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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069568
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】二重反転プロペラ装置の測定装置
(51)【国際特許分類】
   B64C 11/46 20060101AFI20230511BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20230511BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20230511BHJP
【FI】
B64C11/46
B64D27/24
B64C27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181522
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】502211582
【氏名又は名称】株式会社先端力学シミュレーション研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100127328
【弁理士】
【氏名又は名称】八木澤 史彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】大川 由夫
(72)【発明者】
【氏名】奥村 直史
(57)【要約】
【課題】2組の回転装置を備える二重反転プロペラ装置において、各回転装置が生成する力を測定すること。
【解決手段】一つのモーター22とプロペラ32を含んで構成される回転装置20を2組備える二重反転プロペラ装置によって生じる力を測定するための二重反転プロペラの測定装置100であって、各モーター22にそれぞれ固定される第一の測定手段40と、長手方向において各モーター22を固定するアーム部10と、アーム部の長手方向における各前記モーターの位置を変更する位置変更手段と、各モーター22の回転軸について、鉛直方向から乖離する角度である傾斜角度を変更する角度変更手段と、位置及び傾斜角度と関連づけて、第一の測定手段40からの出力を記憶する記憶手段と、を有し、第一の測定手段40は、互いに直交する3つの方向であるX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向における力及びモーメント(トルク)を測定するように構成されており、Z軸方向が各モーター22の回転軸の方向と一致するように各モーター22に固定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つのモーターと、前記モーターに接続されるプロペラを含んで構成される回転装置を2組備える二重反転プロペラ装置によって生じる力を測定するための二重反転プロペラ装置の測定装置であって、
各前記モーターにそれぞれ固定される第一の測定手段と、
長手方向において各前記モーターが固定されるアーム部と、
前記アーム部の前記長手方向における各前記モーターの位置を変更する位置変更手段と、
各前記モーターの回転軸について、鉛直方向から乖離する角度である傾斜角度を変更する角度変更手段と、
前記位置及び前記傾斜角度と関連づけて、前記第一の測定手段によって得た測定データを記憶する記憶手段と、
を有し、
前記第一の測定手段は、互いに直交する3つの方向であるX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向における力及びモーメント(トルク)を測定するように構成されており、前記Z軸方向が各前記モーターの回転軸の方向と一致するように各前記モーターに固定される、
二重反転プロペラ装置の測定装置。
【請求項2】
前記測定装置は、前記第一の測定手段とは別に、各前記モーターとは接しない位置において、前記測定装置自体に作用する鉛直方向の力を測定するための第二の測定手段を備え、
前記記憶手段は、前記位置及び前記傾斜角度と関連づけて、前記第二の測定手段からの出力も記憶する、
請求項1に記載の二重反転プロペラ装置の測定装置。
【請求項3】
前記第一の測定手段は6軸力覚センサであり、
前記第二の測定手段はロードセルである、請求項2に記載の二重反転プロペラの測定装置。
【請求項4】
前記測定装置は、予測プログラムを有し、前記第一の測定手段及び前記第二の測定手段によって得た複数の測定データを処理し、前記2組の前記回転装置による合計の推力が最大となると予想される各前記回転装置の位置と各前記回転装置の回転軸の傾斜角度を算出し、及び/または、各前記回転装置の振動が所定範囲内において、前記2組の前記回転装置による合計の推力が最大となると予想される各前記回転装置の位置と各前記回転装置の回転軸の傾斜角度を算出する、
請求項2に記載の二重反転プロペラ装置の測定装置。
【請求項5】
前記測定装置は、実測装置制御プログラムを有し、
前記位置変更手段は、前記実測装置制御プログラムによって、前記アーム部の前記長手方向における各前記モーターの位置を自動的に変更し、
前記角度変更手段は、前記実測装置制御プログラムによって、各前記モーターの回転軸について、鉛直方向から乖離する角度である傾斜角度を自動的に変更するように構成されている、
