(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069207
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】子宮筋腫のサブタイプ予測プログラム、予測方法および予測装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
A61B5/055 380
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180924
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】爲久 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】杉野 法広
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA03
4C096AA04
4C096AA17
4C096AB41
4C096AD14
4C096AD24
4C096DC20
4C096DC22
4C096DC28
(57)【要約】
【課題】子宮筋腫のサブタイプおよび組織構成を非侵襲的に予測する。
【解決手段】本発明に係る子宮筋腫のサブタイプ予測プログラム(本プログラム)は、子宮筋腫が撮影されたMRI画像に基づいて、子宮筋腫のサブタイプが、MED12変異を有する特定サブタイプか否かを予測する。MRI画像は、人体組織において線維化の程度の評価が可能である特定撮影条件で撮影される。本プログラムは、少なくとも1のプロセッサを、MRI画像を取得する画像取得部131、取得されたMRI画像において、子宮筋腫が撮影されている領域を関心領域として抽出する領域抽出部133、関心領域において、関心領域を構成する画素に基づいてシグナル強度を取得するシグナル強度取得部134、シグナル強度に基づいて、関心領域に撮影されている子宮筋腫における特定サブタイプの有無およびその組織構成を予測する予測部135、として機能させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮筋腫が撮影されたMRI画像に基づいて、前記子宮筋腫のサブタイプが、MED12(Mediator complex subunit 12)変異を有する特定サブタイプか否かおよびその組織構成を予測する子宮筋腫のサブタイプ予測装置として機能させる子宮筋腫のサブタイプ予測プログラムであって、
前記MRI画像は、人体組織において線維化の度合いの評価が可能である特定撮影条件で撮影され、
前記サブタイプ予測装置は、
少なくとも1のプロセッサ、
を備え、
少なくとも1の前記プロセッサを、
前記MRI画像を取得する画像取得部、
取得された前記MRI画像において、前記子宮筋腫が撮影されている領域を関心領域として抽出する領域抽出部、
前記関心領域において、前記関心領域を構成する画素に基づいて、前記特定撮影条件に対応するシグナル強度を取得するシグナル強度取得部、
前記シグナル強度に基づいて、前記関心領域に撮影されている前記子宮筋腫における前記特定サブタイプの有無、および前記関心領域に撮影されている前記子宮筋腫の前記組織構成を予測する予測部、
として機能させる、
ことを特徴とする子宮筋腫のサブタイプ予測プログラム。
【請求項2】
前記特定撮影条件は、T2WI、ADC、T1map、T2*BOLDのいずれかである、
請求項1記載の子宮筋腫のサブタイプ予測プログラム。
【請求項3】
前記シグナル強度取得部は、前記シグナル強度の平均値を算出し、
前記予測部は、前記平均値と、所定の閾値と、の比較結果に基づいて、前記子宮筋腫が前記特定サブタイプか否かを予測する、
請求項1または2記載の子宮筋腫のサブタイプ予測プログラム。
【請求項4】
前記子宮筋腫のサブタイプ予測装置は、
前記MRI画像の画素情報と、前記シグナル強度と、の対応関係を示す対応関係情報を記憶する記憶部、
を備え、
前記シグナル強度取得部は、前記対応関係情報に基づいて、前記シグナル強度を取得する、
請求項3記載の子宮筋腫のサブタイプ予測プログラム。
【請求項5】
前記記憶部は、前記特定撮影条件ごとに前記対応関係情報を記憶し、
少なくとも1の前記プロセッサは、
前記MRI画像に基づいて、前記特定撮影条件を特定する条件特定部、
として機能し、
前記シグナル強度取得部は、前記条件特定部により特定された前記特定撮影条件に対応する前記対応関係情報に基づいて、前記シグナル強度を取得する、
請求項4記載の子宮筋腫のサブタイプ予測プログラム。
【請求項6】
前記子宮筋腫のサブタイプ予測装置は、
前記平均値と、前記子宮筋腫の組織構成と、の相関関係を示す相関関係情報を記憶する記憶部、
を備え、
前記予測部は、前記平均値と前記相関関係情報とに基づいて、前記子宮筋腫の前記細胞構成を予測する、
請求項3記載の子宮筋腫のサブタイプ予測プログラム。
【請求項7】
前記記憶部は、前記特定撮影条件ごとに前記相関関係情報を記憶し、
少なくとも1の前記プロセッサは、
前記MRI画像に基づいて、前記特定撮影条件を特定する条件特定部、
として機能し、
前記予測部は、前記条件特定部により特定された前記特定撮影条件に対応する前記相関関係情報に基づいて、前記子宮筋腫の前記細胞構成を予測する、
請求項6記載の子宮筋腫のサブタイプ予測プログラム。
【請求項8】
子宮筋腫が撮影されたMRI画像に基づいて、前記子宮筋腫が、MED12変異を有する特定サブタイプか否かを予測する子宮筋腫のサブタイプ予測装置により実行される子宮筋腫のサブタイプ予測方法であって、
前記MRI画像は、人体組織において線維化の度合いの評価が可能である特定撮影条件で撮影され、
