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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069163
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】サスペンション装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 13/08 20060101AFI20230511BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20230511BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20230511BHJP
   F16F 9/16 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B60G13/08
F16F15/023 A
F16F15/04 P
F16F9/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180821
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【テーマコード(参考)】
3D301
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA69
3D301AA74
3D301BA11
3D301DA08
3D301DA33
3D301DA45
3D301DA51
3D301DA53
3D301DA83
3D301DB35
3D301EB34
3J048AA02
3J048AC04
3J048BA08
3J048BE03
3J048CB21
3J048EA15
3J069AA34
3J069DD47
3J069EE01
(57)【要約】
【課題】省スペース化および低コスト化を図る。
【解決手段】車体Bに取付けられる内側部材11と、内側部材より車幅方向Yの外側YOに設けられると共に、車軸Aを支持する外側部材12と、内側部材及び外側部材を互いに車幅方向に連結する第1弾性部材13と、内側部材および外側部材を互いに上下方向に連結する第2弾性部材14と、を備え、第1弾性部材は、弾性変形時に弾性力および減衰力を発生する弾性板31、及び弾性板より硬質の硬質板32を備えるとともに、弾性板及び硬質板が車幅方向に積層されて構成され、第2弾性部材の上下方向Zの弾性変形に伴い減衰力を発生し、第2弾性部材の弾性変形に抵抗力を付与する減衰力発生機構16を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取付けられる内側部材と、
前記内側部材より車幅方向の外側に設けられるとともに、車軸を支持する外側部材と、
前記内側部材および前記外側部材を互いに車幅方向に連結する第1弾性部材と、
前記内側部材および前記外側部材を互いに上下方向に連結する第2弾性部材と、を備え、
前記第1弾性部材は、弾性変形時に弾性力および減衰力を発生する弾性板、および前記弾性板より硬質の硬質板を備えるとともに、前記弾性板および前記硬質板が車幅方向に積層されて構成され、
前記第2弾性部材の上下方向の弾性変形に伴い減衰力を発生し、前記第2弾性部材の弾性変形に抵抗力を付与する減衰力発生機構を備えている、サスペンション装置。
【請求項2】
前記減衰力発生機構は、前記第2弾性部材に形成された第1液室と、弾性隔壁を隔壁の一部に有する第2液室と、前記第1液室および前記第2液室を互いに連通するオリフィス通路と、を備えている、請求項1に記載のサスペンション装置。
【請求項3】
前記第2弾性部材は、上下方向に延びる筒状に形成され、
前記第2弾性部材の内側が前記第1液室とされ、
前記第2弾性部材に、上下方向に間隔をあけて複数のリング体が外装されている、請求項2に記載のサスペンション装置。
【請求項4】
前記オリフィス通路は、
着座面を内面の一部に有し、かつ前記着座面に離反可能に配置されるとともに前記着座面に向けて付勢された弁体が収容された弁室と、
前記弁体および前記着座面に形成され、互いに連通する第1接続孔および第2接続孔と、を備えている、請求項2または3に記載のサスペンション装置。
【請求項5】
前記弾性板と、前記硬質板と、前記内側部材、および前記外側部材それぞれにおいて、車幅方向で互いに対向し、かつ前記第1弾性部材が取付けられる第1取付面、および第2取付面と、は、上下方向から見て、車幅方向の内側に向けて突の曲線を呈するように湾曲し、
