(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069230
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】切削加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/22 20060101AFI20230511BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B23Q17/22 Z
B23Q3/155 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180963
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】390003665
【氏名又は名称】株式会社日進製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩次
(72)【発明者】
【氏名】村岡 嵩平
(72)【発明者】
【氏名】辻 秀和
(72)【発明者】
【氏名】山添 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】井上 健二
(72)【発明者】
【氏名】錦織 晃
【テーマコード(参考)】
3C002
3C029
【Fターム(参考)】
3C002BB07
3C002DD18
3C029AA22
(57)【要約】
【課題】高い加工精度を実現しつつ、ワークのコンタミネーションを抑制できる切削加工装置を提供する。
【解決手段】切削加工装置は、ヘッド5と保持ユニット3と制御部とを備える。保持ユニット3は、ワークWを保持するワーク保持部32と、ヘッド5に固定された工具20が接触可能な接触子プラグ361と、箱状であり周壁におけるワーク保持部32の固定部位から離間した位置に接触子プラグ361が着脱自在に保持される第1開口部311aが形成されたカバー31と、接触子プラグ361に工具20の先端部が接触したことを検知するタッチセンサ61と、を有する。制御部は、ヘッド5の初期位置と、タッチセンサ61を用いて検出される工具20の先端部が接触子プラグ361に接触したときのヘッド5の接触位置と、に基づいて、ワークWを工具20により切削加工する際の加工開始位置を算出する算出部を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの第1工具が固定されるヘッドと、
前記ヘッドに対向して配置されワークを保持する保持ユニットと、
前記ヘッドおよび前記保持ユニットの動作を制御する制御部と、を備え、
前記保持ユニットは、
前記ワークを保持するワーク保持部と、
前記ヘッドに固定された前記第1工具の先端部が接触可能な接触子プラグと、
箱状であり周壁に前記ワーク保持部が固定されるとともに、前記周壁における前記ワーク保持部が固定される固定部位から離間した位置に前記接触子プラグが着脱自在に保持される第1開口部が形成されたカバーと、
前記接触子プラグに前記第1工具の先端部が接触したことを検知するタッチセンサと、を有し、
前記制御部は、予め設定された前記ヘッドの初期位置と、前記タッチセンサを用いて検出される前記第1工具の先端部が前記接触子プラグに接触したときの前記ヘッドの接触位置と、に基づいて、前記ワークを前記第1工具により切削加工する際の加工開始位置を算出する算出部を有する、
切削加工装置。
【請求項2】
前記接触子プラグは、前記第1開口部に嵌入された弾性支持体により支持され、長尺のプラグ本体と、前記プラグ本体の長手方向における一端部に設けられ前記第1工具の先端部が接触する板状の接触部と、を有し、
前記弾性支持体は、筒状であり前記第1開口部に嵌入された支持体本体と、前記支持体本体の筒軸方向における前記接触部側の一端部から前記筒軸方向に直交し且つ前記筒軸から離れる方向へ延出し前記第1開口部の外周部に係止される外鍔部と、を有する、
請求項1に記載の切削加工装置。
【請求項3】
前記プラグ本体における前記接触部側とは反対側の端部は、球面状である、
請求項2に記載の切削加工装置。
【請求項4】
前記タッチセンサは、前記カバーの内側における、前記第1開口部に対向し且つ前記接触子プラグに前記第1工具の先端部が接触した状態において前記接触子プラグが接触する位置に配置されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の切削加工装置。
【請求項5】
前記保持ユニットは、更に、
長尺であり長手方向の一端部が前記カバーの内側における、前記第1開口部に対向し且つ前記接触子プラグに前記第1工具の先端部が接触した状態において前記接触子プラグが接触する位置に配置されたアームと、
前記アームを揺動自在に支持するアーム支持部と、を有し、
前記タッチセンサは、前記アームの他端部に対向し且つ前記接触子プラグが前記アームの前記一端部に接触した状態で前記アームの他端部に接触する位置に配置され、
前記アームの一端部から前記アームの揺動支点までの距離は、前記アームの他端部から前記アームの揺動支点までの距離よりも短い、
請求項1から4のいずれか1項に記載の切削加工装置。
【請求項6】
前記保持ユニットは、前記カバーの内側において前記第1工具とは異なる少なくとも1つの第2工具を保持する工具保持部を更に有し、
前記カバーは、前記周壁における前記固定部位および前記第1開口部から離間した位置に前記第2工具が挿通される第2開口部が形成されるとともに、前記カバーの内側における前記第2開口部の周囲の予め設定された前記第2工具を保持するための工具保持領域を前記カバーの内側における他の領域から隔てる隔壁を有し、
前記工具保持部は、前記工具保持領域内に配置され、前記工具保持領域内において前記第2開口部に挿通された前記第2工具を保持する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の切削加工装置。
【請求項7】
前記カバーは、矩形箱状の第1部位と、中空の直方体状であり長手方向の一端部において前記第1部位に連続する第2部位と、を有し、
前記第1開口部は、前記第2部位における前記第2部位の長手方向に沿った側壁に形成され、
前記保持ユニットは、更に、
前記タッチセンサを、センサ支持部を介して支持し且つ前記カバーを前記第2部位の長手方向における他端部において着脱自在に支持する支持部材と、
前記支持部材を前記カバーの長手方向に沿って延在する回転軸周りに回転駆動する回転駆動用モータと、を有し、
前記制御部は、前記第1工具の先端部を前記接触子プラグに接触させる際、前記第1開口部が形成された前記側壁が前記ヘッド側に位置するように前記支持部材および前記支持部材により支持される前記カバーを回動させ、前記ヘッドに固定された前記第1工具を前記第2工具に交換する際、前記工具保持部が前記ヘッド側に位置するように前記支持部材および前記支持部材により支持される前記カバーを回動させるように前記回転駆動用モータを制御する回転制御部を更に有する、
