(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069286
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】炉殻の内面腐食防止機構
(51)【国際特許分類】
F23M 5/00 20060101AFI20230511BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
F23M5/00 C
F23M5/00 Z
F23G5/44 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181046
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊也
【テーマコード(参考)】
3K065
【Fターム(参考)】
3K065AA24
3K065AB01
3K065AC05
3K065AC19
3K065FA24
3K065FB03
(57)【要約】
【課題】加熱開始後や加熱終了後においても炉殻内面での腐食をより効果的に防止する炉殻の内面腐食防止機構を提供する。
【解決手段】金属製の炉殻2と、炉殻2の内面側に設けられ且つガス透過性を有するセラミック製の断熱材3と、断熱材3で囲まれる空間であり且つ腐食性ガスを発生させる処理室6と、断熱材3に配設され且つ噴出孔12を有するノズル10と、を備える熱処理装置1において、断熱材3を透過して炉殻2の内面側に到達した腐食性ガスの濃度を下げる希釈ガス40を、噴出孔12を通じて、炉殻2の内面に沿っておよび/または炉殻2の内面に向けて噴出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の炉殻と、
前記炉殻の内面側に設けられ且つガス透過性を有するセラミック製の断熱材と、
前記断熱材で囲まれる空間であり且つ腐食性ガスを発生させる処理室と、
前記断熱材に配設され且つ噴出孔を有するノズルと、を備える熱処理装置において、
前記断熱材を透過して前記炉殻の内面側に到達した前記腐食性ガスの濃度を下げる希釈ガスを、前記噴出孔を通じて、前記炉殻の内面に沿っておよび/または前記炉殻の内面に向けて噴出することを特徴とする、炉殻の内面腐食防止機構。
【請求項2】
前記噴出孔から噴出される前記希釈ガスの流れをガイドする溝が、前記断熱材の外面側および/または前記炉殻の内面側に配設されて、
前記溝が、前記炉殻の厚み方向と交わる交差方向に延在することを特徴とする、請求項1に記載の炉殻の内面腐食防止機構。
【請求項3】
前記希釈ガスが、前記処理室の加熱開始後および加熱終了後において噴出されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の炉殻の内面腐食防止機構。
【請求項4】
前記ノズルが、前記炉殻に対して前記炉殻の長さ方向に着脱自在に構成されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の炉殻の内面腐食防止機構。
【請求項5】
前記ノズルをガイドし且つ支持する支持部材を前記炉殻の内部においてさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載の炉殻の内面腐食防止機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炉殻の内面腐食防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
熱処理装置では、断熱材が、金属製(例えば鉄製)の金具を介して、金属製(例えば鉄製)の炉殻の内面に取り付けられる。ここで、ガス透過性を有する断熱材が用いられる熱処理装置において腐食性ガスが処理室内を流れる場合、断熱材を透過する腐食性ガスが、低温の炉殻の内面で結露することによって腐食性液体が生成される。このような当該腐食性液体は、金属製(例えば鉄製)の炉殻および金具(以下、単に炉殻という)を腐食させるという問題がある。
【0003】
