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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069219
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/00 20060101AFI20230511BHJP
   G01L 19/04 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G01L19/00 A
G01L19/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180944
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】松儀 泰明
(72)【発明者】
【氏名】石原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】添田 将
(72)【発明者】
【氏名】関根 正志
(72)【発明者】
【氏名】新村 悠祐
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB10
2F055CC02
2F055DD09
2F055EE25
2F055FF01
2F055FF49
2F055GG11
(57)【要約】
【課題】被測定流体からの熱伝達に起因するセンサダイアフラムの変形を低減しつつ、センサ素子の支持構造を小型化する。
【解決手段】圧力センサのセンサ素子40は、流入空間R2に流入した被測定流体の圧力により変形するセンサダイアフラム41と、センサダイアフラム41を支持する環状の支持部42とを備える。センサ素子40を支持する支持構造70は、センサダイアフラム41を流入空間R2側から覆う板状部材72と、センサ素子40と板状部材72との間に配置されたスペーサ73とを備える。板状部材72は、被測定流体をセンサダイアフラム41側に導入する導入孔72Aを備え、スペーサ73は、支持部41に固定された環状部73Aと、環状部73Aから張り出して導入孔72Aと対向する対向部73Bと、平面視において環状部73Aの内側でセンサダイアフラムと重なる貫通孔73Cと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体が流入する流入空間を形成しているパッケージと、
前記パッケージ内に配置されたセンサ素子であり、前記流入空間に流入した前記被測定流体の圧力により変形するセンサダイアフラムと、前記センサダイアフラムを囲み前記センサダイアフラムを支持する環状の支持部とを備えるセンサ素子と、
前記センサ素子を前記センサダイアフラムが前記流入空間側に向いた向きで支持する支持構造と、を備え、
前記支持構造は、前記センサダイアフラムを前記流入空間側から覆う板状部材と、前記センサ素子と前記板状部材との間に配置されたスペーサとを備え、
前記板状部材は、平面視において前記センサダイアフラムと重なる位置に設けられた、前記被測定流体を前記センサダイアフラム側に導入する導入孔を備え、
前記スペーサは、前記支持部に固定された環状部と、前記環状部から張り出して前記導入孔と対向し、前記導入孔からの前記被測定流体が当たる対向部と、平面視において前記環状部の内側で前記センサダイアフラムと重なり、前記対向部に当たった前記被測定流体を前記センサダイアフラムに導く貫通孔と、を備える、
圧力センサ。
【請求項2】
前記支持構造は、前記パッケージに固定され、前記スペーサを介して前記センサ素子を支持する支持ダイアフラムを備え、
前記支持ダイアフラムは、開口と、前記流入空間側に向き、前記板状部材が前記開口を覆った状態で固定された第1面と、前記スペーサの前記環状部が固定された、前記第1面と反対の第2面と、を備える、
圧力センサ。
【請求項3】
前記板状部材は、前記導入孔として、平面視において前記センサダイアフラムの外縁部と重なる位置に設けられた複数の導入孔を備え、
前記スペーサは、前記対向部として、前記環状部から張り出して前記複数の導入孔とそれぞれ対向する複数の対向部を備え、
前記貫通孔は、前記環状部の内側の領域の中央から前記複数の対向部のそれぞれの間にわたっている、
