(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069493
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】手袋
(51)【国際特許分類】
A41D 19/00 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
A41D19/00 P
A41D19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181384
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】591161900
【氏名又は名称】ショーワグローブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】上月 光大
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 翔
【テーマコード(参考)】
3B033
【Fターム(参考)】
3B033AB07
3B033AC01
(57)【要約】
【課題】内部において比較的多量の汗が発生する場合においても、内部にて蒸れが生じることを比較的抑制することができる手袋を提供する。
【解決手段】本発明に係る手袋は、着用者の手を覆う手袋本体を備え、前記手袋本体は、マトリックス樹脂およびセルロース粒子を含みかつ手袋の内表面を構成する最内層を有し、前記セルロース粒子は、少なくとも一部が前記内表面から露出しており、前記最内層は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、前記セルロース粒子を7質量部以上45質量部以下含んでいるとともに、非発泡層として形成されており、前記セルロース粒子は、10μm以上45μm以下の平均粒子径を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の手を覆う手袋本体を備え、
前記手袋本体は、マトリックス樹脂およびセルロース粒子を含みかつ手袋の内表面を構成する最内層を有し、
前記セルロース粒子は、少なくとも一部が前記内表面から露出しており、
前記最内層は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、前記セルロース粒子を7質量部以上45質量部以下含んでいるとともに、非発泡層として形成されており、
前記セルロース粒子は、10μm以上45μm以下の平均粒子径を有する、
手袋。
【請求項2】
前記最内層は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、前記セルロース粒子を8質量部以上25質量部以下含んでいる
請求項1に記載の手袋。
【請求項3】
前記最内層の表面に水滴を接触させた直後の静的接触角をθ
1とし、
前記最内層の表面に前記水滴を接触させてから5秒後の静的接触角をθ
2としたときに、
下記式(1)によって算出される静的接触角の変化率Rcが20%以上90%以下である
請求項1または2に記載の手袋。
【数1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用者が長時間(例えば、1時間)着用したときに、発汗により生じる汗によって内部で蒸れが生じること、換言すれば、内部が湿潤状態となることを抑制する機能を有する手袋が使用されている。
例えば、下記特許文献1には、着用者の手を覆う手袋本体を備え、該手袋本体は、エラストマーラテックスなどのマトリックス樹脂および綿などの繊維材料を含みかつ手袋の内表面を構成する最内層を有する手袋が記載されている。
また、下記特許文献1には、上記のように構成された手袋では、長時間の着用により着用者が発汗した場合であっても、発汗により生じる汗を前記最内層にて吸収することによって、手袋の内部で蒸れが生じることを抑制できること、より具体的には、上記のように構成された手袋を1時間着用した場合でも、依然として内部が乾燥していると、着用者が感じることが記載されている。
さらに、下記特許文献1には、前記最内層を発泡層とすることにより、発汗により生じる汗を前記最内層にて、より十分に吸収できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1には、上記のように構成された手袋を1時間着用した場合に、依然として内部が乾燥していると、着用者が感じる程度まで発汗により生じる汗を前記最内層で吸収できることについては記載されている。
一方で、1時間を超えて、上記のように構成された手袋を着用した場合には、発汗により生じる汗の量がより多くなると考えられる。
そのため、上記のように構成された手袋では、依然として内部が乾燥していると着用者が感じる程度まで、このような多量に生じる汗を前記最内層で十分に吸収できなくなることが懸念される。
また、1回の着用が1時間以内であっても、複数回の着脱で累積の着用時間が1時間を超える場合には、前記最内層で吸収する汗の累積量は多くなることから、このような場合にも、汗を前記最内層で十分に吸収できなくなることが懸念される。
このように、汗を前記最内層で十分に吸収できなくなると、吸収できなくなった汗によって手袋の内部が蒸れた状態となることから好ましくない。
しかしながら、このような問題点について、未だ十分な検討がなされているとは言い難い。
【0005】
上記問題点に鑑み、本発明は、内部において比較的多量の汗が発生する場合においても、内部にて蒸れが生じることを比較的抑制することができる手袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る手袋は、
着用者の手を覆う手袋本体を備え、
前記手袋本体は、マトリックス樹脂およびセルロース粒子を含みかつ手袋の内表面を構成する最内層を有し、
前記セルロース粒子は、少なくとも一部が前記内表面から露出しており、
前記最内層は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、前記セルロース粒子を7質量部以上45質量部以下含んでいるとともに、非発泡層として形成されており、
前記セルロース粒子は、10μm以上45μm以下の平均粒子径を有する。
【0007】
斯かる構成によれば、手袋の内部において比較的多量の汗が発生する場合においても、手袋の内部にて蒸れが生じることを比較的抑制することができる。
【0008】
また、上記手袋においては、
前記最内層は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、前記セルロース粒子を8質量部以上25質量部以下含んでいる、ことが好ましい。
【0009】
斯かる構成によれば、手袋の内部において比較的多量の汗が発生する場合においても、手袋の内部にて蒸れが生じることをより一層抑制することができる。
また、手袋の内部において比較的多量の汗が発生する場合においても、前記手袋は、着用者の手から取り外し易いものとなる。
【0010】
また、上記手袋においては、
前記最内層の表面に水滴を接触させた直後の静的接触角をθ1とし、
前記最内層の表面に前記水滴を接触させてから5秒後の静的接触角をθ2としたときに、
下記式(1)によって算出される静的接触角の変化率Rcが20%以上90%以下である、ことが好ましい。
【0011】
【0012】
斯かる構成によれば、手袋の内部において比較的多量の汗が発生する場合においても、手袋の内部にて蒸れが生じることをより一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記の通り、本発明によれば、内部において比較的多量の汗が発生する場合においても、内部にて蒸れが生じることを比較的抑制することができる手袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る手袋の全体構成を示す図。(a)は、手袋の全体構成を手の甲側から示す図。(b)は、手袋の全体構成を掌側から示す図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る手袋の断面を示す図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る手袋の製造方法を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る手袋について、図面を参照しながら説明する。