上下方向から見て、前記弾性板、前記硬質板、前記第1取付面、および前記第2取付面それぞれの曲率中心は、前記車軸に取付けられるタイヤの赤道部より車幅方向の外側に位置している、請求項1から4のいずれか1項に記載のサスペンション装置。
【請求項6】
前記第1弾性部材は、上下一対備えられ、前記車軸を上下方向に挟む各位置に設けられ、
前記弾性板、前記硬質板、前記第1取付面、および前記第2取付面は、上下方向および車幅方向に沿う断面視で、前記車軸側から上下方向に離れるに従い、車幅方向の内側に向けて延びている、請求項5に記載のサスペンション装置。
【請求項7】
前記内側部材には、前記外側部材の一定量を超えた後方移動を規制する規制部材が設けられている、請求項1から6のいずれか1項に記載のサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、コイルスプリングおよびショックアブソーバ等を備えたサスペンション装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2012-503570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のサスペンション装置では、例えばゴルフカートやバギー等の小型車両にとってはスペースが嵩み、車内空間を確保することが困難であるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、省スペース化および低コスト化を図ることができるサスペンション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のサスペンション装置は、車体に取付けられる内側部材と、前記内側部材より車幅方向の外側に設けられるとともに、車軸を支持する外側部材と、前記内側部材および前記外側部材を互いに車幅方向に連結する第1弾性部材と、前記内側部材および前記外側部材を互いに上下方向に連結する第2弾性部材と、を備え、前記第1弾性部材は、弾性変形時に弾性力および減衰力を発生する弾性板、および前記弾性板より硬質の硬質板を備えるとともに、前記弾性板および前記硬質板が車幅方向に積層されて構成され、前記第2弾性部材の上下方向の弾性変形に伴い減衰力を発生し、前記第2弾性部材の弾性変形に抵抗力を付与する減衰力発生機構を備えている。
【0007】
内側部材および外側部材を互いに車幅方向に連結する第1弾性部材が、弾性板および硬質板が車幅方向に積層されて構成されているので、従来のコイルスプリングやショックアブソーバを排除しても、上下方向の入力荷重に対して、弾性板を上下方向にせん断変形させることで、弾性力および減衰力を発生させることができるとともに、サスペンション装置の車幅方向の剛性を確保することができる。
これにより、車幅方向の剛性を確保しつつ、従来のコイルスプリング、およびショックアブソーバを排除して、省スペース化および低コスト化を図ることができる。
内側部材および外側部材を互いに上下方向に連結する第2弾性部材を備えているので、従来のコイルスプリングを排除しても、上下方向の入力荷重に対して、弾性板および第2弾性部材を弾性変形させることで、弾性力を確実に発生させることができる。
第2弾性部材の上下方向の弾性変形に伴い減衰力を発生し、第2弾性部材の弾性変形に抵抗力を付与する減衰力発生機構を備えているので、従来のショックアブソーバを排除しても、上下方向の入力荷重に対して、第2弾性部材を弾性変形させ、減衰力発生機構を作動させることで、例えば弾性板および第2弾性部材等の材料物性だけでは生じ得ない大きさの減衰力を確実に発生させることができる。
【0008】
前記減衰力発生機構は、前記第2弾性部材に形成された第1液室と、弾性隔壁を隔壁の一部に有する第2液室と、前記第1液室および前記第2液室を互いに連通するオリフィス通路と、を備えてもよい。
【0009】
減衰力発生機構が、第1液室、第2液室、およびオリフィス通路を備えているので、上下方向の入力荷重に対して、第2弾性部材および弾性隔壁が弾性変形することにより、液体が、オリフィス通路を通して第1液室と第2液室との間を流通することとなり、簡易な構成で確実に減衰力を発生させることができる。
第1液室が第2弾性部材に形成されているので、減衰力発生機構のかさ張りを抑えることができる。
【0010】
前記第2弾性部材は、上下方向に延びる筒状に形成され、前記第2弾性部材の内側が前記第1液室とされ、前記第2弾性部材に、上下方向に間隔をあけて複数のリング体が外装されてもよい。
【0011】
