(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069345
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】懸架装置
(51)【国際特許分類】
B60G 15/07 20060101AFI20230511BHJP
B60G 17/015 20060101ALI20230511BHJP
F16F 9/02 20060101ALI20230511BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20230511BHJP
F16F 1/38 20060101ALI20230511BHJP
F16F 3/10 20060101ALI20230511BHJP
F16F 15/023 20060101ALI20230511BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B60G15/07
B60G17/015 C
F16F9/02
F16F9/32 A
F16F1/38 S
F16F3/10 A
F16F15/023 Z
F16F15/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181134
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【テーマコード(参考)】
3D301
3J048
3J059
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA48
3D301DA08
3D301DA33
3D301DB02
3D301DB11
3D301DB15
3D301DB16
3D301DB37
3D301DB40
3J048AA02
3J048AB01
3J048AD05
3J048BA19
3J048BC02
3J048BE02
3J048CB02
3J048DA01
3J048EA15
3J059AE04
3J059BA01
3J059BA42
3J059BB04
3J059BB09
3J059BC02
3J059BC06
3J059BD01
3J059CB01
3J059DA34
3J059GA03
3J069AA50
3J069CC01
3J069CC34
3J069DD47
3J069EE50
(57)【要約】
【課題】かさ張りを抑える。
【解決手段】二重筒状のアッパーベース11及びロアベース12と、ダンパー51のロッド52の上端部に連結される内側部材13と、アッパーベース及びロアベースそれぞれの内筒21、25と、内側部材と、を各別に連結する第1弾性体14及び第2弾性体15と、アッパーベース及びロアベースそれぞれの外筒22、26を互いに連結する第3弾性体16と、アッパーベース、ロアベース、第1弾性体、第2弾性体、及び第3弾性体に囲まれた空気室Xに、加圧エアを給排する給排機構17と、を備え、空気室は、加圧エアの給排に伴い、第1弾性体、第2弾性体、及び第3弾性体が弾性変形しつつ拡縮し、アッパーベース及びロアベースが上下方向に相対移動し、給排機構により空気室から加圧エアを排気したときに、第1弾性体、第2弾性体、及び第3弾性体が圧縮変形しながら、アッパーベース及びロアベースが上下方向に相対的に接近移動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に連結される二重筒状のアッパーベースと、
前記アッパーベースの下方に前記アッパーベースに対して相対的に上方移動可能に設けられ、かつコイルスプリングの上端部を支持する二重筒状のロアベースと、
前記アッパーベースおよび前記ロアベースそれぞれの内筒より径方向の内側に設けられるとともに、ダンパーのロッドの上端部に連結される内側部材と、
前記アッパーベース、および前記ロアベースそれぞれの内筒と、前記内側部材と、を各別に連結する第1弾性体、および第2弾性体と、
前記アッパーベース、および前記ロアベースそれぞれの外筒を互いに連結する第3弾性体と、
前記アッパーベース、前記ロアベース、前記第1弾性体、前記第2弾性体、および前記第3弾性体に囲まれた空気室に、加圧エアを給排する給排機構と、を備え、
