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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069535
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181449
(22)【出願日】2021-11-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売開始日:令和3年4月16日 販売場所:株式会社栄商会(静岡県浜松市東区神立町116番地5) 公開者名:株式会社栄商会
(71)【出願人】
【識別番号】300035294
【氏名又は名称】株式会社栄商会
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 隆
(57)【要約】
【課題】外部から使用者の表情が視認し易いマスクを提供する。
【解決手段】マスク100は、透明マスク本体101および周囲シート体110をそれぞれ備えている。透明マスク本体101は、使用者Uの口の前方に配置される透明なシート体で構成されている。周囲シート体110は、透明マスク本体101の四方を囲む本体支持部111を有するとともに耳掛け部114および下方覆い部115を備えている。本体支持部111には、透明マスク本体101の上縁部102を支持する上縁部112に流路形成部113が形成されている。流路形成部113は、上縁部112における内側面(顔面側の面)から使用者Uの顔面側に突出して形成されている。マスク100は、使用者Uの顔面に装着された際に、流路形成部113が使用者Uの鼻背上に配置されることで上縁部112と上唇鼻翼挙筋K上の皮膚との間に空気が流通可能な隙間からなる流通路Rを形成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の顔面における少なくとも口を覆う大きさの透明なシート体で構成された透明マスク本体と、
前記透明マスク本体部の周囲を囲んで配置されて同透明マスク本体部に接合されたシート状の周囲シート体と、
前記周囲シート体に繋がって形成されて前記使用者の耳に掛けられる耳掛け部とを備えて、前記耳掛け部が前記使用者の耳に掛けられることで前記透明マスク本体部が前記使用者の口の前方に配置されるマスクであって、
前記周囲シート体は、
前記マスクが前記使用者の顔面に装着された状態において、前記透明マスク本体部よりも上方の上縁部に前記使用者の顔面における上唇鼻翼挙筋上の皮膚との間に外気が流通可能な流通路を形成する流路形成部を有することを特徴とするマスク。
【請求項2】
請求項1に記載したマスクにおいて、
前記流路形成部は、
前記使用者の鼻背上に載置されるように前記周囲シート体における前記上縁部の内側面に突出して形成されて前記使用者の顔面における上唇鼻翼挙筋上の皮膚上に隙間を形成することを特徴とするマスク。
【請求項3】
請求項2に記載したマスクにおいて、
前記流路形成部は、
前記周囲シート体における前記上縁部を構成する生地が前記鼻背側に張り出して形成されていることを特徴とするマスク。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したマスクにおいて、
前記流路形成部は、
前記使用者の鼻尖に向かって突出量が少なくなるように形成されていることを特徴とするマスク。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載したマスクにおいて、
前記流路形成部は、
内部に空洞部を有して全体として弾性変形可能に形成されていることを特徴とするマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔面における少なくとも口を覆うように装着される衛生用品としてのマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、使用者の口およびその周辺を外部から視認することができる衛生用マスクがある。例えば、下記特許文献1には、使用者の口の前方に配置される透明性部材が両耳側から延びる不織布製の柔軟性薄片に取り付けられたマスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-24078号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載したマスクにおいては、使用者による吐息によって透明性部材が曇るため、対話者が使用者の口話または表情を正確に視認することができないという問題がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、外部から使用者の表情が視認し易いマスクを提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、使用者の顔面における少なくとも口を覆う大きさの透明なシート体で構成された透明マスク本体と、透明マスク本体部の周囲を囲んで配置されて同透明マスク本体部に接合されたシート状の周囲シート体と、周囲シート体に繋がって形成されて使用者の耳に掛けられる耳掛け部とを備えて、耳掛け部が使用者の耳に掛けられることで透明