第2弾性部材に、上下方向に間隔をあけて複数のリング体が外装されているので、上下方向の圧縮荷重に対して、第2弾性部材を径方向の外側に変形させにくくして、第1液室を縮小変形させやすくすることが可能になり、上下方向の入力荷重に対して、液体を、オリフィス通路を通して第1液室と第2液室との間を確実に流通させることができる。
第1液室が、筒状の第2弾性部材の内側となっているので、減衰力発生機構のかさ張りを確実に抑えることができる。
【0012】
前記オリフィス通路は、着座面を内面の一部に有し、かつ前記着座面に離反可能に配置されるとともに前記着座面に向けて付勢された弁体が収容された弁室と、前記弁体および前記着座面に形成され、互いに連通する第1接続孔および第2接続孔と、を備えてもよい。
【0013】
オリフィス通路が、着座面を有する弁室、弁体の第1接続孔、および着座面の第2接続孔を備えているので、上下方向の入力荷重に対して、第2弾性部材および弾性隔壁が弾性変形するのに伴い、弁体の第1接続孔および着座面の第2接続孔を含むオリフィス通路を通して、液体が第1液室と第2液室との間を流通し、減衰力が発生する。
上下方向に大きな振幅の荷重が入力されたときには、弁体が付勢力に抗して着座面から離反し、着座面の第2接続孔が開放され、第2接続孔を通過して弁室に流入しようとする液体が、弁体の第1接続孔を通過せず直接、弁室に流入しやすくなる。したがって、上下方向に大きな振幅の荷重が入力されたときに発生する減衰力を抑え、この際の乗り心地が悪化するのを抑制することができる。
【0014】
前記弾性板と、前記硬質板と、前記内側部材、および前記外側部材それぞれにおいて、車幅方向で互いに対向し、かつ前記第1弾性部材が取付けられる第1取付面、および第2取付面と、は、上下方向から見て、車幅方向の内側に向けて突の曲線を呈するように湾曲し、上下方向から見て、前記弾性板、前記硬質板、前記第1取付面、および前記第2取付面それぞれの曲率中心は、前記車軸に取付けられるタイヤの赤道部より車幅方向の外側に位置してもよい。
【0015】
内側部材の第1取付面と、外側部材の第2取付面と、を互いに連結する第1弾性部材が、弾性板および硬質板が車幅方向に積層されて構成され、上下方向から見て、弾性板、硬質板、第1取付面、および第2取付面が、車幅方向の内側に向けて突の曲線を呈するように湾曲し、それぞれの曲率中心が、タイヤの赤道部より車幅方向の外側に位置している。
したがって、前後方向、若しくは車幅方向の外力が、車両に加えられたときに、上下方向から見て、弾性板が、曲率中心回りに前後方向にせん断変形することとなり、外側部材を、内側部材に対して車軸とともに、曲率中心回りに前後方向に回転させることができる。これにより、従来のリンク機構を排除しても、車両に前述の外力が加えられたときに、例えばタイヤをトーイン方向に傾けて車体の姿勢を安定させること等ができる。
以上より、従来のリンク機構を排除することが可能になり、省スペース化および低コスト化を確実に図ることができる。
【0016】
前記第1弾性部材は、上下一対備えられ、前記車軸を上下方向に挟む各位置に設けられ、前記弾性板、前記硬質板、前記第1取付面、および前記第2取付面は、上下方向および車幅方向に沿う断面視で、前記車軸側から上下方向に離れるに従い、車幅方向の内側に向けて延びてもよい。
【0017】
第1弾性部材が、上下一対備えられ、車軸を上下方向に挟む各位置に設けられているので、キャンバー剛性を確保することができる。
弾性板、硬質板、第1取付面、および第2取付面が、前記断面視で、車軸側から上下方向に離れるに従い、車幅方向の内側に向けて延びている。
したがって、ジオメトリー上のロール中心の高さ位置を高く設定しやすくなり、旋回走行時のロール量を容易に調整することができ、また、上下方向の外力が車両に加えられたときに、前記断面視において、一対の第1弾性部材それぞれにおける中央部を通り、かつ弾性板および硬質板に直交する向きに延びる各直線の交点回りに、弾性板が上下方向にせん断変形しつつ、外側部材が、内側部材に対して車軸とともに、前記交点回りに上下方向に回転することとなり、キャンバー剛性を容易に調整することができる。
【0018】
前記内側部材には、前記外側部材の一定量を超えた後方移動を規制する規制部材が設けられてもよい。
【0019】
内側部材に、外側部材の一定量を超えた後方移動を規制する規制部材が設けられているので、走行時にタイヤが突起を乗り越えたときや制動時に、外側部材が、内側部材に対して車軸とともに後方に向けて過度に大きく変位するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、省スペース化および低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態として示したサスペンション装置を車幅方向の外側から見た図である。
