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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069280
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】多段変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/66 20060101AFI20230511BHJP
   F16H 3/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
F16H3/66 Z
F16H3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181038
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓
(72)【発明者】
【氏名】安田 伸人
(72)【発明者】
【氏名】塩原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】相田 倫弘
【テーマコード(参考)】
3J528
【Fターム(参考)】
3J528EA21
3J528EA25
3J528EB31
3J528EB33
3J528EB62
3J528EB63
3J528EB66
3J528EB82
3J528EB94
3J528FB03
3J528FC13
3J528FC26
3J528FC62
3J528GA07
3J528GA15
3J528JA04
3J528JF03
3J528JG03
3J528JH03
(57)【要約】
【課題】段間比のばらつきの低減を実現する。
【解決手段】多段変速機100は、入力部材7と、出力部材10と、入力部材7から出力部材10に向かって順に軸方向に配置され各々がサンギヤ、遊星キャリアおよびリングギヤを含む第1~第4遊星歯車セット1~4と、第1~第3クラッチ51~53と、第1~第3ブレーキ61~63とを備えている。第1~第3クラッチ51~53および第1~第3ブレーキ61~63の各々が、各遊星歯車セット1~4のうちの少なくとも1つの遊星歯車セットに動作可能に結合され、入力部材7と出力部材10との間に、少なくとも前進10段のギヤ比と少なくとも後進2段のギヤ比とを含む異なるギヤ比のセットを生成するように、選択的に係合可能である。第1クラッチ51は、第3遊星歯車セット3の第3サンギヤ31と、第4遊星歯車セット4の第4遊星キャリア44とを、選択的に連結する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材と、
出力部材と、
前記入力部材から前記出力部材に向かって順に軸方向に配置された、第1遊星歯車セット、第2遊星歯車セット、第3遊星歯車セットおよび第4遊星歯車セットを含み、各々の遊星歯車セットがサンギヤ、遊星キャリアおよびリングギヤを含む、4つ以下の遊星歯車セットと、
6つ以下の制御要素とを備え、
前記6つ以下の制御要素の各々が、前記4つ以下の遊星歯車セットのうちの少なくとも1つの遊星歯車セットに動作可能に結合され、前記入力部材と前記出力部材との間に異なるギヤ比のセットを生成するように選択的に係合可能であり、前記異なるギヤ比のセットは少なくとも前進10段のギヤ比と少なくとも後進2段のギヤ比とを含み、
前記6つ以下の制御要素のうちの1つの制御要素は、前記第3遊星歯車セットの前記サンギヤと、前記第4遊星歯車セットの前記遊星キャリアと、を選択的に連結する、多段変速機。
【請求項2】
前記入力部材は、前記第3遊星歯車セットの前記サンギヤに連結されている、請求項1に記載の多段変速機。
【請求項3】
前記出力部材は、前記第4遊星歯車セットの前記リングギヤに連結されている、請求項2に記載の多段変速機。
【請求項4】
前記6つ以下の制御要素のうちの他の1つの制御要素は、前記第4遊星歯車セットの前記遊星キャリアの回転を制動する、請求項3に記載の多段変速機。
【請求項5】
前記第1遊星歯車セットの前記サンギヤと前記第2遊星歯車セットの前記リングギヤと前記第4遊星歯車セットの前記サンギヤとを連結する中間結合部材をさらに備える、請求項3に記載の多段変速機。
【請求項6】
前記6つ以下の制御要素のうちの他の1つの制御要素は、前記第3遊星歯車セットの前記遊星キャリアと前記中間結合部材とを選択的に連結する、請求項5に記載の多段変速機。
【請求項7】
前記6つ以下の制御要素のうちの他の1つの制御要素は、前記第1遊星歯車セットの前記リングギヤと前記第2遊星歯車セットの前記サンギヤとの回転を制動する、請求項3に記載の多段変速機。
【請求項8】
前記第2遊星歯車セットの前記遊星キャリアと前記第3遊星歯車セットの前記リングギヤとを連結する中間結合部材をさらに備える、請求項3に記載の多段変速機。
【請求項9】
入力部材と、
出力部材と、
前記入力部材から前記出力部材に向かって順に軸方向に配置された、第1遊星歯車セット、第2遊星歯車セット、第3遊星歯車セットおよび第4遊星歯車セットを含み、各々の遊星歯車セットがサンギヤ、遊星キャリアおよびリングギヤを含む、4つ以下の遊星歯車セットと、
6つ以下の制御要素とを備え、
前記6つ以下の制御要素の各々が、前記4つ以下の遊星歯車セットのうちの少なくとも1つの遊星歯車セットに動作可能に結合され、前記入力部材と前記出力部材との間に異なるギヤ比のセットを生成するように選択的に係合可能であり、
前記入力部材は、前記第3遊星歯車セットの前記サンギヤに連結されており、
前記出力部材は、前記第4遊星歯車セットの前記リングギヤに連結されており、
前記6つ以下の制御要素のうちの第1の制御要素は、前記第3遊星歯車セットの前記サンギヤと、前記第4遊星歯車セットの前記遊星キャリアと、を選択的に連結し、
前記6つ以下の制御要素のうちの第2の制御要素は、前記第4遊星歯車セットの前記遊星キャリアの回転を制動する、多段変速機。
【請求項10】
入力部材と、
出力部材と、
第1サンギヤ、第1プラネタリギヤ、第1リングギヤ、および第1遊星キャリアを有する第1遊星歯車セットと、
第2サンギヤ、第2プラネタリギヤ、第2リングギヤ、および第2遊星キャリアを有する第2遊星歯車セットと、
前記入力部材に連結されている第3サンギヤ、第3プラネタリギヤ、第3リングギヤ、および第3遊星キャリアを有する第3遊星歯車セットと、
第4サンギヤ、第4プラネタリギヤ、前記出力部材に連結されている第4リングギヤ、および第4遊星キャリアを有する第4遊星歯車セットと、
前記第1サンギヤと前記第2リングギヤと前記第4サンギヤとを連結する第1中間結合部材と、
前記第1リングギヤと前記第2サンギヤとを連結する第2中間結合部材と、
前記第2遊星キャリアと前記第3リングギヤとを連結する第3中間結合部材と、
前記第3サンギヤと前記第4遊星キャリアとを選択的に連結する第1クラッチと、
前記第3遊星キャリアと前記第1中間結合部材とを選択的に連結する第2クラッチと、
前記第3遊星キャリアと前記第4遊星キャリアとを選択的に連結する第3クラッチと、
前記第2中間結合部材の回転を制動する第1ブレーキと、