請求項1又は2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記対向部は、中央部と、前記中央部から延びて前記環状部に繋がる複数の接続部と、を備え、
前記スペーサは、前記貫通孔として、平面視において前記環状部の内側で前記センサダイアフラムと重なる複数の貫通孔を備え、
前記複数の貫通孔は、複数の接続部それぞれの各間に配置されている、
請求項1又は2に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記導入孔は、前記中央部に対向している、
請求項4に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記導入孔は、前記接続部に対向している、
請求項4に記載の圧力センサ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
前記スペーサの熱膨張率と前記センサ素子の熱膨張率とが同じである、
圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
センサダイアフラムを用いて被測定流体の圧力を計測する圧力センサが知られている。このような圧力センサは、特許文献1(特に、特許文献1の図14)が開示するように、センサパッケージと、センサパッケージ内に配置されたセンサダイアフラム式のセンサ素子と、センサダイアフラムを覆い、中央に貫通孔を備える台座部材(板状部材)と、を備える。特許文献1が開示する圧力センサでは、センサ素子と台座部材との間に、平面視においてセンサダイアフラムを囲むスペーサが設けられている。台座部材及びスペーサは、センサ素子を支持する支持構造の一部である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-30203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示の圧力センサでは、被測定流体からの熱伝達に起因するセンサダイアフラムの変形を防止するため、スペーサを厚くして、センサダイアフラムと台座部材との距離を長くしている。しかし、スペーサを厚くする分、当該スペーサを含むセンサ素子の支持構造が大型化してしまう。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、被測定流体からの熱伝達に起因するセンサダイアフラムの変形を低減しつつ、センサ素子の支持構造を小型化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係る圧力センサは、被測定流体が流入する流入空間を形成しているパッケージと、前記パッケージ内に配置されたセンサ素子であり、前記流入空間に流入した前記被測定流体の圧力により変形するセンサダイアフラムと、前記センサダイアフラムを囲み前記センサダイアフラムを支持する環状の支持部とを備えるセンサ素子と、前記センサ素子を前記センサダイアフラムが前記流入空間側に向いた向きで支持する支持構造と、を備え、前記支持構造は、前記センサダイアフラムを前記流入空間側から覆う板状部材と、前記センサ素子と前記板状部材との間に配置されたスペーサとを備え、前記板状部材は、平面視において前記センサダイアフラムと重なる位置に設けられた、前記被測定流体を前記センサダイアフラム側に導入する導入孔を備え、前記スペーサは、前記支持部に固定された環状部と、前記環状部から張り出して前記導入孔と対向し、前記導入孔からの前記被測定流体が当たる対向部と、平面視において前記環状部の内側で前記センサダイアフラムと重なり、前記対向部に当たった前記被測定流体を前記センサダイアフラムに導く貫通孔と、を備える。
【0007】
前記支持構造は、前記パッケージに固定され、前記スペーサを介して前記センサ素子を支持する支持ダイアフラムを備え、前記支持ダイアフラムは、開口と、前記流入空間側に向き、前記板状部材が前記開口を覆った状態で固定された第1面と、前記スペーサの前記環状部が固定された、前記第1面と反対の第2面と、を備える、ようにしてもよい。
【0008】
前記板状部材は、前記導入孔として、平面視において前記センサダイアフラムの外縁部と重なる位置に設けられた複数の導入孔を備え、前記スペーサは、前記対向部として、前記環状部から張り出して前記複数の導入孔とそれぞれ対向する複数の対向部を備え、前記貫通孔は、前記環状部の内側の領域の中央から前記複数の対向部のそれぞれの間にわたっている、ようにしてもよい。