請求項2に記載の二重反転プロペラ装置の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つのモーターに接続されるプロペラから構成される回転装置を2組備え、2つのプロペラが互いに反対方向に回転する二重反転プロペラ装置によって生成される力を測定するための二重反転プロペラ装置の測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のプロペラによって推力を得て飛行する飛行体が利用されている。飛行体は、例えば、無人飛行体(「ドローン」とも呼ばれる。)である。そのような飛行体において、重量が大きな物を搬送するなど、相対的に大きな推力を要する場合に、二重反転プロペラ装置の利用が提案されている(例えば、特許文献1)。本明細書において、一つのモーターと、それに接続されるプロペラの組を「回転装置」と呼ぶ。特許文献1の二重反転プロペラ装置は、2組の回転装置で構成されている(特許文献2の図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-91268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の発明者は、特許文献1のように、上下2組の回転装置を備える二重反転プロペラ装置において、2組のモーターの回転軸が同軸かつ鉛直の構成の場合(以下、「従来構成」と呼ぶ。)、各回転装置の本来の推力の2倍の推力は発生しないことに着目した。本発明の発明者によれば、例えば、各回転装置の本来の推力(例えば、定格電圧・定格電流を供給した場合の推力)が同一であるとすれば、二重反転プロペラ装置の推力は各回転装置の2倍には至らず、最大でも各回転装置の約1.5倍となる。このため、二重反転プロペラ装置において、各回転装置の推力を効率的に利用するための改良案が求められている。この改良案として、従来構成とは異なり、2組のモーターの水平方向における位置をずらす、及び/または、一方または双方のモーターの回転軸を傾斜させる構成が有力である。ここで、本発明の発明者は、改良案の開発を緻密かつ効率的に進行するためには、二重反転プロペラ装置全体としての推力のデータだけではなく、各回転装置によって生じる力のデータが重要であることを見出した。各回転装置によって生じる力は、推力に限定されず、推力方向とは異なる方向の力や振動(以下、「挙動」とも呼ぶ。)も含む。これらの挙動は、二重反転プロペラ装置の性能に影響する。性能としては、推力が重要であるが、飛行体から生じる騒音の大きさも性能の一部である。各回転装置の振動は、二重反転プロペラ装置を複数搭載した飛行体の推力にも影響するが、騒音にも関連する。例えば、複数の二重反転プロペラ装置の対比において、推力が同等の場合には騒音が小さい方が性能として優れている。あるいは、二重反転プロペラ装置を搭載した飛行体の用途によっては、推力が一定程度小さいとしても、騒音が小さい方が性能として優れている場合もある。ここで、二重反転プロペラ装置は、モーターの仕様とプロペラの仕様の組み合わせが様々であることに加えて、2組の回転装置が互いに複雑な影響を与えるため、二重反転プロペラ装置全体としての推力だけでさえ、その計算は複雑である。まして、二重反転プロペラ装置全体としての騒音発生の原因となる挙動や、各回転装置の推力や挙動の計算は複雑である。上記の改善案の構成によって生じる様々な力を解析(シミュレーション)によって算出することは可能であるが、時間・費用がかかるうえに、あくまでも理論値であり、実体と乖離する可能性がある。そこで、2つの回転装置のそれぞれによって生成される力を実測するための構成として、本発明に至った。
【0005】
本発明はかかる問題の解決を試みたものであり、2組の回転装置を備える二重反転プロペラ装置において、各回転装置が生成する力を測定するための二重反転プロペラ装置の測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、一つのモーターと、前記モーターに接続されるプロペラを含んで構成される回転装置を2組備える二重反転プロペラ装置によって生じる力を測定するための二重反転プロペラ装置の測定装置であって、各前記モーターにそれぞれ固定される第一の測定手段と、長手方向において各前記モーターが固定されるアーム部と、前記アーム部の前記長手方向における各前記モーターの位置を変更する位置変更手段と、各前記モーターの回転軸について、鉛直方向から乖離する角度である傾斜角度を変更する角度変更手段と、前記位置及び前記傾斜角度と関連づけて、前記第一の測定手段によって得た測定データを記憶する記憶手段と、を有し、前記第一の測定手段は、互いに直交する3つの方向であるX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向における力及びモーメント(トルク)を測定するように構成されており、前記Z軸方向が各前記モーターの回転軸の方向と一致するように各前記モーターに固定される、二重反転プロペラ装置の測定装置である。
【0007】
第一の発明の構成によれば、2組の回転装置を備える二重反転プロペラ装置において、各回転装置が生成する力を測定することができる。しかも、位置変更手段によって、アーム部の長手方向における各モーターの位置を変更し、また、角度変更手段によって、各モーターの回転軸の傾斜角度を変更することができるから、様々な位置と傾斜角度の組み合わせにおいて上記の測定を行うことができる。
【0008】