前記第1遊星キャリアの回転を制動する第2ブレーキと、
前記第4遊星キャリアの回転を制動する第3ブレーキと、を備える、多段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラックなどの作業車両は、複数の遊星歯車セットを有する多段変速機を備えている。遊星歯車式の多段変速機は、各遊星歯車セットの回転要素を適宜組み合わせて使用することによって、所望の減速比を得ることができる。従来、4つの遊星歯車セットと6つの制御要素とを備え、前進10段、後進2段の速度段を生成可能な多段変速機が、たとえば、米国特許出願公開第2015/0267781号明細書(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0267781号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多段変速機においては、速度段のスムーズな切り替えのために段間比のばらつきの低減が要望されている。
【0005】
本開示では、段間比のばらつきの低減を実現できる、多段変速機が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係る多段変速機は、入力部材と、出力部材とを備えている。多段変速機は、4つ以下の遊星歯車セットを備えている。上記4つ以下の遊星歯車セットは、入力部材から出力部材に向かって順に軸方向に配置された、第1遊星歯車セット、第2遊星歯車セット、第3遊星歯車セットおよび第4遊星歯車セットを含んでいる。各々の遊星歯車セットは、サンギヤ、遊星キャリアおよびリングギヤを含んでいる。多段変速機は、6つ以下の制御要素を備えている。上記6つ以下の制御要素の各々が、上記4つ以下の遊星歯車セットのうちの少なくとも1つの遊星歯車セットに動作可能に結合され、入力部材と出力部材との間に異なるギヤ比のセットを生成するように選択的に係合可能である。異なるギヤ比のセットは、少なくとも前進10段のギヤ比と、少なくとも後進2段のギヤ比とを含んでいる。上記6つ以下の制御要素のうちの1つの制御要素は、第3遊星歯車セットのサンギヤと、第4遊星歯車セットの遊星キャリアと、を選択的に連結する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の多段変速機によると、段間比のばらつきの低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る多段変速機の概略図である。
図2】多段変速機の各速度段において係合状態となる各クラッチまたは各ブレーキを示す表である。
図3】第1実施形態に係る多段変速機の各遊星歯車セットにおける歯数比を示す表である。
図4】第2実施形態に係る多段変速機の概略図である。
図5】第2実施形態に係る多段変速機の各遊星歯車セットにおける歯数比を示す表である。
図6】第3実施形態に係る多段変速機の概略図である。
図7】第3実施形態に係る多段変速機の各遊星歯車セットにおける歯数比を示す表である。
図8】第4実施形態に係る多段変速機の概略図である。
図9】第4実施形態に係る多段変速機の各遊星歯車セットにおける歯数比を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、多段変速機100の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下に説明する各実施形態では、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る多段変速機100の概略図である。多段変速機100は、ディーゼルエンジンに代表される内燃機関、電気モータなどの、図示しない任意の駆動源から入力される動力の回転速度を変速して出力する。駆動源からの動力は、トルクコンバータを介して多段変速機100に入力されてもよい。
【0011】
多段変速機100は、複数の遊星歯車セット1~4、複数のクラッチ51~53、複数のブレーキ61~63、入力部材7、第1中間結合部材81、第2中間結合部材82、第3中間結合部材83、第4中間結合部材84、出力部材10、およびハウジング9を備えている。各遊星歯車セット1~4、各クラッチ51~53、各ブレーキ61~63、入力部材7、第1中間結合部材81、第2中間結合部材82、第3中間結合部材83、第4中間結合部材84、および出力部材10は、ハウジング9に収容されている。
【0012】
以下の説明において、回転軸線Oとは、入力部材7および出力部材10の中心線を示す。回転軸方向とは、回転軸線Oが延びる方向を示す。径方向とは、回転軸線Oを中心とした円の径方向を示す。図1および後続の図4,6,8においては、回転軸方向は図中の左右方向であり、径方向は図中の上下方向である。入力側とは、多段変速機100が動力を入力する側を示す。出力側とは、多段変速機100が動力を出力する側を示す。図1および後続の図4,6,8においては、入力側は図中の左側、出力側は図中の右側である。
【0013】
複数の遊星歯車セットは、第1遊星歯車セット1、第2遊星歯車セット2、第3遊星歯車セット3、および第4遊星歯車セット4を含んでいる。複数のクラッチは、第1クラッチ51、第2クラッチ52、および第3クラッチ53を含んでいる。複数のブレーキは、第1ブレーキ61、第2ブレーキ62および第3ブレーキ63を含んでいる。各クラッチ51~53および各ブレーキ61~63は、実施形態の制御要素に相当する。6つの制御要素は、第1クラッチ51、第2クラッチ52、第3クラッチ53、第1ブレーキ61、第2ブレーキ62、および第3ブレーキ63を含んでいる。
【0014】
第1遊星歯車セット1、第2遊星歯車セット2、第3遊星歯車セット3、および第4遊星歯車セット4は、回転軸線Oを中心に回転可能に支持されている。第1遊星歯車セット1、第2遊星歯車セット2、第3遊星歯車セット3、および第4遊星歯車セット4は、回転軸方向に沿って、この順に配置されている。詳細には、入力側から出力側に向かって、第1遊星歯車セット1、第2遊星歯車セット2、第3遊星歯車セット3、および第4遊星歯車セット4の順で並べられている。
【0015】
入力部材7は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。エンジンなどの駆動源からの動力が、入力部材7に入力される。
【0016】
第1中間結合部材81は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。第1中間結合部材81は、回転軸方向に延びる部分を有している。第1中間結合部材81の中心線と、入力部材7の中心線とは、実質的に同じである。
【0017】
第2中間結合部材82は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。第2中間結合部材82は、回転軸方向に延びる部分を有している。第2中間結合部材82の回転軸方向に延びる部分は、第1中間結合部材81の回転軸方向に延びる部分に対して、径方向内側に配置されている。第2中間結合部材82の中心線と、入力部材7の中心線とは、実質的に同じである。
【0018】
