IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立GEニュークリア・エナジー株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069612
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】削岩装置
(51)【国際特許分類】
   E21C 27/28 20060101AFI20230511BHJP
   B25D 17/28 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
E21C27/28
B25D17/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181623
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 政隆
(72)【発明者】
【氏名】石塚 一平
(72)【発明者】
【氏名】仲田 宗生
(72)【発明者】
【氏名】田中 基
(72)【発明者】
【氏名】石田 一成
【テーマコード(参考)】
2D058
2D065
【Fターム(参考)】
2D058AA17
2D058BB21
2D058DA45
2D065DA16
2D065DB17
2D065GA01
(57)【要約】
【課題】作業効率を向上させることができるとともに、チゼルの滑りを抑制することができる削岩装置を提供する。
【解決手段】削岩装置100は、ブレーカー1と、平面荷重検出部8と、ブレーカー支持機構5と、姿勢変更機構6と、を備えている。平面荷重検出部8は、ブレーカー1における軸方向と直交する方向の荷重である平面荷重を計測する。ブレーカー支持機構5は、ブレーカー1を軸方向と直交する方向に移動可能に支持する。姿勢変更機構6は、平面荷重検出部8が計測したブレーカー1における全周の平面荷重の分布に基づいて、ブレーカー1における被破砕物Q1に対する姿勢を変更する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被破砕物に接触するチゼルを有するブレーカーと、
前記ブレーカーにおける軸方向と直交する方向の荷重である平面荷重を計測する平面荷重検出部と、
前記ブレーカーを前記軸方向と直交する方向に移動可能に支持するブレーカー支持機構と、
前記平面荷重検出部が計測した前記ブレーカーにおける全周の平面荷重の分布に基づいて、前記ブレーカーにおける前記被破砕物に対する姿勢を変更する姿勢変更機構と、
を備えた削岩装置。
【請求項2】
前記ブレーカーにおける前記チゼルが設けられた先端部とは反対側の後端部に配置されるブレーカー基部と、
前記ブレーカー基部と前記ブレーカーとを接続するブレーカー支持板と、
を備えた請求項1に記載の削岩装置。
【請求項3】
前記ブレーカー及び前記ブレーカー基部を前記軸方向周りに回転させるブレーカー回転装置を備えた
請求項2に記載の削岩装置。
【請求項4】
前記ブレーカー支持機構及び前記姿勢変更機構は、前記ブレーカー支持板に設けられ、前記ブレーカーを前記軸方向と直交する方向に回動可能に支持する回動軸である
請求項3に記載の削岩装置。
【請求項5】
前記ブレーカー基部に接続されるブームをさらに備え、
前記ブレーカー支持機構は、前記ブレーカー支持板に設けられ、前記ブレーカーを前記軸方向と直交する方向に回動可能に支持する第1回動軸であり、
前記姿勢変更機構は、前記ブレーカー基部を前記ブームに対して、記軸方向と直交する方向に回動可能に支持する第2回動軸である
請求項3に記載の削岩装置。
【請求項6】
前記第1回動軸と前記第2回動軸の間に設けられ、前記ブレーカー支持板及び前記ブレーカー、前記平面荷重検出部を前記軸方向周りに回転させる第2ブレーカー回転装置をさらに備えた
請求項5に記載の削岩装置。
【請求項7】
前記平面荷重検出部は、前記ブレーカーにおける軸方向と直交する方向の側面部と対向して配置される
請求項1に記載の削岩装置。
【請求項8】
前記平面荷重検出部を前記ブレーカーに接近及び離反させる検出部退避機構をさらに備えた
請求項7に記載の削岩装置。
【請求項9】
前記ブレーカーを支持するブームをさらに備え、
前記ブレーカー支持機構及び前記姿勢変更機構は、
前記ブレーカーにおける軸方向の後端部から突出し、前記ブームに挿入される延長軸と、
