IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンケン電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-高電圧集積回路 図1
  • 特開-高電圧集積回路 図2
  • 特開-高電圧集積回路 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006932
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】高電圧集積回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/08 20060101AFI20230111BHJP
   H03K 17/695 20060101ALI20230111BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20230111BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H03K17/08 C
H03K17/695
H03K17/687 F
H01L27/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109811
(22)【出願日】2021-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆
【テーマコード(参考)】
5F038
5J055
【Fターム(参考)】
5F038AR00
5F038AV05
5F038AV06
5F038BH02
5F038BH04
5F038BH06
5F038BH07
5F038BH15
5F038DF20
5J055AX25
5J055BX16
5J055CX13
5J055DX22
5J055DX43
5J055DX59
5J055DX72
5J055EY01
5J055EY12
5J055EY21
5J055EZ10
5J055EZ20
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX04
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】ブリッジ回路を駆動する高電圧集積回路において、誘導性負荷による負電圧発生時の誤動作を防止する。
【解決手段】
ブリッジ接続されたスイッチ素子をオンオフ駆動する高電圧集積回路(1)であって、
ブリッジ接続されたスイッチ素子をオンオフ駆動するための駆動信号を生成する制御回路(11)と、ハイサイドスイッチ素子をオンオフ駆動するハイサイドドライバ(13)と、ハイサイドドライバにオンオフ信号となるセット信号とリセット信号を各々送信する2つのレベルシフト回路(20)と、ブリッジ接続されたスイッチ素子の出力端子の負電圧を検出する負電圧検知回路(21)とを備え、負電圧検知回路(21)は、負電圧を検知後に前記リセット信号を送信するレベルシフト回路にリセット信号を送出させることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジ接続されたスイッチ素子をオンオフ駆動する高電圧集積回路であって、
前記スイッチ素子をオンオフ駆動するための駆動信号を生成する制御回路と、
前記ブリッジ接続されたスイッチ素子のハイサイドにあるスイッチ素子をオンオフ駆動するハイサイドドライバと、
前記ハイサイドドライバにオンオフ信号となるセット信号とリセット信号を各々送信する2つのレベルシフト回路と、
前記ブリッジ接続されたスイッチ素子の出力端子の負電圧を検出する負電圧検知回路と、
を備え、
前記負電圧検知回路は、負電圧を検知後に前記リセット信号を送信するレベルシフト回路にリセット信号を送出させることを特徴とする高電圧集積回路。
【請求項2】
前記負電圧検知回路は、前記セット信号を送信するレベルシフト回路に接続され、
前記セット信号を送信するレベルシフト回路に流れる電流方向を検知することで負電位を検知することを特徴とする請求項1記載の高電圧集積回路。
【請求項3】
前記負電圧検知回路は、負電圧検知信号の出力時間を延長させる延長時間部を備えたことを特徴とする請求項1または2項記載の高電圧集積回路。
【請求項4】
前記セット信号を送信するレベルシフト回路に流れる電流の逆流を検知して、前記ハイサイドドライバにオフ信号を送出する強制オフ回路を備えたことを特徴とする請求項1または3項記載の高電圧集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ素子がブリッジ接続されたパワーデバイスを駆動する高電圧集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PWMインバータ、LLC回路などといった応用回路において、フルブリッジあるいはハーフブリッジ構成回路が使用されている。
