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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069611
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】弁座及び弁座を備えた電磁ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/10 20060101AFI20230511BHJP
   F04B 17/04 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
F04B53/10 G
F04B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181620
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】庄司 幸広
【テーマコード(参考)】
3H069
3H071
【Fターム(参考)】
3H069AA01
3H069AA05
3H069BB02
3H069CC04
3H069DD33
3H069EE42
3H071AA01
3H071AA06
3H071BB01
3H071CC26
3H071DD13
(57)【要約】
【課題】弁体の過度な変形を抑制すると共に、弁体が開くことにより流れる流体の流量を適切に確保する。
【解決手段】電磁ポンプ1のポンプ室32cと流体の吸入ポート34b及び吐出ポート34aの少なくとも一方との間に配置されたリード弁42が着座可能なシート44,46であって、流体が流れる方向でリード弁42の下流側でリード弁42に対向する対向面56aを有する基部56と、対向面56aに溝状に形成され、リード弁42に向かって流入した流体をポンプ室32c又は吐出ポート34aへ流出させる流出部60と、を備え、流出部60は、複数の貫通穴62と、複数の貫通穴62の間に延在し、基部56における反対面56bから対向面56aに向かう方向での高さが対向面56aよりも低い延在部64と、を有する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁ポンプのポンプ室と流体の吸入口及び吐出口の少なくとも一方との間に配置された弁体が着座可能な弁座であって、
流体が流れる方向で前記弁体の下流側で前記弁体に対向する対向面を有する本体部と、
前記対向面に溝状に形成され、前記弁体に向かって流入した流体を前記ポンプ室又は前記吐出口へ流出させる流出部と、
を備え、
前記流出部は、複数の貫通穴と、前記複数の貫通穴の間に延在し、前記本体部における前記対向面と反対側の面から前記対向面に向かう方向での高さが前記対向面よりも低い延在部と、を有する、
弁座。
【請求項2】
前記流出部は、前記延在部が前記対向面側に突出するように前記複数の貫通穴の周囲に形成された凹部を更に有する、
請求項1に記載の弁座。
【請求項3】
前記複数の貫通穴は、前記延在部に関して対称的な位置に形成されている、
請求項1又は2に記載の弁座。
【請求項4】
ポンプ室の容積を変化させて流体を吸入及び吐出する電磁ポンプであって、
電磁力により一方向に移動可能な可動鉄心と、
前記一方向において前記可動鉄心と対向して配置された固定鉄心と、
前記可動鉄心における前記一方向側の端部から前記一方向に沿って延在し、前記可動鉄心と共に移動する移動体と、
前記移動体における前記一方向側の端部に対向して配置され、前記一方向と反対方向に前記移動体と共に前記可動鉄心を移動可能な弾性力を付与する弾性体と、
前記ポンプ室と流体の吸入口及び吐出口の少なくとも一方との間に配置された弁体と、
請求項1~3の何れか一項に記載の弁座と、
を備える電磁ポンプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁座及び弁座を備えた電磁ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ピストンを往復動させることによりポンプ室の容積を変化させて流体を吸入及び吐出する電磁ポンプにおいて、流体の流路を開く弁体と、当該弁体が着座可能な弁座と、を備えた構成が知られている。