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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069572
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ウェア
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20230511BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A61F5/02 K
A41D13/05 136
A41D13/05 143
A41D13/05 125
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181531
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】521097367
【氏名又は名称】eightis株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174252
【弁理士】
【氏名又は名称】赤津 豪
(72)【発明者】
【氏名】桑原 朋章
【テーマコード(参考)】
3B011
4C098
【Fターム(参考)】
3B011AA05
3B011AA12
3B011AB08
3B011AB11
3B011AB18
3B011AC17
4C098BB08
4C098BC02
4C098BC13
4C098BC45
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より効果的に、股関節を外旋及び/又は伸展方向に誘導する。
【解決手段】本開示は、一つの実施形態として、少なくとも骨盤部及び大腿部を覆うように構成されたウェア本体と、一対の左右の牽引ベルトと、を備え、各牽引ベルトは、牽引ベルトの一端に設けられ、ウェア本体の左右方向一方側において大腿部後面の対応部位に固定される第一固定部と、大腿部内側面、大腿部前面、股関節外側、臀部、及び仙骨の対応部位に沿って延びるベルト中間部と、牽引ベルトの他端に設けられ、ウェア本体の左右方向他方側の上前腸骨棘の対応部位に固定される第二固定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェアであって、
少なくとも骨盤部及び大腿部を覆うように構成されたウェア本体と、
一対の左右の牽引ベルトと、を備え、
各前記牽引ベルトは、
前記牽引ベルトの一端に設けられ、前記ウェア本体の左右方向一方側において大腿部後面の対応部位に固定される第一固定部と、
大腿部内側面、大腿部前面、股関節外側、臀部、及び仙骨の対応部位に沿って延びるベルト中間部と、
前記牽引ベルトの他端に設けられ、前記ウェア本体の左右方向他方側の上前腸骨棘の対応部位に固定される第二固定部と、を備える、
ウェア。
【請求項2】
請求項1に記載のウェアであって、
前記牽引ベルトの長さ方向の少なくとも一部が、弾性又は伸縮性を有する、
ウェア。
【請求項3】
請求項2に記載のウェアであって、
前記牽引ベルトの長さ方向の一部を構成し、弾性又は伸縮性を有する第一ベルト部と、
前記牽引ベルトの長さ方向の他の少なくとも一部を構成し、前記第一ベルト部よりも高い弾性又は伸縮性を有する第二ベルト部と、を備える、
下半身ウェア。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のウェアであって、
前記牽引ベルトの伸長弾性率は、前記ウェア本体の少なくとも一部の伸長弾性率よりも大きい、
下半身ウェア。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のウェアであって、
前記ベルト中間部は、前記ウェア本体に固定された前記第一固定部と前記第二固定部との間で、前記ベルト中間部の長手方向に引張力が付与されている、
下半身ウェア。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のウェアであって、
前記一対の左右の牽引ベルトの前記ベルト中間部は、前記仙骨の対応部位で互いに交差するように構成されている、
ウェア。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のウェアであって、
前記一対の左右の牽引ベルトの前記第二固定部は、左右方向に離れた位置で、左右の上前腸骨棘の対応部位に固定される、
ウェア。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のウェアであって、
前記牽引ベルトは、少なくとも一部又は全体で、前記ウェア本体と一体的に形成されている、
ウェア。
【請求項9】
請求項8に記載のウェアであって、
前記牽引ベルトは、少なくとも一部又は全体で、前記ウェア本体に対して縫着され又は生地に編み込まれている、
ウェア。
【請求項10】
請求項8に記載のウェアであって、
前記第一固定部が前記ウェア本体に一体的に固定され、
前記前記第二固定部の他方が前記ウェア本体に対して着脱可能に固定される、
ウェア。
【請求項11】
請求項10に記載の下半身ウェアであって、
前記ウェア本体に設けられ、前記牽引ベルトの前記第二固定部が着脱可能に構成されたベルト固定部、をさらに備える、
ウェア。
【請求項12】
少なくとも骨盤部及び大腿部を覆うように構成されたウェア本体に装着される牽引ベルトであって、
前記牽引ベルトの一端に設けられ、前記ウェア本体の左右方向一方側において大腿部後面の対応部位に固定される第一固定部と、
大腿部内側面、大腿部前面、股関節外側、臀部、及び仙骨の対応部位に沿って延びるベルト中間部と、
前記牽引ベルトの他端に設けられ、前記ウェア本体の、左右方向他方側の上前腸骨棘の対応部位に固定される第二固定部と、を備え、
少なくとも一部で弾性を有する、
牽引ベルト。
【請求項13】
ウェアであって、
少なくとも骨盤部及び大腿部を覆うように構成されたウェア本体と、
一つの牽引ベルトと、を備え、
前記牽引ベルトは、
前記牽引ベルトの一端に設けられ、前記ウェア本体の左右方向一方側において大腿部後面の対応部位に固定される第一固定部と、
大腿部内側面、大腿部前面、股関節外側、臀部、及び仙骨の対応部位に沿って延びるベルト中間部と、
前記牽引ベルトの他端に設けられ、前記ウェア本体の、左右方向他方側の上前腸骨棘の対応部位に固定される第二固定部と、を備える、
ウェア。
【請求項14】
股関節安定化のための牽引ベルトであって、
一端に設けられ、装着者の左右方向一方側において大腿部後面の対応部位に固定される第一固定部と、
装着者の大腿部内側面、大腿部前面、股関節外側、臀部、及び仙骨の対応部位に沿って延びるベルト中間部と、