以下では、手袋が、手袋本体と、該手袋本体に連接されており、少なくとも着用者の手首を覆う裾部とを備える例について説明する。
なお、本明細書において、「蒸れ」とは、手袋の着用者の発汗量が手袋の内部からの汗の揮発量を上回ることにより、手袋の内部に気体の状態で汗が残存して手袋の内部が蒸れることに加えて、着用者の手の表面に液体の状態で汗が残存して手袋の内部が蒸れることをも含む概念である。
【0016】
(手袋)
本実施形態に係る手袋1は、
図1(a)及び(b)に示すように、着用者の手を覆う手袋本体10と、手袋本体10に連接されており、少なくとも着用者の手首を覆う裾部20とを備えている。
図1(a)及び(b)には、手袋本体10および裾部20が一体に形成された手袋1の例を示しているが、手袋1において、手袋本体10および裾部20は、別体に形成されていてもよい。
【0017】
本実施形態に係る手袋1においては、手袋本体10は、着用者の手の甲及び掌を覆うように袋状に形成された本袋部10aと、着用者の指を覆うように本袋部10aから延設された指袋部10bとを有している。
指袋部10bは、着用者の、第一指(親指)、第二指(人差指)、第三指(中指)、第四指(薬指)、及び第五指(小指)をそれぞれ覆う、第一指部10b1、第二指部10b2、第三指部10b3、第四指部10b4、及び第五指部10b5を有している。第一指部10b1~第五指部10b5は、指先部が閉塞された筒状に形成されている。
【0018】
本実施形態に係る手袋1においては、手袋本体10は、
図2に示したように、2層構造をなしている。
具体的には、本実施形態に係る手袋1においては、手袋本体10は、手袋1の外表面を構成する樹脂層30と、樹脂層30の一方面に積層されて、手袋1の内表面を構成する蒸れ抑制層40とを有している。
すなわち、本実施形態に係る手袋1の手袋本体10においては、蒸れ抑制層40が手袋1の内表面を構成する最内層(手袋1の着用者の手と接する層)となっており、樹脂層30が手袋1の外表面を構成する最外層となっている。
【0019】
樹脂層30は、主として、マトリックス樹脂で構成されている。
前記マトリックス樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、天然ゴム、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ポリウレタン、アクリル樹脂、又はそれらの変性物(例えば、カルボキシル変性物)などの各種公知の樹脂が用いられる。あるいは、各種公知の樹脂が組み合わされて用いられる。
なお、樹脂層30は、手袋1の外表面に付着した水分が手袋1の内部にまで浸透することを防止する防水層として機能する。
【0020】
また、樹脂層30は、前記マトリックス樹脂以外の成分を含んでいてもよい。
前記マトリックス樹脂以外の成分としては、硫黄などの加硫剤;ジメチルチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルチオカルバミン酸亜鉛、亜鉛華などの加硫促進剤;ブロックイソシアネートなどの架橋剤;鉱物油やフタル酸エステルなどの可塑剤や柔軟化剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールなどの酸化防止剤や老化防止剤;アクリルポリマーや多糖類などの増粘剤;アゾカルボンアミドなどの発泡剤;ステアリン酸ナトリウムなどの起泡剤や整泡剤;パラフィンワックスなどのタック防止剤;カーボンブラックや炭酸カルシウム、微粉シリカなどの無機充填剤;酸化亜鉛などの金属酸化物;水酸化カリウムなどのpH調整剤;増粘剤;顔料などが挙げられる。
【0021】
樹脂層30は、0.05mm以上1.5mm以下の厚みを有するように形成されていることが好ましい。
なお、樹脂層30の厚みは、デジタルマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、型式VHX-6000)を用いて層の断面を200倍の倍率で観察し、500μmおきに10点測定した値を算術平均することにより測定する。デジタルマイクロスコープによる断面観察は、手袋の掌の中央部の断面を観察することにより行う。
ここで、手袋の掌の中央部とは、第三指部10b3と第四指部10b4との間の指股の先端から長手方向(第三指部10b3の延設方向)に垂下させた直線と、第一指部10b1と第二指部10b2との間の指股の先端から横手方向(長手方向に直交する方向)に引いた直線との交点付近を意味する。
【0022】
樹脂層30は、非発泡層として形成されていることが好ましい。
これにより、強度の高いものとなる。
本明細書において、「非発泡」とは、マトリックス樹脂を発泡させていない状態を意味する。なお、非発泡の状態とは、発泡倍率が1.0倍である状態のことである。
【0023】
蒸れ抑制層40は、マトリックス樹脂およびセルロース粒子を含んでいる。
また、蒸れ抑制層40は、非発泡層として形成されている。
【0024】
蒸れ抑制層40に含まれるマトリックス樹脂としては、樹脂層30を構成するマトリックス樹脂と同様の樹脂が挙げられる。
【0025】
蒸れ抑制層40に含まれるセルロース粒子40aとしては、各種公知のセルロース粒子や再生セルロースの粒子などを用いることができる。セルロース粒子40aは、天然木材セルロースを粉砕した粒子(以下、セルロース粉砕粒子という)であることが好ましい。
セルロース粒子40aとしては、例えば、KCフロック(登録商標)を用いることができる。
KCフロックとしては、例えば、KCフロック W-100GK(日本製紙株式会社製)を用いることができる。
【0026】
蒸れ抑制層40は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、セルロース粒子40aを7質量部以上45質量部以下含んでいる。
蒸れ抑制層40は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、セルロース粒子40aを7質量部以上35質量部以下含んでいることが好ましい。
蒸れ抑制層40が、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、セルロース粒子40aを7質量部以上35質量部以下含んでいることにより、手袋1の内部において比較的多量の汗が発生する場合においても、手袋の内部にて蒸れが生じることをより一層抑制することができる。
蒸れ抑制層40は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、セルロース粒子40aを8質量部以上25質量部以下含んでいることが好ましい。
蒸れ抑制層40が、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、セルロース粒子40aを8質量部以上25質量部以下含んでいることにより、手袋1の内部において比較的多量の汗が発生する場合においても、手袋1の内部にて蒸れが生じることをより一層抑制することができる。
また、手袋1の内部において比較的多量の汗が発生する場合においても、手袋1は、着用者の手から取り外し易いものとなる。
また、蒸れ抑制層40は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、セルロース粒子40aを9質量部以上含んでいることがより好ましく、10質量部以上含んでいることがさらに好ましい。
さらに、蒸れ抑制層40は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、セルロース粒子40aを20質量部以下含んでいることがより好ましい。
【0027】
蒸れ抑制層40に含まれるセルロース粒子40aは、10μm以上45μm以下の平均粒子径を有する。
セルロース粒子40aは、17μm以上45μm以下の平均粒子径を有することが好ましい。
【0028】