例えば、下記特許文献1には、流体の流路を開く弁体としてのリード弁と、当該リード弁に対向して配置された弁座としてのシートと、を備えた電磁ポンプが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-229955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のシートは円筒状であり中央に開口部が形成されているため、開弁の際にリード弁の中央部がシート側へ大きく変形してしまい、リード弁の応力が集中する箇所に破損等が生じる可能性がある。その一方で、リード弁の過度な変形を抑制するためにシートの開口部を小さくすると、リード弁が開くことにより流れる流体の流量を適切に確保することが難しくなるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、弁体の過度な変形を抑制すると共に、弁体が開くことにより流れる流体の流量を適切に確保することができる弁座及び弁座を備えた電磁ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る弁座は、電磁ポンプのポンプ室と流体の吸入口及び吐出口の少なくとも一方との間に配置された弁体が着座可能な弁座であって、流体が流れる方向で前記弁体の下流側で前記弁体に対向する対向面を有する本体部と、前記対向面に溝状に形成され、前記弁体に向かって流入した流体を前記ポンプ室又は前記吐出口へ流出させる流出部と、を備え、前記流出部は、複数の貫通穴と、前記複数の貫通穴の間に延在し、前記本体部における前記対向面と反対側の面から前記対向面に向かう方向での高さが前記対向面よりも低い延在部と、を有する。
【0007】
本発明の第二態様に係る弁座では、前記流出部は、前記延在部が前記対向面側に突出するように前記複数の貫通穴の周囲に形成された凹部を更に有する。
【0008】
本発明の第三態様に係る弁座では、前記複数の貫通穴は、前記延在部に関して対称的な位置に形成されている。
【0009】
本発明の第四態様に係る電磁ポンプは、ポンプ室の容積を変化させて流体を吸入及び吐出する電磁ポンプであって、電磁力により一方向に移動可能な可動鉄心と、前記一方向において前記可動鉄心と対向して配置された固定鉄心と、前記可動鉄心における前記一方向側の端部から前記一方向に沿って延在し、前記可動鉄心と共に移動する移動体と、前記移動体における前記一方向側の端部に対向して配置され、前記一方向と反対方向に前記移動体と共に前記可動鉄心を移動可能な弾性力を付与する弾性体と、前記ポンプ室と流体の吸入口及び吐出口の少なくとも一方との間に配置された弁体と、第一~第三態様の何れかに記載の弁座と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、弁体の過度な変形を抑制すると共に、弁体が開くことにより流れる流体の流量を適切に確保することができる弁座及び弁座を備えた電磁ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る弁構造を備えた電磁ポンプの概略構成を示す側断面図である。
図2図1に示すリード弁の平面図である。
図3図1に示すシートの斜視図である。
図4図3のシートのIV-IV線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態(以下、適宜、「本実施形態」という。)について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一要素又は同一機能を有する要素には可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
<電磁ポンプの全体構成>
図1は、本実施形態に係る弁構造を備えた電磁ポンプの概略構成を示す側断面図である。図1に示すように、電磁ポンプ1は、電磁力及び弾性力を利用して流体(液体又は気体)の吸入及び吐出を逐次的に行う装置である。電磁ポンプ1は、電磁コイル10と、プランジャ16と、ストッパ18と、移動体20と、ばね部材30と、ケース32と、ポンプ本体34と、弁構造40と、を備える。
【0014】
電磁コイル10は、環状のコイルボビン12と、当該コイルボビン12に巻き付けられた銅線と、で形成される。電磁コイル10が励磁(ON)の状態で発生する磁界によって、プランジャ16及びストッパ18がそれぞれ磁化され、プランジャ16をストッパ18に吸引させる電磁力が作用する。図1は、電磁コイル10が非励磁(OFF)の状態を示している。
【0015】