前記延長軸に設けられた球状の球面軸と、
前記ブームに設けられて、前記球面軸を回転可能に支持する球面軸受と、
前記延長軸を任意の傾斜角度で固定するストッパと、を有する
請求項1に記載の削岩装置。
【請求項10】
前記延長軸には、円柱状に形成された被検出部が設けられ、
前記平面荷重検出部は、前記ブームの内部において、前記被検出部に接近及び離反可能に配置される
請求項9に記載の削岩装置。
【請求項11】
前記平面荷重検出部は、複数の検出素子を有し、
複数の前記検出素子は、前記被検出部の周方向を囲むようにしてリング状に配置される
請求項10に記載の削岩装置。
【請求項12】
前記平面荷重検出部は、
前記ブレーカーの側面部に接触するピストンと、
前記ピストンが摺動するシリンダと、
前記シリンダに接続される液圧パイプと、
前記液圧パイプを介して前記シリンダの内部に圧送される作動液と、
前記液圧パイプに接続され、前記作動液を介して伝わる液圧を計測する液圧計測部と、
を有する請求項1に記載の削岩装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削岩装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘削、岩盤破砕や採鉱等の作業工法の一つとして、衝撃工具であるブレーカーに取り付けたたがね、いわゆるチゼルで岩などの被破砕物を削岩する方法がある。人力に依らない削岩作業には、自走あるいは基部が固定された削岩装置が用いられている。このような削岩作業時では、被破砕物の表面の微小な凹凸や局所的に脆い箇所によってチゼルが滑り、目的の寸法で破砕できなかったり、被破砕物の表面が削れてダストの発生量が増加したりする等の問題が発生する。チゼルの滑りを防止するために、チゼルを被破砕物に対して最適な角度で接触させることが要求される。
【0003】
チゼルを被破砕物に対して最適な角度で接触させる技術としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されているようなものがある。特許文献1には、予め被破砕物の位置を測量機器で計測し、削岩装置の穿孔位置を決める技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、チゼル本体の歪み計測する歪みゲージを設け、チゼルが被破砕物に接触した際のチゼルの歪みを歪みゲージにより計測し、計測した情報に基づいてブレーカーの姿勢を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-220627号公報
【特許文献2】特開平8-135204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、削岩作業の前に予め被破砕物表面の形状を計測する必要があり、削岩作業の作業効率が悪化する、という問題を有していた。また、特許文献1に記載された技術では、非接触であるため被破砕物表面の微細な傾斜や局所的な脆さなどの、チゼルの滑りを誘発する要因を検出することが困難であった。その結果、チゼルに滑りが発生し、粉塵発生量が増加する、という問題も有していた。
【0007】
また、チゼルが削岩に用いるため比較的硬質に形成されており、被破砕物に接触しただけでは、その歪み量は微小なものとなっていた。そのため、特許文献2に記載された技術では、歪みゲージで計測される値が小さく、測定精度が低くなる、という問題を有していた。さらに、特許文献2に記載された技術では、振動するチゼルに歪みゲージを外嵌で接触させているため、チゼルの振動が歪みゲージに伝わることで、歪みゲージが破損したり、測定精度が悪化するおそれがあった。その結果、特許文献2に記載された技術では、チゼルの滑りを抑制することが困難であった。
【0008】
