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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069340
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】有線式ドローンのケーブル巻取装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/36 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B65H75/36 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181125
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】多田 洋一
【テーマコード(参考)】
3F068
【Fターム(参考)】
3F068AA12
3F068BA11
3F068CA04
3F068DB03
3F068FA06
(57)【要約】
【課題】ケーブルの巻き取りの際に捩じれが生じず、有線式ドローンの空中姿勢に影響を与えることなくケーブルの送り出しと巻き取りをスムーズに行い得る有線式ドローンのケーブル巻取装置を提供する。
【解決手段】有線式ドローン60のケーブル61を収納するケーブル収納容器10と、ケーブル61の一端が有線式ドローン60に繋がれた状態でケーブル収納容器10からのケーブル61の送り出しまたはケーブル収納容器10へのケーブル61の引き込みを行う送り機構部20と、送り機構部20と連動してケーブル収納容器10に8の字状にケーブル61を巻き取る巻取機構部30と、送り機構部20および巻取機構部30を制御する制御部40と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有線式ドローンのケーブルを収納するケーブル収納容器と、
前記ケーブルの一端が前記有線式ドローンに繋がれた状態で前記ケーブル収納容器からの前記ケーブルの送り出しまたは前記ケーブル収納容器への前記ケーブルの引き込みを行う送り機構部と、
前記送り機構部と連動して前記ケーブル収納容器に8の字状に前記ケーブルを巻き取る巻取機構部と、
前記送り機構部および前記巻取機構部を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする有線式ドローンのケーブル巻取装置。
【請求項2】
前記送り機構部は、前記ケーブルの送り出しまたは引き込みのための動力を伝える駆動プーリと、前記駆動プーリを回転駆動させる送りモータと、前記ケーブルの張力を検出する張力検出器と、を備え、
前記制御部は、前記張力検出器の検出値が所定の基準値以上であれば前記送りモータを前記ケーブルの送り出し方向に駆動させる一方、前記張力検出器の検出値が前記基準値未満であれば前記送りモータを前記ケーブルの引き込み方向に駆動させるように制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の有線式ドローンのケーブル巻取装置。
【請求項3】
前記巻取機構部は、前記ケーブルを前記ケーブル収納容器に対して8の字状に落下させるようにガイドする落下位置ガイド部材と、前記落下位置ガイド部材を水平面上の所定の1軸であるX軸の方向に移動させるためのX軸機構部と、前記水平面上で前記X軸と直交するY軸の方向に前記落下位置ガイド部材を移動させるためのY軸機構部と、を有し
前記X軸機構部は、X軸移動用モータを有し、
前記Y軸機構部は、Y軸移動用モータを有し、
前記制御部は、前記X軸移動用モータおよび前記Y軸移動用モータを制御して前記落下位置ガイド部材を前記水平面上で8の字状に移動させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の有線式ドローンのケーブル巻取装置。
【請求項4】
前記ケーブル収納容器には、上方に頂点を有する2個の円錐部が隣接して設けられ、
前記巻取機構部は、前記ケーブルを前記2個の円錐部の周囲を交互に周回させて8の字状に巻き取るように構成されている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の有線式ドローンのケーブル巻取装置。