前記空気室は、加圧エアの給排に伴い、前記第1弾性体、前記第2弾性体、および前記第3弾性体が弾性変形しつつ拡縮し、前記アッパーベースおよび前記ロアベースが上下方向に相対移動し、
前記給排機構により前記空気室から加圧エアを排気したときに、前記第1弾性体、前記第2弾性体、および前記第3弾性体が圧縮変形しながら、前記アッパーベースおよび前記ロアベースが上下方向に相対的に接近移動する、懸架装置。
【請求項2】
前記空気室は、前記アッパーベースおよび前記ロアベースそれぞれの内筒を径方向に跨いでいる、請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
前記アッパーベースと前記ロアベースとの間に、前記アッパーベースおよび前記ロアベースを上下方向に離す向きに付勢する付勢部材が設けられている、請求項1または2に記載の懸架装置。
【請求項4】
前記アッパーベースおよび前記ロアベースのうちのいずれか一方の内筒には、径方向の外側に向けて突出したガイド突起が設けられ、
前記給排機構により前記空気室から加圧エアが排気されて、前記アッパーベースおよび前記ロアベースが上下方向に相対的に接近移動したときに、前記ガイド突起が、前記アッパーベースおよび前記ロアベースのうちのいずれか他方の外筒の内周面に当接、若しくは近接する、請求項1から3のいずれか1項に記載の懸架装置。
【請求項5】
前記アッパーベースは、内筒および外筒の各上端開口を一体に閉塞する頂壁を有し、
前記ロアベースは、内筒および外筒の各下端開口を一体に閉塞する底壁を有し、
前記第1弾性体および前記第2弾性体には、前記給排機構により前記空気室から加圧エアが排気されて、前記アッパーベースおよび前記ロアベースが上下方向に相対的に接近移動したときに、前記頂壁および前記底壁に各別に当接する第1弾性突起および第2弾性突起が形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の懸架装置。
【請求項6】
前記アッパーベースおよび前記ロアベースのうちのいずれか一方には、前記給排機構により前記空気室から加圧エアが排気されて、前記アッパーベースおよび前記ロアベースが上下方向に相対的に接近移動したときに、前記アッパーベースおよび前記ロアベースのうちのいずれか他方に当接する第3弾性突起が設けられている、請求項1から5のいずれか1項に記載の懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸架装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1の
図4に示されるように、車体側に連結されるアッパーベース(41a)と、アッパーベースの下方に設けられたロアベース(16)と、アッパーベースとロアベースとの間に設けられ、ダンパーのロッド(3a)の上端部に連結される内側部材(26、43)と、アッパーベースおよび内側部材を互いに連結する弾性体(41)と、ロアベースの下方に設けられた弾性膜(17)と、弾性膜内に加圧エアを給排する給排機構と、を備え、弾性膜内に加圧エアを給排して弾性膜を拡縮することで、車高を調整することが可能な懸架装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の懸架装置では、かさ張りを抑えることが困難であるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、かさ張りを抑えることができる懸架装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の懸架装置は、車体側に連結される二重筒状のアッパーベースと、前記アッパーベースの下方に前記アッパーベースに対して相対的に上方移動可能に設けられ、かつコイルスプリングの上端部を支持する二重筒状のロアベースと、前記アッパーベースおよび前記ロアベースそれぞれの内筒より径方向の内側に設けられるとともに、ダンパーのロッドの上端部に連結される内側部材と、前記アッパーベース、および前記ロアベースそれぞれの内筒と、前記内側部材と、を各別に連結する第1弾性体、および第2弾性体と、前記アッパーベース、および前記ロアベースそれぞれの外筒を互いに連結する第3弾性体と、前記アッパーベース、前記ロアベース、前記第1弾性体、前記第2弾性体、および前記第3弾性体に囲まれた空気室に、加圧エアを給排する給排機構と、を備え、前記空気室は、加圧エアの給排に伴い、前記第1弾性体、前記第2弾性体、および前記第3弾性体が弾性変形しつつ拡縮し、前記アッパーベースおよび前記ロアベースが上下方向に相対移動し、前記給排機構により前記空気室から加圧エアを排気したときに、前記第1弾性体、前記第2弾性体、および前記第3弾性体が圧縮変形しながら、前記アッパーベースおよび前記ロアベースが上下方向に相対的に接近移動する。
