(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069311
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
B28C 5/42 20060101AFI20230511BHJP
B60P 3/16 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B28C5/42
B60P3/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181087
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 茂
(72)【発明者】
【氏名】木本 恵介
【テーマコード(参考)】
4G056
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CD44
4G056CD64
4G056DA09
(57)【要約】
【課題】センサを用いずとも、ミキサ車における情報を判定また検出できる情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置30は、回転可能に搭載されるミキサドラム20を備えたミキサ車10に搭載される。情報処理装置30は、ミキサドラム20の開口部20aを撮像するカメラ31によって撮像された画像に基づいて、ミキサドラム20の作動状態の判定、及びミキサドラム20から排出される生コンクリートの物理量の検出のうち少なくとも一つを行うコントローラ50を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に搭載されるミキサドラムを備えたミキサ車に搭載される情報処理装置であって、
前記ミキサドラムの開口部を撮像する撮像部によって撮像された画像に基づいて、前記ミキサドラムの作動状態の判定、及び前記ミキサドラムから排出される生コンクリートの物理量の検出のうち少なくとも一つを行うコントローラを備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記ミキサドラムの前記作動状態として、
前記ミキサドラムが第1回転速度で回転し、前記ミキサドラム内の生コンクリートを攪拌する攪拌状態と、
前記ミキサドラムが前記第1回転速度よりも速い第2回転速度で回転し、前記ミキサドラム内の生コンクリートを混練する混練状態と、
前記ミキサドラムが前記攪拌状態及び前記混練状態とは逆方向に回転し、生コンクリートを前記開口部から排出させる排出状態と、を含み、
前記コントローラは、
前記撮像部によって撮像された画像から、前記ミキサドラムの回転方向及び回転速度を演算し、
演算した前記ミキサドラムの前記回転方向及び前記回転速度に基づいて、前記ミキサドラムの前記作動状態が、前記攪拌状態、前記混練状態、及び前記排出状態のいずれかであるかを判定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ミキサドラムの前記作動状態として、前記ミキサドラム内に前記ミキサドラムを洗浄する洗浄水が注入される洗浄状態を含み、
前記コントローラは、
前記撮像部によって撮像された画像から、前記開口部を通過する流体が生コンクリートか洗浄水かを判別することによって、前記ミキサドラムの前記作動状態が、前記洗浄状態であるか否かを判定することを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
生コンクリートの前記物理量として、前記ミキサドラムから排出される生コンクリートの排出量及び前記ミキサドラムから排出される生コンクリートのスランプ値のうち少なくとも1つを含み、
前記コントローラは、前記撮像部によって撮像された前記開口部を流れる生コンクリートの画像に基づいて、生コンクリートの前記排出量及び前記スランプ値のうち少なくとも1つを検出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項5】
回転可能に搭載されるミキサドラムを備えたミキサ車における情報処理方法であって、
前記ミキサドラムの開口部を撮像し、