セルロース粒子40aについて、平均粒子径は、配合前に、測定装置としてレーザ回折式粒度分布測定装置(マルバーン・パナリティカル社製のマスターサイザー2000)を用いて測定される。具体的な測定方法としては、専用ソフトウェアMastersizer 2000 Softwareを用い、散乱式の測定モードを採用し、測定試料(セルロース粒子)が分散する分散液が循環する湿式セルにレーザ光を照射し、測定試料からの散乱光分布を得る。そして、散乱光分布を対数正規分布により近似し、その粒度分布(横軸、σ)において最小値を0.021μm、最大値を2000μmに設定した範囲の中で累積度50%(D50)にあたる粒子径を平均粒子径とする。上記分散液としては、純水350mLに0.5質量%のヘキサメタリン酸水溶液60mLを加えたものを用いる。分散液中での測定試料の濃度は、10%とする。測定前に、超音波ホモジナイザーによって測定試料を含む分散液を2分間処理しておく。上記測定は、測定試料を含む分散液を1500rpmの撹拌速度で撹拌しながら行う。
【0029】
セルロース粒子40aは、繊維状の粒子であることが好ましい。繊維状の粒子は、粒子の幅をDとし、粒子の長さをLとしたときに、L/Dが2.0以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは3.0以上の粒子である。
また、繊維状の粒子では、L/Dは、50以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、10以下であることが特に好ましい。
セルロース粒子40aが繊維状の粒子である場合、長さLは5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上95μm以下であることがより好ましく、幅Dは、1μm以上25μm以下であることが好ましく、3μm以上20μm以下であることがより好ましい。粒子の幅とは、繊維状の粒子の短手方向の長さを意味する。短手方向の長さが測定箇所によって異なる場合には、最も大きい値を粒子の幅とする。また、粒子の長さとは、繊維状の粒子の長手方向の長さを意味する。繊維状の粒子が直線状をなす場合、粒子の長さは直線の一端から他端までの長さを意味する。繊維状の粒子が縮れた形状(例えば、捲縮形状)や折れ曲がった形状(例えば、L字状やV字状)をなす場合、粒子の長さは、縮れた状態や折れ曲がった状態において、粒子の一端から他端までを結ぶ線分の長さを意味する。
尚、粒子の幅D及び粒子の長さLは、配合前に、デジタルマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、型式VHX-6000)により500倍又は1000倍の倍率で観察しながら、任意の10個の粒子についてL及びDを測定し、測定されたL及びDの値をそれぞれ算術平均することにより求めることができる。
【0030】
また、セルロース粒子40aは、セルロースが多くの水酸基を有しているため、比較的吸水性が高い。これにより、セルロース粒子40aは、比較的水分を引き寄せ易くなる。本明細書において、比較的吸水性が高いとは、温度25℃及び相対湿度65%の環境下での飽和吸水率が7%以上であることを意味する。
【0031】
蒸れ抑制層40は、セルロース粒子40a以外の添加剤を含んでいてもよい。
セルロース粒子40a以外の添加剤としては、可塑剤、pH調整剤、加硫剤、金属酸化物、加硫促進剤、老化防止剤、無機充填剤、消泡剤、増粘剤、および、顔料などが挙げられる。
【0032】
蒸れ抑制層40では、
図2に示すように、セルロース粒子40aは、少なくとも一部が手袋1の内表面を構成しているマトリックス樹脂から露出している。
【0033】
蒸れ抑制層40は、
図2に示すように、手袋1の内表面に、蒸れ抑制層40中に含まれるセルロース粒子40aが蒸れ抑制層40中において複数集合して内表面を盛り上げて形成された凸部40Aと、凸部40Aよりも樹脂層30側に窪んだ凹部40Bとを備えている。
すなわち、蒸れ抑制層40(手袋1の内表面)には凹凸が形成されている。
蒸れ抑制層40において、凸部40A及び凹部40Bは、デジタルマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、型式VHX-6000)を用いて判断する。
具体的には、専用ソフトウェアを用い、測定モードとして線粗さモードを採用し、測定種別として“粗さ”を採用し、基準長さとして1mmを採用し、カットオフをなしとした条件にて蒸れ抑制層40の断面の形状(測定曲線)をモニターに映し出す。そして、前記測定曲線における前記基準長さに相当する部分において、前記測定曲線の平均線よりもモニター上方側に突出した部分を凸部40Aと判断し、前記平均線よりモニター下方側に窪んだ部分を凹部40Bと判断する。
【0034】
蒸れ抑制層40は、通常、0.01m以上0.1mm以下の厚みを有するように形成される。蒸れ抑制層40は、0.02mm以上0.07mm以下の厚みを有するように形成されることが好ましい。
なお、蒸れ抑制層40の厚みは、デジタルマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、型式VHX-6000)を用いて層の断面を200倍の倍率で観察し、任意の50点について測定した値を算術平均することにより測定する。
【0035】
手袋本体10において、蒸れ抑制層40は、樹脂層30の一方面(着用状態における内面)の全域にわたって形成されていてもよいし、樹脂層30の一方面(着用状態における内面)の一部に形成されていてもよい。
ここで、手袋1の着用者の掌は、手袋1の内表面から離間するように窪ませ易いのに対し、手袋1の着用者の手の甲は、手袋1の内表面から離間するように窪ませ難い。
そのため、手袋1の着用者が、手袋1の内部から手を取り外すときには、手袋1の内表面が着用者の手の甲にくっつき易く、その結果、手袋1の内表面が着用者の手の甲に引っ掛かり易くなる。そして、手袋1の着用者の手の甲が蒸れているほど、手袋1の内表面に対する手袋1の着用者の手の甲の引っ掛かりは顕著になる。
このことから、蒸れ抑制層40は、手袋1の着用者の手の甲を蒸れ難くするために、少なくとも手の甲部分に形成されていることが好ましい。
また、上記のように、手袋1の着用者の掌は、手袋1の内表面から離間するように窪ませ易いものの、手袋1の着用者の掌が蒸れていると、手袋1の内表面に対して手袋1の着用者の掌が引っ掛かり易くなる。
このように、手袋1の内表面に対して手袋1の着用者の掌が引っ掛かり易くなることを抑制するために、蒸れ抑制層40は、掌部分にも形成されていることがより好ましい。
【0036】
裾部20は、筒状に形成されている。
裾部20は、手袋本体10と同様に、
図2に示したような2層構造をなしている。
具体的には、裾部20は、手袋1の外表面を構成する樹脂層30と、樹脂層30の一方面に積層されて、手袋1の内表面を構成する蒸れ抑制層40とを有している。
すなわち、裾部20においても、蒸れ抑制層40が手袋1の内表面を構成する最内層(手袋1の着用者の少なくとも手首と接する層)となっており、樹脂層30が手袋1の外表面を構成する最外層となっている。
なお、裾部20の樹脂層30は、手袋本体10の樹脂層30と同様に構成されており、裾部20の蒸れ抑制層40は、手袋本体10の蒸れ抑制層40と同様に構成されているので、その説明については省略する。
【0037】
上記したように、裾部20は、少なくとも、着用者の手首を覆っている。
裾部20は、着用者の手首に加えて、前腕の一部を覆っていてもよい。
本実施形態に係る手袋1では、裾部20は、手袋本体10と連続して一体的に構成されていることが好ましい。
【0038】
裾部20において、蒸れ抑制層40は、樹脂層30の一方面(着用状態における内面)の全域にわたって形成されていてもよいし、樹脂層30の一方面(着用状態における内面)の一部に形成されていてもよい。
ここで、手袋1の着用者は、裾部20においては、主として、手首部分で汗をかき易い。そのため、蒸れ抑制層40を樹脂層30の一方面(着用状態における内面)の一部に形成する場合には、少なくとも、手首部分に形成しておくことが好ましい。
【0039】
本実施形態に係る手袋1においては、最内層を構成する蒸れ抑制層40の表面に水滴を接触させた直後の静的接触角をθ1とし、最内層を構成する蒸れ抑制層40の表面に水滴を接触させて5秒後の静的接触角をθ2としたときに、下記式(1)によって算出される静的接触角の変化率Rcが20%以上90%以下であることが好ましい。
なお、蒸れ抑制層40の表面に水滴を接触させた直後とは、蒸れ抑制層40の表面に水滴を接触させてから1秒以内を意味する。