【0007】
給排機構により空気室に加圧エアが供給された状態で、振動が入力されると、コイルスプリングだけでなく、第1弾性体、第2弾性体、および第3弾性体も弾性変形しながら、アッパーベースおよびロアベースが相対変位し、かつダンパーによる減衰力が、内側部材を介して第1弾性体、第2弾性体、および第3弾性体を伝播することで低減されて車体側に到達する。これにより、車両の通常走行時には、空気室に加圧エアを供給しておくことで、乗り心地性を確保することができる。
給排機構により空気室から加圧エアを排気すると、第1弾性体、第2弾性体、および第3弾性体が圧縮変形しながら、アッパーベースおよびロアベースが上下方向に相対的に接近移動するため、第1弾性体、第2弾性体、および第3弾性体の各ばねが高くなる。これにより、車両の高速走行時には、空気室から加圧エアを排気しておくことで、第1弾性体、第2弾性体、および第3弾性体の各ばねが高くなって、主にコイルスプリングのばねが発現することになるとともに、ダンパーによる減衰力が、第1弾性体、第2弾性体、および第3弾性体を伝播するときに低減されにくく、高いまま車体側に到達することとなり、車両を安定させることができる。
空気室が、アッパーベースと、ロアベースと、第1弾性体と、第2弾性体と、第3弾性体と、により囲まれており、弾性膜のような別部材を設けていないので、懸架装置のかさ張りを抑えることができる。
第1弾性体および第2弾性体だけでなく、第3弾性体も備えているので、懸架装置のばねを容易に調整することができ、また、第3弾性体が、アッパーベース、およびロアベースそれぞれの外筒を互いに連結するので、空気室を容易に広く確保することができる。
【0008】
前記空気室は、前記アッパーベースおよび前記ロアベースそれぞれの内筒を径方向に跨いでもよい。
【0009】
空気室が、アッパーベースおよびロアベースそれぞれの内筒を径方向に跨いでいるので、空気室の広さを容易に確保することができる。
【0010】
前記アッパーベースと前記ロアベースとの間に、前記アッパーベースおよび前記ロアベースを上下方向に離す向きに付勢する付勢部材が設けられてもよい。
【0011】
アッパーベースおよびロアベースを上下方向に離す向きに付勢する付勢部材が設けられているので、空気室に供給する加圧エアの圧力を過度に高くしなくても、アッパーベースおよびロアベースを上下方向に離間した状態に保持しやすくなる。
【0012】
前記アッパーベースおよび前記ロアベースのうちのいずれか一方の内筒には、径方向の外側に向けて突出したガイド突起が設けられ、前記給排機構により前記空気室から加圧エアが排気されて、前記アッパーベースおよび前記ロアベースが上下方向に相対的に接近移動したときに、前記ガイド突起が、前記アッパーベースおよび前記ロアベースのうちのいずれか他方の外筒の内周面に当接、若しくは近接してもよい。
【0013】
アッパーベースおよびロアベースのうちのいずれか一方の内筒に、ガイド突起が設けられているので、空気室から加圧エアが排気されたときに、ガイド突起が、アッパーベースおよびロアベースのうちのいずれか他方の外筒の内周面に当接、若しくは近接することにより、アッパーベースおよびロアベースが相対的に径方向に位置ずれするのを抑制することができる。
【0014】
前記アッパーベースは、内筒および外筒の各上端開口を一体に閉塞する頂壁を有し、前記ロアベースは、内筒および外筒の各下端開口を一体に閉塞する底壁を有し、前記第1弾性体および前記第2弾性体には、前記給排機構により前記空気室から加圧エアが排気されて、前記アッパーベースおよび前記ロアベースが上下方向に相対的に接近移動したときに、前記頂壁および前記底壁に各別に当接する第1弾性突起および第2弾性突起が形成されてもよい。
【0015】