撮像した画像に基づいて、前記ミキサドラムの作動状態の判定、及び前記ミキサドラムから排出される生コンクリートの物理量の検出のうち少なくとも一つを行うことを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサ車に搭載される情報処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ミキサドラムの回転方向及び回転速度を検出する回転検出装置と、投入シュートを水洗いするための水タンクの水量を検出する電子流量計と、回転検出装置や電子流量計などのセンサ類から得られる各情報のデータ処理を行うための情報処理装置と、を備えたコンクリートミキサー車が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のコンクリートミキサー車では、回転検出装置や電子流量計によって検出された検出信号に基づいて、ドラムからの荷下ろしや、生コン投入シュートの洗浄が行われているかを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のコンクリートミキサー車では、ドラムからの荷下ろしや生コンの投入シュートの洗浄といったミキサ車における情報を判定するために、判定する情報に応じたセンサを設けている。このため、判定する情報の種類が多くなれば、その分センサの種類も多くなり、その分コストの上昇を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、センサを用いずとも、ミキサ車における情報を判定また検出できる情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の情報処理装置は、回転可能に搭載されるミキサドラムを備えたミキサ車に搭載される。情報処理装置は、ミキサドラムの開口部を撮像する撮像部によって撮像された画像に基づいて、ミキサドラムの作動状態の判定、及びミキサドラムから排出される生コンクリートの物理量の検出のうち少なくとも一つを行うコントローラを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成では、撮像部によって撮像された画像に基づいて、ミキサドラムの作動状態の判定、及びミキサドラムから排出される生コンクリートの物理量の検出のうち少なくとも一つを行うことができる。これにより、ミキサドラムの作動状態を検出するためのセンサや、ミキサドラムから排出される生コンクリートの物理量を検出するためのセンサを設ける必要がない。
【0009】
本発明の情報処理装置は、ミキサドラムの作動状態として、ミキサドラムが第1回転速度で回転し、ミキサドラム内の生コンクリートを攪拌する攪拌状態と、ミキサドラムが第1回転速度よりも速い第2回転速度で回転し、ミキサドラム内の生コンクリートを混練する混練状態と、ミキサドラムが攪拌状態及び混練状態とは逆方向に回転し、生コンクリートを開口部から排出させる排出状態と、を含み、コントローラは、撮像部によって撮像された画像から、ミキサドラムの回転方向及び回転速度を演算し、演算したミキサドラムの回転方向及び回転速度に基づいて、ミキサドラムの作動状態が、攪拌状態、混練状態、及び排出状態のいずれかであるかを判定することを特徴とする。
【0010】
この構成では、撮像部によって撮像された画像から、ミキサドラムの作動状態が、攪拌状態、混練状態、及び排出状態のいずれかであるかを判定することができる。これにより、ミキサドラムの回転速度及び回転方向を検出する回転センサを設ける必要がないので、コストの上昇を抑制できる。
【0011】
本発明の情報処理装置は、ミキサドラムの作動状態として、ミキサドラム内にミキサドラムを洗浄する洗浄水が注入される洗浄状態を含み、コントローラは、撮像部によって撮像された画像から、開口部を通過する流体が生コンクリートか洗浄水かを判別することによって、ミキサドラムの作動状態が、洗浄状態であるか否かを判定することを特徴とする。
【0012】
この構成では、撮像部によって撮像された画像から、ミキサドラムの作動状態が、洗浄状態であるかを判定することができる。これにより、洗浄水の流量を測定する流量センサなどを設ける必要がないので、コストの上昇を抑制できる。
【0013】
本発明の情報処理装置は、生コンクリートの物理量として、ミキサドラムから排出される生コンクリートの排出量及びミキサドラムから排出される生コンクリートのスランプ値のうち少なくとも1つを含み、コントローラは、撮像部によって撮像された開口部を流れる生コンクリートの画像に基づいて、生コンクリートの排出量及びスランプ値のうち少なくとも1つを検出することを特徴とする。
【0014】
この構成では、開口部を流れる生コンクリートの画像に基づいて生コンクリートの排出量やスランプ値を検出することができる。これにより、生コンクリートの流量を計測するための流量センサを設ける必要や、スランプ値を測定するための試験を行う回数を減らすことができる。これにより、センサや工数を削減することができるので、コストの上昇を抑制できる。
【0015】
本発明の回転可能に搭載されるミキサドラムを備えたミキサ車における情報処理方法は、ミキサドラムの開口部を撮像し、撮像した画像に基づいて、ミキサドラムの作動状態の判定、及びミキサドラムから排出される生コンクリートの物理量の検出のうち少なくとも一つを行うことを特徴とする。
【0016】