図2図1のII-II線矢視断面図である。
図3図1のIII-III線矢視断面図である。
図4図3の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、サスペンション装置の一実施形態を、図1図4を参照しながら説明する。
サスペンション装置1は、内側部材11と、外側部材12と、第1弾性部材13と、第2弾性部材14と、規制部材15と、減衰力発生機構16と、を備えている。サスペンション装置1は、例えばゴルフカートやバギー等の小型車両に装着される。サスペンション装置1への振動の入力に伴い、内側部材11および外側部材12が、第1弾性部材13および第2弾性部材14を弾性変形させつつ、相対変位する。
なお、規制部材15を設けなくてもよい。
【0023】
内側部材11は、板状に形成され、表裏面が車幅方向Yに向けられた状態で車体Bに取付けられる。内側部材11には、車幅方向Yに貫いて車軸Aが挿入される挿入孔11aが形成されている。挿入孔11aは、内側部材11の表裏面における中央部に設けられている。
【0024】
車軸A、および車軸Aに取付けられるタイヤTを、図2および図3において模式的に表している。
以下、サスペンション装置1において、車幅方向Yに沿うタイヤT側を、車幅方向Yの外側YOといい、車幅方向Yに沿うタイヤTの反対側を、車幅方向Yの内側YIという。
【0025】
内側部材11には、第1壁部22および第2壁部23が設けられている。
第1壁部22は、内側部材11の後端部から車幅方向Yの外側YOに向けて突出している。第1壁部22の表裏面は前後方向Xを向いている。
第2壁部23は、内側部材11の上端部から車幅方向Yの外側YOに向けて突出している。第2壁部23の表裏面は上下方向Zを向いている。第2壁部23は、内側部材11の上端部における前後方向Xの中央部に設けられ、第1壁部22より上方に位置している。
【0026】
外側部材12は、内側部材11より車幅方向Yの外側YOに設けられている。外側部材12は、板状に形成され、表裏面が車幅方向Yを向いている。外側部材12は、内側部材11と車幅方向Yで対向している。外側部材12は、第1壁部22の前面に対して前方で、かつ車幅方向Yの外側YOに位置している。
外側部材12には、車幅方向Yに貫いて車軸Aを支持する支持孔12aが形成されている。支持孔12aは、内側部材11の挿入孔11aと同軸に配設されている。支持孔12aの内径は、挿入孔11aの内径より小さくなっている。
【0027】
第1弾性部材13は、内側部材11および外側部材12を互いに車幅方向Yに連結している。第1弾性部材13は、弾性変形時に弾性力および減衰力を発生する弾性板31、および弾性板31より硬質の硬質板32を備えるとともに、弾性板31および硬質板32が車幅方向Yに積層されて構成されている。
弾性板31および硬質板32は、複数ずつ設けられ、車幅方向Yに交互に設けられている。弾性板31は、サスペンション装置1が車両に装着された状態で、上下方向Zにほぼ無負荷の状態で設けられる。
【0028】
弾性板31および硬質板32それぞれの表裏面は、車幅方向Yを向いている。弾性板31は、例えばゴム材料、若しくは合成樹脂材料等で形成され、硬質板32は、弾性板31を形成する材質より硬度が高い、例えば金属材料、若しくは合成樹脂材料等で形成されている。
【0029】
弾性板31と、硬質板32と、内側部材11、および外側部材12それぞれにおいて、車幅方向Yで互いに対向し、かつ第1弾性部材13が取付けられる第1取付面26、および第2取付面27と、は、上下方向Zから見て、図2に示されるように、車幅方向Yの内側YIに向けて突の曲線を呈するように湾曲している。
【0030】
ここで、内側部材11には、車幅方向Yの外側YOに向けて突出し、前後方向Xに延びる直方体状の内突部11bが形成されており、内突部11bにおける車幅方向Yの外側YOを向く面に、第1取付面26が形成されている。内突部11bおよび第1取付面26は、内側部材11における前後方向Xの全長にわたって形成されている。図3に示されるように、内突部11bおよび第1取付面26は、上下一対備えられ、車軸Aを上下方向Zに挟む各位置に設けられている。上下一対の内突部11bおよび第1取付面26は、車軸Aから上下方向Zに同じ距離離れて設けられている。
【0031】