他端に設けられ、装着者の左右方向他方側の上前腸骨棘の対応部位に固定される第二固定部と、を備える、牽引ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、股関節安定化するためのウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
太腿を内側に向けるさせる(内旋動作)と、Z靭帯(腸骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯)が緩み、股関節の安定性が低下する。また、股関節の内旋による安定性の低下は、骨盤を中間位から傾斜させる。このため、股関節後方の筋活動が低下し、下肢長軸又は脊柱彎曲が変化する。
【0003】
股関節を外旋及び/又は伸展方向に誘導することで、股関節の内旋及び/又は屈曲によって生じる股関節の不安定状態を低減し、股関節を中間位に誘導するウェアが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-48562号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、より効果的に、股関節を外旋及び/又は伸展方向に誘導する手法が求められてきた。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態では、ウェアを提供する。いくつかの実施形態では、ウェアは下半身ウェアである。下半身ウェアは、ウェア本体を備えている。いくつかの実施形態では、ウェア本体は、少なくとも、ウェア本体の装着者の骨盤部及び大腿部を覆うように構成される。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態では、下半身ウェアは、一対の左右の牽引ベルトを備えている。いくつかの実施形態では、各牽引ベルトは、第一固定部を備えている。いくつかの実施形態では、第一固定部は、牽引ベルトの一端に設けられている。いくつかの実施形態では、第一固定部は、ウェア本体に固定される。いくつかの実施形態では、第一固定部は、ウェア本体において、装着者の左右方向一方側の大腿部後面の対応部位に固定される。いくつかの実施形態では、各牽引ベルトは、ベルト中間部を備えている。いくつかの実施形態では、ベルト中間部は、大腿部内側面、大腿部前面、股関節外側、臀部、及び仙骨の対応部位に沿って延びる。いくつかの実施形態では、各牽引ベルトは、第二固定部を備えている。いくつかの実施形態では、第二固定部は、牽引ベルトの他端に設けられている。いくつかの実施形態では、第二固定部は、ウェア本体に固定される。いくつかの実施形態では、第二固定部は、装着者の左右方向他方側の上前腸骨棘の対応部位に固定される。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態では、牽引ベルトは、ウェア本体に装着される。いくつかの実施形態では、ウェア本体は、少なくとも骨盤部及び大腿部を覆うように構成される。いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、第一固定部を備えている。いくつかの実施形態では、第一固定部は、牽引ベルトの一端に設けられている。いくつかの実施形態では、第一固定部は、ウェア本体に固定される。いくつかの実施形態では、第一固定部は、ウェア本体において、装着者の左右方向一方側の大腿部後面の対応部位に固定される。いくつかの実施形態では、各牽引ベルトは、ベルト中間部を備えている。いくつかの実施形態では、ベルト中間部は、大腿部内側面、大腿部前面、股関節外側、臀部、及び仙骨の対応部位に沿って延びる。いくつかの実施形態では、各牽引ベルトは、第二固定部を備えている。いくつかの実施形態では、第二固定部は、牽引ベルトの他端に設けられている。いくつかの実施形態では、第二固定部は、ウェア本体に固定される。いくつかの実施形態では、第二固定部は、装着者の左右方向他方側の上前腸骨棘の対応部位に固定される。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態では、下半身ウェアは、一つの牽引ベルトを備えている。いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、第一固定部を備えている。いくつかの実施形態では、第一固定部は、牽引ベルトの一端に設けられている。いくつかの実施形態では、第一固定部は、ウェア本体に固定される。いくつかの実施形態では、第一固定部は、ウェア本体において、装着者の左右方向一方側の大腿部後面の対応部位に固定される。いくつかの実施形態では、各牽引ベルトは、ベルト中間部を備えている。いくつかの実施形態では、ベルト中間部は、大腿部内側面、大腿部前面、股関節外側、臀部、及び仙骨の対応部位に沿って延びる。いくつかの実施形態では、各牽引ベルトは、第二固定部を備えている。いくつかの実施形態では、第二固定部は、牽引ベルトの他端に設けられている。いくつかの実施形態では、第二固定部は、ウェア本体に固定される。いくつかの実施形態では、第二固定部は、装着者の左右方向他方側の上前腸骨棘の対応部位に固定される。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態では、牽引ベルトは、股関節安定化のためのものである。いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、第一固定部を備えている。いくつかの実施形態では、第一固定部は、牽引ベルトの一端に設けられている。いくつかの実施形態では、第一固定部は、ウェア本体に固定される。いくつかの実施形態では、第一固定部は、ウェア本体において、装着者の左右方向一方側の大腿部後面の対応部位に固定される。いくつかの実施形態では、各牽引ベルトは、ベルト中間部を備えている。いくつかの実施形態では、ベルト中間部は、大腿部内側面、大腿部前面、股関節外側、臀部、及び仙骨の対応部位に沿って延びる。いくつかの実施形態では、各牽引ベルトは、第二固定部を備えている。いくつかの実施形態では、第二固定部は、牽引ベルトの他端に設けられている。いくつかの実施形態では、第二固定部は、ウェア本体に固定される。いくつかの実施形態では、第二固定部は、装着者の左右方向他方側の上前腸骨棘の対応部位に固定される。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態では、牽引ベルトの他端に設けられた第二固定部(他端)が、装着者の上前腸骨棘の対応部位に固定される。これにより、例えば、骨盤及び/又は腸骨を効率的に開かせる又は後傾させることができる。これにより、例えば、効率的に股関節が外旋・伸展方向に誘導される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ある実施形態に係るウェアの構成を模式的に示す図であり、ウェアを前方から見た図である。