前記子宮筋腫のサブタイプ予測装置が、
前記MRI画像を取得する画像取得ステップと、
取得された前記MRI画像において、前記子宮筋腫が撮影されている領域を関心領域として抽出する領域抽出ステップと、
前記関心領域において、前記関心領域を構成する画素に基づいて、前記特定撮影条件に対応するシグナル強度を取得するシグナル強度取得ステップと、
前記シグナル強度に基づいて、前記関心領域に撮影されている前記子宮筋腫における前記特定サブタイプの有無、および前記関心領域に撮影されている前記子宮筋腫の組織構成を予測する予測ステップと、
を含む、
ことを特徴とする子宮筋腫のサブタイプ予測方法。
【請求項9】
子宮筋腫が撮影されたMRI画像に基づいて、前記子宮筋腫のサブタイプが、MED12(Mediator complex subunit 12)変異を有する特定サブタイプか否かを予測する子宮筋腫のサブタイプ予測装置であって、
前記MRI画像は、人体組織において線維化の程度の評価が可能である特定撮影条件で撮影され、
前記MRI画像を取得する画像取得部と、
取得された前記MRI画像において、前記子宮筋腫が撮影されている領域を関心領域として抽出する領域抽出部と、
前記関心領域において、前記関心領域を構成する画素に基づいて、前記特定撮影条件に対応するシグナル強度を取得するシグナル強度取得部と、
前記シグナル強度に基づいて、前記関心領域に撮影されている前記子宮筋腫における前記特定サブタイプの有無、および前記関心領域に撮影されている前記子宮筋腫の組織構成を予測する予測部と、
を有してなる、
ことを特徴とする子宮筋腫のサブタイプ予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子宮筋腫のサブタイプ予測プログラムと、子宮筋腫のサブタイプ予測方法と、子宮筋腫のサブタイプ予測装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
子宮筋腫は、成熟期婦人での発症頻度が高い(約30%)女性ホルモン依存性の良性腫瘍である。子宮筋腫は、重度の月経痛、貧血、不妊症および流産などの原因となり、看過できない疾患である。現在、子宮筋腫の根治には、子宮摘出や筋腫核出などの外科的処置(侵襲的手法)しか存在しない。しかし、近年、晩婚化や妊娠の高齢化が進むにつれて、妊娠できる状態で子宮温存可能な治療法が望まれてきている。
【0003】
子宮温存可能な治療法として、薬剤療法の研究が行われている。有効な薬剤療法(非侵襲的手法)として性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログ(GnRHa)の投与が行われているが、GnRHaは血中エストロゲン濃度の低下による骨粗鬆症などの副作用を伴う。そのため、GnRHaの長期投与はできない。一方、近年、プロゲステロン受容体(PGR)に作用するが血中エストロゲン濃度に影響しないと予想される選択的プロゲステロン受容体モジュレーター(SPRM)が、副作用の小さい薬剤の候補として注目されている。しかしながら、SPRMが投与された患者の子宮筋腫の縮小率には差異が有り、SPRMが有効な患者と有効でない患者とが存在することが知られている。本発明の発明者らは、SPRMの効果の差異に、子宮筋腫の腫瘤における組織構成が関与していると予想している。
【0004】
子宮筋腫には、発生経路・原因(変異)の異なる数種類のサブタイプが存在する。これらのサブタイプのうち、MED12(Mediator complex subunit 12)変異を有する子宮筋腫は、子宮筋腫の約70%を占めており、MED12変異は子宮筋腫発生のドライバー変異の1つと考えられている。そして、近年、MED12変異の有無により子宮筋腫の腫瘤における組織構成(細胞の組成および細胞外基質(ECM)などの構成成分など)が異なることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。具体的には、MED12変異を有する子宮筋腫(以下「MED12(+)筋腫」という。)では、細胞の組成の約50%が平滑筋細胞で構成され、残りの約50%が線維芽細胞で構成されている。一方、MED12変異を有さない子宮筋腫(以下「MED12(-)筋腫」という。)では、細胞の組成の大部分が平滑筋細胞で構成されている。また、MED12(+)筋腫ではECM含有量が多く、MED12(-)筋腫ではECM含有量が少ない。つまり、MED12変異の有無により、子宮筋腫の組織構成は、大きく異なる。
【0005】
このような背景の下、本発明の発明者らは、独自の研究によりSPRMの標的であるPGR発現は平滑筋細胞に限局されることを明らかにしている。このことから、細胞の組成が異なる筋腫サブタイプ間ではSPRMの感受性が異なる可能性がある。また、GnRHaとSPRMは、ECMを直接的に分解する作用を有さない。そのため、腫瘤中の平滑筋細胞および線維芽細胞を減少させても、膠原線維は残存し、腫瘤体積の縮小は制限される。つまり、腫瘤中のECM含有量の多少により、治療方針および使用薬剤の選択・決定が必要となる。したがって、患者に発症している子宮筋腫のサブタイプおよび組織構成が予め予測できれば、その予測結果は、治療方針および使用薬剤の決定に有用である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Xin Wu et al. “Subtype-Specific Tumor-Associated Fibroblasts Contribute to the Pathogenesis of Uterine Leiomyoma” Cancer Res. 2017 Dec 15; 77(24): 6891-6901