第二の発明は、第一の発明の構成において、前記測定装置は、前記第一の測定手段とは別に、各前記モーターとは接しない位置において、前記測定装置自体に作用する鉛直方向の力を測定するための第二の測定手段を備え、前記記憶手段は、前記位置及び前記傾斜角度と関連づけて、前記第二の測定手段からの出力も記憶する、二重反転プロペラ装置の測定装置である。
【0009】
第二の発明の構成によれば、二重反転プロペラ装置全体として生成する力も測定することができる。第一の測定手段によっても、2組の回転装置のZ軸の方向を鉛直方向に換算することによって、二重反転プロペラ装置全体としての鉛直方向の力(推力)を算出することができるのであるが、一方の回転装置が他方の回転装置に伝える力や、一方の回転装置によって生じる気流が他方の回転装置自体や他方の回転装置の周囲の気流の状態に与える影響の計算は複雑であるから、信頼度の高い正確な計算は困難である。この点、第二の発明の構成によれば、第二の測定手段によって、二重反転プロペラ装置全体としての推力を示すデータを直接的に示し、信頼度が高いデータを取得することができる。
【0010】
第三の発明は、第二の発明の構成において、前記第一の測定手段は6軸力覚センサであり、前記第二の測定手段はロードセルである、二重反転プロペラ装置の測定装置である。
【0011】
第四の発明は、第二の発明の構成において、前記測定装置は、予測プログラムを有し、前記第一の測定手段及び前記第二の測定手段によって得た複数の測定データを処理し、前記2組の前記回転装置による合計の推力が最大となると予想される各前記回転装置の位置と各前記回転装置の回転軸の傾斜角度を算出し、及び/または、各前記回転装置の振動が所定範囲内において、前記2組の前記回転装置による合計の推力が最大となると予想される各前記回転装置の位置と各前記回転装置の回転軸の傾斜角度を算出する、二重反転プロペラ装置の測定装置である。
【0012】
第四の発明の構成によれば、二重反転プロペラ装置における各回転装置の位置や、各回転装置の回転軸の傾斜を調整するときに、予測プログラムによって算出した予想データを参照することができる。
【0013】
第五の発明は、第二の発明の構成において、前記測定装置は、実測装置制御プログラムを有し、前記位置変更手段は、前記実測装置制御プログラムによって、前記アーム部の前記長手方向における各前記モーターの位置を自動的に変更し、前記角度変更手段は、前記実測装置制御プログラムによって、各前記モーターの回転軸について、鉛直方向から乖離する角度である傾斜角度を自動的に変更するように構成されている、二重反転プロペラ装置の測定装置である。
【0014】
第五の発明の構成によれば、各回転装置間の位置と回転軸の傾斜角度が自動的に変更され、自動的に様々な条件における測定データを取得することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、2組の回転装置を備える二重反転プロペラ装置において、各回転装置が生成する力を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一の実施形態に係る二重反転プロペラの測定装置を示す概略図である。
図2】モーターを示す概略図である。
図3】モーターと6軸力覚センサを示す概略図である。
図4】モーターの接続構造を示す概略側面図である。
図5】フランジの図4のAA線概略端面図であり、6軸力覚センサの収納部を説明するための図である。
図6】フランジを図4の矢印A1方向から視た概略平面図である。
図7】円柱状部材の概略側面図である。
図8】円柱状部材を図7の矢印A1方向から視た概略平面図である。
図9】フランジと円柱状部材の固定構造を示す概略図である。
図10】フランジと円柱状部材の固定構造を示す概略図である。
図11】スライド部材とアーム部の固定構造を示す概略側面図である。
図12】スライド部材とアーム部の固定構造を示す概略平面図である。
図13】スライド部材とアーム部の固定構造を示す概略平面図である。
図14】6軸力覚センサの出力を示す概念図である。
図15】2つのモーターの位置及び回転軸の傾斜角度の一例を示す概略図である。
図16】2つのモーターの位置及び回転軸の傾斜角度の一例を示す概略図である。
図17】2つのモーターの位置及び回転軸の傾斜角度の一例を示す概略図である。
図18】2つのモーターの位置及び回転軸の傾斜角度の一例を示す概略図である。
図19】2つのモーターの位置及び回転軸の傾斜角度の一例を示す概略図である。
図20】測定データの一例を示す概略図である。
図21】実測装置の機能ブロックを示す概念図である。
図22】評価装置の機能ブロックを示す概念図である。
図23】測定装置の使用方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以下の説明においては、同様の構成には同じ符号を付し、その説明を省略又は簡略する。なお、当業者が適宜実施できる構成については説明を省略し、本発明の基本的な構成についてのみ説明する。
【0018】
<第一の実施形態>
図1に示すように、二重反転プロペラの測定装置100は、実測装置1と評価装置50で構成される。実測装置1で測定して得た測定データを評価装置50によって記憶、分析し、測定データ及び/または分析結果を表示する。評価装置50は、例えば、パーソナルコンピュータである。評価装置50は、記憶手段の一例である。実際の飛行体においては、二重反転プロペラ装置は複数搭載される。例えば、飛行体には、二重反転プロペラ装置は、4組、6組、あるいは、8組搭載されるが、数量はこれに限定されない。また、飛行体は、無人飛行体に限らず、例えば、有人飛行体も含む。測定装置100は、そのうち、1組の二重反転プロペラ装置の性能を測定するための装置である。