プランジャ16は、電磁力によりストッパ18に向かう一方向Xに移動可能な可動鉄心である。プランジャ16は、磁性体で構成されており、略円筒状を呈している。また、プランジャ16は、ばね部材30の弾性力によって、移動体20と共に、一方向Xと反対方向である他方向Yに移動可能である。以下、プランジャ16が一方向Xに移動することを「往動」、プランジャ16が他方向Yに移動することを「復動」という。
【0016】
ストッパ18は、一方向Xにおいてプランジャ16と対向して配置された固定鉄心である。ストッパ18は、磁性体で構成されており、略円筒状を呈している。ストッパ18は、プランジャ16と同心軸状に配置されている。ストッパ18は、環状の基部18aと、基部18aから立設する円筒状の受け部18bと、を有する。
【0017】
移動体20は、プランジャ16における一方向X側の端部16aから一方向Xに沿って延在し、プランジャ16の往動又は復動に伴い、プランジャ16と共に移動する。移動体20は、ロッド22と、ピストン24と、を有する。
【0018】
ロッド22は、プランジャ16の端部16aから立設するように形成され、プランジャ16と同心軸状に一方向Xに沿って延在している。また、ロッド22は、ストッパ18の軸心部においてリニアガイド21を介して挿入され、ストッパ18と同心軸状に配置されている。
【0019】
ピストン24は、ロッド22における一方向X側の端部に当接している。ピストン24は、ポンプ本体34内に摺動自在に挿入され、ロッド22と同心軸状に配置されている。ピストン24の一方向X側の端部には、ばね部材30の外周に沿って延在するガイド部26が形成されている。
【0020】
ばね部材30は、ピストン24の端面24aに対向して配置され、端面24aを他方向Yに付勢する。これにより、ばね部材30は、移動体20を介してプランジャ16に弾性力を付与する。
【0021】
ケース32は、有底の略円筒状を呈しており、電磁コイル10、プランジャ16、ストッパ18、及び移動体20の一部等を収容する。ポンプ本体34は、ケース32と係合している。ポンプ本体34は、有底の略円筒状を呈しており、ピストン24及びばね部材30等を収容する。ポンプ本体34には、外部へ流体を吐出する吐出口である吐出ポート34aと、外部から流体を吸入する吸入口である吸入ポート34bと、が設けられている。また、ポンプ本体34の内部空間は、流体が溜まるポンプ室34cを構成する。
【0022】
弁構造40は、ばね部材30における一方向X側の端部に対向して配置されている。弁構造40は、リード弁42と、シート44,46と、を備える。
【0023】
リード弁42は、ポンプ室34cと吸入ポート34b及び吐出ポート34aとの間に配置されている。リード弁42は、ポンプ室34cと吸入ポート34bとの間の流路及びポンプ室34cと吐出ポート34aとの間の流路をそれぞれ開く弁体である。リード弁42は、ポンプ室34cと吸入ポート34bとの間の部分が吸入弁42aとして機能し、ポンプ室34cと吐出ポート34aとの間の部分が吐出弁42bとして機能する。
【0024】
シート44,46は、リード弁42が着座可能な弁座である。シート44は、吸入ポート34bからポンプ室34cに向かって流体が流れる方向でリード弁42より下流側、すなわちリード弁42とポンプ室34cとの間に配置された吸入用弁座である。シート46は、ポンプ室34cから吐出ポート34aに向かって流体が流れる方向でリード弁42より下流側、すなわちリード弁42と吐出ポート34aとの間に配置された吐出用弁座である。シート44とシート46とは、同様の構成とされており、互いに180度反対向きに、その間にリード弁42を挟み込むように位置している。
【0025】
<リード弁の構成>
次に、図2を参照して、リード弁の構成について説明する。図2は、図1に示すリード弁42の平面図である。図2では、リード弁42をシート44側から見た図を示し、リード弁42の背面側にあるシート46の一部構成を破線で示している。
【0026】
図2に示すように、リード弁42は、円板部48と、円板部48に形成された貫通溝50a,50b,50c,50dと、を有する。円板部48は、シート44とシート46とに挟み込まれており、各シート44,46と対向する。図2では、円板部48を半円領域に二等分する仮想線を中心線Aとして示している。貫通溝50a,50b,50c,50dは、曲率の異なる円弧を接続してなる円弧状に形成されている。中心線Aに対して、貫通溝50a,50bは一方側に位置しており、貫通溝50c,50dは他方側に位置している。貫通溝50a,50bと貫通溝50c,50dとは、中心線Aを軸として対称的な位置に形成されている。