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、子宮筋腫のサブタイプおよび組織構成を非侵襲的に予測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る子宮筋腫のサブタイプ予測プログラムは、子宮筋腫が撮影されたMRI画像に基づいて、子宮筋腫が、MED12(Mediator complex subunit 12)変異を有する特定サブタイプか否かおよびその組織構成を予測する子宮筋腫のサブタイプ予測装置により実行され、MRI画像は、子宮筋腫の線維化の評価が可能な特定撮影条件で撮影され、子宮筋腫のサブタイプ予測装置は、少なくとも1のプロセッサ、を備え、少なくとも1のプロセッサを、MRI画像を取得する画像取得部、取得されたMRI画像において、子宮筋腫が撮影されている領域を関心領域として抽出する領域抽出部、関心領域において、関心領域を構成する画素に基づいて、特定撮影条件に対応するシグナル強度を取得するシグナル強度取得部、シグナル強度に基づいて、関心領域に撮影されている子宮筋腫における特定サブタイプの有無、および関心領域に撮影されている子宮筋腫の組織構成を予測する予測部、として機能させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、子宮筋腫のサブタイプおよび組織構成を非侵襲的に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る子宮筋腫のサブタイプ予測装置の実施の形態を示すネットワーク構成図である。
【
図2】
図1の子宮筋腫のサブタイプ予測装置の機能ブロック図である。
【
図3】本発明に係る子宮筋腫のサブタイプ予測方法の実施の形態を示すフローチャートである。
【
図4】
図3の子宮筋腫のサブタイプ予測方法において抽出される関心領域の抽出の例を示す画像図であり、(a)は関心領域の抽出前のMRI画像を示し、(b)は関心領域の抽出後のMRI画像を示す。
【
図5】
図1の子宮筋腫のサブタイプ予測装置が備える表示部に表示される予測結果の例を示す模式図である。
【
図6】撮影条件ごとの、MED12変異が有る子宮筋腫と無い子宮筋腫それぞれのMRI画像の例を示す画像図である。
【
図7】撮影条件ごとの、MED12変異が有る子宮筋腫と無い子宮筋腫それぞれのMRI画像のシグナル強度の平均値の比較結果を示すグラフである。
【
図9】
図6のROC曲線に基づいて算出された特定撮影条件ごとの閾値である。
【
図10】(a)はMED12変異が有る子宮筋腫と無い子宮筋腫それぞれにおける平滑筋細胞の割合を示すグラフであり、(b)MED12変異が有る子宮筋腫と無い子宮筋腫それぞれにおける膠原線維の割合を示すグラフである。
【
図11】特定撮影条件ごとの、シグナル強度の平均値と、膠原線維の割合と、の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る子宮筋腫のサブタイプ予測プログラム(以下「本プログラム」という。)と、予測方法(以下「本方法」という。)と、予測装置(以下「本装置」という。)と、の実施の形態について説明する。
【0012】
本発明は、子宮筋腫が撮影されているMRI(Magnetic Resonance Imaging)画像から得られるシグナル強度に基づいて、撮影されている子宮筋腫のサブタイプがMED12(Mediator complex subunit 12)変異が有る子宮筋腫(以下「MED12(+)筋腫」という。)か、無い子宮筋腫(以下「MED12(-)筋腫」という。)か、およびその組織構成を予測する。ここで、MED12(+)筋腫は、本発明における特定サブタイプの例である。
【0013】
「シグナル強度」は、MRI画像の画素ごとに割り当てられている情報であり、生体組織のプロトン密度・T1値・T2値などに対応する信号の強度である。通常、MRI画像では、画素ごとにシグナル強度に対応する画素情報(例えば、輝度などの色情報)が割り当てられている(後述する対応関係情報)。シグナル強度は、MRI画像の撮影条件ごとに、異なる。
【0014】
「撮影条件」は、シーケンスと称呼されるMRIの撮影条件、手法、プログラムを意味する。すなわち、例えば、撮影条件は、T2WI(T2 Weighted Image)、ADC(Apparent Diffusion Coefficient)、T1map(T1 mapping)、T2*BOLD(T2 Blood Oxygenation Level Dependent)、MTC(Magnetization Transfer Contrast)、MRE(Magnetic Resonance Elastography)、ASL(Arterial Spin Labeling)などのMRIのシーケンスである。
【0015】
「MED12変異」は、RNA polymerase II Mediator complexを構成するタンパク質の1つであるMED12をコードする遺伝子における体細胞突然変異であり、子宮筋腫で高頻度(約70%)に検出されるドライバー変異である。前述のとおり、MED12(+)変異では、細胞の組成が、略同じ割合の平滑筋細胞と線維芽細胞とにより構成されている。一方、MED12(-)変異では、細胞の組成の大部分が平滑筋細胞により構成されている。
【0016】
図1は、本装置の実施の形態を示すネットワーク構成図である。
同図は、本装置1がネットワークNを介して外部装置2に接続されていることを示す。
【0017】
本装置1は、子宮筋腫が撮影されたMRI画像に基づいて、MRI画像に撮影されている子宮筋腫が、MED12(+)筋腫か、MED12(-)筋腫か、およびその組織構成を予測する。
