回路
121 : 直流電圧源
122 : スイッチング素子
122d : 寄生ダイオード
124 : 制御部
130 : トランス
C1 : コンデンサ
D1 : ダイオード
G : 制御信号
I1 : 一次側電流
I2 : 二次側電流
It1 : 基準電流値
L1 : 一次側巻線
L2 : 二次側巻線
Lt : インダクタンス値
R1,R2 : 抵抗
Ry1 : 光
S1 : 出力信号
S2 : 出力切替信号
Ts : OFF保持時間
V2 : 二次側電圧
Vin :検知電圧
Vt,Vt1,Vt2 : 基準電圧
X1 : 始動時モード
X2 : 定常動作時モード
a1 : 第一端子
a2 : 第二端子
b1 : 第一電極端子
b2 : 第二電極端子