【0009】
前記対向部は、中央部と、前記中央部から延びて前記環状部に繋がる複数の接続部と、を備え、前記スペーサは、前記貫通孔として、平面視において前記環状部の内側で前記センサダイアフラムと重なる複数の貫通孔を備え、前記複数の貫通孔は、複数の接続部それぞれの各間に配置されている、ようにしてもよい。
【0010】
前記導入孔は、前記中央部に対向している、ようにしてもよい。
【0011】
前記導入孔は、前記接続部に対向している、ようにしてもよい。
【0012】
前記スペーサの熱膨張率と前記センサ素子の熱膨張率とが同じである、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被測定流体からの熱伝達に起因するセンサダイアフラムの変形を低減しつつ、センサ素子の支持構造を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る圧力センサの縦断面図である。
図2図2は、図1の圧力センサのセンサ素子及び支持構造の斜視断面図である。
図3図3は、図1の支持構造の分解斜視図である。
図4図4は、図1の支持構造の分解斜視図である。
図5図5は、第2実施形態に係る圧力センサのセンサ素子及び支持構造の斜視断面図である。
図6図6は、図5の支持構造の分解斜視図である。
図7図7は、第3実施形態に係る圧力センサのセンサ素子及び支持構造の斜視断面図である。
図8図8は、図7の支持構造の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る圧力センサ10を、図1図4を参照して説明する。図1では、後述のセンサ素子40を構成するセンサダイアフラム41、支持部42、可動電極45、及び、固定電極46の各厚みと、後述の支持構造70の支持ダイアフラム71の各厚みと、が、図2よりも誇張して描かれている。後述の平面視は、圧力センサ10(特に、後述のセンサダイアフラム41)をその中心軸方向に沿って見た状態をいい、ここでは図1の上方から見た状態をいうものとする。図2では、断面を図1のようなハッチングではなく、ドットにより表している(図5及び図7も同様)。また、同じ機能などを有する複数の要素については、その一部にのみ符号を付している場合がある。各図で示す上下方向は、便宜上のものであり、圧力センサ10の実際の使用状態を示すものではない。圧力センサ10は、図1における上側を地面側として配置されてもよい。
【0016】
図1に示すように、圧力センサ10は、パッケージ20と、バッフル30と、センサ素子40と、コンタクトパッド50と、電極部材60と、支持構造70と、を備える。圧力センサ10は、真空チャンバ内の残留ガス及びプロセスガスを含む被測定流体Lの圧力を測定する真空計として構成されている。
【0017】
パッケージ20は、第1パッケージ部材21と、第2パッケージ部材22と、第3パッケージ部材23と、を備え、センサ素子40、コンタクトパッド50、及び、支持構造70などを収容する。パッケージ20は、被測定流体Lを導入する導入路R1と、導入路R1から被測定流体Lが流入する流入空間R2と、流入空間R2の気圧つまり被測定流体Lの気圧と比較される真空圧が封入された真空室R3とを形成している。パッケージ20は、インコネルなどの金属により形成されている。
【0018】
第1パッケージ部材21は、円筒状の小径部により導入路R1を区画し、かつ、カップ状の大径部により流入空間R2を支持構造70とともに区画するロート形状を有している。第1パッケージ部材21の下端には、円筒状の第2パッケージ部材22が、溶接等により、支持構造70の後述の支持ダイアフラム71の周縁部を挟んで接合されている。第2パッケージ部材22の下端には、円板形状の第3パッケージ部材23が溶接等によりに接合されている。第3パッケージ部材23は、第2パッケージ部材22、センサ素子40、及び、支持構造70とともに、真空室R3を区画している。
【0019】
バッフル30は、第1パッケージ部材21に不図示の固定部材等により固定されている。バッフル30は、導入路R1を通って流入空間R2に流入する被測定流体Lの流れをパッケージ20の外周方向に変える。
【0020】