【0019】
実測装置1はアーム部10を含む。アーム部10は、適度な剛性と弾性を有する材料で構成されている。アーム部10は、例えば、金属製であり、具体的には、例えば、アルミ合金製である。アーム部10は、板状の細長い形状に構成されている。アーム部10の上面10a及び下面10bには、長手方向に延びる溝部10sが2本平行に形成されている。
【0020】
アーム部10の上面10a及び下面10bには、それぞれモーター22A及び22Bが配置されている。アーム部10の長手方向における任意の位置に、モーター22A及び22Bが固定される。モーター22A及び22Bの共通の構成について説明するときなど、モーター22A及び22Bを区別する必要がないときには、モーター22A及び22Bを総称して「モーター22」と呼ぶ。なお、本実施形態とは異なり、上面10aまたは下面10bに、モーター22A及び22Bの双方を固定可能な構成としてもよい。
【0021】
モーター22には、プロペラ接続板30を介してプロペラ片32L及び32Rが接続されている。後述のように、モーター22の底部には6軸力覚センサ40(図3参照)が固定されており、フランジ18及び円柱状部材16の内部に格納されるようになっている。6軸力覚センサ40は、第一の測定手段の一例である。
【0022】
アーム部10の一方の端部近傍の下面10bにロードセル12が配置されている。ロードセル12は、第二の測定手段の一例である。ロードセル12のアーム部10と接しない側は、固定されている。すなわち、アーム部10の長手方向においてロードセル12が配置されている一方の端部は固定端であり、他方の端部は自由端である。アーム部10の長手方向において、ロードセル12は固定端側の位置に配置され、モーター22は固定端側ではない位置に配置される。
【0023】
モーター22は、スライド部材14、円柱状部材16及びフランジ18を介してアーム部10に固定されている。実測装置1において、アーム部10の長手方向におけるモーター22の位置、及び、モーター22の回転軸の傾斜角度が変更可能に構成されている。本明細書において、傾斜角度は、モーター22の回転軸が延びる方向について、鉛直方向から乖離する角度を意味する。すなわち、モーター22の回転軸の方向が鉛直方向と同一であれば、傾斜角度は0度である。
【0024】
スライド部材14は、アーム部10の長手方向における位置が変更可能に構成されている。円柱状部材16はスライド部材14に固定されている。モーター22はフランジ18に固定されている。アーム部10の長手方向におけるスライド部材14の位置を変更することによって、モーター22Aとモーター22Bの位置、及び、双方の間の距離を変更することができる。フランジ18は、円柱状部材16に対する角度が変更可能な状態で円柱状部材16に固定されている。スライド部材14の位置を変更することによって、アーム部10の長手方向におけるモーター22の位置が変更可能であり、円柱状部材16に対するフランジ18の角度を変更することによって、モーター22A及モーター22Bのそれぞれの回転軸の傾斜角度を変更することができる。
【0025】
図2に示すように、モーター22は、例えば、アウターローター式のブラシレスDC(Direct current)モーターである。図2(a)はモーター22の外観を示し、図2(b)はモーター22の内部の概略を示す。図2(b)に示すように、ステーター22aの中心部22aaには、複数の巻線部22abが放射状に固定されている。ローター22bの内周面には、複数の永久磁石22bdが固定されている。隣り合う永久磁石22bdは、互いに極性が異なる。各巻線部22abに流す電流を制御することによって、回転磁界を生成し、巻線部22abと永久磁石22bdとが吸引・反発を繰り返すことによって、ローター22bが回転する。なお、本実施形態とは異なり、モーター22は、インナーローター式のモーターであってもよい。
【0026】
図2(a)に示すように、ローター22bには切欠き部22bcが形成されており、ステーター22aの巻線22abを空気によって冷却する。また、ローター22bには接続部22baが形成されており、接続部22baにプロペラ接続板30が接続される(図1及び図4参照)。プロペラ接続板30に、一組のプロペラ32R及び32L片から構成されるプロペラ32が接続される(図1及び図4参照)。
【0027】
図1に示すように、回転装置20Aは、モーター22Aとプロペラ32(プロペラ片32R及び32L)から構成される。回転装置20Bは、モーター22Bとプロペラ32(プロペラ片32R及び32L)から構成される。回転装置20Aと回転装置20Bのプロペラ32は、互いに反対方向に回転する。すなわち、回転装置20Aと回転装置20Bによって、二重反転プロペラ装置が構成される。回転装置20Aと回転装置20Bを総称して「回転装置20」と呼ぶ。なお、本実施形態においては、モーター22に接続されるプロペラ32は、プロペラ片32R及び32Lに分かれているが、本実施形態とは異なり、プロペラ32は、プロペラ片32Rと32Lが一体になった構成であってもよい。
【0028】