【請求項5】
前記送り機構部および前記巻取機構部は、複数の支持脚を有する架台の上に設けられ、
前記ケーブル収納容器は、前記複数の支持脚の間の設置空間へ出し入れ自在に構成されている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の有線式ドローンのケーブル巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有線式ドローンのケーブルが弛まないようにケーブルを巻き取る巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震、津波、集中豪雨による洪水等の自然災害や、火災・事故等において、危険箇所に残された要救助者に救助物資を迅速に搬送するために、ドローンを使用することが考えられている(例えば、特許文献1参照)。ドローンは小型の無人航空機であり、複数の回転翼(ローター)を回転させて飛行するものである。特許文献1に記載されたドローンでは、救助物資を着脱自在に係止する救助物資係止手段やカメラが搭載されている。また、このドローンには、各部に電力を供給するための電池が搭載されている。
【0003】
一方、従来、火災現場や事故現場等において救助活動を行うに際して必要とされる様々な機材や工具を搭載した救助工作車が開発されている(例えば、特許文献2参照)。このような救助工作車には、救助活動を行うための機材の一つとして、特許文献1のようなドローンを搭載することが考えられる。
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたような、搭載された電池の電力によって飛行する従来のドローンでは、ドローンに搭載可能な電池の容量に限界があるため、ドローンの飛行時間には制約がある。救助物資を搬送するたびにドローンの電池交換または充電をするとなると、救助活動を円滑に行うことができない。この問題を解決するためには、ドローンの飛行時間に制約を生じさせずに物資を運ぶことが可能な有線式ドローンを適用することが考えられる(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
特許文献3には、有線式ドローンに連結されるケーブルと、有線式ドローンを飛行させるための電力をケーブルを介してドローンに供給する動力供給装置と、を含んだシステムが開示されている。特許文献3のシステムでは、電源を含む動力供給装置と、有線式ドローンの飛行距離に応じて電動機の駆動によりケーブルを繰り出すまたは巻き取るドラム機構とが、車両に備えられている。このような構成を特許文献1のドローンおよび特許文献2の救助工作車に適用することによって、ドローンの飛行時間に制約を生じさせずに、救助工作車から要救助者の場所まで救助物資を運ぶことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-210078号公報
【特許文献2】特開2016-159775号公報
【特許文献3】特開2019-166965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3のドラム機構によるケーブル巻取装置では、ケーブルを一つの回転方向に巻き取り続ける構造になっているために、ケーブルが途中で捩じれやすく、捩じれが生じた状態でケーブルの保管を行うために捩じれ癖がついてしまうという問題点があった。そして、捩じれ癖がついた状態のケーブルを送り出して使用した場合、遠隔操縦する作業者の意図せずに、空中で有線式ドローンが旋回してしまうという問題点があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケーブルの巻き取りの際に捩じれが生じず、有線式ドローンの空中姿勢に影響を与えることなくケーブルの送り出しと巻き取りをスムーズに行い得る有線式ドローンの巻取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、第1の発明は、有線式ドローンのケーブルを収納するケーブル収納容器と、前記ケーブルの一端が前記有線式ドローンに繋がれた状態で前記ケーブル収納容器からの前記ケーブルの送り出しまたは前記ケーブル収納容器への前記ケーブルの引き込みを行う送り機構部と、前記送り機構部と連動して前記ケーブル収納容器に8の字状に前記ケーブルを巻き取る巻取機構部と、前記送り機構部および前記巻取機構部を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