マスク本体部が使用者の口の前方に配置されるマスクであって、周囲シート体は、マスクが使用者の顔面に装着された状態において、透明マスク本体部よりも上方の上縁部に使用者の顔面における上唇鼻翼挙筋上の皮膚との間に外気が流通可能な流通路を形成する流路形成部を有することにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、マスクは、周囲シート体における透明マスク本体よりも上方の上縁部に使用者の顔面における上唇鼻翼挙筋上の皮膚との間に外気が流通可能な流通路を形成する流路形成部を有しているため、使用者の吐息が円滑にマスク外に排出されるとともに外気がマスク内に円滑に導入されることで透明マスク本体の曇りを防止して外部から使用者の表情が視認し易くすることができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記マスクにおいて、流路形成部は、使用者の鼻背上に載置されるように周囲シート体における上縁部の内側面に突出して形成されて使用者の顔面における上唇鼻翼挙筋上の皮膚上に隙間を形成することにある。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、マスクは、流路形成部が使用者の鼻背上に載置されるように周囲シート体における上縁部の内側面に突出して形成されて使用者の顔面における上唇鼻翼挙筋上の皮膚上に隙間を形成するため、使用者の顔面上に流通路を簡単に形成することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記マスクにおいて、流路形成部は、周囲シート体における上縁部を構成する生地が鼻背側に張り出して形成されていることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、マスクは、流路形成部が周囲シート体における上縁部を構成する生地が鼻背側に張り出して形成されているため、流路形成部を別部品を用いることなく効率的に形成することができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記マスクにおいて、流路形成部は、使用者の鼻尖に向かって突出量が少なくなるように形成されていることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、マスクは、流路形成部が使用者の鼻尖に向かって突出量が少なくなるように形成されているため、使用者の鼻背に沿って接触させることができフィット感を向上させることができるとともに外部から見たときの異物感を軽減することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記マスクにおいて、流路形成部は、内部に空洞部を有して全体として弾性変形可能に形成されていることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、マスクは、流路形成部が内部に空洞部を有して全体として弾性変形可能に形成されているため、使用者の顔面に対して不快感を抑えながらフィット感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るマスクを斜め前方から見た外観構成の概略を示す斜視図である。
図2図1に示すマスクを使用者の顔面に装着した状態を示した使用状態側面図である。
図3図1に示すマスクを構成する透明マスク本体単品の外観構成の概略を展開した状態をマスクの内側方向から見た背面図である。
図4図1に示すマスクを構成する周囲シート体単品の外観構成の概略を展開した状態で示す背面図(マスクの内側から見た図)である。
図5】人の顔面における上唇鼻翼挙筋の形成位置を示すための人の顔の正面図である。
図6図1に示すマスクを使用者の顔面に装着した状態をマスクの左半分を省略して二点鎖線で示した使用状態側面図である。
図7図1に示すマスクの開いた状態をマスクの内側から見た要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るマスクの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るマスク100を斜め前方から見た外観構成の概略を示す斜視図である。図2は、図1に示すマスク100を使用者Uの顔面に装着した状態を示した使用状態斜視図である。また、図3は、図1に示すマスク100を構成する透明マスク本体101の展開した状態をマスク100の内側方向から見た背面図である。また、図4は、図1に示すマスク100を構成する周囲シート体110の展開した状態をマスク100の内側方向から見た背面図である。このマスク100は、使用者Uの口、鼻およびそれらの周辺部分を覆うように装着されて飛沫の吸引および飛散を防止するための衛生用具である。
【0018】
(マスク100の構成)
マスク100は、主として、透明マスク本体101と周囲シート体110とをそれぞれ備えて構成されている。透明マスク本体101は、使用者Uの顔面における目より下の部分の前方に配置されて使用者Uの顔面が透視可能な状態で覆う部品であり、顔面に沿って湾曲する透明なシート体で構成されている。
【0019】
