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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000693
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20221222BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/20 E
G01T1/20 F
A61B6/00 300Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101665
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩太
(72)【発明者】
【氏名】會田 博之
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188BB02
2G188CC17
2G188CC19
2G188CC22
2G188DD12
2G188DD44
2G188DD47
4C093CA31
4C093CA41
4C093EB12
4C093EB16
4C093EB20
(57)【要約】
【課題】本実施形態の目的は、放射線検出器を提供することにある。
【解決手段】本実施形態の放射線検出器は、放射線検出モジュールと、放射線検出モジュールの支持部材とを備え、放射線検出モジュールは、受けた放射線を蛍光に変換するシンチレータ層と、基板の一面に形成されて蛍光を電気信号に変換する複数の光電変換部から構成されたアレイ基板とを備えている。放射線検出モジュールは可撓性を有し、光電変換部は基板の一面において基板の外縁部よりも内周側に配置してあり、支持部材のみが基板の他面に取り付けてあると共に支持部材は基板の外縁部のみに取り付けてある。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線検出モジュールと、放射線検出モジュールの支持部材とを備え、
前記放射線検出モジュールは、受けた放射線を蛍光に変換するシンチレータ層と、基板の一面に形成されて前記蛍光を電気信号に変換する複数の光電変換部から構成されたアレイ基板とを備え、
前記放射線検出モジュールは可撓性を有し、
前記光電変換部は前記基板の前記一面において前記基板の外縁部よりも内周側に配置してあり、
前記支持部材のみが前記基板の他面に取り付けてあると共に前記支持部材は前記基板の外縁部のみに取り付けてある放射線検出器。
【請求項2】
前記放射線検出モジュールは、前記シンチレータ層を覆う防湿体を備え、
前記支持部材と前記基板が接触している領域は、前記基板と前記防湿体が接触している領域の少なくとも一部に対向する位置にある請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記基板には、前記支持部材により前記支持部材間に引張応力が付与されている請求項1又は2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記支持部材および前記放射線検出モジュールを収納する筐体を備え、
前記基板の熱膨張率が前記筐体の熱膨張率と同程度である請求項1~3のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記支持部材及び前記放射線検出モジュールを収納する筐体を備え、
前記基板の熱膨張率が前記筐体の熱膨張率より小さいことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器は、放射線を可視光(蛍光)に変換するシンチレータ層と、その光を電気信号に変換する複数の光電変換部を基板に有するアレイ基板とを備えるものがある。係る放射線検出器は、人体等を透過した放射線を2次元的な画像情報として検出し、その画像情報を電気信号として外部に出力するものである。
【0003】
アレイ基板を用いる場合、可撓性を有するものを用いることにより、放射線検出器の軽量化や、基板自体の耐衝撃性を高めることができる。
【0004】
しかし、可撓性のアレイ基板を用いる場合、アレイ基板にたわみが生じることがあり、アレイ基板にたわみが生じると、画像のゆがみによる画質劣化が生じる。
また、アレイ基板のたわみに合わせてシンチレータ層が変形すると、シンチレータ層の劣化により画質劣化が生じる。
