(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069606
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】クーラント供給装置及び工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/10 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
B23Q11/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181606
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春日 弘道
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011EE05
3C011EE09
(57)【要約】
【課題】クーランド供給装置において、突切り加工により材料から切り離されたワークが、加工点に吹き付けるクーラントによって、不測の場所に飛ばされるのを抑制する。
【解決手段】クーラント供給装置100は、正面主軸231に保持された材料に工具250を接触させる加工点P付近にクーラントを供給しつつ材料を加工する自動旋盤200に使用され、クーラントを送出するクーラントポンプ110と、クーラントを加工点P付近に供給する第1系統流路130及び第2系統流路140と、を備え、クーラントポンプ110は加工工程に応じて駆動と停止とを切り替えられ、第1系統流路130は4つの管路131~134を有し、第2系統流路140は、管路141と、クーラントを貯留する、加工点Pよりも高い位置に設けられた油槽142と、クーラントを絞って加工点P付近に供給する絞り管路144と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に保持された材料に工具を接触させる加工点にクーラントを供給しつつ前記材料を加工する工作機械、に使用され、
前記クーラントを送出するクーラントポンプと、
前記クーラントポンプによって送出された前記クーラントを前記加工点に供給する、互いに独立した2系統の流路と、を備え、
前記クーラントポンプは、前記材料を加工する加工工程に応じて、駆動と停止とを切り替えられ、
前記2系統の流路のうち一方の流路は、1又は並列に設けられた2以上の管路を有し、
前記2系統の流路のうち他方の流路は、管路と、前記他方の流路における前記管路から供給された前記クーラントを貯留する、前記加工点よりも高い位置に設けられた貯留槽と、前記貯留槽に貯留された前記クーラントを絞って前記加工点に供給する絞り管路と、を有するクーラント供給装置。
【請求項2】
前記クーラントポンプは、前記加工工程が突切り加工のとき停止に切り替えられ、に応じて、前記加工工程が前記突切り加工以外の加工のとき駆動に切り替えられる、請求項1に記載のクーラント供給装置。
【請求項3】
前記一方の流路における前記管路と前記他方の流路における前記管路とは、同じ構造の管路である、請求項1又は2に記載のクーラント供給装置。
【請求項4】
前記絞り管路は、前記加工点に、前記クーラントを滴下して供給する、請求項1から3のうちいずれか1項に記載のクーラント供給装置。
【請求項5】
前記貯留槽は、上縁のうち、前記加工点から、前記主軸に直交する水平方向において遠い側の領域に、切り欠きが形成されている、請求項1から4のうちいずれか1項に記載のクーラント供給装置。
【請求項6】
材料を保持する主軸と、
前記主軸に保持された前記材料に、加工点で接触させる工具と、
前記加工点にクーラントを供給する請求項1から5のうちいずれか1項に記載のクーラント供給装置と、
前記主軸、前記工具及び前記クーラント供給装置の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記材料を加工する加工工程に応じて、前記クーラントポンプの駆動と停止とを切り替える工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラント供給装置及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動旋盤によって加工された製品(ワーク)は、突切り加工により、材料である丸棒等から切り離される。そして、切り離された製品は、所定の位置に配置された回収部に回収される。回収部としては、例えば、突切り加工を行う突切りバイトの刃先がワークに接している加工点の近くまで移動して、切り離されたワークを受け取る受け箱(ワーク回収カゴ)などがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、工作機械において、加工点に供給するクーラントの量を、大流量と小流量とに切り替える技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-061704号公報