センサ素子40は、被測定流体Lの圧力を電気信号に変換することで、当該圧力を検出する。センサ素子40は、パッケージ20内に配置されており、支持構造70により支持されている。図1及び図2に示すように、センサ素子40は、円形のセンサダイアフラム41と、センサダイアフラム41を囲み、センサダイアフラム41を支持する環状の支持部42と、を備える。センサダイアフラム41の流入空間R2側に向いた上面は、被測定流体Lの圧力を受圧する受圧面である。流入空間R2に流入した被測定流体Lは、後述のように支持構造70を通り、その圧力によりセンサダイアフラム41の受圧面を押してセンサダイアフラム41を変形させる。
【0021】
センサダイアフラム41と支持部42とは、一体的に1つの部材として形成されている。センサ素子40は、支持部42に溶接などにより固定された板材43も有する。板材43は、センサダイアフラム41及び支持部42とともに容量室Cを形成している。容量室Cは、板材43に形成された不図示の貫通孔により真空室R3と連通することで、真空となっている。センサダイアフラム41、支持部42、及び、板材43は、サファイアなどにより構成されている。
【0022】
センサ素子40は、センサダイアフラム41の受圧面と反対の測定面に形成された可動電極45と、板材43に形成された固定電極46と、を備える。可動電極45と固定電極46とは対向している。可動電極45及び固定電極46の形状及び数は任意である。
【0023】
センサダイアフラム41が変形することにより、可動電極45が変位し、可動電極45と固定電極46との間の距離が変化する。つまり、可動電極45と固定電極46とにより構成されるキャパシタの静電容量が変化する。センサ素子40は、この静電容量の変化を示す電気信号を出力する。このようにして、センサ素子40は、センサダイアフラム41の変形つまり被測定流体Lの圧力を電気信号に変換する。当該電気信号は、例えば、被測定流体Lの圧力に応じた電圧値を有する電圧信号である。
【0024】
図1に示すように、板材43の固定電極46が形成された面とは反対側の面には、複数のコンタクトパッド50が形成されている。複数のコンタクトパッド50は、図示を省略している各種の配線により可動電極45又は固定電極46と電気的に接続されている。複数のコンタクトパッド50は、センサ素子40から出力される、被測定流体Lの圧力を示す電気信号の取り出しに使用される。
【0025】
複数のコンタクトパッド50には、被測定流体Lの圧力を示す電気信号をパッケージ20の外部に取り出すための複数の電極部材60がそれぞれ接続されている。各電極部材60は、パッケージ20に第3パッケージ部材23を貫通しており、不図示のハーメチックシールにより第3パッケージ部材23に固定されている。各電極部材60は、前記の電気信号を伝送する導電ピン61と、導電ピン61を囲んだ円筒状のシールド62と、導電ピン61とコンタクトパッド50とを接続するコンタクトバネ63と、を備える。導電ピン61は、シールド62内を通った状態でハーメチックシールなどによりシールド62に固定されている。前記の電気信号は、コンタクトパッド50、コンタクトバネ63、及び、導電ピン61により伝送され、その結果、圧力センサ10外部に出力される。
【0026】
図1及び図2に示すように支持構造70は、センサ素子40を、センサダイアフラム41が流入空間R2側に向いた向きで、パッケージ20内で支持する。図1図4に示すように、支持構造70は、支持ダイアフラム71、板状部材72、及び、スペーサ73を備える。支持ダイアフラム71、板状部材72、及び、スペーサ73は、サファイアなどにより形成されてる。支持ダイアフラム71、板状部材72、スペーサ73、センサ素子40、及び、圧力センサ10の各中心軸は、一致している。
【0027】
支持ダイアフラム71は、スペーサ73を介してセンサ素子40を支持する。図1に示すように、支持ダイアフラム71は、その周縁部がパッケージ20の第1パッケージ部材21と第2パッケージ部材22とにより挟み込まれることにより、パッケージ20に固定されている。
【0028】
図1図4に示すように、支持ダイアフラム71の流入空間R2側に向く第1面71Aには、板状部材72が溶接などにより固定されている。支持ダイアフラム71の、第1面71Aとは反対の第2面71Bには、スペーサ73が溶接などにより固定されている。スペーサ73には、センサ素子40が溶接などにより固定されている。スペーサ73は、板状部材72とセンサ素子40との間、より詳細には、支持ダイアフラム71とセンサ素子40との間に配置されている。支持ダイアフラム71の中央には、開口71Cが設けられている。平面視において、開口71Cは、センサダイアフラム41よりも大きく、センサダイアフラム41全部を内側に含むように、センサダイアフラム41と重なっている。開口71Cは、平面視において、センサダイアフラム41と一致する形状であってもよい。