請求項6に記載の切削加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者本人の骨を切り出して得られる骨片を切削加工することで骨同士を接合するための螺子を作製し、この螺子により患者の骨折部分を接合することにより、骨折部分が癒合した後の螺子を除去するための再手術を不要にして患者の負担を大幅に軽減することがなされつつある。この場合、螺子の作製のために患者の骨から切り出す骨片のサイズをできるだけ小さくすることにより患者の負担を軽減することが要求される。また、一般的に骨の癒合をよくするには骨片から作成された螺子の合致精度を高めることが重要であるため、骨片の切削加工には高い加工精度が要求される。これに対して、ワークの加工を行う加工領域内に接触式のタッチセンサを留置し、加工領域内において工具の先端部をタッチセンサに接触させたときのスピンドルの位置に基づいて加工に使用する工具の長さを計測することにより、高精度な加工を安定して行うことができるマシニングセンタが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、螺子に付着した雑菌に起因した患者の感染症を防止する観点から、作製される螺子のコンタミネーションは極力低減する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載されたマシニングセンタでは、使用を継続することによりタッチセンサの接触面に工具に付着した切屑、塵等の異物が堆積してしまう。この場合、新しい工具を使用して骨片を切削加工しても、異物が堆積したタッチセンサの接触面に工具の先端部を接触させたときに工具の先端部に異物が付着してしまい、その工具により骨片を加工することに起因して螺子のコンタミネーションが生じる虞がある。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、高い加工精度を実現しつつ、ワークのコンタミネーションを抑制できる切削加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る切削加工装置は、
1つの第1工具が固定されるヘッドと、
前記ヘッドに対向して配置されワークを保持する保持ユニットと、
前記ヘッドおよび前記保持ユニットの動作を制御する制御部と、を備え、
前記保持ユニットは、
前記ワークを保持するワーク保持部と、
前記ヘッドに固定された前記第1工具の先端部が接触可能な接触子プラグと、
箱状であり周壁に前記ワーク保持部が固定されるとともに、前記周壁における前記ワーク保持部が固定される固定部位から離間した位置に前記接触子プラグが着脱自在に保持される第1開口部が形成されたカバーと、
前記接触子プラグに前記第1工具の先端部が接触したことを検知するタッチセンサと、を有し、
前記制御部は、予め設定された前記ヘッドの初期位置と、前記タッチセンサを用いて検出される前記第1工具の先端部が前記接触子プラグに接触したときの前記ヘッドの接触位置と、に基づいて、前記ワークを前記第1工具により切削加工する際の加工開始位置を算出する算出部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、制御部の算出部が、ヘッドの初期位置と、タッチセンサを用いて検出される第1工具の先端部が接触子プラグに接触したときのヘッドの接触位置と、に基づいて、ワークを第1工具により切削加工する際の加工開始位置を算出する。また、カバーは、箱状であり、その周壁におけるワーク保持部が固定される固定部位から離間した位置には、接触子プラグが着脱自在に保持される第1開口部が形成されている。これにより、ワークを第1工具で切削加工する際の加工開始位置を精度良く算出することができるので、加工精度が向上できる。また、接触子プラグをある程度使用した後、接触子プラグをカバーから外して新しい接触子プラグをカバーに取着することができるので、接触子プラグに堆積した異物に起因したワークのコンタミネーションを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係る切削加工装置の概略図である。
【
図2】実施の形態に係る切削加工装置の一部破断した側面図である。
【
図3】実施の形態に係る保持ユニットを示し、(A)は平面図であり、(B)は背面図である。
【
図4】実施の形態に係る切削加工装置を
図3(A)のA―A線で一部破断した正面図である。
【
図5】実施の形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【
図6】(A)実施の形態に係る位置記憶部が記憶する情報の一例を示す図であり、(B)は実施の形態に係る工具保持位置と初期位置との関係を示す図である。
【
図7】実施の形態に係る制御部が実行する切削加工処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態に係る切削加工装置を示し、(A)は工具の先端部が接触子プラグに接触した状態を示す一部破断した正面図であり、(B)はヘッドが工具挿入位置へ移動してから下降する様子を示す正面図である。
【
図9】実施の形態に係る切削加工装置を示し、(A)はヘッドが工具保持位置へ移動する様子を示す正面図であり、(B)はヘッドが工具に当接した状態を示す正面図である。
【
図10】実施の形態に係る制御部が実行する切削加工処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態に係る切削加工装置を示し、(A)はC軸が鉛直方向と平行な場合にヘッドが加工開始位置まで下降する様子を示す正面図であり、(B)はC軸が鉛直方向と直交する場合にヘッドが加工開始位置まで下降する様子を示す正面図である。
【
図12】変形例に係る保持ユニットの一部を示し、(A)は断面図であり、(B)は工具の先端部が接触子プラグに接触した状態を示す断面図である。
【
図13】変形例に係る変形例に係る保持ユニットの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る切削加工装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る切削加工装置は、1つの第1工具が固定されるヘッドと、ヘッドに対向して配置されワークを保持する保持ユニットと、ヘッドおよび保持ユニットの動作を制御する制御部と、を備える。ここで、保持ユニットは、ワークを保持するワーク保持部と、ヘッドに固定された第1工具の先端部が接触可能な接触子プラグと、箱状であり周壁にワーク保持部が固定されるとともに、周壁におけるワーク保持部が固定される固定部位から離間した位置に接触子プラグが着脱自在に保持される第1開口部が形成されたカバーと、接触子プラグに第1工具の先端部が接触したことを検知するタッチセンサと、を有する。また、保持ユニットは、カバーの内側において第1工具とは異なる少なくとも1つの第2工具を保持する工具保持部を有する。制御部は、予め設定されたヘッドの初期位置と、タッチセンサを用いて検出される第1工具の先端部が接触子プラグに接触したときのヘッドの接触位置と、に基づいて、ワークを第1工具により切削加工する際の加工開始位置を算出する算出部を有する。
【0010】
