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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069296
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/00 20060101AFI20230511BHJP
   C09J 123/16 20060101ALI20230511BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20230511BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C09J153/00
C09J123/16
C09J7/30
C09J153/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181068
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村田 順平
(72)【発明者】
【氏名】河村 芳範
(72)【発明者】
【氏名】松島 歩海
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AA06
4J004AA07
4J004BA02
4J004FA05
4J040DA121
4J040DM001
4J040DM01
4J040DM011
4J040EF282
4J040GA07
4J040HB41
4J040JA09
4J040KA16
4J040KA23
4J040LA09
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】
低誘電特性およびLCPとの接着性に優れる、接着剤組成物の提供。
【解決手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)酸変性スチレン系エラストマー、(B)1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物及び(C)エチレン-プロピレン-ジエン共重合体を特定の割合で含有する接着剤組成物が、低誘電特性に優れ、且つ低極性の基材、特にLCPとの接着性にも優れ、上記課題が解決可能であることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸変性スチレン系エラストマー、(B)1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物、及び(C)エチレン-プロピレン-ジエン共重合体を含有し、
(A)酸変性スチレン系エラストマー中の全酸性基と(B)1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物中の全イソシアネート基のモル比(全イソシアネート基/全酸性基)が、0.3~3.0であり、
(C)の含有量が、(A)100重量部に対し5~80重量部である、
接着剤組成物。
【請求項2】
上記(A)が、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレンプロピレンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のスチレン系エラストマーを不飽和カルボン酸で変性したものである請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
上記(B)が、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物である、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
上記(C)が、ジエンがジシクロペンタジエン及び/又はエチリデンノルボルネンであるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
更に、(D)架橋剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
更に、(E)有機溶媒を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の接着剤組成物を用いてなる接着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)及び接着性に優れ、電子部品、特にフレキシブルプリント配線板(以下、FPC)の関連部材の製造に適した接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやモバイルパソコンなど無線通信技術の進展に伴って大容量の情報を高速で処理することが要求され、伝送信号の高周波化が進展している。高周波化に伴い、無線通信デバイスの構成要素の1つであるFPC及びその関連部材にも高周波帯域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)が求められている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような低誘電特性に優れるFPC関連部材として、例えば、酸変性スチレン系エラストマー及びポリイソシアネート成分を含む接着剤組成物からなる接着剤層と樹脂フィルムとが積層された積層体が、低誘電特性に優れることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/017473号パンフレット
【特許文献2】特開2017-163131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記積層体における樹脂フィルムの素材として用いられているLCPは、低誘電特性に優れている反面、極性が低く、難接着材料であることから、特許文献2に具体的に記載された接着剤組成物では、充分な接着力が得られず、カバーレイフィルム及び積層板等のFPC関連部材の作製が困難である場合があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み為されたものであって、低誘電特性およびLCPとの接着性に優れる、接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)酸変性スチレン系エラストマー、(B)1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物及び(C)エチレン-プロピレン-ジエン共重合体を特定の割合で含有する接着剤組成物によれば、上記課題が解決可能であることを見出した。具体的には、本発明は以下の発明を含む。
【0008】
〔1〕
(A)酸変性スチレン系エラストマー、(B)1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物、及び(C)エチレン-プロピレン-ジエン共重合体を含有し、