また、外側部材12には、車幅方向Yの内側YIに向けて突出し、前後方向Xに延びる直方体状の外突部12bが形成されており、外突部12bにおける車幅方向Yの内側YIを向く面に、第2取付面27が形成されている。外突部12bおよび第2取付面27は、外側部材12における前後方向Xの全長にわたって形成されている。外突部12bおよび第2取付面27は、上下一対備えられ、車軸Aを上下方向Zに挟む各位置に設けられている。上下一対の外突部12bおよび第2取付面27は、車軸Aから上下方向Zに同じ距離離れて設けられている。図2に示されるように、第2取付面27のうち、少なくとも前後方向Xの中央部は、第1取付面26における前後方向Xの両端部より、車幅方向Yの内側YIに位置している。
【0032】
外突部12bは、前後方向Xに沿って中央部から離れるに従い、車幅方向Yの大きさが小さくなっている。外突部12bにおける前後方向Xの両端面は、上下方向Zおよび車幅方向Yに延びる平面になっている。外突部12bの後端面の車幅方向Yの大きさは、外突部12bの前端面の車幅方向Yの大きさより大きくなっている。外突部12bの後端面は、第1壁部22の前面に対して前方に位置し、かつ前後方向Xで対向している。外突部12bの上端面は、前後方向Xおよび車幅方向Yに延びる平面となっている。上下一対の外突部12bのうち、上方に位置する外突部12bの上端面は、第2壁部23の下面に対して下方に位置し、かつ上下方向Zで対向している。
【0033】
ここで、規制部材15は、内側部材11に設けられ、外側部材12の一定量を超えた後方移動を規制する。規制部材15は、例えばゴム材料、若しくは合成樹脂材料等で形成され、第1壁部22の前面に設けられている。規制部材15は、上下方向Zに延びる直方体状に形成されている。規制部材15は、外突部12bの後端面と前後方向Xで対向している。図1に示されるように、規制部材15は、上下一対設けられている。規制部材15は、外突部12bの後端面における上下方向Zの全長にわたって前後方向Xで対向している。
【0034】
上下方向Zから見て、弾性板31、硬質板32、第1取付面26、および第2取付面27それぞれの曲率中心は、タイヤTの赤道部CLより車幅方向Yの外側YOに位置している。前記曲率中心は、車軸Aより後方に位置している。なお、車軸Aに対する前記曲率中心の前後方向Xの位置は、適宜変更してもよい。図2に示されるように、前後方向Xおよび車幅方向Yに沿う断面視において、第1取付面26と第2取付面27との車幅方向Yの距離は、前後方向Xの全長にわたって同等になっている。
【0035】
第1弾性部材13は、上下一対備えられ、車軸Aを上下方向Zに挟む各位置に設けられている。第1取付面26は、内側部材11における上部および下端部に各別に設けられ、第2取付面27は、外側部材12における上下方向Zの両端部に設けられている。
【0036】
弾性板31、硬質板32、第1取付面26、および第2取付面27は、図3に示されるように、上下方向Zおよび車幅方向Yに沿う断面視で、車軸A側から上下方向Zに離れるに従い、車幅方向Yの内側YIに向けて延びている。これにより、図3に示されるような断面視において、一対の第1弾性部材13それぞれにおける中央部を通り、かつ弾性板31および硬質板32に直交する向きに延びる各直線Lの交点が、内側部材11より車幅方向Yの内側YIに位置する。
【0037】
第2弾性部材14は、内側部材11および外側部材12により上下方向Zに挟まれている。第2弾性部材14は、内側部材11および外側部材12を互いに上下方向Zに連結している。第2弾性部材14は、第2壁部23の下面と、上下一対の外突部12bのうち、上方に位置する外突部12bの上端面と、により上下方向Zに挟まれて支持されている。第2弾性部材14は、サスペンション装置1が車両に装着された状態で、上下方向Zに圧縮変形する。
【0038】
第2弾性部材14は、上下方向Zに延びる筒状に形成されている。第2弾性部材14は、例えばゴム材料、若しくは合成樹脂材料等で形成されている。第2弾性部材14は、弾性変形時に弾性力および減衰力を発生する材質で形成されている。
図2に示されるように、第2弾性部材14、および車軸Aそれぞれの前後方向Xの位置は、互いに同じになっている。第2弾性部材14、および車軸Aそれぞれの中心軸線は、設計上互いに交差している。第2弾性部材14は、上下一対の外突部12bのうち、上方に位置する外突部12bの上端面における中央部に設けられている。
【0039】
