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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069314
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】光測定方法および光測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20230511BHJP
   G01J 3/10 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G01J3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181094
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛
【テーマコード(参考)】
2G020
2G059
【Fターム(参考)】
2G020BA20
2G020CA14
2G020CB04
2G020CB23
2G020CB46
2G020CC56
2G020CD03
2G020CD06
2G020CD13
2G020CD23
2G020CD24
2G059AA02
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE12
2G059FF01
2G059GG01
2G059GG06
2G059HH01
2G059KK01
2G059MM09
(57)【要約】
【課題】被測定物の配置と光照射のタイミングを合わせなくても、移動する被測定物を抜けなく正確に測定できる方法および装置を提供する。
【解決手段】光測定装置100において、照明装置200は、被測定物OBJが通過する照射領域に対して、経時的に波長が変化するパルス光SINを所定の繰り返し周波数で照射する。光検出器302は、パルス光SINが照射された被測定物OBJからの光SOBJを受光する。光検出器302が生成する検出信号が、被測定物OBJの分光スペクトルの演算に利用される。パルス光SINの繰り返し周波数をf[Hz]、被測定物OBJの移動方向の有効サイズをD[m]、被測定物OBJの移動速度をv[m/s]、被測定物OBJの表面におけるパルス光の照射スポットの移動方向のサイズをd[m]としたときに、
(f・(D-d)/v)≧2.0…(1)
を満たす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物が通過する照射領域に対して、経時的に波長が変化するパルス光を所定の繰り返し周波数で照射する第1ステップと、
前記第1ステップにおいて前記パルス光が照射された被測定物からの光を光検出器により検出する第2ステップと、
前記第2ステップにおいて前記光検出器が生成する検出信号にもとづいて、前記被測定物の分光スペクトルを得る第3ステップと、
を備え、
前記パルス光の繰り返し周波数をf[Hz]、前記被測定物の移動方向の有効サイズをD[m]、前記被測定物の移動速度をv[m/s]、前記被測定物の表面における前記パルス光の照射スポットの移動方向のサイズをd[m]としたときに、
(f・(D-d)/v)≧2.0 …(1)
を満たすことを特徴とする光測定方法。
【請求項2】
(f・(D-d)/v)≧10.0 …(2)
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光測定方法。
【請求項3】
(f・(D-d)/v)≧500.0 …(3)
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光測定方法。
【請求項4】
(f・(D-d)/v)≧5000.0 …(4)
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光測定方法。
【請求項5】
v>0.5m/sであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光測定方法。
【請求項6】
前記被測定物は、搬送装置による搬送によって移動することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光測定方法。
【請求項7】
前記被測定物は、落下により移動することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光測定方法。
【請求項8】
前記被測定物は、斜面を滑ることにより移動することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光測定方法。
【請求項9】
被測定物が通過する照射領域に対して、経時的に波長が変化するパルス光を所定の繰り返し周波数で照射する照明装置と、
前記パルス光が照射された前記被測定物からの光を受光する光検出器と、
を備え、前記光検出器が生成する検出信号が、前記被測定物の分光スペクトルの演算に利用され、
前記パルス光の繰り返し周波数をf[Hz]、前記被測定物の移動方向の有効サイズをD[m]、前記被測定物の移動速度をv[m/s]、前記被測定物の表面におけるパルス光の照射スポットの移動方向のサイズをd[m]としたときに、
(f・(D-d)/v)≧2.0 …(1)
を満たすことを特徴とする光測定装置。
【請求項10】