第3中間結合部材83は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。第3中間結合部材83は、回転軸方向に延びる部分を有している。第3中間結合部材83の中心線と、入力部材7の中心線とは、実質的に同じである。
【0019】
第4中間結合部材84は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。第4中間結合部材84は、回転軸方向に延びる部分を有している。第4中間結合部材84の中心線と、入力部材7の中心線とは、実質的に同じである。
【0020】
第1遊星歯車セット1は、シングルピニオン式の遊星歯車機構である。第1遊星歯車セット1は、回転要素として、第1サンギヤ11、複数の第1プラネタリギヤ12、第1リングギヤ13、および第1遊星キャリア14を有している。
【0021】
第1サンギヤ11は、回転軸線Oを中心に回転可能に配置されている。第1サンギヤ11は、入力部材7の径方向外側に配置されている。詳細には、第1サンギヤ11は環状であって、入力部材7は第1サンギヤ11を貫通している。第1サンギヤ11と入力部材7とは、相対回転可能である。
【0022】
第1サンギヤ11は、第1中間結合部材81と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第1サンギヤ11は、第1中間結合部材81に固定されている。第1サンギヤ11と第1中間結合部材81とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0023】
各第1プラネタリギヤ12は、第1サンギヤ11に噛み合うように構成されている。各第1プラネタリギヤ12は、第1サンギヤ11の径方向外側に配置されている。詳細には、各第1プラネタリギヤ12は、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0024】
各第1プラネタリギヤ12は、第1サンギヤ11の周りを公転するように構成されている。各第1プラネタリギヤ12は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。また、各第1プラネタリギヤ12は、自転するように構成されている。
【0025】
第1リングギヤ13は、各第1プラネタリギヤ12と噛み合っている。第1リングギヤ13は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。
【0026】
第1リングギヤ13は、第2中間結合部材82と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第1リングギヤ13は、第2中間結合部材82に固定されている。第1リングギヤ13と第2中間結合部材82とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0027】
第1遊星キャリア14は、各第1プラネタリギヤ12を支持している。各第1プラネタリギヤ12は、第1遊星キャリア14に支持された状態で、自転可能である。第1遊星キャリア14は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。
【0028】
第2遊星歯車セット2は、シングルピニオン式の遊星歯車機構である。第2遊星歯車セット2は、回転要素として、第2サンギヤ21、複数の第2プラネタリギヤ22,第2リングギヤ23、および第2遊星キャリア24を有している。
【0029】
第2サンギヤ21は、回転軸線Oを中心に回転可能に構成されている。第2サンギヤ21は、入力部材7の径方向外側に配置されている。詳細には、第2サンギヤ21は環状であって、入力部材7は第2サンギヤ21を貫通している。第2サンギヤ21と入力部材7とは、相対回転可能である。
【0030】
第2サンギヤ21は、第2中間結合部材82と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第2サンギヤ21は、第2中間結合部材82に固定されている。第2サンギヤ21と第2中間結合部材82とは、1つの部材によって形成されていてもよい。第2中間結合部材82は、第1遊星歯車セット1の第1リングギヤ13と、第2遊星歯車セット2の第2サンギヤ21とを、連結している。第1リングギヤ13と第2サンギヤ21とは、互いに一体的に回転するように構成されている。
【0031】
各第2プラネタリギヤ22は、第2サンギヤ21に噛み合うように構成されている。各第2プラネタリギヤ22は、第2サンギヤ21の径方向外側に配置されている。詳細には、各第2プラネタリギヤ22は、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0032】
各第2プラネタリギヤ22は、第2サンギヤ21の周りを公転するように構成されている。各第2プラネタリギヤ22は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。また、各第2プラネタリギヤ22は、自転するように構成されている。
【0033】
第2リングギヤ23は、各第2プラネタリギヤ22と噛み合っている。第2リングギヤ23は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。
【0034】
第2リングギヤ23は、第1中間結合部材81と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第2リングギヤ23は、第1中間結合部材81に固定されている。第2リングギヤ23と第1中間結合部材81とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0035】
第2遊星キャリア24は、各第2プラネタリギヤ22を支持している。各第2プラネタリギヤ22は、第2遊星キャリア24に支持された状態で、自転可能である。第2遊星キャリア24は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。
【0036】
第2遊星キャリア24は、第3中間結合部材83と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第2遊星キャリア24は、第3中間結合部材83に固定されている。第2遊星キャリア24と第3中間結合部材83とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0037】
第3遊星歯車セット3は、シングルピニオン式の遊星歯車機構である。第3遊星歯車セット3は、回転要素として、第3サンギヤ31、複数の第3プラネタリギヤ32、第3リングギヤ33、および第3遊星キャリア34を有している。
【0038】
第3サンギヤ31は、入力部材7と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第3サンギヤ31は、入力部材7に固定されている。入力部材7は、第3遊星歯車セット3の第3サンギヤ31に連結されている。第3サンギヤ31と入力部材7とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0039】