ブリッジまたはハーフブリッジ回路の負荷が誘導性負荷(モータ、インダクタなど)の場合、スイッチング電流は、ダイオードの順方向回復(forward recovery)特性および配線の浮遊インダクタンス(stray inductance)と相まって、ハーフブリッジの出力ノードのところに負電圧のスパイク電圧を生成する。これらの負電圧のスパイク電圧は、制御回路並びに駆動回路に対して、不具合の発生の原因になる可能性がある。
ここで、高電圧集積回路を確実かつ安定動作させることを目的とした高電圧集積回路が開示されている。(特許文献1)
特許文献1には、高電圧集積回路チップの基板と、該高電圧集積回路チップ内で、電圧源と接地電位の間に直列に接続された前記ハーフブリッジ構成の前記第1のパワートランジスタ及び前記第2のパワートランジスタを駆動する第1のゲートドライバ及び第2のゲートドライバと、前記高電圧集積回路チップ内の寄生ダイオードと直列に接続され、かつ前記高電圧集積回路チップの基板と接地電位の間に配置され、出力ノードでの負の電圧過渡現象に起因して前記高電圧集積回路の前記寄生ダイオードに流れる電流を制限する抵抗器を備えたことを特徴としている。
【0003】
これは、高電圧集積回路チップ(HVIC)の基板とチップの接地電位(すなわち共通電位端子(COM))との間に抵抗器を配置することによって、出力ノードでの負の過渡現象によってチップの固有ダイオードが導通したときに、このダイオードを流れる電流が制限されることによって、負電圧のスパイク電圧の処理が大幅に改善されるという効果があるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3346763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1(従来技術1)のように高電圧集積回路チップ(HVIC)の基板とチップの接地電位(すなわち共通電位端子(COM))との間に抵抗器を配置できる構造となっているとは限らない。
また、スイッチング速度dv/dtを速くすることで、負電圧のスパイク電圧そのものが上昇し、対策としては不充分であった。例えばブートストラップ回路を用いたハーフブリッジ回路において、ハーフブリッジ出力と誘導性負荷との接続点となるVS端子が負電位になり、ブートストラップ回路の整流出力のVB端子が共通電位端子(COMないしLGND)より低い電圧になると、高電圧集積回路チップ内の寄生ダイオードを介して、LGND→GH端子/VS端子→LGND端子経由で電流が流れる。
【0006】
本発明の課題は、ブリッジ回路の負荷との接続点VS電位が負電圧になった場合でもハイサイドドライバ回路が誤動作しないように、簡単な回路構成で強制オフさせて誤ON動作を停止させることを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、ブリッジ接続されたスイッチ素子をオンオフ駆動する高電圧集積回路であって、前記スイッチ素子をオンオフ駆動するための駆動信号を生成する制御回路と、前記ブリッジ接続されたスイッチ素子のハイサイドにあるスイッチ素子をオンオフ駆動するハイサイドドライバと、前記ハイサイドドライバにオンオフ信号となるSET信号とRESET信号を各々送信する2つのレベルシフト回路と、前記ブリッジ接続されたスイッチ素子の出力端子の負電位を検出する負電圧検知回路と、を備え、前記負電圧検知回路は、負電圧を検知後に前記RESET信号を送信するレベルシフト回路にRESET信号を送出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レベルシフトで用いる高圧素子及びシリーズ抵抗を利用することで、負電圧発生有無を検知すると共に、ハイサイドスイッチ素子を誤ON動作となる信号をOFF動作させることで、高電圧集積回路のシステムを安全にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の高電圧集積回路、およびブートストラップ回路およびハーフブリッジ回路と誘導性負荷を含めた構成図である。
図2図2は、実施形態の各部動作を示すタイミングチャートである。
図3図3は、図1に示す実施形態の応用回路図である。
【0010】
以下、本発明の高電圧集積回路の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
(実施形態)
図1は、本発明の高電圧集積回路、およびブートストラップ回路およびハーフブリッジ回路と誘導性負荷を含めた構成図である。図1に示す構成図は、例えば三相モーターを制御する三相PWMインバータの1アーム分を摘出した回路に相当する。
【0012】