第1の発明によれば、ケーブル収納容器にケーブルを巻き取る際、8の字状に巻き取ることによって、従来のドラム機構のように一つの回転方向にケーブルを巻き取り続けるということがないようにできる。具体的には、時計回りと反時計回りの2種類の回転方向で交互にケーブルの巻き取りを行うことができる。これにより、ケーブルを巻き取る際にケーブルに捩じれが生じないようにできるので、捩じれ癖がつくことなくケーブルをケーブル収納容器に保管することができる。その結果、ケーブル収納容器からケーブルを送り出しつつドローンを所定高度まで上昇させる際において、ケーブルの捩じれが要因となって有線式ドローンが意図せずに旋回してしまう等、有線式ドローンの空中姿勢に影響を与えることを抑制することができる。
【0011】
また、制御部は、送り機構部と巻取機構部とを連動させて巻き取りを行うことにより、送り機構部と巻取機構部との間でケーブルが弛むことなく、スムーズな巻き取りを行うことができる。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、前記送り機構部は、前記ケーブルの送り出しまたは引き込みのための動力を伝える駆動プーリと、前記駆動プーリを回転駆動させる送りモータと、前記ケーブルの張力を検出する張力検出器と、を備え、前記制御部は、前記張力検出器の検出値が所定の基準値以上であれば前記送りモータを前記ケーブルの送り出し方向に駆動させる一方、前記張力検出器の検出値が前記基準値未満であれば前記送りモータを前記ケーブルの引き込み方向に駆動させるように制御することを特徴とする。
【0013】
第2の発明によれば、ケーブルが弛まないように設定された張力の基準値に基づいて、送りモータによって駆動プーリを回転駆動させてケーブルの送り出しまたは引き込みを行うので、有線式ドローンが空中にいる間は常に、ケーブルが弛まないように、ケーブルの送り出しと巻き取りをスムーズに行い得る。
【0014】
第3の発明では、第1または第2の発明において、前記巻取機構部は、前記ケーブルを前記ケーブル収納容器に対して8の字状に落下させるようにガイドする落下位置ガイド部材と、前記落下位置ガイド部材を水平面上の所定の1軸であるX軸の方向に移動させるためのX軸機構部と、前記水平面上で前記X軸と直交するY軸の方向に前記落下位置ガイド部材を移動させるためのY軸機構部と、を有し、前記X軸機構部は、X軸移動用モータを有し、前記Y軸機構部は、Y軸移動用モータを有し、前記制御部は、前記X軸移動用モータおよび前記Y軸移動用モータを制御して前記落下位置ガイド部材を前記水平面上で8の字状に移動させることを特徴とする。
【0015】
第3の発明によれば、落下位置ガイド部材によってケーブルをケーブル収納容器に対して落下させたい位置にスムーズにガイドすることができる。また、X軸機構部とY軸機構部によって落下位置ガイド部材を水平面上の任意の位置に容易に移動させることができる。その結果、落下位置ガイド部材を正確に水平面上で8の字を描くように位置移動させることができるので、ケーブルをケーブル収納容器に対して正確に8の字に巻き取ることができる。
【0016】
第4の発明では、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記ケーブル収納容器には、上方に頂点を有する2個の円錐部が隣接して設けられ、前記巻取機構部は、前記ケーブルを前記2個の円錐部の周囲を交互に周回させて8の字状に巻き取るように構成されていることを特徴とする。
【0017】
第4の発明によれば、ケーブル収納容器へケーブルを巻き取っていく途中で、ケーブル収納容器や巻取機構部に何等かの要因によって水平振動が加わった場合であっても、ケーブルは2個の円錐部の周囲から大きく水平方向にずれることがないようにできる。これにより、ケーブル収納容器に対してケーブルをより正確に8の字に巻き取ることができる。また、ケーブル収納容器でケーブルを保管中にケーブル収納容器を揺らした場合であっても、ケーブルの8の字が崩れないようにできる。これにより、ケーブル収納容器からのケーブルの送り出しを常にスムーズに行うことができる。