また、下記式(1)によって算出される静的接触角の変化率Rcは、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。
さらに、下記式(1)によって算出される静的接触角の変化率Rcは、85%以下であることがより好ましい。
下記式(1)によって算出される静的接触角の変化率Rcが上記数値範囲内であることにより、手袋1の内部において比較的多量の汗が発生する場合においても、手袋1の内部にて蒸れが生じることをより一層抑制することができる。
【0040】
【0041】
静的接触角θ1および静的接触角θ2は、以下のようにして求めることができる。
(1)手袋1の任意の箇所から、手袋本体10の一部または裾部20の一部を所定の寸法で切り出して供試体を得る。
(2)前記供試体を100℃のオーブン内で30分間乾燥させる。
(3)乾燥後の前記供試体において、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面に所定量の水滴を接触させる。具体的には、マイクロピペットを用いて、前記供試体の蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面に25μLの水滴を接触させる。
(4)前記供試体の蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面に水滴を接触させてから1秒以内に、前記水滴との静的接触角を測定する。
蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面に水滴を接触させた直後の静的接触角の測定は、接触角測定装置「DropMaster500」(協和界面科学社製)、及び、評価解析ソフトウェア「FAMAS」(協和界面化学社製)を用いて行う。
また、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面に水滴を接触させた直後の静的接触角は、θ/2法にて算出する。
(5)前記供試体の蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面に水滴を接触させてから5秒後に、前記水滴との静的接触角を測定する。
蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面に水滴を接触させてから5秒後の静的接触角の測定は、蒸れ抑制層40に水滴を接触させた直後の静的接触角の測定と同様にして行う。
(6)(1)~(5)を手袋本体10の任意の3箇所から切り出した供試体(3個の供試体)について行って、各供試体について、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面に水滴を接触させた直後の静的接触角の値、及び、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂に水滴を接触させてから5秒後の静的接触角の値を得た後、これらの値をそれぞれ算術平均して、静的接触角θ1の値及び静的接触角θ2の値を求める。
【0042】
本実施形態に係る手袋1によって、内部において比較的多量の汗が発生する場合においても、内部にて蒸れが生じることを比較的抑制できる理由は定かではないが、本発明者らは、以下のように推察している。
【0043】
本実施形態に係る手袋1において、蒸れ抑制層40では、セルロース粒子40aは、少なくとも一部がマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)から露出している。
詳しくは、本実施形態に係る手袋1において、蒸れ抑制層40では、セルロース粒子40aの平均粒子径およびセルロース粒子40a含有量を調整することにより、セルロース粒子40aは、少なくとも一部がマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)から適度に露出している。
また、上記のように、セルロース粒子40aは、セルロースが多くの水酸基を有しているため、先に説明したように、比較的水分を吸い寄せ易くなっている。
このことから、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)では、セルロース粒子40aの少なくとも一部が適度に露出していることによって、適度な親水性を有するようになっていると考えられる。
そのため、着用者が、本実施形態に係る手袋1を着用した状態で、比較的多量の汗をかき、前記汗が蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)に付着すると、前記汗は、前記表面から露出しているセルロース粒子40aに引き寄せられながら、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)に薄く広がるようになると考えられる。
また、蒸れ抑制層40は、所定の平均粒子径(10μm以上45μm以下)を有するセルロース粒子40aを、所定量(マトリックス樹脂の100質量部に対して7質量部以上45質量部以下)含んでいるので、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)には、適度な凹凸(凸部40Aおよび凹部40B)が形成されている。
そのため、比較的平坦な表面から、セルロース粒子の少なくとも一部を露出させている手袋に比べて、本実施形態に係る手袋1では、適度な凹凸が形成されていることにより、蒸れ抑制層40の表面積は大きくなっている。
そして、本実施形態に係る手袋1では、蒸れ抑制層40の表面積が大きい分、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)から露出しているセルロース粒子40aの量が相対的に多くなることから、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)での汗の拡散が促進されるようになると考えられる。
【0044】
さらに、本実施形態に係る手袋1では、蒸れ抑制層40が非発泡層として形成されているので、蒸れ抑制層40を発泡層として形成した場合に比べて、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)よりも内側(樹脂層30側)に窪んで形成される窪みが比較的少なくなっていると考えられる。
そのため、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)を拡散した汗が蒸れ抑制層40の内部に入り込むことにより蒸れ抑制層40の内部に残留することを比較的抑制できていると考えられる。
【0045】
また、本実施形態に係る手袋1では、蒸れ抑制層40に含有されるセルロース粒子40aの平均粒子径は、10μm以上45μm以下とされており、繊維長が300μm以上800μm以下であるパイルなどの短繊維と比べて、有意に短くなっていることから、このような短繊維と比べて、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)からのセルロース粒子40aの露出部分の長さも比較的短くなっていると考えられる。
そのため、セルロース粒子40aの露出部分に汗が吸収された場合においても、セルロース粒子40aの露出部分の長さが比較的短くなっている分、比較的速く乾燥され得ると考えられる。
【0046】
上記により、着用者が比較的多量の汗をかいた場合においても、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)に付着した汗が、蒸れ抑制層40の内部に入り込んで残留することを抑制しつつ、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)において、薄い水膜を形成しながら比較的速く拡散されるようになるので、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)において、比較的速く乾燥するようになると考えられる。
また、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)からのセルロース粒子40aの露出部分の長さが比較的短い分、該露出部分に汗が吸収された場合においても、該汗を比較的速く乾燥できると考えられる。