【0029】
板状部材72は、平板形状に形成されており、流入空間R2に面している。板状部材72の外縁部が支持ダイアフラム71の開口71Cの周辺部に固定されることで、板状部材72は、支持ダイアフラム71の開口71Cを覆う。
【0030】
板状部材72は、開口71Cと流入空間R2とを連通させて、流入空間R2に流入した被測定流体Lをセンサダイアフラム41側に導入する4つの導入孔72Aを備える。4つの導入孔72Aは、板状部材72の厚み方向に延びる貫通孔である。図2に示すように、導入孔72Aは、平面視においてセンサダイアフラム41の外縁部と重なる位置に設けられている。
【0031】
図1図4に示すように、スペーサ73は、板状部材72とセンサ素子40との間隔を確保する。スペーサ73は、センサ素子40に固定された環状形状の環状部73Aと、複数の導入孔72Aにそれぞれ対向する複数(ここでは、4つ)の対向部73Bと、を備える。複数の対向部73Bそれぞれは、環状部73Aの内周壁から環状部73Aの内側に張り出している。スペーサ73は、環状部73Aの内側に設けられて対向部73Bと隣接している貫通孔73Cも備えている。貫通孔73Cは、略十字形状に形成されており、環状部73Aの内側の領域つまり環状部73Aに囲まれた領域の中央から複数の対向部73Bのそれぞれの間にわたっている形状を有する。
【0032】
環状部73Aの支持ダイアフラム71側の端面(上端面)は、支持ダイアフラム71の開口71Cの周辺部に固定されている。環状部73Aのセンサ素子40側の端面(下端面)は、センサ素子40の支持部42に固定されている。スペーサ73と板状部材72とは、支持ダイアフラム71を挟み込み、センサ素子40を支持する支持台座としても機能する。スペーサ73は、センサ素子40とともに、開口71Cを真空室R3側から覆う。
【0033】
対向部73B及び貫通孔73Cは、平面視において、センサ素子40のセンサダイアフラム41に重なっている。貫通孔73Cは、開口71Cとともにセンサダイアフラム41の一部、つまり、センサダイアフラム41のうちのスペーサ73の対向部73Bに覆われていない部分を流入空間R2側に露出させる。開口71Cを覆う板状部材72は、対向部73B、貫通孔73C、及び、センサダイアフラム41を流入空間R2側から覆う。
【0034】
流入空間R2に流入した被測定流体Lは、図2に示す太線矢印に示すように、板状部材72の導入孔72Aを通り、その後、支持ダイアフラム71の開口71Cを通って、スペーサ73の対向部73Bに当たる。対向部73Bは、当該対向部73Bに当たった被測定流体Lを隣接している貫通孔73Cに導く。貫通孔73Cは、この被測定流体Lをセンサ素子40のセンサダイアフラム41に導く。センサダイアフラム41は、導かれた被測定流体Lの圧力により変形する。
【0035】
この実施の形態では、板状部材72の導入孔72Aを通った被測定流体Lが対向部73Bに当たることで、被測定流体Lと対向部73Bとで熱交換が行われる。これにより、被測定流体Lの温度が下げられ(被測定流体Lが高温の場合)、または上げられ(被測定流体Lが低温の場合)、被測定流体Lからの熱伝達に起因するセンサダイアフラム41の変形が低減される。これにより、センサダイアフラム41のヒステリシス又はシフトなどによる出力信号の誤差の発生が低減される。さらに、仮にスペーサ73が対向部73Bを備えないとき、センサダイアフラム41に到達したときの被測定流体Lの温度が十分に下がるように、スペーサ73を厚くする必要がある。この実施の形態では、対向部73Bに被測定流体Lが当たるので、対向部73Bを設けないときよりもスペーサ73の厚みを薄くすることができる。これにより、支持構造70ないし圧力センサ10全体が小型化される。以上のように、本実施形態によれば、被測定流体Lからの熱伝達に起因するセンサダイアフラム41の変形が低減され、かつ、センサ素子40を支持する支持構造70が小型化される。
【0036】