【特許文献2】特許第5428626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した突切り加工により、材料からワークを切り離すとき、突切り加工を行う突切りバイトの刃先がワークに接している加工点に吹き付けているクーラントの流れにより、切り離されたワークが吹き飛ばされて、回収位置に設けられた受け箱等に回収することができない場合がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、突切り加工により材料から切り離されたワークが、加工点に吹き付けるクーラントによって、不測の場所に飛ばされるのを抑制することができるクーラント供給装置及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1は、主軸に保持された材料に工具を接触させる加工点にクーラントを供給しつつ前記材料を加工する工作機械、に使用され、前記クーラントを送出するクーラントポンプと、前記クーラントポンプによって送出された前記クーラントを前記加工点に供給する、互いに独立した2系統の流路と、を備え、前記クーラントポンプは、前記材料を加工する加工工程に応じて、駆動と停止とを切り替えられ、前記2系統の流路のうち一方の流路は、1又は並列に設けられた2以上の管路を有し、前記2系統の流路のうち他方の流路は、管路と、前記他方の流路における前記管路から供給された前記クーラントを貯留する、前記加工点よりも高い位置に設けられた貯留槽と、前記貯留槽に貯留された前記クーラントを絞って前記加工点に供給する絞り管路と、を有するクーラント供給装置である。
【0008】
本発明の第2は、材料を保持する主軸と、前記主軸に保持された前記材料に、加工点で接触させる工具と、前記加工点にクーラントを供給する本発明に係るクーラント供給装置と、前記主軸、前記工具及び前記クーラント供給装置の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記材料を加工する加工工程に応じて、前記クーラントポンプの駆動と停止とを切り替える工作機械である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るクーラント供給装置及び工作機械によれば、突切り加工により材料から切り離されたワークが、加工点に吹き付けるクーラントによって、不測の場所に飛ばされるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るクーラント供給装置の一例であるクーラント供給装置を含む工作機械の一例である自動旋盤を示す斜視図である。
【
図2】自動旋盤の加工室に設けられたクーラント供給装置を示す斜視図である。
【
図3】クーラント供給装置を、
図1に示した自動旋盤の正面側から見た正面図である。
【
図4】自動旋盤及びクーラント供給装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るクーラント供給装置及び工作機械の一実施形態であるクーラント供給装置100及び自動旋盤200について、図面を参照して説明する。
【0012】
(構成)
図1は本発明に係るクーラント供給装置の一例であるクーラント供給装置100を含む自動旋盤200を示す斜視図、
図2は自動旋盤200の加工室220に設けられたクーラント供給装置100を示す斜視図、
図3はクーラント供給装置100を、
図1に示した自動旋盤200の正面側から見た正面図である。
【0013】
図示の自動旋盤200は、本発明に係る工作機械の一例である。自動旋盤200は、数値制御によるコンピュータ制御の自動旋盤であり、少なくとも制御部210と、制御部210によって制御される正面主軸231、背面主軸232及び工具250(切削バイト、突切りバイト、ドリル刃等)を有する加工室220と、クーラント供給装置100と、を備えている。
【0014】
制御部210は、予め設定されたプログラムを実行することにより、正面主軸231、背面主軸232、工具250及びクーラント供給装置100の動作を制御する。
【0015】