この場合、透明マスク本体101は、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、塩化ビニルなどの各種樹脂材またはセルロースを可撓性を有する薄いシート状またはフィルム状に形成して構成されている。本実施形態においては、透明マスク本体101は、厚さが0.3mmのセルロース製のシート体を顔面における目よりも下から顎までの範囲でかつ左右の頬を覆う大きさに形成されている。
【0020】
より具体的には、透明マスク本体101は、使用者Uの左右の目の下の部分に配置される上縁部102が水平方向(使用者Uの顔面の左右方向)に沿って凸状の円弧部を有しつつ延びて形成されており、この上縁部102の両端部から下方に向かって側縁部103a,103bが円弧状に延びて下縁部104で円弧状に繋がって形成されている。これにより、透明マスク本体101は、マスク100の正面視で下方に凸状に張り出す略半円形状に形成されている。なお、本願において、「右」および「左」は、使用者Uの左右である。
【0021】
なお、透明マスク本体101は、呼気による表面の曇りを防止するために表面に防曇加工が施されていてもよい。また、図1においては、マスク100における透明マスク本体101の後方に位置する構成を破線で示している。
【0022】
周囲シート体110は、透明マスク本体101を使用者Uの顔面の前方に位置させるための部品であり、顔面に沿って柔軟に変形するシート体で構成されている。この場合、周囲シート体110は、化学繊維または天然繊維からなる生地、例えば、伸縮性に富む編物(ニット、Wラッセル、径編(トリコット)、緯編、丸編など)、不織布またはT/C生地のほか、伸縮性に乏しい織物(パイル生地、綿布生地、ジャガード生地など)、綿入りキルト生地を用いることができる。また、この場合、周囲シート体110は、通気性を有して構成されていてもよいし、通気性を有さないように構成されていてもよい。
【0023】
この周囲シート体110は、主として、本体支持部111、耳掛け部114および下方覆い部115をそれぞれ備えて構成されている。本体支持部111は、前記透明マスク本体101を支持する部分であり、透明マスク本体101側の外形形状に対応する孔部を有する環状に形成されている。すなわち、本体支持部111は、透明マスク本体101の四方を支持している。この本体支持部111には、上縁部112が形成されている。
【0024】
上縁部112は、透明マスク本体101の上縁部102を支持するとともに、使用者Uの左右の目の下の部分上に左右方向に延びて配置される部分である。この上縁部112は、図2の破線に示すように、マスク100が使用者Uの顔面に装着された際に使用者Uの目の下の部分に密着しつつ、鼻背と目の下の皮膚との間で張られることで顔面における鼻の立ち上がり部分、換言すれば、上唇鼻翼挙筋K上の皮膚との間に空気が流通可能な隙間からなる流通路Rを形成するように形成されている。また、上縁部112における左右方向中央部、換言すれば、マスク100が使用者Uの顔面に装着された場合において使用者Uの鼻背上に配置される部分には流路形成部113が形成されている。
【0025】
なお、上唇鼻翼挙筋Kは、図5に示すように、人の顔面における鼻の横に存在する表情筋の一つであり、鼻の横に沿って延びて上顎骨と上唇を繋いでいる。本発明に係るマスク100が使用者Uの顔面上に形成する流通路Rは、厳密な意味で上唇鼻翼挙筋K上に形成されることを意味するものではなく、上唇鼻翼挙筋K上の付近、すなわち、鼻の横の立ち上がり部分上に沿って形成されることを広く意味するものである。
【0026】
流路形成部113は、図6および図7にそれぞれ示すように、上縁部112と上唇鼻翼挙筋K上の皮膚との間に空気が流通可能な隙間からなる流通路Rを形成するための部分であり、上縁部112における内側面(顔面側の面)から顔面側に突出して形成されている。より具体的には、流路形成部113は、上縁部112における左右方向中央部が内側に向かって山折りされて縫合されることで内側に向かって滴状に張り出して形成されている。この場合、流路形成部113は、山折りされた内側に空洞部113aを有して全体として弾性変形可能に形成されている。
【0027】
また、流路形成部113は、上縁部112の先端部から透明マスク本体101側に向かって突出量が連続的に少なくなるように側面視で略三角形状に形成されている。本実施形態においては、流路形成部113は、上縁部112の先端部側の突出量が7mmに形成されているが、この突出量はマスク100の仕様に応じて適宜決定される。なお、この流路形成部113の突出量は、10mm以下が好適である。
【0028】
耳掛け部114は、使用者Uの耳に掛ける部分であり、本体支持部111に対してマスク100の左右両側方に延びる環状に形成されている。この耳掛け部114は、本体支持部111から一体的に延びるシート体に耳を貫通させることできる貫通孔状の通し孔114aが形成されて構成されている。
【0029】
下方覆い部115は、使用者Uの顎を覆う部分であり、本体支持部111の下方に延びた後、内側に折れ曲がって形成されている。この場合、下方覆い部115は、本体支持部111の下部から互いに離隔する斜め下方向に向かって延びる2つの右側片115aと左側片115bとがマスク100の内側に折られて互いに対向する辺同士が縫合または接着により接合されて構成されている。これにより、マスク100は、使用者Uの口の前方に前方空間Sが形成されるように前方に膨出する立体形状に形成される。