(A)酸変性スチレン系エラストマー中の全酸性基と(B)1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物中の全イソシアネート基のモル比(全イソシアネート基/全酸性基)が、0.3~3.0であり、
(C)の含有量が、(A)100重量部に対し5~80重量部である、接着剤組成物。
【0009】
〔2〕
上記(A)が、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレンプロピレンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のスチレン系エラストマーを不飽和カルボン酸で変性したものである請求項1に記載の接着剤組成物。
【0010】
〔3〕
上記(B)が、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物である、〔1〕又は〔2〕に記載の接着剤組成物。
【0011】
〔4〕
上記(C)が、ジエンがジシクロペンタジエン及び/又はエチリデンノルボルネンであるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体である、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【0012】
〔5〕
更に、(D)架橋剤を含む、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【0013】
〔6〕
更に、(E)有機溶媒を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【0014】
〔7〕
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の接着剤組成物を用いてなる接着フィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明の接着剤組成物は、低誘電特性に優れ、且つ低極性の基材、特にLCPとの接着性に優れる。そのため、本発明の接着剤組成物はFPC関連部材、例えば、接着剤層付き積層体(カバーレイフィルム、ボンディングシート)、樹脂付き銅箔、フレキシブル銅張積層板、及びフレキシブルフラットケーブル等の用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に記載する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0017】
<本発明の接着剤組成物>
本発明の接着剤組成物は、(A)酸変性スチレン系エラストマー、(B)1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物、(C)エチレン-プロピレン-ジエン共重合体を特定の割合で含有する。以下、上記(A)~(C)成分について、具体的に説明する。
【0018】
[(A)酸変性スチレン系エラストマー]
本発明における酸変性スチレン系エラストマーとは、スチレン系エラストマーを不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種により変性したエラストマーである。スチレン系エラストマーを変性する方法としては、例えば、スチレン系エラストマーと不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種とをグラフト化反応させる方法等が挙げられる。
【0019】
スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレンプロピレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)等が挙げられる。これらスチレン系エラストマーの中でも、接着性と低誘電特性の観点から、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)及びスチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合(SEPS)体が好ましい。
【0020】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸等が挙げられる。これら不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物の中でも、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種による変性量は、通常、酸変性スチレン系エラストマー全体の0.1~10重量%程度である。また、酸変性スチレン系エラストマーは、該酸変性エラストマー中の全酸性基の少なくとも一部が酸無水物であることが好ましい。
【0021】
酸変性スチレン系エラストマーの酸価としては、例えば、0.1mgCHONa/g以上、好ましくは0.5mgCHONa/g以上、より好ましくは1.0mgCHONa/g以上であり、また、例えば、20mgCHONa/g以下、好ましくは18mgCHONa/g以下、より好ましくは15mgCHONa/g以下である。
【0022】
酸変性スチレン系エラストマーの分子量としては、例えば、重量平均分子量で1万以上、好ましくは3万以上、より好ましくは5万以上であり、また、例えば、50万以下、好ましくは30万以下、より好ましくは20万以下である。なお、本発明における重量平均分子量とは、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の分子量である。
【0023】
酸変性スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、旭化成社製のタフテックMシリーズや、クレイトンポリマージャパン社製のクレイトンFGシリーズ等が挙げられる。
【0024】
本発明において、上記した酸変性スチレン系エラストマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
[(B)1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物]
本発明における1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物と称する場合がある)としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及びこれらの誘導体等が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン等の芳香族トリイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族トリイソシアネート等が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香脂肪族トリイソシアネート等が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート[別名:イソホロンジイソシアネート]、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