図1に示すように、本実施の形態に係る切削加工装置1は、工具20が固定されるヘッド5と、ヘッド5に対向して配置されワークWを保持する保持ユニット3と、ヘッド5および保持ユニット3の動作を制御する制御部100と、を備える。また、切削加工装置1は、矩形箱状であり+Y方向側の側壁にワークWを出し入れするための開口部10bが形成されるとともに、内側にヘッド5、保持ユニット3および制御部100を収容する筐体10を備える。更に、切削加工装置1は、
図2に示すように、ヘッド5を鉛直方向に昇降させる昇降駆動用モータ44と、ヘッド5をX軸方向に沿って駆動するX方向駆動用モータ71と、ヘッド5をY軸方向に沿って駆動するY方向駆動用モータ76と、を備える。また、筐体10は、+Y方向側から開口部10bを覆う扉(図示せず)を有する。筐体10の内側には、ワークWの加工が行われる加工領域S1が形成されている。加工領域S1は、筐体10の内側における加工領域S1以外の領域との間に設けられた隔壁10aにより囲まれている。
【0011】
ヘッド5は、長尺であり長手方向の一端部に工具20を保持する工具保持部53が設けられた回転主軸52と、回転主軸52をその長手方向に沿った中心軸周りに回転させる主軸駆動用モータ51と、を有する。工具保持部53は、チャック(図示せず)と、チャックを駆動するアクチュエータ(図示せず)と、を有し、制御部100から入力される制御信号に基づいてチャックが開閉する。ヘッド5は、ベース41の+Y方向側においてZ軸方向に沿って延在するレール421に摺動自在に保持されたスライダ422に固定されている。昇降駆動用モータ44は、Z軸方向に沿って配置されスライダ422の一部に設けられたナット部(図示せず)に螺合する長尺のボール螺子(図示せず)に連結されたモータを有する。そして、昇降駆動用モータ44は、Z軸方向に沿って配置されたボール螺子を回転させることにより、スライダ422およびスライダ422に固定されたヘッド5をZ軸方向に沿って昇降させる。また、昇降駆動用モータ44は、昇降駆動用モータ44のロータの回転量を検出するための位置検出センサを有し、昇降駆動用モータ44の回転量を示す検出信号を制御部100へ出力する。
【0012】
また、ベース41は、X軸方向に沿って延在するレール721に摺動自在に保持されたスライダ722にブラケット43を介して固定されている。X方向駆動用モータ71は、X軸方向に沿って配置されブラケット43の一部に設けられたナット部(図示せず)に螺合する長尺のボール螺子(図示せず)に連結されたモータを有する。そして、X方向駆動用モータ71は、X軸方向に沿って配置されたボール螺子を回転させることにより、スライダ722およびスライダ722に固定されたベース41をX軸方向に沿って移動させる。これにより、X方向駆動用モータ71は、ボール螺子を介してベース41およびヘッド5を纏めてX軸方向に沿って移動させる。また、レール721は、その長手方向における両端部がY軸方向に沿って延在する2つのレール771に摺動自在に保持されたスライダ772に支持されている。Y方向駆動用モータ76は、Y軸方向に沿って配置されベース41の一部に設けられたナット部(図示せず)に螺合する長尺のボール螺子(図示せず)に連結されたモータを有する。そして、Y方向駆動用モータ76は、Y軸方向に沿って配置されたボール螺子を回転させることにより、スライダ772およびスライダ772に支持されるレール721をY軸方向に沿って移動させる。これにより、Y方向駆動用モータ76は、ボール螺子を介してレール721、スライダ722、ベース41およびヘッド5を纏めてY軸方向に沿って移動させる。
【0013】
保持ユニット3は、
図2に示すように、ワークWを保持するワーク保持部32と、ヘッド5に固定された工具20の先端部が接触可能な接触子プラグ361と、箱状のカバー31と、タッチセンサ61と、を有する。また、保持ユニット3は、接触子プラグ361を支持する弾性支持体362と、カバー31の内側において工具20を保持する工具保持部33と、を有する。更に、保持ユニット3は、カバー31全体をカバー31の長手方向に延在する回転軸(以下、「B軸」と称する。)JB周りに回転させる回転駆動用モータ81と、ワーク保持部32をカバー31の長手方向に直交する方向に延在する回転軸(以下、「C軸」と称する。)JC周りに回転させる回転駆動用モータ86と、を有する。
【0014】
回転駆動用モータ86は、カバー31の内側に配置され、C軸に沿って延在し先端部がワーク保持部32に連結されたシャフト(図示せず)を回転させる。回転駆動用モータ81は、円筒状でありB軸に沿って延在する中空シャフト82の-Y方向側の端部を支持し、中空シャフト82をB軸周りに回転させる。中空シャフト82の+Y方向側の端部には、カバー31を支持する支持部材34が固定されている。また、中空シャフト82の-Y方向側の端部近傍の側壁には、制御部100に接続される信号線L6が挿通される挿通孔82aが穿設されている。ここで、回転駆動用モータ81は、筐体10の内側における隔壁10aにより加工領域S1から隔てられた加工領域S1の外側に配置されている。
【0015】
カバー31は、
図3(A)および(B)に示すように、矩形箱状の第1部位312と、中空の直方体状であり長手方向の一端部、即ち、-X方向側の端部において第1部位312に連続する第2部位311と、を有する。第2部位311は、
図2に示すように、-Y方向側の端部において支持部材34に着脱自在に支持されている。そして、カバー31は、回転駆動用モータ81の中空シャフト82および中空シャフト82に固定された支持部材34が、B軸周りに回転すると、これに伴い、B軸周りに回転する。第2部位311における第2部位311の長手方向、即ち、Y軸方向に沿った側壁311cには、接触子プラグ361および弾性支持体362が着脱自在に保持される第1開口部311aが形成されている。また、第2部位311におけるY軸方向に沿った側壁311cとは異なる側壁311dには、工具20が挿通される第2開口部311bが形成されている。即ち、第2開口部311bは、カバー31の周壁における第1開口部311aから離間した位置に形成されている。ここで、側壁311c、311dは、それぞれ、第2部位311の短手方向において互いに対向して配置されている。また、カバー31は、カバー31の内側における第2開口部311bの周囲の予め設定された工具20を保持するための工具保持領域S2をカバー31の内側における他の領域から隔てる隔壁313を有する。
【0016】
ワーク保持部32は、例えば
図4に示すように、長尺のワークWの基端部を挟持するチャックである。ワーク保持部32は、カバー31の第1部位312の周壁に固定されている。この第1部位312におけるワーク保持部32が固定される固定部位は、カバー31の第2部位311に形成された第1開口部311aおよび第2開口部311bから離間した位置に設けられている。工具保持部33は、
図2に示すように、隔壁313で囲まれた工具保持領域S2内に配置され、工具保持領域S2内において第2開口部311bに挿通された工具20を保持する。工具保持部33は、例えば磁石(図示せず)を有し、磁石の吸引力を利用して工具20を吸着保持するものであってもよい。
【0017】