【0018】
外部装置2は、例えば、本装置1の動作に必要な情報(例えば、MRI画像など)を記憶するサーバなどの情報記憶装置である。
【0019】
なお、本発明において、外部装置は、MRI画像を撮影するMRI装置でもよい。
【0020】
ネットワークNは、例えば、インターネット、移動体通信網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)のような通信網である。
【0021】
●子宮筋腫のサブタイプ予測装置●
●子宮筋腫のサブタイプ予測装置の構成
先ず、本プログラムが実行される本装置1について説明する。
図2は、本装置1の機能ブロック図である。
【0022】
本装置1は、例えば、パーソナルコンピュータで実現される。本装置1では、本プログラムが動作して、本プログラムが本装置1のハードウェア資源と協働して、本方法を実現する。
【0023】
ここで、コンピュータ(不図示)に本プログラムを実行させることにより、本プログラムは、同コンピュータを本装置1と同様に機能させて、同コンピュータに本方法を実行させることができる。
【0024】
本装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、操作部14と、表示部15と、を備える。
【0025】
通信部11は、ネットワークNを介して、外部装置2に接続されている。通信部11は、例えば、通信モジュールや通信インターフェイスにより構成されている。
【0026】
記憶部12は、本装置1が後述する本方法を実行するために必要な情報(例えば、MRI画像、後述する対応関係情報、後述する相関関係情報など)を記憶する。記憶部12は、例えば、本装置1が備えるHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはフラッシュメモリのような記憶媒体により構成されている。
【0027】
制御部13は、本装置1全体の動作を制御すると共に、後述する本方法を実行する。制御部13は、例えば、本装置1が備えるCPU(Central Processing Unit)と、CPUの作業領域として機能するRAM(Random Access Memory)と、本プログラムなどの各種情報を記憶するROM(Read Only Memory)と、により構成されている。制御部13は、本発明におけるプロセッサの例である。制御部13は、画像取得部131と、条件特定部132と、領域抽出部133と、シグナル強度取得部134と、予測部135と、出力部136と、を備える。
【0028】
画像取得部131は、患者の子宮筋腫が撮影されているMRI画像を取得する。画像取得部131の具体的な動作は、後述する。
【0029】
条件特定部132は、MRI画像に基づいて、MRI画像の撮影条件を特定する。条件特定部132の具体的な動作は、後述する。
【0030】
領域抽出部133は、画像取得部131が取得したMRI画像において、子宮筋腫が撮影されている領域を関心領域として抽出する。領域抽出部133の具体的な動作は、後述する。
【0031】
「関心領域」は、MRI画像のうち、サブタイプの予測対象となる子宮筋腫が占めている領域である。
【0032】
シグナル強度取得部134は、関心領域において、関心領域を構成する画素に基づいて、後述する特定撮影条件に対応するシグナル強度を取得する。シグナル強度取得部134の具体的な動作は、後述する。
【0033】
予測部135は、シグナル強度に基づいて、関心領域に撮影されている子宮筋腫がMED12(+)筋腫か、MED12(-)筋腫か、および関心領域に撮影されている子宮筋腫の組織構成を予測する。予測部135の具体的な動作は、後述する。
【0034】
出力部136は、後述する本方法が実行されて得られる各種情報(例えば、予測結果を示す情報など)を出力する。出力部136の具体的な動作は、後述する。
【0035】
操作部14は、本装置1の使用者(例えば、医師や看護師などの医療従事者。)により操作(例えば、情報の入力・選択操作など)される機器である。操作部14は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルである。
【0036】
表示部15は、制御部13が出力する情報を表示する機器である。表示部15は、例えば、モニタやディスプレイである。
【0037】
なお、本装置における操作部と表示部とは、例えば、タッチパネル式ディスプレイで構成されてもよい。
【0038】
●子宮筋腫のサブタイプ予測方法
次に、本装置1が実行する本方法について説明する。以下の本方法の説明において、
図2も併せて参照される。
【0039】
図3は、本方法の実施の形態を示すフローチャートである。
【0040】
先ず、画像取得部131は、例えば、通信部11を介して、外部装置2からMRI画像を取得する(S1:画像取得ステップ)。ここで、画像取得部131が取得するMRI画像は、人体組織において線維化の程度の評価が可能である複数の撮影条件(以下「特定撮影条件」という。)の中から選択された特定撮影条件で撮影されている。本実施の形態では、特定撮影条件は、例えば、T2WIである。
【0041】