ポリイソシアネート化合物の誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート誘導体)等)、アロファネート誘導体、ビウレット誘導体、ウレトジオン誘導体、ジイソシアネート化合物と低分子量のポリオール又はポリアミンとを末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0027】
また、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の少なくとも一部がブロック剤によりブロックされているブロックイソシアネートを用いてもよい。具体例としては、イソシアネート化合物のイソシアネート基を、ε-カプロラクタム、MEK(メチルエチルケトン)オキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックしたもの等が挙げられる。
【0028】
これらポリイソシアネート化合物の中でも、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート及びこれらの誘導体が好ましく、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの3量体がより好ましく、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、及びヘキサメチレンジイソシアネートの3量体が特に好ましい。
【0029】
ポリイソシアネート化合物の市販品としては、バクセンデン社製のTrixeneBI7982、TrixeneBI7951、TrixeneBI7961、TrixeneBI7991、三井化学社製のタケネートB-820NP、エボニック社製のVESTAGONB1530、VESTAGONBF1540等が挙げられる。本発明において、上記したポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明の接着剤組成物における(B)1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物の含有量は、(A)酸変性スチレン系エラストマー中の全酸性基と、(B)1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物中の全イソシアネート基のモル比(全イソシアネート基/全酸性基)が、通常0.3~3.0、好ましくは0.5~2.5、より好ましくは0.5~2.0となる量である。なお、酸変性スチレン系エラストマー中の全酸性基量(mol)は、酸変性スチレン系エラストマーの酸価(mgCHONa/g)をCHONa(ナトリウムメトキシド)の分子量で除した後、さらに10で除して酸変性スチレン系エラストマー1g当りの全酸性基量(mol/g)を算出し、これに接着剤組成物中の酸変性スチレン系エラストマーの量(g)を乗算することで求めることができ、また、イソシアネート化合物中の全イソシアネート基数は、接着剤組成物中のイソシアネート化合物の量(g)を定法により求めたイソシアネート当量(g/mol)で除算することにより求めることができる。
【0031】
[(C)エチレン-プロピレン-ジエン共重合体]
エチレン-プロピレン-ジエン共重合体は、一般に、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)とも呼ばれる。本発明におけるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体としては、例えば、ジエンがジシクロペンタジエン(DCP)、エチリデンノルボルネン(ENB)及び1,4-ヘキサジエン(HD)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体等が挙げられる。これらエチレン-プロピレン-ジエン共重合体の中でも、ジエンがジシクロペンタジエン及び/又はエチリデンノルボルネンであるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体が好ましい。また、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体は、室温(25℃)で液状であることが好ましい。
【0032】
エチレン-プロピレン-ジエン共重合体の市販品としては、例えば、GSICreos社製のTRILENE65、TRILENE66、TRILENE77、三井化学製品EPT等が挙げられる。
【0033】
本発明の接着剤組成物に含まれるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体の量は、(A)酸変性スチレン系エラストマー100重量部に対して、通常5~80重量部、好ましくは10~60重量部である。本発明において、上記したエチレン-プロピレン-ジエン共重合体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
[(D)架橋剤]
本発明の接着剤組成物は、さらに架橋剤を含んでいることが好ましい。架橋剤としては、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体の架橋に一般的に用いられるものが使用でき、例えば、有機過酸化物、硫黄、キノイド、ビスマレイミド、フェノール樹脂が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン、tert-ブチルクミルパーオキサイド、1,3-ジ[(tert-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、1,4-ジ[(tert-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、パーオキシケタール、パーオキシエステル等が挙げられる。
【0035】
パーオキシケタールとしては、例えば、n-ブチル-4,4-ジ(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、2,21-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ジ[4,4-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル]プロパン、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、ジ(3,5,5―トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、1,1-ジ(tert-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0036】
また、パーオキシエステルとしては、例えば、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ヘキシルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシマレイン酸、tert-ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。