タッチセンサ61は、接触子プラグ361に工具20の先端部が接触したことを検知する。タッチセンサ61には、物体の接触を検知する検知部611が設けられている。タッチセンサ61は、カバー31の内側における第1開口部311aに対向し且つ接触子プラグ361に工具20の先端部が接触した状態において検知部611に接触子プラグ361が接触する位置に配置されている。タッチセンサ61は、支持部材34によりセンサ支持部35を介して支持されており、信号線L6を介して制御部100に設けられたタッチセンサ61用の入力ポート(図示せず)に接続されている。タッチセンサ61は、検知部611に物体が接触したときに発生する検出信号を制御部100に設けられた前述の入力ポートへ出力する。制御部100は、筐体10の内側における加工領域S1と隔壁10aを介して隔てられた加工領域S1の外側の領域に配置されている。そして、信号線L6は、タッチセンサ61から中空シャフト82の内側を通って制御部100に至るように配線されている。これにより、タッチセンサ61および信号線L6が、筐体10内の加工領域S1に晒されることを防止できるので、例えば加工領域S1を清潔環境に維持する場合であっても、タッチセンサ61および信号線L6に対する滅菌処理が不要になる。
【0018】
接触子プラグ361は、
図3および
図4に示すように、第1開口部311aに嵌入された弾性支持体362により支持されており、長尺の円柱状のプラグ本体3612と、プラグ本体3612の長手方向における一端部に設けられ工具20の先端部が接触する円板状の接触部3611と、を有する。弾性支持体362は、円筒状であり第1開口部311aに嵌入された支持体本体3621と、第1開口部311aの外周部に係止される外鍔部3622と、を有する。外鍔部3622は、支持体本体3621の筒軸方向における接触部3611側の一端部から筒軸方向に直交し且つ筒軸から離れる方向へ延出している。弾性支持体362は、ゴム、エラストマ等の弾性材料から形成されている。ここで、弾性支持体362に接触するプラグ本体3612の側面のプラグ本体3612の中心軸方向の長さL32は、接触部3611における弾性支持体362に接触する部分のプラグ本体3612の中心軸に直交する方向の長さL31よりも長い。また、長さL32は、長さL31の2倍以上であることが好ましい。これにより、弾性支持体362の変形量のバラツキに起因した接触子プラグ361の傾きのバラツキを低減できる。従って、接触子プラグ361の傾きのバラツキに起因したタッチセンサ61の検知精度への影響を抑制することができるので、工具20の先端部が接触子プラグ361に接触した状態でのヘッド5の初期位置からの相対距離を正確に算出することができる。
【0019】
制御部100は、例えばCPU(Central Processing Unit)ユニットと入出力制御ユニットとを含むPLC(Programmable Logic Control1er)と、PLCに接続された、キーボード、タッチパネル等の入力装置と、を有する。制御部100は、
図5に示すように、CPUユニット101と、主記憶部102と、補助記憶部103と、入力部105と、インタフェース106と、各部を接続するバス109と、を有する。また、制御部100は、駆動回路107a、107b、107c、107d、107e、107f、107gと、検出回路108と、を有する。主記憶部102は、例えばRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリであり、CPUユニット101の作業領域として使用される。補助記憶部103は、半導体メモリのような不揮発性メモリであり、加工プログラムを含む制御部100の各種機能を実現するためのプログラムを記憶する。入力部105は、前述の入力装置と入力装置をバス109に接続するためのインタフェースとを有する。入力部105は、ユーザが入力装置を操作することにより入力した各種操作情報を受け付けると、受け付けた各種操作情報をCPUユニット101へ出力する。インタフェース106は、駆動回路107a、107b、107c、107d、107e、107f、107gに接続されており、CPUユニット101から入力される制御情報を制御信号に変換して、駆動回路107a、107b、107c、107d、107e、107f、107gへ出力する。また、インタフェース106は、検出回路108に接続されており、検出回路108から入力される検出信号を検出情報に変換してCPUユニット101へ出力する。
【0020】
駆動回路107aは、インタフェース106を介して入力される制御信号に基づいて、主軸駆動用モータ51を駆動する。駆動回路107bは、インタフェース106を介して入力される制御信号に基づいて、昇降駆動用モータ44を駆動する。また、駆動回路107bは、昇降駆動用モータ44の位置検出センサから入力される昇降駆動用モータ44の回転量を示す検出信号をインタフェース106へ出力する。駆動回路107cは、インタフェース106を介して入力される制御信号に基づいて、X方向駆動用モータ71を駆動し、駆動回路107dは、インタフェース106を介して入力される制御信号に基づいて、Y方向駆動用モータ76を駆動する。駆動回路107eは、インタフェース106を介して入力される制御信号に基づいて、回転駆動用モータ81を駆動し、駆動回路107fは、インタフェース106を介して入力される制御信号に基づいて、回転駆動用モータ86を駆動する。駆動回路107gは、インタフェース106を介して入力される制御信号に基づいて、工具保持部53を駆動する。検出回路108は、タッチセンサ61から入力される検出信号をインタフェース106へ出力する。
【0021】
CPUユニット101は、補助記憶部103が記憶する前述のプログラムを主記憶部102に読み出して実行することにより、主軸回転制御部111、昇降制御部112、水平移動制御部113、算出部114、B軸回転制御部115、C軸回転制御部116および工具保持制御部117として機能する。また、補助記憶部103は、初期位置記憶部131と、位置記憶部132と、を有する。初期位置記憶部131は、予め設定されたヘッド5の初期位置を示す初期位置情報を記憶する。
【0022】
位置記憶部132は、例えば
図6(A)に示すように、保持ユニット3に保持された工具20それぞれに対する相対距離情報を、工具20を識別する工具識別情報に対応づけて記憶する。ここで、相対距離情報は、保持ユニット3のカバー31を接触子プラグ361が鉛直上方に配置される姿勢にした状態でヘッド5を下降させて工具20の先端部が接触子プラグ361に接触したときのヘッド5の位置のヘッド5の初期位置からのZ軸方向における相対距離を示す。また、位置記憶部132は、保持ユニット3に保持される工具20のXY方向における位置座標を示す工具保持位置情報を、工具20の工具識別情報に対応づけて記憶する。ここで、工具保持位置情報は、例えば
図6(B)に示すように、保持ユニット3のカバー31を第2開口部311b側が鉛直上方に配置される姿勢にしたときの工具20が挿通される各第2開口部311bのXY方向における工具保持位置PosT1、PosT2、PosT3の座標を示す。また、工具保持位置情報が示す座標は、初期位置Pos0を原点としたときの座標として表されてもよい。また、位置記憶部132は、
図6(A)に示すように、各工具20について、C軸が水平となるようにして切削加工を行う場合の加工開始位置と、C軸が垂直となるようにして切削加工を行う場合の加工開始位置と、を示す加工開始位置情報を、工具識別情報に対応づけて記憶する。ここで、加工開始位置は、Z軸方向におけるヘッド5の初期位置からの相対的な距離として表されている。
