(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069166
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法および加工システム
(51)【国際特許分類】
H05K 3/00 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
H05K3/00 N
H05K3/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180826
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122622
【弁理士】
【氏名又は名称】森 徳久
(72)【発明者】
【氏名】川口 克雄
(72)【発明者】
【氏名】山内 勉
(72)【発明者】
【氏名】高木 威
(72)【発明者】
【氏名】大月 卓也
(72)【発明者】
【氏名】佐野 雅紀
(57)【要約】
【課題】開口形成に要する加工時間を短縮するための技術の提供。
【解決手段】プリント配線板の製造方法は、絶縁層と絶縁層上の複数の導体回路を含む第1導体層と絶縁層と第1導体層上に形成されている第1樹脂絶縁層とを有する途中基板を準備することと、第1樹脂絶縁層を貫通し第1導体層に至るビア導体用の開口を形成するためのレーザ加工機を準備することと、開口を形成する位置をレーザ加工機に提供することと、位置下の導体回路を分類することと、分類に基づいて開口を形成するためのショット数をレーザ加工機に提供することと、位置とショット数に基づいて開口を形成すること、とを有する。分類することは導体回路を第1分類と第2分類に層別することを含む。第1分類に属する導体回路に至る開口を形成するためのショット数は第2分類に属する導体回路に至る開口を形成するためのショット数より小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と前記絶縁層上に形成されている複数の導体回路を含む第1導体層と前記絶縁層と前記第1導体層上に形成されている第1樹脂絶縁層とを有する途中基板を準備することと、
前記第1樹脂絶縁層を貫通し前記第1導体層に至るビア導体用の開口を形成するためのレーザ加工機を準備することと、
前記開口を形成する位置を前記レーザ加工機に提供することと、
前記位置下の前記導体回路を分類することと、
前記分類に基づいて前記開口を形成するためのショット数を前記レーザ加工機に提供することと、
前記位置と前記ショット数に基づいて前記開口を形成すること、とを有するプリント配線板の製造方法であって、
前記複数の導体回路は電源用の導体回路とグランド用の導体回路と信号用の導体回路を含み、前記分類することは前記導体回路を第1分類と第2分類に層別することを含み、前記電源用の導体回路と前記グランド用の導体回路は前記第1分類に属し、前記信号用の導体回路は前記第2分類に属し、前記第1分類に属する前記導体回路に至る前記開口を形成するための前記ショット数は前記第2分類に属する前記導体回路に至る前記開口を形成するための前記ショット数より小さい。
【請求項2】
請求項1のプリント配線板の製造方法であって、前記第1分類に属する前記導体回路に至る全ての前記開口は同じショット数で形成され、前記第2分類に属する前記導体回路に至る全ての前記開口は同じショット数で形成される。
【請求項3】
請求項1のプリント配線板の製造方法であって、前記第1分類に属する1つの前記導体回路に至る前記開口の数は複数であって、前記第2分類に属する1つの前記導体回路に至る前記開口の数は1つである。
【請求項4】
請求項1のプリント配線板の製造方法であって、さらに、前記第1分類に属する導体回路を前記電源用の導体回路と前記グランド用の導体回路に分類することを含む。
【請求項5】
請求項4のプリント配線板の製造方法であって、前記電源用の導体回路に至る前記開口を形成するための前記ショット数と前記グランド用の導体回路に至る前記開口を形成するための前記ショット数は同じである。
【請求項6】
請求項4のプリント配線板の製造方法であって、1つの前記電源用の導体回路に至る前記開口の数は複数であって、1つの前記信号用の導体回路に至る前記開口の数は1つである。
【請求項7】
請求項4のプリント配線板の製造方法であって、1つの前記グランド用の導体回路に至る前記開口の数は複数であって、1つの前記信号用の導体回路に至る前記開口の数は1つである。
【請求項8】