各第3プラネタリギヤ32は、第3サンギヤ31に噛み合うように構成されている。各第3プラネタリギヤ32は、第3サンギヤ31の径方向外側に配置されている。詳細には、各第3プラネタリギヤ32は、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0040】
各第3プラネタリギヤ32は、第3サンギヤ31の周りを公転するように構成されている。各第3プラネタリギヤ32は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。また、各第3プラネタリギヤ32は、自転するように構成されている。
【0041】
第3リングギヤ33は、各第3プラネタリギヤ32と噛み合っている。第3リングギヤ33は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。
【0042】
第3リングギヤ33は、第3中間結合部材83と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第3リングギヤ33は、第3中間結合部材83に固定されている。第3リングギヤ33と第3中間結合部材83とは、1つの部材によって形成されていてもよい。第3中間結合部材83は、第2遊星歯車セット2の第2遊星キャリア24と、第3遊星歯車セット3の第3リングギヤ33とを、連結している。第2遊星キャリア24と第3リングギヤ33とは、互いに一体的に回転するように構成されている。
【0043】
第3遊星キャリア34は、各第3プラネタリギヤ32を支持している。各第3プラネタリギヤ32は、第3遊星キャリア34に支持された状態で、自転可能である。第3遊星キャリア34は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。
【0044】
第4遊星歯車セット4は、シングルピニオン式の遊星歯車機構である。第4遊星歯車セット4は、回転要素として、第4サンギヤ41、複数の第4プラネタリギヤ42、第4リングギヤ43、および第4遊星キャリア44を有している。
【0045】
第4サンギヤ41は、環状であって、回転軸線Oを中心に回転可能に配置されている。第4サンギヤ41は、第1中間結合部材81と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第4サンギヤ41は、第1中間結合部材81に固定されている。第4サンギヤ41と第1中間結合部材81とは、1つの部材によって形成されていてもよい。第1中間結合部材81は、第1遊星歯車セット1の第1サンギヤ11と、第2遊星歯車セット2の第2リングギヤ23と、第4遊星歯車セット4の第4サンギヤ41とを、連結している。第1サンギヤ11と第2リングギヤ23と第4サンギヤ41とは、互いに一体的に回転するように構成されている。
【0046】
各第4プラネタリギヤ42は、第4サンギヤ41に噛み合うように構成されている。各第4プラネタリギヤ42は、第4サンギヤ41の径方向外側に配置されている。詳細には、各第4プラネタリギヤ42は、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0047】
各第4プラネタリギヤ42は、第4サンギヤ41の周りを公転するように構成されている。各第4プラネタリギヤ42は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。また、各第4プラネタリギヤ42は、自転するように構成されている。
【0048】
第4リングギヤ43は、各第4プラネタリギヤ42と噛み合っている。第4リングギヤ43は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。
【0049】
第4リングギヤ43は、出力部材10と一体的に回転するように構成されている。第4リングギヤ43は、出力部材10に固定されている。出力部材10は、第4遊星歯車セット4の第4リングギヤ43に連結されている。第4リングギヤ43と出力部材10とは、1つの部材によって形成されていてもよい。出力部材10は、動力を出力する。詳細には、出力部材10は、多段変速機100によって変速された回転速度を有する動力を、出力する。
【0050】
第4遊星キャリア44は、各第4プラネタリギヤ42を支持している。各第4プラネタリギヤ42は、第4遊星キャリア44に支持された状態で、自転可能である。第4遊星キャリア44は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。
【0051】
第4遊星キャリア44は、第4中間結合部材84と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第4遊星キャリア44は、第4中間結合部材84に固定されている。第4遊星キャリア44と第4中間結合部材84とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0052】
第1クラッチ51は、第3遊星歯車セット3の第3サンギヤ31と、第4中間結合部材84とを、選択的に連結するように構成されている。第1クラッチ51は、第3サンギヤ31と、第4遊星歯車セット4の第4遊星キャリア44とを、選択的に連結するように構成されている。第1クラッチ51は、たとえば、油圧式のクラッチ機構であって、複数のディスクから構成することができる。
【0053】
第1クラッチ51は、係合状態のとき、第3サンギヤ31と第4中間結合部材84とを連結する。第1クラッチ51は、係合状態のとき、第4中間結合部材84を介して、第3サンギヤ31と第4遊星キャリア44とを連結する。したがって、第3サンギヤ31と第4遊星キャリア44とが一体的に回転する。第1クラッチ51は、解放状態のとき、第3サンギヤ31と第4中間結合部材84との連結を解除する。したがって、第3サンギヤ31と第4遊星キャリア44とは、互いに相対的に回転可能である。
【0054】
第2クラッチ52は、第3遊星歯車セット3の第3遊星キャリア34と、第1中間結合部材81とを、選択的に連結するように構成されている。第2クラッチ52は、第3遊星キャリア34と、第1サンギヤ11、第2リングギヤ23および第4サンギヤ41とを、選択的に連結するように構成されている。第2クラッチ52は、たとえば、油圧式のクラッチ機構であって、複数のディスクから構成することができる。
【0055】
第2クラッチ52は、係合状態のとき、第3遊星キャリア34と第1中間結合部材81とを連結する。第2クラッチ52は、係合状態のとき、第1中間結合部材81を介して、第3遊星キャリア34と、第1サンギヤ11、第2リングギヤ23および第4サンギヤ41とを連結する。したがって、第3遊星キャリア34、第1サンギヤ11、第2リングギヤ23および第4サンギヤ41が、一体的に回転する。第2クラッチ52は、解放状態のとき、第3遊星キャリア34と第1中間結合部材81との連結を解除する。したがって、第3遊星キャリア34は、第1サンギヤ11、第2リングギヤ23および第4サンギヤ41に対して、相対的に回転可能である。