【0023】
主軸回転制御部111は、ワークWの加工方向に応じて、回転主軸52を回転させたり或いは回転主軸52を回転させない状態で維持したりするように、制御情報を生成してインタフェース106へ出力する。このとき、駆動回路107aは、インタフェース106から入力される制御信号に基づいて、主軸駆動用モータ51を動作させたり停止させたりする。
【0024】
昇降制御部112は、ワークWの加工を開始する際、位置記憶部132が記憶する工具保持位置情報に基づいて、保持ユニット3から受け取った工具20の工具識別情報を特定する。そして、昇降制御部112は、位置記憶部132が記憶する加工開始位置情報の中から、特定した工具識別情報に対応づけられた加工開始位置情報を特定し、特定した加工開始位置情報に基づいて、ヘッド5を初期位置から工具20を用いてワークWを切削加工する際の加工開始位置へ移動させるための制御情報を生成してインタフェース106へ出力する。その後、昇降制御部112は、ワークWの形状に応じた加工プログラムに基づいて、ヘッド5を昇降させるための制御情報を生成してインタフェース106へ出力する。このとき、駆動回路107bは、インタフェース106から入力される制御信号に基づいて、昇降駆動用モータ44を動作させる。また、昇降制御部112は、駆動回路107bからインタフェース106を介して入力される検出情報に基づいて、工具20の先端部のワークWへの接触位置、ワークWの切削量等を算出し、算出した接触位置、切削量等に基づいて制御情報を生成する。
【0025】
水平移動制御部113は、ヘッド5をX軸方向、Y軸方向へ移動させるための制御情報を生成してインタフェース106へ出力する。このとき、駆動回路107c、107dは、それぞれ、インタフェース106から入力される制御信号に基づいて、X方向駆動用モータ71、Y方向駆動用モータ76を動作させたり停止させたりする。
【0026】
算出部114は、まず、位置記憶部132が記憶する工具保持位置情報に基づいて、保持ユニット3から受け取った工具20の工具識別情報を特定する。次に、算出部114は、検出回路108からインタフェース106を介して入力される検出情報に基づいて、回転主軸52に装着された工具20の先端部が接触子プラグ361に接触したことを検知する。ここで、算出部114は、駆動回路107bからインタフェース106を介して入力される検出情報が示す回転量の情報に基づいて、工具20の先端部が接触子プラグ361に接触したときのヘッド5の接触位置のヘッド5の初期位置からの相対距離を算出する。具体的には、算出部114は、昇降駆動用モータ44の1回転当たりのZ軸方向への移動量と回転量との積に基づいて工具20に対応する相対距離を算出する。そして、算出部114は、算出した相対距離に基づいて、工具20を用いてワークWを切削加工する際の加工開始位置を算出する。即ち、算出部114は、ヘッド5の初期位置と、タッチセンサ61を用いて検出される工具20の先端部が接触子プラグ361に接触したときのヘッド5の接触位置と、に基づいて、ワークWを工具20により切削加工する際の加工開始位置を算出する。そして、算出部114は、算出した加工開始位置を示す加工開始位置情報を、特定した工具識別情報に対応づけて位置記憶部132に記憶させる。
【0027】
B軸回転制御部115は、カバー31全体をB軸周りに回転させるための制御情報を生成してインタフェース106へ出力する。このとき、駆動回路107eは、インタフェース106から入力される制御信号に基づいて、回転駆動用モータ81を動作させたり停止させたりする。また、C軸回転制御部116は、ワーク保持部32をC軸周りに回転させるための制御情報を生成してインタフェース106へ出力する。このとき、駆動回路107fは、インタフェース106から入力される制御信号に基づいて、回転駆動用モータ86を動作させたり停止させたりする。工具保持制御部117は、工具保持部53に工具20を保持させたり保持を解除させたりするための制御情報を生成してインタフェース106へ出力する。このとき、駆動回路107gは、インタフェース106から入力される制御信号に基づいて、工具保持部53に、工具20を保持させた状態にしたり工具20の保持状態を解除させたりする。
【0028】
次に、本実施の形態に係る切削加工装置1の使用方法について説明する。ここでは、切削加工装置1が、複数の工具20を使用してワークWの切削加工を実行する場合について説明する。切削加工装置1の利用者は、まず、利用者は、切削加工で使用する複数の工具20をカバー31の第2開口部311bに挿入することによりカバー31の工具保持部33に工具20を保持させる。また、利用者は、カバー31の第1開口部311aに接触子プラグ361を支持する弾性支持体362を装着する。ここで、カバー31は、初期状態において、そのB軸が鉛直方向に平行となる姿勢となっている。そして、利用者は、カバー31に対して鉛直方向と直交する側方から工具20を保持させるとともに、接触子プラグ361を装着する。次に、ワーク保持部32にワークWを保持させる。続いて、利用者は、カバー31を切削加工装置1の支持部材34に装着してから筐体10の開口部10bに取り付けられた扉を閉じる。これにより、筐体10内の加工領域S1は密閉された状態となる。その後、利用者は、入力部105を介してカバー31の第1開口部311aが鉛直上方側に位置するようにカバー31全体をB軸周りに回転させるための操作を行う。そうすると、切削加工装置1は、回転駆動用モータ81により、カバー31の第2開口部311bが鉛直上方側に位置するようにカバー31全体をB軸周りに回転させる。これにより、ワークWを切削加工するための準備が完了する。次に、利用者が入力部105を介してワークWの切削加工を開始するための操作を行うと、切削加工装置1は、切削加工に使用する複数の工具20それぞれに対する相対距離を計測した後、複数の工具20を使用してワークWの切削加工を実行する。ここで、利用者は、1つのワークWの切削加工が完了する毎に、カバー31を支持部材34から取り外してカバー31の滅菌処理を行ったり、接触子プラグ361および弾性支持体362を滅菌処理が施されたものに交換したりすることができる。
【0029】
次に、ワークWの切削加工において、本実施の形態に係る制御部100が実行する切削加工処理について
図7乃至
図11を参照しながら説明する。この切削加工処理は、切削加工装置1に電源が投入された後、前述のように利用者が入力部105を介して切削加工処理を開始するための操作を行ったことを契機として開始される。
【0030】
まず、
図7に示すように、水平移動制御部113は、X方向駆動用モータ71、Y方向駆動用モータ76を駆動させて、ヘッド5を特定した工具保持位置、即ち、未だ相対距離が算出されていない工具20の鉛直上方に移動させる(ステップS1)。次に、昇降制御部112は、昇降駆動用モータ44を駆動させて、ヘッド5を下降させる(ステップS2)。続いて、昇降制御部112は、回転主軸52の工具保持部53に工具20を保持させるための予め設定された位置までヘッド5が下降すると、工具保持制御部117は、工具保持部53に工具20を保持、即ち、ヘッド5に工具20を保持させる(ステップS3)。その後、昇降制御部112は、昇降駆動用モータ44を駆動させて、ヘッド5を初期位置と同じ高さまで上昇させる(ステップS4)。次に、B軸回転制御部115は、回転駆動用モータ81を駆動させて、カバー31における接触子プラグ361が装着された第1開口部311a側が鉛直上方に配置されるようにカバー31全体を回転させる(ステップS5)。