本目的は、上記の問題点を考慮し、作業効率を向上させることができるとともに、チゼルの滑りを抑制することができる削岩装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、目的を達成するため、削岩装置は、ブレーカーと、平面荷重検出部と、ブレーカー支持機構と、姿勢変更機構と、を備えている。ブレーカーは、被破砕物に接触するチゼルを有する。平面荷重検出部は、ブレーカーにおける軸方向と直交する方向の荷重である平面荷重を計測する。ブレーカー支持機構は、ブレーカーを軸方向と直交する方向に移動可能に支持する。姿勢変更機構は、平面荷重検出部が計測したブレーカーにおける全周の平面荷重の分布に基づいて、ブレーカーにおける被破砕物に対する姿勢を変更する。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の削岩装置によれば、作業効率を向上させることができるとともに、チゼルの滑りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態例にかかる削岩装置を示すもので、図1Aは正面図、図1Bは側面図である。
図2】第1の実施の形態例にかかる削岩装置の動作例を示す図である。
図3】第1の実施の形態例にかかる削岩装置の動作例を示す図である。
図4】第1の実施の形態例にかかる削岩装置における軸方向荷重の計測値の変化を示す概念図である。
図5】第1の実施の形態例にかかる削岩装置における軸方向と直交する方向の荷重の計測値の変化を示す概念図である。
図6】第1の実施の形態例にかかる削岩装置におけるブームの動作を示す模式図である。
図7】削岩装置におけるブーム支持装置の一例を示す模式図である。
図8】削岩装置におけるブーム支持装置の他の例を示す模式図である。
図9】削岩装置におけるブーム支持装置の更に別の例を示す模式図である。
図10】削岩装置におけるブームとブーム支持装置の動きを示す模式図である。
図11】第2の実施の形態例にかかる削岩装置を示すもので、図11Aは正面図、図11Bは側面図である。
図12】第2の実施の形態例にかかる削岩装置の動作例を示す図である。
図13】第2の実施の形態例にかかる削岩装置における軸方向と直交する荷重の計測値の変化を示す概念図である。
図14】第3の実施の形態例にかかる削岩装置を示すもので、図14Aは正面図、図14Bは側面図である。
図15】第3の実施の形態例にかかる削岩装置における周方向荷重の計測値の変化を示す概念図である。
図16】第4の実施の形態例にかかる削岩装置を示す正面図である。
図17】第5の実施の形態例にかかる削岩装置を示すもので、図17Aは正面図、図17Bは側面図である。
図18】第5の実施の形態例にかかる削岩装置の動作例を示す図である。
図19】第5の実施の形態例にかかる削岩装置の動作例を示す図である。
図20】第5の実施の形態例にかかる削岩装置の動作例を示す図である。
図21】第5の実施の形態例にかかる削岩装置の動作例を示す図である。
図22】第6の実施の形態例にかかる削岩装置を示す図である。
図23】第6の実施の形態例にかかる削岩装置の平面荷重検出部を拡大して示す断面図である。
図24】第7の実施の形態例にかかる削岩装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、削岩装置の実施の形態例について、図1図24を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0013】
1.第1の実施の形態例
まず、第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる削岩装置の構成について図1から図6を参照して説明する。
図1A及び図1Bは、本例の削岩装置を示す図である。
【0014】
図1A及び図1Bに示す装置は、例えば、建物解体やトンネル掘削、岩石の切り出し、岩盤破砕等の土木工事、採鉱作業、原子炉の事故処理や解体作業に用いられる削岩装置である。図1A及び図1Bに示すように、削岩装置100は、ブレーカー1と、チゼル2と、第1ブーム3及び第2ブーム4と、を備えている。また、削岩装置100は、第1回動軸5と、第2回動軸6と、軸方向荷重検出部を示す第1ロードセル7と、平面荷重検出部を示す第2ロードセル8と、ブレーカー基部10と、ブレーカー支持板11とを備えている。
【0015】
ブレーカー1の軸方向の先端部には、チゼル2が取り付けられている。ブレーカー1は、チゼル2を叩く不図示のハンマーを内部に有している。そして、ブレーカー1は、ガス圧、油圧、電動などで気室に圧送したガスによってハンマーを動かし、チゼル2の後端をハンマーで叩く。これにより、ブレーカー1は、チゼル2の先端に当てた被破砕物Q1(図2A及び図2B参照)を破砕する。以下、ブレーカー1及びチゼル2の軸方向を第3の方向Zとし、第3の方向Zと直交する方向を第1の方向Xとし、第3の方向Z及び第1の方向Xと直交する方向を第2の方向Yとする。