【0030】
(マスク100の製造)
次に、上記したマスク100の製造過程について説明する。マスク100を製造する作業者は、まず、第1工程として、透明マスク本体101を用意する。具体的には、作業者は、セルロース製のシート体に対して打ち抜き加工または切り抜き加工などの切断加工によって透明マスク本体101を切り抜く。
【0031】
次に、作業者は、第2工程として、周囲シート体110を用意する。具体的には、作業者は、周囲シート体110の形状に切り抜いた発泡ポリウレタン製のシート体を周囲シート体110の形状に切り抜いた2つのトリコット生地で挟んで一体化する。この場合、これら3つのシート体は、熱溶着により貼り合わせるフレームラミネート加工、接着剤による貼り合わせまたは縫合によって一体的に接合することができる。
【0032】
次いで、作業者は、周囲シート体110における右側片115aと左側片115bとをマスク100の内側に折って互いに対向する辺同士を縫合することで接合する。これにより、周囲シート体110は、本体支持部111の下方に延びた後、内側に折れ曲がって形成される。
【0033】
次に、作業者は、第3工程として、透明マスク本体101と周囲シート体110とを互いに接合する。具体的には、作業者は、周囲シート体110における本体支持部111の内周縁部の全域に両面粘着テープを連続的に貼り付けた後、透明マスク本体101における側縁部103a,103bおよび下縁部104をそれぞれ重ね合わせて両者を接着する。次いで、作業者は、互いに重なり合う透明マスク本体101における側縁部103a,103bおよび下縁部104と周囲シート体110における本体支持部111とを縫合することで透明マスク本体101と周囲シート体110とを互いに接合することができる。
【0034】
次に、作業者は、第4工程として、周囲シート体110の上縁部112の内側面に流路形成部113を形成する。具体的には、作業者は、周囲シート体110の上縁部112の左右方向中央部を内側に山折りするとともに、山折りすることで互いに対向し合う上縁部112同士を互いに縫合する。これにより、作業者は、周囲シート体110の上縁部112の内側面に張り出すとともに内部に空洞部113aを有した状態で流路形成部113を形成することができる。なお、流路形成部113は、縫合に代えて接着剤または溶着によって形成されてもよい。また、図1図2図6および図7においては、縫合糸の図示を省略している。
【0035】
これにより、作業者は、周囲シート体110に透明マスク本体101が取り付けられたマスク100を完成させることができる。なお、この第4工程の後、作業者は、マスク100の清掃作業、検査作業および梱包作業を行うが、これらの作業は本発明に直接関らないため説明を省略する。また、本実施形態においては、マスク100は、左右対称に形成されている。
【0036】
(マスク100の作動)
次に、このように構成したマスク100の作動について説明する。マスク100を使用する使用者Uは、マスク100を用意して顔面に装着する。具体的には、使用者Uは、マスク100における透明マスク本体101を自らの口および鼻の前方に配置した状態で左右一対の耳掛け部114を左右の両耳にそれぞれ引っ掛ける。これにより、マスク100は、透明マスク本体101が使用者Uの顔面における口および鼻の周囲を覆った状態で装着される。
【0037】
この場合、マスク100は、周囲シート体110における上縁部112の内側に形成された流路形成部113が使用者Uの鼻背上に押し付けられる。これにより、マスク100は、図2および図6にそれぞれ示すように、使用者Uの鼻背の左右両側の上唇鼻翼挙筋K上と周囲シート体110の上縁部112との間に流通路Rがそれぞれ形成されるとともに、これら2つの流通路Rから更に側方(耳側)部分の上縁部112が使用者Uの目の下の部分にそれぞれ接触する。また、マスク100は、周囲シート体110における透明マスク本体101における側縁部103a,103bに隣接する部分および下方覆い部115が使用者Uの頬にそれぞれ接触しつつ使用者Uの口およびその周囲と透明マスク本体101との間に前方空間Sを形成する。
【0038】
このようなマスク100の装着状態で使用者Uが呼吸を行う場合においては、図2および図6においてそれぞれ破線で示すように、使用者Uの呼気はその一部が流通路Rを介して前方空間Sの外に排出されるとともに、他の一部が周囲シート体110を介して前方空間Sの外に排出される。また、使用者Uが息を吸った場合には、前方空間Sの一部に流通路Rを介して外気が吸引されるとともに、前方空間Sの他の一部に周囲シート体110を介して外気が吸引される。これにより、マスク100は、透明マスク本体101が曇ることによる外部からの視認性の低下を防止することができる。
【0039】
なお、このマスク100は、流通路Rを介して呼吸が行われるため、飛沫、粉塵、細菌またはウイルスなどの各種異物が前方空間Sに対して出入りし易くフィルタとしての機能が弱いものであるが、使用者Uの顔の外部からの視認性の確保に重きを置いたものである。
【0040】