【0056】
第3クラッチ53は、第3遊星歯車セット3の第3遊星キャリア34と、第4中間結合部材84とを、選択的に連結するように構成されている。第3クラッチ53は、第3遊星キャリア34と、第4遊星歯車セット4の第4遊星キャリア44とを、選択的に連結するように構成されている。第3クラッチ53は、たとえば、油圧式のクラッチ機構であって、複数のディスクから構成することができる。
【0057】
第3クラッチ53は、係合状態のとき、第3遊星キャリア34と第4中間結合部材84とを連結する。第3クラッチ53は、係合状態のとき、第4中間結合部材84を介して、第3遊星キャリア34と第4遊星キャリア44とを連結する。したがって、第3遊星キャリア34と第4遊星キャリア44とが一体的に回転する。第3クラッチ53は、解放状態のとき、第3遊星キャリア34と第4中間結合部材84との連結を解除する。したがって、第3遊星キャリア34と第4遊星キャリア44とは、互いに相対的に回転可能である。
【0058】
第1ブレーキ61は、第2中間結合部材82とハウジング9とを選択的に連結するように構成されている。第1ブレーキ61は、第1遊星歯車セット1の第1リングギヤ13および第2遊星歯車セット2の第2サンギヤ21と、ハウジング9とを選択的に連結するように構成されている。
【0059】
第1ブレーキ61は、係合状態のとき、第2中間結合部材82とハウジング9とを連結する。第1ブレーキ61は、係合状態のとき、第1リングギヤ13とハウジング9とを連結し、第2サンギヤ21とハウジング9とを連結する。係合状態の第1ブレーキ61が第1リングギヤ13および第2サンギヤ21の回転を制動し、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21は回転不能とされる。
【0060】
第1ブレーキ61は、解放状態のとき、第2中間結合部材82とハウジング9との連結を解除する。第1ブレーキ61は、解放状態のとき、第1リングギヤ13とハウジング9との連結を解除し、第2サンギヤ21とハウジング9との連結を解除する。解放状態の第1ブレーキ61は、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21の回転を制動せず、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21は回転可能である。
【0061】
第2ブレーキ62は、第1遊星歯車セット1の第1遊星キャリア14とハウジング9とを選択的に連結するように構成されている。
【0062】
第2ブレーキ62は、係合状態のとき、第1遊星キャリア14とハウジング9とを連結する。係合状態の第2ブレーキ62が第1遊星キャリア14の回転を制動し、第1遊星キャリア14は回転不能とされる。第2ブレーキ62は、解放状態のとき、第1遊星キャリア14とハウジング9との連結を解除する。解放状態の第2ブレーキ62は、第1遊星キャリア14の回転を制動せず、第1遊星キャリア14は回転可能である。
【0063】
第3ブレーキ63は、第4遊星歯車セット4の第4遊星キャリア44とハウジング9とを選択的に連結するように構成されている。
【0064】
第3ブレーキ63は、係合状態のとき、第4遊星キャリア44とハウジング9とを連結する。係合状態の第3ブレーキ63が第4遊星キャリア44の回転を制動し、第4遊星キャリア44は回転不能とされる。第3ブレーキ63は、解放状態のとき、第4遊星キャリア44とハウジング9との連結を解除する。解放状態の第3ブレーキ63は、第4遊星キャリア44の回転を制動せず、第4遊星キャリア44は回転可能である。
【0065】
以上のように構成された多段変速機100では、第1~第3クラッチ51~53および第1~第3ブレーキ61~63の各々が、第1~第4遊星歯車セット1~4のうちの少なくとも1つの遊星歯車セットに、動作可能に結合されている。第1~第3クラッチ51~53と第1~第3ブレーキ61~63とを選択的に係合して、第1~第4遊星歯車セット1~4の回転要素の回転を規制することにより、入力部材7と出力部材10との間に異なるギヤ比のセットが生成される。異なるギヤ比のセットは、少なくとも前進10段のギヤ比と後進2段のギヤ比とを含んでいる。
【0066】
図2は、多段変速機100の各速度段において係合状態となる各クラッチ51~53または各ブレーキ61~63を示す表である。図2には、各速度段に対応する第1~第3クラッチ51~53および第1~第3ブレーキ61~63の作動状態が図示されている。第1~第3クラッチ51~53および第1~第3ブレーキ61~63の欄に×印が付されている場合、係合状態にあることを示し、空欄の場合、解放(非係合)状態にあることを示す。
【0067】
多段変速機100の速度段を前進の第1速(F1)とする際には、第3クラッチ53、第1ブレーキ61および第3ブレーキ63を係合状態にし、第1クラッチ51、第2クラッチ52および第2ブレーキ62を解放状態にする。係合状態の第3クラッチ53が、第3遊星キャリア34と第4遊星キャリア44とを連結する。係合状態の第1ブレーキ61が、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21の回転を制動する。係合状態の第3ブレーキ63が、第4遊星キャリア44の回転を制動する。
【0068】
多段変速機100の速度段を前進の第2速(F2)とする際には、第3クラッチ53、第2ブレーキ62および第3ブレーキ63を係合状態にし、第1クラッチ51、第2クラッチ52および第1ブレーキ61を解放状態にする。係合状態の第3クラッチ53が、第3遊星キャリア34と第4遊星キャリア44とを連結する。係合状態の第2ブレーキ62が、第1遊星キャリア14の回転を制動する。係合状態の第3ブレーキ63が、第4遊星キャリア44の回転を制動する。
【0069】
多段変速機100の速度段を前進の第3速(F3)にする際には、第3クラッチ53、第1ブレーキ61および第2ブレーキ62を係合状態にし、第1クラッチ51、第2クラッチ52および第3ブレーキ63を解放状態にする。係合状態の第3クラッチ53が、第3遊星キャリア34と第4遊星キャリア44とを連結する。係合状態の第1ブレーキ61が、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21の回転を制動する。係合状態の第2ブレーキ62が、第1遊星キャリア14の回転を制動する。
【0070】
多段変速機100の速度段を前進の第4速(F4)にする際には、第2クラッチ52、第3クラッチ53および第2ブレーキ62を係合状態にし、第1クラッチ51、第1ブレーキ61および第3ブレーキ63を解放状態にする。係合状態の第2クラッチ52が、第3遊星キャリア34と、第1サンギヤ11、第2リングギヤ23および第4サンギヤ41とを連結する。係合状態の第3クラッチ53が、第3遊星キャリア34と第4遊星キャリア44とを連結する。係合状態の第2ブレーキ62が、第1遊星キャリア14の回転を制動する。
【0071】