【0016】
ブレーカー1の第3の方向Zの基端部には、ブレーカー基部10が配置されている。そして、ブレーカー1とブレーカー基部10は、一対のブレーカー支持板11を介して連結されている。一対のブレーカー支持板11は、ブレーカー1における第2の方向Yの両側の側面部と対向して配置される。そして、ブレーカー1は、第1回動軸5により一対のブレーカー支持板11に回動可能に支持される。
【0017】
ブレーカー支持機構を示す第1回動軸5は、第2の方向Yと平行に配置される。そのため、ブレーカー1は、第1回動軸5により第1の方向Xに回動可能に支持される。また、第1回動軸5には、第1回動軸駆動部15が設けられている。第1回動軸駆動部15は、不図示のステップモータなどの回転機、あるいは重力による第1の方向Xの回動機能を備えている。第1回動軸駆動部15は、回転機、あるいは重力とともに第1回動軸5を開放あるいは固定することで、ブレーカー1の回動動作を制御する。
【0018】
ブレーカー基部10には、2つのロードセル支持板17a、17bが固定されている。ロードセル支持板17a、17bは、ブレーカー基部10から第3の方向Zの先端部に向けて突出している。ロードセル支持板17a、17bの第3の方向Zの先端部には、第2ロードセル8(8a、8b)が取り付けられている。第2ロードセル8は、ロードセル支持板17a、17bに支持されて、ブレーカー1における第1の方向Xの両側の側面部と対向する。すなわち、2つの第2ロードセル8a、8bは、ブレーカー1を間に挟んで180度正対する位置に配置される。また、第2ロードセル8a、8bは、ブレーカー1における第1回動軸5を挟んでチゼル2とは反対側の他端部と対向する。
【0019】
第2ロードセル8は、ブレーカー1にかかる荷重を検出する。より、具体的には、第2ロードセル8は、ブレーカー1における軸方向と直交する方向、すなわち第1の方向Xと第2の方向Yで形成される平面荷重を検出する。
【0020】
なお、本例では、平面荷重検出部である第2ロードセル8を2つ設けた例を説明したが、第2ロードセル8の数は、2つに限定されるものではなく、3つ以上設けてもよく、あるいは1つだけでもよい。また、本例の削岩装置100のように第2ロードセル8を複数設けることで、一つが故障した場合、他のロードセルで代用することができる。
【0021】
さらに、第2ロードセル8を支持するロードセル支持板17a、17bをブレーカー基部10に固定する例を説明したが、これに限定されるものではなく、ロードセル支持板17a、17bをブレーカー基部10よりも第3の方向Zの上方に配置される第1ブーム3に取り付けてもよい。
【0022】
さらに、2つの第2ロードセル8a、8bがブレーカー1を間に挟んで対向して配置されているため、ブレーカー1における第1回動軸5での回動範囲は、2つの第2ロードセル8a、8bの間隔となる。
【0023】
また、ブレーカー基部10及びブレーカー支持板11は、第2回動軸6を介して第1ブーム3に回動可能に支持されている。姿勢変更機構を示す第2回動軸6は、第1回動軸5と平行をなす方向、すなわち第2の方向Yと平行に配置される。そのため、ブレーカー基部10、ブレーカー支持板11及びブレーカー1は、第2回動軸6により第1の方向Xに回動可能に支持される。また、第2回動軸6には、第2回動軸駆動部16が設けられている。第2回動軸駆動部16は、不図示のステップモータなどの回転機による第1の方向Xの回動機能を備えている。第2回動軸駆動部16は、回転機とともに第2回動軸6を開放あるいは固定することで、ブレーカー1やブレーカー基部10の回動動作を制御する。
【0024】
第1ブーム3と、第2ブーム4の連結箇所には、第1ロードセル7が配置されている。第1ロードセル7は、ブレーカー1や第1ブーム3の軸方向の荷重、すなわち第3の方向Zの荷重を検出する。なお、第2ブーム4における第1ブーム3とは反対側の端部には、複数のリンク34a、34b(図7から図9参照)が連結される。また、第2ブーム4には、ブレーカー1、第1ブームや第2ブーム4を軸方向周り(第3の方向Z周り)に回転させるブレーカー回転装置12(図6参照)が取り付けられる。また、ブレーカー回転装置12における第2ブーム4とは反対側には、第1ブーム3や第2ブーム4を支持するブーム支持装置39(図6B参照)が設置される。