正面主軸231は、加工対象の材料である丸棒をチャック(保持)して軸(Z軸)回りに回転するとともに、軸方向への送りや軸に直交するXY面(X方向(Z軸に直交する水平方向)とY方向(Z軸に直交する鉛直方向)とを含む鉛直面)内で移動し、加工室220において、工具250のうち、加工工程に応じた工具(切削バイト、突切りバイト、ドリル刃等)選択して、選択された工具を丸棒に接触させることによって丸棒を加工する。
【0016】
背面主軸232は、正面主軸231にチャックされた状態で加工された後のワーク(丸棒の加工された後の部分)を、加工室220において正面主軸231から受け取るようにチャック(保持)し、チャックしたワークを軸回りに回転させたり、軸に直交する面内で移動したりする。
【0017】
なお、本実施形態においては、
図2,3に示すように、背面主軸232の先端(正面主軸231に対向した側の端部)に、シュータ240が固定されている。シュータ240は、背面主軸232に対して着脱自在である。
【0018】
シュータ240は、背面主軸232でワークをチャックする処理手順が無く、正面主軸231でチャックされた状態で加工され、突切りバイトによる突切り加工で正面主軸231にチャックされた丸棒から切り離されたワークを回収する手順の場合に、背面主軸232に取り付けられ、その他の場合は背面主軸232から取り外されている。
【0019】
シュータ240は、
図2,3に示すように、受け箱241と傾斜通路242とを備えている。受け箱241は、上方が開口し、底部が、水平面に対して背面主軸232の軸方向の後方に下がるように傾斜し、傾斜した底部の最下端部に出口が形成された樋状に形成されている。受け箱241は、正面主軸231にチャックされた丸棒から突切り加工により切り離されるワークの直下に配置され、丸棒から切り離されて下方に落下したワークを、上方の開口を介して底部で受ける。
【0020】
傾斜通路242は、樋状に形成されて、水平面に対して所定の角度で傾斜した通路であり、その傾斜の上端側が受け箱241の底部の出口に接続されている。そして、受け箱241の底部で受けられたワークは、底部の傾斜によって出口に到達し、出口に接続された傾斜通路242に載り、傾斜通路242の傾斜に沿って下方に移動するように搬送される。
【0021】
クーラント供給装置100は、本発明に係るクーラント供給装置の一例である。クーラント供給装置100は、加工室220において、工具250が加工対象の丸棒に接触して丸棒を加工する加工点P付近にクーラントを供給する。クーラント供給装置100は、クーラントポンプ110と、供給管路120と、第1系統流路130(一方の流路の一例)と、第2系統流路140(他方の流路の一例)と、を備えている。
【0022】
クーラントポンプ110は、クーラントを送出する。クーラントポンプ110は、制御部210の制御により、クーラントを送出動作する駆動とクーラントの送出動作を停止する停止とが切り替えられる。制御部210は、丸棒を加工する加工の種類に応じて、クーラントポンプ110に対する駆動と停止との動作の切り替えを制御する。
【0023】
供給管路120は、クーラントポンプ110に接続されていて、クーラントポンプ110から送出されたクーラントを流す。クーラントポンプ110が停止したときは、供給管路120を流れていたクーラントの流れも停止する。
【0024】
第1系統流路130と第2系統流路140とは、いずれも供給管路120に接続されて、クーラントポンプ110によって送出されたクーラントを加工点P付近に供給する。第1系統流路130と第2系統流路140とは、互いに独立している。
【0025】
第1系統流路130は、例えば、4つの管路131,132,133,134で構成されている。4つの管路131~134は同一の管路であり、いずれも可撓性を有し、各管路131~134の一端(基端)は供給管路120に接続され、他端(先端)は、供給管路120に接続された部分よりも下方に位置する加工点P付近に向けられている。
【0026】
これにより、各管路131~134は、供給管路120を通じて供給されたクーラントを、加工点P付近に吹き付ける。
【0027】
第1系統流路130は、上述した4つの管路131~134で構成されたものに限定されるものではなく、1つの管路131で構成されたものであってもよいし、2つ以上の任意の数の管路で構成されたものであってもよい。
【0028】
つまり、第1系統流路130は、突切り加工以外の加工の際に適した量であって、後述する第2系統流路140の側の、絞り管路144から供給されるクーラントに比べて大量のクーラントを、加工点P付近に供給することができるものであればよい。