【0018】
第5の発明では、第1~第4のいずれか1つの発明において、前記送り機構部および前記巻取機構部は、複数の支持脚を有する架台の上に設けられ、前記ケーブル収納容器は、前記複数の支持脚の間の設置空間へ出し入れ自在に構成されていることを特徴とする。
【0019】
第5の発明によれば、送り機構部や巻取機構部が設けられた架台から、ケーブル収納容器のみを別の場所に移動させることができる。これにより、ケーブル収納容器に収納されたケーブルの状態確認が容易にできる。また、ケーブルの種類や長さの変更を、ケーブル収納容器ごと交換することによって容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る有線式ドローンのケーブル巻取装置によれば、ケーブルを巻き取る際に、捩じれ癖がつくことなくケーブルをケーブル収納容器に保管することができる。その結果、ケーブルの捩じれが要因となってドローンが意図せずに空中で旋回してしまう等、ドローンの空中姿勢に影響を与えることを抑制することができる。また、制御部は、送り機構部と巻取機構部とを連動させてスムーズな巻き取りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る有線式ドローンのケーブル巻取装置の斜視図である。
図2】ケーブル収納容器を示す一部破断斜視図である。
図3】送り機構部およびその周辺を示す要部拡大斜視図である。
図4】巻取機構部およびその周辺を示す要部拡大斜視図である。
図5】本実施形態に係る有線式ドローンのケーブル巻取装置の構成を示す模式図である。
図6】巻取機構部とケーブル収納容器との位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る有線式ドローンのケーブル巻取装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1には、本発明の一実施形態に係る有線式ドローン60のケーブル巻取装置1の斜視図が示されている。本実施形態の有線式ドローン60およびそのケーブル巻取装置1は、例えば、火災現場や事故現場等において救助活動を行うに際して必要とされる様々な機材や工具を搭載した救助工作車(図示省略)に搭載されるものである。救助工作車が現場に到着すると、有線式ドローン60およびケーブル巻取装置1は、危険箇所に残された要救助者に救助物資を搬送したり、状況確認したりするために使用される。
【0024】
本実施形態のケーブル巻取装置1は、有線式ドローン60のケーブル61を収納するケーブル収納容器10と、架台50と、送り機構部20と、巻取機構部30と、制御部40と、を備えている。
【0025】
ケーブル収納容器10は、図2に示すように、長円形の底壁部12と、底壁部12の周縁部に沿って立設された側壁部13とを有し、上部が開口した箱状となっている。ケーブル収納容器10の底壁部12には、上方に頂点P1(P2)を有する2個の円錐部11が、底壁部12の長手方向に隣接して設けられている。これら2個の円錐部11の周囲に沿って、ケーブル61は8の字状に巻き取られ、収納されるようになっている。ケーブル収納容器10は、ケーブル61が収納された状態で、ケーブル巻取装置1の他の部分と独立して運搬が可能になっている。
【0026】
架台50は、図1に示すように、4本の支持脚51と、これら4本の支持脚51の上端部が平面視長方形の頂点となるように、支持脚51の上端部同士を連結する2本の第1水平部材52および2本の第2水平部材53を有している。2本の第1水平部材52は、架台50を平面視したときに長方形の長辺部分となるように配設されている。また、2本の第2水平部材53は、架台50を平面視したときに長方形の短辺部分となるように配設されている。このような構造の架台50は、救助工作車の所定箇所に固定してもよいし、救助工作車に対して積み降ろしできるようにしてもよい。架台50の複数の支持脚51の間は、ケーブル収納容器10用の設置空間となっており、ケーブル収納容器10は、この設置空間へ出し入れ自在に構成されている。架台50の上には、送り機構部20と巻取機構部30とが設けられている。
【0027】