請求項1のプリント配線板の製造方法であって、さらに、前記開口にビア導体を形成することと前記第1樹脂絶縁層上に第2導体層と第2樹脂絶縁層を交互に積層することを含む。
【請求項9】
請求項8のプリント配線板の製造方法であって、前記第1分類に属する1つの前記導体回路に至る前記開口は第1開口と第2開口を含み、前記ビア導体は前記第1開口に形成される第1ビア導体と前記第2開口に形成される第2ビア導体を含み、前記第1ビア導体と前記第2ビア導体は前記第2導体層で並列に繋げられる。
【請求項10】
請求項1のプリント配線板の製造方法であって、前記第1分類に属する前記導体回路に至る開口を形成するための前記ショット数と前記第2分類に属する前記導体回路に至る開口を形成するための前記ショット数との差は1又は2である。
【請求項11】
請求項10のプリント配線板の製造方法であって、前記第1分類に属する前記導体回路に至る開口を形成するための前記ショット数は1であって、前記第2分類に属する前記導体回路に至る開口を形成するための前記ショット数は2である。
【請求項12】
請求項1のプリント配線板の製造方法であって、前記開口を形成することは、前記第1分類に属する前記導体回路に至る全ての前記開口を形成することと前記第2分類に属する前記導体回路に至る全ての前記開口を形成することと、のうちの一つを行い、次いで、他の一つを行うことを含む。
【請求項13】
絶縁層と前記絶縁層上に形成されている複数の導体回路を含む第1導体層と前記絶縁層と前記第1導体層上に形成されている第1樹脂絶縁層とを有する途中基板を保持するためのテーブルと、
前記第1樹脂絶縁層を貫通し前記第1導体層に至るビア導体用の開口を形成するためのレーザ光を発振するレーザ発振器と前記レーザ光の向きを変える偏光部とからなるレーザ加工機と、
前記開口を形成するための加工データを保持する制御部、とからなるプリント配線板を製造するための加工システムであって、
前記加工データは前記開口を形成する位置と前記開口を形成するためのショット数を含み、前記ショット数は前記位置下の前記導体回路の情報に基づいて決定され、前記複数の導体回路は電源用の導体回路とグランド用の導体回路と信号用の導体回路を含み、前記情報は第1分類と第2分類を含み、前記電源用の導体回路と前記グランド用の導体回路は前記第1分類に属し、前記信号用の導体回路は前記第2分類に属し、前記第1分類に属する前記導体回路に至る前記開口を形成するための前記ショット数は前記第2分類に属する前記導体回路に至る前記開口を形成するための前記ショット数より小さい。
【請求項14】
請求項13の加工システムであって、前記第1分類に属する1つの前記導体回路に至る前記開口の数は複数であり、前記第2分類に属する1つの前記導体回路に至る前記開口の数は1つである。
【請求項15】
請求項13の加工システムであって、前記第1分類に属する前記導体回路に至る開口を形成するためのショット数と前記第2分類に属する前記導体回路に至る開口を形成するためのショット数との差は1又は2である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、プリント配線板の製造方法とプリント配線板の製造に用いられる加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数のガルバノヘッドを有するレーザ加工装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
[特許文献1の課題]
特許文献1の技術は、ガルバノヘッドの複数化で生産性の向上を図っている。しかしながら、ガルバノヘッドの複数化のみによって生産性を高くすることは、レーザ加工装置の価格上昇に至ると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプリント配線板の製造方法は、絶縁層と前記絶縁層上に形成されている複数の導体回路を含む第1導体層と前記絶縁層と前記第1導体層上に形成されている第1樹脂絶縁層とを有する途中基板を準備することと、前記第1樹脂絶縁層を貫通し前記第1導体層に至るビア導体用の開口を形成するためのレーザ加工機を準備することと、前記開口を形成する位置を前記レーザ加工機に提供することと、前記位置下の前記導体回路を分類することと、前記分類に基づいて前記開口を形成するためのショット数を前記レーザ加工機に提供することと、前記位置と前記ショット数に基づいて前記開口を形成すること、とを有する。前記複数の導体回路は電源用の導体回路とグランド用の導体回路と信号用の導体回路を含み、前記分類することは前記導体回路を第1分類と第2分類に層別することを含み、前記電源用の導体回路と前記グランド用の導体回路は前記第1分類に属し、前記信号用の導体回路は前記第2分類に属し、前記第1分類に属する前記導体回路に至る前記開口を形成するための前記ショット数は前記第2分類に属する前記導体回路に至る前記開口を形成するための前記ショット数より小さい。