【0027】
貫通溝50a,50bは、円板部48とシート46を介して対向する吸入ポート34bの内周に沿うように形成されている。貫通溝50a,50bは、ポンプ室34cと吸入ポート34bとの間の流路を開いて流体をポンプ室34cに吸入するための吸入溝である。これに対し、貫通溝50c,50dは、円板部48とシート46を介して対向する吐出ポート34aの内周に沿うように形成されている。貫通溝50c,50dは、ポンプ室34cと吐出ポート34aとの間の流路を開いて流体を吐出ポート34aに吐出するための吐出溝である。
【0028】
なお、リード弁42は、リード弁42とシート44,46との位置合わせ用のピンを挿入するためのピン穴54を有する。ピン穴54は、例えば、中心線Aが通る位置において、互いに離間して二個形成されている。
【0029】
<シートの構成>
次に、図3を参照して、シート44,46の構成について説明する。図3は、図1に示すシート44,46の斜視図である。図3に示すように、シート44,46は、円板状の基部56と、基部56に形成された流入部58及び流出部60と、を有する。基部56は、シート44,46の本体部であって、流体が流れる方向でリード弁42の下流側でリード弁42に対向する対向面56aと、この対向面56aと反対側の反対面56bと、を有している。図3では、基部56を半円領域に二等分する仮想線を中心線Bとして示している。中心線Bに対して、流入部58は一方側に位置しており、流出部60は他方側に位置している。
【0030】
流入部58は、基部56の対向面56aから反対面56bまで貫通する貫通穴であって、吸入ポート34b又はポンプ室34cからリード弁42に向かって流体を流入させる。これに対し、流出部60は、基部56の対向面56aに溝状に形成された有底穴であって、リード弁42に向かって流入した流体をポンプ室34c又は吐出ポート34aへ流出させる。流出部60は、複数(本実施形態では、四つ)の貫通穴62(62a,62b,62c,62d)と、複数の貫通穴62の間に延在する延在部64と、複数の貫通穴62の周囲に形成された凹部66と、を有する。
【0031】
複数の貫通穴62は、流出部60の内周に沿った位置に、所定間隔で離間して並ぶように形成されている。複数の貫通穴62は、対向するリード弁42が開くことによって流体を流出させる。複数の貫通穴62は、延在部64に関して対称的に位置している。例えば、複数の貫通穴62は、延在部64の中心を通る直線を軸として線対称の関係、又は、延在部64の中心について点対称の関係となるように位置している。貫通穴62c,62dの直径は、貫通穴62a,62bの直径よりも大きい。
【0032】
延在部64は、流出部60の略中央に形成されている。反対面56bから対向面56aに向かう方向で、延在部64の高さは、対向面56aの高さよりも低い。換言すると、流体が流れる方向で、延在部64は、対向面56aよりも下流側に位置している。延在部64は、凹部66の底面よりも対向面56a側に突出している。延在部64は、複数の貫通穴62に囲まれる中心部分を起点として、互いに隣接する複数の貫通穴62の間を繋ぐように延在し、略十字状に形成されている。延在部64は、複数の貫通穴62の外周のうち流出部60の中心側の略半円部分の間を繋ぐように形成されている。延在部64は、凹部66を介して基部56に接続されている。
【0033】
凹部66は、延在部64が対向面56a側に向かって突出するように複数の貫通穴62の周囲に形成されている。凹部66は、複数の貫通穴62の外周のうち流出部60の内周側の略半円部分の周囲に環状に形成されている。凹部66は、基部56と延在部64との間に介在している。凹部66の底面に比して延在部64の上面(対向面56a側の面)が対向面56a側に突出しており、凹部66の底面と延在部64の上面とは段差状を呈している。
【0034】
なお、シート44,46は、リード弁42とシート44,46との位置合わせ用のピンを挿入するためのピン穴68を有する。ピン穴68は、例えば、中心線Bが通る位置であってピン穴54に対応する位置に二個形成されている。
【0035】
<弁構造40及び電磁ポンプ1の動作>
次に、図1図3を参照して、弁構造40及び電磁ポンプ1の動作について説明する。まず、電磁コイル10が非励磁(OFF)とされた場合、ばね部材30の弾性力によって付勢されたピストン24が他方向Yに移動する。当該ピストン24によりロッド22が他方向Yに押圧されて、当該ロッド22と共にプランジャ16が復動する。これにより、ポンプ室34cの容積が増加し、この容積増加分の流体が、吸入ポート34bから弁構造40を介して吸入される。