従来より、様々な炉殻の内面腐食防止構造が提案されている。例えば、特許文献1は、炉殻の外周を保温材で覆う、炉殻の保温構造を開示する。特許文献2は、炉殻の外側に設けられる仕切り板によって空気層を形成する、炉殻構造を開示する。特許文献3は、炉殻の外側に設けられる外包壁によって空気流路を形成する、炉壁構造を開示する。特許文献4は、内面側の炉殻と外面側の炉殻との間に形成される空間を、真空にするかまたは低熱伝導率のガスで封入する、真空脱ガス装置の壁構造を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3521466号公報
【特許文献2】特許3802864号公報
【特許文献3】特開平8-312939号公報
【特許文献4】特開平9-125133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献の技術では、保温材や空気層などの保温手段で炉殻を保温することによって炉殻の腐食防止を試みているが、炉殻の内面での温度が腐食性ガスの酸露点よりも低くなる加熱開始後や加熱終了後においては保温作用が働かないので、炉殻内面での腐食が発生する。
【0006】
この発明の課題は、加熱開始後や加熱終了後においても炉殻内面での腐食を防止する炉殻の内面腐食防止機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の一態様に係る炉殻の内面腐食防止機構は、
金属製の炉殻と、
前記炉殻の内面側に設けられ且つガス透過性を有するセラミック製の断熱材と、
前記断熱材で囲まれる空間であり且つ腐食性ガスを発生させる処理室と、
前記断熱材に配設され且つ噴出孔を有するノズルと、を備える熱処理装置において、
前記断熱材を透過して前記炉殻の内面側に到達した前記腐食性ガスの濃度を下げる希釈ガスを、前記噴出孔を通じて、前記炉殻の内面に沿っておよび/または前記炉殻の内面に向けて噴出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、炉殻の内面側に滞留する腐食性ガスが、噴出孔から炉殻の内面に沿っておよび/または炉殻の内面に向けて噴出される希釈ガスによって希釈されるので、炉殻の内面の温度が腐食性ガスの酸露点よりも低くなる加熱開始後や加熱終了後においても、炉殻の腐食をより効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る炉殻の内面腐食防止機構を模式的に説明する図である。
【
図2】
図1においてII-II線で切断した要部拡大断面図である。
【
図3】第1実施例に係る炉殻の内面腐食防止機構を模式的に説明する図である。
【
図4】第2実施例に係る炉殻の内面腐食防止機構を模式的に説明する図である。
【
図5】第3実施例に係る炉殻の内面腐食防止機構を模式的に説明する図である。
【
図6】第4実施例に係る炉殻の内面腐食防止機構を模式的に説明する図である。
【
図7】
図6においてVII-VII線で切断した広範囲の要部断面図である。
【
図8】第5実施例に係る炉殻の内面腐食防止機構を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、この発明に係る炉殻2の内面腐食防止機構の実施の形態を説明する。
【0011】
〔実施形態〕
図1を参照しながら、一実施形態に係る炉殻2の内面腐食防止機構を説明する。
図1は、一実施形態に係る炉殻2の内面腐食防止機構を模式的に説明する図である。
【0012】
図1に示すように、熱処理装置1は、炉殻2と、断熱材3と、バーナー4と、処理室6と、ノズル10と、を備える。熱処理装置1は、例えば、塗装工場などから大量に出てくる有機性の被処理物(液体やガス)を燃やすことによって二酸化炭素と水とに分解する脱臭装置や燃焼焼却装置である。炉殻2は、金属材料(例えば、炭素鋼、耐熱鋼、ステンレス鋼などの鉄系材料)からなり、「鉄皮」と言われることもある。炉殻2は、金属製であるため実質的にガス透過性を有さず、腐食性ガスを含む有機性の排ガスを炉殻2の内面側に滞留させる。炉殻2は、例えば、円筒形状または直方体形状を有し、熱処理装置1の外周を構成する外周部材である。
【0013】
断熱材3は、炉殻2の内面側に設けられるとともに、ガス透過性を有するセラミック材料からなる。ガス透過性を有するセラミック材料は、例えば、綿状のセラミックファイバー断熱材を押し固めて成形したものである。セラミックファイバー断熱材は、キャスタブル耐火物(不定形断熱材)と比較して、軽量であるとともに断熱性が高いが、ガスが透過しやすいという特性を有する。なお、この発明における断熱材は、腐食性ガスが透過可能である、セラミックファイバー断熱材やキャスタブル耐火物などを含む広い概念を有する。