多段変速機100の速度段を前進の第5速(F5)にする際には、第2クラッチ52、第3クラッチ53および第1ブレーキ61を係合状態にし、第1クラッチ51、第2ブレーキ62および第3ブレーキ63を解放状態にする。係合状態の第2クラッチ52が、第3遊星キャリア34と、第1サンギヤ11、第2リングギヤ23および第4サンギヤ41とを連結する。係合状態の第3クラッチ53が、第3遊星キャリア34と第4遊星キャリア44とを連結する。係合状態の第1ブレーキ61が、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21の回転を制動する。
【0072】
多段変速機100の速度段を前進の第6速(F6)にする際には、第1クラッチ51、第3クラッチ53および第2ブレーキ62を係合状態にし、第2クラッチ52、第1ブレーキ61および第3ブレーキ63を解放状態にする。係合状態の第1クラッチ51が、第3サンギヤ31と第4遊星キャリア44とを連結する。係合状態の第3クラッチ53が、第3遊星キャリア34と第4遊星キャリア44とを連結する。係合状態の第2ブレーキ62が、第1遊星キャリア14の回転を制動する。
【0073】
多段変速機100の速度段を前進の第7速(F7)にする際には、第1クラッチ51、第3クラッチ53および第1ブレーキ61を係合状態にし、第2クラッチ52、第2ブレーキ62および第3ブレーキ63を解放状態にする。係合状態の第1クラッチ51が、第3サンギヤ31と第4遊星キャリア44とを連結する。係合状態の第3クラッチ53が、第3遊星キャリア34と第4遊星キャリア44とを連結する。係合状態の第1ブレーキ61が、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21の回転を制動する。
【0074】
多段変速機100の速度段を前進の第8速(F8)にする際には、第1クラッチ51、第2クラッチ52および第3クラッチ53を係合状態にし、第1ブレーキ61、第2ブレーキ62および第3ブレーキ63を解放状態にする。係合状態の第1クラッチ51が、第3サンギヤ31と第4遊星キャリア44とを連結する。係合状態の第2クラッチ52が、第3遊星キャリア34と、第1サンギヤ11、第2リングギヤ23および第4サンギヤ41とを連結する。係合状態の第3クラッチ53が、第3遊星キャリア34と第4遊星キャリア44とを連結する。
【0075】
多段変速機100の速度段を前進の第9速(F9)にする際には、第1クラッチ51、第2クラッチ52および第2ブレーキ62を係合状態にし、第3クラッチ53、第1ブレーキ61および第3ブレーキ63を解放状態にする。係合状態の第1クラッチ51が、第3サンギヤ31と第4遊星キャリア44とを連結する。係合状態の第2クラッチ52が、第3遊星キャリア34と、第1サンギヤ11、第2リングギヤ23および第4サンギヤ41とを連結する。係合状態の第2ブレーキ62が、第1遊星キャリア14の回転を制動する。
【0076】
多段変速機100の速度段を前進の第10速(F10)にする際には、第1クラッチ51、第1ブレーキ61および第2ブレーキ62を係合状態にし、第2クラッチ52、第3クラッチ53、および第3ブレーキ63を解放状態にする。係合状態の第1クラッチ51が、第3サンギヤ31と第4遊星キャリア44とを連結する。係合状態の第1ブレーキ61が、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21の回転を制動する。係合状態の第2ブレーキ62が、第1遊星キャリア14の回転を制動する。
【0077】
多段変速機100の速度段を後進の第1速(R1)にする際には、第2クラッチ52、第2ブレーキ62および第3ブレーキ63を係合状態にし、第1クラッチ51、第3クラッチ53、および第1ブレーキ61を解放状態にする。係合状態の第2クラッチ52が、第3遊星キャリア34と、第1サンギヤ11、第2リングギヤ23および第4サンギヤ41とを連結する。係合状態の第2ブレーキ62が、第1遊星キャリア14の回転を制動する。係合状態の第3ブレーキ63が、第4遊星キャリア44の回転を制動する。
【0078】
多段変速機100の速度段を後進の第2速(R2)にする際には、第2クラッチ52、第1ブレーキ61および第3ブレーキ63を係合状態にし、第1クラッチ51、第3クラッチ53、および第2ブレーキ62を解放状態にする。係合状態の第2クラッチ52が、第3遊星キャリア34と、第1サンギヤ11、第2リングギヤ23および第4サンギヤ41とを連結する。係合状態の第1ブレーキ61が、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21の回転を制動する。係合状態の第3ブレーキ63が、第4遊星キャリア44の回転を制動する。
【0079】
多段変速機100の速度段を代替の速度段である前進の第9速(F9’)にする際には、第1クラッチ51、第2クラッチ52および第1ブレーキ61を係合状態にし、第3クラッチ53、第2ブレーキ62および第3ブレーキ63を解放状態にする。係合状態の第1クラッチ51が、第3サンギヤ31と第4遊星キャリア44とを連結する。係合状態の第2クラッチ52が、第3遊星キャリア34と、第1サンギヤ11、第2リングギヤ23および第4サンギヤ41とを連結する。係合状態の第1ブレーキ61が、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21の回転を制動する。
【0080】
ここで、各遊星歯車セット1~4に関して、サンギヤの歯数をa、リングギヤの歯数をb、サンギヤの回転数比をNa、リングギヤの回転数比をNb、遊星キャリアの回転数比をNcとすると、以下の関係式が成立する。なお、各ギヤの回転数比とは、入力部材7の回転数に対する各ギヤの回転数の比をいう。
【0081】
a・Na+b・Nb=(a+b)・Nc
各遊星歯車セット1~4における、サンギヤの歯数に対するリングギヤの歯数の比(歯数比)は、図3に示される通りである。なお図3は、第1実施形態に係る多段変速機100の各遊星歯車セット1~4における歯数比を示す表である。
【0082】
図2に示される、上述した各速度段における減速比は、上記の関係式と、図3に示される歯数比とを用いて、求めることができる。
【0083】
なお、図2に示される段間比とは、各速度段の減速比の比を表す。詳細には、隣同士の速度段の減速比について、低速段の減速比を高速段の減速比で除した値を段間比という。総段間比とは、最低速段の減速比を最高速段の減速比で除した値をいう。本実施形態の多段変速機100は、前進10段の速度段を有している。本実施形態の多段変速機100の総段間比は、前進の第1速の減速比を、前進の第10速の減速比で除した値である。
【0084】
本実施形態の多段変速機100は、前進の速度段を10段有するとともに後進の速度段を2段有している。これにより、多段変速機100を搭載する車両の燃費を改善することができ、多段変速機100を搭載する車両の走行性能を向上することができる。
【0085】
本実施形態では、前進10段、後進2段の速度段を実現するために、多段変速機100は4つの遊星歯車セット1~4と合計6つの制御要素(第1~第3クラッチ51~53および第1~第3ブレーキ61~63)とを有している。これにより、多段変速機100の重量低減とコンパクト化とを実現することができる。
