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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069570
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】金属製カップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 51/18 20060101AFI20230511BHJP
   B21D 22/28 20060101ALI20230511BHJP
   B21D 22/30 20060101ALI20230511BHJP
   B21D 19/04 20060101ALI20230511BHJP
   A47G 19/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B21D51/18 A
B21D22/28 A
B21D22/30 B
B21D19/04 Z
A47G19/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181524
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 元彦
【テーマコード(参考)】
3B001
4E137
【Fターム(参考)】
3B001AA02
4E137AA06
4E137AA17
4E137BA05
4E137BB01
4E137CA07
4E137CA09
4E137CA24
4E137DA13
4E137EA01
4E137GA02
4E137GB17
(57)【要約】
【課題】既存の設備の使用を可能にしつつ、比較的大径のテーパ状金属製カップを製造する。
【解決手段】金属板をプレス成形して、胴部に底部側より開口部側に向けて拡径するテーパ面を有する金属製カップを製造する方法であって、金属板を絞りしごき加工することにより有底円筒状の筒体を形成する筒体形成工程と、筒体の胴部にテーパ面を形成するテーパ面形成工程とを備え、テーパ面形成工程は、筒体の長さ方向の途中位置から底部側にかけて縮径する縮径工程と、途中位置から開口部側にかけて拡径する拡径工程と、を経てテーパ面を形成する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板をプレス成形して、胴部に底部側より開口部側に向けて拡径するテーパ面を有する金属製カップを製造する方法であって、金属板を絞りしごき加工することにより有底円筒状の筒体を形成する筒体形成工程と、前記筒体の胴部に前記テーパ面を形成するテーパ面形成工程とを備え、
前記テーパ面形成工程は、前記筒体の長さ方向の途中位置から底部側にかけて縮径する縮径工程と、前記途中位置から開口部側にかけて拡径する拡径工程と、を経て前記テーパ面を形成することを特徴とする金属製カップの製造方法。
【請求項2】
前記縮径工程の後に前記拡径工程を実施することを特徴とする請求項1に記載の金属製カップの製造方法。
【請求項3】
前記縮径工程より先に前記拡径工程を実施するとともに、前記拡径工程後の中間筒体の開口端部に、そのエッジを含む端部を折り返してカール部を形成するカール工程を実施し、該カール工程の後に前記縮径工程を実施することを特徴とする請求項1に記載の金属製カップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金等からなる金属製カップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の飲料用カップには陶器製、ガラス製、金属製、紙製、プラスチック製等がある。このうち、金属製、紙製、プラスチック製のカップは、陶器製やガラス製と比べて、軽量でスタックしても嵩張りにくいので、持ち運びに優れている。
特許文献1にはテーパ状の金属カップ(金属製カップ)が開示されている。この金属製カップは、アルミニウム製で、プラスチックカップより硬く、耐久性があり、また、リサイクル性に優れていると記載されている。
【0003】
また、この金属製カップを製造する方法として、金属板を抜き及び絞り加工してカップを形成し、そのカップにしごき加工を施すことにより円筒状の垂直壁プリフォーム(筒体)を形成し(DI工程)、その開口端部を丸めてカール部を形成した後、段階的絞り処理により、カール部から底部に向けて、連続的に小さくなる直径及び異なる高さの垂直壁区画を有する垂直絞りカップを形成し、その後、テーパ状の輪郭を有するダイを用いて、垂直壁区画の各々を拡げることにより、各垂直壁区画をテーパ状側壁としたテーパ状カップを形成し、最後に、カップの底にドーム部を形成する、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-508874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、テーパ状の金属製カップに形成する前の筒体の形成工程は、いわゆる2ピース缶の飲料缶に普通に用いられている絞りしごき加工によって形成されるため、既存の設備を用いることができれば、効率的である。既存の製造設備では、直径が約66mmの筒体を形成しており、手に持ちやすい大きさである。