第1弾性体および第2弾性体に、第1弾性突起および第2弾性突起が各別に形成されているので、空気室から加圧エアが排気されて、アッパーベースおよびロアベースが上下方向に相対的に接近移動したときに、第1弾性体および第2弾性体が、第1弾性突起および第2弾性突起を介して、頂壁および底壁に各別に当接することとなり、第1弾性体および第2弾性体の各ばねを確実に高めることができる。これにより、車両の高速走行時には、空気室から加圧エアを排気しておくことで、車両を確実に安定させることができる。
【0016】
前記アッパーベースおよび前記ロアベースのうちのいずれか一方には、前記給排機構により前記空気室から加圧エアが排気されて、前記アッパーベースおよび前記ロアベースが上下方向に相対的に接近移動したときに、前記アッパーベースおよび前記ロアベースのうちのいずれか他方に当接する第3弾性突起が設けられてもよい。
【0017】
アッパーベースおよびロアベースのうちのいずれか一方に、第3弾性突起が設けられているので、空気室から加圧エアが排気されて、アッパーベースおよびロアベースが上下方向に相対的に接近移動したときに、アッパーベースおよびロアベースを、第3弾性突起を介して互いに上下方向で突き当てることが可能になり、アッパーベースおよびロアベースの相対移動が抑えられ、車両の高速走行時には、空気室から加圧エアを排気しておくことで、車両を確実に安定させることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、かさ張りを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態として示した懸架装置の縦断面図である。
【
図2】
図1において、空気室から加圧エアを排気した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、懸架装置の一実施形態を、
図1および
図2を参照しながら説明する。
懸架装置1は、アッパーベース11と、ロアベース12と、内側部材13と、第1弾性体14と、第2弾性体15と、第3弾性体16と、給排機構17と、を備えている。
懸架装置1の形状は、車両に装着する前と、車両に装着し、かつ後述する空気室Xに加圧エアを供給した状態と、で同様になっている。
【0021】
アッパーベース11およびロアベース12は二重筒状に形成され、内側部材13、第1弾性体14、第2弾性体15、および第3弾性体16は筒状に形成されている。アッパーベース11、ロアベース12、内側部材13、第1弾性体14、第2弾性体15、および第3弾性体16は、共通軸と同軸に配設されている。
以下、この共通軸を中心軸線Oといい、中心軸線Oに沿う方向を上下方向といい、上下方向から見て、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0022】
懸架装置1は、ダンパー51のロッド52の上端部に連結され、かつコイルスプリング53の上端部を支持する。ダンパー51およびコイルスプリング53は、上下方向に延びている。ダンパー51のシリンダ54の下端部は、車軸の支持装置に連結されている。ダンパー51は、コイルスプリング53の内側に挿入されている。ダンパー51およびコイルスプリング53は、同軸に配設されている。
ロッド52は、シリンダ54から上方に突出している。ロッド52のうち、シリンダ54から上方に突出した部分は、バンプストッパ55により径方向の外側から囲まれている。ロッド52のうち、バンプストッパ55から上方に突出した上端部に雄ねじ部が形成されている。
【0023】
アッパーベース11は、内筒(以下、上内筒という)21と、上内筒21を径方向の外側から囲う外筒(以下、上外筒という)22と、上内筒21および上外筒22の各上端開口を一体に閉塞する頂壁23と、を備え、車体B側に連結される。
頂壁23のうち、上内筒21より径方向の内側に位置する部分に、貫通孔が形成されている。貫通孔は、中心軸線Oと同軸に配設され、貫通孔の内径は、内側部材13の外径より大きくなっている。上外筒22の下端部は、上内筒21の下端部より下方に位置している。
【0024】
ロアベース12は、アッパーベース11の下方にアッパーベース11に対して相対的に上方移動可能に設けられ、かつコイルスプリング53の上端部を支持する。