本実施形態において、プロペラ32は、ドローン等の小型無人航空機用のプロペラである。例えば、翼長L1(図4参照)は228mm(ミリメートル)である。本明細書において、「翼長」は、プロペラ32の長手方向の長さであって、回転軸の中心からプロペラ32の先端までの距離を示すものとする。なお、ドローン等の飛行体は用途に応じて様々な種類があり、適切なモーターの仕様もプロペラ形状も異なる。プロペラ32は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:CARBON FIBER REINFORCED PLASTIC)で形成されている。炭素繊維強化プラスチックは、強化材に炭素繊維を用いた繊維強化プラスチックであり、母材はエポキシ樹脂である。
【0029】
図3に示すように、モーター22のステーター22aには、6軸力覚センサ40が固定されている。ステーター22aに対する6軸力覚センサ40の固定方法に限定はなく、直接的に接着してもよいし、適宜の治具によって固定してもよい。6軸力覚センサ40は、モーター22A及び22B以外の部分とは接触しない状態において、モーター22A及び22Bにそれぞれ固定される。これにより、6軸力覚センサ40は、モーター22A及び22Bが生成する力のみを測定することができる。6軸力覚センサ40は、第一の測定手段の一例である。6軸力覚センサ40は、モーター22の回転軸の回転を計測するものではなく、モーター22とプロペラ32の回転によって生じる、推力や挙動などの力を測定するものであるから、本実施形態と異なる種類のモーターの場合であっても、6軸力覚センサ40は、ステーターに接続される。
【0030】
図4に示すように、スライド部材14の上面14aには、円柱状部材16が固定されている。円柱状部材16の上部にはフランジ18が固定されている。フランジ18の円柱状部材16に対する角度は、変更可能である。フランジ18にモーター22が固定されている。モーター22の回転軸を回転軸20Sとする。本実施形態において、モーター22はアウターローター式のモーターであり、物としての回転軸は存在しないが、回転軸20Sは技術的な観念として存在する。本実施形態において、プロペラ32の回転面の中心点を通り、プロペラ32の回転面と垂直な軸を「回転軸」として定義する。なお、本実施形態とは異なり、モーター22がインナーローター式である場合には、その構造によっては、回転軸20Sは物としても存在する。
【0031】
図5及び図6に示すように、フランジ18の中心部は下方に突出した半球状部18aを有し、半球状部18aの内側は空間18sとなっている。モーター22に固定された6軸力覚センサ40は、空間18sの内壁18abと接触しない態様において空間18s内に格納可能になっている。すなわち、6軸力覚センサ40は、実測装置1において、モーター22の底面以外の部分とは接しないから、確実に回転装置20によって生成される力だけを測定することができる。これは、6軸力覚センサ40は、他方の回転装置20によって生成される力の影響を受けず(あるいは、極めて制限される態様において)、一方の回転装置20によって生成される力だけを測定することができることを意味する。
【0032】
図7及び図8に示すように、円柱状部材16の上部は、半球状の陥没面16bとして構成されている。陥没面16bによって、上方が開口した空間16sが構成される。
【0033】
図9及び図10に示すように、フランジ18の半球状部18aの外面18aaと円柱状部材16の陥没面16bの少なくとも一部が接する態様において、フランジ18が円柱状部材16に固定される。円柱状部材16に対して、フランジ18は図9の矢印eに示す方向において、角度が調整可能である。例えば、図10に示すように、円柱状部材16に対して、フランジ18を傾斜させた状態において、円柱状部材16の2つのボルト16aによって、フランジ18を円柱状部材16に固定することによって、円柱状部材16に対するフランジ18の傾斜が維持される。円柱状部材16に対するフランジ18の傾斜によって、各モーター22A及び及び22Bの回転軸について、鉛直方向から乖離する角度である傾斜角度が規定される。フランジ18と円柱状部材16は、角度変更手段の一例である。
【0034】
図11乃至図13を参照して、スライド部材14がアーム部10の長手方向における位置を変更する状態を説明する。スライド部材14にはボルト14aが貫通可能になっており、ボルト14aがアーム部10の溝部10sに固定されることによって、スライド部材14はアーム部10の長手方向における任意の位置に固定される。これにより、スライド部材14に固定されている円柱状部材16も任意の位置に固定され、円柱状部材16に固定されているフランジ18、及び、フランジ18に固定されているモーター22も任意の位置に固定される。スライド部材14とアーム部10の溝部10sは、アーム部10の長手方向における各モーター22の位置を変更する位置変更手段の一例である。
【0035】
例えば、スライド部14がアーム部10の長手方向において、図12における位置にある状態から、矢印L1方向に移動することによって、図13の位置に位置が変更する。
【0036】