図2図1に示すウェアを後方から見た図である。
図3図1に示すウェアを斜め後方から見た図である。
図4図1に示すウェアを側方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で用いる「ウェア」の「ウェア本体」は、一般に、少なくとも大腿部及び骨盤部の一部又は全体を覆う。ウェア本体は、装着者の骨盤部及び大腿部に加えて、膝部、下腿部の一部又は全体を覆うように構成されていてもよい。ウェア本体は、ボトムズ、パンツ、又はショーツであってもよい。ウェアは、スパッツ又はサポータであってもよい。ウェア本体は、コンプレッションウェアであってもよい。ウェア本体の丈は、3/4、7/8、膝丈、膝上、膝下、三分丈、四分丈、五分丈、六分丈、七分丈、九分丈、十分丈などであってもよい。また、ウェア本体は、装着者の下半身だけでなく、上半身の一部又は全体を覆う構成であってもよい。ウェア本体は、全身ウェアであってもよい。
【0014】
ウェア本体は、一つの連続した部材で形成されていてもよい。ウェア本体は、連結された又は別個に形成された、複数のウェア部材を有して構成されてもよい。例えば、大腿部と骨盤部とは、互いに異なるウェア部材で構成されていてもよい。複数のウェア部材は、分離されていてもよく、連結可能に構成されていてもよい。例えば、牽引ベルトの一端は、大腿部のウェア部材(例えば腿サポータ)に固定され、他端は、骨盤部のウェア部材(例えばショーツ)に固定されてもよい。複数のウェア部材の材質は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。複数のウェア部材の材質は、弾性、伸縮性、透湿性等が異なっていてもよい。
【0015】
ウェア本体は、装着者の体表面に対して実質的に位置ずれが生じないように構成されていてもよい。ウェア本体は、装着者の体表面に対して実質的に位置ずれが生じないよう、装着者の皮膚に対する一定以上の摩擦係数を有する素材で構成されていてもよい。ウェア本体の大腿部は、少なくとも大腿部に密着するように構成されていてもよい。例えば、装着者がウェア本体を装着した状態で動く際に、その動きに要求される使用態様において、装着者の体表面に対して実質的に位置ずれを生じさせないように、ウェア本体は構成されていてもよい。ウェア本体が使用中に実質的にずれないことで、牽引ベルトによる牽引力の効果を高めることができる。ウェア本体は、ナイロンやポリウレタンあるいはこれらを含む伸縮性に優れた各種素材を使用して構成されていてもよい。
【0016】
ウェア本体は、少なくとも一部で、弾性又は伸縮性を有していてもよい。ウェア本体は、その全体で、弾性又は伸縮性を有していてもよい。これにより、例えば、ウェア本体及び/又は牽引ベルトの装着者(使用者)の体へのフィッティング性能が向上する、又は位置ずれが起きにくくなる。したがって、牽引力の低下を防ぎ、その効果を向上させることができる。ウェア本体は、弾性又は伸縮性を有していなくてもよい。
【0017】
ウェアは、トレーニング、運動、リハビリテーション及び/又は介護に用いられてもよい。以下に、トレーニング、運動、リハビリテーション及び介護という用語について、例示を用いて説明する。トレーニング、運動、リハビリテーション及び介護という用語は、互いに異なる意味に用いられてもよい。いくつかの実施形態では、それらの用語は、相互に、少なくとも部分的に同じ意味で用いられてもよく、交換可能な意味で用いられてもよい。
【0018】
本明細書で用いられる「トレーニング」という用語は、一般に、フィジカルトレーニング又はフィジカル・エクササイズをさす。トレーニングは、柔軟性又は可動性を高めるトレーニング(例えばストレッチ)、有酸素トレーニング(例えば、サイクリング、ウォーキング、ジョギング、水泳)、無酸素トレーニング(例えば、ウエイトトレーニング、筋力トレーニング)などであってもよい。上記のトレーニングの分類は例示であり、他の分類が用いられてもよい。
【0019】
トレーニングは、例えば下肢トレーニングであってもよい。トレーニングは、例えば、股関節及び/又は膝関節の安定性を向上させるためのトレーニングであってもよい。トレーニングは、例えば、股関節安定性トレーニング、膝安定性(ニースタビィティ)トレーニングなどであってもよい。膝安定性は、外反又は内反に対する防止、予防又は矯正であってもよい。例えば、ウェアは、股関節の外旋が維持された状態で、膝の外反をふせぎながらするトレーニング(例えばスクワット)に用いられてもよい。
【0020】
本明細書で用いられる「エクササイズ」という用語は、一般に、肉体能力又は健康の維持、強化、回復、向上などを目的とした肉体的な動きをさす。日本語では運動とも呼ばれる。「エクササイズ」は、スポーツであってもよい。スポーツは、例えば、股関節の外旋や伸展で活動する臀部、ハムストリングス等の筋肉が重要視される各種のスポーツであってもよい。スポーツは、例えば、股関節の外旋動作が重要となる、バレエ、陸上競技、スケート等、であってもよい。
【0021】
本明細書で用いられる「リハビリテーション」という用語は、一般に、医学又は治療上の状態を回復又は向上させるための、筋骨格系の療法又は運動の態様をさす。リハビリテーションは、治療的運動療法、物理療法及動作訓練を含む。リハビリテーションは、例えば、医学的リハビリテーションであってもよい。リハビリテーションは、例えば理学療法であってもよい。理学療法は、例えば運動療法であってもよい。運動療法は、一般に、身体の全体または一部を動かすことで症状の軽減や機能の回復を目指す療法をさす。運動療法は、治療体操、機能訓練など呼ばれてもよい。運動療法は、一般に、関節可動域、筋力、運動の協調性など運動特性の改善を目的としていてもよい。
【0022】
本明細書で用いる「牽引ベルト」は、一般に、柔軟性、可撓性を有する帯状、ストラップ状又は牽引ベルト状の部材又は部位をさす。牽引ベルトは、その長手方向及び幅方向に対して他の方向(薄さ方向)に屈曲可能であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、ウェアは、複数の牽引ベルトを備えていてもよい。いくつかの実施形態では、ウェアは一対の牽引ベルトを備えていてもよい。いくつかの実施形態では、ウェアは、右牽引ベルト及び左牽引ベルトを備えていてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、ウェアは、片側に2つ又はそれ以上の牽引ベルトを備えていてもよい。いくつかの実施形態では、ウェアの片側に配置された、2つ又はそれ以上の牽引ベルトは、重ね合わされるように構成されてもよい。