ロアベース12は、内筒(以下、下内筒という)25と、下内筒25を径方向の外側から囲う外筒(以下、下外筒という)26と、下内筒25および下外筒26の各下端開口を一体に閉塞する底壁27と、を備えている。
【0025】
下外筒26の上端部は、下内筒25の上端部より上方に位置している。下外筒26の下端部は、下内筒25の上端部より下方で、かつ下内筒25の下端部より上方に位置している。底壁27の外周部は、下外筒26から径方向の外側に突出している。底壁27のうち、下内筒25より径方向の外側に位置する部分は、下内筒25より径方向の内側に位置する部分より上方に位置している。底壁27のうち、下内筒25より径方向の内側に位置する部分に、貫通孔が形成されている。貫通孔は、中心軸線Oと同軸に配設され、貫通孔の内径は、内側部材13の外径より大きくなっている。
【0026】
ロアベース12には、底壁27から下方に向けて突出した装着筒12aが形成されている。装着筒12a内に、バンプストッパ55の上端部が嵌合されている。装着筒12aの直径は、下内筒25の直径と同等になっている。装着筒12aの外周面と、底壁27の下面と、の接続部分が、コイルスプリング53の上端部を支持している。
【0027】
下内筒25の上端開口縁は、上内筒21の下端開口縁に対して、下方に位置し、かつ上下方向で対向している。なお、下内筒25および上内筒21それぞれの径方向の位置を互いに異ならせてもよい。
下外筒26は、上外筒22より径方向の内側に位置している。なお、下外筒26は、上外筒22より径方向の外側に位置してもよい。下外筒26の上端部は、上外筒22の下端部より上方に位置している。下外筒26の上端部および上内筒21の下端部それぞれの上下方向の位置は、互いに同等になっている。なお、下外筒26の上端部と、上内筒21および上外筒22それぞれの下端部と、の上下方向の相対位置は、適宜変更してもよい。
【0028】
内側部材13は、上内筒21および下内筒25より径方向の内側に設けられている。内側部材13の上端部は、上内筒21の下端部より上方に位置している。内側部材13の下端部は、下内筒25の上端部より下方に位置している。
内側部材13は、上下方向の両端部が開放された筒状に形成されている。内側部材13の内周面における上下方向の中央部に、内側部材13の内側を上下方向に仕切る仕切壁13aが形成されている。
【0029】
内側部材13内には、底壁27の貫通孔を通して、ダンパー51のロッド52の上端部が挿入されている。ロッド52の上端部は仕切壁13aを上下方向に貫いている。ロッド52の上端部のうち、仕切壁13aから上方に突出した部分にナットNが螺着されている。ロッド52の上端部のうち、仕切壁13aより下方に位置する部分に、上方を向く段部が形成されている。ロッド52の上端部のうち、仕切壁13aの下面から下方に突出した部分は、前記段部に配置された固定リング57の内側に挿入されている。
ナットNがロッド52の上端部に締め込まれ、ナットNと、前記段部と、が、仕切壁13aおよび固定リング57を上下方向に挟むことによって、ロッド52の上端部が内側部材13に固定されている。
【0030】
第1弾性体14および第2弾性体15は、上内筒21および下内筒25と、内側部材13と、を各別に連結している。第1弾性体14および第2弾性体15は、例えばゴム材料等で弾性変形可能に形成されている。第1弾性体14は、径方向の内側から外側に向かうに従い上方に向けて延び、第2弾性体15は、径方向の内側から外側に向かうに従い下方に向けて延びている。
【0031】
第1弾性体14の内周面は、内側部材13に外嵌された第1金属筒14aの外周面に接着され、第1弾性体14の外周面は、上内筒21内に嵌合された第2金属筒14bの内周面に接着されている。第2弾性体15の内周面は、内側部材13に外嵌された第3金属筒15aの外周面に接着され、第2弾性体15の外周面は、下内筒25内に嵌合された第4金属筒15bの内周面に接着されている。第1金属筒14aは、第3金属筒15aより上方に位置し、第1金属筒14aおよび第3金属筒15aは、上下方向で突き当たっている。
【0032】
第3弾性体16は、上外筒22および下外筒26を互いに連結している。第3弾性体16は、例えばゴム材料等で弾性変形可能に形成されている。第3弾性体16は、径方向の内側から外側に向かうに従い上方に向けて延びている。第3弾性体16の体積は、第1弾性体14および第2弾性体15の各体積より大きくなっている。