(f・(D-d)/v)≧10.0 …(2)
を満たすことを特徴とする請求項9に記載の光測定装置。
【請求項11】
(f・(D-d)/v)≧500.0 …(3)
を満たすことを特徴とする請求項9に記載の光測定装置。
【請求項12】
(f・(D-d)/v)≧5000.0 …(4)
を満たすことを特徴とする請求項9に記載の光測定装置。
【請求項13】
v>0.5m/sであることを特徴とする請求項9から12のいずれかに記載の光測定装置。
【請求項14】
前記照明装置は、広帯域のパルス光源と、前記パルス光源から出射されたパルス光のパルス幅を1パルスにおける波長と経過時間との関係が1対1となるように伸長させるパルス伸長素子と、を備えることを特徴とする請求項9から12のいずれかに記載の光測定装置。
【請求項15】
前記パルス伸長素子は、
前記パルス光源から出射された前記パルス光を波長に応じて空間的に分割するアレイ導波路回折格子と、
前記アレイ導波路回折格子が分割する波長の数に応じた数の複数のファイバと、
を備えることを特徴とする請求項14に記載の光測定装置。
【請求項16】
前記被測定物は、落下により移動することを特徴とする請求項9から12のいずれかに記載の光測定装置。
【請求項17】
前記被測定物は、斜面を滑ることにより移動することを特徴とする請求項9から12のいずれかに記載の光測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の成分分析や検査に分光解析が広く用いられる。分光解析では、測定光を対象物に照射し、対象物の影響を受けた物体光のスペクトルが測定される。そして、物体光のスペクトルと測定光のスペクトルの関係にもとづいて、反射特性(波長依存性)あるいは透過特性などの光学的特性を得ることができる。
【0003】
特許文献1や2には、製品検査装置が開示される。この製品検査装置は、対象物にパルス光を照射するためのパルス光源と、対象物からの光が入射する位置に配置された光検出器と、光検出器からの出力に従って対象物の分光特性を算出する演算手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-159971号公報
【特許文献2】特開2020-159973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製品検査装置では、対象物が測定位置を通過するタイミングと、パルス光源の光照射タイミングを合わせないと、正確な分光測定をおこなうことができない。そのため、配置と照射のタイミングを合わせるための機構が必要となり、装置が複雑になるという問題があった。
【0006】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、被測定物の配置と光照射のタイミングを合わせなくても、移動する被測定物を抜けなく正確に測定できる方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様の光測定方法は、被測定物が通過する照射領域に対して、経時的に波長が変化するパルス光を所定の繰り返し周波数で照射する第1ステップと、第1ステップにおいてパルス光が照射された被測定物からの光を光検出器により検出する第2ステップと、第2ステップにおいて光検出器が生成する検出信号にもとづいて、被測定物の分光スペクトルを得る第3ステップと、を備える。パルス光の繰り返し周波数をf[Hz]、被測定物の移動方向の有効サイズをD[m]、被測定物の移動速度をv[m/s]、被測定物の表面におけるパルス光の照射スポットの移動方向のサイズをd[m]としたときに、
(f・(D-d)/v)≧2.0 …(1)
を満たす。
【0008】
本開示の別の態様は、光測定装置である。この光測定装置は、被測定物が通過する照射領域に対して、経時的に波長が変化するパルス光を所定の繰り返し周波数で照射する照明装置と、パルス光が照射された被測定物からの光を受光する光検出器と、を備え、光検出器が生成する検出信号が、被測定物の分光スペクトルの演算に利用され、パルス光の繰り返し周波数をf[Hz]、被測定物の移動方向の有効サイズをD[m]、被測定物の移動速度をv[m/s]、被測定物の表面におけるパルス光の照射スポットの移動方向のサイズをd[m]としたときに、
(f・(D-d)/v)≧2.0 …(1)
を満たす。
【0009】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、本開示の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本開示のある態様によれば、被測定物の配置と光照射のタイミングを合わせなくても、移動する被測定物を抜けなく正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る光測定装置を示すブロック図である。
図2】測定光SINを説明する図である。
図3図1の光測定装置による分光を説明する図である。
図4図4(a)、(b)は、光測定装置における光照射を説明する図である。
図5】パルス光の照射条件を説明する図である。
図6】被測定物に対するパルス照射の一例を示す図である。
図7図7(a)、(b)は、条件1および条件2での実験結果を示す図である。
図8】光測定装置の一形態である検査装置を示す図である。
図9】変形例1に係る光測定装置を示す図である。