送り機構部20は、図1図3および図5に示すように、ケーブル61の一端が有線式ドローン60に繋がれた状態でケーブル収納容器10からのケーブル61の送り出し、またはケーブル収納容器10へのケーブル61の引き込みを行うものである。送り機構部20は、対向する2本の第1水平部材52に橋を架けるように立設された門型の送り機構ベース部54に、取り付けられている。この送り機構ベース部54の中央部には、上下貫通状の通し孔部55が設けられている。
【0028】
送り機構部20は、通し孔部55の上方に位置するように送り機構ベース部54に立設される支持部21と、通し孔部55の上方に位置するように支持部21に取り付けられる駆動プーリ22および押圧プーリ24と、送り機構ベース部54に取り付けられて駆動プーリ22を回転駆動させる送りモータ23と、押圧プーリ24を駆動プーリ22側に付勢する付勢部材25と、駆動プーリ22および押圧プーリ24の上方に位置するように支持部21に取り付けられる張力検出器26と、送り機構ベース部54に立設されて張力検出器26の上方に位置するようにガイド孔部28が設けられた保持部材27と、を有している。
【0029】
駆動プーリ22と押圧プーリ24との間には、ケーブル61が通される。コイルスプリング等の付勢部材25によって押圧プーリ24が駆動プーリ22側に付勢されているので、ケーブル61は、駆動プーリ22に押し付けられるようになっている。これにより、送りモータ23によって駆動プーリ22が正転方向または逆転方向に回転駆動されると、ケーブル61は、送り出し方向または引き込み方向に移動されるようになっている。
【0030】
張力検出器26は、例えば2個のガイドローラと、これらガイドローラの間に配設された1個の張力検出ローラとを有し、ガイドローラおよび張力検出ローラにケーブル61が通されるようになっている。
【0031】
ガイド孔部28は、送り機構部20の最上部に配設され、空中の有線式ドローン60から下方に延びたケーブル61が最初に通される部分である。ガイド孔部28は、円形状に形成され、ガイド孔部28を形成する周壁部は滑らかに形成されている。また、有線式ドローン60がケーブル巻取装置1に対して水平方向へ大きく移動した際には、この周壁部にはケーブル61が屈曲して強い力がかかる場合もあるので、ガイド孔部28が形成される保持部材27は、ガイド孔部28が位置ずれしないように、送り機構ベース部54に強固に取り付けられている。
【0032】
送り機構部20は上述のように構成されており、空中の有線式ドローン60から下方に延びたケーブル61は、ガイド孔部28、張力検出器26、駆動プーリ22、通し孔部55の順に通されて巻取機構部30の方へ延びるようになっている。張力検出器26は、ガイド孔部28の下方に配設されているので、有線式ドローン60がケーブル巻取装置1に対して水平方向へ大きく移動した場合であっても、ケーブル61が張力検出ローラから外れることがなく、張力検出器26は、常に適切な状態でケーブル61の張力を検出することができるようになっている。
【0033】
巻取機構部30は、図1図4および図5に示すように、ケーブル61をケーブル収納容器10に対して8の字状に落下させるようにガイドする落下位置ガイド部材31と、落下位置ガイド部材31を水平面上の所定の1軸であるX軸の方向に移動させるためのX軸機構部32と、水平面上でX軸と直交するY軸の方向に落下位置ガイド部材31を移動させるためのY軸機構部33と、を有している。本実施形態において、X軸方向とは、第1水平部材52の延びる方向である。また、Y軸方向とは、第2水平部材53の延びる方向である。
【0034】
落下位置ガイド部材31は、ベース部31bと、ベース部31bに取り付けられる円錐筒部31aと、を有している。円錐筒部31aは下方に向かって孔径が小さくなるように形成されており、ここにケーブル61が通されるようになっている。
【0035】
X軸機構部32は、2本の第1水平部材52の上面のそれぞれに、第1水平部材52の延びる方向であるX軸方向に沿って取り付けられるガイドレール部32aおよび歯付ベルト部32bと、第1水平部材52のX軸方向両端部に設けられて歯付ベルト部32bが掛け渡されるベルト用プーリ32eとを有している。また、X軸機構部32は、一対の歯付ベルト部32bを連動させるために、Y軸方向に対向する2個のベルト用プーリ32eを連結する連動軸32cと、連動軸32cを回転駆動させるX軸移動用モータ32dと、を有している。