この構成では、撮像された画像に基づいて、ミキサドラムの作動状態の判定、及びミキサドラムから排出される生コンクリートの物理量の検出のうち少なくとも一つを行うことができる。これにより、ミキサドラムの作動状態を検出するためのセンサや、ミキサドラムから排出される生コンクリートの物理量を検出するためのセンサを設ける必要がない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、撮像部によって撮像された画像に基づいて、ミキサドラムの作動状態の判定、及びミキサドラムから排出される生コンクリートの物理量の検出のうち少なくとも一つを行うことができる。これにより、ミキサドラムの作動状態を検出するためのセンサや、ミキサドラムから排出される生コンクリートの物理量を検出するためのセンサを設ける必要がない。よって、コストの上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る情報処理装置が搭載されるミキサ車の側面図である。
【
図2】
図1に矢印Aで示される方向からミキサドラムの内部を見た図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る情報処理装置のブロック図である。
【
図4】本実施形態のミキサドラムの作動状態の判定に関するフローチャートである。
【
図5】本実施形態のミキサドラムから排出される生コンクリートの物理量の検出に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
本発明の実施形態に係るミキサ車10の情報処理装置30を備えた情報処理システムSは、ミキサ車10に搭載される。情報処理システムSは、ミキサドラム20の作動状態の判定やミキサドラム20から排出される生コンクリートの物理量の検出を行い、これらの情報をミキサ車10の運行を管理する運行管理システム70に送信する。
【0021】
まず、
図1及び2を参照して、本発明の実施形態に係るミキサ車10の全体構成について説明する。
【0022】
ミキサ車10は、モルタルやレディミクストコンクリート等のいわゆる生コンクリート(以下、「生コン」と称する。)を運搬する車両である。以下の説明では、ミキサ車10が積載物として生コンを積載する場合について説明する。
【0023】
図1に示すように、ミキサ車10は、車両の前後方向に延びる架台11と、架台11上に回転可能に搭載されるミキサドラム20と、ミキサドラム20を回転駆動するドラム駆動装置12と、外部から投入される生コンをミキサドラム20内へと導くホッパー13と、ミキサドラム20から排出される生コンを所定位置に誘導するシュート14と、を備える。
【0024】
ミキサドラム20は、回転軸C1を中心として回転する円筒状容器である。ミキサドラム20の車両後方側の後端部には、生コンの投入と排出とが行われる開口部20aが設けられ、車両前方側の前端部には、回転軸C1に沿って外部に向かって延在する駆動軸21が設けられる。ミキサドラム20は、開口部20aが設けられる後端部側が前端部側よりも上方に持ち上げられた状態で架台11に支持される。
【0025】
ミキサドラム20の駆動軸21は、ドラム駆動装置12内に設けられる油圧モータ(図示省略)にギアボックス(図示省略)を介して連結される。このため、ミキサドラム20は、油圧モータによって正回転方向又は逆回転方向に回転駆動される。なお、ミキサドラム20の駆動軸21は、ギアボックスを介してミキサ車10の走行用エンジン(図示省略)に連結されてもよく、この場合、ミキサドラム20は走行用エンジンによって回転駆動される。また、ミキサドラム20の駆動源としては油圧モータやエンジンに代えて、電動モータが用いられてもよい。ミキサドラム20の前端部の内側である底部には、駆動軸21の端部を覆うように円錐状のカバー部材25が設けられる。
【0026】
また、ミキサドラム20内には、一対のブレード22,23がミキサドラム20の内壁面に沿って螺旋状に配設されている。各ブレード22,23は、ミキサドラム20の略中間部分において、車両の前方側に配設される前方ブレード22a,23aと、車両の後方側に配設される後方ブレード22b,23bと、に分割される。各後方ブレード22b,23bは、開口部20aにおいて、ミキサドラム20の内壁面に接合されるとともに、ミキサドラム20の回転軸C1線上に配置された円筒状のシールパイプ24に接合される。シールパイプ24は、ホッパー13に投入された生コンをミキサドラム20の内部へと円滑に導くために設けられる。
【0027】
次に、
図2を参照して、シールパイプ24からミキサドラム20の内部を見た際の構造について説明する。なお、
図2は、
図1に矢印Aで示される方向からシールパイプ24の内側を通してミキサドラム20の内部を見た図であり、
図2において中央に図示されるのは、カバー部材25であり、カバー部材25の周囲には、各前方ブレード22a,23aの端部22c,23cがそれぞれ配設される。また、各ブレード22,23は、上述のように、ミキサドラム20の略中間部分において、前方ブレード22a,23aと後方ブレード22b,23bとに分割される。
【0028】