【0006】
ひとつの樹脂絶縁層に複数の開口が形成される場合、例えば、全ての開口が同じショット数で形成される。例えば、信頼性の観点からショット数が決定される。信号用の導体回路はデータを伝送するので、信号用の導体回路に至る開口の品質は重要である。そのため、ひとつの樹脂絶縁層内のすべての開口は、信号用の導体回路に至る開口を形成するためのショット数(信号用ショット数)で形成される。信頼性を高くするため、信号用ショット数は複数である。それに対し、本発明の実施形態の製造方法は、各導体回路を第1分類と第2分類に層別する。そして、第1分類に属する導体回路に至る開口を形成するためのショット数は第2分類に属する導体回路に至る開口を形成するためのショット数より小さい。全ての開口が第2分類に属する導体回路に至る開口を形成するためのショット数で形成されない。そのため、開口形成に要する加工時間が短縮される。プリント配線板の生産性が向上する。
【0007】
本発明の実施形態の加工システムは、絶縁層と前記絶縁層上に形成されている複数の導体回路を含む第1導体層と前記絶縁層と前記第1導体層上に形成されている第1樹脂絶縁層とを有する途中基板を保持するためのテーブルと、前記第1樹脂絶縁層を貫通し前記第1導体層に至るビア導体用の開口を形成するためのレーザ光を発振するレーザ発振器と前記レーザ光の向きを変える偏光部とからなるレーザ加工機と、前記開口を形成するための加工データを保持する制御部、とからなるプリント配線板を製造するための加工システムである。前記加工データは前記開口を形成する位置と前記開口を形成するためのショット数を含み、前記ショット数は前記位置下の前記導体回路の情報に基づいて決定され、前記複数の導体回路は電源用の導体回路とグランド用の導体回路と信号用の導体回路を含み、前記情報は第1分類と第2分類を含み、前記電源用の導体回路と前記グランド用の導体回路は前記第1分類に属し、前記信号用の導体回路は前記第2分類に属し、前記第1分類に属する前記導体回路に至る前記開口を形成するための前記ショット数は前記第2分類に属する前記導体回路に至る前記開口を形成するための前記ショット数より小さい。
【0008】
本発明の実施形態の加工システムでは、レーザ加工機は、制御部に保持されている加工データに含まれる位置とショット数に従って開口を形成する。ショット数は、位置下の導体回路の情報に応じて決定される。第1分類に属する導体回路に至る開口を形成するためのショット数は第2分類に属する導体回路に至る開口を形成するためのショット数より小さい。そのため、開口形成に要する加工時間が短縮される。プリント配線板の生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の加工システムを模式的に示す説明図。
【
図4】ショット数決定処理を説明するフローチャート。
【
図9A】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図9B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図9C】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図9D】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図9E】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図9F】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
図1は、実施形態の加工システム2を模式的に示す説明図である。
図1に示される加工システム2は、途中基板12にビア導体用の開口16を形成するためのシステムである。加工システム2は、テーブル10とレーザ加工機20と制御装置50と端末装置100とを備えている。
【0011】
テーブル10は、途中基板12を保持する。テーブル10上に途中基板12が置かれる。
図1では途中基板12は模式的に描かれている。途中基板12は、絶縁層と、絶縁層上に形成されている複数の導体回路を含む第1導体層と、絶縁層と第1導体層上に形成されている第1樹脂絶縁層とを有する。途中基板12は位置決め用のアライメントマーク14を有する。テーブル10は、途中基板12をX-Y方向に移動する。