【0037】
有機過酸化物の市販品としては、例えば、日油社製のパーブチルP、パーブチルH、パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH等が挙げられる。本発明において、上記した有機過酸化物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
架橋剤を含む場合、その含有量は、例えば、(C)エチレン-プロピレン-ジエン共重合体100重量部に対して、0.5~150重量部、好ましくは2.0~50重量部である。
【0039】
[その他の成分]
本発明の接着剤組成物には、上記(A)~(D)成分の他、(A)酸変性スチレン系エラストマーおよび(C)エチレン-プロピレン-ジエン共重合体以外の他の熱可塑性樹脂、硬化促進剤、粘着付与剤、難燃剤、カップリング剤、酸化防止剤、フィラー及び(E)有機溶媒等を含有することができる。
【0040】
上記他の熱可塑性樹脂としては、例えば、(A)酸変性スチレン系エラストマー以外のスチレン系エラストマー、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、及びポリビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、ルチジン、ピコリン、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン)等のアミン類、リチウムメチラート、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムブトキサイド、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属化合物あるいはチタン、コバルト、スズ、亜鉛、アルミニウムなどの金属、半金属化合物等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記粘着付与剤としては、例えば、クマロン-インデン樹脂、テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、ロジン樹脂、p-t-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂、石油系炭化水素樹脂、水素添加炭化水素樹脂、テレピン系樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記難燃剤としては、例えば、有機系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。有機系難燃剤としては、例えば、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸アミドアンモニウム、リン酸カルバメート、ポリリン酸カルバメート、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタン等のリン系難燃剤、メラミン、メラム、メラミンシアヌレート等のトリアジン系化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール化合物、ジアゾ化合物、尿素等の窒素系難燃剤、シリコーン化合物、シラン化合物等のケイ素系難燃剤等が挙げられる。また、無機系難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化ニッケル等の金属酸化物、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、ホウ酸亜鉛、水和ガラス等が挙げられる。これらの難燃剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
上記カップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトシキシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネ-トプロピルトリエトキシシラン、イミダゾールシラン等のシラン系カップリング剤、チタネ-ト系カップリング剤、アルミネ-ト系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノ-ル、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネ-ト、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ-ト〕メタン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4─ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノ-ル系酸化防止剤、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネ-ト、ジミリスチル-3,3’-ジチオプロピオネ-ト等のイオウ系酸化防止剤、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記フィラーとしては、例えば、フッ素系ポリマー微粒子、オレフィン系ポリマー微粒子、ポリアクリル酸エステル粉末、エポキシ樹脂粉末、ポリアミド粉末、ポリウレタン粉末、ポリシロキサンン粉末等の他、シリコーン、アクリル、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム等を用いた多層構造のコアシェル等の高分子フィラー、シリカ、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ハイドロタルサイト、ウォラストナイト、ゾノトライト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ガラスフレーク、水和ガラス、チタン酸カルシウム、セピオライト、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化ニッケル、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム等の無機フィラー等が挙げられる。これらフィラーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、形状としては、例えば、球状、粉状、繊維状、針状、鱗片状等を用いることができる。
【0047】
上記(E)有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキサイド、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、ベンゼンジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、γ-ブチロラクトン、セロソルブ、ブチルセロソブル、カルビトール、ブチルカルビトール等の有機溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