第3弾性体16の内周面は、下外筒26に外嵌された第5金属筒16aの外周面に接着され、第3弾性体16の外周面は、上外筒22内に嵌合された第6金属筒16bの内周面に接着されている。
【0033】
アッパーベース11の頂壁23と、ロアベース12の底壁27と、の間に、アッパーベース11、ロアベース12、第1弾性体14、第2弾性体15、および第3弾性体16に気密に囲まれた空気室Xが設けられている。空気室Xは、上内筒21および下内筒25を径方向に跨いでいる。空気室Xは、環状に形成され、中心軸線Oと同軸に配設されている。空気室Xのうち、上内筒21および下内筒25に対して、径方向の内側に位置する部分の内容積は、径方向の外側に位置する部分の内容積より小さくなっている。空気室Xのうち、上内筒21および下内筒25より径方向の内側に位置する部分は、アッパーベース11の頂壁23と、ロアベース12の底壁27と、の間における上下方向の中央部に設けられている。
【0034】
給排機構17は、空気室Xに加圧エアを給排する。空気室Xは、給排機構17による加圧エアの給排に伴い、第1弾性体14、第2弾性体15、および第3弾性体16が弾性変形しつつ拡縮し、アッパーベース11およびロアベース12が上下方向に相対移動する。これにより、車高調整が可能になる。
給排機構17は、給気菅P1、排気菅P2、給気弁V1、排気弁V2、逆止弁V3、および不図示のポンプを備えている。
【0035】
給気菅P1および排気菅P2は、空気室Xに連通し、給気菅P1を通して、前記ポンプから加圧エアが空気室Xに供給され、排気菅P2を通して、空気室X内の加圧エアが排気される。給気菅P1および排気菅P2は、空気室Xのうち、上内筒21および下内筒25より径方向の外側に位置する部分に開口している。
給気弁V1は、給気菅P1に設けられ、空気室Xと前記ポンプとの連通、およびその遮断を切替える。排気弁V2は、排気菅P2に設けられ、空気室X内の加圧エアの保持、および排気を切替える。
逆止弁V3は、給気菅P1において、給気弁V1と前記ポンプとの間に位置する部分に設けられ、前記ポンプから空気室Xへの流れを許容し、その逆向きの流れは規制する。なお、給気菅P1において、逆止弁V3と前記ポンプとの間に位置する部分に、エアタンクを設けてもよい。
【0036】
ここで、懸架装置1は、車両の走行速度を検出する不図示の速度センサと、速度センサからの出力信号に基づいて、給気弁V1および排気弁V2の開閉を切替える不図示の制御部と、を備えている。
【0037】
制御部が、速度センサからの出力信号に基づいて、車両が通常速度で走行していると判断した場合、排気弁V2を閉じた状態で給気弁V1を開き、前記ポンプから加圧エアを給気菅P1を通して空気室Xに供給し、
図1に示されるように、懸架装置1を車両に装着する前と同様に、アッパーベース11、およびロアベース12を上下方向に離間させた状態に保つ。
制御部が、速度センサからの出力信号に基づいて、車両が高速で走行していると判断した場合、給気弁V1を閉じた状態で排気弁V2を開き、空気室Xから加圧エアを排気し、
図2に示されるように、アッパーベース11、およびロアベース12を上下方向に接近させる。
【0038】
ここで、本実施形態では、アッパーベース11およびロアベース12のうちのいずれか一方の内筒には、径方向の外側に向けて突出したガイド突起31が設けられており、
図2に示されるように、給排機構17により空気室Xから加圧エアが排気されて、アッパーベース11およびロアベース12が上下方向に相対的に接近移動したときに、ガイド突起31が、アッパーベース11およびロアベース12のうちのいずれか他方の外筒の内周面に当接、若しくは近接する。
【0039】
図示の例では、ガイド突起31は、上内筒21の外周面に設けられている。給排機構17により空気室Xから加圧エアを排気し、アッパーベース11およびロアベース12を上下方向に相対的に接近移動させたときに、ガイド突起31は、下外筒26の内周面に当接、若しくは近接する。
【0040】