例えば、第一の牽引ベルトは、大腿部内側面、大腿部前面、股関節の左右方向一方の外側(一方の腸骨)、臀部、仙骨、及び股関節の左右方向他方の外側(他方の腸骨)の対応部位に沿うように構成され、第二の牽引ベルトは、股関節の左右方向一方の外側(一方の腸骨)、臀部、仙骨、及び股関節の左右方向他方の外側(他方の腸骨)の対応部位に沿ように構成されてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、ウェアは、片側に2つ又はそれ以上の牽引ベルトを、牽引ベルトの長手方向に連ねて備えていてもよい。いくつかの実施形態では、ウェアは、一つの牽引ベルトを備えていてもよい。いくつかの実施形態では、一つの牽引ベルトは、装着者(使用者)の左及び右のいずれか一方の股関節に作用するように用いられてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、その長手方向の少なくとも一部に、弾性又は伸縮性を有していてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、その長さ方向の一部を構成し、弾性又は伸縮性を有する第一ベルト部と、牽引ベルトの長さ方向の他の少なくとも一部を構成し、第一ベルト部よりも高い弾性又は伸縮性を有する第二ベルト部と、を備えていてもよい。第一ベルト部が第二ベルト部よりも低い弾性又は伸縮性を有することで、第一ベルト部は、伸縮しにくく、より大きな引張力を発揮する。第二ベルト部が第一ベルト部よりも高い弾性又は伸縮性を有することで、第二ベルト部は、伸縮しやすく、装着者の動作を阻害しにくくなる。
【0027】
いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、長手方向に延伸し、縮む方向に力を発生させてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、ウェア本体の少なくとも一部を構成する素材に対して、より大きい伸長弾性率(弾性モジュラス)を有していてもよい。牽引ベルトは、より大きい伸長弾性率を有した部分で、ウェア本体よりも伸長した状態からの復元力が大きく、縮む方向により大きな力を発揮する。いくつかの実施形態では、牽引ベルトの長手方向の伸長弾性率は、牽引ベルトが接触するウェア本体の部位、牽引ベルトに近接するウェア本体の部位、又は牽引ベルトに対応部位の周囲のそれよりも大きくてもよい。牽引ベルトは、左と右、同一牽引ベルト内の部位などに応じて、異なる弾性率を有していてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、その長手方向の全体が弾性又は伸縮性を有していてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、その長手方向の全体が弾性又は伸縮性を有さないように構成されてもよい。
【0028】
本開示は、牽引ベルトを提供する。牽引ベルトは、ウェア本体に対して別個に提供されてもよい。牽引ベルトは、ウェア本体に取り付け可能に構成されていてもよい。
【0029】
牽引ベルトは、第一固定部を備えている。いくつかの実施形態では、第一固定部は、牽引ベルトの一端に設けられている。いくつかの実施形態では、第一固定部は、ウェア本体の左右方向一方側において大腿部後面の対応部位に固定されていてもよい。いくつかの実施形態では、ウェアが一対の左右の牽引ベルトを備える場合、右牽引ベルトの第一固定部は、ウェア本体の、右側の大腿部後面の対応部位に固定され、左牽引ベルトの第一固定部は、ウェア本体の、左側の大腿部後面の対応部位に固定される。
【0030】
牽引ベルトは、第二固定部を備えている。いくつかの実施形態では、第二固定部は、牽引ベルトの他端に設けられている。いくつかの実施形態では、第二固定部は、ウェア本体の左右方向他方側の上前腸骨棘の対応部位に固定されていてもよい。いくつかの実施形態では、ウェアが一対の左右の牽引ベルトを備える場合、右牽引ベルトの第二固定部は、ウェア本体の、左側の大腿部後面の対応部位に固定され、左牽引ベルトの第二固定部は、ウェア本体の、右側の大腿部後面の対応部位に固定される。いくつかの実施形態では、一対の左右の牽引ベルトの前記第二固定部は、左右方向に離れた位置で、左右の上前腸骨棘の対応部位に固定されていてもよい。
【0031】
牽引ベルトは、ベルト中間部を備えている。いくつかの実施形態では、ベルト中間部の一端に第一固定部が設けられ、他端に第二固定部が設けられている。いくつかの実施形態では、ベルト中間部は、大腿部内側面、大腿部前面、股関節外側、臀部、及び仙骨の対応部位に沿って延びている。いくつかの実施形態では、ウェアが一対の左右の牽引ベルトを備える場合、右牽引ベルトのベルト中間部は、右大腿部内側面、右大腿部前面、右股関節外側、右臀部、及び仙骨の対応部位を通り、左牽引ベルトのベルト中間部は、左大腿部内側面、左大腿部前面、左股関節外側、左臀部、及び仙骨の対応部位を通る。
【0032】
いくつかの実施形態では、ベルト中間部は、ウェア本体に固定された第一固定部と第二固定部との間で、ベルト中間部の長手方向に引張力が付与されていてもよい。ベルト中間部に引張力が付与されることで、第一固定部、及び第二固定部からウェア本体に、ベルト中間部の長手方向に沿った引張力を付与することができる。ベルト中間部に付与された引張力が、ウェア本体と装着者の体表面との間の摩擦によって装着者に伝達されることで、装着者の骨盤に力を作用させることができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、一対の左右の牽引ベルトのベルト中間部は、それぞれの股関節の外側から臀部を介して、仙骨の対応部位で交差されていてもよい。これにより、例えば非限定的に、股関節の外旋・伸展筋である大臀筋を圧迫刺激することができる。あるいは、これにより大臀筋の筋収縮を促し、仙骨を後方から圧迫し、前傾した骨盤を前方に押圧することができる。一般に、骨盤の前傾が強い場合に、牽引ベルトの仙骨に対する圧迫は大きくなる。牽引ベルトにより仙骨を後方から圧迫した結果、前傾位にある骨盤を中間位に誘導することができる。仙骨の対応部位のウェア本体の生地は、その他の部分に対して固く形成されていてもよい。