(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069185
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】テンション式防煙垂壁
(51)【国際特許分類】
A62C 2/06 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
A62C2/06 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180867
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】514043067
【氏名又は名称】株式会社ミヨシ
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【弁理士】
【氏名又は名称】信末 孝之
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】石山 久夫
(57)【要約】
【課題】牽引装置の幅を短くして軽量化を図るとともに、不燃シート左右の意匠性を高めることが可能なテンション式防煙垂壁を提供する。
【解決手段】不燃シート30と、不燃シート30を左右から牽引する牽引装置10,20とから構成されたテンション式防煙垂壁100であって、牽引装置10,20は、テンションカバー11,21と、テンションカバー11,21内を移動するテンションバー12,2と、不燃シート30をテンションバー12,22に固定する固定手段と、テンションバー12,22を移動する移動手段とを有し、固定手段と移動手段とを、不燃シート30の牽引方向に直交する方向に重なるように配置した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不燃シートと、該不燃シートを左右から牽引する牽引装置とから構成されたテンション式防煙垂壁であって、
前記牽引装置は、テンションカバーと、前記テンションカバー内を移動するテンションバーと、前記不燃シートを前記テンションバーに固定する固定手段と、前記テンションバーを移動する移動手段とを有し、
前記固定手段と前記移動手段とを、前記不燃シートの牽引方向に直交する方向に重なるように配置したことを特徴とするテンション式防煙垂壁。
【請求項2】
前記固定手段が、前記テンションバーとの間に前記不燃シートを挟み込むシート押さえであることを特徴とする請求項1に記載のテンション式防煙垂壁。
【請求項3】
前記移動手段が、ボルトナットであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテンション式防煙垂壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防煙垂壁に関するものであり、より詳細には、不燃シートと、不燃シートを左右から牽引する牽引装置とから構成されたテンション式防煙垂壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大型店舗(オフィスビル、デパート等)の商業施設には、防煙垂壁を設けて火災の際に天井面に発生する煙に対して煙の移動を防ぐことにより、内部で働く事務員、店員、あるいは訪問客等の生命を守っている。建築基準法によると、延べ面積や階段が所定以上の建築物には防煙垂壁を不燃材料で設けることが義務付けられ、多数の防煙垂壁(仕切り垂壁ともいう)が設けられている。
【0003】
この防煙垂壁の素材は、ガラス板を用いていたが、地震災害が発生した際、デパートでは店内を逃げ惑う買物客に天井から割れたガラスが降りかかり、頭部をはじめとし身体等に怪我をする恐れがあり、ガラスに代えて不燃シートが用いられるようになった。
【0004】
不燃シートを用いた防煙垂壁としては、不燃シートをパネル枠で囲んだパネル式防煙垂壁や、不燃シートの左右両端に牽引装置を設けて張力を与え不燃シートの皺や弛みを補正するようにしたテンション式防煙垂壁がある。
【0005】
このうち、テンション式防煙垂壁として、例えば特許文献1には、シート状防煙垂壁におけるシートに発生した皺の補正装置に関する発明が記載されている。
図5は、特許文献1に記載された皺の補正装置の概要を示す断面図である。以下、皺の補正装置を牽引装置と称し、用語及び符号を適宜変更して説明する。
【0006】