【0036】
Y軸機構部33は、X軸機構部32の一対のガイドレール部32aおよび歯付ベルト部32bに両端下部が取り付けられてY軸方向に延びる支持ケース33cと、Y軸方向に延びるように支持ケース33cの内部に配設される歯付ベルト33bと、支持ケース33cのY軸方向両端部に設けられて歯付ベルト33bが掛け渡されるベルト用プーリ33eと、支持ケース33cの側面にY軸方向に延びるように取り付けられるガイドレール部33aと、を有している。また、Y軸機構部33は、一方のベルト用プーリ32eを回転駆動させるY軸移動用モータ33dを有している。
【0037】
支持ケース33cの側面であってガイドレール部33aの近傍には、ガイドレール部33aに沿って延びるスリット部33fが形成されている。落下位置ガイド部材31のベース部31bは、ガイドレール部33aに対してスライド自在に取り付けられる。また、ベース部31bの端部は、スリット部33fから支持ケース33cの内部に挿入されて歯付ベルト33bと連結されている。
【0038】
支持ケース33cは、X軸移動用モータ32dを回転駆動させることによってX軸方向に移動自在となっている。支持ケース33cは、移動の際、門型の送り機構ベース部54の内側を通るようになっており、送り機構ベース部54と干渉しないようになっている。また、支持ケース33cの側面に取り付けられた落下位置ガイド部材31は、Y軸移動用モータ33dを回転駆動させることによってY軸方向に移動自在となっている。落下位置ガイド部材31は、X軸移動用モータ32dとY軸移動用モータ33dのいずれを回転駆動させた場合であっても、同一水平面上を動くようになっている。落下位置ガイド部材31は、常に送り機構ベース部54の通し孔部55よりも下方の位置で動かされるようになっている。
【0039】
図5に示すように、ケーブル61は、一端が電源ユニット62に接続され、他端が有線式ドローン60に接続されるようになっている。電源ユニット62から延びるケーブル61は、まずケーブル収納容器10を通り、次に、落下位置ガイド部材31、通し孔部55、押圧プーリ24および駆動プーリ22、張力検出器26、ガイド孔部28を順に通って有線式ドローン60と接続されるようになっている。そして、ケーブル61は、電源ユニット62から有線式ドローン60へ駆動用電力や制御信号を送ったり、有線式ドローン60から電源ユニット62へ搭載カメラの映像データを送ったりするようになっている。
【0040】
制御部40は、図1に示すように、架台50に設けられており、送り機構部20および巻取機構部30を連動させて制御するように構成されている。制御部40は、図5に示すように、送り機構部20の張力検出器26および送りモータ23、巻取機構部30のX軸移動用モータ32dおよびY軸移動用モータ33dと、それぞれ信号線41によって電気的に接続されている。
【0041】
制御部40は、張力検出器26の検出値が所定の基準値以上であれば送りモータ23をケーブル61の送り出し方向に駆動させる一方、張力検出器26の検出値が当該基準値未満であれば送りモータ23をケーブル61の引き込み方向に駆動させるように制御する。この基準値は、有線式ドローン60の揚力よりは小さく、かつ、ケーブル61が弛まない程度の値に設定される。
【0042】
制御部40は、張力検出器26の検出値が基準値未満になったために送りモータ23をケーブル61の引き込み方向に駆動させる際、落下位置ガイド部材31を水平面上で8の字状に移動させるように、X軸移動用モータ32dおよびY軸移動用モータ33dを制御する。より具体的には、図1および図6に示すように、制御部40がX軸機構部32のX軸移動用モータ32dを回転駆動させると、一対の歯付ベルト部32bが回転駆動され、それに伴ってY軸機構部33の歯付ベルト33b(支持ケース33c)が図6のA方向に移動する。つまり、制御部40がX軸移動用モータ32dを回転駆動させると、歯付ベルト33bに取り付けられた落下位置ガイド部材31がX軸方向に移動するようになっている。
【0043】
また、制御部40がY軸機構部33のY軸移動用モータ33dを回転駆動させると、歯付ベルト33bが回転駆動され、それに伴って、歯付ベルト33bに取り付けられた落下位置ガイド部材31が図6のB方向に移動する。つまり、制御部40がY軸移動用モータ33dを回転駆動させると、落下位置ガイド部材31がY軸方向に移動するようになっている。