【0031】
続いて、水平移動制御部113は、X方向駆動用モータ71、Y方向駆動用モータ76を駆動させて、ヘッド5を工具20に対する相対距離を計測するための計測位置、即ち、工具20が接触子プラグ361の鉛直上方に配置される位置に移動させる(ステップS6)。その後、昇降制御部112は、昇降駆動用モータ44を駆動させて、ヘッド5を下降させる(ステップS7)。このとき、例えば
図8(A)の矢印AR11に示すように、ヘッド5が接触子プラグ361に近づく方向へ移動する。
図7に戻って、次に、算出部114は、タッチセンサ61から検出回路108を介して入力される検知情報に基づいて、回転主軸52に装着された工具20の先端部が接触子プラグ361に接触したことを検知したとする(ステップS8)。このとき、算出部114は、駆動回路107bからインタフェース106を介して入力される検出情報が示す回転量の情報に基づいて、工具20の先端部が接触子プラグ361に接触したときのヘッド5の接触位置のヘッド5の初期位置に対する相対距離を算出し、算出した相対距離を示す相対距離情報を位置記憶部132に記憶させる(ステップS9)。例えば
図8(A)に示すように、算出部114は、工具20の先端部が接触子プラグ361に接触した接触位置Pos1の初期位置Pos0に対する相対距離を算出する。
図7に戻って、続いて、昇降制御部112は、昇降駆動用モータ44を駆動させて、ヘッド5を初期位置まで上昇させる(ステップS10)。
【0032】
その後、B軸回転制御部115は、回転駆動用モータ81を駆動させて、第2開口部311b側が鉛直上方に配置されるようにカバー31全体を回転させる(ステップS11)。例えば
図8(B)の矢印AR12に示すように、ヘッド5が初期位置まで上昇した後、カバー31が矢印AR13に示すようにB軸JB周りに回転して、カバー31の第2開口部311b側が鉛直上方に配置される。
図7に戻って、次に、水平移動制御部113は、位置記憶部132が記憶する工具保持位置情報を参照して、既に相対距離が算出された工具20を保持させる工具保持位置を特定する。そして、水平移動制御部113は、X方向駆動用モータ71、Y方向駆動用モータ76を駆動させて、ヘッド5を特定した工具保持位置、即ち、相対距離が算出された工具20を挿通する第2開口部311bの鉛直上方に移動させる(ステップS12)。次に、昇降制御部112は、昇降駆動用モータ44を駆動させて、ヘッド5を下降させることにより、工具20を第2開口部311bに挿入する(ステップS13)。例えば
図8(B)の矢印AR14に示すように、ヘッド5は、工具保持位置PosT0、即ち、カバー31における工具20が挿通されていない第2開口部311bの鉛直上方まで移動した後、矢印AR15に示すように、第2開口部311bに近づく方向へ移動し、工具20がカバー31の第2開口部311bに挿入される。
【0033】
図7に戻って、続いて、工具保持制御部117が、工具保持部53を駆動して、工具20の保持状態を解除することにより、保持ユニット3の工具保持部33に工具20が保持される(ステップS14)。その後、昇降制御部112は、昇降駆動用モータ44を駆動させて、ヘッド5を上昇させる(ステップS15)。
【0034】
次に、B軸回転制御部115は、使用する全ての工具20について相対距離の算出が完了したか否かを判定する(ステップS16)。ここで、B軸回転制御部115は、使用する工具20のうち未だ相対距離が算出されていない工具20が有ると判定すると(ステップS16:No)、再びステップS1の処理が実行される。この場合、例えば
図9(A)の矢印AR16に示すように、ヘッド5は、工具保持位置PosT1、即ち、カバー31における未だ相対距離が算出されていない工具20の鉛直上方まで移動した後、
図9(B)の矢印AR17に示すように、未だ相対距離が算出されていない工具20に近づく方向へ移動して工具20を保持する。
【0035】
一方、B軸回転制御部115が、使用する全ての工具20について相対距離の算出が完了したと判定したとする(ステップS16:Yes)。この場合、水平移動制御部113は、位置記憶部132が記憶する工具保持位置情報を参照して、使用する工具20の工具保持位置を特定する。そして、水平移動制御部113は、X方向駆動用モータ71、Y方向駆動用モータ76を駆動させて、ヘッド5を、加工プログラムに従い使用する工具の工具保持位置、即ち、使用する工具20の鉛直上方に移動させる(ステップS17)。続いて、昇降制御部112は、昇降駆動用モータ44を駆動させて、ヘッド5を下降させる(ステップS18)。続いて、昇降制御部112は、
図10に示すように、工具保持部53に工具20を保持させるための予め設定された位置までヘッド5が下降すると、工具保持制御部117は、工具保持部53に工具20を保持、即ち、ヘッド5に工具20を保持させる(ステップS19)。その後、昇降制御部112は、昇降駆動用モータ44を駆動させて、ヘッド5を初期位置と同じ高さまで上昇させる(ステップS20)。次に、B軸回転制御部115は、加工プログラムに従って回転駆動用モータ81を駆動させることで、加工プログラムに従ってカバー31全体を回転させる(ステップS21)。
【0036】
続いて、B軸回転制御部115は、加工プログラムに従って回転駆動用モータ81を駆動させることにより、加工プログラムに従ってC軸方向に沿ったカバー31全体の向きを随時変更していく(ステップS22)。その後、算出部114は、加工開始位置を算出する(ステップS23)。ここで、例えば
図11(A)に示すように、カバー31全体をC軸方向が鉛直方向に一致する場合、算出部114は、工具20の接触子プラグ361への接触位置Pos1よりも予め設定された距離dL1だけ+Z方向側の位置する加工開始位置Poss1を算出する。ここで、距離dL1は、ワーク保持部32がワークWを保持した状態でのC軸方向における工具20の接触子プラグ361への接触位置Pos1からワークWの先端部までの距離L3よりも長い距離に設定されている。或いは、例えば
図11(B)に示すように、カバー31全体をC軸方向が水平方向に一致する場合、算出部114は、工具20の接触子プラグ361への接触位置Pos1よりも予め設定された距離dL2だけ-Z方向側の位置する加工開始位置Poss2を算出する。ここで、距離dL2は、ワーク保持部32がワークWを保持した状態でのC軸JCから工具20の接触子プラグ361への接触位置Pos1までの距離L2よりも短い距離に設定されている。また、距離dL2は、少なくとも加工対象として可能性のあるワークWをC軸JCに直交する平面で切断したときの切り口の半径の最大半径に相当する長さ分だけ距離L2よりも短く設定されている。
【0037】