実測装置1は上記のように構成されており、6軸力覚センサ40によって、各回転装置20が生成する力を測定することができる。すなわち、図14に示すように、6軸力覚センサ40は、各回転装置20について、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向において、力とモーメント(トルク)を測定することができる。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は互いに90度の角度をなしている。測定可能な力は、力Fx、力Fy及び力Fz,モーメント(トルク)Mx,モーメント(トルク)My及びモーメント(トルク)Mzである。力Fx、力Fy及び力Fzは、それぞれ、X軸、Y軸及びZ軸に沿った運動量である。モーメント(トルク)Mx,モーメント(トルク)My及びモーメント(トルク)Mzは、それぞれ、X軸、Y軸及びZ軸を中心軸とする回転運動の量であり、角運動量である。
【0037】
6軸力覚センサ40は、Z軸がモーター22の回転軸の方向と一致する態様において、モーター22に固定される。すなわち、力Fzは、回転装置20が発生する推力の方向である。なお、1つの回転装置20が発生する推力の方向は、2つの回転装置20によって発生する推力の方向(実測装置1が発生する推力の方向)とは必ずしも一致しない。
【0038】
実測装置1の推力の方向は鉛直方向として定義されるが、回転装置20A及び20Bの推力の方向、すなわち、力Fzの方向は鉛直方向とは限らない。図17乃至図19に示すように、回転装置20Aの回転軸SA及び/または回転装置20Bの回転軸SBが鉛直方向に対して傾斜している場合には、回転装置20A及び/または回転装置20Bの推力の方向は鉛直方向とは乖離する。回転装置20Aと回転装置20Bのそれぞれの回転軸SAとSBの傾斜角度が相違する場合には、回転装置20Aと回転装置20Bとの間においても、推力の方向は異なる。
【0039】
ロードセル12は、6軸力覚センサ40とは別に、モーター22とは接しない位置において、実測装置1自体が生成する鉛直方向の力、すなわち、実測装置1自体が生成する推力を測定するためのセンサである。6軸力覚センサ40によっても、2つの回転装置20のそれぞれの力Fzを鉛直方向の力に換算して合計することによって、実測装置1自体が生成する推力を算出することができるが、実測装置1自体の推力を直接的に測定して得たデータの信頼度は高い。この点、本実施形態によれば、ロードセル12によって、実測装置1の全体としての鉛直方向の力、すなわち、2つの回転装置20によって生じる鉛直方向の推力を直接的に測定することができる。
【0040】
上記のように、6軸力覚センサ40は、回転装置20A及び20Bによって生じる各力を測定するセンサである。各力は、推力に限らず、回転装置20A及び20Bの振動や推力の方向以外への運動量も含む挙動を含む。一方、ロードセル12は、実測装置1全体としての鉛直方向の力、すなわち、実測装置1全体によって生成される推力を直接的に測定するセンサである。ロードセル12によって、回転装置20A及び20B全体として、鉛直方向の推力を測定することができ、6軸力覚センサ40によって、各回転装置20A及び20Bによって生じる力を測定することができる。
【0041】
6軸力覚センサ40の具体例は、上記の測定が可能であれば限定はないが、本実施形態においては、株式会社レプトリノ(本社所在地:長野県小諸市大字平原328-1)の開発に係る小型6軸力覚センサを使用する。具体的には、例えば、型番がSFS016XS300U6のセンサである。当該小型6軸力覚センサの概略仕様は以下の通りである。外形寸法は直径16mm、高さ14mm、定格FxFyは30N、Fzは30N、MxMyは0.5Nm、Mzは0.5Nmである。あるいは、ミネベアミツミ株式会社(本社所在地:長野県北佐久郡御代田町大字御代田4106-73)の開発に係る小型6軸力覚センサを使用してもよい。当該小型6軸力覚センサの概略仕様は以下の通りである。外見寸法は直径9.6mm、高さ9.0mm、重さ3.0g、定格(フォース,モーメント)40N,0.4N・m、耐荷重(フォース,モーメント)200N,1.8N・m、分解能(フォース,モーメント)0.1N,0.001N・m、インターフェースI2C,SPI、電源電圧3.3Vである。
【0042】
なお、相対的に出力が大きいモーターの場合には、モーターの出力に応じて、例えば、定格が1KNや30KNなど、相対的に定格が大きい6軸力覚センサを使用する。定格が比較的大きいセンサの一例としては、株式会社レプトリノの開発に係る6軸力覚センサを使用がある。具体的には、例えば、PFS Seriesの100YS302である。この6軸力覚センサの仕様の概要は、外形寸法(mm)が直径100mm、高さH45mm、定格容量FxFy(±N)が1500、定格容量Fz(±N)が3000、定格容量MxMy(±Nm)が150、定格容量Mz(±Nm)が120である。
【0043】
ロードセル12の具体例は、上記の測定が可能であれば限定はないが、本実施形態においては、ミネベアミツミ株式会社の開発に係るフォースセンサFSAを使用する。当該フォースセンサFSAの概略仕様は以下の通りである。定格容量44.48N{10lb}、許容過負荷150%R.C.、限界過負荷250%R.C.、推奨印加電圧10V以下、最大印加電圧12Vである。なお、相対的に出力が大きいモーターの場合には、モーターの出力に応じて、例えば、定格が1KNや60KNなど、相対的に定格が大きいロードセルを使用する。
【0044】
実測装置1の6軸力覚センサ40及びロードセル12によって、図15乃至図19に示すように、2つの回転装置20の様々な回転軸SA、SBの傾斜角度、2つの回転装置20のアーム部10における様々な位置(2つの回転装置20の間の距離を含む)において、上述の力を測定することができる。6軸力覚センサ40及びロードセル12によって得られた測定データは、パーソナルコンピュータ50(図1参照)に送信され、処理される。データの送信方法は、有線通信でもよいし、無線通信でもよい。