それにより、牽引ベルトによる仙骨に対する圧迫をより効率的にすることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、少なくとも一部で、ウェア本体と一体的に形成されていてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトの一端は、大腿部後面の対応部位において、ウェア本体と一体的に形成されていてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、大腿部後面の対応部位から大腿部内側面の対応部位まで、ウェア本体と一体的に形成されていてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、大腿部後面の対応部位から大腿部前面の対応部位まで、大腿部内側面の対応部位を含み、ウェア本体と一体的に形成されていてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、大腿部後面の対応部位から股関節外側の対応部位まで、大腿部内側面及び大腿部前面の対応部位を含み、ウェア本体と一体的に形成されていてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、大腿部後面の対応部位から臀部の対応部位まで、大腿部内側面、大腿部前面及び股関節外側の対応部位を含み、ウェア本体と一体的に形成されていてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、少なくとも一部又は全体で、ウェア本体に対して縫着され又は生地に編み込まれていてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、少なくとも一部又は全体で、ウェア本体に対して、接着又は溶着されていてもよい。牽引ベルトとウェア本体との一体形成により、例えば、装着者はウェアを着て牽引ベルトを調節することを容易にできる。
【0035】
いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、少なくとも一部で、ウェア本体と非一体的に又は分離して構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも仙骨の対応部位から、上前腸骨棘の対応部位の第二固定部まで、ウェア本体と非一体的に又は分離して構成されていてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、第一固定部、および第二固定部で、ウェア本体に対して固定されていてもよく、又は固定されるように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、第一固定部、および第二固定部の片方、又は両方で、ウェア本体に対して着脱可能に構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、第一固定部がウェア本体に一体的に固定され、第二固定部の他方がウェア本体に対して着脱可能に固定されていてもよい。第一固定部がウェア本体に一体的に固定されていると、装着者は、牽引ベルトの他端(第二固定部)側を牽引ベルトの延長方向に引っ張りながら、ベルト中間部を大腿部内側面、大腿部前面、股関節外側、臀部、及び仙骨の対応部位に沿わせていき、第二固定部をウェア本体に固定することができる。これにより、牽引ベルトが、ベルト中間部の長手方向に引張力が付与された状態で装着される。
【0037】
いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、ウェア本体に設けられたベルト固定部により、ウェア本体に対して着脱可能に構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、ベルト固定部は、牽引ベルトの第二固定部が着脱可能に構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、大腿部前面で、ウェア本体に対して着脱可能に構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトのウェア本体に対する固定に、バックル、面ファスナー、その他の着脱可能な固定部品を用いてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、ベルト中間部において、ウェア本体に接する側の少なくとも一部に、ウェア本体との間に生じるすべりを抑えるための滑り止め部材を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、滑り止め部材は、ゴム系材料、シリコーン系材料等から形成されていてもよい。いくつかの実施形態では、滑り止め部材は、ベルト中間部において、ウェア本体に接する側に、点状、線状、面状に形成されていてもよい。いくつかの実施形態では、滑り止め部材は、ベルト中間部の延長方向の少なくとも一部に形成されていてもよい。いくつかの実施形態では、滑り止め部材は、ベルト中間部の幅方向の少なくとも一部に形成されていてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、大腿部後面の対応部位の固定端から上前腸骨棘の対応部位の固定端までの長さを装着時に調節又は変更できるように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトの装着は、引張力を付与された状態で、ウェア本体に対して固定することで行ってもよい。例えば、大腿部後面の対応部位に固定された牽引ベルトの一端に対し、牽引ベルトの他端をベルト中間部の長手方向に引っ張ることでベルト中間部に引張力を付与した状態で、牽引ベルトの他端の第二固定部を上前腸骨棘の対応部位に当該他端を固定してもよい。これにより、例えば、牽引力が与えられた状態で、牽引ベルトをウェア本体に対して固定することができる。あるいは又はさらに、牽引ベルトの長さを装着者に対して調整することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、大腿部後面の対応部位に固定される第一固定部は、大腿部の長さ方向に帯状に形成されていてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトの一端(第一固定部)は、帯状の大腿部後面の対応部位の上端及び下端、及び股関節外側の対応部位の三点によって生地上で画定される部位において、略三角形となるように形成されてもよい。牽引ベルトをベルト中間部の長手方向に引っ張ることで、第一固定部を構成する三角形の面による牽引力が、ウェア本体を介して大腿部に及ぶ。これにより、大腿部を外旋させることができる。
【0041】