また、この実施の形態では、貫通孔73Cは、環状部73Aの内側の領域の中央から複数の対向部73Bのそれぞれの間にわたっている形状を有し、比較的大きく形成されている。このため、圧力センサ10の製造工程などでの洗浄において、洗浄液が支持構造70を抜けやすい。導入孔72A及び対向部73Bの数は任意であり、1つであってもよい。
【0037】
この実施の形態では、スペーサ73の貫通孔73Cが平面視においてセンサダイアフラム41と重なっている。他方、これとは別に、貫通孔73Cを小さくしてスペーサ73のセンサダイアフラム41の外側の位置に設けることも考えられる。この場合、貫通孔73Cからセンサダイアフラム41に被測定流体Lを案内する案内孔をセンサ素子40の支持部42に設ける必要がある。しかし、センサ素子40とスペーサ73との接合時において、この案内孔と貫通孔73Cとの位置合わせが困難となる。この実施の形態では、平面視において貫通孔73Cがセンサダイアフラム41と重なっているので、支持部42に案内孔などを設ける必要がなく、上記位置合わせの手間がなくなり、その分、圧力センサ10の製造コストを抑えることができる。また、平面視において、板状部材72の導入孔72Aよりもスペーサ73の対向部73Bの方が大きく対向部73B内に導入孔72Aが位置するので、スペーサ73と板状部材72との多少の位置ずれも吸収される。
【0038】
また、この実施の形態では、板状部材72の、支持ダイアフラム71に固定された端面72B(図4参照)は、板状部材72の他の面、特に、導入孔72Aの下端周辺部の面よりも突き出ている。さらに、スペーサ73の環状部73Aの、支持ダイアフラム71に固定された端面73D(図3参照)は、対向部73Bの支持ダイアフラム71側の面(上端面)よりも突き出ている。従って、支持ダイアフラム71を薄くしても、導入孔72Aと対向部73Bとの間の間隔を確保できる。これにより、板状部材72の導入孔72Aからスペーサ73の対向部73Bに当たって貫通孔73Cに流れる被測定流体Lが板状部材72と対向部73Bとの間を流れるときの流量が確保される。なお、板状部材72とスペーサ73とのいずれか一方の端面が突き出ていればよい。
【0039】
センサ素子40(特に、センサダイアフラム41、支持部42、板材43)、支持ダイアフラム71、板状部材72、及び、スペーサ73の各材料は任意であるが、同じ材料を採用するなどして、各部材の熱膨張率を実質的等しくするとよい。これは、熱膨張率が異なると、圧力センサ10の使用時の自己加熱時に、各部材の膨張度合いが異なることで、センサダイアフラム41が歪んでしまうことを防止するためである。特に、センサ素子40と当該センサ素子40が直接固定されるスペーサ73との各熱膨張率を実質的に等しくすることで、センサダイアフラム41の歪みが低減される。
【0040】
<第2実施形態>
第2実施形態では、図5及び図6に示すように、支持構造70が支持構造170に変更されている。より具体的には、板状部材72が板状部材172に変更され、スペーサ73がスペーサ173に変更されている。他の部分については、第1実施形態と同じなので、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
板状部材172は、複数の導入孔72Aの代わりに、流入空間R2に流入した被測定流体Lをセンサダイアフラム41側に導入する1つの導入孔172Aを備える。導入孔172Aは、板状部材72の中央に形成されている。
【0042】
スペーサ173は、第1実施形態の環状部73Aと同様の機能及び形状を有する環状部173Aと、第1実施形態の対向部73Bと同様の機能を有するが形状の異なる対向部173Bと、を備える。対向部173Bは、平面視において環状部173Aの内側の領域の中央に位置する中央部173BAと、中央部173BAから放射状に延びて環状部173Aに繋がる複数の接続部173BBと、を備える。本実施形態では、4つの接続部173BBが設けられ、対向部173Bは、略十字形状に形成されているが、接続部173BBの数は任意である。中央部173BAは、板状部材172の導入孔172Aに対向している。
【0043】
スペーサ173は、第1実施形態の貫通孔73Cと同様の機能を有する複数の貫通孔173Cを備える。複数の貫通孔173Cは、平面視において環状部173Aの内側でセンサダイアフラム41と重なり、対向部173B、より具体的には中央部173BAに当たった被測定流体Lをセンサダイアフラム41に導く。複数の貫通孔173Cは、複数の接続部173BBのそれぞれの間に配置されている。換言すると、スペーサの周方向に沿って、貫通孔173Cと接続部173BBとが交互に配置されている。