これに対して、補強部材及び支持部材を備えることにより、アレイ基板のたわみを抑制する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-73921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アレイ基板の光電変換部に相当する領域上に補強部材が固定されていると、補強部材による放射線の散乱または吸収が画像上に現れ、画質が劣化するという問題があった。
【0007】
本実施形態の目的は、画質の劣化を防止できる放射線検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態は、放射線検出モジュールと、放射線検出モジュールの支持部材とを備え、前記放射線検出モジュールは、受けた放射線を蛍光に変換するシンチレータ層と、基板の一面に形成されて前記蛍光を電気信号に変換する複数の光電変換部から構成されたアレイ基板とを備え、前記放射線検出モジュールは可撓性を有し、前記光電変換部は前記基板の前記一面において前記基板の外縁部よりも内周側に配置してあり、前記支持部材のみが前記基板の他面に取り付けてあると共に前記支持部材は前記基板の外縁部のみに取り付けてある放射線検出器である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る放射線検出器の概略的構成を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)は支持部材側から見た平面図であり、筐体を除いて示す概略構成図である。
図2図2は、第2実施形態に係る放射線検出器の概略的構成を示す縦断面図である。
図3図3は、図2に示すシンチレータ層の端部を拡大して示す図である。
図4図4は、第3実施形態に係る放射線検出器の概略的構成を示す縦断面図である。
図5図5は、第3実施形態に係る放射線検出器の概略的構成を示す横断面図であり、図4に示す放射線検出器のコーナー部を拡大して示す図である。
図6図6は、アレイ基板とシンチレータ層との関係を模式的に示す縦断面図であり、(a)はアレイ基板に引張応力が作用している場合であり、(b)はアレイ基板に引張応力が作用していない場合である。
図7図7は、第4実施形態に係る放射線検出器の組み立て方法を示す概略的に示す縦断面図であって、(a)は組み立て前の状態であり、(b)は組み立て後の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
本実施形態においては、放射線検出器の一例として、X線検出器について説明する。なお、本実施形態にて開示する主要な構成要素は、X線の他にもγ線などの各種放射線を検出するための放射線検出器にも適用可能である。ここでは、一例として、放射線の中の代表的なものとしてX線に係る場合を例にとり説明をする。したがって、以下の実施形態の「X線」を「他の放射線」に置き換えることにより、他の放射線にも適用させることができる。
【0012】
放射線検出器1は、例えば、一般医療などに用いることができる。ただし、放射線検出器1の用途は、一般医療に限定されるわけではない。
【0013】
図1(a)は、本実施形態に係る放射線検出器1を示す縦断面図である。
放射線検出器1は、放射線検出モジュール3と、放射線検出モジュール3の支持部材5と、放射線検出モジュール3及び支持部材5を収納した筐体7とを備えている。
【0014】
放射線検出モジュール3は、アレイ基板9と、アレイ基板9においてX線入射側面に設けたシンチレータ層11とを備えている。この放射線検出モジュール3は本実施の形態では、可撓性を有している。
シンチレータ層11は、受けた放射線を蛍光に変換するものであり、アレイ基板9は、基板15の一面(X線入射側面)に形成されて蛍光を光電変換部13により電気信号に変換するものである。
【0015】
シンチレータ層11は、アレイ基板9の外縁部(後述する)よりも内周側で、アレイ基板9上に直接形成されている。シンチレータ層11は、アレイ基板9においてX線の入射側に配置しており、アレイ基板9の光電変換部13(後述する)を覆って配置されている。シンチレータ層11は、例えば、アレイ基板9上にシンチレータ材を蒸着させることにより形成されている。シンチレータ材としては、例えばヨウ化セシウム(CsI)を主成分とする材料を用いることができる。
【0016】
アレイ基板9は、基板15と、光電変換部13とを備えている。
基板15は、可撓性を有し、樹脂基板などのフレキシブル絶縁基板をベースとして形成されている。樹脂基板は、例えば、ポリイミドである。基板15は、平面視四角形状を成している。