本開示のいくつかの実施形態では、上前腸骨棘の対応部位に固定される第二固定部は、牽引ベルトのベルト中間部に付与される引張力によって、例えば、骨盤及び/又は腸骨を効率的に開かせる、又は後傾させることができる。これにより、例えば、効率的に股関節が外旋・屈曲方向に誘導される。その状態から運動を行うことによって、臀部、ハムストリングスなど一般に弱りやすい股関節後面の筋肉に刺激を与えることができる。あるいはまた、又はさらに、これにより例えば、膝の外反(外反膝)を抑制することができる。または、運動した時に臀部の活動を向上させることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、帯状の大腿部後面の対応部位の上端と股関節外側の対応部位とを結ぶ上側牽引ベルト、及び帯状の大腿部後面の対応部位の上端と股関節外側の対応部位とを結ぶ下側牽引ベルトを備えていてもよい。牽引ベルトを引っ張ることで、大腿部後面の対応部位の上端及び下端に対して牽引力が作用し、大腿部を外旋させることができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、ウェア本体の牽引ベルトが当接する部位又は牽引ベルトが一体形成された部位の少なくとも一部は、装着者の体表面に対して、実質的に滑らない又は他の体表面の部位に対してより滑りにくい表面を有していてもよい。いくつかの実施形態では、大腿部後面から股関節外側までの面、すなわち大腿部に対応する部位の、内側表面は、実質的に滑らない生地を有していてもよい。いくつかの実施形態では、大腿部後面の対応部位の内側表面は、実質的に滑らないように形成され、大腿部内側、大腿部前面及び股関節外側の対応部位の内側表面は、比較的滑りやすいように形成されていてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、牽引ベルトは、左側及び右側のいずれか一方に装着されてもよい。いくつかの実施形態では、左側及び右側の両方に装着される一対の伸縮性牽引ベルトが提供されてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、牽引ベルトを備えたウェアは、大腿部を外旋させ、装着者の股関節を外旋及び屈曲させてもよい。これにより、縫工筋の機能が補助/促通され、股関節の外旋、屈曲及び外転、膝の内旋及び屈曲などの動作を行いやすくすることができる。
【0046】
例えば、遊脚中期(つま先が地面から離れ、反対の脚を越える期間)では、股関節の屈曲及び外旋が誘導される。遊脚後期又は立脚初期から立脚中期(踵が地面についてから反対の脚の踵が地面につくまでの期間)では、股関節の内旋を抑制し、その伸展外旋が誘導される。これにより、例えば、股関節の安定性を向上させることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、牽引ベルトを備えたウェアは、腸腰筋(大腰筋と腸骨筋)の機能を補助/促通させてもよい。腸腰筋は、股関節の屈曲と外旋、腰椎の側屈、仰向けの状態から体幹を起こすような動作を担う(片側の腸腰筋が収縮すると、腸腰筋が収縮した側に腰椎が側屈する。両側の腸腰筋が収縮すると仰向けの状態から体幹を起こす)。腸腰筋は、筋肉の始まり(起始)を腰椎に有し、姿勢保持、歩行及び走行のために重要である。腸腰筋は萎縮を起こしやすい筋肉であるため、正常な活動を保つことは重要である。遊脚期で腸腰筋がうまく誘導されることで、脚がスムーズに前に出る。
【0048】
いくつかの実施形態では、牽引ベルトを備えたウェアにより、内転筋群の機能を補助/促通するようにしてもよい。内転筋群には、外閉鎖筋(股関節深層外旋筋)、恥骨筋、長内転筋、短内転筋、小内転筋、大内転筋及び薄筋があり、それぞれ大腿部の外旋および股関節の屈曲を担う機能を有している。
【0049】
立脚期では、例えば深層外旋筋は、大腿部を骨盤に引き寄せ、股関節を安定させるように機能する。本開示のウェアは、例えば、股関節の内旋(深層外旋筋の伸長)を抑制するように働き、股関節を外旋方向に誘導する。これにより更に、膝の外反を抑制することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、牽引ベルトを備えたウェアは、大腿四頭筋の機能を補助又は促通してもよい。大腿四頭筋のうち大腿直筋は、股関節を屈曲させる機能を有している。
【0051】
股関節が外旋方向に誘導されることによって、大腿四頭筋のうちの内側広筋の活動が活発になる。内側広筋は、膝蓋骨の内側に停止を有する。したがって例えば、本開示のウェアにより、膝関節の外反を抑制することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、本開示のウェアは、補助又は促通される筋肉に対する反作用が生じる筋肉(拮抗筋)の作用を抑制してもよい。いくつかの実施形態では、反作用が生じる筋肉(拮抗筋)は、例えば、半膜様筋、半腱様筋又は大腿二頭筋を含むハムストリングスであってもよい。拮抗筋は、相反神経抑制という神経回路を有する。本開示のウェアにより補助又は促通する筋肉が収縮すると、その拮抗筋は抑制されて伸ばしやすくなる。
【0053】
遊脚期では、股関節は屈曲方向に活動するので、ハムストリングスは反作用として活動が抑制される。本開示のウェアは、その活動の抑制を促進させることができる。立脚期では、本開示のウェアは、股関節の伸展及び外旋を誘導する。そのため、膝の外反を抑制することができる。さらに、ハムストリングスや殿筋群(股関節伸筋群)の活動が促進される。
【0054】
いくつかの実施形態では、本開示のウェアは、拮抗筋、すなわち殿筋群;梨状筋、内閉鎖筋、双子筋などの股関節深層外旋筋;長内転筋、短内転筋等を抑制してもよい。これにより、股関節の安定性、伸展動作などを高めることができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、牽引ベルトを備えたウェアは、姿勢保持や歩行・走行に関わる筋肉に対しては補助/促通機能を有するとともに、弱化しやすく萎縮しやすい筋肉に対して弛緩作用と物理的な抵抗の両方をかけるようにしてもよい。いくつかの実施形態では、牽引ベルトを備えたウェアを外したときに、補助/促通していた筋肉が活動的になり、アラインメント異常や経年による身体の機能低下を改善するようにしてもよい。
【0056】
図1図4に、ある実施形態に係るウェア100を示す。図1図4に示すウェア100は、ウェア本体110と、一対の牽引ベルト120と、を備えている。
【0057】
ウェア本体110は、少なくとも骨盤部300及び大腿部200を覆うように構成されている。本実施形態では、ウェア本体110は、例えば膝上丈とされ、装着者の骨盤部300と、大腿部200とを覆うように構成されている。ウェア本体110は、伸縮性を有し、かつ装着者の体表面との位置ずれを生じないような摩擦抵抗を持つ素材によって形成されている。ウェア本体110は、例えば、ナイロンやポリウレタン、あるいはこれらを含む各種繊維素材によって形成されている。ウェア本体110は、例えば、陸上競技用ウェア、水泳競技用水着、ゴルフ用アンダーウェアなどのスポーツ用途、腰痛緩和の用途、マッサージ効果の用途、その他の用途のために製作されてもよい。
【0058】
一対の牽引ベルト120は、左右の右牽引ベルト120R及び左牽引ベルト120Lを備えている。右牽引ベルト120R及び左牽引ベルト120Lは、それぞれ、柔軟性、可撓性を有する帯状、ストラップ状で、第一固定部121と、第二固定部122と、ベルト中間部123と、を備えている。
【0059】