また、本発明の接着剤組成物は、上記したその他の成分の他、例えば、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤、レベリング剤、消泡剤等のアニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤、染料、顔料、可塑剤等も含有することができる。
【0049】
本発明の接着剤組成物は、(A)酸変性スチレン系エラストマー、(B)1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物、(C)エチレン-プロピレン-ジエン共重合体および必要に応じてその他成分を混合することにより製造することができる。混合方法は特に限定されず、接着剤組成物が均一になればよい。接着剤組成物は、微粒子が分散した溶液の状態(以下、液状の接着剤組成物と称する。)で好ましく用いられることから、通常は(E)有機溶媒も使用される。液状の接着剤組成物とすることにより、FPC関連部材を製造する際に、基材への塗工及び接着剤層の形成をより円滑に行うことができ、所望の厚さの接着剤層をより容易に得ることができる。
【0050】
液状の接着剤組成物とする場合、接着剤層の形成を含む作業性等の観点から、固形分濃度は、例えば、3~80重量%、好ましくは10~50重量%である。
【0051】
[接着剤組成物の特性]
本発明の接着剤組成物を硬化させてなる硬化物は、低誘電特性に優れる。硬化後の接着剤組成物の誘電率は、通常2.40未満、好ましくは2.30未満である。また、誘電正接は、通常0.002未満、好ましくは0.001未満である。
【0052】
なお、これら本発明の接着剤組成物の特性は、後述する実施例の項に記載された方法にて測定されるものである。
【0053】
[用途]
本発明における接着剤組成物は、低誘電特性に優れ、且つ低極性の基材、特にLCPとの接着性に優れることから、FPC関連部材を製造するための接着剤(例えば、接着フィルム等)として好適に用いることができる。本発明におけるFPCの関連部材としては、例えば、カバーレイフィルム、ボンディングシート、樹脂付き銅箔、フレキシブル銅張積層板、フレキシブルフラットケーブル等が挙げられる。
【実施例0054】
以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、以下実施例等において、接着剤層がBステージ状であるとは、接着剤組成物の一部が硬化し始めた半硬化状態をいい、加熱等により接着剤組成物の硬化が更に進行する状態である。
【0055】
(実施例1~9)
撹拌装置付き1000mlフラスコに、各成分を表1に示す割合(重量部)で添加し、25℃で6時間撹拌して混合させることにより接着剤組成物を調製した。得られた接着剤組成物を用いて、以下の方法で各物性の測定および評価を行った。得られた結果を表1に示す。モル比は(全イソシアネート基/全酸性基)より算出した。
【0056】
(比較例1~4)
撹拌装置付き1000mlフラスコに、各成分を表2に示す割合(重量部)で添加し、25℃で6時間撹拌して混合させることにより接着剤組成物を調製した。得られた接着剤組成物を用いて、以下の方法で各物性の測定および評価を行った。得られた結果を表2に示す。モル比は(全イソシアネート基/全酸性基)より算出した。
【0057】
(1)誘電率、誘電正接
離型処理をしたガラス板を用意し、その一方の表面に、表1及び2に記載の接着剤組成物を、乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、100℃で10分間乾燥させてBステージ状の接着剤層(厚さ100μm)を形成し、次に、この接着剤層をオーブン内に静置して、160℃で60分間加熱硬化処理をして、試験片を作製した。作製した試験片について、エー・イー・ティー社製の誘電率測定装置を用い、空洞共振器法により、測定温度25℃、測定周波数10GHzにおける誘電率(Dk)および誘電正接(Df)を測定した。
【0058】
(2)剥離接着強度(90°ピール強度)
厚さ50μmのLCPフィルム[クラレ社製「ベクスターCTQ-50」]を用意し、その一方の表面に、表1及び2に記載の接着剤組成物を塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置し、100℃で5分間乾燥させてBステージ状の接着剤層(厚さ約15μm)を形成し、カバーレイフィルムを得た。その後、上記と同じLCPフィルムを積層し、2枚のLCPフィルムが接着剤組成物を介して貼り合わされた積層体を得た。上記の積層体を温度160℃、及び圧力4.5MPaの条件で60分間加熱圧着させたのち、幅10mm×長さ100mmにカットし、LCPフィルムに対するピール強度測定用サンプルを作製した。作製した測定用サンプルについて、島津製作所社製オートグラフAGS-500を用いて、テストスピード:50mm/minの条件で、90°方向(積層板の面方向に直交する方向)における剥離接着強度(90°ピール強度、N/mm)を測定した。なお、表1及び2には、比較例1の接着強度を100%とした場合の各実施例・比較例の接着強度の比率([各実施例・比較例の剥離接着強度(N/mm)]/[比較例1の剥離接着強度(N/mm)]×100で求められる比率、%)を示した。
【0059】
なお、表1及び2中の各成分は以下のとおりである。
[(A):酸変性スチレン系エラストマー]
(A-1):タフテックM1913(旭化成ケミカルズ社製、無水マレイン酸変性スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体、酸価:10mgCHONa/g、重量平均分子量:15万)
(A-2):タフテックM1911(旭化成ケミカルズ社製、無水マレイン酸変性スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体、酸価:2mgCHONa/g、重量平均分子量:15万)
【0060】
[(B):1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物]
(B-1):TrixeneBI7982(バクセンデン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体のブロック化体、固形分濃度:70重量%、イソシアネート当量(イソシアネート基1つ当りの分子量):410g/mol)
【0061】
[(C):エチレン-プロピレン-ジエン共重合体]
(C-1):Trilene65(LionElastomers社製、液状EPDM、ジエン:ジシクロペンタジエン)
(C-2):Trilene67(LionElastomers社製、液状EPDM、ジエン:エチリデンノルボルネン)
(C-3):Trilene77(LionElastomers社製、固体EPDM、ジエン:エチリデンノルボルネン)
【0062】
[(D)架橋剤]
(D-1):パーブチルP(日油社製)
【0063】
[(E):有機溶媒]
(E-1):トルエン
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】