【0036】
この際、弁構造40においては、リード弁42における吸入ポート34b側(図2の中心線Aに対して一方側)における中央部分が、シート44側に変形する。これにより、ポンプ室34cと吸入ポート34bとの間の流路が開き、リード弁42の貫通溝50a,50bに流入した流体が、シート44における凹部66及び複数の貫通穴62を通ってポンプ室34cに流出する。そして、プランジャ16の端部16bがケース14の内面14bに当接した状態において、ポンプ室34cの容積が最大となる。
【0037】
次に、電磁コイル10が励磁(ON)とされた場合、電磁力によってプランジャ16がストッパ18側に吸引される。その結果、プランジャ16は、ばね部材30の弾性力に抗して往動する。当該プランジャ16と共に、ロッド22が一方向Xに移動し、当該ロッド22に押圧されたピストン24は、一方向Xに移動する。これにより、ポンプ室34cの容積が減少し、この容積減少分の流体が、弁構造40を介して吐出ポート34aに吐出される。
【0038】
この際、弁構造40においては、リード弁42における吐出ポート34a側(図2の中心線Aに対して他方側)における中央部分が、シート46側に変形する。これにより、ポンプ室34cと吐出ポート34aとの間の流路が開き、リード弁42の貫通溝50c,50dに流入した流体が、シート46における凹部66及び複数の貫通穴62を通って吐出ポート34aに流出する。そして、プランジャ16がストッパ18の受け部18bに当接した状態において、ポンプ室34cの容積が最小となる。
【0039】
<作用効果>
次に、図4を参照して、上記実施形態に係るシート44,46及びシート44,46を備えた電磁ポンプ1の作用効果について説明する。図4は、図3のシートのIV-IV線に沿った断面図である。図4の(a)は、上記実施形態に係るシート44,46のように流出部60が凹部66を有する場合の断面図を示す。図4の(b)は、上記実施形態の変形例として、流出部60が凹部66を有していない場合の断面図を示す。また、図4では、閉じた状態のリード弁42を実線で示し、開いた状態のリード弁42を破線で示している。
【0040】
図4の(a)及び(b)に示すように、リード弁42が破線で示すように変形して開くと、変形するリード弁42に対して流出部60の延在部64が当接してストッパとして機能し、リード弁42が変形し過ぎないようにすることができる。また、流出部60における複数の貫通穴62から流体を流出させることにより、例えば流出部60の延在部64に対応する位置に一つの貫通穴を形成した場合と同等以上の流路を確保することができる。
【0041】
更に、図4の(a)に示すように流出部60が凹部66を有する場合には、リード弁42に流入した流体が凹部66に流れ込み、複数の貫通穴62だけでなく凹部66も流路として機能させることができる。これにより、図4の(b)に示すように流出部60が凹部66を有しない場合に比して、流路をより大きくすることができる。その結果、電磁ポンプ1におけるピストン内圧は、例えば図4の(b)に示す場合が65kPaであるのに対し、図4の(a)に示す場合は50kPaに低減することができ、圧力損失を小さくすることができる。また、延在部64が対向面56a側に突出していることにより、変形したリード弁42に対してストッパとしての機能をより適切に発揮することができる。また、延在部64が、略十字状に形成されているので、リード弁42に対して均等の力で当接することができる。
【0042】
以上、上記実施形態に係るシート44,46は、電磁ポンプ1のポンプ室32cと流体の吸入ポート34b及び吐出ポート34aの少なくとも一方との間に配置されたリード弁42が着座可能な弁座であって、流体が流れる方向でリード弁42の下流側でリード弁42に対向する対向面56aを有する本体部としての基部56と、対向面56aに溝状に形成され、リード弁42に向かって流入した流体をポンプ室32c又は吐出ポート34aへ流出させる流出部60と、を備え、流出部60は、複数の貫通穴62と、複数の貫通穴62の間に延在し、反対面56bから対向面56aに向かう方向での高さが対向面56aよりも低い延在部64と、を有する。