【0006】
しかしながら、この既存設備の絞りしごき工程で得られる筒体を特許文献1記載の方法で金属製カップに形成すると、筒体から絞っていく加工であるので、最終形状のカップは小径のものとなってしまい、既存の筒体と同じ程度の容量にするには細長いカップとする必要がある。特に、底部が最も小径になるため、テーブル等の上に置いたときに倒れるおそれもある。一方、大きい直径のカップを製造しようとすると、絞りしごき工程の設備も大径の筒体を形成できるものへの大掛かりな変更が必要になる。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、既存の設備の使用を可能にしつつ、比較的大径のテーパ状金属製カップを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属製カップの製造方法は、金属板をプレス成形して、胴部に底部側より開口部側に向けて拡径するテーパ面を有する金属製カップを製造する方法であって、金属板を絞りしごき加工することにより有底円筒状の筒体を形成する筒体形成工程と、前記筒体の胴部に前記テーパ面を形成するテーパ面形成工程とを備え、前記テーパ面形成工程は、前記筒体の長さ方向の途中位置から底部側にかけて縮径する縮径工程と、前記途中位置から開口部側にかけて拡径する拡径工程と、を経て前記テーパ面を形成する。
【0009】
筒体の長さ方向の途中位置から底部側と開口部側とで加工方法を分けて、縮径工程を底部側のみとしていることから、既存の筒体形成設備を用いて形成した筒体を用いても、テーパ面を有する金属製カップの底部の直径を特許文献1記載のカップより大きく形成することが可能であり、全体として比較的大きい直径の金属製カップとすることができる。
また、縮径工程及び拡径工程を筒体の長さの途中位置から例えば半分の長さの範囲に対してのみ行うので、それぞれの加工の変形率(縮径率及び拡径率)を特許文献1記載の方法より小さくすることができ、しわや亀裂等の発生を抑制することができ、滑らかなテーパ面を形成することができるとともに、材料の薄肉化等も図ることが可能になる。
もちろん、筒体形成工程としては、通常の2ピース缶で用いられている既存の設備をそのまま転用することが可能である。
【0010】
本発明の金属製カップの製造方法において、前記縮径工程の後に前記拡径工程を実施することができる。
【0011】
また、本発明の金属製カップの製造方法において、前記縮径工程より先に前記拡径工程を実施するとともに、前記拡径工程後の中間筒体の開口端部に、そのエッジを含む端部を折り返してカール部を形成するカール工程を実施し、該カール工程の後に前記縮径工程を実施するとよい。
【0012】
拡径工程は筒体の底部を保持して、開口部側からパンチを用いて加工することになり、底部は筒体形成工程において加工されているので、その保持も容易であるが、縮径工程は、開口部側を保持して底部側を縮径する加工となる。このとき、筒体の開口部が筒体形成工程、あるいは拡径工程のままの円筒状の鋭利なエッジの状態であると、径方向に変形し易いため、安定して保持することは容易でない。上記のように拡径工程及びカール工程を先に実施することにより、開口端部に形成されるカール部を保持して縮径工程を実施することが可能になり、そのカール部は、変形しにくいとともに、平坦面を缶軸方向に当接させることができるため、保持が容易で、加工を安定して行うことができ、滑らかなテーパ面を形成することができる。
【0013】
なお、拡径工程より先に縮径工程を実施する場合、その縮径工程時に開口端部が断面楕円形になるなどの若干の変形が生じたとしても、その後に拡径工程により拡径されるので、開口端部を断面円形に矯正することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、筒体の長さ方向の途中位置から底部側を縮径工程により縮径し、開口部側を拡径工程により拡径しているので、既存の設備の使用を可能にするとともに、特許文献1記載のカップより大径のものを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の製造方法で製造された金属製カップの缶軸を中心に半分を縦断面とした正面図である。
図2】第1実施形態の製造方法を示すフローチャートである。
図3】筒体形成工程で得られる筒体の缶軸を中心に半分を縦断面図とした正面図である。
図4】縮径工程で加工している状態を(a)(b)の順に示す要部の縦断面図である。
図5】筒体の底部側に図4の金型セットで段部を形成した状態を示す半分を断面にした正面図である。
図6】(a)に縮径工程後の第1中間筒体、(b)に拡径工程後の第2中間筒体を示す半分を断面に下正面図である。