【0029】
第2系統流路140は、管路141と、油槽142(貯留槽)と、絞り管路144と、を備えている。管路141は、第1系統流路130の4つの管路131~134のそれぞれと同じ構造であり、可撓性を有し、一端(基端)は供給管路120に接続され、他端(先端)は油槽142に向けられている。
【0030】
管路131,132,133,134,141は同一であるため、部品の共通化を図ることができる。管路131,132,133,134,141が同一であることにより、供給管路120から各管路131,132,133,134,141には、略同一の流量のクーラントが流れる。したがって、第1系統流路130は第2系統流路140に比べて、略4倍の流量のクーラントが流れる。管路131~134,141は可撓性を有するものでなくてもよい。
【0031】
なお、管路141は管路131~134と同じものである必要は無く、管路131~134と異なるものであってもよい。
【0032】
管路141の先端は油槽142に向けられているため、管路141を流れたクーラントは、油槽142に供給される。
【0033】
油槽142は、加工点P付近よりも高い位置に設けられている。なお、本実施形態においては、油槽142は、供給管路120と略同じ高さ位置又は供給管路120よりも高い位置に設けられているが、供給管路120よりも低い位置に設けられていてもよい。
【0034】
油槽142は、管路141から供給されたクーラントを貯留する。油槽142の底部には、油槽142の底部よりも低い位置に配置された絞り管路144が接続されている。絞り管路144は、接続管路145と、絞り弁146と、滴下管路147と、を備えている。接続管路145は、油槽142の底部に接合されていて、油槽142に貯留されたクーラントが、自然落下により流れ込む。
【0035】
絞り弁146は、接続管路145に接続されて、接続管路145を流れたクーラントを、例えば一滴ずつ滴下する程度に流量を絞る。滴下管路147は、接続管路145及び絞り弁146よりも下方に配置されていて、一端が絞り弁146に接続され、他端(先端)が加工点P付近の上方に配置されている。
【0036】
これにより滴下管路147は、油槽142から自然落下して、絞られたクーラントを、先端から加工点P付近に滴下させて供給する。滴下管路147の先端から加工点P付近に供給されるクーラントの量は、絞り弁146の絞り程度に応じたものとなる。滴下管路147から加工点P付近に供給されるクーラントの量は、一滴ずつ滴下する程度の量に限定されるものではなく、突切り加工時に、丸棒の材料から切り離されたワークを、クーラントによって吹き飛ばさない程度の量であればよい。
【0037】
したがって、絞り管路144は、必ずしもクーラントを滴下して供給する滴下管路147を備えたものに限定されず、ワークを吹き飛ばさない程度(例えば、クーラントが細い糸を引く程度)に、クーラントを絞り弁146で絞って加工点P付近に連続して供給するものであってもよい。
【0038】
これにより、本実施形態においては、第2系統流路140から加工点P付近に供給されるクーラントの量は、例えば、第1系統流路130から加工点P付近に供給されるクーラントの量の、1/100~1/1000程度の量に設定されている。
【0039】
なお、上述したように、油槽142には、管路141から各管路131~134と同様に多量のクーラントが供給されるが、絞り管路144を通じて油槽142から排出されるクーラントは極少量となる。したがって、油槽142へのクーラントの出入の収支は供給過多となり、油槽142に溜められるクーラントの量は増加し続ける。そして、油槽142に溜められたクーラントが満杯になると、クーラントは、油槽142から溢れて、上方の開口から外に流れ落ちる。
【0040】
ここで、油槽142の上縁のうち、加工点PからX方向において遠い側の領域には、切り欠き143が形成されている。したがって、油槽142から溢れるクーラントは、この切り欠き143の部分から流れ落ち始めるため、油槽142から流れ落ちたクーラントが、加工点P付近に降り注ぐのを抑制することができる。
【0041】
制御部210は、自動旋盤200による加工の制御において、正面主軸231によってチャックされた丸棒を加工室220において、突切り加工(工具250のうち例えば突切りバイトによって丸棒からワークを切り離す加工工程)以外の通常の加工(工具250のうち突切りバイト以外の工具による加工工程(例えば、切削バイトによる切削の加工工程やドリル刃による穴あけの加工工程等))を開始するのに先立って、クーラントポンプ110が送出動作となるようにクーラントポンプ110を制御する。