図4に示されるように、第2弾性部材14に、上下方向Zに間隔をあけて複数のリング体28が外装されている。リング体28は、例えば金属材料等で形成されている。第2弾性部材14の外周面に、径方向の外側に向けて突出し、周方向の全長にわたって連続して延びる環状突起14aが、上下方向Zに間隔をあけて複数形成されている。リング体28は、第2弾性部材14の外周面のうち、上下方向Zで互いに隣り合う環状突起14a同士の間に位置する部分に外装されている。上下方向Zで互いに隣り合う環状突起14a同士の間の間隔は、リング体28の線径と同等になっている。なお、第2弾性部材14の外周面に、環状突起14a、およびリング体28を設けなくてもよい。
【0040】
第2弾性部材14は、有底筒状に形成されている。第2弾性部材14の上端面に、蓋板29が固着されている。蓋板29は、例えば金属材料等で形成されている。蓋板29の中央部に、上下方向Zに貫き、第2弾性部材14内に開口する装着孔29aが形成されている。装着孔29aの上部の内周面に雌ねじ部が形成されている。装着孔29aおよび第2弾性部材14は、互いに同軸に配設されている。第2弾性部材14の上端面は、蓋板29を介して第2壁部23の下面に支持されている。
【0041】
減衰力発生機構16は、第2弾性部材14の上下方向Zの弾性変形に伴い減衰力を発生し、第2弾性部材14の弾性変形に抵抗力を付与する。減衰力発生機構16は、上下方向Zの荷重入力時に、第1弾性部材13および第2弾性部材14より大きな減衰力を生じさせる。
【0042】
減衰力発生機構16は、第2弾性部材14に形成された第1液室33と、弾性隔壁34を隔壁の一部に有する第2液室35と、第1液室33および第2液室35を互いに連通するオリフィス通路36と、を備えている。
第1液室33は、有底筒状の第2弾性部材14の内側となっている。第2液室35は、第2壁部23の上方に設けられている。オリフィス通路36は、蓋板29および第2壁部23を上下方向Zに貫いている。
【0043】
減衰力発生機構16は、第2壁部23の上方に設けられた筒体41と、筒体41および第2弾性部材14を互いに連結するプラグ部材42と、を備えている。
【0044】
筒体41は、上下方向Zに延びている。筒体41の上端開口部は、弾性隔壁34および剛体隔壁37により閉塞されている。筒体41の内側が、第2液室35となっている。弾性隔壁34は、例えばゴム材料、若しくは合成樹脂材料等で形成され、剛体隔壁37は、例えば金属材料、若しくは合成樹脂材料等で形成されている。弾性隔壁34は、環状に形成され、剛体隔壁37は、弾性隔壁34の内側を閉塞している。剛体隔壁37は、有頂筒状に形成されている。弾性隔壁34は、剛体隔壁37の外周面から径方向の外側に向かうに従い上方に向けて延びている。筒体41、弾性隔壁34、および剛体隔壁37は、第2弾性部材14と同軸に配設されている。弾性隔壁34は、筒体41に対して上方に向けて弾性変形した状態で設けられ、第1液室33、第2液室35、およびオリフィス通路36の各内部は、弾性隔壁34の復元力によって加圧されている。これにより、第1液室33、第2液室35、およびオリフィス通路36の各内部でキャビテーションが発生しにくくなっている。
なお、筒体41は、第2壁部23の下方に設けられてもよいし、第2壁部23に形成された装着孔内に装着されてもよい。
【0045】
プラグ部材42は、上下方向Zに延び、かつ内側がオリフィス通路36とされた本体筒43と、本体筒43の外周面から径方向の外側に向けて突出し、周方向の全長にわたって連続して延びるフランジ部44と、を備えている。
【0046】
本体筒43は、蓋板29および第2壁部23を上下方向Zに貫いている。本体筒43の上端部は、筒体41内に挿入されている。本体筒43の外周面には、蓋板29の装着孔29aの上部の内周面に形成された雌ねじ部に螺着された雄ねじ部が形成されている。本体筒43の外周面において、雄ねじ部より下方に位置する下端部が、蓋板29の装着孔29aの内周面に液密に当接している。本体筒43の外周面の下端部と、装着孔29aの内周面と、の間にOリングが設けられている。本体筒43の下端部は、装着孔29a内および第2弾性部材14の上端部内に一体に嵌合されている。
フランジ部44は、筒体41の下端部内に液室に嵌合されている。筒体41の下端部は加締められている。フランジ部44の内周部の下面が、第2壁部23の上面に当接している。
【0047】
ここで、オリフィス通路36は、弁室45と、第1接続孔48および第2接続孔49と、を備えている。
【0048】
弁室45は、着座面46を内面の一部に有し、弁室45には、着座面46に離反可能に配置されるとともに着座面46に向けて付勢された弁体47が収容されている。
弁室45は、本体筒43の上端面に形成された窪み部とされ、着座面46は、窪み部の底面となっている。窪み部の上端部内に支持リング51が装着されている。支持リング51は、窪み部の上端部内に螺着されている。支持リング51内を通して、弁室45内と第2液室35内とが連通している。