【0014】
処理室6は、断熱材3の内面側によって囲まれる空間である。処理室6の側壁には、バーナー4が取り付けられる。バーナー4から噴射される火炎は、処理室6の内部を加熱する一方で、高温の排ガスを発生させる。処理室6には、有機性の被処理物(液体やガス)が供給される。例えば、
図1では、腐食成分を含む有機性の廃液をスプレーガン5で噴霧して供給している。有機性の被処理物は、処理室6において燃焼されて、排ガスとなる。有機性の被処理物によっては、排ガスが腐食性ガスを含む場合がある。排ガスは、二酸化炭素ガスと水蒸気であり、腐食性ガスは、塩素、弗素などを含むハロゲン化合物(例えば塩化水素)のガスや硫黄化合物(例えば酸化硫黄)のガスである。
【0015】
断熱材3の外面側に位置するとともに炉殻2に対面するように、複数のノズル10が配設される。ノズル10は、炉殻2の長さ方向に延在する。ノズル10は、希釈ガス40を噴出する複数の噴出孔12(
図3に図示)を有する。複数の噴出孔12は、ノズル10の長さ方向に沿って配設される。ノズル10の流路11(
図3に図示)では、希釈ガス40が流れる。希釈ガス40は、腐食性ガスの濃度を下げるガスであり、例えば、エアや窒素ガスである。
【0016】
上述したように、熱処理装置1で被処理物を焼却処理するときに発生する排ガスが、塩化水素や酸化硫黄などの腐食性ガスを含む場合がある。腐食性ガスを含む排ガスが、炉殻2の内面近傍での断熱材3の中を透過・拡散して炉殻2の内面側に到達する。この場合、炉殻2の温度が、腐食性ガスの露点温度よりも低い場合、炉殻2の内面側に到達した腐食性ガスが、炉殻2の内面側で凝縮して腐食性物質を形成することによって、露点腐食を引き起こす。
【0017】
露点腐食を防止するための炉殻2の内面腐食防止機構の各種の実施例について、以下に説明する。
【0018】
図2は、
図1においてII-II線で切断した要部拡大断面図である。
図3は、第1実施例に係る炉殻2の内面腐食防止機構を模式的に説明する図である。
【0019】
図2および
図3において、ノズル10は、断熱材3の外面側に形成される切り欠き9に収容されるように配設される。切り欠き9は、断面が逆U字形状を有するとともに、炉殻2の長さ方向に延在する。
【0020】
ノズル10は、希釈ガス40が流れる流路11と、複数の噴出孔12とを有する。流路11は、炉殻2の長さ方向に延在する。噴出孔12は、流路11に連通するとともに、炉殻2の長さ方向に離間配置される。
図3に示すように、例えば、ノズル10の長さ方向に直交する或る断面において、一側の噴出孔12aおよび他側の噴出孔12bという2つの噴出孔12,12が並んで配設される。2つの噴出孔12,12は、炉殻2の内面に沿って希釈ガス40を噴射するように配設される。言い換えると、一側の噴出孔12aおよび他側の噴出孔12bからなる2つの噴出孔12,12は、例えばおおよそ180度の角度をなすように(炉殻2の内面と略平行であるように)配設される。噴出孔12から噴射された希釈ガス40は、拡散希釈ガス41として、炉殻2の内面近傍での断熱材3の中を透過・拡散する。希釈ガス40は、例えば、炉殻2の内面の温度が腐食性ガスの酸露点よりも低くなる加熱開始後や加熱終了後に流される。これにより、ガス透過性を有する断熱材3を透過することによって炉殻2の内面近傍に滞留する腐食性ガスが、噴出孔12から噴出して炉殻2の内面に沿って流れる希釈ガス40の透過・拡散によって希釈されるので、露点腐食の起こりやすい加熱開始後や加熱終了後における炉殻2の腐食をより効果的に防止できる。
【0021】
したがって、炉殻2の内面近傍に滞留する腐食性ガスが、噴出孔12から噴出して炉殻2の内面に沿って流れる希釈ガス40によって希釈されるので、炉殻2の内面の温度が腐食性ガスの酸露点よりも低くなる加熱開始後や加熱終了後においても、炉殻2の腐食をより効果的に防止できる。
【0022】
図4を参照しながら、第2実施例を説明する。
図4は、第2実施例に係る炉殻2の内面腐食防止機構を模式的に説明する図である。上記第1実施例との相違点を中心に説明する。
【0023】