【0044】
制御部40は、X軸移動用モータ32dおよびY軸移動用モータ33dを連携して駆動制御することで、落下位置ガイド部材31を、ケーブル収納容器10の2個の円錐部11の周囲を交互に周回させるようになっている。これにより、巻取機構部30の落下位置ガイド部材31は、ケーブル61をケーブル収納容器10の2個の円錐部11の周囲を交互に周回させて8の字状に巻き取るように構成されている。制御部40は、図6に示すように、ケーブル61を8の字状に巻き取る際、落下位置ガイド部材31のX軸方向の移動距離L1が落下位置ガイド部材31のY軸方向の移動距離L2の約2倍の移動距離となるように、X軸移動用モータ32dおよびY軸移動用モータ33dを駆動制御する。
【0045】
制御部40は、張力検出器26の検出値が基準値以上になったために送りモータ23をケーブル61の送り出し方向に駆動させる際にも、X軸移動用モータ32dおよびY軸移動用モータ33dを連携して駆動制御する。この駆動制御は、送りモータ23をケーブル61の引き込み方向に駆動させる場合と同様に、落下位置ガイド部材31を、ケーブル収納容器10の2個の円錐部11の周囲を交互に周回させて8の字状に送り出すようにしてもよい。
【0046】
一方で、ケーブル61の送り出しの場合は、ケーブル61の捩じれを発生させることはないので、8の字状に送り出す必要性は高くない。そこで、送りモータ23をケーブル61の送り出し方向に駆動させる際には、図6に示すように、ケーブル収納容器10の2個の円錐部11のうち、ケーブル61において収納状態から持ち上げられようとしている部分がある方の円錐部11の頂点の上に落下位置ガイド部材31(円錐筒部31aの中心)を移動させるようにすればよい。つまり、制御部40は、ケーブル61の送り出しに合わせて落下位置ガイド部材31(円錐筒部31aの中心)が2個の円錐部11の頂点P1の上方位置と頂点P2の上方位置とを交互に移動するように、落下位置ガイド部材31を直線的に移動制御する。落下位置ガイド部材31(円錐筒部31aの中心)が、ケーブル61において収納状態から持ち上げられようとしている部分がある方の円錐部11の頂点の上方位置にあることにより、上方の頂点に向かって径が小さくなる円錐部11の外周面に沿ってスムーズにケーブル61を送り出すことができる。
【0047】
以上のとおり、本実施形態に係る有線式ドローン60のケーブル巻取装置1によれば、有線式ドローン60のケーブル61を収納するケーブル収納容器10と、ケーブル61の一端が有線式ドローン60に繋がれた状態でケーブル収納容器10からのケーブル61の送り出しまたはケーブル収納容器10へのケーブル61の引き込みを行う送り機構部20と、送り機構部20と連動してケーブル収納容器10に8の字状にケーブル61を巻き取る巻取機構部30と、送り機構部20および巻取機構部30を制御する制御部40と、を備えたことにより、ケーブル収納容器10にケーブル61を巻き取る際、8の字状に巻き取ることによって、時計回りと反時計回りの2種類の回転方向で交互にケーブル61の巻き取りを行うことができる。これにより、ケーブル61を巻き取る際にケーブル61に捩じれが生じないようにできるので、捩じれ癖がつくことなくケーブル61をケーブル収納容器10に保管することができる。その結果、ケーブル収納容器10からケーブル61を送り出しつつ有線式ドローン60を所定高度まで上昇させる際において、ケーブル61の捩じれが要因となって有線式ドローン60が意図せずに旋回してしまう等、有線式ドローン60の空中姿勢に影響を与えることを抑制することができる。
【0048】
また、制御部40は、送り機構部20と巻取機構部30とを連動させて巻き取りを行うことにより、送り機構部20と巻取機構部30との間でケーブル61が弛むことなく、スムーズな巻き取りを行うことができる。
【0049】