【0049】
弁体47は、上下方向Zに延びる筒状に形成されている。弁体47の下端部に、径方向の外側に向けて突出し、周方向の全長にわたって連続して延びる突条部47aが形成されている。弁体47は、弁室45の内面のうち、着座面46の外周縁から上方に向けて延びる側面に対して離間した状態で上下方向Zに移動し、着座面46に対して当接、離反する。
【0050】
弁体47および着座面46には、互いに連通する第1接続孔48および第2接続孔49が形成されている。第1接続孔48の内径は、第2接続孔49の内径より小さい。なお、第1接続孔48の内径を、第2接続孔49の内径以上としてもよい。第2接続孔49の内径は、支持リング51の内径と同等になっている。なお、第2接続孔49および支持リング51それぞれの内径を、互いに異ならせてもよい。
第1接続孔48は、筒状の弁体47の内側となっている。第1接続孔48のうち、下端部の内径は、下端部より上方に位置する部分の内径より小さくなっている。第1接続孔48の上端開口は、弁室45内に位置している。第1接続孔48を通して、弁室45内と第2接続孔49とが連通している。
【0051】
弁室45には、弁体47を着座面46に向けて付勢する付勢部材52が収容されている。付勢部材52は、例えばコイルスプリング等となっている。付勢部材52の下端部は、弁体47の突条部47aの上面に支持されている。付勢部材52の上端部は、支持リング51の下面に支持されている。弁体47の上端部は、支持リング51の下面から下方に離れている。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によるサスペンション装置1によれば、内側部材11および外側部材12を互いに車幅方向Yに連結する第1弾性部材13が、弾性板31および硬質板32が車幅方向Yに積層されて構成されているので、従来のコイルスプリングやショックアブソーバを排除しても、上下方向Zの入力荷重に対して、弾性板31を上下方向Zにせん断変形させることで、弾性力および減衰力を発生させることができるとともに、サスペンション装置1の車幅方向Yの剛性を確保することができる。
これにより、車幅方向Yの剛性を確保しつつ、従来のコイルスプリング、およびショックアブソーバを排除して、省スペース化および低コスト化を図ることができる。
【0053】
内側部材11および外側部材12を互いに上下方向Zに連結する第2弾性部材14を備えているので、従来のコイルスプリングを排除しても、上下方向Zの入力荷重に対して、弾性板31および第2弾性部材14を弾性変形させることで、弾性力を確実に発生させることができる。
【0054】
第2弾性部材14の上下方向Zの弾性変形に伴い減衰力を発生し、第2弾性部材14の弾性変形に抵抗力を付与する減衰力発生機構16を備えているので、従来のショックアブソーバを排除しても、上下方向Zの入力荷重に対して、第2弾性部材14を弾性変形させ、減衰力発生機構16を作動させることで、例えば弾性板31および第2弾性部材14等の材料物性だけでは生じ得ない大きさの減衰力を確実に発生させることができる。
【0055】
減衰力発生機構16が、第1液室33、第2液室35、およびオリフィス通路36を備えているので、上下方向Zの入力荷重に対して、第2弾性部材14および弾性隔壁34が弾性変形することにより、液体が、オリフィス通路36を通して第1液室33と第2液室35との間を流通することとなり、簡易な構成で確実に減衰力を発生させることができる。
第1液室33が第2弾性部材14に形成されているので、減衰力発生機構16のかさ張りを抑えることができる。
【0056】
第2弾性部材14に、上下方向Zに間隔をあけて複数のリング体28が外装されているので、上下方向Zの圧縮荷重に対して、第2弾性部材14を径方向の外側に変形させにくくして、第1液室33を縮小変形させやすくすることが可能になり、上下方向Zの入力荷重に対して、液体を、オリフィス通路36を通して第1液室33と第2液室35との間を確実に流通させることができる。
第1液室33が、筒状の第2弾性部材14の内側となっているので、減衰力発生機構16のかさ張りを確実に抑えることができる。
【0057】
オリフィス通路36が、着座面46を有する弁室45、弁体47の第1接続孔48、および着座面46の第2接続孔49を備えているので、上下方向Zの入力荷重に対して、第2弾性部材14および弾性隔壁34が弾性変形するのに伴い、弁体47の第1接続孔48および着座面46の第2接続孔49を含むオリフィス通路36を通して、液体が第1液室33と第2液室35との間を流通し、減衰力が発生する。