次に、使用者Uは、マスク100の使用を中断する際には、マスク100を顔面から取り外す。具体的には、使用者Uは、両耳からそれぞれ耳掛け部114を外すことでマスク100を顔面から取り外すことができる。そして、使用者Uは、マスク100を左右中央部を境として2つ折りにして保管することができる。この場合、作業者は、周囲シート体110における下方覆い部115を2つ折りされた透明マスク本体101の内側に配置することで保管時における透明マスク本体101の損傷を防止することができる。
【0041】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、マスク100は、周囲シート体110における透明マスク本体101よりも上方の上縁部112に使用者Uの顔面における上唇鼻翼挙筋K上の皮膚との間に外気が流通可能な流通路Rを形成する流路形成部113を有しているため、使用者Uの吐息が円滑にマスク100の外に排出されるとともに外気がマスク100内に円滑に導入されることで透明マスク本体101の曇りを防止して外部から使用者Uの表情が視認し易くすることができる。
【0042】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、各変形例の説明で参照図においては、上記実施形態と同様の部分については同じ符号を付している。
【0043】
例えば、上記実施形態においては、流路形成部113は、上縁部112における左右方向中央部に形成してマスク100が使用者Uの顔面に装着された際に鼻背上に配置されるように構成した。しかし、流路形成部113は、使用者Uの顔面における上唇鼻翼挙筋K上の皮膚との間に外気が流通可能な流通路Rを形成することができればよい。したがって、流路形成部113は、マスク100が使用者Uの顔面に装着された際に鼻背の両側の斜面上に配置されるように形成してもよい。また、流路形成部113は、マスク100が使用者Uの顔面に装着された際に上唇鼻翼挙筋K上の皮膚に配置されるように形成してもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、流路形成部113は、上縁部112の内側面に張り出す突起状に形成した。しかし、流路形成部113は、例えば、マスク100が使用者Uの顔面に装着された際に上唇鼻翼挙筋K上の皮膚に配置されるように形成した場合には、上縁部112に形成した1つまたは複数の貫通孔で構成することもできる。
【0045】
また、上記実施形態においては、流路形成部113は、上縁部112の一部を折って上縁部112と一体的に形成した。しかし、流路形成部113は、上縁部112とは別体で形成した上で上縁部112に接合して設けてもよい。この場合、流路形成部113は、両面テープなどを用いて上縁部112に対して着脱自在に構成することもできる。
【0046】
また、上記実施形態においては、流路形成部113は、透明マスク本体101側(使用者Uの鼻尖)に向かって突出量が少なくなるように形成した。しかし、流路形成部113は、透明マスク本体101側(使用者Uの鼻尖)に向かって突出量が一定または増加するように形成することもできる。
【0047】
また、上記実施形態においては、流路形成部113は、内部に空洞部113aを有して全体として弾性変形可能に形成した。しかし、流路形成部113は、空洞部113aを省略して中実に形成してもよい。この場合、流路形成部113は、発泡ウレタン材などの多孔質の材料で構成することもできる。また、流路形成部113は、軟質の樹脂材またはゴム材などのエラストマ材のほか、布材で構成することもできる。さらに、流路形成部113は、硬質の樹脂材を用いて弾性変形しない剛体で構成することもできる。
【0048】
また、上記実施形態においては、透明マスク本体101は、略半円形状に形成した。しかし、透明マスク本体101は、半円形状のほかに、方形、円形(だ円形を含む)または多角形状に形成することもできる。
【0049】
また、上記実施形態においては、耳掛け部114は、周囲シート体110と同一の材料で周囲シート体110に対して一体的に構成した。しかし、耳掛け部114は、周囲シート体110とは別体で構成することもできる。例えば、耳掛け部114は、ひも状に形成して周囲シート体110または透明マスク本体101に連結されて構成されていてもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、透明マスク本体101は、周囲シート体110の内側面に接合した。しかし、透明マスク本体101は、周囲シート体110の外側面に接合してもよいし、周囲シート体110が複数のシート体で構成される場合にはこれら複数のシート体で透明マスク本体101の外縁部を挟んで接合するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
U…使用者、K…上唇鼻翼挙筋、S…前方空間、R…流通路、
100…マスク、101…透明マスク本体、102…上縁部、103a,103b…側縁部、104…下縁部、
110…周囲シート体、111…本体支持部、112…上縁部、113…流路形成部、113a…空洞部、114…耳掛け部、114a…通し孔、115…下方覆い部、115a…右側片、115b…左側片。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7