「人体組織において線維化の程度の評価が可能である撮影条件」は、文献的に人体組織の線維化の度合い(例えば、膠原線維量)の評価が可能とされている撮影条件だけでなく、その評価に有用な可能性が有る撮影条件(例えば、間接的に線維化の度合いの評価が可能な撮影条件)、および既に臨床的に線維化の評価に用いられている撮影条件、を含む。すなわち、例えば、特定撮影条件は、産科婦人科においてMRI画像を撮影する際に主に選択される撮影条件だけでなく、他の診療科(例えば、脳神経外科など)においてMRI画像を撮影する際に主に選択される撮影条件を含む撮影条件の中から選択できる。本発明において、特定撮影条件は、例えば、T2WI、ADC、T1map、T2*BOLD、MTC、MRE、ASLのいずれかが好ましく、T2WI、ADC、T1map、T2*BOLDのいずかがさらに好ましく、T2WI、T1map、T2*BOLDのいずれかがさらに好ましい。
【0042】
なお、本発明において、画像取得部は、MRI画像が予め記憶部に記憶されている場合、記憶部からMRI画像を取得してもよい。また、画像取得部は、本装置の使用者が操作部を介して選択したMRI画像を取得してもよい。この場合、例えば、MRI画像の選択画面が、出力部により表示部に出力される。
【0043】
次いで、条件特定部132は、MRI画像に基づいて、MRI画像が撮影された特定撮影条件を特定する(S2)。すなわち、例えば、条件特定部132は、MRI画像の画素情報やMRI画像に関連付けられている情報に含まれている撮影条件を示す情報(撮影条件情報)に基づいて、特定撮影条件を特定する。
【0044】
なお、本発明において、条件特定部は、例えば、本装置の使用者が操作部を介して入力した情報に基づいて特定撮影条件を取得してもよく、あるいは、予め本プログラムに設定されている特定撮影条件を取得してもよい。また、条件特定部は、予め特定撮影条件の撮影条件情報がMRI画像に関連付けられているとき、その撮影条件情報に基づいて特定撮影条件を特定してもよい。
【0045】
次いで、領域抽出部133は、MRI画像において、子宮筋腫が撮影されている1つの閉じた領域を関心領域として抽出する(S3:領域抽出ステップ)。具体的には、領域抽出部133は、例えば、表示部15に表示されたMRI画像に対して、本装置の使用者が操作部を介して選択した領域を関心領域として抽出する。この場合、例えば、MRI画像は、出力部136により表示部15に出力される。
【0046】
図4は、関心領域の抽出の例を示す画像図であり、(a)は関心領域の抽出前のMRI画像を示し、(b)は関心領域の抽出後のMRI画像を示す。
同図において、破線で囲まれている領域が、抽出された関心領域である。
【0047】
なお、本発明において、領域抽出部による関心領域を抽出する方法は、本実施の形態に限定されない。すなわち、例えば、領域抽出部は、学習済みの機械学習モデルを用いた画像認識により、関心領域を抽出してもよい。
【0048】
図2と
図3とに戻る。
次いで、シグナル強度取得部134は、特定撮影条件に対応する撮影条件情報に基づいて、特定撮影条件に対応する対応関係情報を記憶部12から読み出す(S4)。
【0049】
「対応関係情報」は、特定撮影条件ごとに、MRI画像の画素情報と、シグナル強度と、の対応関係を示す情報である。すなわち、例えば、対応関係情報には、画素情報ごとにシグナル強度の値が割り当てられている。対応関係情報は、例えば、予め特定撮影条件ごとに設定され、特定撮影条件の撮影条件情報に関連付けられて記憶部12に記憶されている。
【0050】
次いで、シグナル強度取得部134は、対応関係情報に基づいて、関心領域を構成する画素ごとのシグナル強度を取得する(S5:シグナル強度取得ステップ)。具体的には、シグナル強度取得部134は、関心領域を構成する画素ごとに画素情報を取得し、対応関係情報を参照して画素情報ごとに割り当てられているシグナル強度を取得する。
【0051】
次いで、シグナル強度取得部134は、取得したシグナル強度の平均値「Va」を算出する(S6)。
【0052】
次いで、予測部135は、算出された平均値「Va」と閾値「V1」とを比較する(S7)。
【0053】
「閾値「V1」」は、関心領域のシグナル強度の平均値「Va」が、MED12(+)筋腫を示す値に属するか、MED12(-)筋腫を示す値に属するか、を区分けする境界を示す閾値である。すなわち、閾値「V1」は、MRI画像に撮影されている子宮筋腫がMED12(+)筋腫か、MED12(-)筋腫か、を判定する境界値である。本実施の形態では、閾値「V1」は、例えば、特定撮影条件ごとに、予め検体を用いた検査によりMED12変異の有無が確定している子宮筋腫が撮影された複数のMRI画像のシグナル強度に基づいて算出されて、対応する撮影条件情報に関連付けられて記憶部12に記憶されている。
【0054】
なお、本発明において、閾値「V1」は、関心領域のシグナル強度またはその平均値と、検体を用いたMED12変異の解析結果と、に基づく機械学習により、設定されてもよい。
【0055】
平均値「Va」がMED12(+)筋腫を示す値に属しているとき(S7の「MED12(+)」)、予測部135は、関心領域に撮影されている子宮筋腫がMED12(+)筋腫であると予測する(S8:予測ステップ)。すなわち、例えば、本実施の形態(特定撮影条件がT2WI)では、平均値「Va」が閾値「V1」未満のとき、予測部135は、関心領域に撮影されている子宮筋腫がMED12(+)筋腫であると予測する。
【0056】
一方、平均値「Va」がMED12(-)筋腫を示す値に属しているとき(S7の「MED12(-)」)、予測部135は、関心領域に撮影されている子宮筋腫がMED12(-)筋腫であると予測する(S9:予測ステップ)。すなわち、例えば、本実施の形態(特定撮影条件がT2WI)では、平均値「Va」が閾値「V1」以上のとき、予測部135は、関心領域に撮影されている子宮筋腫がMED12(-)筋腫であると予測する。
【0057】
なお、本発明において、予測部は、例えば、関心領域のシグナル強度またはその平均値と、検体を用いたMED12変異の解析結果と、に基づく機械学習により、MED12変異の有無を予測してもよい。