シールパイプ24は、ホッパー13と摺接可能な筒部24aと、筒部24aからミキサドラム20の内部に向けて延出する一対の延出部24bと、を有する。延出部24bは、それぞれ、略三角形状に形成されており、後方ブレード22b,23bに沿って形成される斜辺24cと、斜辺24cから筒部24aに向かって形成される接続辺24dと、を有する。シールパイプ24は、延出部24bの斜辺24cが後方ブレード22b,23bの内側にそれぞれ溶接接合されることによってミキサドラム20に対して固定される。
【0029】
ホッパー13は、ミキサ車10の上方から投入される生コンを、シールパイプ24を通じてミキサドラム20内へと導くためにミキサドラム20の開口部20aの上方に配置される。ホッパー13の上部には、ホッパー13の開口を覆うホッパーカバー15がヒンジ15aを介して回動自在に設けられる。一方で、ミキサドラム20の開口部20aの下方には、ミキサドラム20から排出される生コンを所定位置に誘導するシュート14が配置される。
【0030】
ミキサ車10は、ミキサドラム20の作動状態として、ミキサドラム20を第1回転速度V1で回転させ、ミキサドラム20内の生コンを攪拌する攪拌状態と、ミキサドラム20を第1回転速度V1よりも速い第2回転速度V2で回転させ、ミキサドラム20内の生コンを混練する混練状態と、ミキサドラム20を攪拌状態及び混練状態とは逆方向に回転させ、生コンを開口部20aから排出させる排出状態と、を有する。
【0031】
攪拌状態では、ミキサドラム20が車両後方から見て左回転である正回転方向に回転駆動される。攪拌状態では、ブレード22,23がミキサドラム20とともに正回転することにより、ミキサドラム20内の生コンは攪拌されながらミキサドラム20の前方へと移動する。このようにミキサドラム20を回転させて生コンを攪拌することにより、生コンが分離してしまったり固化してしまったりすることが抑制される。
【0032】
混練状態では、ミキサドラム20は、正回転方向に攪拌状態でのミキサドラム20の第1回転速度V1よりも速い第2回転速度V2で回転駆動される。混練状態は、生コンを排出する前に混練するために行われる。
【0033】
排出状態では、ミキサドラム20が逆回転方向に回転駆動される。排出状態では、ブレード22,23がミキサドラム20とともに回転することにより、生コンは攪拌されながらミキサドラム20の後方へと移動する。このようにミキサドラム20を逆回転させることで、ミキサドラム20の開口部20aから生コンを排出させることができる。ミキサドラム20の開口部20aから排出された生コンは、シュート14を介して所定位置に誘導される。
【0034】
また、ミキサ車10は、作業状態として、洗浄状態を備える。洗浄状態では、ミキサドラム20内が空の状態でミキサドラム20内に洗浄水を注入してミキサドラム20内を洗浄する洗浄作業が行われる。
【0035】
次に、
図3を参照して、ミキサ車10に搭載される情報処理システムSについて具体的に説明する。
図3は、情報処理システムSの概略を示すブロック図である。情報処理システムSは、ミキサドラム20のホッパー13近傍に取り付けられた情報処理装置30と、キャビン16内に設けられたキャビン内処理装置60と、を備える。
【0036】
情報処理装置30は、ミキサドラム20の開口部20aを撮像する撮像部としてのカメラ31によって撮影された画像データを処理するコントローラ50と、コントローラ50で得られた情報を、ミキサ車10のキャビン16内に設けられたキャビン内処理装置60に送信する送信部32と、を備える。
【0037】
カメラ31は、ミキサドラム20の内部を撮影できる位置、より具体的には、カメラ31は、シールパイプ24の内部を撮影できるようにしてホッパー13に取り付けけられる。カメラ31で撮像される画像は、動画であるが、所定時間ごとに撮像された静止画であってもよい。
【0038】
図3に示すように、コントローラ50は、カメラ31によって撮像された画像を取り込んで画像処理する画像処理部51と、画像処理部51によって処理された画像データに基づいてミキサドラム20の作動状態を判定する判定部52と、画像処理部51によって処理された画像データに基づいてミキサドラム20から排出される生コンの物理量を検出する検出部53と、カメラ31によって撮像された画像を記憶する記憶部54と、を備える。
【0039】
コントローラ50は、具体的には、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。コントローラ50は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。なお、本実施形態における画像処理部51、判定部52、及び検出部53は、コントローラ50の各機能を、仮想的なユニットとして示したものであり、物理的に存在することを意味するものではない。
【0040】
画像処理部51は、カメラ31によって撮像された画像から、ブレード22,23の画像を抽出する。具体的には、画像処理部51は、コントローラ50内にあらかじめ記憶されたブレード22,23の画像データを参照して、撮像された画像からブレード22,23を抽出して、これらの位置を特定する。