図10】変形例3に係る光測定装置を示す図である。
図11】変形例4に係る光測定装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0013】
一実施形態に係る光測定方法は、以下の処理を含む。
第1ステップ 被測定物が通過する照射領域に対して経時的に波長が変化するパルス光を所定の繰り返し周波数で照射する。
第2ステップ 第1ステップにおいてパルス光が照射された被測定物からの光を光検出器により検出する。
第3ステップ 第2ステップにおいて光検出器が生成する検出信号にもとづいて、被測定物の分光スペクトルを得る。
パルス光の繰り返し周波数をf[Hz]、被測定物の移動方向の有効サイズをD[m]、被測定物の移動速度をv[m/s]、被測定物の表面におけるパルス光の照射スポットの移動方向のサイズをd[m]としたときに、式(1)を満たす。
(f・(D-d)/v)≧2.0 …(1)
【0014】
一実施形態に係る光測定装置は、被測定物が通過する照射領域に対して、経時的に波長が変化するパルス光を所定の繰り返し周波数で照射する照明装置と、パルス光が照射された被測定物からの光を受光する光検出器と、を備える。光検出器が生成する検出信号は、被測定物の分光スペクトルの演算に利用される。パルス光の繰り返し周波数をf[Hz]、被測定物の移動方向の有効サイズをD[m]、被測定物の移動速度をv[m/s]、被測定物の表面におけるパルス光の照射スポットの移動方向のサイズをd[m]としたときに、
(f・(D-d)/v)≧2.0 …(1)
を満たす。なお、被測定物が加速度運動を行う場合、移動速度v[v/m]は、平均速度をとればよい。
【0015】
一実施形態に係る光測定装置/方法において、被測定物の移動と非同期でパルス光を照射した場合において、式(1)を満たすとき、少なくとも1つのパルス光が、そのパルスの持続時間(パルス幅)の間、移動中の被測定物に対して照射されることが保証される。これにより、被測定物の配置と照射のタイミングを合わせなくても、移動する被測定物を抜けなく正確に測定できる。
【0016】
ここで「有効サイズ」とは、被測定物のうち、実質的にスペクトルの測定に寄与する部分のサイズをいう。たとえば、被測定物へのパルス光の入射側、あるいは被測定物からの光の出射側において、光の一部あるいは全部が遮蔽される場合には、遮蔽されている部分は測定に寄与しないから、その部分を除いた範囲のサイズが有効サイズとなる。
【0017】
一実施形態において、
(f・(D-d)/v)≧10.0 …(2)
を満たしてもよい。これにより、少なくとも9個のパルス光が、被測定物に対して照射されることが保証される。これにより、少なくとも9回分の光検出器の出力を積算することにより、S/N比を改善できる。
【0018】
一実施形態において、
(f・(D-d)/v)≧500.0 …(3)
を満たしてもよい。これにより、少なくとも499個のパルス光が、移動中の被測定物に対して照射されることが保証される。これにより、少なくとも499回分の光検出器の出力を積算することにより、S/N比を改善できる。これは被測定物の透過光を測定する場合において、透過率が低い場合に有効である。
【0019】
一実施形態において、
(f・(D-d)/v)≧5000.0 …(4)
を満たしてもよい。これにより、少なくとも4999個のパルス光が、移動中の被測定物に対して照射されることが保証される。これにより、少なくとも4999回分の光検出器の出力を積算することにより、S/N比を改善できる。これは透過率が非常に低い(たとえば10%以下)被測定物の透過光を測定する場合において有効である。
【0020】
一実施形態において、v>0.5m/sであってもよい。
v>0.5m/sの移動速度は、一般的な分光測定の応用においては高速な部類に入る。被測定物の配置と同期して、照射のタイミングを制御する場合、移動速度が速ければ速いほど、その制御の難易度は高くなる。これに対して、本実施形態では、タイミング合わせが不要であるため、移動速度が速い応用において特に有用である。
【0021】
一実施形態において、搬送装置による搬送によって移動してもよい。この場合、移動速度vを制御しやすいという利点がある。
【0022】
一実施形態において、被測定物は、落下により移動してもよい。被測定物を支持部材などによって支持した状態で測定すると、支持部材によって光の一部が遮蔽されるなどの問題が生ずるが、この方式では、自由空間中の被測定物を測定できるため、光の遮蔽の問題を解決できる。また、被測定物を移動させる搬送手段を省略でき、あるいは構成を簡素化できる。
【0023】
一実施形態において、被測定物は、斜面を滑ることにより移動してもよい。これにより、被測定物を移動させる搬送手段を省略でき、あるいは構成を簡素化できる。
【0024】
一実施形態において、照明装置は、広帯域のパルス光源と出射されたパルス光のパルス幅を1パルスにおける波長と経過時間との関係が1対1となるように伸長させるパルス伸長素子を備えてもよい。
【0025】
一実施形態において、パルス伸長素子は、パルス光源から出射されたパルス光を波長に応じて空間的に分割するアレイ導波路回折格子と、アレイ導波路回折格子が分割する波長の数に応じた数の複数のファイバと、を備えてもよい。
【0026】
(実施形態)
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