【0086】
本実施形態の多段変速機100では、図2に示される総段間比が6.92である。これにより、多段変速機100を搭載する車両の最大牽引力を向上でき、最大車速も向上することができる。
【0087】
本実施形態の多段変速機100では、図2に示される前進10段の速度段の段間比は、1.14~1.33の範囲にあり、段間比のばらつきが低減されている。これにより、多段変速機100は、変速時の衝撃を抑制でき、速度段をスムーズに切り替えることができる。
【0088】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係る多段変速機100の概略図である。図5は、第2実施形態に係る多段変速機100の各遊星歯車セット1~4における歯数比を示す表である。以下の第2実施形態の記載では、第1実施形態と同じ構成については説明を省略し、第1実施形態とは異なる第2実施形態特有の構成に着目して説明することとする。
【0089】
第2実施形態に係る多段変速機100は、図5に示されるように、4つ以下の遊星歯車セット1~4が、少なくとも1つのダブルピニオン式の遊星歯車機構を含む点で、第1実施形態とは異なっている。具体的に、第2実施形態に係る多段変速機100においては、第1遊星歯車セット1がダブルピニオン式の遊星歯車機構として構成されている。
【0090】
第1遊星歯車セット1の第1プラネタリギヤ12は、内側ピニオンギヤと、外側ピニオンギヤとを有している。内側ピニオンギヤは、第1サンギヤ11と噛み合っている。外側ピニオンギヤは、第1リングギヤ13と噛み合っている。内側ピニオンギヤと外側ピニオンギヤ同士も噛み合っている。内側ピニオンギヤは第1リングギヤ13からは径方向内側に離れて配置され、外側ピニオンギヤは第1サンギヤ11からは径方向外側に離れて配置されている。第1遊星キャリア14は、内側ピニオンギヤと外側ピニオンギヤとの両方を、自転可能に支持している。
【0091】
図4に示されるように、第1遊星キャリア14は、第2中間結合部材82と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第1遊星キャリア14は、第2中間結合部材82に固定されている。第1遊星キャリア14と第2中間結合部材82とは、1つの部材によって形成されていてもよい。第2中間結合部材82は、第1遊星歯車セット1の第1遊星キャリア14と、第2遊星歯車セット2の第2サンギヤ21とを、連結している。第1遊星キャリア14と第2サンギヤ21とは、互いに一体的に回転するように構成されている。
【0092】
第1ブレーキ61は、第1遊星歯車セット1の第1遊星キャリア14および第2遊星歯車セット2の第2サンギヤ21と、ハウジング9とを選択的に連結するように構成されている。
【0093】
第1ブレーキ61は、係合状態のとき、第1遊星キャリア14とハウジング9とを連結し、第2サンギヤ21とハウジング9とを連結する。係合状態の第1ブレーキ61が第1遊星キャリア14および第2サンギヤ21の回転を制動し、第1遊星キャリア14および第2サンギヤ21は回転不能とされる。第1ブレーキ61は、解放状態のとき、第1遊星キャリア14とハウジング9との連結を解除し、第2サンギヤ21とハウジング9との連結を解除する。解放状態の第1ブレーキ61は、第1遊星キャリア14および第2サンギヤ21の回転を制動せず、第1遊星キャリア14および第2サンギヤ21は回転可能である。
【0094】
第2ブレーキ62は、第1遊星歯車セット1の第1リングギヤ13とハウジング9とを選択的に連結するように構成されている。
【0095】
第2ブレーキ62は、係合状態のとき、第1リングギヤ13とハウジング9とを連結する。係合状態の第2ブレーキ62が第1リングギヤ13の回転を制動し、第1リングギヤ13は回転不能とされる。第2ブレーキ62は、解放状態のとき、第1リングギヤ13とハウジング9との連結を解除する。解放状態の第2ブレーキ62は、第1リングギヤ13の回転を制動せず、第1リングギヤ13は回転可能である。
【0096】
このように構成された第2実施形態の多段変速機100においても、図2と同様に、第1~第3クラッチ51~53および第1~第3ブレーキ61~63を選択的に係合して、第1~第4遊星歯車セット1~4の回転要素の回転を規制することにより、前進10段、後進2段のギヤ比を実現することができる。第2実施形態の多段変速機100においても、多段変速機100の段間比のばらつきを低減できる効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。
【0097】
[第3実施形態]
図6は、第3実施形態に係る多段変速機100の概略図である。図7は、第3実施形態に係る多段変速機100の各遊星歯車セット1~4における歯数比を示す表である。以下の第3実施形態の記載では、第1実施形態と同じ構成については説明を省略し、第1実施形態とは異なる第3実施形態特有の構成に着目して説明することとする。
【0098】
第3実施形態に係る多段変速機100は、図7に示されるように、4つ以下の遊星歯車セット1~4が、少なくとも1つのダブルピニオン式の遊星歯車機構を含む点で、第1実施形態とは異なっている。具体的に、第3実施形態に係る多段変速機100においては、第2遊星歯車セット2がダブルピニオン式の遊星歯車機構として構成されている。
【0099】
第2遊星歯車セット2の第2プラネタリギヤ22は、内側ピニオンギヤと、外側ピニオンギヤとを有している。内側ピニオンギヤは、第2サンギヤ21と噛み合っている。外側ピニオンギヤは、第2リングギヤ23と噛み合っている。内側ピニオンギヤと外側ピニオンギヤ同士も噛み合っている。内側ピニオンギヤは第2リングギヤ23からは径方向内側に離れて配置され、外側ピニオンギヤは第2サンギヤ21からは径方向外側に離れて配置されている。第2遊星キャリア24は、内側ピニオンギヤと外側ピニオンギヤとの両方を、自転可能に支持している。
【0100】
図6に示されるように、第2遊星キャリア24は、第1中間結合部材81と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第2遊星キャリア24は、第1中間結合部材81に固定されている。第2遊星キャリア24と第1中間結合部材81とは、1つの部材によって形成されていてもよい。第1中間結合部材81は、第1遊星歯車セット1の第1サンギヤ11と、第2遊星歯車セット2の第2遊星キャリア24と、第4遊星歯車セット4の第4サンギヤ41とを、連結している。第1サンギヤ11と第2遊星キャリア24と第4サンギヤ41とは、互いに一体的に回転するように構成されている。
【0101】
第2リングギヤ23は、第3中間結合部材83と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第2リングギヤ23は、第3中間結合部材83に固定されている。第2リングギヤ23と第3中間結合部材83とは、1つの部材によって形成されていてもよい。第3中間結合部材83は、第2遊星歯車セット2の第2リングギヤ23と、第3遊星歯車セット3の第3リングギヤ33とを、連結している。第2リングギヤ23と第3リングギヤ33とは、互いに一体的に回転するように構成されている。