【0012】
レーザ加工機20はレーザ発振器25と光学系30とガルバノヘッド40とを有する。レーザ発振器25はレーザ光源である。レーザ発振器25はCO2レーザ光を発振する。
【0013】
レーザ光は光学系30を介しガルバノヘッド40に至る。光学系30は集光レンズ32とコリメートレンズ34とミラー36とマスク38とを含む。
【0014】
ガルバノヘッド40はレーザ光の照射位置を制御する。ガルバノヘッド40は、ガルバノミラー44X、44Yとモータ42X、42Yとf-θレンズ46を備える。ガルバノミラー44XはX方向の位置を制御する。ガルバノミラー44YはY方向の位置を制御する。モータ42X、42Yは、ガルバノミラー44X、44Yを駆動する。モータ42X、42Yは、制御装置50の指示に応じてガルバノミラー44X、44Yの角度を調節する。f-θレンズ46はレーザ光を目標位置に集光する。レーザ光は、ガルバノヘッド40を介し、途中基板12の第1樹脂絶縁層に照射される。レーザ光は第1樹脂絶縁層を貫通して第1導体層に至る。第1樹脂絶縁層を貫通するビア導体用の開口16が形成される。一つの開口16を形成するためにレーザ光は1回または複数回照射される。レーザ光の照射回数はショット数と呼ばれる。
【0015】
制御装置50は、テーブル10とレーザ発振器25とガルバノヘッド40の動作を制御する。
図2に示されるように、制御装置50は、表示部52と操作部54とCPU56とメモリ58と通信I/F(インターフェース)60とメディアI/F62とを備えている。操作部54はマウスとキーボードを含む。ユーザ(例えばレーザ加工機20のオペレータ)は、操作部54を操作することで様々な指示を入力することができる。
【0016】
CPU56は、メモリ58に記憶されているプログラムに従って様々な処理を実行する。また、メモリ58には加工データが保存されている。加工データは各開口16の位置と開口16毎のレーザ光のショット数を含む。CPU56は、加工データに従って開口16の形成を命令する。
【0017】
通信I/F60は通信ネットワークに接続されている。CPU56は、通信I/F60と通信ネットワークを介して、外部端末(端末装置100等)と通信できる。メディアI/F62は、記録媒体の読み書きを行う。
【0018】
端末装置100は、制御装置50とは別に設置されている。端末装置100の例はコンピュータである。
図3に示されるように、端末装置100は、表示部102と操作部104とCPU106とメモリ108と通信I/F110とメディアI/F112とを備えている。操作部104はマウスとキーボードを含む。ユーザ(例えばプリント配線板の設計者)は、操作部104を操作することで様々な指示を端末装置100に入力することができる。
【0019】
CPU106は、メモリ108に記憶されているプログラムに従って様々な処理を実行する。CPU106はショット数を決定することができる。メモリ108は、プリント配線板の設計データを記憶している。通信I/F110は通信ネットワークに接続されている。CPU106は、通信I/F110と通信ネットワークを介して、制御装置50と通信できる。メディアI/F112は、記録媒体の読み書きを行う。
【0020】
実施形態の加工システム2では、端末装置100は、プリント配線板の設計データに基づいて、ビア導体用の開口16を形成するための加工データを生成する(
図4参照)。加工データは開口16の位置と開口16を形成するためのショット数を含む。端末装置100は加工データを制御装置50に供給する。制御装置50は、加工データに基づいてテーブル10とレーザ発振器25とガルバノヘッド40を制御する。
【0021】
[ショット数決定処理]
図4は、端末装置100のCPU106によって実行されるショット数決定処理を示すフローチャートである。ショット数決定処理は、設計データに基づいて加工データを生成する。端末装置100のユーザが操作部104に所定の開始操作を入力すると、CPU106は
図4の処理を開始する。
【0022】
S10では、CPU106は、メモリ108に記憶されている設計データを読み出す。設計データから導体層のレイアウトが読みだされる。プリント配線板は複数の導体層を含む。そのため、設計データは導体層毎のレイアウトデータを含む。
図5は、複数の導体回路210、220、230、240、250、260、270、280を含む第1導体層204のレイアウトを模式的に示す。
図5は設計データに含まれる複数の導体層のうちの第1導体層204のレイアウトを示す。
【0023】