第一固定部121は、牽引ベルト120(右牽引ベルト120R、左牽引ベルト120L)の一端に設けられている。第一固定部121は、大腿部後面201の対応部位において、ウェア本体110と一体的に形成されている。第一固定部121は、ウェア本体110の左右方向一方側において大腿部後面201の対応部位に固定されている。右牽引ベルト120Rの第一固定部121は、ウェア本体110の、右側の大腿部後面201Rの対応部位に固定されている。左牽引ベルト120Lの第一固定部121は、ウェア本体110の、左側の大腿部後面201Lの対応部位に固定されている。牽引ベルト120は、第一固定部121において、例えば、ウェア本体110に対して縫着され又は生地に編み込まれている。本実施形態において、第一固定部121は、大腿部200の長さ方向に帯状に形成されている。
【0060】
第二固定部122は、牽引ベルト120の他端に設けられている。第二固定部122は、ウェア本体110の左右方向他方側の上前腸骨棘305の対応部位に固定されている。右牽引ベルト120Rの第二固定部122は、ウェア本体110の、左側の上前腸骨棘305Lの対応部位に固定されている。左牽引ベルト120Lの第二固定部122は、ウェア本体110の、右側の上前腸骨棘305Rの対応部位に固定されている。右牽引ベルト120Rの第二固定部122と、一対の左右の牽引ベルト120の第二固定部122は、左牽引ベルト120Lの第二固定部122とは、左右方向に離れた位置で、左右の上前腸骨棘305の対応部位に固定されている。
【0061】
ウェア本体110には、左右の上前腸骨棘305Rの対応部位にベルト固定部118が設けられている。ベルト固定部118は、例えばウェア本体110に縫着、接着、又は溶着されている。ベルト固定部118は、牽引ベルト120の第二固定部122が着脱可能に構成されている。第二固定部122は、ベルト固定部118により、ウェア本体110に対して着脱可能に構成されている。第二固定部122とベルト固定部118とにおける牽引ベルト120のウェア本体110に対する固定に、例えば面ファスナーが用いられている。
【0062】
各牽引ベルト120は、ベルト中間部123の一端に第一固定部121が設けられ、他端に第二固定部122が設けられている。各牽引ベルト120のベルト中間部123は、大腿部内側面202、大腿部前面203、股関節外側204、臀部205、及び仙骨302の対応部位に沿って延びている。右牽引ベルト120Rのベルト中間部123は、右大腿部内側面202R、右大腿部前面203R、右股関節外側204R、右臀部205R、及び仙骨302の対応部位を通り、左牽引ベルト120Lのベルト中間部123は、左大腿部内側面202L、左大腿部前面203L、左股関節外側204L、左臀部205L、及び仙骨302の対応部位を通る。
【0063】
本実施形態において、牽引ベルト120は、第一ベルト部125と、第二ベルト部126と、を備えている。第一ベルト部125は、牽引ベルト120の長さ方向の一部を構成している。第一ベルト部125は、牽引ベルト120の一端側の一部を構成している。第一ベルト部125は、弾性又は伸縮性を有している。第二ベルト部126は、牽引ベルト120の長さ方向の他の少なくとも一部を構成している。第二ベルト部126は、牽引ベルト120の他端側の一部を構成している。第二ベルト部126は、第一ベルト部125に接合されている。第二ベルト部126は、第一ベルト部125よりも高い弾性又は伸縮性を有している。第一ベルト部125が第二ベルト部126よりも高い弾性又は伸縮性を有することで、第一ベルト部125は、伸縮しにくく、装着者の大腿部200に、より大きな引張力を発揮する。第二ベルト部126が第一ベルト部125よりも高い弾性又は伸縮性を有することで、第二ベルト部126は伸縮しやすく、装着者の骨盤部300の動作を阻害しにくくなる。
【0064】
このような牽引ベルト120は、長手方向に延伸し、縮む方向に力(引張力)を発生させる。牽引ベルト120は、ウェア本体110の少なくとも一部を構成する素材に対して、より大きい伸長弾性率(弾性モジュラス)を有している。牽引ベルト120の長手方向の伸長弾性率は、牽引ベルト120が接触するウェア本体110の部位、牽引ベルト120に近接するウェア本体110の部位、又は牽引ベルト120に対応部位の周囲のそれよりも大きい。牽引ベルト120は、ウェア本体110より大きい伸長弾性率を有することで、ウェア本体110よりも、伸長した状態からの復元力が大きく、縮む方向により大きな力(引張力)を発揮する。
【0065】
ベルト中間部123は、ウェア本体110に固定された第一固定部121と第二固定部122との間で、ベルト中間部123の長手方向に引張力が付与されている。ベルト中間部123に引張力が付与されることで、第一固定部121、及び第二固定部122からウェア本体110に、ベルト中間部123の長手方向に沿った引張力を付与することができる。ベルト中間部123に付与された引張力が、ウェア本体110と装着者の体表面との間の摩擦によって装着者に伝達されることで、装着者の骨盤部300に力を作用させることができる。
【0066】
牽引ベルト120は、ベルト中間部123において、ウェア本体110に接する側の少なくとも一部に、ウェア本体110との間に生じるすべりを抑えるための滑り止め部材(図示省略)を備えている。滑り止め部材は、ゴム系材料、シリコーン系材料等から形成されている。滑り止め部材は、ベルト中間部123において、ウェア本体110に接する側に、点状、線状、面状に形成されている。滑り止め部材は、ベルト中間部123の延長方向の少なくとも一部に形成されている。
【0067】
本実施形態では、牽引ベルト120は、第一固定部121において、大腿部後面201の対応部位から大腿部内側面202の対応部位まで、ウェア本体110と一体的に形成されている。牽引ベルト120とウェア本体110との一体形成により、例えば、装着者はウェア100を着て牽引ベルト120を調節することを容易に行える。
【0068】
牽引ベルト120は、他端の第二固定部122側で、ウェア本体110と非一体的に又は分離して構成されている。牽引ベルト120は、少なくとも仙骨302の対応部位から、上前腸骨棘305の対応部位の第二固定部122まで、ウェア本体110と非一体的に又は分離して構成されている。
【0069】
牽引ベルト120は、第一固定部121がウェア本体110に一体的に固定されており、装着者が、牽引ベルト120の他端(第二固定部122)側を牽引ベルト120の延長方向に引っ張りながら、ベルト中間部123を大腿部内側面202、大腿部前面203、股関節外側204、臀部205、及び仙骨302の対応部位に沿わせていき、第二固定部122をウェア本体110に固定する。これにより、牽引ベルト120が、ベルト中間部123の長手方向に引張力が付与された状態で装着される。牽引ベルト120は、例えば、牽引力が与えられた状態で、牽引ベルト120をウェア本体110に対して固定することができる。あるいは又はさらに、牽引ベルト120の長さを装着者に対して調整することができる。