従来例に係るテンション式防煙垂壁の牽引装置40は、2つのテンションカバー41a,41bからなるテンションカバー41と、テンションカバー41内を移動するテンションバー42と、不燃シート30をテンションバー42に固定する固定手段であるシート押さえ46と、テンションバー42を移動する移動手段であるボルトナット44,45を有している。テンションカバー41はドリルビス8により壁等に固定されている。不燃シート30は、テンションカバー41a,41bの間のスリット47に挿通され、テンションバー42とシート押さえ46との間に挟み込まれてネジ43で固定されている。そして、ボルトナット44,45によりテンションバー42を移動して不燃シート30を牽引するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5に示す従来例に係るテンション式防煙垂壁の牽引装置40では、不燃シート30をテンションバー42に固定する固定手段(テンションバー42とシート押さえ46との固定部)と、テンションバー42を移動する移動手段(ボルトナット44,45)とが、不燃シート30の牽引方向に一直線上に並んでいる。そのため、テンションカバー41の幅(
図5の左右方向の幅)が長くなってしまい、重量が嵩み、不燃シート左右の意匠性も低くなる。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、牽引装置の幅を短くして軽量化を図るとともに、不燃シート左右の意匠性を高めることが可能なテンション式防煙垂壁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のテンション式防煙垂壁は、不燃シートと、該不燃シートを左右から牽引する牽引装置とから構成されたテンション式防煙垂壁であって、前記牽引装置は、テンションカバーと、前記テンションカバー内を移動するテンションバーと、前記不燃シートを前記テンションバーに固定する固定手段と、前記テンションバーを移動する移動手段とを有し、前記固定手段と前記移動手段とを、前記不燃シートの牽引方向に直交する方向に重なるように配置したことを特徴とする。
【0011】
また好ましくは、前記固定手段が、前記テンションバーとの間に前記不燃シートを挟み込むシート押さえであることを特徴とする。
【0012】
また好ましくは、前記移動手段が、ボルトナットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のテンション式防煙垂壁は、不燃シートと、不燃シートを左右から牽引する牽引装置とから構成されており、牽引装置が、テンションカバーと、テンションカバー内を移動するテンションバーと、不燃シートをテンションバーに固定する固定手段と、テンションバーを移動する移動手段とを有している。そして、固定手段と移動手段とが、不燃シートの牽引方向に直交する方向に重なるように配置されている。従って、固定手段と移動手段とが、不燃シートの牽引方向に一直線上に並ぶことがなく、テンションカバーの幅を短くして軽量化を図り、不燃シート左右の意匠性を高めることができる。
【0014】
また、固定手段が、テンションバーとの間に不燃シートを挟み込むシート押さえである場合には、簡単な構成で不燃シートを確実に固定することができる。
【0015】
また、移動手段が、ボルトナットである場合には、簡単な構成でテンションバーを確実に移動することができる。
【0016】
このように、本発明によれば、牽引装置の幅を短くして軽量化を図るとともに、不燃シート左右の意匠性を高めることが可能なテンション式防煙垂壁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るテンション式防煙垂壁の設置状態を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る牽引装置を示す拡大断面図である。
【
図5】従来例に係る牽引装置を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、
図1乃至
図4を参照して、本発明の実施形態に係るテンション式防煙垂壁について説明する。本実施形態に係るテンション式防煙垂壁は、不燃シートと、不燃シートを左右から牽引する牽引装置とから構成されており、天井に設けられた天井レールに吊り下げられるものである。
【0019】
図1は、本実施形態に係るテンション式防煙垂壁100の設置状態を示す斜視図であり、
図2は
図1のa-a断面図、
図3は
図1のb-b断面図である。
【0020】
図1及び
図2に示すように、施設の天井部分には、複数の野縁2が架けられており、野縁2の下面には天井ボード1を介してテンション式防煙垂壁100を吊り下げるための天井レール3が取り付けられている。そして、天井レール3にネジ6によって不燃シート30が取り付けられている。
【0021】
テンション式防煙垂壁100は、不燃シート30と、不燃シート30を左右から牽引する牽引装置10,20とから構成されている。不燃シート30は、左右の牽引装置10,20の間に張られ、牽引装置10,20により左右から引っ張られることにより、皺や弛みを補正するようになっている。
【0022】
図3に示すように、牽引装置10,20は、それぞれ壁7を介して下地9にドリルビス8によって固定されている。以下、左右の牽引装置10,20について詳細に説明する。
【0023】
図4は、本実施形態に係る牽引装置10を示す拡大断面図である。なお、牽引装置20も同様の構成であるため、説明を省略する。
【0024】