なお、下外筒26を、上外筒22より径方向の外側に位置させ、かつガイド突起31を、下内筒25の外周面に設けることによって、給排機構17により空気室Xから加圧エアを排気し、アッパーベース11およびロアベース12を上下方向に相対的に接近移動させたときに、ガイド突起31を、上外筒22の内周面に当接、若しくは近接させてもよい。
【0041】
ガイド突起31は、アッパーベース11の頂壁23と一体に形成されている。ガイド突起31は、周方向の全長にわたって連続して延びている。ガイド突起31は、上下方向に沿う縦断面視で矩形状を呈し、一対の辺が上下方向に延び、残り一対の辺が径方向に延びる向きに設けられている。ガイド突起31の下端面は、上内筒21の下端開口縁より上方に位置している。ガイド突起31において、下端面と外周面との接続部分に面取り部31aが形成されている。
【0042】
アッパーベース11とロアベース12との間に、アッパーベース11およびロアベース12を上下方向に離す向きに付勢する付勢部材32が設けられている。付勢部材32は、コイルスプリングとされ、中心軸線Oと同軸に配設されている。付勢部材32は、下内筒25の外周面と下外筒26の内周面との間に差し込まれている。付勢部材32の上端部は、ガイド突起31の下端面に支持されている。
【0043】
第1弾性体14および第2弾性体15には、給排機構17により空気室Xから加圧エアが排気されて、アッパーベース11およびロアベース12が上下方向に相対的に接近移動したときに、アッパーベース11の頂壁23およびロアベース12の底壁27に各別に当接する第1弾性突起33および第2弾性突起34が形成されている。
【0044】
第1弾性突起33および第2弾性突起34は、周方向の全長にわたって連続して延びている。第1弾性突起33は、第1弾性体14の上端面から上方に向けて突出し、第2弾性突起34は、第2弾性体15の下端面から下方に向けて突出している。第1弾性突起33は、第1弾性体14の上端面における径方向の中央部に設けられ、第2弾性突起34は、第2弾性体15の下端面における径方向の中央部に設けられている。
【0045】
アッパーベース11およびロアベース12のうちのいずれか一方には、給排機構17により空気室Xから加圧エアが排気されて、アッパーベース11およびロアベース12が上下方向に相対的に接近移動したときに、アッパーベース11およびロアベース12のうちのいずれか他方に当接する第3弾性突起35が設けられている。
【0046】
図示の例では、第3弾性突起35は、ロアベース12に設けられている。第3弾性突起35は、下外筒26の上端開口縁に設けられている。第3弾性突起35は、周方向の全長にわたって連続して延びている。第3弾性突起35は、第3弾性体16と一体に形成されている。
なお、第3弾性突起35は、例えば、下内筒25、底壁27、若しくはアッパーベース11等に設けられてもよい。
【0047】
懸架装置1が車両に装着され、かつ給排機構17により空気室Xから加圧エアが排気された状態で、アッパーベース11およびロアベース12が、互いに上下方向で当接、若しくは近接するように、第1弾性体14、第2弾性体15、第3弾性体16、および付勢部材32それぞれのばね定数が設定される。
この際、第1弾性体14および頂壁23が、第2弾性体15および底壁27が、第3弾性体16および頂壁23が、それぞれ、互いに上下方向で当接、若しくは近接する。
【0048】
さらにこの際、図示の例では、
図2に示されるように、下外筒26の上端開口縁が、アッパーベース11の頂壁23の下面に近接し、第1弾性突起33および第3弾性突起35が、頂壁23の下面に当接して上下方向に圧縮変形し、第2弾性突起34が、底壁27の上面に当接して上下方向に圧縮変形し、上内筒21の下端開口縁と、下内筒25の上端開口縁と、が上下方向に近接する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態による懸架装置1によれば、
図1に示されるように、給排機構17により空気室Xに加圧エアが供給された状態で、振動が入力されると、コイルスプリング53だけでなく、第1弾性体14、第2弾性体15、および第3弾性体16も弾性変形しながら、アッパーベース11およびロアベース12が相対変位し、かつダンパー51による減衰力が、内側部材13を介して第1弾性体14、第2弾性体15、および第3弾性体16を伝播することで低減されて車体B側に到達する。これにより、車両の通常走行時には、空気室Xに加圧エアを供給しておくことで、乗り心地性を確保することができる。