【0058】
次いで、予測部135は、特定撮影条件に対応する撮影条件情報に基づいて、特定撮影条件に対応する相関関係情報を記憶部12から読み出す(S10)。
【0059】
「相関関係情報」は、例えば、特定撮影条件ごとに、シグナル強度の平均値「Va」と膠原線維の割合との相関関数(例えば、1次関数)を示す情報である。相関関係情報は、予め特定撮影条件ごとに定められて、対応する撮影条件情報に関連付けられて記憶部12に記憶されている。
【0060】
なお、本発明において、相関関係情報は、例えば、関心領域のシグナル強度と、検体を用いて実測された膠原線維量と、に基づく機械学習により構築されてもよい。
【0061】
次いで、予測部135は、相関関係情報と、シグナル強度の平均値「Va」と、に基づいて、関心領域に撮影されている子宮筋腫の組織構成(膠原線維の割合)を予測する(S11)。予測結果(MED12変異の有無、膠原線維の割合)は、例えば、患者の識別情報(例えば、患者ごとに設定される患者固有の識別ID)やMRI画像に関連付けられて、記憶部12に記憶される。
【0062】
次いで、出力部136は、予測部135の予測結果を表示部15に出力する(S12)。
【0063】
次いで、表示部15は、予測部135の予測結果を表示する(S13)。
【0064】
図5は、表示部15に表示される予測結果の例を示す模式図である。
同図は、患者「A」の子宮筋腫「No.B」のサブタイプが「MED12(+)筋腫」であり、膠原線維の割合が「C%」であり、平滑筋細胞の割合が「D%」である、ことが予測結果として表示部15に表示されていることを示す。
【0065】
このように、本装置1は、子宮筋腫が撮影されているMRI画像に基づいて、子宮筋腫が特定サブタイプ(MED12(+)筋腫)か否かを非侵襲的に予測することができる。また、本装置1は、子宮筋腫が撮影されているMRI画像に基づいて、子宮筋腫における膠原線維の凡その割合(すなわち、組織構成)を非侵襲的に予測することができる。その結果、本装置1の使用者は、MED12変異の有無により、子宮筋腫の治療方針および使用薬剤を決定することができる。
【0066】
子宮筋腫の治療薬剤のうち、選択的プロゲステロン受容体モジュレーター(SPRM)はプロゲステロン受容体における拮抗作用を有し、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログ(GnRHa)はエストロゲンとプロゲステロンとの分泌を抑制する作用を有する。そして、MED12(+)筋腫はエストロゲンのみで増殖する線維芽細胞を約50%含み、MED12(-)筋腫の大部分はエストロゲンとプロゲステロンの両方の存在下で増殖する平滑筋細胞で構成されている。そのため、GnRHaは、MED12(+)筋腫およびMED12(-)筋腫のどちらに対しても効果を有し、特に、エストロゲンのみで増殖する線維芽細胞を約50%含むMED12(+)筋腫に適した薬剤である。一方、SPRMは、プロゲステロン受容体のみを阻害するため、大部分が平滑筋細胞で構成されているMED12(-)筋腫に適した薬剤である。
【0067】
次に、子宮筋腫の治療方針として、腫瘤の縮小効果と長期投与の可否の観点が挙げられる。薬剤療法における腫瘤の縮小効果は、膠原線維の含有量が少ないMED12(-)筋腫の方がMED12(+)筋腫よりも高い。また、GnRHaにはエストロゲンの分泌低下による骨粗鬆症などの副作用があるため、長期投与することができないという制限がある。一方、SPRMにはエストロゲン分泌への影響がないため、SPRMは長期投与可能である。このように、GnRHaとSPRMとでは作用機序が異なり、MED12変異の有無により治療効果が異なることが予測される。したがって、本装置1によりMED12変異の有無を予測することにより、治療効果の予測が可能となり、適切な患者の治療方針および使用薬剤が選択可能となる。
【0068】
なお、子宮筋腫は、1人の患者に複数存在し得る。そのため、本発明において、前述の処理は、子宮筋腫ごとに実行される。
【0069】
●実施例●
次に、本発明の実施例について説明する。以下の実施例では、45検体の子宮筋腫が用いられている。各検体から抽出されたDNAに対して塩基配列が解析され、MED12変異の有無が確定されている。その結果、MED12(+)筋腫は34検体であり、MED12(-)筋腫は11検体であった。
【0070】
また、以下の実施例では、子宮筋腫の線維化(膠原線維の量)の定量評価に有効と考えられる撮影条件のうち、4つの条件(T2WI、ADC、T1map、T2*BOLD)が用いられた。これらの撮影条件のうち、T2WIのT2値は相対値であるため、同じMRI画像における骨格筋の値との比(子宮筋腫のT2値/骨格筋のT2値)が、T2WIの定量値として取り扱われた。
【0071】
先ず、撮影条件ごとに、45検体の子宮筋腫のMRI画像が取得された。次いで、各MRI画像から関心領域が抽出され、そのシグナル強度の平均値「Va」が算出された。ここで、シグナル強度の平均値「Va」の値と単位とは、撮影条件ごとに異なる。そのため、以下の説明において、各図におけるシグナル強度の平均値「Va」は、各撮影条件の名称とその単位とにより表される。
【0072】
図6は、撮影条件ごとの、MED12(+)筋腫とMED12(-)筋腫それぞれのMRI画像の例を比較して示す画像図である。
【0073】
図7は、撮影条件ごとの、MED12(+)筋腫とMED12(-)筋腫それぞれのMRI画像のシグナル強度の平均値「Va」の分布の比較結果を示すグラフである。
同図は、MED12(+)筋腫とMED12(-)筋腫それぞれのシグナル強度の平均値「Va」のボックスプロットを示す。