図10に戻って、次に、水平移動制御部113は、X方向駆動用モータ71、Y方向駆動用モータ76を駆動させて、ヘッド5を加工位置、即ち、工具20がワークWの鉛直上方に配置される位置へ移動させる(ステップS24)。続いて、昇降制御部112は、昇降駆動用モータ44を駆動させて、ヘッド5を加工開始位置まで下降させる(ステップS25)。このステップS21乃至S25までの一連の処理では、例えば
図11(A)の矢印AR18に示すように、カバー31が、C軸方向が鉛直方向に一致するように回転した後、矢印AR19に示すように、ヘッド5が加工位置へ移動し、その後、ヘッドは、矢印AR20に示すように、加工開始位置Poss1まで下降する。或いは、例えば
図11(B)の矢印AR21に示すように、ヘッド5が加工位置へ移動し、その後、ヘッドは、矢印AR22に示すように、加工開始位置Poss2まで下降する。
【0038】
図10に戻って、その後、切削加工が実行される(ステップS26)。ここでは、例えば主軸回転制御部111が、主軸駆動用モータ51を駆動させて、回転主軸52を回転させつつ、昇降制御部112が、昇降駆動用モータ44を駆動させて、ヘッド5を加工開始位置から下降させることにより、ワークWの中心を穿孔する。或いは、例えばC軸回転制御部116が、回転駆動用モータ86を駆動させて、ワーク保持部32をC軸JC周りに回転させつつ、昇降制御部112が、昇降駆動用モータ44を駆動させて、ヘッド5を加工開始位置から下降させることにより、ワークWの側方を切削する。次に、切削加工が終了すると、昇降制御部112は、昇降駆動用モータ44を駆動させて、ヘッド5を初期位置まで上昇させる(ステップS27)。
【0039】
続いて、B軸回転制御部115は、回転駆動用モータ81を駆動させて、第2開口部311b側が鉛直上方に配置されるようにカバー31全体を回転させる(ステップS28)。その後、水平移動制御部113は、位置記憶部132が記憶する工具保持位置情報を参照して、既に相対距離が算出された工具20を保持させる工具保持位置を特定する。そして、水平移動制御部113は、X方向駆動用モータ71、Y方向駆動用モータ76を駆動させて、ヘッド5を特定した工具保持位置、即ち、相対距離が算出された工具20を挿通する第2開口部311bの鉛直上方に移動させる(ステップS29)。次に、昇降制御部112は、昇降駆動用モータ44を駆動させて、ヘッド5を下降させることにより、工具20を第2開口部311bに挿入する(ステップS30)。続いて、工具保持制御部117が、工具保持部53を駆動して、工具20の保持状態を解除することにより、保持ユニット3の工具保持部33に工具20が保持される(ステップS31)。その後、昇降制御部112は、昇降駆動用モータ44を駆動させて、ヘッド5を上昇させる(ステップS32)。次に、B軸回転制御部115は、ワークWを切削加工するための加工プログラムに基づいて、全ての加工工程が終了したか否かを判定する(ステップS33)。ここで、B軸回転制御部115は、未だ終了していない加工工程が存在すると判定すると(ステップS33:No)、再びステップS17の処理が実行される。一方、B軸回転制御部115が、全ての加工工程が終了したと判定すると(ステップS33:Yes)、カバー31全体を初期状態、即ち、カバー31のC軸に沿った方向が鉛直方向と一致する姿勢となるように回転させた後(ステップS34)、切削加工処理が終了する。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態に係る切削加工装置1によれば、制御部100の算出部114が、ヘッド5の初期位置と、タッチセンサ61を用いて検出される工具20の先端部が接触子プラグ361に接触したときのヘッド5の接触位置と、に基づいて、ワークWを工具20により切削加工する際の加工開始位置を算出する。また、カバー31が、箱状であり周壁におけるワーク保持部32が固定される固定部位から離間した位置に接触子プラグ361が着脱自在に保持される第1開口部311aが形成されている。これにより、ワークWを工具20で切削加工する際の加工開始位置を精度良く算出することができるので、加工精度が向上できる。また、接触子プラグ361をある程度使用した後、接触子プラグ361をカバー31から外して新しい接触子プラグ361をカバー31に取着することができるので、接触子プラグ361に堆積した異物に起因したワークWのコンタミネーションを抑制することができる。
【0041】
ところで、工具20を使用する前に切削加工装置の加工領域の外側で事前に工具20の長さを測定しておき、その測定値に基づいて、工具20を切削加工装置のヘッドに装着したときの工具20の先端部の初期位置からの相対距離を算出し、算出した相対距離に基づいてワークWの加工を行う切削加工技術が考えられる。しかしながら、この場合、工具20をヘッドに装着する際、工具20のヘッドに対する装着位置の誤差が生じる。このため、この場合のワークWの加工精度は高々±0.1mm程度である。一方、患者の自家骨を用いて作製された螺子、骨欠損部分を埋めるための補綴物は、それらを嵌入する部分との合致精度が高いほどその定着性が高いとされるため、より高い加工精度が求められており、±0.01mm乃至±0.001mm程度の加工精度の実現が要請されている。これに対して、レーザを用いた光学式非接触型の工具長測定装置を使用して工具20の先端部の初期位置からの相対距離を直接測定することが考えられる。しかしながら、この方法では、工具長測定装置を設けるために、切削加工装置の筐体の剛性を高めたり、筐体内に工具長測定装置を収容する必要があることから筐体を大型化したりする必要がある。そうすると、例えば様々な医療機器が存在する手術室のような場所では切削加工装置の設置スペースが確保できない虞がある。これに対して、本実施の形態に係る切削加工装置1では、工具20についての相対距離を、工具20の先端部が接触子プラグ361に接触したことを検知するタッチセンサ61を利用して算出する。これにより、前述のような工具長測定装置が不要となり、筐体10の小型化を図ることができる。
【0042】
また、本実施の形態に係る接触子プラグ361は、カバー31の第1開口部311aに嵌入された弾性支持体362により支持され、プラグ本体3612と、プラグ本体3612の長手方向における一端部に設けられた接触部3611と、を有する。そして、弾性支持体362は、内側にプラグ本体3612が挿入され且つカバー31の第1開口部311aに嵌入された支持体本体3621と、支持体本体3621から延出しカバー31の第1開口部311aの外周部に係止される外鍔部3622と、を有する。これにより、接触子プラグ361とカバー31の第1開口部311aとの間が、弾性支持体362により密封されるので、カバー31の内側に存在する異物が、第1開口部311aと接触子プラグ361との間の隙間を通ってカバー31の周囲の加工領域S1へ流出することを防止できる。
【0043】
更に、本実施の形態に係るタッチセンサ61は、カバー31の内側における、カバー31の第1開口部311aに対向し、接触子プラグ361に工具20の先端部が接触した状態において接触子プラグ361が接触する位置に配置されている。これにより、タッチセンサ61をカバー31の外側に曝すことなく、工具20についての相対距離を算出することができるので、カバー31の外側の加工領域S1の清浄度を維持することができる。
【0044】