これにより、本実施形態に係る手袋1では、内部において比較的多量の汗が発生する場合においても、内部にて蒸れが生じることを比較的抑制できていると、本発明者らは考えている。
【0047】
なお、上記したメカニズムによれば、着用者の肌表面に付着している汗が蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)に移行し易くなるので、着用者の肌表面から前記汗が離れ易くなり、その結果、着用時の不快感が軽減されることとなる。
また、パイルなどの短繊維は、繊維長が300μm以上800μm以下と長いため、蒸れ抑制層40に含ませた場合には、短繊維において生じる毛管現象で保持した汗が乾き難くなるとともに、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)において、汗が拡散し難くなって、手袋1の内部が蒸れ易くなる。
しかしながら、本実施形態に係る手袋1においては、蒸れ抑制層40はパイルなどの短繊維に比べて有意に短いセルロース粒子40aを含んでいるので、保持した汗が乾き難くなること、及び、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面(手袋1の内表面)において、汗が拡散し難くなることを抑制することができる。
さらに、蒸れ抑制層40が発泡層として形成されている場合には、発泡により前記発泡層の表面などに形成されている空隙内に汗が溜まり易くなって、手袋の内部において該汗が乾き難くなることがある。また、着用者が対象物を把持したときに、前記発泡層の表面などに形成されている空隙内に溜まった汗が蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面に押し出されて、着用時の不快感が増すことがある。
しかしながら、本実施形態に係る手袋1においては、蒸れ抑制層40は非発泡層として形成されているので、蒸れ抑制層40の内部に汗が溜まり易くなることを抑制することができる。
これにより、手袋1の内部において汗が乾き難くなること、及び、蒸れ抑制層40のマトリックス樹脂表面に汗が押し出されて着用時に不快感が増すことを抑制することができる。
なお、前記短繊維は、該短繊維の幅をDとし、長さをLとしたときに、通常、L/Dとして50以上の値を取る。
【0048】
(手袋の製造方法)
本実施形態に係る手袋1は、手型の表面に凝固剤を含む凝固剤層を形成する凝固剤層形成工程S1と、前記凝固剤層を覆うように樹脂層30を形成する樹脂層形成工程S2と、樹脂層30を覆うように蒸れ抑制層40を形成する蒸れ抑制層形成工程S3と、手型を覆っている樹脂層30および蒸れ抑制層40の積層体を反転させながら前記手型から取り外す取り外し工程S4と、を備える製造方法によって製造される。
なお、本実施形態では、凝固剤層形成工程S1を実施して、手袋1を製造する例について説明しているが、凝固剤層形成工程S1は必須の工程ではない。
すなわち、凝固剤層形成工程S1は、手袋1の製造方法において、省略されてもよい。
【0049】
<凝固剤層形成工程S1>
凝固剤層形成工程S1では、手型を凝固剤溶液に浸漬させることにより、前記手型の外表面に凝固剤層を形成する。
具体的には、凝固剤層形成工程S1では、前記手型を前記凝固剤溶液に浸漬させ、引き上げた後、前記凝固剤溶液の溶媒を蒸発させることにより、前記手型の外表面に凝固剤層を形成する。
前記凝固剤溶液としては、各種公知のものを用いることができる。
前記凝固剤溶液としては、例えば、多価金属塩や有機酸を含むメタノール溶液や水溶液などを用いることができる。
【0050】
前記多価金属塩としては、例えば、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛、酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどが挙げられる。
これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
前記凝固剤溶液における前記多価金属の含有量の下限値は、8質量%であることが好ましく、15質量%であることがより好ましく、40質量%であることがさらに好ましい。
前記凝固剤溶液における前記多価金属の含有量が8質量%以上であることにより、前記凝固剤溶液に十分な凝固力を発揮させることができる。
これにより、後述するように、樹脂層形成工程S2において、凝固剤層が形成された前記手型を樹脂組成物に浸漬させたときに、前記凝固剤層への前記樹脂組成物の付着厚さが不足することを抑制することができ、また、前記凝固剤層から前記樹脂組成物が液だれすることにより樹脂層30の厚さが不均一になることを抑制することができる。
また、前記凝固剤溶液における前記多価金属の上限値は、95質量%であることが好ましく、90質量%であることがより好ましい。
前記凝固剤溶液における前記多価金属の含有量が95質量%以下であることにより、後述するように、樹脂層形成工程S2において、凝固剤層が形成された前記手型を樹脂組成物に浸漬させたときに、前記凝固剤層の表面に付着させた前記樹脂組成物中において、過度な凝集が生じることを抑制することができる。
これにより、樹脂層30の厚さが不均一になることを抑制することができる。
【0052】
前記有機酸としては、酢酸、クエン酸などが挙げられる。
前記凝固剤溶液における前記有機酸の含有量は、5質量%以上35質量%以下であることが好ましい。
前記有機酸は、単独で使用してもよいし、前記多価金属と組み合わせて用いてもよい。
前記有機酸を前記多価金属と組み合わせて用いることにより、手袋本体10および裾部20を十分な厚さを有するものとすることができる。
また、前記樹脂組成物を用いた樹脂層30の形成能力を比較的容易に制御することができる。
【0053】
前記手型を凝固剤溶液に浸漬させるときの前記手型の温度は、40℃以上80℃以下であることが好ましい。
前記手型の温度を40℃以上80℃以下とすることにより、前記手型の外表面に前記凝固剤溶液を比較的均一な厚さで付着させることができる。これにより、前記凝固剤層を比較的均一な厚さを有するものとすることができる。
なお、前記手型を前記凝固剤溶液に浸漬させる時間は、特に限定されないが、通常は、5秒から1分の間とされる。
【0054】
前記手型を前記凝固剤溶液から引き上げた後、前記凝固剤溶液の溶媒を蒸発させる温度は、25℃以上80℃以下であることが好ましい。
また、前記手型を前記凝固剤溶液から引き上げた後、前記凝固剤溶液の溶媒を蒸発させる時間としては、10秒以上600秒以下であることが好ましい。
前記凝固剤溶液の溶媒を蒸発させる温度および時間を上記範囲内とすることにより、前記手型の外表面に、比較的均一な厚さで前記凝固剤層を形成することができる。
【0055】
<樹脂層形成工程S2>
樹脂層形成工程S2では、前記凝固剤層が形成された前記手型を、マトリックス樹脂を含む第1塗布液に浸漬させることにより、前記凝固剤層を覆うように樹脂層30を形成する。
具体的には、樹脂層形成工程S2では、前記凝固剤層が形成された前記手型を前記第1塗布液に浸漬させ、引き上げた後、所定の温度で所定時間乾燥することにより、前記凝固剤層を覆うように樹脂層30を形成する。
樹脂層形成工程S2では、前記凝固剤層の外表面の全域を覆うように、前記凝固剤層が形成された前記手型を前記第1塗布液に浸漬させることが好ましい。
【0056】
前記第1塗布液に含まれる前記マトリックス樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、天然ゴム、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ポリウレタン、アクリル樹脂、又はそれらの変性物(例えば、カルボキシル変性物)などの各種公知の樹脂が用いられる。あるいは、各種公知の樹脂が組み合わされて用いられる。
これらの各種公知の樹脂は、目的に応じて好適なものを使用できる。
例えば、樹脂層30の強度の向上や加工の容易性を目的とする場合、天然ゴムやニトリルブタジエンゴムなどのラテックスを用いることが好ましい。この場合、前記樹脂組成物は、固形分の比率が20~60質量%となるように調製される。固形分の比率は、水などを用いて調製される。
【0057】
前記第1塗布液は、前記マトリックス樹脂以外の成分を含んでいてもよい。