図4に示すように、例えば、ノズル10の長さ方向に直交する或る断面において、一側の噴出孔12aおよび他側の噴出孔12bという2つの噴出孔12,12が並んで配設される。2つの噴出孔12,12は、炉殻2の内面に向けて希釈ガス40を噴射するように、配設される。言い換えると、一側の噴出孔12aおよび他側の噴出孔12bからなる2つの噴出孔12,12は、鋭角、直角または鈍角をなすように配設される。一側の噴出孔12aおよび他側の噴出孔12bからなる2つの噴出孔12,12は、炉殻2の内面に向けて、例えば30度から150度をなすように配設される。噴射された希釈ガス40は、拡散希釈ガス41として、炉殻2の内面近傍での断熱材3の中を透過・拡散する。
【0024】
したがって、炉殻2の内面近傍に滞留する腐食性ガスが、噴出孔12から炉殻2の内面に向けて噴出される希釈ガス40によって希釈されるので、炉殻2の内面の温度が腐食性ガスの酸露点よりも低くなる加熱開始後や加熱終了後においても、炉殻2の腐食をより効果的に防止できる。
【0025】
図5を参照しながら、第3実施例を説明する。
図5は、第3実施例に係る炉殻2の内面腐食防止機構を模式的に説明する図である。上記第1実施例との相違点を中心に説明する。
【0026】
図5に示すように、例えば、ノズル10の長さ方向に直交する或る断面において、噴出孔12として働く1つの対向する噴出孔12cが、炉殻2の内面から少し離間して配設される。対向する噴出孔12cは、炉殻2の内面に向けて希釈ガス40を噴射するように、配設される。言い換えると、対向する噴出孔12cは、炉殻2の内面に対して対向するように配設される。炉殻2の内面に向けて噴射された希釈ガス40は、炉殻2の内面に沿うとともに断熱材3の中を拡散希釈ガス41として透過・拡散する。
【0027】
したがって、炉殻2の内面近傍に滞留する腐食性ガスが、噴出孔12から炉殻2の内面に向けて噴出される希釈ガス40によって希釈されるので、炉殻2の内面の温度が腐食性ガスの酸露点よりも低くなる加熱開始後や加熱終了後においても、炉殻2の腐食をより効果的に防止できる。
【0028】
図6および
図7を参照しながら、第4実施例を説明する。
図6は、第4実施例に係る炉殻2の内面腐食防止機構を模式的に説明する図である。
図7は、
図6においてVII-VII線で切断した広範囲の要部断面図である。上記第1実施例との相違点を中心に説明する。
【0029】
図6および
図7に示すように、溝15は、断熱材3の外面側に配設される。溝15は、炉殻2の厚み方向と交わる交差方向(例えば直交方向)であり且つノズル10の延在方向と交わる交差方向(例えば直交方向)に延在する。溝15は、各噴出孔12に対応する位置に配設され、噴出孔12から噴出される希釈ガス40が遠方まで流れて供給されるようにガイドする。
【0030】
図7に示すように、例えば、ノズル10の長さ方向に直交する或る断面において、一側の噴出孔12aおよび他側の噴出孔12bという2つの噴出孔12,12が並んで配設される。2つの噴出孔12,12は、炉殻2に形成される溝15に沿って希釈ガス40を噴射するように、配設される。言い換えると、一側の噴出孔12aおよび他側の噴出孔12bからなる2つの噴出孔12,12は、例えばおおよそ180度の角度をなすように(炉殻2の内面と略平行であるように)配設される。これにより、加熱開始後や加熱終了後において炉殻2の腐食を防止できることに加えて、噴出孔12から噴出される希釈ガス40が、溝15に沿って遠方まで供給されるので、炉殻2の腐食を広範囲にわたって防止できる。
【0031】
図8を参照しながら、第5実施例を説明する。
図8は、第5実施例に係る炉殻2の内面腐食防止機構を模式的に説明する図である。上記第1実施例との相違点を中心に説明する。
【0032】
図8に示すように、ノズル10が、炉殻2に対して炉殻2の長さ方向に着脱自在に構成される。炉殻2の側部には、ノズル支持フランジ30が配設される。それとともに、炉殻2の内部には、複数の支持部材20が立設される。支持部材20におけるノズル支持フランジ30の側には、ガイド部21が配設される。ガイド部21は、ノズル支持フランジ30の側に向けて拡径する漏斗形状を有しており、支持部材20に対するノズル10の挿通をガイドする。これにより、ノズル10を迅速に且つ安定的に位置決めして取り付けすることができる。
【0033】