【0074】
図7に示されるとおり4つの撮影条件(T2WI、ADC、T1map、T2*BOLD)それぞれにおいてシグナル強度の平均値「Va」の値に有意な差異が認められた。そのため、この4つの撮影条件が特定撮影条件として選定された。次いで、4つの特定撮影条件それぞれのシグナル強度の平均値「Va」について、MED12変異の有無の2群間で「StudentおよびWelchのt検定」が実行された。その結果、3つの特定撮影条件(T2WI、T1map、T2*BOLD)の確率「P」は「P<0.01」であり、1つの特定撮影条件(ADC)の確率「P」は「P<0.05」であることから、4つの特定撮影条件それぞれにおいて両群には有意差が存在している。
【0075】
次いで、特定撮影条件ごとにROC曲線が作成され、ROC曲線に基づいて、MED12(-)筋腫の検出に対する感度および特異度が最も高くなるカットオフ値が閾値「V1」として算出された。
【0076】
図8は、特定撮影条件ごとのROC曲線図である。
図9は、ROC曲線に基づいて算出された特定撮影条件ごとの閾値「V1」である。
【0077】
図8と
図9とに示されるとおり、各特定撮影条件において、良好な感度(0.8以上)および特異度(0.7以上)が得られた。このように、本発明は、各特定撮影条件において撮影されたMRI画像に基づいて、MED12変異の有無を高精度で予測することができる。
【0078】
なお、各閾値「V1」の値は、検体数により変わる値であり、
図9に示される値に限定されない。
【0079】
次いで、各検体にαSMA染色が実行され、全細胞数に対する平滑筋細胞の割合が定量的に算出された。また、各検体にマッソントリクローム染色が実行され、全面積に対する膠原線維の面積が膠原線維の割合として定量的に算出された。
【0080】
図10(a)はMED12変異の有無における平滑筋細胞の割合を示すグラフであり、(b)はMED12変異の有無における膠原線維の割合を示すグラフである。
同図は、MED12(+)筋腫とMED12(-)筋腫それぞれの平滑筋細胞および膠原線維それぞれのボックスプロットを示す。また、同図は、比較のため、正常な子宮筋層の平滑筋細胞および膠原線維の割合(MMと表記)も併せて示す。
図10に示されるとおり、MED12(-)筋腫では、平滑筋細胞の割合が高く(約85%、残り15%は線維芽細胞が占める)、膠原線維の割合が低い(約25%)。一方、MED12(+)筋腫では、平滑筋細胞と線維芽細胞との割合はより近く(平滑筋細胞の割合が約50~60%)、膠原線維の割合はMED12(-)筋腫と比較して高い(約50%)。
【0081】
次いで、特定撮影条件ごとに、シグナル強度の平均値「Va」と、膠原線維の割合と、の関係が求められた。
【0082】
図11は、特定撮影条件ごとの、シグナル強度の平均値「Va」と、膠原線維の割合と、の関係(相関関係)を示すグラフである。
同図の横軸は膠原線維の割合を示し、同図の縦軸はシグナル強度の平均値「Va」を示す。
図11に示されるとおり、3つの特定撮影条件(T2WI、T1map、T2*BOLD)において、シグナル強度の平均値「Va」と膠原線維の割合との間に相関関係が見出された。先の実施形態における1次関数は、例えば、この相関関係に基づいて定められている。本装置1は、各特定撮影条件において撮影されたMRI画像に基づいて、子宮筋腫における膠原線維の凡その割合(すなわち、組織構成)を予測することができる。
【0083】
●まとめ
以上説明した実施の形態によれば、本プログラムは、本装置1(制御部13)を、画像取得部131、領域抽出部133、シグナル強度取得部134、予測部135、として機能させる。MRI画像は、人体組織において線維化の程度の評価が可能である特定撮影条件で撮影されている。領域抽出部133は、MRI画像において、子宮筋腫が撮影されている領域を関心領域として抽出する。シグナル強度取得部134は、関心領域を構成する画素に基づいて、特定撮影条件に対応するシグナル強度を取得する。予測部135は、シグナル強度に基づいて、関心領域に撮影されている子宮筋腫におけるMED12変異の有無、および関心領域に撮影されている子宮筋腫の組織構成を予測する。この構成によれば、本プログラム(本装置1)は、MRI画像に基づいて、対象とする子宮筋腫がMED12(+)筋腫か否かを予測することができる。また、前述のとおり、子宮筋腫の組織構成は、MED12変異の有無により大きく異なる。そのため、本プログラム(本装置1)は、子宮筋腫がMED12(+)筋腫であれば、その組織構成は豊富な膠原線維から成ると予測できる。一方、本プログラム(本装置1)は、子宮筋腫がMED12(-)筋腫であれば、その組織構成は少量の膠原線維から成ると予測できる。すなわち、本装置1は、子宮筋腫のサブタイプおよび組織構成を非侵襲的に予測することができる。また、本方法についても、同様の効果が得られる。
【0084】
また、以上説明した実施の形態によれば、特定撮影条件は、T2WI、ADC、T1map、T2*BOLDのいずれかで撮影されている。この構成によれば、本装置1は、対象とする検体がMED12(+)筋腫か否かを高精度に予測することができるとともに、その組織構成(膠原線維の割合)を予測することができる。
【0085】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、シグナル強度取得部134は、シグナル強度の平均値「Va」を算出(取得)する。予測部135は、シグナル強度の平均値「Va」と閾値「V1」との比較結果に基づいて、子宮筋腫がMED12(+)筋腫か、MED12(-)筋腫か、を予測する。この構成によれば、本装置1は、関心領域のシグナル強度の平均値「Va」を算出するだけで容易にMED12変異の有無を予測することができる。