図面に記載される各部材の寸法(厚み、長さ、幅など)は、理解の容易化のために適宜、拡大縮小されている場合がある。さらには複数の部材の寸法は、必ずしもそれらの大小関係を表しているとは限らず、図面上で、ある部材Aが、別の部材Bよりも厚く描かれていても、部材Aが部材Bよりも薄いこともあり得る。
【0028】
図1は、実施形態に係る光測定装置100を示すブロック図である。光測定装置100は、対象物OBJの透過スペクトルを測定する分光器であり、主として照明装置200、受光装置300、搬送装置400、処理装置500を備える。いくつかの図において、照明装置200や受光装置300などを簡略化して箱で示す場合があるが、これは、それぞれを構成する部材が、単一の筐体に収容されることを意図したものではない。また、図面の上下、左右も、実際の光測定装置100における各部材の配置や、光の進行方向を限定するものではない。
【0029】
照明装置200は、被測定物OBJが通過する照射領域に対して、経時的に波長が変化するパルス光(以下、測定光と称する)SINを所定の繰り返し周波数で照射する。測定光SINは、時間と波長が一対一の関係で対応付けられる。これを測定光SINは「波長の一意性を有する」という。照明装置200は、公知技術を用いて構成すればよく、たとえば特許文献1や2に記載のものを用いることができる。
【0030】
搬送装置400は、被測定物OBJを支持および搬送する。なお「支持する」とは、被測定物OBJを物理的に固定することのほか、ある範囲に留め置くことを含む。搬送装置400によって、被測定物OBJは照射領域を横切るように移動する。本実施形態において、照明装置200は、搬送装置400による被測定物OBJの搬送と非同期で、言い換えるとフリーランで動作する。
【0031】
図2は、測定光SINを説明する図である。図2の上段は、測定光SINの強度(時間波形)IIN(t)を、下段は測定光SINの波長λの時間変化を示す。
【0032】
この例において、測定光SINは1個のパルスであり、その前縁部において主波長がλ、後縁部において主波長がλであり、1パルス内で波長がλからλの間で経時的に変化する。この例では、測定光SINは、時間とともに振動数が増加する、言い換えると時間とともに波長が短くなる正のチャープパルス(λ>λ)である。なお、測定光SINは、時間とともに波長が長くなる負のチャープパルスであってもよい(λ<λ)。
【0033】
図1に戻る。測定光SINは、被測定物OBJの第1面(上面)に照射され、被測定物OBJを透過し、その第2面(下面)から透過光(以下、物体光ともいう)SOBJとして放射される。測定光SINのスペクトルをIIN(λ)、物体光SOBJの透過率の波長依存性をT(λ)とするとき、物体光SOBJのスペクトルIOBJ(λ)は、以下の式で表される。
OBJ(λ)=T(λ)×IIN(λ)
【0034】
物体光SOBJは、正透過光と拡散透過光を含みうるが、本実施形態は、拡散透過光が支配的である物体OBJの分光測定に特に好適である。正透過光は、測定光SINの光軸と同じ方向に放射されるのに対して、拡散透過光である物体光SOBJは、測定光SINの光軸の方向のみでなく、それと異なる方向に広く放射される。たとえば拡散透過光は、光軸の方向を0°としたときに、コサイン特性の強度分布で放射される。
【0035】
受光装置300は、搬送装置400を挟んで照明装置200と反対側に設けられており、被測定物OBJの第2面から放射される拡散透過光を検出する。受光装置300は、被測定物OBJの拡散透過光を物体光SOBJとして検出する光検出器302を含む。受光装置300は、光検出器302に加えて、集光光学系などを含みうるが、図1では省略している。
【0036】
光検出器302は、光信号を電気信号に変換する光電変換素子であり、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、フォトトランジスタ、光電効果を利用した光電子増倍管(フォトマル)や光照射による電気抵抗変化を利用した光電導素子などが例示される。
【0037】
光検出器302の出力は、A/Dコンバータによってデジタルの検出信号に変換され、処理装置500に供給される。検出信号は、物体光SOBJの時間波形IOBJ(t)を示す。
【0038】
処理装置500は、受光装置300の出力信号にもとづいて、物体光SOBJのスペクトルIOBJ(λ)を生成する。そして、測定光SINのスペクトルIIN(λ)と物体光SOBJのスペクトルIOBJ(λ)にもとづいて、被測定物OBJの透過率T(λ)を計算する。
T(λ)=IOBJ(λ)/IIN(λ)
【0039】
被測定物OBJよりも照明装置200側において、測定光SINの一部をビームスプリッタなどを利用して別経路に分岐し、分岐された測定光SINの時間波形IIN(t)を、受光装置300とは別の受光装置(図1に不図示)で測定し、測定光SINのスペクトルIIN(λ)を得てもよい。あるいは、測定光SINの安定性が高い場合には、予め測定したスペクトルIIN(λ)を保持しておき、それを用いることができる。
【0040】
図3は、図1の光測定装置100による分光を説明する図である。上述のように、測定光SINは、時間tと波長λが1対1で対応しているから、その時間ドメインの波形IIN(t)は、周波数ドメインのスペクトルIIN(λ)に変換することができる。
【0041】