【0041】
また、画像処理部51は、カメラ31によって撮像された画像から、ミキサドラム20の開口部20aを流れる流体を抽出する。具体的には、画像処理部51は、撮像された画像における開口部20a近傍を流れる流体の画像を抽出する。
【0042】
判定部52は、画像処理部51によって特定されたブレード22,23の位置の時間的変化に基づいて、ミキサドラム20の回転方向及び回転速度を演算する。さらに、判定部52は、演算したミキサドラム20の回転方向及び回転速度に基づいて、ミキサドラム20の作動状態が、攪拌状態、混練状態、及び排出状態のいずれであるかを判定する。
【0043】
また、判定部52は、画像処理部51によって抽出された開口部20aを通過する流体の画像における流体の色や形状から、開口部20aを通過する流体が、生コンであるか、洗浄水であるかを判定する。そして、判定部52は、開口部20aを流れる流体が洗浄水であると判別した場合には、ミキサドラム20の回転方向及び回転速度にかかわらず、ミキサドラム20の作動状態が洗浄状態にあると判定する。
【0044】
判定部52で判定されたミキサドラム20の作動状態の判定結果は、送信部32を通じてキャビン内処理装置60に送信される。
【0045】
検出部53は、画像処理部51によって処理された画像データに基づいてミキサドラム20から排出される生コンの流量及び生コンのスランプ値を検出する。
【0046】
コントローラ50内には、あらかじめ実験などによって測定された開口部20aを通過する生コンの流量毎の画像データ、及び開口部20aを通過する生コンのスランプ値毎の画像データが記憶されており、検出部53は、記憶されたこれらの画像データを参照して、生コンの流量及び生コンのスランプ値を検出する。
【0047】
検出部53によって検出された生コンの流量及び生コンのスランプ値は、送信部32を通じてキャビン内処理装置60に送信される。
【0048】
記憶部54は、カメラ31によって撮像された画像データを記憶する。記憶部54は、例えば、コントローラ50の内部に設置されたハードディスクなどの記憶媒体によって構成される。記憶部54は、数日分の画像データを保存できる容量を有する。なお、記憶部54は、コントローラ50に対して着脱可能な記憶媒体であってもよい。
【0049】
キャビン内処理装置60は、判定部52で判定されたミキサドラム20の作動状態の判定結果、及び検出部53によって検出された生コンの流量及び生コンのスランプ値を受信する受信装置61と、受信装置61が受信した情報を事業所等のミキサ車10外に設けられた運行管理システム70に送信する通信装置62と、を有する。
【0050】
情報処理装置30の送信部32とキャビン内処理装置60の受信装置61とは、例えば、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)といった無線通信によって通信可能に接続される。なお、これらを通信ケーブルなどによって通信可能に接続してもよい。
【0051】
通信装置62と運行管理システム70とは、例えば、携帯回線などを利用した無線通信によって通信可能に接続される。なお、受信装置61と通信装置62とは、別体である必要はなく、一体に構成されていてもよい。
【0052】
また、キャビン内処理装置60は、ミキサドラム20の作動状態の判定結果、検出部53によって検出された生コンの流量及び生コンのスランプ値、さらに、ミキサ車10の位置情報などの車両情報を運行管理システム70に送信する。運行管理システム70は、これらの情報を基に、ミキサ車10の運行を管理する。
【0053】
次に、
図4及び
図5を参照して、情報処理システムSにおける情報処理装置30で実行される情報処理のフローについて説明する。情報処理装置30は、
図4及び
図5に示すフローを、常時繰り返し実行する。
【0054】
まず、
図4を参照して、ミキサドラム20の作動状態の判定に関するフローについて説明する。
図4に示すステップS11において、カメラ31によって撮像された画像を、画像処理部51に取り込む。
【0055】
ステップS12では、カメラ31によって撮像された画像から、ブレード22,23の画像を抽出する。具体的には、画像処理部51は、コントローラ50内にあらかじめ記憶されたブレード22,23の画像データを参照して、撮像された画像からブレード22,23を抽出するとともに、これらの位置を特定する。
【0056】
ステップS13では、ステップS12において画像処理部51によって特定されたブレード22,23の位置の時間的変化に基づいて、ミキサドラム20の回転方向及び回転速度を演算する。
【0057】
また、情報処理装置30では、ステップS12と同時に、ステップS14において、画像処理部51は、撮像された画像における開口部20a近傍を流れる流体の画像を抽出する。
【0058】