【0025】
なお、ブレーカー回転装置12によりブレーカー1、ブレーカー基部10、第1ブーム3や第2ブーム4が第3の方向Z周りに回転することで、第1回動軸5及び第2回動軸6の軸線の向きが変化する。そのため、ブレーカー1や、ブレーカー基部10及びブレーカー支持板11が回動する向きも変化する。
【0026】
1-2.動作例
次に、図2Aから図6を参照して上述した構成を有する削岩装置100の動作例について説明する。
図2Aから図3Bは、本例の削岩装置100の動作例を示す図である。
【0027】
まず、図2Aに示すように、第1ブーム3及び第2ブーム4を移動させて、チゼル2を被破砕物Q1に接触させる。このとき、第1回動軸駆動部15及び第2回動軸駆動部16により第1回動軸5及び第2回動軸6が固定されており、ブレーカー1の軸方向は、第1ブーム3や第2ブーム4の第3の方向Zと平行をなしている。
【0028】
図4は、第1ロードセル7が計測した計測値、すなわち軸方向荷重の計測値の変化を示す概念図である。図4における縦軸は深度D、すなわちブレーカー1の第3の方向Zの押し込み量を示し、横軸は第1ロードセル7が計測した計測値を示している。
チゼル2が被破砕物Q1に当たると、ブレーカー1には、第3の方向Zに沿って反力F1が作用する。図4に示すように、ブレーカー1に作用する第3の方向Zの反力F1は、第1ロードセル7によって計測される。
【0029】
また、図2Aに示すように、被破砕物Q1の表面に傾斜や脆い部分が存在すると、その傾斜や脆さに応じて第3の方向Zと直交する向きの反力F2がチゼル2及びブレーカー1に作用する。第1ロードセル7が計測した反力F1が所定の荷重L1に達すると、第1回動軸駆動部15を開放する。これにより、ブレーカー1及びチゼル2は、第1回動軸5を中心に回動可能となる。チゼル2に作用する第3の方向Zと直交する向きの反力F2により、ブレーカー1における第1回動軸5を挟んでチゼル2とは反対側の他端部には、チゼル2に作用する反力F2とは反対向きの荷重F2’が作用する。そのため、図2Bに示すように、ブレーカー1には、回転モーメントMが作用する。ブレーカー1が回転モーメントMにより第1回動軸5を中心に回動することで、ブレーカー1における第3の方向の他端部が傾き、第2ロードセル8によって荷重F2が計測される。
【0030】
次に、図3Aに示すように、第1ブーム3及び第2ブーム4に取り付けられたブレーカー回転装置12(図6参照)により、ブレーカー1をチゼル2の軸方向を中心に回転、すなわち第3の方向Z周りに180度回転させる。
【0031】
図5は、第2ロードセル8が計測した計測値、すなわち軸方向と直交する方向の荷重(以下、「平面荷重」という。)の計測値の変化を示す概念図である。
第2ロードセル8は、ブレーカー1を間に挟んで180度正対する位置に配置されている。そのため、ブレーカー1を180度回転させることで、図5に示すように、2つの第2ロードセル8a、8bにより、ブレーカー1における軸方向と直交する方向の全周における平面荷重の分布を計測することができる。
【0032】
なお、本例では、ブレーカー1を180度回転させる例を説明したが、これに限定されるものではなく、ブレーカー1を360度回転させてもよい。これにより、2つの第2ロードセル8a、8bにより2回計測することで、検出の信頼性の確認をすることができ、計測精度を高めることができる。
【0033】
図5に示す第2ロードセル8が計測した平面荷重から最も荷重がかかる方位α2と、その荷重L2を同定する。そして、荷重L2の大きさに基づいて、傾斜角θ2(図3B参照)を算出する。
【0034】
次に、第1回動軸駆動部15を駆動させて、ブレーカー1の軸方向が第3の方向Zと平行になるようにブレーカー1の傾きを戻す。そして、第1回動軸駆動部15を駆動し、第1回動軸5を固定する。
【0035】
次に、図3Bに示すように、ブレーカー回転装置12によりブレーカー1及びブレーカー基部10、第1ブーム3及び第2ブーム4を、第2回動軸6の軸線が方位α2と直交するように、第3の方向Z周りに回転させる。次に、第2回動軸駆動部16を駆動して第2回動軸6を開放させる。ブレーカー1及びブレーカー基部10を、ブレーカー1の傾斜角が算出した傾斜角θ2となるように、第2回動軸6を中心に回動させる。これにより、チゼル2の向きを被破砕物Q1に対して滑りにくい向きにすることができる。
【0036】