【0102】
第2クラッチ52は、第3遊星キャリア34と、第1サンギヤ11、第2遊星キャリア24および第4サンギヤ41とを、選択的に連結するように構成されている。
【0103】
第2クラッチ52は、係合状態のとき、第1中間結合部材81を介して、第3遊星キャリア34と、第1サンギヤ11、第2遊星キャリア24および第4サンギヤ41とを連結する。したがって、第3遊星キャリア34、第1サンギヤ11、第2遊星キャリア24および第4サンギヤ41が、一体的に回転する。第2クラッチ52は、解放状態のとき、第3遊星キャリア34と第1中間結合部材81との連結を解除する。したがって、第3遊星キャリア34は、第1サンギヤ11、第2遊星キャリア24および第4サンギヤ41に対して、相対的に回転可能である。
【0104】
このように構成された第3実施形態の多段変速機100においても、図2と同様に、第1~第3クラッチ51~53および第1~第3ブレーキ61~63を選択的に係合して、第1~第4遊星歯車セット1~4の回転要素の回転を規制することにより、前進10段、後進2段のギヤ比を実現することができる。第3実施形態の多段変速機100においても、多段変速機100の段間比のばらつきを低減できる効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。
【0105】
[第4実施形態]
図8は、第4実施形態に係る多段変速機100の概略図である。図9は、第4実施形態に係る多段変速機100の各遊星歯車セット1~4における歯数比を示す表である。以下の第4実施形態の記載では、第1実施形態と同じ構成については説明を省略し、第1実施形態とは異なる第4実施形態特有の構成に着目して説明することとする。
【0106】
第2実施形態に係る多段変速機100は、図9に示されるように、4つ以下の遊星歯車セット1~4が、少なくとも1つのダブルピニオン式の遊星歯車機構を含む点で、第1実施形態とは異なっている。具体的に、第4実施形態に係る多段変速機100においては、第3遊星歯車セット3がダブルピニオン式の遊星歯車機構として構成されている。
【0107】
第3遊星歯車セット3の第3プラネタリギヤ32は、内側ピニオンギヤと、外側ピニオンギヤとを有している。内側ピニオンギヤは、第3サンギヤ31と噛み合っている。外側ピニオンギヤは、第3リングギヤ33と噛み合っている。内側ピニオンギヤと外側ピニオンギヤ同士も噛み合っている。内側ピニオンギヤは第3リングギヤ33からは径方向内側に離れて配置され、外側ピニオンギヤは第3サンギヤ31からは径方向外側に離れて配置されている。第3遊星キャリア34は、内側ピニオンギヤと外側ピニオンギヤとの両方を、自転可能に支持している。
【0108】
図8に示されるように、第3遊星キャリア34は、第3中間結合部材83と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第3遊星キャリア34は、第3中間結合部材83に固定されている。第3遊星キャリア34と第3中間結合部材83とは、1つの部材によって形成されていてもよい。第3中間結合部材83は、第2遊星歯車セット2の第2遊星キャリア24と、第3遊星歯車セット3の第3遊星キャリア34とを、連結している。第2遊星キャリア24と第3遊星キャリア34とは、互いに一体的に回転するように構成されている。
【0109】
第2クラッチ52は、第3遊星歯車セット3の第3リングギヤ33と、第1中間結合部材81とを、選択的に連結するように構成されている。第2クラッチ52は、第3リングギヤ33と、第1サンギヤ11、第2リングギヤ23および第4サンギヤ41とを、選択的に連結するように構成されている。
【0110】
第2クラッチ52は、係合状態のとき、第1中間結合部材81を介して、第3リングギヤ33と、第1サンギヤ11、第2リングギヤ23および第4サンギヤ41とを連結する。したがって、第3リングギヤ33、第1サンギヤ11、第2リングギヤ23および第4サンギヤ41が、一体的に回転する。第2クラッチ52は、解放状態のとき、第3リングギヤ33と第1中間結合部材81との連結を解除する。したがって、第3リングギヤ33は、第1サンギヤ11、第2リングギヤ23および第4サンギヤ41に対して、相対的に回転可能である。
【0111】
第3クラッチ53は、第3遊星歯車セット3の第3リングギヤ33と、第4中間結合部材84とを、選択的に連結するように構成されている。第3クラッチ53は、第3リングギヤ33と、第4遊星歯車セット4の第4遊星キャリア44とを、選択的に連結するように構成されている。
【0112】
第3クラッチ53は、係合状態のとき、第3リングギヤ33と第4中間結合部材84とを連結する。第3クラッチ53は、係合状態のとき、第4中間結合部材84を介して、第3リングギヤ33と第4遊星キャリア44とを連結する。したがって、第3リングギヤ33と第4遊星キャリア44とが一体的に回転する。第3クラッチ53は、解放状態のとき、第3リングギヤ33と第4中間結合部材84との連結を解除する。したがって、第3リングギヤ33と第4遊星キャリア44とは、互いに相対的に回転可能である。
【0113】
このように構成された第4実施形態の多段変速機100においても、図2と同様に、第1~第3クラッチ51~53および第1~第3ブレーキ61~63を選択的に係合して、第1~第4遊星歯車セット1~4の回転要素の回転を規制することにより、前進10段、後進2段のギヤ比を実現することができる。第4実施形態の多段変速機100においても、多段変速機100の段間比のばらつきを低減できる効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。
【0114】
前述の実施形態の多段変速機100は、多段変速機を備える任意の機械に使用され得るが、ダンプトラックなどの建設機械および鉱山機械に、特に適用可能である。
【0115】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0116】
1 第1遊星歯車セット、2 第2遊星歯車セット、3 第3遊星歯車セット、4 第4遊星歯車セット、7 入力部材、9 ハウジング、10 出力部材、11 第1サンギヤ、12 第1プラネタリギヤ、13 第1リングギヤ、14 第1遊星キャリア、21 第2サンギヤ、22 第2プラネタリギヤ、23 第2リングギヤ、24 第2遊星キャリア、31 第3サンギヤ、32 第3プラネタリギヤ、33 第3リングギヤ、34 第3遊星キャリア、41 第4サンギヤ、42 第4プラネタリギヤ、43 第4リングギヤ、44 第4遊星キャリア、51 第1クラッチ、52 第2クラッチ、53 第3クラッチ、61 第1ブレーキ、62 第2ブレーキ、63 第3ブレーキ、81 第1中間結合部材、82 第2中間結合部材、83 第3中間結合部材、84 第4中間結合部材、100 多段変速機、O 回転軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9