ステップS15では、ステップS14において画像処理部51によって抽出された流体の画像における流体の色や形状から、開口部20a近傍を流れる流体が生コンであるか、洗浄水であるかを判定する。
【0059】
ステップS16では、ステップS13で演算したミキサドラム20の回転方向及び回転速度と、ステップS15で判定した流体の種類と、に基づいて、ミキサドラム20の作動状態が、攪拌状態、混練状態、排出状態、及び洗浄状態のいずれであるかを判定する。
【0060】
ステップS17では、コントローラ50は、ステップS16において判定されたミキサドラム20の作動状態を送信部32を通じてキャビン内処理装置60に送信する。
【0061】
次に、
図5を参照して、ミキサドラム20から排出される生コンクリートの物理量(流量及びスランプ値)の検出に関するフローについて説明する。
【0062】
図5に示すステップS21において、カメラ31によって撮像された画像を画像処理部51に取り込む。
【0063】
次に、ステップS22において、画像処理部51によって処理された画像データに基づいて、ミキサドラム20から排出される生コンの流量及び生コンのスランプ値を検出する。具体的には、検出部53は、コントローラ50内にあらかじめ記憶された開口部20aを通過する生コンの流量毎の画像データ、及び開口部20aを通過する生コンのスランプ値毎の画像データと、カメラ31によって撮像した画像とを比較し、生コンの流量及び生コンのスランプ値を検出する。
【0064】
ステップS23では、コントローラ50は、ステップS22において検出された生コンの流量及び生コンのスランプ値を送信部32を通じてキャビン内処理装置60に送信する。
【0065】
このように、本実施形態の情報処理装置30によれば、カメラ31によって撮像された画像に基づいて、ミキサドラム20の作動状態の判定、及びミキサドラム20から排出される生コンクリートの物理量(流量及びスランプ値)の検出を行うことができる。これにより、ミキサドラム20の作動状態を判定するためのセンサ、及びミキサドラム20から排出される生コンクリートの物理量(流量及びスランプ値)の検出するためのセンサを設ける必要がないので、その分コストの上昇を抑制できる。
【0066】
さらに、本実施形態の情報処理装置30は、無線によってキャビン内処理装置60に接続されるので、配線工事などを必要としていない。このため、情報処理装置30を簡単に設置することができる。さらに。既存のミキサ車にも、追加的に設置することができる。
【0067】
なお、上記実施形態では、ミキサドラム20の作動状態として、攪拌状態、混練状態、排出状態、及び洗浄状態のいずれかを判定していたが、これに停止状態(ミキサドラム20が停止している状態)などを加えて判定するようにしてもよい。また、これらの全ての判定を行わなくてもよい。例えば、攪拌状態と排出状態の2つの作動状態のみを判定するようにしてもよい。
【0068】
情報処理装置30において、カメラ31とコントローラ50とは一体である必要はなく、別体であってもよい。カメラ31とコントローラ50を別体として構成した場合には、これらを無線で接続するようにしてもよい。さらに、情報処理装置30に判定部52によって判定された判定結果や、検出部53によって検出された検出結果を表示する表示部を設けるようにしてもよい。
【0069】
キャビン内処理装置60に表示部を設け、情報処理装置30から送信された情報を表示するようにしてもよい。
【0070】
また、記憶部54に、判定部52によって判定された判定結果や、検出部53によって検出された検出結果を保存するようにしてもよい。
【0071】
上記実施形態では、ブレード22,23を抽出することによりミキサドラム20の回転速度及び回転方向を演算していたが、これに限らず、例えば、ミキサドラム20にマーカーを設け、このマーカーを検出してミキサドラム20の回転速度及び回転方向を演算するようにしてもよい。
【0072】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0073】
本発明の情報処理装置30は、回転可能に搭載されるミキサドラム20を備えたミキサ車10に搭載される。情報処理装置30は、ミキサドラム20の開口部20aを撮像する撮像部(カメラ31)によって撮像された画像に基づいて、ミキサドラム20の作動状態の判定、及びミキサドラム20から排出される生コンクリートの物理量の検出のうち少なくとも一つを行うコントローラ50を備える。
【0074】
この構成では、撮像部(カメラ31)によって撮像された画像に基づいて、ミキサドラム20の作動状態の判定、及びミキサドラム20から排出される生コンクリートの物理量の検出のうち少なくとも一つを行うことができる。これにより、ミキサドラム20の作動状態を検出するためのセンサや、ミキサドラム20から排出される生コンクリートの物理量を検出するためのセンサを設ける必要がない。よって、コストの上昇を抑制することができる。
【0075】