なお、傾斜角θ2は、荷重L2に対する増加関数で算出され、例えば、荷重L2に比例させてもよく、荷重L2に合わせて段階的に増加させてもよい。
【0037】
図6A及び図6Bは、第1ブーム3及び第2ブーム4の動作を示す模式図である。
図6Aにおける点線Aから実線Dに示すように、ブレーカー1及びブレーカー基部10を回動に合わせて第1ブーム3及び第2ブーム4を、方位α2とは180度反対の方向に水平移動させると同時に降下させる。これにより、ブレーカー1を回動させて、所定の傾斜角θ2に傾斜させる際に、チゼル2が被破砕物Q1から外れることを防止することができる。そして、ブレーカー1を動作させて、チゼル2によって被破砕物Q1に打撃を加える。
【0038】
なお、本例の削岩装置100によれば、チゼル2によって被破砕物Q1に打撃を加える前にブレーカー1に作用する平面荷重F2を計測し、ブレーカー1を所定の傾斜角θ2に傾斜させている。これにより、チゼル2が被破砕物Q1の表面の微小な凹凸や局所的に脆い箇所によって滑ることを防止することができる。また、被破砕物Q1の状態を予め計測することなく、ブレーカー1の姿勢を最適な姿勢にすることができる。その結果、作業効率を向上させることができるとともに、チゼル2の滑りにより被破砕物Q1表面での粉塵発生量を抑制することができ、ブレーカー1近傍での作業環境や近隣の大気環境の改善を図ることができる。
【0039】
また、被破砕物Q1に打撃を加える際、被破砕物Q1からの反動に対してブレーカー1を保持するためにブレーカー1に押圧力を加えることが望ましい。これに対して、本例では、図6Bに示すように、ブーム支持装置39によって、第2ブーム4におけるブレーカー1とは反対側の端部を方位α2と同じ方向に移動させる。これにより、第1ブーム3及び第2ブーム4が弾性変形する。そして、第1ブーム3及び第2ブーム4に生じた弾性力により、チゼル2を被破砕物Q1に押し付けることができる。
【0040】
1-3.ブーム支持装置
次に、図7から図9を参照してブーム支持装置の例について説明する。
図7は、ブーム支持装置の一例を示す模式図である。
図7に示すように、ブーム支持装置39は、装置基部33と、可動支持棒32と、送り装置31とを有している。そして、装置基部33は、コンクリート基礎や土壌などの構造物基礎G1に固定されている。装置基部33には、2つの送り部31a、31bからなる送り装置31が設置されている。送り装置31には、可動支持棒32が水平方向に移動可能に支持されている。
【0041】
可動支持棒32の先端部には、複数のリンク軸36a、36bと、複数のリンク34a、34bが接続される。リンク軸36a、36bには、リンク34a、34bの角度を固定する固定部35aが設けられている。また、複数のリンク34a、34bの先端部には、上述した第2ブーム4が接続される。可動支持棒32が水平移動することで、複数のリンク34a、34bが移動し、その先端部に設けられた第2ブーム4及び第1ブーム3が移動する。そして、図6Bに示すように、第2ブーム4及び第1ブーム3が弾性変形し、その弾性力によりチゼル2が被破砕物Q1に押し付けられる。
【0042】
図8は、ブーム支持装置の他の例を示す模式図である。
図8に示すブーム支持装置39Aは、装置基部33が移動機構200に搭載されている。この移動機構200により装置基部33及び可動支持棒32やブレーカー1を所定の位置まで移動させることができる。なお、その他の構成は、上述した図7に示すブーム支持装置39と同様であるため、その説明は省略する。
【0043】
図9は、ブーム支持装置の更に別の例を示す模式図である。
図9に示すブーム支持装置39Bは、図7に示すブーム支持装置39と同様の構成を有している。図9に示す例では、比較的垂直な面を削岩する場合に用いられる。図9に示すように、複数のリンク34a、34bが障害物P1、P2に干渉しないように、複数のリンク34a、34bを、リンク軸36a、36bを中心に回動させる。そして、所定の回動角度で、リンク軸36a、36bに設けた固定部35a、35bによりリンク軸36a、36b及びリンク34a、34bを固定する。これにより、障害物P1、P2が多数ある現場でも、ブレーカー1を所定の位置まで送り出すことができる。
【0044】
1-4.ブームとブーム支持装置の動き
次に、図10Aから図10Cを参照して、ブーム3、4とブーム支持装置39の動きについて説明する。