この測定光SINから生成される物体光SOBJの時間波形IOBJ(t)も、時間tと波長λが1対1で対応したものとなる。したがって処理装置500は、受光装置300の出力が示す物体光SOBJの波形IOBJ(t)を、物体光SOBJのスペクトルIOBJ(λ)に変換することができる。
【0042】
処理装置500は、2つのスペクトルIOBJ(λ)とIIN(λ)の比IOBJ(λ)/IIN(λ)にもとづいて、被測定物OBJの透過スペクトルT(λ)を計算することができる。
【0043】
測定光SINにおける時間tの波長λの関係が、λ=f(t)なる関数で表されるとする。最も簡易には、波長λは、時間tに対して、一次関数にしたがってリニアに変化する。物体光SOBJの時間波形IOBJ(t)が、ある時刻tにおいて低下するとき、透過スペクトルT(λ)は、波長λ=f(t)に吸収スペクトルを有することを意味する。
【0044】
なお、処理装置500における処理はこれに限定されない。時間の2つの時間波形IOBJ(t)とIIN(t)の比T(t)=IOBJ(t)/IIN(t)を演算した後に、この時間波形T(t)の変数tをλに変換することで、透過スペクトルT(λ)を算出してもよい。
【0045】
図4(a)、(b)は、光測定装置100における光照射を説明する図である。図4(a)には、被測定物OBJと、測定光SINの瞬時的な照射スポットSPが示される。実際には照射スポットSPの位置は固定であり、被測定物OBJが移動するが、ここでは、これらの相対的な運動を、照射スポットSPが移動するものとして示している。ここでは被測定物OBJや照射スポットSPを円形で示すが、それらの形状は特に限定されない。
【0046】
被測定物OBJの移動方向(図中、右方向)の有効サイズをD[m]、被測定物OBJの移動速度をv[m/s]とする。図1を参照すると、被測定物OBJが、底面側から放射される物体光SOBJが、搬送装置400によって遮蔽されている。つまり被測定物OBJのうち、遮蔽されている範囲は測定に寄与しない。この場合、搬送装置400の開口の幅が、被測定物OBJの有効サイズDとなる。
【0047】
図1において、搬送装置400の被測定物OBJを支持、搬送する部分が透明である場合、被測定物OBJの有効サイズは、被測定物OBJの実際のサイズと一致しうる。
【0048】
図4(a)、(b)に戻る。また被測定物OBJの表面における測定光SINの照射スポットの移動方向のサイズをd[m]とする。d<Dの関係が成り立つものとする。図4(b)には、パルス光が形成する照射エリアAが示される。測定光のパルス幅がTp[s]であるとき、照射エリアAの幅は、パルス幅Tpに対して線形に伸びる。
【0049】
図4(b)には、時間的に隣接する2個のパルスが形成する照射エリアAが示されている。2個の照射エリアAの間隔は、パルス光の繰り返し周期Tr=1/f[s]に応じて長くなる。f[Hz]は、パルス光の繰り返し周波数である。測定光のパルス幅Tpは、光照射の周期Trより小さく、以下の関係が成り立っている。
Tp<Tr
Tp/Trをデューティサイクルとも称する。
【0050】
上述のように、本実施形態において、照明装置200は、搬送装置400による被測定物OBJの搬送と非同期で動作する。このような場合に、少なくともひとつのパルス光は、いかなる状況においても、そのパルスの持続時間(パルス幅)の間、移動中の被測定物OBJに対して、それからはみ出すことなく照射される必要がある。言い換えると、図4(b)において、少なくともひとつの照射エリアAが、被測定物OBJからはみ出すことなく完全に包含される必要がある。このための条件を説明する。
【0051】
図5は、パルス光の照射条件を説明する図である。パルスの測定光SINのデューティサイクルが限りなく1に近い状態(すなわちTp≒Tr)を考える。図5には、時間的に連続するK=2個のパルス光が形成する照射エリアA,Ai+1が両方、被測定物OBJからはみ出すことなく照射される状態を示している。この状態では、以下の式が成り立つ。
(f・(D-d)/v)=2.0
この場合、K=2個のパルス光が、スペクトルの測定に利用される。
【0052】
図6は、被測定物に対するパルス照射の一例を示す図である。被測定物OBJの搬送とパルス光の照射は非同期であるから、図6に示すように、照射エリアAと被測定物OBJの位置関係は左右方向でドリフトする。図6には、時間的に連続する3個(=K+1)のパルス光が形成する照射エリアA,Ai+1,Ai+2が示されている。上記関係式が成り立っている場合、時間軸上でパルス発光のタイミングが前後にずれたとしても、連続する3個の照射エリアA,Ai+1,Ai+2のうち、中央の照射エリアAi+1は、被測定物OBJに完全に包含される。
【0053】
なお、図6の状況において、一部が被測定物OBJからはみ出している照射エリアAについては、図3に示す物体光SOBJの時間波形IOBJ(t)のうち、前半部分が欠落するか、あるいは被測定物OBJの情報を含んでいないこととなる。同様に、照射エリアAi+1についても、図3に示す物体光SOBJの時間波形IOBJ(t)の後半部分が欠落するか、被測定物OBJの情報を含んでいないこととなる。
【0054】