【0045】
図15は、モーター22A及び22Bの回転軸SA,SBがアーム部10の長手方向に対して垂直、すなわち、鉛直であり、モーター22Aと22Bの中心位置の距離がD1である場合を示す。この状態から、回転軸SA、SBを傾斜させることができる。傾斜方向は、例えば、矢印Ei方向またはEo方向である。矢印Ei方向は、アーム部10の長手方向に沿って内側へ傾斜する方向であり、矢印Eo方向は、アーム部10の長手方向に沿って外側へ傾斜する方向である。また、モーター22A及び22B間の距離を変更することができる。例えば、モーター22Bをアーム部10の長手方向に沿って、矢印L1またはL2に移動させることによって、モーター22A及び22B間の距離を変更することができる。
【0046】
図16は、図15の状態から、モーター22Aに対して、モーター22Bを矢印L1方向へ移動させ、距離D1を大きくし、距離D2に変更した例である。
【0047】
図17は、図15の状態から、モーター22Aの回転軸SAをアーム部10の長手方向に沿って内側に傾斜させた例である。モーター22Bの回転軸SBは鉛直である。
【0048】
図18は、図15の状態から、モーター22Aの回転軸SA及びモーター22Bの回転軸SBをアーム部10の長手方向に沿って同一の角度だけ内側に傾斜させた例である。
【0049】
図19は、図15の状態から、モーター22Aの回転軸SA及びモーター22Bの回転軸SBをアーム部10の長手方向に沿って同一の角度だけ内側に傾斜させ、さらに、モーター22Aに対して、モーター22Bを矢印L1方向へ移動させ、距離D1から距離D2に大きくした例である。
【0050】
図20は、モーター22A及び22Bの位置及び回転軸SA及びSBの様々な組み合わせにおいて6軸力覚センサ40及びロードセル12によって測定され、実測装置1から送信された測定データがパーソナルコンピュータ50に記憶された状態を示す概念図である。図20に示すように、所定のモーター22A及び22B間の距離D,モーター22A及びモーター22Bの回転軸SA及びSBの傾きEごとに、力Fx等が記憶されている。
【0051】
図21は、実測装置1の機能ブロックである。実測装置1は、CPU100、記憶部102,6軸力覚センサ40、ロードセル12,通信部106,モーター22(22A,22B),及び電源部108を含む。CPU100は、記憶部102に記憶したプログラムを読みだして実施することによって、ESC(Electric Speed Controller。図示せず。)を介してモーター22の回転を制御する。6軸力覚センサ40は、モーター22に固定されており、モーター22によって生成される力を測定する。ロードセル12は、アーム部10に固定されており、アーム部10によって生成される力を測定する。6軸力覚センサ40及びロードセル12から出力された測定データは、CPU100を介して記憶部102に記憶され、通信部106を介してパーソナルコンピュータ50に送信される。記憶部102も記憶手段の一例である。
【0052】
図22は、パーソナルコンピュータ50の機能ブロックである。パーソナルコンピュータ50は、CPU200、記憶部202,通信部204及び電源部206を含む。パーソナルコンピュータ50は、通信部204を介して、実測装置1から測定データを受信し、記憶部202に記憶する。
【0053】
上述のように、6軸力覚センサ40は各回転装置20が生成する力を測定し、ロードセル12は、実測装置1全体として生成する力を測定する。これにより、各回転装置20が生成する力と、実測装置1全体が生成する力を別々に測定することができる。これにより、例えば、特定の仕様のモーター22とプロペラ32を使用して、特定の条件において回転させて測定し、測定値を評価することによって、実測装置1全体として、最も推力が大きくなると予想される距離D(モーター22Aと22Bの位置、両者の間の距離)とモーター22の傾斜Eを算出するためのデータを取得することができる。また、6軸力覚センサ40によって、モーター22A及び22Bの振動やモーメント(トルク)を測定することができるから、振動やモーメント(トルク)が最も小さくなると予想される距離Dと傾斜Eを算出するためのデータを取得することができる。さらに、振動やモーメント(トルク)が所定の制限範囲である場合に、実測装置1全体として、最も推力が大きくなると予想される距離D(モーター22Aと22Bとの間の距離)とモーター22の傾斜Eを算出するためのデータを取得することもできる。
【0054】
<<測定装置100の使用例>>