また、基板15の熱膨張率は、例えば、3ppm/℃である。
基板15は、光電変換部13及びシンチレータ層11よりも外周側に位置する外周縁部15aを有している。外周縁部15aは、平面視四角形状の基板15に対して、その周辺に沿う四角枠状を成している。
【0017】
光電変換部13は、基板15上に2次元的に形成された複数の光検出部と、光検出部の行方向及び列方向に沿って形成されたシグナルラインとを備えている。光検出部は、スイッチング素子と、光電変換素子としてのフォトセンサと、を備えている。スイッチング素子は、例えば薄膜トランジスタによって構成されている。フォトセンサは、例えばフォトダイオードによって構成されている。スイッチング素子及びフォトセンサは、例えばa-Si(アモルファスシリコン)を基材として形成されている。
尚、光電変換部13の外周縁13e(図1(a)参照)は、シンチレータ層11の外周縁11e(図1(a)参照)よりも内周側に位置しており、シンチレータ層11の外周縁11eは、光電変換部13の外周縁13eと基板15の外周縁部15a(図1(a)参照)との間に位置している。
【0018】
尚、第1実施形態に係る放射線検出器1において、放射線検出モジュール3には、反射層や防湿体を設けてもよい。
反射層は、シンチレータ層11のアレイ基板9と反対側に設けて、シンチレータ層11で発生した蛍光の利用効率を高めるために設けられる。
防湿体は、シンチレータ層11において、アレイ基板9側と反対側でシンチレータ層11を覆うように設けて、シンチレータ層11の吸湿による特性劣化を抑制するために設けられる。
【0019】
筐体7は、放射線検出モジュール3と支持部材5を収容している。筐体7は、側壁30と、X線の入射窓31と、底壁32とを備えている。入射窓31と、底壁32は、平面視四角形状を成す板状に形成されており、側壁30は、入射窓31と底壁32との間に設けて、放射線検出モジュール3及び支持部材5を囲んでいる。
【0020】
筐体7は、例えば、アルミニウム合金、炭素繊維強化プラスチックなどを用いて形成されている。この第1実施形態では、筐体7は、基板15と略同程度の熱膨張率を有している。
尚、入射窓31は、X線を透過する材料(あるいは、X線吸収率の低い材料)によって形成されていることが好ましい。
【0021】
筐体7の内側又は筐体7の外側には、アレイ基板9にフレキシブル配線基板(図示せず)を介して接続された駆動回路基板(図示せず)が設けられており、アレイ基板9の出力信号は、駆動回路基板に出力されるようになっている。
【0022】
図1(b)に示すように、支持部材5は、平面視長方形の外形に沿う枠状であり、筐体7の内部において底壁32に固定されている。
支持部材5は、筐体7の底壁32に固定される底壁側固定面5aと、底壁側固定面5aと反対側の面はアレイ基板9に固定されるアレイ基板側固定面5bとを備えている。
アレイ基板側固定面5bは、アレイ基板9において、シンチレータ層11の形成されていない側の面(他面)と固定されている。
支持部材5は四角形の枠状であるため、支持部材5とアレイ基板9が固定されている領域は、放射線検出モジュール3の光電変換部13及びシンチレータ層11の形成されている四角形の領域よりも外周側(外側)に位置する。
【0023】
支持部材5は、基板15に引張応力を付与した状態で筐体7の底壁32に固定されている。引張応力は、少なくとも可撓性の基板15が撓まないで平面状に張った状態で、支持部材5に固定されていれば良い。
支持部材のみが前記基板の他面に取り付けてあると共に前記支持部材は前記基板の外縁部のみに取り付けてある。
また、本実施形態では、基板15には、光電変換部13及びシンチレータ層11の形成されている一面と反対側の他面には、基板15の外周縁部15aに取り付けた支持部材5のみが取付けてあり、従来技術にあるような補強部材がないと共に支持部材5のみによりアレイ基板9を筐体7内に保持している。
【0024】
第1実施形態に係る放射線検出器では、図1(a)に示すように、入射窓31を透過した放射線(X線)は、シンチレータ層11で可視光である蛍光に変換される。シンチレータ層11で変換された蛍光は、アレイ基板9の光電変換部13で受光され、電気信号に変換される。光電変換部13で変換された電気信号は、フレキシブル配線基板(図示せず)を介して筐体7の内部又は外部に設けた駆動回路基板(図示せず)に出力される。
【0025】
次に、第1実施形態に係る放射線検出器1の作用効果について、説明する。