前記マトリックス樹脂以外の成分としては、硫黄などの加硫剤;ジメチルチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルチオカルバミン酸亜鉛、亜鉛華などの加硫促進剤;ブロックイソシアネートなどの架橋剤;鉱物油やフタル酸エステルなどの可塑剤や柔軟化剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールなどの酸化防止剤や老化防止剤;アクリルポリマーや多糖類などの増粘剤;アゾカルボンアミドなどの発泡剤;ステアリン酸ナトリウムなどの起泡剤や整泡剤;パラフィンワックスなどのタック防止剤;カーボンブラックや炭酸カルシウム、微粉シリカなどの無機充填剤;酸化亜鉛などの金属酸化物;水酸化カリウムなどのpH調整剤;増粘剤;顔料などが挙げられる。
前記樹脂組成物は、これらの中でも、pH調整剤、加硫剤、金属酸化物、加硫促進剤、及び、老化防止剤を含んでいることが好ましい。
【0058】
pH調整剤は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、0.2質量部以上0.7質量部以下含まれていることが好ましい。
加硫剤は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、0.1質量部以上2.0質量部以下含まれていることが好ましい。
金属酸化物は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、1.0質量部以上4.0質量部以下含まれていることが好ましい。
加硫促進剤は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、0.1質量部以上2.0質量部以下含まれていることが好ましい。
老化防止剤は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、0.3質量部以上0.7質量部以下含まれていることが好ましい。
【0059】
また、前記第1塗布液に、無機充填剤、消泡剤、増粘剤、及び、顔料を適量加えてもよい。無機充填剤、消泡剤、増粘剤、及び顔料としては、各種公知のものを用いることができる。
【0060】
前記第1塗布液の粘度は、B型粘度計を用いてV6の条件で測定した場合に、200~3000mPa・sであることが好ましい。
【0061】
前記手型を前記第1塗布液に浸漬させるときの前記手型の温度は、25℃以上60℃以下であることが好ましい。
また、前記手型を前記第1塗布液に浸漬させる時間は、特に限定されないが、例えば、10秒以上200秒以下とすることができる。
【0062】
前記手型を前記第1塗布液から引き上げた後、前記第1塗布液が塗布された前記手型を、例えば、オーブンに入れて、所定温度で所定時間乾燥することにより、前記凝固剤を覆うように樹脂層30を形成する。
前記第1塗布液が塗布された前記手型の乾燥は、例えば、80℃で60分乾燥することにより行うことができる。
【0063】
<蒸れ抑制層形成工程S3>
蒸れ抑制層形成工程S3では、樹脂層30が形成された前記手型を、マトリックス樹脂およびセルロース粒子40aを含む第2塗布液に浸漬させることにより、樹脂層30を覆うように蒸れ抑制層40を形成する。
具体的には、蒸れ抑制層形成工程S3では、樹脂層30が形成された前記手型を前記第2塗布液に浸漬させ、引き上げた後、所定の温度で所定時間乾燥することにより、樹脂層30を覆うように蒸れ抑制層40を形成する。
蒸れ抑制層形成工程S3では、樹脂層30の全域を覆うように、樹脂層30が形成された前記手型を前記第2塗布液に浸漬させることが好ましい。
【0064】
前記第2塗布液に含まれる前記マトリックス樹脂としては、前記第1塗布液に含まれる前記マトリックス樹脂と同様のものを用いることができる。
【0065】
前記第2塗布液に含まれるセルロース粒子40aとしては、先述の各種公知のセルロース粒子を用いることができる。
前記第2塗布液に含まれるセルロース粒子40aの平均粒子径は、10μm以上45μm以下である。
前記第2塗布液は、前記マトリックス樹脂の100質量部に対して、セルロース粒子40aを7質量部以上45質量部以下含んでいる。
また、前記第2塗布液には、物理発泡や化学発泡などの各種発泡処理を施さない。すなわち、前記第2塗布液は、非発泡溶液である。
【0066】
前記第2塗布液は、前記第1塗布液と同様に、前記マトリックス樹脂以外に、pH調整剤、加硫剤、金属酸化物、加硫促進剤、老化防止剤、無機充填剤、消泡剤、増粘剤、及び、顔料などを含んでいてもよい。
【0067】
前記第2塗布液の粘度は、B型粘度計を用いてV6の条件で測定した場合に、200~2000mPa・sであることが好ましい。
【0068】
前記手型を前記第2塗布液に浸漬させるときの前記手型の温度は、25℃以上60℃以下であることが好ましい。
また、前記手型を前記第2塗布液に浸漬させる時間は、特に限定されないが、例えば、10秒以上200秒以下とすることができる。
【0069】
前記手型を前記第2塗布液から引き上げた後、前記第2塗布液が塗布された前記手型を、例えば、オーブンに入れて、所定温度で所定時間乾燥することにより、樹脂層30を覆うように蒸れ抑制層40を形成する。
前記第2塗布液が塗布された前記手型の乾燥は、例えば、以下のような2ステップで行うことができる。
(1)まず、80℃で60分間乾燥する。
(2)次に、120℃で30分間乾燥する。
このように120℃で30分間乾燥することにより、樹脂層30及び蒸れ抑制層40をより十分に乾燥させることができることに加えて、架橋(加硫)反応を十分に進行させて手袋1に必要な強度を付与することができる。
【0070】
<取り外し工程S4>
取り外し工程S4では、前記手型を覆っている樹脂層30および蒸れ抑制層40の積層体を、反転させながら前記手型から取り外す。
すなわち、前記手型を覆っている状態においては、手袋1の最外層となっている蒸れ抑制層40が手袋1の最内層となり、手袋1の最内層となっている樹脂層30が手袋1の最外層となるように、前記手型から樹脂層30および蒸れ抑制層40の積層体を取り外す。
【0071】
以上のようにして、凝固剤層形成工程S1、樹脂層形成工程S2、蒸れ抑制層形成工程S3、および、取り外し工程S4を順次実施することにより、樹脂層30が最外層を形成し、蒸れ抑制層40が最内層を形成する手袋1を得ることができる。
【0072】
なお、本発明に係る手袋は、前記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る手袋は、前記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係る手袋は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0073】
上記実施形態では、手袋1が、着用者の手を覆う手袋本体10と、手袋本体10に連接されており、少なくとも着用者の手首を覆う裾部20とを備える例について説明したが、手袋1の構成はこれに限られるものではない。
手袋1は、着用者の手を覆う手袋本体10のみを備えるものであってもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、手袋1において、手袋本体10の外表面に、何らの加工をも施さない例について説明したが、手袋1の構成はこれに限られるものではない。
手袋1は、手袋本体10の外表面に、滑り止め模様が施されたものであってもよい。
手袋本体10の外表面に滑り止め模様を施す場合には、該滑り止め模様は、手袋本体10において、本袋部10aにおける掌部分、第一指部10b1の指先部分、第二指部10b2の指先部分、第三指部10b3の指先部分、第四指部10b4の指先部分、および、第五指部10b5の指先部分に施すことが好ましい。
【0075】
さらに、手袋1は、強度を高めるための補強層を備えるものであってもよい。
具体的には、手袋1は、手袋本体10において、第一指部10b1の指先部分、第二指部10b2の指先部分、第三指部10b3の指先部分、第四指部10b4の指先部分、および、第五指部の10b5の指先部分に、補強層を備えるものであってもよい。
なお、前記補強層は、マトリックス樹脂を含む塗布液に、手袋本体10における、第一指部10b1の指先部分、第二指部10b2の指先部分、第三指部10b3の指先部分、第四指部10b4の指先部分、および、第五指部10b5の指先部分を浸漬させた後、乾燥させることにより備えさせることができる。