【0044】
この実施形態でも、板状部材172の導入孔172Aを通った被測定流体Lが対向部173Bの中央部173BAに当たることで、被測定流体Lと対向部173Bとで熱交換が行われる。このため、本実施形態でも、第1実施形態と同様に、被測定流体Lからの熱伝達に起因するセンサダイアフラム41の変形が低減され、かつ、センサ素子40を支持する支持構造170が小型化される。
【0045】
また、この実施形態では、対向部173Bが、中央部173BAと、中央部173BAから延びて環状部173Aに繋がる複数の接続部173BBと、を備える。このため、スペーサ173が有する、貫通孔173Cによる開口面積が第1実施形態よりも小さく、その分、スペーサ173に剛性が付加されている。対向部173Bの形状、つまり、貫通孔173Cの形状、位置、及び、個数は、トポロジー解析などにより導出することができる。トポロジー解析などにより、スペーサ173の剛性を確保することができる最適な対向部173Bの形状などが導出される。
【0046】
<第3実施形態>
第3実施形態では、図7及び図8に示すように、支持構造70が支持構造270に変更されている。支持構造270は、第1実施形態の支持構造70のスペーサ73を第2実施形態のスペーサ173に変更した構造である。本実施形態では、板状部材72の4つの導入孔72Aが、スペーサ173の対向部173Bの4つの接続部173BBにそれぞれ対向している。被測定流体Lは、接続部173BBに当たって熱交換が行われ、スペーサ173の貫通孔173Cを通ってセンサ素子40のセンサダイアフラム41に到達する。この実施形態であっても、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果を適宜得ることができる。
【0047】
<変形例>
上記各実施形態については、種々の変更を施すことができる。例えば、各部材の形状、特に、スペーサの形状は、適宜変更され得る。例えば、スペーサの対向部の接続部の数は任意である。複数の接続部のうちの少なくとも一部に対して板状部材に導入孔が設けられてもよい。導入孔の位置も、対向部に対向する位置であれば任意である。中央部と接続部とのそれぞれに対向する導入孔が設けられてもよい。上記実施形態での圧力センサのセンシング方式は、静電容量式であるが、本発明は、当該センシング方式に限定されるわけではない。本発明は、例えば、抵抗ゲージを貼り付け又はスパッタ等により成膜した歪ゲージ又は半導体ピエゾ抵抗を用いた方式等の圧力センサに適用され得る。つまり、本発明は、センサダイアフラムの変形を電気信号に変換するセンシング方式を備えた全ての圧力センサに対して適用され得る。圧力センサの使用先も、成膜装置以外の各種装置となり得る。
【0048】
<発明の範囲>
以上、実施の形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記の実施の形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施の形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0049】
10…圧力センサ、20…パッケージ、21…第1パッケージ部材、22…第2パッケージ部材、23…第3パッケージ部材、30…バッフル、40…センサ素子、41…センサダイアフラム、42…支持部、43…板材、45…可動電極、46…固定電極、50…コンタクトパッド、60…電極部材、61…導電ピン、62…シールド、63…コンタクトバネ、70…支持構造、71…支持ダイアフラム、71A…第1面、71B…第2面、71C…開口、72…板状部材、72A…導入孔、72B…端面、73…スペーサ、73A…環状部、73B…対向部、73C…貫通孔、73D…端面、170…支持構造、172…板状部材、172A…導入孔、173…スペーサ、173A…環状部、173B…対向部、173BA…中央部、173BB…接続部、173C…貫通孔、270…支持構造、C…容量室、L…被測定流体、R1…導入路、R2…流入空間、R3…真空室。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8