図7】拡径工程で段部を形成し、その段部をテーパ状に整形している状態を(a)(b)の順に示す要部の縦断面図である。
図8】カーリング工程においてカーリングツールで加工している状態を示す断面図である。
図9】本発明の第2実施形態の製造方法を示すフローチャートである。
図10】(a)で拡径工程後の第3中間筒体、(b)でカール工程後の第4中間筒体を示す半分を断面にした正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る金属製カップの製造方法の実施形態を図面を参照して説明する。
本実施形態の製造方法によって製造される金属製カップ1は、図1に示すように、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属板をプレス成形により有底筒状に形成したものであり、底部2の直径より開口部3の直径が大きく、全体として底部2から開口部3に向けて漸次拡径するテーパ状の胴部4を有し、開口部3に、エッジ部を含む端部を半径方向外方に巻き込んでなるカール部5が形成されている。この金属製カップ1の半径方向の中心を缶軸Cとする。
【0017】
胴部4は、開口部3付近に缶軸Cに沿うストレート状の円筒部12が形成されており、この上部円筒部12の下端から底部にかけて漸次直径が小さくなる(底部から開口部にかけて漸次直径が大きくなる)テーパ面15aを有するテーパ筒部15が形成されている。
【0018】
これらの諸寸法は必ずしも限定されるものではないが、例えば、カール部の直径(外径)D1が75mm以上100mm以下、全体の高さH1が80mm以上180mm以下、上部円筒部12の直径D4が70mm以上95mm以下、カール部5の上端から上部段部14の上端までの長さH4が8mm以上20mm以下、水平面に対するテーパ筒部15のテーパ面15aの角度θが80°以上85°以下に形成される。
【0019】
次に、この金属製カップ1の製造方法について説明する。
この金属製カップ1は、図2に示すように、金属板を絞りしごき加工することにより有底円筒状の筒体21を形成する筒体形成工程(図3参照)と、筒体形成工程後に、外径の異なる複数の金型のセットを外径の大きい順に用いながら、筒体21の胴部23の高さの途中位置(例えば半分の位置)より底部24側の部位を、開口部22側より底部24側にかけて徐々に縮径してテーパ状とすることにより、図6(a)に示すような第1中間筒体41を形成する縮径工程と、この第1中間筒体41の胴部の残りの部位を底部2側から開口部22側にかけて徐々に拡径してテーパ状とすることにより、テーパ面15aを有する第2中間筒体42(図6(b)参照)を形成する縮径工程と、この第2中間筒体42の開口端部にカール部5を形成するカール工程と、を有する工程を経て製造される。つまり、テーパ面15aを形成するためのテーパ面形成工程を、縮径工程と拡径工程とに分けて実施する。以下、工程順に説明する。
【0020】
[筒体形成工程]
筒体形成工程では、図3(a)に示すように、アルミニウム又はアルミニウム合金製の板材を打ち抜いて絞り加工することにより、次工程の筒体21よりも大径で浅いカップ25を形成するカップ形成工程と、このカップ25に絞り加工及びしごき加工(絞りしごき加工)を加えて、カップ25より小径で図3(b)に示すように所定高さの有底円筒状の筒体21を形成する絞りしごき工程とを有する。この筒体21の底部24はほぼフラットに形成される。
【0021】
[縮径工程]
この縮径工程及び次の拡径工程においては、筒体21の胴部23の形状が徐々に変化していくが、縮径工程の最後に形成される筒体を第1中間筒体41、拡径工程の最後に形成される筒体を第2中間筒体42とし、それまでの途中の工程で形成される筒体については、筒体21、第1中間筒体41又は第2中間筒体42のいずれかの符号を付して説明する。
【0022】
縮径工程では、図4に示す金型セット31が用いられる。この金型セット31は、筒体21の胴部23内に挿入されるパンチ32及び該パンチ32の周囲を囲むように配置される筒状のしわ押さえリング33と、胴部23の外側で筒体21が底部24側から押し込まれることで、しわ押さえリング33との間で筒体21の一部を挟みながら縮径するリング状ダイ34とからなり、これら金型セット31が径の大きい順に複数組用いられることで、筒体21が徐々に縮径される。
【0023】
具体的には、まず、最も大きい径の金型セット31を用いて、筒体21内にパンチ32としわ押さえリング33とを挿入し、これらと同軸上にリング状ダイ34を配置する。リング状ダイ34は、しわ押さえリング33の内径とほぼ同じ内径に形成されるとともに、しわ押さえリング33と対峙する先端部がしわ押さえリング33と同じ方向、ほぼ同じ角度で傾斜して形成されている。図4に示すように、しわ押さえリング33の先端部は、半径方向外方に向けて高さが小さくなる方向に傾斜しており、リング状ダイ34は、半径方向外方に向けて高さが大きくなる方向に傾斜している。
【0024】