【0070】
牽引ベルト120の引張力により、第一固定部121による牽引力F1が、ウェア本体110を介して大腿部200に及ぶ。これにより、大腿部200を外旋させることができる。
【0071】
一対の左右の牽引ベルト120のベルト中間部123は、それぞれの股関節301の外側から臀部205を介して、仙骨302の対応部位で交差されている。これにより、股関節301の外旋・伸展筋である大臀筋を圧迫刺激することができる。また、これにより大臀筋の筋収縮を促し、仙骨302を後方から圧迫する圧迫力F2を発揮し、前傾した骨盤部300を前方に押圧することができる。一般に、骨盤部300の前傾が強い場合に、牽引ベルト120の仙骨302に対する圧迫は大きくなる。牽引ベルト120により仙骨302を後方から圧迫した結果、前傾位にある骨盤部300を中間位に誘導することができる。
【0072】
ここで、仙骨302の対応部位のウェア本体110の生地は、その他の部分に対して固く形成されていてもよい。それにより、牽引ベルト120による仙骨302に対する圧迫をより効率的にすることができる。
【0073】
また、左右の上前腸骨棘305の対応部位に固定される第二固定部122は、牽引ベルト120のベルト中間部123に付与される引張力によって、左右方向両側に広がる方向の牽引力F3が骨盤部300に及ぶ。これにより、骨盤部300及び/又は腸骨を効率的に開かせる、又は後傾させることができる。その結果、効率的に股関節301が外旋・屈曲方向に誘導される。その状態から運動を行うことによって、臀部205、ハムストリングスなど一般に弱りやすい股関節301後面の筋肉に刺激を与えることができる。あるいはまた、又はさらに、これにより例えば、膝の外反(外反膝)を抑制することができる。または、運動した時に臀部205の活動を向上させることができる。
【0074】
本開示は以下の実施形態も提供する:
A001
ウェアであって、
少なくとも骨盤部及び大腿部を覆うように構成されたウェア本体と、
一対の左右の牽引ベルトと、を備え、
各前記牽引ベルトは、
前記牽引ベルトの一端に設けられ、前記ウェア本体の左右方向一方側において大腿部後面の対応部位に固定される第一固定部と、
大腿部内側面、大腿部前面、股関節外側、臀部、及び仙骨の対応部位に沿って延びるベルト中間部と、
前記牽引ベルトの他端に設けられ、前記ウェア本体の左右方向他方側の上前腸骨棘の対応部位に固定される第二固定部と、を備える、
ウェア。
A011
実施形態A001に記載のウェアであって、
前記牽引ベルトの長さ方向の少なくとも一部が、弾性又は伸縮性を有する、
ウェア。
A012
実施形態A011に記載のウェアであって、
前記牽引ベルトの長さ方向の一部を構成し、弾性又は伸縮性を有する第一ベルト部と、
前記牽引ベルトの長さ方向の他の少なくとも一部を構成し、前記第一ベルト部よりも高い弾性又は伸縮性を有する第二ベルト部と、を備える、
下半身ウェア。
A013
実施形態A011または実施形態A012に記載のウェアであって、
前記牽引ベルトの伸長弾性率は、前記ウェア本体の少なくとも一部の伸長弾性率よりも大きい、
下半身ウェア。
A014
実施形態A001から実施形態A013のいずれか一項に記載のウェアであって、
前記ベルト中間部は、前記ウェア本体に固定された前記第一固定部と前記第二固定部との間で、前記ベルト中間部の長手方向に引張力が付与されている、
下半身ウェア。
A021
実施形態A001から実施形態A014のいずれか一項に記載のウェアであって、
前記一対の左右の牽引ベルトの前記ベルト中間部は、前記仙骨の対応部位で互いに交差するように構成されている、
ウェア。
A022
実施形態A001から実施形態A021のいずれか一項に記載のウェアであって、
前記一対の左右の牽引ベルトの前記第二固定部は、左右方向に離れた位置で、左右の上前腸骨棘の対応部位に固定される、
ウェア。
A031
実施形態A001から実施形態A022のいずれか一項に記載のウェアであって、
前記牽引ベルトは、少なくとも一部又は全体で、前記ウェア本体と一体的に形成されている、
ウェア。
A032
実施形態A031に記載のウェアであって、
前記牽引ベルトは、少なくとも一部又は全体で、前記ウェア本体に対して縫着され又は生地に編み込まれている、
ウェア。
A033
実施形態A031に記載のウェアであって、
前記第一固定部が前記ウェア本体に一体的に固定され、
前記前記第二固定部の他方が前記ウェア本体に対して着脱可能に固定される、
ウェア。
A041
実施形態A033に記載の下半身ウェアであって、
前記ウェア本体に設けられ、前記牽引ベルトの前記第二固定部が着脱可能に構成されたベルト固定部、をさらに備える、
ウェア。
A002
少なくとも骨盤部及び大腿部を覆うように構成されたウェア本体に装着される牽引ベルトであって、
前記牽引ベルトの一端に設けられ、前記ウェア本体の左右方向一方側において大腿部後面の対応部位に固定される第一固定部と、
大腿部内側面、大腿部前面、股関節外側、臀部、及び仙骨の対応部位に沿って延びるベルト中間部と、
前記牽引ベルトの他端に設けられ、前記ウェア本体の、左右方向他方側の上前腸骨棘の対応部位に固定される第二固定部と、を備え、
少なくとも一部で弾性を有する、
牽引ベルト。
A101
ウェアであって、
少なくとも骨盤部及び大腿部を覆うように構成されたウェア本体と、
一つの牽引ベルトと、を備え、
前記牽引ベルトは、
前記牽引ベルトの一端に設けられ、前記ウェア本体の左右方向一方側において大腿部後面の対応部位に固定される第一固定部と、
大腿部内側面、大腿部前面、股関節外側、臀部、及び仙骨の対応部位に沿って延びるベルト中間部と、
前記牽引ベルトの他端に設けられ、前記ウェア本体の、左右方向他方側の上前腸骨棘の対応部位に固定される第二固定部と、を備える、
ウェア。
B001
股関節安定化のための牽引ベルトであって、
一端に設けられ、装着者の左右方向一方側において大腿部後面の対応部位に固定される第一固定部と、
装着者の大腿部内側面、大腿部前面、股関節外側、臀部、及び仙骨の対応部位に沿って延びるベルト中間部と、
他端に設けられ、装着者の左右方向他方側の上前腸骨棘の対応部位に固定される第二固定部と、を備える、牽引ベルト。
【符号の説明】
【0075】
11 ウェア本体
100 ウェア
110 ウェア本体
118 ベルト固定部
120 牽引ベルト
121 第一固定部
122 第二固定部
123 ベルト中間部
125 第一ベルト部
126 第二ベルト部
200 大腿部
201 大腿部後面
202 大腿部内側面
203 大腿部前面
204 股関節外側
205 臀部
300 骨盤部
301 股関節
302 仙骨
305 上前腸骨棘

図1
図2
図3
図4