マトリックス樹脂を含む塗布液としては、前記第1塗布液と同様のものを用いることができる。
【実施例0076】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0077】
[実施例1]
以下の素材を用いて、実施例1に係る手袋を作製した。
【0078】
(第1樹脂層)
まず、陶器製の立体手型を50℃まで加温した。
次に、水100質量部に対して硝酸カルシウム60質量部を溶解させた凝固剤溶液中に、加温した前記立体手型における手袋本体に相当する部分(以下、手袋本体相当部という)及び裾部に相当する部分(以下、裾部相当部という)を浸漬させて、前記立体手型における手袋本体相当部及び裾部相当部の外表面に前記凝固剤溶液を塗布した。前記凝固剤溶液を塗布した後に、前記立体手型を30℃で3分間乾燥させた。
次に、樹脂層を形成するための第1塗布液中に、前記凝固剤溶液を塗布した後の前記立体手型における手袋本体相当部及び裾部相当部を浸漬させて、前記立体手型における手袋本体相当部及び裾部相当部の外表面に前記第1塗布液を塗布した。
次に、前記第1塗布液を塗布した後の前記立体手型を80℃のオーブンで60分間乾燥させて、前記立体手型における手袋本体相当部及び裾部相当部に樹脂層を形成した。
【0079】
前記第1塗布液は、表1に示す配合原料を含む組成物を、固形分の比率が42質量%になるようにイオン交換水で希釈して調製した。前記第1塗布液の粘度は、1000mPa・s(B型粘度計を用いてV6の条件(回転数6rpm、温度25℃)で測定した値)であった。
なお、前記第1塗布液には、物理発泡や化学発泡などの各種発泡処理を施さなかった。すなわち、前記第1塗布液は、非発泡溶液であった。
【0080】
【0081】
(蒸れ抑制層)
前記樹脂層を形成した後、前記立体手型を60℃まで冷ました。
次に、蒸れ抑制層を形成するための第2塗布液中に、前記樹脂層を形成した後の前記立体手型における手袋本体相当部及び裾部相当部を浸漬させ、前記樹脂層の外表面全域に前記第2塗布液を塗布した。
次に、前記第2塗布液を塗布した後の前記立体手型を、以下のような2ステップで乾燥させて、前記樹脂層の外表面全域に蒸れ抑制層を形成した。
(1)まず、80℃のオーブンで60分間乾燥させる。
(2)次に、120℃のオーブンで30分間乾燥させる。
次に、前記立体手型を覆っている前記樹脂層及び前記蒸れ抑制層の積層体を反転させながら、前記立体手型から取り外した。
すなわち、前記立体手型を覆っている状態においては、手袋の最外層となっている蒸れ抑制層が手袋の最内層となり、手袋の最内層となっている前記樹脂層が手袋の最外層となるように、前記立体手型から前記樹脂層及び前記蒸れ抑制層の積層体を取り外した。
これにより、実施例1に係る手袋を得た。
【0082】
前記第2塗布液は、表2に示す配合原料を含む組成物を、固形分の比率が15質量%になるようにイオン交換水で希釈して調製した。前記第2塗布液の粘度は、500mPa・s(B型粘度計を用いてV6の条件(回転数6rpm、温度25℃)で測定した値)であった。
なお、以下の表2に示したように、セルロース粒子は、樹脂(NBRラテックス)の100質量部に対して、7.5質量部となるように添加した。
また、前記第2塗布液には、物理発泡や化学発泡などの各種発泡処理を施さなかった。すなわち、前記第2塗布液は、非発泡溶液であった。
さらに、デジタルマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、型式VHX-6000)を用いて倍率300倍で、蒸れ抑制層の断面を観察したところ、蒸れ抑制層のマトリックス樹脂表面から、セルロース粒子の一部が露出していることが確認できた。
【0083】
【0084】
配合前に、レーザ回折式粒度分布測定装置(マルバーン・パナリティカル社製のマスターサイザー2000)を用いて蒸れ抑制層に含ませたセルロース粒子について平均粒子径を測定したところ、37μmであった。
セルロース粒子について、平均粒子径は以下のようにして測定した。
すなわち、専用ソフトウェアMastersizer 2000 softwareを用い、散乱式の測定モードを採用し、セルロース粒子が分散する分散液が循環する湿式セルにレーザ光を照射し、セルロース粒子からの散乱光分布を得た。
そして、散乱光分布を対数正規分布により近似し、その粒度分布(横軸、σ)において最小値を0.021μm、最大値を2000μmに設定した範囲の中で累積度50%(D50)にあたる粒子径を平均粒子径とした。
測定においては、前記分散液として、純水350mLに0.5質量%のヘキサメタリン酸水溶液60mLを加えたものを用いた。前記分散液中でのセルロース粒子の濃度は、10%とした。
また、測定前に、超音波ホモジナイザーによってセルロース粒子を含む分散液を2分間処理しておいた。
さらに、前記測定は、セルロース粒子を含む分散液を1500rpmの撹拌速度で撹拌しながら行った。
また、配合前に、セルロース粒子の幅Dに対する長さLの比、すなわち、セルロース粒子のL/Dを測定したところ、6.3であった。セルロース粒子のL及びDは、先に説明した方法で測定した。
【0085】
[実施例2]
樹脂(NBRラテックス)100質量部に対する添加部数が10質量部となるように、平均粒子径37μmのセルロース粒子を前記第2塗布液に添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る手袋を作製した。
なお、セルロース粒子のL/Dは6.3であった。
【0086】
[実施例3]
樹脂(NBRラテックス)100質量部に対する添加部数が15質量部となるように、平均粒子径37μmのセルロース粒子を前記第2塗布液に添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る手袋を作製した。
なお、セルロース粒子のL/Dは6.3であった。
【0087】
[実施例4]
樹脂(NBRラテックス)100質量部に対する添加部数が20質量部となるように、平均粒子径37μmのセルロース粒子を前記第2塗布液に添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係る手袋を作製した。
なお、セルロース粒子のL/Dは6.3であった。
【0088】
[実施例5]
樹脂(NBRラテックス)100質量部に対する添加部数が30質量部となるように、平均粒子径37μmのセルロース粒子を前記第2塗布液に添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係る手袋を作製した。
なお、セルロース粒子のL/Dは6.3であった。
【0089】
[実施例6]
樹脂(NBRラテックス)100質量部に対する添加部数が40質量部となるように、平均粒子径37μmのセルロース粒子を前記第2塗布液に添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例6に係る手袋を作製した。
なお、セルロース粒子のL/Dは6.3であった。
【0090】
[実施例7]
樹脂(NBRラテックス)100質量部に対する添加部数が20質量部となるように、平均粒子径10μmのセルロース粒子を前記第2塗布液に添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例7に係る手袋を作製した。
なお、セルロース粒子のL/Dは4.3であった。
【0091】
[実施例8]
樹脂(NBRラテックス)100質量部に対する添加部数が20質量部となるように、平均粒子径17μmのセルロース粒子を前記第2塗布液に添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例8に係る手袋を作製した。
なお、セルロース粒子のL/Dは4.0であった。
【0092】
[実施例9]
樹脂(NBRラテックス)100質量部に対する添加部数が20質量部となるように、平均粒子径45μmのセルロース粒子を前記第2塗布液に添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例9に係る手袋を作製した。
なお、セルロース粒子のL/Dは5.8であった。
【0093】
[比較例1]