そして、これらパンチ32及びしわ押さえリング33と、リング状ダイ34とを相対的に移動させて、リング状ダイ34の先端部としわ押さえリング33の先端部との間で筒体21の一部を挟持しながら、リング状ダイ34の中に筒体21を押しこむようにして筒体21を絞り成形することにより、筒体21の長さの半分程度の長さまで外径を縮小させる。これにより、筒体21は、図5に示すように、開口部22側に図3(b)と同じ外径の胴部23Aが残るが、長さの半分程度から底部24側の胴部43の外径が小さくなり、その間に段部44が形成される。
【0025】
次いで、その次に径の大きい金型セットより同様に絞り成形するが、そのとき、絞り成形の長さは、先に絞り成形した位置の手前(段部44より底部24側)で終了するように設定する。これにより、段部44より底部24側にさらに段部44が形成され、この段部44より底部24側の胴部43がさらに縮径される。この操作を径の異なる金型セットで径の大きい順に繰り返すことで、図5の二点鎖線で示すように、筒体21の胴部43に、缶軸C方向に沿って径の異なる複数の段部44が形成される。
【0026】
その後、筒体21内に外周面がテーパ状に形成されたパンチ(図示略)を挿入して、段部44を滑らかなテーパ状に整形することにより、胴部の高さ方向の中間部位から底部側のほぼ半分を底部側にかけて漸次縮径するテーパ面状に形成し、図6(a)に示す第1中間筒体41を形成する。この場合、底部2は先の筒体21の底部24より小径になり、最終形状の金属製カップ1の底部2と同じ外径、形状となる。この第1中間筒体41では、長さ方向(高さ方向)の中間部位から底部2側に漸次縮径するテーパ状胴部46が形成されるとともに、開口部22側には、テーパ状胴部46の最大径でストレート状の円筒状胴部23Aが残されている。
【0027】
[拡径工程]
拡径工程は、縮径工程で形成された第1中間筒体41におけるテーパ状胴部46のテーパ面に連続するように、高さ方向の中間部位から開口部22側をテーパ面状に形成する。この拡径工程は、図7に示す複数のパンチ51,52を径の小さい順に用いながら、第1中間筒体41の胴部の高さ方向の中間部位から開口部22側の円筒状胴部23Aに、段部形成用パンチ51により底部2側の直径より開口部22側の直径が大きい段部53を形成する段部形成工程と、整形用パンチ52によって段部53を押し広げながらテーパ面54に整形する整形工程とを、順次繰り返すことにより、縮径工程で形成した底部2側のテーパ状胴部46のテーパ面に連続させたテーパ面を開口部22側に形成して、図6(b)に示すように、胴部の大部分をテーパ面15aとしたテーパ筒部15を有する第2中間筒体42を形成する。
【0028】
この場合、最初に段部形成工程により段部形成用パンチ51で段部53を形成し、その段部53を整形工程により整形用パンチ52でテーパ状に整形し、次いで、先に形成した段部53の位置より若干開口部22側に次の段部を形成して、その段部を整形する、というように、段部形成工程と整形工程とを交互に繰り返しながら、底部2側から開口部22側へと胴部23Aを徐々にテーパ状に形成する。この拡径工程は、第1中間筒体41の内周側から半径方向外方に金属材料を押し広げる加工となるので、しわが生じにくい。
なお、この拡径工程における最終形状の第2中間筒体42の最上部においては、最後に上部段部14を形成するための上部段部形成工程が施工され、これにより拡径工程を終了する。
上部段部14を形成した後は、この上部段部14より開口部22側に形成される上部円筒部12Aをストレートのまま残しておく。
【0029】
[カール工程]
拡径工程の後、第2中間筒体42の上部円筒部12Aのエッジを含む端部を径方向の外側に折り返しながら巻回することによりカール部5を形成する。このカール工程では、図8に示すように、複数のカーリングツール71,72が用いられる。このカーリングツール71,72は、缶軸Cに公差する方向に沿う軸C1,C2を中心に回転自在であり、その周方向に沿って成形用溝を有している。そして、このカーリングツール71,72を第2中間筒体42の開口端に缶軸C方向に押し付けながら、上部円筒部12Aの周囲を旋回させることにより、成形用溝によって上部円筒部12Aのエッジを含む端部を拡開しながら折り返して、カール部5を形成する。
【0030】
このカール工程では、カーリングツール71,72が第2中間筒体42を缶軸C方向に押圧することになるが、第2中間筒体42の開口部は缶軸Cに沿うストレートの上部円筒部12Aにより形成されているとともに、それまでの縮径工程及び拡径工程を経たことによる加工硬化の効果も相俟って、座屈や変形が生じにくい。
なお、図8において符号73は、第1中間筒体41及び成形後の第2中間筒体42の底部2を保持する保持具であり、縮径工程後に第1中間筒体41の底部2を保持した後、拡径工程及びカール工程中においても、その保持状態が維持される。
【0031】
このようにして製造される金属製カップ1は、開口部3付近に若干の長さのストレートの円筒部12が形成され、この円筒部12より底部側の胴部4の大部分が底部2から開口部3に向けて漸次拡径するテーパ状に形成されている。