【0058】
上下方向Zに大きな振幅の荷重が入力されたときには、弁体47が付勢部材52の付勢力に抗して着座面46から離反し、着座面46の第2接続孔49が開放され、第2接続孔49を通過して弁室45に流入しようとする液体が、弁体47の第1接続孔48を通過せず直接、弁室45に流入しやすくなる。したがって、上下方向Zに大きな振幅の荷重が入力されたときに発生する減衰力を抑え、この際の乗り心地が悪化するのを抑制することができる。
【0059】
内側部材11の第1取付面26と、外側部材12の第2取付面27と、を互いに連結する第1弾性部材13が、弾性板31および硬質板32が車幅方向Yに積層されて構成され、上下方向Zから見て、弾性板31、硬質板32、第1取付面26、および第2取付面27が、車幅方向Yの内側YIに向けて突の曲線を呈するように湾曲し、それぞれの曲率中心が、タイヤTの赤道部CLより車幅方向Yの外側YOに位置している。
【0060】
したがって、前後方向X、若しくは車幅方向Yの外力が、車両に加えられたときに、上下方向Zから見て、弾性板31が、曲率中心回りに前後方向Xにせん断変形することとなり、外側部材12を、内側部材11に対して車軸Aとともに、曲率中心回りに前後方向Xに回転させることができる。これにより、従来のリンク機構を排除しても、車両に前述の外力が加えられたときに、図2に二点鎖線で示されるように、例えばタイヤTをトーイン方向に傾けて車体の姿勢を安定させること等ができる。
以上より、従来のリンク機構を排除することが可能になり、省スペース化および低コスト化を確実に図ることができる。
【0061】
第1弾性部材13が、上下一対備えられ、車軸Aを上下方向Zに挟む各位置に設けられているので、キャンバー剛性を確保することができる。
【0062】
弾性板31、硬質板32、第1取付面26、および第2取付面27が、図3に示されるように、上下方向Zおよび車幅方向Yに沿う断面視で、車軸A側から上下方向Zに離れるに従い、車幅方向Yの内側YIに向けて延びている。
したがって、ジオメトリー上のロール中心の高さ位置を高く設定しやすくなり、旋回走行時のロール量を容易に調整することができ、また、上下方向Zの外力が車両に加えられたときに、図3に示されるような断面視において、一対の第1弾性部材13それぞれにおける中央部を通り、かつ弾性板31および硬質板32に直交する向きに延びる各直線Lの交点回りに、弾性板31が上下方向Zにせん断変形しつつ、外側部材12が、図3に二点鎖線で示されるように、内側部材11に対して車軸Aとともに、前記交点回りに上下方向Zに回転することとなり、キャンバー剛性を容易に調整することができる。
【0063】
内側部材11に、外側部材12の一定量を超えた後方移動を規制する規制部材15が設けられているので、走行時にタイヤTが突起を乗り越えたときや制動時に、外側部材12が、内側部材11に対して車軸Aとともに後方に向けて過度に大きく変位するのを防ぐことができる。
【0064】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0065】
例えば、第1弾性部材13、第1取付面26、および第2取付面27は、一つずつ設けられてもよい。
弾性板31、硬質板32、第1取付面26、および第2取付面27は、上下方向Zおよび車幅方向Yに沿う断面視で、上下方向Zに真直ぐ延びてもよい。
第2弾性部材14は、弾性変形時に減衰力を発生しない材質で形成されてもよい。
【0066】
弾性板31、硬質板32、第1取付面26、および第2取付面27は、上下方向Zから見て、例えば前後方向Xに真直ぐ延びていてもよい。
上下方向Zから見て、弾性板31、硬質板32、第1取付面26、および第2取付面27それぞれの曲率中心は、タイヤTの赤道部CL上に位置してもよいし、赤道部CLより車幅方向Yの内側YIに位置してもよい。
第1液室33を第2弾性部材14の外部に設けてもよい。
オリフィス通路36は弁室45を有さず、弁体47を設けなくてもよい。
【0067】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 サスペンション装置
11 内側部材
12 外側部材
13 第1弾性部材
14 第2弾性部材
15 規制部材
16 減衰力発生機構
26 第1取付面
27 第2取付面
28 リング体
31 弾性板
32 硬質板
33 第1液室
34 弾性隔壁
35 第2液室
36 オリフィス通路
45 弁室
46 着座面
47 弁体
48 第1接続孔
49 第2接続孔
A 車軸
B 車体
CL 赤道部
T タイヤ
X 前後方向
Y 車幅方向
Z 上下方向
図1
図2
図3
図4