本発明の情報処理装置30は、ミキサドラム20の作動状態として、ミキサドラム20が第1回転速度V1で回転し、ミキサドラム20内の生コンクリートを攪拌する攪拌状態と、ミキサドラム20が第1回転速度V1よりも速い第2回転速度V2で回転し、ミキサドラム20内の生コンクリートを混練する混練状態と、ミキサドラム20が攪拌状態及び混練状態とは逆方向に回転し、生コンクリートを開口部20aから排出させる排出状態と、を含み、コントローラ50は、撮像部(カメラ31)によって撮像された画像から、ミキサドラム20の回転方向及び回転速度を演算し、演算したミキサドラム20の回転方向及び回転速度に基づいて、ミキサドラム20の作動状態が、攪拌状態、混練状態、及び排出状態のいずれかであるかを判定する。
【0076】
この構成では、撮像部(カメラ31)によって撮像された画像から、ミキサドラム20の作動状態が、攪拌状態、混練状態、及び排出状態のいずれかであるかを判定することができる。これにより、ミキサドラム20の回転速度及び回転方向を検出する回転センサを設ける必要がないので、コストの上昇を抑制できる。
【0077】
本発明の情報処理装置30は、ミキサドラム20の作動状態として、ミキサドラム20内にミキサドラム20を洗浄する洗浄水が注入される洗浄状態を含み、コントローラ50は、撮像部(カメラ31)によって撮像された画像から、開口部20aを通過する流体が生コンクリートか洗浄水かを判別することによって、ミキサドラム20の作動状態が、洗浄状態であるか否かを判定する。
【0078】
この構成では、撮像部(カメラ31)によって撮像された画像から、ミキサドラム20の作動状態が、洗浄状態であるかを判定することができる。これにより、洗浄水の流量を測定する終了センサなどを設ける必要がないので、コストの上昇を抑制できる。
【0079】
本発明の情報処理装置30は、生コンクリートの物理量として、ミキサドラム20から排出される生コンクリートの排出量及びミキサドラム20から排出される生コンクリートのスランプ値のうち少なくとも1つを含み、コントローラ50は、撮像部(カメラ31)によって撮像された開口部20aを流れる生コンクリートの画像に基づいて、生コンクリートの排出量及びスランプ値のうち少なくとも1つを検出する。
【0080】
この構成では、開口部20aを流れる生コンクリートの画像に基づいて生コンクリートの排出量やスランプ値を検出することができる。これにより、生コンクリートの流量を計測するための流量センサを設ける必要や、スランプ値を測定するための試験を行う回数を減らすことができる。これにより、センサや工数を削減することができるので、コストの上昇を抑制できる。
【0081】
本発明の情報処理装置30は、コントローラ50で得られた情報を、ミキサ車10のキャビン16内に設けられた受信装置61に送信する送信部32をさらに備える。
【0082】
この構成では、情報処理装置30のコントローラ50で得られた情報を、キャビン16内に設けられた受信装置61で把握することができる。
【0083】
本発明のミキサ車10の情報処理システムSは、情報処理装置30と、ミキサ車10のキャビン16内に設けられた受信装置61と、受信装置61が受信した情報をミキサ車10外に設けられたミキサ車10の運行管理システム70に送信可能な通信装置62と、を備える。
【0084】
この構成では、情報処理装置30によって得られた情報をミキサ車10外に設けられたミキサ車10の運行管理システム70に送ることができる。これにより、運行管理システム70によって、ミキサ車10の情報をリアルタイムに取得でき、適切な運行管理を行うことができる。
【0085】
本発明のミキサ車10は、情報処理システムSが搭載される。
【0086】
本発明の回転可能に搭載されるミキサドラム20を備えたミキサ車10における情報処理方法は、ミキサドラム20の開口部20aを撮像し、撮像した画像に基づいて、ミキサドラム20の作動状態の判定、及びミキサドラム20から排出される生コンクリートの物理量の検出のうち少なくとも一つを行う。
【0087】
この構成では、撮像された画像に基づいて、ミキサドラム20の作動状態の判定、及びミキサドラム20から排出される生コンクリートの物理量の検出のうち少なくとも一つを行うことができる。これにより、ミキサドラム20の作動状態を検出するためのセンサや、ミキサドラム20から排出される生コンクリートの物理量を検出するためのセンサを設ける必要がない。よって、コストの上昇を抑制することができる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0089】
10・・・ミキサ車、20・・・ミキサドラム、20a・・・開口部、30・・・情報処理装置、31・・・カメラ(撮像部)、32・・・送信部、50・・・コントローラ、51・・・画像処理部、52・・・判定部、53・・・検出部、54・・・記憶部、60・・・キャビン内処理装置、61・・・受信装置、62・・・通信装置、70・・・運行管理システム