したがって、照射エリアA,Ai+2に対応する物体光SOBJの時間波形IOBJ(t)については、スペクトルの測定には反映させずに、除去することが望ましい。不適切な時間波形IOBJ(t)の除去の方法は限定されない。たとえば不適切な時間波形IOBJ(t)については、A/Dコンバータによる取り込みを行わないこととしてもよい。あるいはA/Dコンバータによって取り込んだ後に、信号処理によって積算処理から除外することとしてもよい。ある時間波形IOBJ(t)が不適切であるかどうかは、その波形にもとづいて判定してもよい。あるいは、被測定物OBJの位置と照射エリアAの位置を監視して判定してもよい。
【0055】
このようにして、図6の状況では、時間的に連続する3個のパルス光のうち中央のひとつを、スペクトルの測定に利用することができる。
【0056】
以上の考察から、いかなる状況においても、1個の照射エリアAが被測定物OBJに包含される条件、言い換えれば、少なくとも1個のパルス光が、その持続時間(パルス幅)Tpの間、被測定物OBJに照射される条件は、
(f・(D-d)/v)≧2.0 …(1)
となる。
【0057】
関係式(1)を満たすように、f、D,d,vを規定することにより、被測定物の配置と照射のタイミングを合わせなくても、移動する被測定物OBJを抜けなく正確に測定できる。
【0058】
式(1)を変形すると、許容される周波数範囲として、式(1a)を得る。
f≧2.0×v/(D-d) …(1a)
【0059】
これまでの説明では、1個の被測定物OBJに対して、1個のパルス光を確実に照射するための条件について考察したが、任意の定数K(K≧2)を導入して式(1a)を一般化すると、式(1b)を得る。
f=K×v/(D-d) …(1b)
式(1b)を満たすように繰り返し周波数fを定めた場合、少なくとも(K-1)個のパルスが、それぞれのパルス幅の全区間にわたり、被測定物OBJに照射されることが保証される。定数Kを大きくするほど、1個の被測定物OBJに照射されるパルス光の個数が増え、S/N比を高めることができる。
【0060】
たとえばK≧10とする場合、式(2)が条件式となる。
(f・(D-d)/v)≧10.0 …(2)
これにより、少なくとも9個のパルス光が、被測定物に対して照射されることが保証される。これにより、少なくとも9回分の光検出器の出力を積算することにより、S/N比を改善できる。Kが小さい場合は、反射スペクトルの測定に適している。
【0061】
たとえばK≧500とすれば、式(3)が条件式となる。
(f・(D-d)/v)≧500.0 …(3)
これにより、少なくとも499個のパルス光が、移動中の被測定物に対して照射されることが保証される。これにより、少なくとも499回分の光検出器の出力を積算することにより、S/N比を改善できる。これは被測定物OBJの透過光を測定する場合において、透過率が低い場合に有効である。
【0062】
たとえばK≧5000とすれば、式(4)が条件式となる。
(f・(D-d)/v)≧5000.0 …(4)
これにより、少なくとも4999個のパルス光が、移動中の被測定物に対して照射されることが保証される。これにより、少なくとも4999回分の光検出器の出力を積算することにより、S/N比を改善できる。これは透過率が非常に低い(たとえば10%以下)被測定物OBJの透過光を測定する場合において有効である。
【0063】
以上が光測定装置100の構成および動作である。続いて光測定装置100に関する実験を説明する。
【0064】
(実験条件)
照明装置200は、アレイ導波路回折格子(AWG: Array Waveguide Grating)を用いたパルス分光光源である。パルス光SINの波長は、900~1300nmであり、伸長時間は0.5μs(2m間隔で50チャンネル)である。パルス光の繰り返し周波数fは可変である。
【0065】
実験は、n=100個の被測定物OBJを対象として、条件1,2の2通りで行った。
【0066】
(条件1)
被測定物OBJの移動方向サイズ(光照射面として露出している部分)D 11mm
被測定物OBJの表面におけるパルス光のスポットサイズd 1mm
被測定物OBJの移動速度v 1m/s
被測定物OBJの間隔 1.57mm
【0067】
光検出器302の検出信号を、デジタイザでデータ取得し、被測定物OBJの移動と同期したゲート信号(幅11msec、周期12.57msec)をデジタイザに入力し、ゲート信号がONの時に、シードレーザでトリガをかけて、取り込み時間0.5μsecでデータを取得した。
【0068】
(条件2)
被測定物OBJの移動方向サイズ(光照射面として露出している部分)D 1.1mm
被測定物OBJの表面におけるパルス光のスポットサイズd 0.1mm
被測定物OBJの移動速度v 10m/s
被測定物OBJの間隔 11.47mm
【0069】
条件2では、幅0.11msec、周期1.257msecのゲート信号を用いた。取り込み時間は0.5μsecである。
【0070】
(実験結果)
図7(a)、(b)は、条件1および条件2での実験結果を示す図である。図7(a)を参照する。f=50Hzでは50%(50個)の被測定物OBJで正確なスペクトルが得なかったが、100Hz,200Hzおよび1kHzでは、100個すべての被測定物OBJについて、正確にスペクトル測定ができている。
【0071】
図7(b)を参照する。f=5kHzでは50個の被測定物OBJについて正確なスペクトルが得られず、f=10kHzでは1個の被測定物OBJについて正確なスペクトル測定が得られなかった。f=20kHzおよび100kHzの場合には、正確にスペクトル測定ができている。
【0072】
この実験結果は、関係式(1)の妥当性を裏付けるものである。