また、本実施の形態に係る保持ユニット3は、カバー31の内側において工具20を保持する工具保持部33を有する。そして、カバー31は、その周壁におけるワーク保持部32の固定部位および第1開口部311aから離間した位置に工具20が挿通される第2開口部311bが形成され、カバー31の内側における第2開口部311bの周囲の予め設定された工具保持領域S2をカバー31の内側における他の領域から隔てる隔壁313を有する。これにより、ヘッド5の回転主軸52に装着される工具20を、カバー31の工具保持部33に保持された工具20に順次入れ替えを行うことできるので、工具保持部33に保持された複数の工具20それぞれについての相対距離を連続的に算出することができる。従って、切削加工装置1における生産効率を高めることができる。
【0045】
更に、本実施の形態に係る保持ユニット3は、タッチセンサ61を、センサ支持部35を介して支持し且つカバー31をその第2部位311の長手方向における他端部において着脱自在に支持する支持部材34を有する。これにより、カバー31を定期的に切削加工装置1から取り外して滅菌処理を行うことができるので、加工領域S1の清浄度を維持し易くなるという利点がある。また、本実施の形態に係る保持ユニット3は、支持部材34をB軸JB周りに回転駆動する回転駆動用モータ81を有する。そして、制御部100は、工具20の先端部を接触子プラグ361に接触させる際、カバー31の側壁311cがヘッド5側に位置するように支持部材34およびカバー31を回動させ、ヘッド5に固定された工具20を工具保持部33に保持された工具20に交換する際、カバー31の側壁311dがヘッド5側に位置するように支持部材34およびカバー31を回動させるように回転駆動用モータ81を制御する。これにより、接触子プラグ361および工具保持部33を保持するカバー31の小型化を図ることができ、ひいては切削加工装置1の小型化を図ることができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば
図12(A)に示すように、保持ユニット2003の接触子プラグ2361のプラグ本体23612における接触部23611側とは反対側の端部23622aが、曲率半径R21の球面状であってもよい。例えば
図12(B)に示すように、接触子プラグ2361がプラグ本体23612の中心軸が鉛直方向に対して傾いた状態で工具20により押下された場合でも、球面状の端部23622aの表面とタッチセンサ61の検知部611との間の距離は、接触子プラグ2361が傾いていない場合のそれと同一になる。
【0047】
本構成によれば、接触子プラグ2361が傾いた状態で押下された場合であっても、接触子プラグ361とタッチセンサ61の検知部611との間の距離は、接触子プラグ361が傾いていない状態で押下された場合のそれと同一になる。従って、接触子プラグ361の傾きに起因して、算出部114により算出される工具20についての相対距離の誤差を低減することができる。
【0048】
実施の形態では、タッチセンサ61が、カバー31の第1開口部311aに対向して配置される例について説明したが、タッチセンサ61の位置はこれに限定されるものではない。例えば、タッチセンサ61の検知部611が、カバー31の第1開口部311aから離間した位置に配置されていてもよい。この場合、例えば
図13に示すように、保持ユニット3003は、長尺であり長手方向の一端部がカバー31の内側における第1開口部311aに対向し且つ接触子プラグ2361に工具20の先端部が接触した状態において接触子プラグ2361が接触する位置に配置されたアーム3363と、アーム3363を軸部3365により揺動自在に支持するアーム支持部3364と、を有するものとすればよい。なお、
図13において、前述の変形例と同様の構成については
図12(A)と同一の符号を付している。また、タッチセンサ61が、アーム3363の他端部に対向し且つ接触子プラグ361がアーム3363の一端部に接触した状態でアーム3363の他端部に設けられた突起3363aに接触する位置に配置すればよい。ここで、アーム3363の一端部からアーム3363の揺動支点PSまでの距離L301は、アーム3363の他端部からアーム3363の揺動支点PSまでの距離L302よりも短い。これにより、接触子プラグ2361により押下されることによるアーム3363の一端部の変位量が、タッチセンサ61側の他端部において約L302/L301倍に増幅される。
【0049】
本構成によれば、接触子プラグ2361の変位量が増幅された状態でタッチセンサ61により検出するので、接触子プラグ2361への工具20の先端部の接触を感度良く検知することができる。
【0050】
実施の形態では、カバー31の第2部位311の側壁311dに、工具20が挿通される第2開口部311bが形成されている例について説明した。但し、これに限らず、例えばカバー31の第2部位311の側壁311c、311dの両方または側壁311dに工具20が挿通される第2開口部が形成されているものであってもよい。或いは、カバー31の第2部位311における側壁311c、311d以外の第2部位311の長手方向に沿った他の側壁に第2開口部が形成されていてもよい。これらの場合、工具20を保持する工具保持部33を第2部位311内における第2開口部が形成された部分に対応する位置それぞれに配置するとともに、工具保持部33それぞれの周囲を囲む隔壁を第2部位311の内側に配設すればよい。
【0051】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、骨の切削加工を行う切削加工装置として好適である。
【符号の説明】
【0053】
1:切削加工装置、3:保持ユニット、5:ヘッド、10:筐体、10a,313:隔壁、10b:開口部、20:工具、31:カバー、32:ワーク保持部、33,53:工具保持部、34:支持部材、35:センサ支持部、41:ベース、43:ブラケット、44:昇降駆動用モータ、51:主軸駆動用モータ、52:回転主軸、61:タッチセンサ、71:X方向駆動用モータ、76:Y方向駆動用モータ、81,86:回転駆動用モータ、82:中空シャフト、82a:挿通孔、100:制御部、101:CPUユニット、102:主記憶部、103:補助記憶部、105:入力部、106:インタフェース、107a,107b,107c,107d,107e,107f,107g:駆動回路、108:検出回路、109:バス、111:主軸回転制御部、112:昇降制御部、113:水平移動制御部、114:算出部、115:B軸回転制御部、116:C軸回転制御部、117:工具保持制御部、131:初期位置記憶部、132:位置記憶部、311:第2部位、311a:第1開口部、311b:第2開口部、311c,311d:側壁、312:第1部位、361,2361:接触子プラグ、362:弾性支持体、421,721,771:レール、422,722,772:スライダ、611:検知部、3363:アーム、3363a:突起、3364:アーム支持部、3365:軸部、3611,23611:接触部、3612,23612:プラグ本体、3621:支持体本体、3622:外鍔部、23622a:端部、Pos0:初期位置、Pos1:接触位置、PosT0,PosT1,PosT2:工具保持位置、JB:B軸、JC:C軸、L6:信号線、W:ワーク