樹脂(NBRラテックス)100質量部に対する添加部数が5質量部となるように、平均粒子径37μmのセルロース粒子を前記第2塗布液に添加した以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る手袋を作製した。
なお、セルロース粒子のL/Dは6.3であった。
【0094】
[比較例2]
前記第2塗布液にセルロース粒子を含ませなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係る手袋を作製した。
【0095】
[参考例1]
参考例1に係る手袋として、パイル繊維(レーヨンのパイル繊維)を含み、かつ、発泡層として構成された最内層(着用者の掌、手の甲、及び、手首と接する層)を有する市販の手袋を準備した。
【0096】
(静的接触角)
各実施例及び各比較例に係る手袋について、蒸れ抑制層の表面に水滴を接触させた直後の静的接触角θ1、及び、蒸れ抑制層のマトリックス樹脂表面に水滴を接触させてから5秒後の静的接触角θ2を測定した。
静的接触角θ1及び静的接触角θ2は、以下のようにして求めた。
(1)各実施例及び各比較例に係る手袋の任意の箇所から、手袋本体の一部または裾部の一部を所定の寸法の平面矩形状(2cm×4cmの平面矩形状)で切り出して供試体を得る。
(2)前記供試体を100℃のオーブン内で30分間乾燥させる。
(3)乾燥後の前記供試体において、蒸れ抑制層のマトリックス樹脂表面に所定量の水滴を接触させる。具体的には、マイクロピペットを用いて、前記供試体の蒸れ抑制層のマトリックス樹脂表面に25μLの水滴を接触させる。
(4)前記供試体の蒸れ抑制層のマトリックス樹脂表面に水滴を接触させてから1秒以内に、前記水滴との静的接触角を測定する。
蒸れ抑制層のマトリックス樹脂表面に水滴を接触させた直後の静的接触角の測定は、接触角測定装置「DropMaster500」(協和界面科学社製)、及び、評価解析ソフトウェア「FAMAS」(協和界面科学社製)を用いて行う。
また、蒸れ抑制層のマトリックス樹脂表面に水滴を接触させた直後の静的接触角は、θ/2法にて算出する。
(5)前記供試体の蒸れ抑制層のマトリックス樹脂表面に水滴を接触させてから5秒後に、前記水滴との静的接触角を測定する。
蒸れ抑制層のマトリックス樹脂表面に水滴を接触させてから5秒後の静的接触角の測定は、蒸れ抑制層のマトリックス樹脂表面に水滴を接触させた直後の静的接触角の測定と同様にして行う。
(6)(1)~(5)を、各実施例及び各比較例に係る手袋の任意の3箇所から切り出した供試体(3個の供試体)について行って、各供試体について、蒸れ抑制層のマトリックス樹脂表面に水滴を接触させた直後の静的接触角の値、及び、蒸れ抑制層のマトリックス樹脂表面に水滴を接触させてから5秒後の静的接触角の値を得た後、これらの値をそれぞれ算術平均して、静的接触角θ1及び静的接触角θ2を求める。
また、各実施例及び各比較例に係る手袋について、上記のようにして求めた静的接触角θ1及び静的接触角θ2の値を用いて、下記式(1)によって静的接触角の変化率Rcを算出した。
各実施例及び各比較例に係る手袋について求めた、静的接触角θ1の値、静的接触角θ2の値、及び、静的接触角の変化率Rcを下記表3に示した。
【0097】
【0098】
【0099】
(最内層への水分移行性)
実施例2及び5に係る手袋、及び、比較例2に係る手袋について、最内層への水分移行性について調査した。
最内層への水分移行性は、以下のようにして調査した。
(1)実施例2及び5に係る手袋、及び、比較例2に係る手袋の任意の箇所から、手袋本体の一部または裾部の一部を所定の寸法の平面矩形状(3cm×5cmの平面矩形状)で切り出して供試体を得る。
(2)前記供試体を100℃のオーブン内で30分間乾燥させる。
(3)乾燥後の前記供試体を、最内層が外側となるように断面半円状の治具の半円部分に取り付けた後、前記供試体を取り付けた治具の質量(以下、初期質量W0という)を測定する。
(4)マイクロピペットを用いて、ガラスシャーレ内に25μLの水滴を置いた後、前記治具に取り付けた前記供試体の最内層を25μLの水滴に接触させ、接触後1秒以内に、前記水滴から前記供試体の最内層を離す。
(5)前記水滴から前記供試体の最内層を離してから10秒以内に、前記供試体を取り付けた治具の質量(以下、水接触後質量W1という)を測定する。
(6)(1)~(5)を、実施例2及び5に係る手袋、及び、比較例2に係る手袋の任意の3箇所から切り出した供試体(3個の供試体)について行って、各供試体について初期質量W0及び水接触後質量W1を得た後、これらの値を用いて、初期質量W0の算術平均値(W0ave)及び水接触後質量の算術平均値(W1ave)を求める。
(7)W1aveからW0aveを減じて、前記供試体の最内層への水分移行量WTを求める。
実施例2及び5に係る手袋から切り出した供試体、及び、比較例2に係る手袋から切り出した供試体について、水分移行量WTを求めた結果を、以下の表4に示した。
【0100】
【0101】
表4より、セルロース粒子を含む最内層(蒸れ抑制層)を有する、実施例2及び5に係る供試体の方が、セルロース粒子を含まない最内層を有する比較例2に係る供試体よりも、水分移行量WTの値が高くなることが把握される。
このことから、最内層にセルロース粒子を含ませることにより、着用者がかいた汗が最内層(蒸れ抑制層)の表面に移行し易くなることが把握される。
【0102】
各実施例に係る手袋、各比較例に係る手袋、及び、参考例1に係る手袋について、着用中の蒸れ性、及び、着用後の取り外し易さについて、評価を行った。
【0103】
(蒸れ性)
着用中の蒸れ性については、以下のようにして評価した。
(1)各実施例に係る手袋、各比較例に係る手袋、及び、参考例1に係る手袋を8名のパネラーに、それぞれ着用させる。
(2)8名のパネラーについて、各例に係る手袋の着用状態をそれぞれ2時間維持させる。
(3)各例に係る手袋の着用状態をそれぞれ2時間維持させた状態において、各パネラーに着用中の蒸れ性について以下の基準にしたがって評価させ、その評価結果を算術平均する。
4:着用中に蒸れを全く感じない。
3:着用中にやや蒸れを感じるものの、不快と感じるレベルではない。
2:着用中に蒸れを感じ、やや不快と感じる。
1:着用中にかなりの蒸れを感じ、極めて不快と感じる。
蒸れ性についての評価結果を以下の表5に示した。
【0104】
(取り外し易さ)
着用後の取り外し易さについては、以下のようにして評価した。
(1)各実施例に係る手袋、各比較例に係る手袋、及び、参考例1に手袋を8名のパネラーに、それぞれ着用させる。
(2)8名のパネラーについて、各例に係る手袋の着用状態をそれぞれ2時間維持させる。
(3)各例に係る手袋を2時間着用した後に、各パネラーの手から各例に係る手袋をそれぞれ取り外させ、各パネラーに着用後の取り外し易さについて以下の基準にしたがって評価させ、その評価結果を算術平均する。
4:最内層との引っ掛かりを殆ど感じずに、手袋を極めて容易に取り外すことができる。
3:最内層との引っ掛かりをやや感じるものの、手袋を比較的容易に取り外すことができる。
2:最内層との引っ掛かりが感じられ、手袋がやや取り外し難い。
1:最内層との引っ掛かりが極めて多く感じされ、手袋が極めて取り外し難い。
取り外し易さの評価結果について、以下の表5に示した。
【0105】
【0106】
表5より、各実施例に係る手袋は、着用中の蒸れ性の評価が3点以上となっているとともに、着用後の取り外し易さの評価が3点以上となっており、いずれの評価項目についても良好な結果となっていた。
特に、実施例2~実施例4に係る手袋は、着用中の蒸れ性の評価が4点以上となっているとともに、着用後の取り外し易さの評価が4点以上となっており、いずれの評価項目についても極めて良好な結果となっていた。
これに対し、セルロース粒子の添加部数が5質量部である比較例1に係る手袋では、着用中の蒸れ性の評価が1点となっているとともに、着用後の取り外し易さの評価が2点となっており、いずれの評価項目についても不良な結果となっていた。
また、セルロース粒子を添加していない比較例2に係る手袋では、着用中の蒸れ性の評価が1点となっているとともに、着用後の取り外し易さの評価が1点となっており、いずれの評価項目についても極めて不良な結果となっていた。
さらに、最内層が発泡層である参考例1に係る手袋では、着用中の蒸れ性の評価、および、着用後の取り外し易さの評価が、いずれも1点となっており、いずれの評価項目についても極めて不良な結果となっていた。