図5に示されるように、第1導体層204のレイアウトはX-Y平面上に描かれることが好ましい。X-Y平面はX軸とY軸を含む。レイアウトは座標上の導体の有無に関する情報を含んでいる。第1導体層204中の複数の導体回路210等は座標と関連している。各導体回路210等は位置情報を有している。位置情報を位置と称することができる。
【0024】
図4のS12では、CPU106は、一つの導体層に含まれる各導体回路を分類する。第1導体層204は、電源用の導体回路とグランド用の導体回路と信号用の導体回路を含む。各導体回路は第1分類と第2分類に層別される。電源用の導体回路とグランド用の導体回路は第1分類に属する。信号用の導体回路は第2分類に属する。第1分類に属する導体回路は電源用の導体回路とグランド用の導体回路に分類されてもよい。各導体回路は位置情報を有しているため、座標と導体回路の分類は関連する。
【0025】
S12の分類は様々な手法で行われてもよい。分類の手法の例が以下に説明される。
【0026】
[第1例]
第1例では、CPU106は、第1導体層204のレイアウト(
図5参照)を解析する。解析の結果に基づいて分類が行われる。例えば、CPU106は、各導体回路の幅を解析する。そして、幅に応じて導体回路が分類される。基準値以上の幅を有する導体回路は第1分類に分類される。
図5の例では、導体回路210、230、260は第1分類に属する。基準値未満の幅を有する導体回路は第2分類に分類される。
図5の例では、導体回路220、240、250、270、280は第2分類に属する。信号用の導体回路は第2分類に属する。
【0027】
[第2例]
第2例では、CPU106は、各導体回路の形状から各導体回路を分類する。例えば、CPU106は、導体回路が
図6Aと
図6Bに示される開口80を有しているかどうかを解析する。
図6Aは一つの導体回路82の上面図である。
図6Bは
図6A中のX1とX2との間の断面図である。
図6Aと
図6Bに示される導体回路82は絶縁層84上に形成されている。
図6Aと
図6Bに示されるように、導体回路82内に形成されている開口80は絶縁層84を露出している。絶縁層84を露出する開口80を有する導体回路82は第1分類に分類される。絶縁層を露出する開口80を有していない導体回路は第2分類に分類される。
図5の例では、導体回路210、230、260は開口80を有する。導体回路210、230、260は第1分類に分類される。導体回路220、240、250、270、280は開口80を有していない。導体回路220、240、250、270、280は第2分類に分類される。
【0028】
[第3例]
第3例では、CPU106は、各導体回路に至る開口16の数から各導体回路を分類する。例えば、一つの導体回路に複数の開口16が至る場合、CPU106は導体回路を第1分類に分類する。一つの導体回路に一つの開口16が至る場合、CPU106は導体回路を第2分類に分類する。導体回路210、230、260には複数の開口16が至る。そのため、導体回路210、230、260は第1分類に分類される。導体回路220、240、250、270、280には1個の開口16が至る。そのため、導体回路220、240、250、270、280は第2分類に分類される。
【0029】
[第4例]
第4例では、CPU106は、各導体回路の接続先から各導体回路を分類する。接続先の例はロジックICである。例えば、導体回路の接続先がロジックIC内の信号に繋がると、CPU106は導体回路を第2分類に分類する。導体回路の接続先がロジックIC内の電源であると、CPU106は導体回路を電源用の導体回路に分類する。ロジックIC内の電源に繋がっている導体回路は第1分類に分類される。導体回路の接続先がロジックIC内のグランドであると、CPU106は導体回路をグランド用の導体回路に分類する。ロジックIC内のグランドに繋がっている導体回路は第1分類に分類される。
【0030】
[第5例]
第5例では、CPU106は、各導体回路に至る開口16の位置から各導体回路を分類する。例えば、導体回路の端部に開口16が至っていると、CPU106は導体回路を第2分類に分類する。導体回路の中央部分に開口16が至っていると、CPU106は導体回路を第1分類に分類する。
【0031】
S12では、導体回路を分類するため、第1例~第5例の2つ以上の手法を任意に組み合わせることができる。
【0032】