牽引装置10は、2つのテンションカバー11a,11bからなるテンションカバー11と、テンションカバー11内を移動するテンションバー12と、不燃シート30をテンションバー12に固定する固定手段であるシート押さえ16と、テンションバー12を移動する移動手段であるボルトナット14,15を有している。
【0025】
テンションカバー11aは、断面略コ字状の長尺部材であり、片面がドリルビス8により壁7に固定されている。テンションカバー11bは、断面略L字状の長尺部材である。そして、2つのテンションカバー11a,11bが組み合わされて断面ロ字状の長尺部材であるテンションカバー11が構成されるとともに、2つのテンションカバー11a,11bの突合せ部分に、不燃シート30を挿通させるためのスリット17が形成されている。
【0026】
テンションバー12は、複数の面(12a,12b,12c)が形成された長尺部材である。面12aは、ボルト14が挿通するボルト挿通面であり、ボルト14に直交している。面12aの一端は、不燃シート30の牽引に伴いテンションカバー11bの内壁に沿って摺動するようになっており、他端は折曲して面12bに接続されている。面12bは、シート押さえ16が当接するとともにネジ13が螺合する不燃シート固定面であり、不燃シート30の牽引方向に平行である。面12bからは面12cがテンションカバー11aに向かって面12aと平行に延びており、面12cの端部が、不燃シート30の牽引に伴いテンションカバー11aの内壁に沿って摺動するようになっている。テンションカバー11及びテンションバー12は、いずれも設置時における上下方向に延びる長尺部材である。
【0027】
不燃シート30は、テンションカバー11a,11bの間のスリット17に挿通され、テンションバー12の面12bとシート押さえ16との間に挟み込まれてネジ13により固定されている。
【0028】
また、ボルト14がテンションバー12の面12aに挿通され、その基端部がテンションカバー11bの壁7側の内壁に固定されている。そして、ナット45を回転させることにより、テンションバー12を移動して不燃シート30を牽引するようになっている。
【0029】
ここで、牽引装置10において、固定手段であるシート押さえ16(特に、テンションバー12とシート押さえ16との固定部)と移動手段であるボルトナット14,15(特に、ボルト14の不燃シート側の先端部)とは、不燃シート30の牽引方向(
図4における左右方向)に直交する方向(
図4における上下方向)に重なるように配置されている。すなわち、固定手段と移動手段とが不燃シート30の牽引方向に一直線上に並ぶことがないため、テンションカバー11の幅(
図4における左右方向)が従来例と比較して短くなっている。
【0030】
本実施形態に係るテンション式防煙垂壁100は、不燃シート30と、不燃シート30を左右から牽引する牽引装置10(20)とから構成されており、牽引装置10(20)が、テンションカバー11と、テンションカバー11内を移動するテンションバー12と、不燃シート30をテンションバー12に固定する固定手段であるシート押さえ16と、テンションバー12を移動する移動手段であるボルトナット14,15とを有している。そして、シート押さえ16とボルトナット14,15とが、不燃シート30の牽引方向に直交する方向に重なるように配置されている。従って、シート押さえ16とボルトナット14,15とが、不燃シート30の牽引方向に一直線上に並ぶことがなく、テンションカバー11の幅を短くして軽量化を図り、不燃シート左右の意匠性を高めることができる。
【0031】
また、固定手段を、テンションバー12との間に不燃シート30を挟み込むシート押さえ16とすることにより、簡単な構成で不燃シート30を確実に固定することができる。
【0032】
また、移動手段を、ボルトナット14,15とすることにより、簡単な構成でテンションバー12を確実に移動することができる。
【0033】
このように、本実施形態に係るテンション式防煙垂壁は、牽引装置の幅を短くして軽量化を図るとともに、不燃シート左右の意匠性を高めることが可能なものである。
【0034】
以上、本発明の実施形態に係るテンション式防煙垂壁について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
【0035】
例えば、固定手段及び移動手段は、不燃シートの牽引方向に直交する方向に重なるように配置したものであれば、他の構成であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 天井ボード
2 野縁
3 天井レール
4 ビス
5 底板
6 ネジ
7 壁
8 ドリルビス
9 下地
10 牽引装置
11 テンションカバー
12 テンションバー
13 ネジ
14 ボルト
15 ナット
16 シート押さえ
17 スリット
20 牽引装置
30 不燃シート
40 牽引装置
41 テンションカバー
42 テンションバー
43 ネジ
44 ボルト
45 ナット
46 シート押さえ
47 スリット
100 テンション式防煙垂壁