図23を参照して、上述の測定装置100の使用方法の一例を説明する。まず、二重反転プロペラ装置を構成した場合に目標性能を満たすと予想される1つの回転装置(1つのモーターと1つのプロペラ)を仮に選択する(図23のステップST1)。回転装置のモーターはESCも備える。目標性能は、所定条件における推力及び振動の大きさを含む。次に、仮選定した回転装置を実測装置1のアーム部10に固定し、測定装置100を使用して、6軸力覚センサ40によって、その回転装置の推力を測定する(ステップST2)。その回転装置の所定条件での回転数(例えば、定格電圧における回転数)による推力を100とする。続いて、仮選定した回転装置を2つ使用し、実測装置1に固定し、二重反転プロペラ装置を構成し、モーターの位置、モーター間の距離及びモーターの回転軸の傾斜を調整し、測定装置100によって性能を測定する(ステップST3)。ここで、2つのモーターの回転軸を同軸かつ鉛直にすると、上側の回転装置と下側の回転装置の一方または双方の推力が落ち、推力の合計値は150前後になる。このため、ステップST3においては、2つの回転装置の位置、双方の間の距離及び各回転装置の回転軸の傾斜(以下、「2つの回転装置の相対的関係」と呼ぶ。)について、複数の組を構成し、各組について、測地装置100による測定を行う。なお、2つの回転装置のプロペラの回転面が鉛直方向において重複しないようにすれば、2つの回転装置が互いに及ぼす影響を低減できるのであるが、2つの回転装置の間の距離が大きくなり、その結果、二重反転プロペラ装置の大きさが大きくなるという問題がある。このため、2つの回転装置を同軸に構成しない場合であっても、2つの回転装置の間の距離を過度に大きくしない範囲において、すなわち、2つのプロペラの回転面が鉛直方向において部分的に重複した状態において、目標性能を満たす条件を探索することになる。2つの回転装置の相対的関係を調整して、推力及び振動が目標性能に到達したか否かを判断し(ステップST4)、目標性能に到達していれば、終了する。目標性能に到達していなければ、プロペラを変更し、改めて、二重反転プロペラ装置を調整する(ステップST5)。プロペラは、翼長及び迎え角を含む形状、質量等について、異なる複数種類のものを順次使用する。2つの回転装置の相対的関係を調整して、推力及び振動が目標性能に到達したか否かを判断し(ステップST6)、目標性能に到達していれば、終了する。目標性能に到達していなければ、モーターを変更し、改めて、二重反転プロペラ装置を調整する(ステップST7)。モーターは、kV値、定格電力、トルク、質量等について、異なる複数種類のものを順次使用する。2つの回転装置の相対的関係を調整して、推力及び振動が目標性能に到達したか否かを判断し(ステップST8)、目標性能に到達していれば、終了する。目標性能に到達していなければ、ステップST5乃至ステップST8を繰り返す。
【0055】
<第二の実施形態>
次に、第二の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する事項は説明を省略する。
【0056】
第二の実施形態においては、評価装置50は予測プログラムを有する。評価装置50は、予測プログラムによって、測定装置100によって取得した測定データを処理し、実測装置1全体の推力が最大となると予想されるモーター22A及び22Bの位置、回転軸SA及びSBのそれぞれの傾斜角度を算出する。また、モーター22A及び22Bの振動数が所定範囲内において、実測装置1全体の推力が最大となると予想されるモーター22A及び22Bの位置、回転軸SA及びSBのそれぞれの傾斜角度を算出する。算出されたデータは、図23のステップST5及びステップST7において、二重反転プロペラ装置の調整の際に参照される。
【0057】
<第三の実施形態>
次に、第三の実施形態について説明する。第一の実施形態及び第二の実施形態と共通する事項は説明を省略する。
【0058】
第三の実施形態においては、スライド部材14がアーム部10に対して自動的に移動できるように、スライド部材14は自動移動手段として、例えば、移動用モーター等(図示せず)を備える。移動用モーター等とは、モーター、歯車、ベルト等、一般的に物を移動させるときに使用される部材である。移動用モーター等によって、スライド部材14は、アーム部10の長手方向に自動的に移動可能に構成される。また、フランジ18が円柱状部材16に対して自動的に角度を変更できるように、円柱状部材16は自動角度変更手段として、例えば、角度変更用モーター等(図示せず)を備える。角度変更用モーター等は、モーター、歯車等、一般的に物を任意の角度だけ回転させるために使用される部材である。角度変更用モーター等によって、フランジ18は円柱状部材16に対して自動的に角度を変更できるように構成される。すなわち、アーム部10に対するスライド部材14の固定構造、及び、円柱状部材16に対するフランジ18の固定構造が、第一の実施形態とは異なる。
【0059】
また、評価装置50は、実測装置制御プログラムを有し、実測装置1の通信部106及びCPU100を介して移動用モーターに信号を送信し、アーム部10におけるスライド部材14の位置を変更する。また、評価装置50は、実測装置制御プログラムによって、実測装置1の通信部106及びCPU100を介して角度変更用モーターに信号を送信し、円柱状部材16に対するフランジ18の角度を変更する。これにより、様々な距離D及び角度Eにおける測定データを入手することができる。実測装置制御プログラムは、位置変更手段の一例であり、また、角度変更手段の一例でもある。
【0060】
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 実測装置
10 アーム部
12 ロードセル
14 スライド部材
16 円柱状部材
18 フランジ
20、20A、20B 回転装置
22、22A,22B モーター
32 プロペラ
32R,32L プロペラ片
40 6軸力覚センサ
50 評価装置
100 測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23