図1に示すように、放射線検出器1の支持部材5は、放射線検出モジュール3の光電変換部13及びシンチレータ層11が形成されている領域よりも外側に位置して、基板15の外周縁部15aに固定されているから、支持部材5が放射線検出モジュール3から得られるX線画像に与える影響がほとんどなく、また、支持部材5を設けることによりシンチレータ層11の変形を抑制することができる。
支持部材5がアレイ基板9に接触している領域と接触していない領域の境界でアレイ基板9に局所的な変形が生じても、支持部材5は光電変換部13及びシンチレータ層11が形成されている領域よりも外側に位置しているから、X線画像の画質劣化を抑制することができる。
支持部材5は、基板15に引張応力を付与した状態で筐体7に固定しているから、アレイ基板9が重力等により撓むことを防止でき、アレイ基板9の撓みにより生じるX線画像の劣化を防止できる。
【0026】
光電変換部13及びシンチレータ層11の形成されている領域には、基板15に従来技術のような補強部材が設けられていないため、補強部材による放射線の散乱や吸収の影響がなく、X線画像の画質を向上することができる。
光電変換部13及びシンチレータ層11の形成されている領域には補強部材が設けられていないため、放射線検出モジュール3に温度変化が生じた場合でも、補強部材の熱膨張によるアレイ基板の変形は生じない。
また、基板15の熱膨張率は、例えば、3ppm/℃であり、筐体7もアレイ基板9の基板15と熱膨張率が同程度となるように、繊維強化プラスチック(FRP)や、金属及びセラミックの複合体等を組み合わせて作られているから、放射線検出器1の温度が変化しても、放射線検出モジュール3にたわみが生じることがない。
【0027】
以下に、他の実施形態について説明するが、以下に説明する実施形態において、上述した第1実施形態と同一の作用効果を奏する部分には、同一の符号を付して、その部分の詳細な説明を省略する。
図2及び図3を参照して、第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、放射線検出モジュール3は、シンチレータ層11を覆う防湿体21を備えている。
図3に示すように、防湿体21は封止部21a及び防湿部21bからなる。
封止部21aはシンチレータ層11の周囲を囲って枠状に設けられ、材質はポリエチレン、ポリプロピレンを主成分とする熱可塑性樹脂である。
防湿部21bはPET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂材と、Al(アルミニウム)のラミネートフィルム等の金属フィルムであり、これらの樹脂と金属の積層フィルムの組み合わせにより構成されている。
防湿部21bは、シンチレータ層11を覆うように設けられ、周縁近傍は封止部21aに接合されている。
この第2実施形態では、支持部材5において、支持部材5とアレイ基板9が接触しているアレイ基板側固定面5bは、アレイ基板9と防湿体21が接触している領域Aの少なくとも一部に対向する位置で固定している。
【0028】
この第2実施の形態によれば、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、支持部材5においてアレイ基板側固定面5bがアレイ基板9に接触している領域が、アレイ基板9と防湿体21が接着されている領域Aの一部と対応する位置に形成されているから、防湿体21の剛性により、支持部材5の周辺においてアレイ基板9に局所的な変形が生じにくくなる。
【0029】
図4及び図5を参照して、第3実施形態について説明する。
図4に示すように、支持部材5は、アレイ基板9の4辺の全てにおいて、アレイ基板9の縁部を上下から挟むように、アレイ基板9に固定されており、各支持部材5は、付勢部材23によりアレイ基板9を周方向外方に向けて常時付勢している。
支持部材5は、接着材又はビス等によりアレイ基板9の基板15の外周縁部15aに固定されている。
図5に示すように、付勢部材23は、例えば、コイルバネであり、一端23aを筐体7の側壁30に固定されており、他端23bを支持部材5に形成した孔部5cに掛けてある。
付勢部材23としてのコイルバネは、自然長よりも引き伸ばされた状態で、支持部材5及び筐体7の側壁30に固定されている。
この第3実施形態では、アレイ基板9はその四辺において、アレイ基板9の周方向の外側に向かってアレイ基板9の全体に引張応力が加えられている。
【0030】