【0073】
(用途)
続いて、実施形態に係る光測定装置100の用途を説明する。光測定装置100は粉末を固形状に固めた飲食品などの製品の検査装置に利用することができる。図8は、光測定装置100の一形態である検査装置800を示す図である。検査装置800は、飲食品などの製品Pを大量に検査し、良否を判定する。飲食品の場合、その透過率は1/100~1/1000のオーダーである。
【0074】
検査装置800は、光測定装置100に関して説明したように、照明装置200、受光装置300、搬送装置400、処理装置500を備える。さら検査装置800は、受光装置810、ビームダンパ820、デジタイザ830、ポンプ840を備える。
【0075】
照明装置200は、光源210、パルスストレッチャ220、照射光学系230を備える。光源210は、少なくとも10nmの連続スペクトル、具体的には900~1300nmの近赤外領域において広い連続スペクトルを有するコヒーレントなパルス光を生成する。光源210は、パルスレーザと非線形素子を含むSC(Super Continuum)光源であってもよい。パルスレーザは、モードロックレーザ、マイクロチップレーザ、ファイバレーザなどを用いることができる。非線形素子は、フォトニッククリスタルファイバなどの非線形ファイバを用いることができる。
【0076】
パルスストレッチャ220は、光源210が生成するパルス光のパルス幅を、時間と波長が1対1で対応する態様で伸張する。パルスストレッチャ220は、1本の波長分散ファイバで構成してもよい。
【0077】
あるいは、パルスストレッチャ220は、パルス光を波長毎に複数の経路に分岐する分波器と、複数の経路毎に異なる遅延を与える複数のファイバ(ファイバ束)と、複数のファイバの出力を再結合する合波器で構成してもよい。分波器は、プレーナ光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuits)で構成することができ、具体的にはアレイ導波路回折格子(AWG: Array Waveguide Grating)で構成してもよい。ファイバ束を構成する複数のファイバは長さが異なっている。
【0078】
搬送装置400の支持部分401は、凹部410を備える。凹部410の内部には、上流(図中左手側)において、マウンタ(不図示)により、複数の製品Pが載置される。搬送装置400は、複数の支持部分401を、それらの配列方向(図中、右方向)に移動させる。なお、凹部410の面のうち、製品Pが載置される面を表面、その反対の面を裏面と称することとする。
【0079】
照射光学系230は、伸張後のパルスを、測定光SINとして照射領域10に照射する。照射領域10は、製品Pの通過箇所、つまり凹部410の通過箇所に定められる。照射光学系230は、レンズなどの透過光学系、ミラーなどの反射光学系あるいはそれらの組み合わせで構成することができる。凹部410が移動することにより、照射領域10を、複数の製品Pが順次、横切ることになる。
【0080】
光源210は、所定の周波数(周期)でパルス光を繰り返し発生する。光源210の動作周波数は、凹部410の移動速度つまり製品Pの搬送速度に応じて定めればよく、1個の製品Pが、照射領域10に存在する間に、複数の測定光SINが同じ製品Pに照射されるように定められる。具体的には、上述した関係式(1)を満たすように、繰り返し周波数fが定められる。
【0081】
光源210の動作は、搬送装置400の動作、言い換えると製品Pの位置とは無関係である。したがって、測定光SINは、製品Pが凹部410内に存在しないときにも、照射領域10に繰り返し照射される。
【0082】
受光装置300は、凹部410の上側に設けられている。凹部410の底面には、貫通孔412が形成される。この貫通孔412は、照射光学系230からの測定光SINを、製品Pの底面に導くために形成される。この構成においては、被測定物である製品Pのうち、スペクトル測定に寄与しうる部分、言い換えると測定光SIN(パルス光)が照射できるように露出している部分は、貫通孔412の部分となる。したがって、製品Pのサイズ(直径)ではなく、貫通孔412のサイズ(直径)が、製品Pの有効サイズDとなる。
【0083】
凹部410の裏面側には、ポンプ840を設けてもよい。ポンプ840は吸引手段を構成しており、凹部410の裏面側を負圧にすることにより、製品Pが、凹部410に吸い付くことになり、製品Pの搬送にともなって製品Pが凹部410から脱落するのを防止できる。
【0084】
受光装置300によって、物体光SOBJの時間波形IOBJ(t)が測定される。また、測定光SINの光軸OA2上には、迷光を防ぐためにビームダンパ820が設けられる。
【0085】
受光装置810は、測定光SINのスペクトルを測定するために設けられる。照射光学系230は、ビームスプリッタなどを利用して、測定光SINの一部を、参照光SREFとして別アームに分岐する。受光装置810は、別アームに分岐された参照光SREFの時間波形IREF(t)を測定する。この時間波形IREF(t)は測定光SINの時間波形IIN(t)と等価である。
【0086】
デジタイザ830は、A/Dコンバータを含み、受光装置300および受光装置810の出力すなわち時間波形IOBJ(t),IREF(t)を所定のサンプリング周波数でサンプリングし、デジタル信号の波形データDOBJ(t),DIN(t)に変換する。デジタル出力の受光装置300、810を用いる場合、デジタイザ830は省略できる。