図10Aから図10Cは、ブーム3、4とブーム支持装置39の動きを示す模式図である。
【0045】
図10Aに示すように、ブレーカー1の軸方向が鉛直方向である第3の方向Zと平行な場合、上述した図6Bに示すように、ブーム支持装置39は、可動支持棒32を移動させて、第1ブーム3及び第2ブーム4を弾性変形させる。
【0046】
ここで、ブレーカー1の重量が、第1ブーム3及び第2ブーム4や、リンク34のっ重量よりも大きい場合、図10Bに示すように、ブレーカー1が鉛直方向に対して傾斜した際に、重心が変位する。そのため、第1ブーム3及び第2ブーム4が傾斜し、チゼル2が被破砕物Q1に当たる位置がずれるおそれがある。これに対して、ブーム支持装置39により可動支持棒32を移動させて、重心の変位を打ち消すことで、チゼル2を被破砕物Q1に対して所望の位置に当てることができる。
【0047】
また、図10Cに示すように、ブレーカー1の後端にカウンターウエイト38を取り付ける。これにより、削岩装置100の重心位置をブレーカー1の姿勢が変化する第2回動軸6上にすることができる。その結果、重心の変位による第1ブーム3及び第2ブーム4の傾斜を防止できる。
【0048】
2.第2の実施の形態例
次に、図11Aから図13を参照して第2の実施の形態例にかかる削岩装置について説明する。
図11A及び図11Bは、削岩装置を示す図、図12A及び図12Bは削岩装置の動作例を示す図、図13は、平面荷重の計測値の変化を示す概念図である。
【0049】
この第2の実施の形態例にかかる削岩装置100Aが第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と異なる点は、ブレーカー基部10とブレーカー1との間に第2ブレーカー回転装置を設けた点である。そのため、ここでは、第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0050】
図11A及び図11Bに示すように、削岩装置100Aは、ブレーカー1と、チゼル2と、第1ブーム3及び第2ブーム4と、第1回動軸5と、第2回動軸6と、ブレーカー基部10と、ブレーカー支持板11とを備えている。また、削岩装置100Aは、第1ロードセル7と、第2ロードセル8と、回転基部18と、第2ブレーカー回転装置19と、を備えている。
【0051】
ブレーカー基部10におけるブレーカー1側の先端部には、第2ブレーカー回転装置19が設けられている。第2ブレーカー回転装置19には、回転基部18が回転可能に連結されている。すなわち、第2の実施の形態例にかかる削岩装置100Aでは、第2ブレーカー回転装置19が、ブレーカー1の姿勢を変化させる第2回動軸6よりも軸方向の先端側に配置されている。そのため、第2ブレーカー回転装置19は、第1回動軸5と第2回動軸6の間に設置される。
【0052】
回転基部18には、ブレーカー1を支持するブレーカー支持板11と、第2ロードセル8a、8bを支持するロードセル支持板17a、17bが固定されている。そのため、第2ブレーカー回転装置19が駆動すると、回転基部18とともに、ブレーカー1及び第2ロードセル8a、8bがブレーカー1の軸方向周りに回転する。
【0053】
次に、図12Aから図13を参照して第2の実施の形態例にかかる削岩装置100Aの動作例について説明する。
まず、図12Aに示すように、第1ブーム3及び第2ブーム4を移動させて、チゼル2を被破砕物Q1に接触させる。このとき、第1回動軸駆動部15及び第2回動軸駆動部16により第1回動軸5及び第2回動軸6が固定されている。被破砕物Q1の表面に傾斜や脆い部分が存在すると、その傾斜や脆さに応じて第3の方向Zと直交する向きの反力F2がチゼル2及びブレーカー1に作用する。
【0054】
第1ロードセル7が計測した反力F1が所定の荷重L1に達すると、第1回動軸駆動部15を開放する。そのため、ブレーカー1には、反力F2によって回転モーメントMが作用する。そして、ブレーカー1が、第1回動軸5を中心に回動し、ブレーカー1の軸方向に対して傾斜し、そのときに生じる平面荷重が第2ロードセル8a、8bによって計測される。
【0055】
次に、第2ブレーカー回転装置19を駆動し、ブレーカー1をその軸方向周りに回転させる。その結果、図13の破線に示すように、第2ロードセル8a、8bによってブレーカー1における全周の平面荷重の分布を計測することができる。図13の破線に示す第2ロードセル8が計測した平面荷重から最も荷重がかかる方位α2と、その荷重L2を同定する。そして、荷重L2の大きさに基づいて、傾斜角θ2を算出する。