第3実施形態によれば、アレイ基板9に引張応力が生じていることにより、アレイ基板が重力等によりたわむことを抑制することができる。
更に、この第3実施の形態では、シンチレータ層11が、アレイ基板9上に柱状結晶として形成されている場合には、ライトガイド効果が増強されることによりX線画像の鮮鋭性を向上させることができる。
【0031】
ここで、図6を参照して、ライトガイド効果について説明する。
図6(b)に示すように、アレイ基板9に引張応力が生じていない場合には、シンチレータ層11では、隣合う柱状結晶11aの間隔は比較的密状態になっている。
この図6(b)の状態では、X線の照射によって柱状結晶11aの内部に生じた蛍光Kは、柱状結晶11aのライトガイド効果により、大きく広がることなくアレイ基板9に到達するが、蛍光Kの一部は隣接する柱状結晶11aに伝播し、X線画像の鮮鋭性の低下を招く。
【0032】
これに対して、図6(a)に示すように、アレイ基板9に引張応力(矢印F)が生じている場合、アレイ基板9が引張応力Fにより外周方向にわずかに引き伸ばされる。
このとき、シンチレータ層11の隣合う柱状結晶11a同士の間隔Tもわずかに広がるため、蛍光Kが隣接する柱状結晶11aへの伝播を減少させることができる。このため、X線画像の鮮鋭性を向上させることができる。
このライトガイド効果の増強は、アレイ基板9に引張応力Fが生じている場合に生じるものであるから、上述した第1及び第2実施形態においても、同様に得ることができるが、この第3実施形態では、アレイ基板9には、第1及び第2実施形態よりも大きな引張応力Fを付与できるので、より大きなライトガイド効果を得ることができる。
【0033】
次に、図7を参照して第4実施形態について説明する。
この第4実施形態では、アレイ基板9に引張応力を付与する方法が上述した実施形態と異なっている。
図7(a)に示すように、第4実施形態では、筐体7は上部筐体部6aと下部筐体部6bとから構成されている。
上部筐体部6aは、側壁30と入射窓31とを一体としてあり、側壁30にはその四辺の内周側にアレイ基板9の外縁部9aが嵌合により固定されている。尚、アレイ基板9の外縁部9aは基板15の外周縁部15aでもある。
図7(a)では、アレイ基板9は、面状に配置されており、引張応力がほとんど付与されていない状態で取り付けてある。
【0034】
下部筐体部6bは、筐体7の底壁32に支持部材5を一体に設けてある。支持部材5は平面視四角形状の枠状に形成されており(図1(b)参照)、底壁32の底面7aに固定されている。
そして、図7(a)に示すように、上部筐体部6aと下部筐体部6bを組み付けることで、図7(b)に示すように、支持部材5がアレイ基板9を押し上げるように圧接した状態で、上部筐体部6aと下部筐体部6bが固定されている。
上部筐体部6aと下部筐体部6bの固定は接着剤や溶接等でもよいし、ビス等により機械的に固定して良い。
また、第4実施形態では、筐体7は、アレイ基板9よりも熱膨張率が大きい材質で作られており、例えば、筐体7は、アルミニウム合金や鉄系合金等である。
【0035】
この第4実施形態では、上部筐体部6aと下部筐体部6bを組み付けることにより、アレイ基板に簡単に引張応力を与えることができる。
更に、第4実施形態では、筐体7は、アレイ基板9よりも熱膨張率が大きい材質で作られているから、放射線検出器1の温度が上昇した場合、放射線検出モジュール3に比べて筐体7が大きく膨張するため、放射線検出モジュール3には引張方向の外力が働き、たわみが生じることがない。
【0036】
なお、この発明は、上記実施形態そのものに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0037】
例えば、第3実施形態において、付勢部材23は、コイルバネに限らず、ゴム等の弾性樹脂等であっても良い。
【0038】
また、第4実施形態では、筐体7は、アレイ基板9よりも熱膨張率が大きい材質で作られているが、第1~第3実施形態において、筐体7は、アレイ基板9よりも熱膨張率が大きい材質で作られていても良い。
第1実施形態で、基板15の熱膨張率が筐体7の熱膨張率と同程度としたが、第2~第4実施形態において、基板15の熱膨張率を筐体7の熱膨張率と同程度としても良い。
【符号の説明】
【0039】
1…放射線検出器、3…放射線検出モジュール、5…支持部材、
7…筐体、9…アレイ基板、11…シンチレータ層、
13…光電変換部、15…基板、21…防湿体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7