図1に示す構成図は、図示しない入力電源Vinの両端にハーフブリッジ回路を構成するハイサイドスイッチ素子QH、ローサイドスイッチ素子QLが接続されている。また、ハイサイドスイッチ素子QHのソースとローサイドスイッチ素子QLのドレインとモーターの巻線L1の一方の端子が接続されている。ハイサイドスイッチ素子QHとローサイドスイッチ素子QLは、図示しない指令値に基づきPWM信号を生成する制御回路11を含む高電圧集積回路10から出力されるオン/オフ信号に応じて相補的にオン/オフする。
【0013】
本発明の高電圧集積回路10は、制御回路11、OR回路OR、1ショット回路12、コンパレータCP、レベルシフト回路20、フリップフロップ回路FF、ハイサイドドライバ13、ローサイドドライバ14から構成されている。
また、レベルシフト回路20は、MOSFETQr、Qs、ダイオードDr、Ds、抵抗R1~R4で構成されている。
ここで、レベルシフト回路20、フリップフロップ回路FF、ハイサイドドライバ13の高圧電源は、ブートストラップ回路を構成するダイオードDb、抵抗RbおよびコンデンサCbから供給される。
【0014】
制御回路11は、図示しない指令値に基づきPWM信号を生成し、相補的にオン/オフ信号の一方の信号をOR回路ORとレベルシフト回路20に送信し、レベルシフト回路20を介してフリップフロップ回路FFからハイサイドドライバ13に出力する。また、他方の信号を直接ローサイドドライバ14に出力する。
これにより、ハイサイドドライバ13の出力信号GHは各々ハイサイドスイッチQHのゲートに出力され、ローサイドドライバ14の出力信号GLはローサイドスイッチQLのゲートに出力される。
【0015】
レベルシフト回路20は、ブートストラップ回路のVB端子とLGND間に接続されている。
低圧側の制御回路11がPWM信号に基づきセットパルス信号とリセットパルス信号を生成して、セットパルス信号をレベルシフト回路20へ出力し、リセットパルス信号はOR回路ORを介してレベルシフト回路20へ出力する。レベルシフト回路20は、このセット/リセットパルス信号を高圧側のフリップフロップ回路FFへ送出し、フリップフロップ回路FFを介してセット/リセットパルス信号をPWM信号に変換してハイサイドドライバ13に伝送する。
レベルシフト回路20は、一方の端子がブートストラップ回路のVB端子に接続された抵抗R1と、抵抗R1の他方の端子とMOSFET Qrのドレインが接続され、ソースが抵抗R3を介してLGNDに接続されたリセット信号送出回路と、一方の端子がブートストラップ回路のVB端子に接続された抵抗R2と、抵抗R2の他方の端子とMOSFET Qsのドレインが接続され、ソースが抵抗R4を介してLGNDに接続されたセット信号送出回路からなる。なお、MOSFET Qsのドレイン・ソース間の寄生ダイオードDs並びに
MOSFET Qrのドレイン・ソース間の寄生ダイオードDrが存在する。
【0016】
制御回路11のコンパレータCPの反転端子は、セット信号送出回路のMOSFET Qsのソースと抵抗R4の接続点に接続され、非反転端子はLGNDに接続されている。ここで、コンパレータCPと抵抗R4は、負電圧検知回路21を構成している。
コンパレータCPの出力はOR回路ORの一方の入力端子に接続され、また1ショット回路12を介してOR路ORの他方の入力端子に接続されている。
なお、OR回路ORの3番目の入力端子は、制御回路11のリセットパルス信号が入力される。
【0017】
図2は、実施形態の各部動作を示すタイミングチャートである。図の上から順に、ハーフブリッジ回路のハイサイドスイッチQHのソースとローサイドスイッチQLのドレイン接続点であるVS端子の電圧波形、巻線L1に流れる電流波形、ハイサイドスイッチQHのゲート駆動信号GH、ローサイドスイッチQLのゲート駆動信号GL、レベルシフト回路のセット信号送出回路のMOSFET Qsのドレイン電圧、リセット信号送出回路のMOSFET Qrのドレイン電圧、コンパレータCPの出力信号、1ショット回路12の出力信号、およびOR回路ORの出力信号を示している。
【0018】
時刻t0にて、図示しない制御回路11からセットパルス信号が送出されて、レベルシフト回路のセット信号送出回路のMOSFET Qsのドレイン電圧がHからLになる。これによりハイサイドスイッチQHのゲート駆動信号GHがLからHとなって、ハイサイドスイッチQHがオンとなり、VS端子の電圧は電源電圧Vinに上昇する。
次に、時刻t1にレベルシフト回路のリセット信号送出回路のMOSFET Qrのドレイン電圧がHからLになると、ハイサイドスイッチQHのゲート駆動信号GHがHからLとなり、時刻t1~t2にかけてVS端子の電圧は一転してLGND電圧に向け下降する。
ここで、時刻t1以降は巻線L1に流れる電流が上昇から下降を始め、時刻t2においては、ハーフブリッジ回路の両スイッチ素子がオフの状態のため、ローサイドスイッチ素子の寄生ダイオードDLを介して回生電流が流れる。これにより、VS端子には寄生ダイオードの順方向電圧の負電圧が生じる。さらに、巻線L1以外の浮遊インピーダンスなどの影響により、VS端子には10V前後、あるいはスイッチング速度が速いと数10Vの負電圧が生じる。