【0042】
これにより、クーラントポンプ110が駆動されて送出動作を開始して、クーラントを供給管路120に供給する。供給管路120に供給されたクーラントは、第1系統流路130の各管路131~134及び第2系統流路140の管路141に流れる。第1系統流路130の各管路131~134の各先端及び第2系統流路140の管路141の先端からは、それぞれ、供給管路120を通じて送出されたクーラントが吐出する。
【0043】
第1系統流路130の各管路131~134の先端は、加工点P付近に向いて設定されているため、加工点P付近には各管路131~134から吐出された大量のクーラントが吹き付けられる。
【0044】
また、第2系統流路140の管路141の先端から吐出したクーラントは油槽142に供給され、油槽142から接続管路145及び絞り弁146を介して滴下管路147に極少量のクーラントが流れて、滴下管路147から加工点P付近に極少量のクーラントが滴下する。
【0045】
このように、突切り加工以外の通常の加工工程が開始される前に、第1系統流路130からの大量のクーラントと、第2系統流路140からの極少量のクーラントとが、加工点P付近に供給される。その後、制御部210は、正面主軸231および工具250を制御して、自動旋盤200は、加工点Pにおいて、正面主軸231でチャックされた丸棒の加工動作を開始する。
【0046】
この通常の加工工程中は、上述したように大量のクーラントが加工点P付近に供給されことで、加工によって発生する熱を冷却したり、加工で発生した切粉を流し落としたり、また、工具250と丸棒との摩擦を低減することができる。
【0047】
なお、通常の加工工程中は、加工対象の丸棒は、正面主軸231にチャックされているため、加工点P付近に大量のクーラントが吹き付けた場合であっても、吹き付けた大量のクーラントによって丸棒が吹き飛ばされることは無い。
【0048】
一方、上述した通常の加工工程の後に、丸棒から加工後のワークを切り離す突切り加工工程の際は、制御部210は、突切り加工工程を開始するのに先立って、クーラントポンプ110が停止するようにクーラントポンプ110を制御する。
【0049】
これにより、クーラントポンプ110は停止して、供給管路120へのクーラントの供給は停止する。この結果、供給管路120にはクーラントが流れず、第1系統流路130の各管路131~134及び第2系統流路140の管路141にクーラントは供給されない。この結果、管路131~134,141の各先端からクーラントは吐出しない。
【0050】
この結果、加工点P付近には管路131~134からの大量のクーラントが吹き付けられることがない。
【0051】
一方、第2系統流路140の管路141の先端からもクーラントは吐出されないが、第2系統流路140の油槽142には、通常の加工工程において管路141から吐出していた多量のクーラントが供給されて、絞り管路144から排出されるからクーラントの量は極少量であったため、油槽142には、ある程度の量のクーラントが溜められた状態となっている。
【0052】
そして、クーラントポンプ110が停止している状態においても、油槽142に溜められているクーラントが、自然落下により、絞り管路144を通じて極少量ずつ排出され、加工点P付近に供給される。
【0053】
このように、突切り加工工程では、加工点P付近に大量のクーラントが供給されることは無く、滴下管路147から滴下する程度の極少量のクーラントだけが供給される。
【0054】
突切り加工工程では、ワークが、正面主軸231にチャックされた丸棒から切り離されるため、仮に、通常の加工工程と同様の大量のクーラントが加工点P付近に吹き付けられると、丸棒から切り離されたワークが、吹き付けられた大量のクーラントによって、予期しない方向、場所に飛ばされてしまう。特に、ワークのサイズが小さい場合は、ワークの重量も軽いため、大量のクーラントによって飛ばされ易い。
【0055】
そして、そのようにワークが予期しない方向、場所に飛ばされた場合、切り離されたワークを回収するために、加工点Pの直下の位置に予め配置されていた受け箱241にワークが入らず、受け箱241でワークを回収することができない恐れがある。
【0056】
これに対して本実施形態のクーラント供給装置100及び自動旋盤200は、突切り加工工程では、加工点P付近に供給されるクーラントが滴下する程度の少量であるため、この滴下するクーラントによって、ワークが予期しない方向や場所に飛ばされることがない。
【0057】