また、開口部3にはカール部5が形成されているため、口触りも滑らかである。
【0032】
次に、この金属製カップ1の製造方法の第2実施形態について説明する。
第2実施形態の製造方法では、図9に示すように、筒体形成工程は第1実施形態と同じであるが、その後、第1実施形態とは逆に拡径工程を縮径工程より先に実施し、拡径工程と縮径工程との間にカール工程を実施する。
【0033】
すなわち、筒体形成工程後に、外径の異なる複数のパンチ51,52を外径の小さい順に用いながら、前記筒体21に開口部22側から前記パンチ51,52を押し込んで、前記筒体21の胴部23の高さの半分より開口部22側の部位を、底部24側より開口部22側に向けて徐々に拡径してテーパ状とした第3中間筒体61を形成する拡径工程と、この第3中間筒体61の開口端部にカール部5を形成するカール工程と、カール工程後の第4中間筒体63の胴部23の残りの部位を底部24側にかけて徐々に縮径してテーパ状とすることにより金属製カップ1を形成する縮径工程と、を有する工程を経て製造される。この第2実施形態では、拡径工程と、カール工程の後の縮径工程とにより、テーパ面15aが形成されるテーパ面形成工程となる。
【0034】
[拡径工程]
拡径工程においては、筒体21の底部24を保持した状態でその胴部23の高さ方向の中間部位から開口部22側を漸次拡径する。その拡径方法は第1実施形態と同様である。筒体21の底部24の保持は、図8において示した保持具73と同様、底部24を外側から保持し、その保持状態は、拡径工程及び次のカール工程の間、変えることなく維持される。得られた第3中間筒体61は、底部24側が筒体21の胴部23が円筒状に残されており、その胴部23Bに対して開口部22に向けて漸次拡径するテーパ筒部62が形成された形状となる。この場合も、第1実施形態の場合と同様、開口端部付近に上部段部14を形成して、上部円筒部12Aを残しておく。
[カール工程]
次いで、カール工程も第1実施形態の場合と同様であり、開口端部のエッジを含む端部を折り返してカール部5を形成する。図10(b)がカール工程後の第4中間筒体63である。
[縮径工程]
縮径工程は、第1実施形態と同様に、パンチ32としわ押さえリング33とリング状ダイ34とからなる複数の金型セットを用いて段部を形成し、その段部をテーパ状に整形する方法である。
【0035】
この第2実施形態では、カール工程を実施した後に縮径工程を実施する。この縮径工程においては、第4中間筒体63の開口部3にカール部5が形成されているので、開口部3の機械的強度が向上しており、このカール部5を保持して、胴部の底部側(23B)を加工することにより、安定した加工を実施することができる。前述の第1実施形態の場合も、縮径工程においては、開口部側を保持して加工を施すことになるが、第1実施形態の場合の開口部22はストレートの円筒形状のエッジであり(図6(a)参照)、径方向の変形が容易である。このため、第1実施形態においては、開口部22を保持する場合に、開口部22を内側及び外側から挟むように保持する必要があり、構造が複雑化する。
第2実施形態の場合は、カール部5の剛性が高いとともに、開口端が円弧面になるので、その先端を当接させて、安定して保持することができる。
【0036】
上記実施形態では、縮径工程において、缶軸C方向に沿って複数の段部を形成した後、これら段部をテーパ面状に整形したが、一つの段部を形成した後、この段部をテーパ面状に整形し、次いで、次の段部を形成してテーパ面状に形成する、というように段部の形成とテーパ面状の整形とを交互に実施してもよい。
【0037】
一方、拡径工程において、一つの段部を形成した後、この段部をテーパ面状に整形し、その後、その上方に新たな段部を形成してテーパ面状に整形するというように、段部形成工程と整形工程とを交互に繰り返したが、段部形成工程を複数回実施することにより、缶軸Cに沿って複数個の段部を形成した後、これら段部を底部側から1個ずつ順次整形することとしてもよい。また、2個以上の段部をまとめて整形することも可能である。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態を適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0038】
C 缶軸
1 金属製カップ
2 底部
3 開口部
4 胴部
5 カール部
12 上部円筒部
14 上部段部
15 テーパ筒部
15a テーパ面
21 筒体
23 胴部
24 底部
25 カップ
31 金型セット
32 パンチ
33 しわ押さえリング
34 リング状ダイ
41 第1中間筒体
42 第2中間筒体
43 胴部
44 段部
46 テーパ状胴部
51 段部形成用パンチ
52 整形用パンチ
61 第3中間筒体
62 テーパ筒部
63 第4中間筒体
71,72 カーリングツール
73 保持具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10