S14では、CPU106は、S12の分類の結果に応じて、開口16を形成するためのレーザ光のショット数を決定する。CPU106は、第1分類に属する導体回路に至る開口16を形成するためのショット数(第1ショット数)と第2分類に属する導体回路に至る開口16を形成するためのショット数(第2ショット数)を決定する。例えば、第1ショット数は1であり、第2ショット数は2である。第1ショット数は第2ショット数より小さい。第2ショット数と第1ショット数の差は1、または、2である。1が好ましい。
【0033】
S16では、CPU106は加工データを生成する。加工データは、設計データに含まれている各開口の位置と開口毎のショット数と各導体回路の種類を含む。加工データでは、位置とショット数と導体回路の種類が関連している。
図7は、加工データ中の開口16のレイアウトを模式的に示す。開口16のレイアウトは各開口16の位置を含む。開口16の位置は開口16の中心で代表される。
図7では中心は点で描かれている。あるいは、開口16の位置は開口16の重心で代表される。
図7では重心は点で描かれている。
【0034】
図7に示されるように、開口16のレイアウトはX-Y平面上に描かれることが好ましい。X-Y平面はX軸とY軸を含む。各開口16の中心と座標は関連している。各開口16の重心と座標は関連している。各開口16は位置情報を有している。位置情報を位置と称することができる。
図5と
図7のX軸とY軸は共通であることが好ましい。あるいは、
図5に示されるX-Y平面に垂直な光で
図7に示されるX-Y平面が
図5のX-Y平面に投影されると、
図5のX軸と
図7のX軸は重なる。
図5のY軸と
図7のY軸は重なる。従って、第1導体層204のレイアウト内の位置と開口16のレイアウト内の位置は関連している。開口16が指定されると、指定された開口16の到達先に位置する導体回路が分かる。指定された開口16により露出される導体回路は分かる。開口16と導体回路の分類は関連する。開口16の位置と導体回路の分類は関連する。
【0035】
図7では、第1導体層204の位置と開口16の位置の関係が分かるように、第1導体層204中の各導体回路の輪郭が点線で描かれている。
図7中に複数の一重円と複数の二重円が描かれている。一重円と二重円は開口16を示す。一重円で示される開口212、232、262を形成するためのショット数が1である。一重円で示される開口は1ショットで形成される。二重円で示される開口222、242、252、272、282を形成するためのショット数が2である。二重円で示される開口は2ショットで形成される。以下、一重円で示される開口を「1ショット開口」と呼ぶことができる。二重円で示される開口を「2ショット開口」と呼ぶことができる。開口16のレイアウトは、さらに、各開口16の径を含むことができる。
【0036】
図4のS18では、CPU106は、加工データを制御装置50に供給する。具体的には、CPU106は、通信I/F110と通信ネットワークを介して加工データを制御装置50に供給する。S18が完了するとCPU106は
図4の処理を終了する。
【0037】
[開口形成処理]
図8は、制御装置50のCPU56によって実行される開口形成処理を示すフローチャートである。開口形成処理は、加工データに従って行われる。開口形成処理は途中基板12(
図1)に開口16を形成する。
図8の開口形成処理が行われる時、制御装置50のメモリ58には加工データ(
図4のS16、S18参照)が記憶されている。制御装置50のユーザが操作部54に所定の開始操作を入力すると、CPU56は
図8の処理を開始する。
【0038】
S30では、CPU56は、メモリ58内の加工データを読み出す。S32では、CPU56は、加工データのうち、現在のスキャンエリア内の2ショット開口の位置をすべて特定する。すなわち、CPU56は第2分類に属する導体回路に至る開口の形成位置を特定する。
【0039】
S34では、CPU56は、S32で特定される位置に開口を形成する。具体的には、CPU56は、テーブル10とレーザ発振器25とガルバノヘッド40を制御することで、スキャンエリア内のすべての2ショット開口を形成する。各開口は2ショットで形成される。2ショット開口はバーストモードで形成される。スキャンエリア内のすべての2ショット開口が形成されると、S34の処理が終了する。バーストモードは特開2002―144060に開示されている。
【0040】
S36では、CPU56は、加工データのうち、スキャンエリア内の1ショット開口の位置をすべて特定する。S36ではCPU56は第1分類に属する導体回路に至る開口の形成位置を特定する。
【0041】