ノズル10は、ノズル支持フランジ30を通じて断熱材3の中に挿入される。断熱材3の中に挿入されたノズル10は、ノズル10に設けられる取付フランジ14を介して、例えばボルト止めでノズル支持フランジ30に固定される。ボルトを緩めてノズル10を引き出すことによって、ノズル10を炉殻2から取り出すことができる。すなわち、ノズル10が、炉殻2に対して炉殻2の長さ方向に着脱自在に構成されている。これにより、目詰まりなどで不具合になった噴出孔12の補修が容易になる。
【0034】
この発明の具体的な実施の形態や数値について説明したが、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0035】
噴出孔12から噴出される希釈ガス40の流れをガイドする溝15は、炉殻2の内面側にも配設される態様とすることもできる。そして、当該溝15は、断熱材3の外面側および炉殻2の内面側の両方に配設される態様にすることもできる。
【0036】
一側の噴出孔12aおよび他側の噴出孔12bという2つの噴出孔12,12は、ノズル10の長さ方向において千鳥状に互い違いに配設される態様にすることもできる。
【0037】
処理室6の熱を利用する熱交換器(図示しない)によって希釈ガス40を腐食性ガスの酸露点以上に加熱して、加熱された希釈ガス40を噴出孔12から噴出する態様にすることもできる。
【0038】
この発明および実施形態をまとめると、次のようになる。
【0039】
この発明の一態様に係る炉殻2の内面腐食防止機構は、
金属製の炉殻2と、
前記炉殻2の内面側に設けられ且つガス透過性を有するセラミック製の断熱材3と、
前記断熱材3で囲まれる空間であり且つ腐食性ガスを発生させる処理室6と、
前記断熱材3に配設され且つ噴出孔12を有するノズル10と、を備える熱処理装置1において、
前記断熱材3を透過して前記炉殻2の内面側に到達した前記腐食性ガスの濃度を下げる希釈ガス40を、前記噴出孔12を通じて、前記炉殻2の内面に沿っておよび/または前記炉殻2の内面に向けて噴出することを特徴とする。
【0040】
上記構成によれば、炉殻2の内面近傍に滞留する腐食性ガスが、噴出孔12から炉殻2の内面に沿っておよび/または炉殻2の内面に向けて噴出される希釈ガス40によって希釈されるので、炉殻2の内面の温度が腐食性ガスの酸露点よりも低くなる加熱開始後や加熱終了後においても、炉殻2の腐食をより効果的に防止できる。
【0041】
また、一実施形態の炉殻2の内面腐食防止機構では、
前記噴出孔12から噴出される前記希釈ガス40の流れをガイドする溝15が、前記断熱材3の外面側および/または前記炉殻2の内面側に配設されて、
前記溝15が、前記炉殻2の厚み方向と交わる交差方向に延在する。
【0042】
上記実施形態によれば、加熱開始後や加熱終了後において炉殻2の腐食を効果的に防止できることに加えて、噴出孔12から噴出される希釈ガス40が、溝15に沿って遠方まで供給されるので、炉殻2の腐食を広範囲にわたって防止できる。
【0043】
また、一実施形態の炉殻2の内面腐食防止機構では、
前記希釈ガス40が、前記処理室6の加熱開始後および加熱終了後において噴出される。
【0044】
上記実施形態によれば、腐食性ガスが、噴出孔12から噴出される希釈ガス40によって希釈されるので、露点腐食の起こりやすい加熱開始後や加熱終了後における炉殻2の腐食をより効果的に防止できる。
【0045】
また、一実施形態の炉殻2の内面腐食防止機構では、
前記ノズル10が、前記炉殻2に対して前記炉殻2の長さ方向に着脱自在に構成される。
【0046】
上記実施形態によれば、目詰まりなどで不具合になった噴出孔12の補修が容易になる。
【0047】
また、一実施形態の炉殻2の内面腐食防止機構では、
前記ノズル10をガイドし且つ支持する支持部材20を前記炉殻2の内部においてさらに備える。
【0048】
上記実施形態によれば、ノズル10を迅速に且つ安定的に位置決めして取り付けすることができる。
【符号の説明】
【0049】
1…熱処理装置
2…炉殻
3…断熱材
4…バーナー
5…スプレーガン
6…処理室
9…切り欠き
10…ノズル
11…流路
12…噴出孔
12a…一側の噴出孔
12b…他側の噴出孔
12c…対向する噴出孔
14…取付フランジ
15…溝
20…支持部材
21…ガイド部
30…ノズル支持フランジ
40…希釈ガス
41…拡散希釈ガス