したがって、本実施形態のクーラント供給装置100は、突切り加工工程によって切り離されたワークを、予め設定された所定の位置に配置された受け箱241に回収することができる。
【0058】
このように、本実施形態のクーラント供給装置100及び自動旋盤200は、材料である丸棒を加工する加工工程に応じて、クーラントポンプ110の駆動と停止とを切り替えることで、通常の加工工程でのクーラントの機能を十分に発揮させつつ、突切り加工工程でのワークの飛ばされを抑制することができる。
【0059】
なお、「加工工程に応じて」とは、一例として「加工の種類や内容に応じて」という意味である。
【0060】
図4は自動旋盤200及びクーラント供給装置100の動作を示すフローチャートである。以上のように構成された自動旋盤200及びクーラント供給装置100の動作を、
図4に示したフローチャートを参照して説明する。
【0061】
自動旋盤200の制御部210が、予め設定されたプログラムを読み込んで、正面主軸231及び工具250を制御し、正面主軸231でチャックされた丸棒に対して、通常の加工動作を行い、通常の加工動作の後に、加工して得られたワークを突切り加工により丸棒から切り離して、シュータ240によりワークを回収する。この一連の加工動作において、制御部210がクーラント供給装置100の動作を制御する。
【0062】
具体的には、
図4に示すように、自動旋盤200の制御部210は、通常の加工動作の開始に先立って、クーラントポンプ110を駆動するように制御して送出動作を開始(ON)させる(S1)。これにより、第1系統流路130と第2系統流路140とにより、加工点P付近には、大量のクーラントが吹き付けられる。
【0063】
クーラントポンプ110が送出動作を開始した後、制御部210は、正面主軸231及び工具250の切削バイトやドリル刃等の動作を制御して、丸棒に対して、突切り加工以外の通常の加工動作を行う(S2)。丸棒に対する通常の加工が終了すると、制御部210は、正面主軸231及び工具250に対して動作を停止させる制御を行う(S3)。
【0064】
次いで、制御部210は、クーラントポンプ110を停止させる制御を行う(S4)。これにより、第1系統流路130の管路131~134及び第2系統流路140の管路141からのクーラントの吐出が停止する。しかし、油槽142に溜められたクーラントが、絞り管路144に流れて、滴下管路147からクーラントが加工点P付近に滴下する。
【0065】
次に、通常の加工が終了したワークが丸棒から切り離される加工点Pの直下に、シュータ240の受け箱241が配置されるように、制御部210が背面主軸232を移動させる制御を行う(S5)。
【0066】
次いで、制御部210は、正面主軸231及び工具250のうち突切りバイトの動作を制御して、ワークを丸棒から切り離す突切り加工を開始する(S6)。突切り加工によって、ワークは、通常、非常に短時間(例えば、1[秒間]以内)で丸棒から切り離される。制御部210は、正面主軸231及び突切り工具に対して動作を停止させる制御を行う(S7)。
【0067】
ここで、加工点P付近には、クーラントが極少量だけ供給されていて、このクーラントが、突切り加工時の発熱を抑制し、突切りバイトとワークとの摩擦を低減する。一方、加工点P付近に滴下したクーラントは、極少量であり、しかも、滴下管路147から自然落下したものであるため、丸棒から切り離されたワークに衝突しても、ワークを吹き飛ばすほどのエネルギを有していない。
【0068】
したがって、丸棒から切り離されたワークは、加工点P付近に供給されているクーラントに拘わらず、シュータ240の受け箱241に回収される。そして、受け箱241に回収されたワークは、傾斜通路242を通って所定の位置に集められる。
【0069】
次いで、制御部210は、背面主軸232を制御して、受け箱241が加工点Pの直下に移動する前の元の位置に移動させ、処理を終了する。
【0070】
以上、詳細に説明したように、本実施形態のクーラント供給装置100及び自動旋盤200によれば、突切り加工により材料から切り離されたたワークが、加工点P付近に吹き付けるクーラントによって、不測の場所に飛ばされるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0071】
100 クーラント供給装置
110 クーラントポンプ
130 第1系統流路(一方の流路の一例)
131,132,133,134,141 管路
140 第2系統流路(他方の流路の一例)
142 油槽
144 絞り管路
200 自動旋盤(工作機械の一例)
231 正面主軸(主軸の一例)
250 工具
P 加工点