【0087】
処理装置500は、デジタルの波形データDOBJ(t)およびDIN(t)を処理し、製品Pの透過特性(あるいは吸収特性)T(λ)を取得する。処理装置500は、プロセッサ、メモリ、ハードディスクなどの記憶媒体を含む汎用のあるは専用のコンピュータと、ソフトウェアプログラムの組み合わせで実装することができる。処理装置500の処理については上述した通りである。
【0088】
この検査装置800によれば、製品Pの搬送と照明装置200による光照射のタイミングを合わせなくても、製品Pの透過スペクトルを正確に測定することができる。
【0089】
この検査装置800によれば、製品Pに対して、搬送装置400側から測定光SINを照射するため、物体光SOBJが貫通孔412によって遮られるのを防止でき、より多くの物体光SOBJを受光装置300によって検出することができる。
【0090】
なお、図8の検査装置800では、凹部410内に製品Pが存在しないときに、測定光SINが貫通孔412を通過して、受光装置300側に漏れることとなる。仮に受光装置300が測定光SINの光軸OA2上に配置されていたとすると、製品Pが光軸OA2に存在しないときに、高強度の測定光SINが直接、光検出器302に入射することとなり、好ましくない。そこで受光装置300は、凹部410内に製品Pが存在しないときには、測定光SINが光検出器302に入射しないように構成するとよい。
【0091】
たとえば受光装置300は、被測定物OBJの拡散透過光(物体光SOBJ)のうち測定光SINの光軸OA2からずれた方向(ズレ角をθとする)に放射される成分Sθが光検出器302に入射するように構成される。
【0092】
なお、光軸OA2方向の物体光SOBJが、光検出器302に入射しなければよく、受光装置300の入射アパーチャに入射しても構わない。
【0093】
これにより、凹部410内に製品Pが存在しないときに、受光装置300を保護することができる。この際に、照明装置200の光源210は、搬送装置400の動作と非同期で、フリーランさせておくことが可能であり、また搬送装置400の動作と同期したシャッター制御も不要である。
【0094】
続いて変形例を説明する。
【0095】
(変形例1)
実施形態では、被測定物OBJの透過スペクトルを測定したが、反射スペクトルを測定してもよい。図9は、変形例1に係る光測定装置100Aを示す図である。受光装置300は、被測定物OBJの反射光を物体光SOBJとして検出するように配置される。なお、図9の場合、測定光SINも物体光SOBJも遮蔽されないから、被測定物OBJの有効サイズは、被測定物OBJ自体のサイズと一致する。
【0096】
(変形例2)
図8では、凹部410の内部に被測定物OBJである製品Pが収容されたが、製品Pの支持および搬送の形態はこれに限定されない。製品Pは、ローラコンベヤや単純なベルトに載せた状態で移動してもよい。この場合、隣接する製品Pの間隔は不均一となり、被測定物OBJが照射領域を通過するタイミングの予測は難しい。このような状況においても、式(1)を満たすように照射繰り返し周波数fを定めることで、被測定物OBJのスペクトルを正確に測定できる。
【0097】
(変形例3)
図10は、変形例3に係る光測定装置100Bを示す図である。光測定装置100Bは、落下式(ドロップ式)の移動装置430を備える。被測定物OBJは、移動装置430の落下口432から落下する。被測定物OBJが自由落下する場合、加速度運動を行う。照明装置200は、自由空間を落下中の被測定物OBJに対して測定光SINを繰り返し周波数fで照射する。受光装置300は、被測定物OBJからの透過光または反射光を測定する。この場合、式(1)における速度vは、測定光SINを横切るときの平均速度あるいは最大速度とすればよい。図10の場合、測定光SINも物体光SOBJも遮蔽されないから、被測定物OBJの有効サイズは、被測定物OBJ自体のサイズと一致する。
【0098】
変形例3では、自由空間中の被測定物OBJを測定できるため、光の遮蔽の問題を解決できる。また、被測定物OBJを移動させる搬送手段を省略でき、あるいは構成を簡素化できるという利点がある。
【0099】
(変形例4)
図11は、変形例4に係る光測定装置100Cを示す図である。光測定装置100Cは、移動装置440を備える。移動装置440は、斜面442を有する。被測定物OBJは、斜面442上を滑ることにより、照明装置200の照射範囲を横切るように移動する。受光装置300は、被測定物OBJからの透過光または反射光を測定する。被測定物OBJが加速度運動を行う場合、式(1)における速度vは、測定光SINを横切るときの平均速度あるいは最大速度とすればよい。
【符号の説明】
【0100】
OBJ…被測定物、P…製品、100…光測定装置、200…照明装置、210…光源、220…パルスストレッチャ、230…照射光学系、300…受光装置、302…光検出器、400…搬送装置、401…支持部分、410…凹部、412…貫通孔、430…移動装置、432…落下口、440…移動装置、442…斜面、500…処理装置、800…検査装置、810…受光装置、SIN…測定光、SOBJ…物体光、820…ビームダンパ、830…デジタイザ、840…ポンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11