【0050】
給排機構17により空気室Xから加圧エアを排気すると、
図2に示されるように、第1弾性体14、第2弾性体15、および第3弾性体16が圧縮変形しながら、アッパーベース11およびロアベース12が上下方向に相対的に接近移動するため、第1弾性体14、第2弾性体15、および第3弾性体16の各ばねが高くなる。これにより、車両の高速走行時には、空気室Xから加圧エアを排気しておくことで、第1弾性体14、第2弾性体15、および第3弾性体16の各ばねが高くなって、主にコイルスプリング53のばねが発現することになるとともに、ダンパー51による減衰力が、第1弾性体14、第2弾性体15、および第3弾性体16を伝播するときに低減されにくく、高いまま車体B側に到達することとなり、車両を安定させることができる。
【0051】
空気室Xが、アッパーベース11と、ロアベース12と、第1弾性体14と、第2弾性体15と、第3弾性体16と、により囲まれており、弾性膜のような別部材を設けていないので、懸架装置1のかさ張りを抑えることができる。
第1弾性体14および第2弾性体15だけでなく、第3弾性体16も備えているので、懸架装置1のばねを容易に調整することができ、また、第3弾性体16が、上外筒22および下外筒26を互いに連結するので、空気室Xを容易に広く確保することができる。
【0052】
空気室Xが、上内筒21および下内筒25を径方向に跨いでいるので、空気室Xの広さを容易に確保することができる。
【0053】
アッパーベース11およびロアベース12を上下方向に離す向きに付勢する付勢部材32が設けられているので、空気室Xに供給する加圧エアの圧力を過度に高くしなくても、アッパーベース11およびロアベース12を上下方向に離間した状態に保持しやすくなる。
【0054】
上内筒21にガイド突起31が設けられているので、空気室Xから加圧エアが排気されたときに、ガイド突起31が下外筒26の内周面に当接、若しくは近接することにより、アッパーベース11およびロアベース12が相対的に径方向に位置ずれするのを抑制することができる。
【0055】
第1弾性体14および第2弾性体15に、第1弾性突起33および第2弾性突起34が各別に形成されているので、空気室Xから加圧エアが排気されて、アッパーベース11およびロアベース12が上下方向に相対的に接近移動したときに、第1弾性体14および第2弾性体15が、第1弾性突起33および第2弾性突起34を介して、頂壁23および底壁27に各別に当接することとなり、第1弾性体14および第2弾性体15の各ばねを確実に高めることができる。これにより、車両の高速走行時には、空気室Xから加圧エアを排気しておくことで、車両を確実に安定させることができる。
【0056】
ロアベース12に第3弾性突起35が設けられているので、空気室Xから加圧エアが排気されて、アッパーベース11およびロアベース12が上下方向に相対的に接近移動したときに、アッパーベース11およびロアベース12を、第3弾性突起35を介して互いに上下方向で突き当てることが可能になり、アッパーベース11およびロアベース12の相対移動が抑えられ、車両の高速走行時には、空気室Xから加圧エアを排気しておくことで、車両を確実に安定させることができる。
【0057】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0058】
例えば、空気室Xは、上内筒21および下内筒25に対して径方向の外側若しくは内側に限って設けてもよい。
ガイド突起31、第1弾性突起33、第2弾性突起34、および第3弾性突起35は設けなくてもよい。
【0059】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 懸架装置
11 アッパーベース
12 ロアベース
13 内側部材
14 第1弾性体
15 第2弾性体
16 第3弾性体
17 給排機構
21 上内筒(内筒)
22 上外筒(外筒)
23 頂壁
25 下内筒(内筒)
26 下外筒(外筒)
27 底壁
31 ガイド突起
32 付勢部材
33 第1弾性突起
34 第2弾性突起
35 第3弾性突起
51 ダンパー
52 ロッド
53 コイルスプリング
B 車体
X 空気室