この構成によれば、流体の吸入時又は吐出時において、リード弁42が変形すると、変形したリード弁42に対してシート44,46の延在部64がストッパとして機能する。これにより、リード弁42の過度な変形を抑制することができる。その結果、リード弁42にかかる応力を低減してリード弁42の破損等を抑制することができる。また、流出部60における複数の貫通穴62から流体を流出させることにより、リード弁42が開くことにより流れる流体の流量を適切に確保することができる。以上より、リード弁42の過度な変形を抑制すると共に、リード弁42が開くことにより流れる流体の流量を適切に確保することができるシート44,46を提供することができる。
【0043】
また、上記実施形態に係るシート44,46では、流出部60は、延在部64が対向面56a側に突出するように複数の貫通穴62の周囲に形成された凹部66を更に有する。
この構成によれば、延在部64が対向面56a側に突出していることにより、変形するリード弁42に対してストッパとしての機能をより適切に発揮することができる。また、複数の貫通穴62の周囲に凹部66が形成されていることにより、複数の貫通穴62だけでなく当該凹部66を流路として機能させることができるので、リード弁42が開くことにより流れる流体の流量をより大きくすることができる。
【0044】
また、上記実施形態に係るシート44,46では、複数の貫通穴62は、延在部64に関して対称的な位置に形成されている。
この構成によれば、延在部64に関して対称的に位置する複数の貫通穴62を流路として、流体をより適切に流すことができる。
【0045】
また、上記実施形態に係る電磁ポンプ1は、ポンプ室34cの容積を変化させて流体を吸入及び吐出する電磁ポンプであって、電磁力により一方向Xに移動可能な可動鉄心であるプランジャ16と、一方向Xにおいてプランジャ16と対向して配置された固定鉄心であるストッパ18と、プランジャ16における一方向X側の端部から一方向Xに沿って延在し、プランジャ16と共に移動する移動体20と、移動体20における一方向X側の端部に対向して配置され、一方向Xと反対方向に移動体20と共にプランジャ16を移動可能な弾性力を付与する弾性体であるばね部材30と、ポンプ室32cと吸入ポート34b及び吐出ポート34aの少なくとも一方との間に配置されたリード弁42と、上記実施形態に記載のシート44,46と、を備える。
この構成によれば、リード弁42の過度な変形を抑制すると共に、リード弁42が開くことにより流れる流体の流量を適切に確保することができるシート44,46を備えた電磁ポンプ1を提供することができる。
【0046】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記の実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0047】
例えば、上記実施形態では、一枚のリード弁42によって吸入ポート34b及び吐出ポート34aの両方を開閉する例について説明したが、これに限らず、吸入ポート34b及び吐出ポート34aのそれぞれに別個のリード弁を設けてもよい。すなわち、リード弁42は、ポンプ室34cと吸入ポート34b及び吐出ポート34aの両方ではなく、ポンプ室34cと吸入ポート34b及び吐出ポート34aの何れか一方との間に配置されていてもよい。シート44,46は、リード弁42を挟み込むように位置するのではなく、吸入ポート34b及び吐出ポート34aのそれぞれに設けられたリード弁が着座可能な位置に設けられてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では図4の(a)に示すようにシート44,46の流出部60が凹部66を有する例について説明したが、図4の(b)に示すように流出部60は凹部66を有していなくてもよい。また、流出部60の延在部64は、対向面56a側に突出していなくてもよく、流出部60の中央からずれて位置していてもよい。また、複数の貫通穴62は、四つに限らず二以上の何れの数であってもよく、延在部64に関して対称的に位置していなくてもよく、何れも同じ直径であってもよい。また、移動体20が有するロッド22やピストン24等の各構成は、それぞれ別体として形成してもよく、一体形成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1:電磁ポンプ、42:リード弁(弁体)、44,44:シート(弁座)、60:流出部、62a,62b,62c,62d(62):貫通穴、64:延在部、66:凹部

図1
図2
図3
図4