S38では、CPU56は、S36で特定される位置に開口を形成する。具体的には、CPU56は、テーブル10とレーザ発振器25とガルバノヘッド40を制御することで、スキャンエリア内のすべての1ショット開口を形成する。この際、各開口は1ショットで形成される。スキャンエリア内のすべての1ショット開口が形成されると、S38の処理が終了する。
【0042】
S40では、CPU56は、すべてのスキャンエリア内の開口が形成されているかどうかを判断する。すべてのスキャンエリア内の開口が形成されていない場合、CPU56はS40でNOと判断し、S42に進む。S42では、CPU56は、テーブル10を制御することで次のスキャンエリアに移動する。CPU56はS32~S38の処理を再度行う。この結果、次のスキャンエリア内に1ショット開口と2ショット開口が形成される。
【0043】
すべてのスキャンエリア内の1ショット開口と2ショット開口の形成が終了すると、CPU56はS40でYESと判断する。CPU56は
図8の処理を終了する。
【0044】
開口を形成する別例が次に示される。スキャンエリア内の開口を形成するすべての位置にサイクルモードで1ショットが照射される。これにより、スキャンエリア内の全ての1ショット開口が形成される。続いて、2ショット開口を形成する位置にサイクルモードで1ショットが照射される。これにより、スキャンエリア内の全ての2ショット開口が形成される。サイクルモードは特開2002―144060に開示されている。
【0045】
上記の通り、実施形態では、開口位置下の導体回路の情報に応じてショット数が異なる。情報は第1分類と第2分類を含む。すべての開口を2ショットで形成する方法と実施形態を比較すると、実施形態は、開口形成に要する加工時間を短縮することができる。
【0046】
[プリント配線板の製造工程]
図9A~
図9Fは実施形態に係る加工システム2を用いるプリント配線板の製造工程を示す。
図9A~
図9Fは断面図である。
【0047】
図9Aに示されるように、途中基板300が準備される。途中基板300は、絶縁層302と絶縁層302上に形成されている複数の導体回路310、320、330、340を含む第1導体層304と絶縁層302と第1導体層304上に形成されている第1樹脂絶縁層350とを有する。導体回路310は電源用の導体回路である。導体回路320、330は信号用の導体回路である。導体回路340はグランド用の導体回路340である。第1導体層304を形成する導体回路310、320、330、340は、絶縁層302上に形成されているシード層306とシード層306上に形成されている電解めっき膜308で形成されている。
【0048】
図9Bに示されるように、第1樹脂絶縁層350を貫通して第1導体層304に至るビア導体用の開口360、370、380、390が形成される。一つの電源用の導体回路310上には複数の開口360が形成される。一つの信号用の導体回路320、330上には1つの開口370、380が形成される。一つのグランド用の導体回路340上には複数の開口390が形成される。開口360、370、380、390は、開口形成処理(
図8)に準じて形成される。
【0049】
図9Cに示されるように、第1樹脂絶縁層350上にシード層400が形成される。シード層400は、開口360、370、380、390の内壁面と、開口360、370、380、390から露出する導体回路310、320、330、340上に形成される。
【0050】
図9Dに示されるように、シード層400上にめっきレジスト500が形成される。
【0051】
図9Eに示されるように、めっきレジスト500から露出するシード層400上に電解めっき膜402が形成される。電解めっき膜402は、開口360、370、380、390を充填する。これにより、ビア導体415、425、435、445が形成される。
【0052】
めっきレジスト500が除去される。
図9Fに示されるように、導体回路410、420、430、440から露出するシード層400が除去される。第1樹脂絶縁層350上に第2導体層404が形成される。多層プリント配線板が形成される。
【0053】
第2導体層404は電源用の導体回路410とグランド用の導体回路440と信号用の導体回路420、430を含む。第1導体層304内の一つの電源用の導体回路310と第2導体層404内の一つの電源用の導体回路410は複数のビア導体415を介して接続される。第1導体層304内の一つの電源用の導体回路310と第2導体層404内の一つの電源用の導体回路410は複数のビア導体415を介して並列に繋がっている。
【0054】