【0086】
さらに、以上説明した実施の形態によれば、記憶部12は、MRI画像の画素情報とシグナル強度との対応関係を示す対応関係情報を記憶する。シグナル強度取得部134は、対応関係情報に基づいて、シグナル強度を取得する。この構成によれば、シグナル強度取得部134は、MRI画像の画素情報に基づいて、容易にシグナル強度を取得することができる。
【0087】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、記憶部12は、特定撮影条件ごとに対応関係情報を記憶する。本装置1は、MRI画像に基づいて特定撮影条件を特定する条件特定部132を有してなる。この構成によれば、本装置1は、MRI画像に基づいて自動的に特定撮影条件を特定し、特定撮影条件に応じた対応関係情報に基づいてシグナル強度を取得することができる。
【0088】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、記憶部12は、平均値「Va」と、子宮筋腫の組織構成(膠原線維量)と、の相関関係を示す相関関係情報を記憶する。予測部135は、平均値「Va」と相関関係情報とに基づいて、子宮筋腫の組織構成を予測する。この構成によれば、本装置1は、MRI画像の画素情報(平均値「Va」)と相関関係情報とに基づいて、容易に子宮筋腫の組織構成を予測することができる。
【0089】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、記憶部12は、特定撮影条件ごとに相関関係情報を記憶する。本装置1は、MRI画像に基づいて特定撮影条件を特定する条件特定部132を有してなる。本装置1は、MRI画像に基づいて特定撮影条件を特定する条件特定部132を有してなる。この構成によれば、本装置1は、MRI画像に基づいて自動的に特定撮影条件を特定し、特定撮影条件に応じた相関関係情報に基づいて組織構成を予測することができる。
【0090】
●その他の実施形態
なお、本装置は、MRI画像を撮影するMRI装置を兼ねていてもよい。すなわち、例えば、本プログラムは、MRI装置に実行されてもよい。
【0091】
また、本装置は、条件特定部を備えなくてもよい。この場合、例えば、シグナル強度取得部は、予め本装置の使用者により入力または選択された特定撮影条件に対応する対応関係情報を記憶部から読み出してもよい。また、例えば、特定撮影条件に対応する撮影条件情報および対応関係情報が、予め本プログラムに設定されていてもよい。
【0092】
さらに、本発明において、記憶部は、相関関係情報を記憶していなくてもよい。また、予測部は、相関関係情報に基づいて、組織構成を予測しなくてもよい。この場合、予測部は、MED12変異の有無の予測結果に基づいて、組織構成を予測してもよい(すなわち、MED12(+)筋腫であれば膠原線維量が豊富、MED12(-)筋腫であれば膠原線維量が少ない、など)。
【0093】
さらにまた、本発明における出力部の出力先は、表示部に限定されない。すなわち、例えば、本発明における出力部は、プリンタに情報を出力してもよい。また、例えば、本発明における出力部は、通信部を介して、他の外部装置(例えば、携帯型情報処理端末など)に情報を出力してもよい。
【0094】
さらにまた、本装置は、予測部の予測結果に基づいて、適切な治療方針および使用薬剤を推定(決定)する機能を備えていてもよい。
【0095】
さらにまた、本発明において、予測部は、MED12変異の有無を予測すればよく、相関関係に基づく組織構成の予測までは実行しなくてもよい。
【0096】
さらにまた、本発明において、特定撮影条件は、実施例に記載された4種の撮影条件に限定されない。すなわち、例えば、本実施の形態に記載された7種の撮影条件のうち、実施例に記載されていない3種の撮影条件であっても、実施例と同様の検証を経ることにより、特定撮影条件になり得る。また、例えば、本実施の形態に列挙されていない撮影条件でも、同様である。
【0097】
さらにまた、以上説明した実施の形態では、本プログラム(本装置1)は、1種の特定撮影条件により撮影されたMRI画像のシグナル強度に基づいて、MED12変異の有無を予測していた。これに代えて、本プログラム(本装置)は、複数の特定撮影条件それぞれにより撮影された複数のMRI画像のシグナル強度に基づいて、MED12変異の有無を予測してもよい。この場合、例えば、予測部は、各シグナル強度に基づく機械学習から総合的に判定して、MED12変異の有無を予測してもよい。
【0098】
さらにまた、以上説明した実施の形態では、本装置1は、1つのコンピュータにより構成されていた。これに代えて、本装置は、複数のコンピュータにより構成されてもよい。すなわち、例えば、本装置は、本装置として機能する複数のコンピュータ群で構成されてもよい。具体的には、例えば、本装置(コンピュータ群)は、記憶部を備えるコンピュータと、本方法を実行する制御部を備えるコンピュータと、により構成されてもよい。また、例えば、複数のコンピュータが、画像取得部、条件特定部、領域抽出部、シグナル強度取得部、予測部、出力部それぞれの機能を分散して備えてもよい。この場合、コンピュータ群を構成する複数のコンピュータは、ネットワークを介して情報の送受信をしてもよく、あるいは、可搬記憶媒体を用いて情報の受け渡しをしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 子宮筋腫のサブタイプ予測装置
12 記憶部
131 画像取得部
132 条件特定部
133 領域抽出部
134 シグナル強度取得部
135 予測部