時刻t2のタイミングでブートストラップ回路のコンデンサCbには制御電源Vccから抵抗RbとダイオードDbを介して充電されるが、抵抗Rbの電圧降下が制御電源Vccの電圧を上回り、その結果、VB端子が負電圧まで低下してしまう。ここで、レベルシフト回路にもLGNDからVB端子に向けて電圧が印可されるため、レベルシフト回路のセット信号送出回路の抵抗R4→寄生ダイオードDs→抵抗R2の経路で電流が流れる。
ここで、負電圧検出回路21は、抵抗R4とMOSFET Qsソースとの接続点電圧をコンパレータCPがLGND電位と比較し、負電圧を検知して、出力信号Hを1ショット回路12およびOR回路ORへ出力する。
OR回路ORはレベルシフト回路のリセット信号送出回路のMOSFET Qrへゲート信号Hを送出する。これにより、VS端子が負電圧期間はレベルシフト回路からリセット信号が送出され続けることになり、ハイサイドスイッチ素子QHの誤動作によるオン動作を防止することができる。
【0019】
また、1ショット回路12は、あらかじめ1ショットパルスの時間をハーフブリッジ回路のデッドタイム時間より長い時間設定をしておくことで、、時刻t3までの1ショットパルスを発生してHレベルをOR回路ORへ出力する。すなわち、VS端子に生じる負電圧期間よりも長い時間に延長してリセット信号を送出させることができる。
これにより、VS端子の負電圧期間がスパイクでも、レベルシフト回路からリセット信号が送出され続けることになり、ハイサイドスイッチ素子QHの誤動作によるオン動作を防止することができる。
【0020】
(実施形態の応用例)
図3は、図1に示す第1の実施形態の応用回路図である。図1と異なるのは、PNPトランジスタQd、ダイオードDf、抵抗R6、MOSFET Qfを追加している点である。
この追加部品は、VS端子の負電圧を検出し、ハイサイドドライバの入力信号を強制的にLレベルにしてハイサイドスイッチ素子QHの誤動作を防止する。
【0021】
PNPトランジスタQdのエミッタはLGNDに接続され、ベースは抵抗R4とMOSFET Qsソースとの接続点に接続されている。コレクタはダイオードDfのアノードに接続され、カソードはMOSFET Qfのゲートに接続されている。MOSFET Qfのゲート・ソース間に抵抗R6が接続され、ソースはVS端子に接続されている。MOSFET Qfのドレインはフリップフロップ回路FFの出力端子とハイサイドドライバの入力端子に接続されている。
この追加回路は、VS端子が負電圧になり、VB端子が負電圧になると、レベルシフト回路は、LGNDよりVB端子に向けて電流が逆流する。ここで、抵抗R4の電圧降下がPNPトランジスタQdのベースエミッタ電圧の閾値(約0.6V)に達するとPNPトランジスタQdがオンし、MOSFET Qfのゲートに負電圧の絶対値相当の電圧を印加してオン状態にし、ハイサイドドライバの入力端子を短絡する。これにより、ハイサイドスイッチ素子QHの誤動作によるオン動作を防止することができる。言い換えれば追加回路はハイサイドスイッチ素子QHの強制オフ回路になる。実施例で示した誤動作防止に加えて、より強固にハイサイドスイッチ素子QHの誤動作によるオンを防止することができる。
【0022】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための例示であって、個々の構成、組合せ等を上記のものに特定するものではない。本発明は、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
例えば、高電圧集積回路にブートストラップ回路の一部を内蔵してもよく、より高密度実装をすることができる。
また、ブリッジ回路を構成するスイッチ素子をMOSFETで説明したが、IGBT、またはSiC、GaNなど、その他の半導体素子に置き換えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、PWMインバータに使用されるIPM等に適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1、1a 三相PWMインバータの1アーム分を摘出した回路
10、10a 高電圧集積回路
11 制御回路
12 1ショット回路
13 ハイサイドドライバ
14 ローサイドドライバ
20 レベルシフト回路
21 負電圧検知回路
Cb コンデンサ
CP コンパレータ
Db、Df、Ds、Dr、DH、DL ダイオード
FF フリップフロップ回路
L1 巻線
OR OR回路
QH ハイサイドスイッチ素子
QL ローサイドスイッチ素子
Qd PNPトランジスタ
Qf、Qr、Qs MOSFET
R1~R6 抵抗
図1
図2
図3