第1導体層304内の一つのグランド用の導体回路340と第2導体層404内の一つのグランド用の導体回路440は複数のビア導体445を介して接続される。第1導体層304内の一つのグランド用の導体回路340と第2導体層404内の一つのグランド用の導体回路440は複数のビア導体445を介して並列に繋がっている。
【0055】
第1分類に属する導体回路では、一つの導体回路に複数のビア導体が繋がっている。例えば、第1分類に属する一つの導体回路に至る複数のビア導体の中の一つのビア導体が断線しても、他のビア導体を介して導通が確保される。そのため、第1分類に属する導体回路に至る開口16を第1ショット数で形成することができる。
【0056】
第1導体層304内の一つの信号用の導体回路320(330)と第2導体層404内の一つの信号用の導体回路420(430)は一つのビア導体425(435)を介して接続される。第1導体層304内の一つの信号用の導体回路320(330)と第2導体層404内の一つの信号用の導体回路420(430)は一つのビア導体425(435)を介して直列に繋がっている。信号用の導体回路に至る開口16は1つのみである(
図7参照)。信号用の導体回路に至る開口を第2ショット数で形成することにより、開口16内の樹脂残渣を小さくすることができる。信号用の導体回路の接続信頼性が確保される。
【0057】
電源用の導体回路310に至る開口3601やグランド用の導体回路340に至る開口3901が「第1開口」の例である(
図9B~
図9F)。電源用の導体回路310に至る開口3602やグランド用の導体回路340に至る開口3902が「第2開口」の例である(
図9B~
図9F)。電源用の導体回路310に繋がっているビア導体4151やグランド用の導体回路340に繋がっているビア導体4451が「第1ビア導体」の例である。電源用の導体回路310に繋がっているビア導体4152やグランド用の導体回路340に繋がっているビア導体4452が「第2ビア導体」の例である(
図9E、
図9F)。光学系30とガルバノヘッド40(
図1)が「偏光部」の例である。制御装置50が「制御部」の例である。
【0058】
[実施形態の第1改変例]
第1改変例では、制御装置50のCPU56がショット数決定処理(
図4)と開口形成処理(
図8)を行う。これにより、端末装置100が不要である。
【0059】
[実施形態の第2改変例]
第2改変例では、ショット数決定処理(
図4)で、第1ショット数が「2」に決定され、第2ショット数が「3」に決定される。第1ショット数と第2ショット数の差は1である。
【0060】
[第2改変例の別例]
第2改変例の別例では、ショット数決定処理(
図4)で、第1ショット数が「1」に決定され、第2ショット数が「3」に決定される。第1ショット数と第2ショット数の差は2である。
【0061】
[実施形態の第3改変例]
実施形態では、位置とショット数を含む加工データが制御装置50に提供される。それに対し、第3改変例では、開口を形成する位置を含むデータと開口を形成するためのショット数を含むデータが別個に制御装置50に提供される。
【0062】
[実施形態の第4改変例]
第4改変例では、設計データに含まれる各導体層のレイアウトデータが、各導体回路の種別(電源用導体回路、グランド用導体回路、信号用導体回路)を示す情報を含む。各導体回路の種別を示す情報は、設計データの作成時に各導体回路の位置情報に関連付けられる。各導体回路と導体回路の種別を示す情報は設計データを作るデザイナーによって関連付けられてもよい。デザイナーが各導体回路を分類する場合、デザイナーによる分類は本発明の実施形態の分類に含まれる。デザイナーによる導体回路の分類は実施形態の分類に含まれる。第4改変例では、
図4のS10で、CPU106は、メモリ108に記憶されている設計データを読み出す。設計データから導体層のレイアウトが読みだされる。S12では、CPU106は、レイアウトに含まれる各導体回路の種別を示す情報を読み出す。CPU106は、読み出される情報に基づいて各導体回路の種別を判定する。この結果、CPU106によって各導体回路が分類される。第4改変例におけるS12の処理は「分類すること」の一例である。
【符号の説明】
【0063】
2 :加工システム
10 :テーブル
12 :途中基板
16 :開口
20 :レーザ加工機
25 :レーザ発振器
30 :光学系
40 :ガルバノヘッド
50 :制御装置
100 :端末装置
204 :第1導体層
210 :電源用の導体回路
220 :信号用の導体回路
230 :グランド用の導体回路
240 :信号用の導体回路
250 :信号用の導体回路
260 :電源用の導体回路
270 :信号用の導体回路
280 :信号用の導体回路