また、送り機構部20は、ケーブル61の送り出しまたは引き込みのための動力を伝える駆動プーリ22と、駆動プーリ22を回転駆動させる送りモータ23と、ケーブル61の張力を検出する張力検出器26と、を備え、制御部40は、張力検出器26の検出値が所定の基準値以上であれば送りモータ23をケーブル61の送り出し方向に駆動させる一方、張力検出器26の検出値が当該基準値未満であれば送りモータ23をケーブル61の引き込み方向に駆動させるように制御することにより、有線式ドローン60が空中にいる間は常に、ケーブル61が弛まないように、ケーブル61の送り出しと巻き取りをスムーズに行い得る。
【0050】
また、巻取機構部30は、ケーブル61をケーブル収納容器10に対して8の字状に落下させるようにガイドする落下位置ガイド部材31と、落下位置ガイド部材31を水平面上の所定の1軸であるX軸の方向に移動させるためのX軸機構部32と、当該水平面上でX軸と直交するY軸の方向に落下位置ガイド部材31を移動させるためのY軸機構部33と、を有し、X軸機構部32は、X軸移動用モータ32dを有し、Y軸機構部33は、Y軸移動用モータ33dを有し、制御部40は、X軸移動用モータ32dおよびY軸移動用モータ33dを制御して落下位置ガイド部材31を水平面上で8の字状に移動させるので、落下位置ガイド部材31を正確に水平面上で8の字を描くように位置移動させることができる。これにより、ケーブル61をケーブル収納容器10に対して正確に8の字に巻き取ることができる。
【0051】
また、ケーブル収納容器10には、上方に頂点を有する2個の円錐部11が隣接して設けられ、巻取機構部30は、ケーブル61を2個の円錐部11の周囲を交互に周回させて8の字状に巻き取るように構成されているので、ケーブル収納容器10へケーブル61を巻き取っていく途中で、ケーブル収納容器10や巻取機構部30に何等かの要因によって水平振動が加わった場合であっても、ケーブル61は2個の円錐部11の周囲から大きく水平方向にずれることがないようにできる。これにより、ケーブル収納容器10に対してケーブル61をより正確に8の字に巻き取ることができる。また、ケーブル収納容器10でケーブル61を保管中にケーブル収納容器10を揺らした場合であっても、ケーブル61の8の字が崩れないようにできる。これにより、ケーブル収納容器10からのケーブル61の送り出しを常にスムーズに行うことができる。
【0052】
また、送り機構部20および巻取機構部30は、複数の支持脚51を有する架台50の上に設けられ、ケーブル収納容器10は、複数の支持脚51の間の設置空間へ出し入れ自在に構成されているので、送り機構部20や巻取機構部30が設けられた架台50から、ケーブル収納容器10のみを別の場所に移動させることができる。これにより、ケーブル収納容器10に収納されたケーブル61の状態確認が容易にできる。また、ケーブル61の種類や長さの変更を、ケーブル収納容器10ごと交換することによって容易に行うことができる。
【0053】
今回、開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、前記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0054】
本実施形態では、巻取機構部30は、落下位置ガイド部材31を水平面上の所定の1軸であるX軸の方向に移動させるためのX軸機構部32と、当該水平面上でX軸と直交するY軸の方向に落下位置ガイド部材31を移動させるためのY軸機構部33とを有していたが、本発明はこれに限らず、8の字に巻き取ることが可能な機構であれば、他の構造であってもよい。例えば、中心部に揺動軸が設けられた直線状のレール部材と、当該レール部材上をスライド移動する落下位置ガイド部材とを設け、揺動軸を中心にレール部材を揺動させるとともに落下位置ガイド部材をレール部材上でスライド移動させることにより、全体として落下位置ガイド部材が8の字に動くようにし、この落下位置ガイド部材にケーブルを通すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 ケーブル巻取装置
10 ケーブル収納容器
11 円錐部
20 送り機構部
22 駆動プーリ
23 送りモータ
26 張力検出器
30 巻取機構部
31 落下位置ガイド部材
32 X軸機構部
32d X軸移動用モータ
33 Y軸機構部
33d Y軸移動用モータ
40 制御部
50 架台
51 支持脚
60 有線式ドローン
61 ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6