【0056】
次に、図12Bに示すように、ブレーカー回転装置12によりブレーカー1及びブレーカー基部10、第1ブーム3及び第2ブーム4を、第2回動軸6の軸線が方位α2と直交するように、ブレーカー基部10の軸方向周りに回転させる。そして、第2回動軸駆動部16を駆動して第2回動軸6を開放し、ブレーカー1の傾斜角が算出した傾斜角θ2となるように、第2回動軸6を中心にブレーカー1及びブレーカー基部10を、回動させる。これにより、チゼル2の向きを被破砕物Q1に対して滑りにくい向きにすることができる。
【0057】
また、ブレーカー1が傾斜角θ2に傾斜した後、再度第2ブレーカー回転装置19を駆動し、ブレーカー1をその軸方向周りに回転させる。これにより、第2ロードセル8a、8bによってブレーカー1の平面荷重を計測することができ、図13の実線に示すように、ブレーカー1における平面荷重の分布が更新される。再度、最も荷重がかかる方位α2と、その荷重L2を同定する。再び同定した方位α2とその荷重L2に基づいてブレーカー回転装置12及び第2回動軸駆動部16を駆動し、ブレーカー1における被破砕物Q1に対する傾斜角θ2を調整する。
【0058】
このように、第2の実施の形態例にかかる削岩装置100Aによれば、ブレーカー1の姿勢を、第2回動軸6を中心に変化させた後に、再び第2ブレーカー回転装置19によってブレーカー1をその軸方向周りに回転させることができる。そして、ブレーカー1に加わる平面荷重を連続して計測することができ、平面荷重の測定精度を向上させることができる。
【0059】
さらに、その情報を第2回動軸駆動部16やブレーカー回転装置12にフィードバックすることで、荷重L2の値を極めて小さくすることが可能となる。その結果、チゼル2の滑りの防止効果が高まり、被破砕作業の効率をさらに向上させることができる。
【0060】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する削岩装置100Aによっても、上述した第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と同様の作用効果を得ることができる。
【0061】
3.第3の実施の形態例
次に、図14Aから図15を参照して第3の実施の形態例にかかる削岩装置について説明する。
図14A及び図14Bは、削岩装置を示す図、図15は、平面荷重の計測値の変化を示す概念図である。なお、図15に示す黒点は、複数の検出素子が計測した平面荷重の計測値である。
【0062】
この第3の実施の形態例にかかる削岩装置100Bが第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と異なる点は、ブレーカー1の姿勢変更機構及びブレーカー支持機構の構成である。そのため、ここでは、第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0063】
図14A及び図14Bに示すように、ブレーカー1と、チゼル2と、第1ブーム3と、第2ブーム4と、姿勢変更機構27と、第1ロードセル7と、第2ロードセル22とを有している。第1ロードセル7は、第1ブーム3と第2ブーム4との間に介在される。
【0064】
ブレーカー1におけるチゼル2とは反対側の他端部、すなわち軸方向の他端部には、延長軸29が突出している。延長軸29は、第1ブーム3の内部に挿入される。延長軸29には、球面軸20と、被検出部23が設けられている。被検出部23は、延長軸29におけるブレーカー1とは反対側の他端部に設けられている。被検出部23は、略円柱状に形成されており、延長軸29の直径よりも大きく形成されている。この被検出部23は、後述する第2ロードセル22と対向する。
【0065】
球面軸20は、延長軸29における中間部に形成されている。球面軸20は、略球状に形成されている。そして、球面軸20は、後述する球面軸受21に回転可能に支持されている。
【0066】
第1ブーム3の内部には、姿勢変更機構27と、第2ロードセル22と、検出部退避機構を示すロードセル移動機構40が設けられている。姿勢変更機構27は、球面軸受21と、第1ストッパ24と、第2ストッパ25とを有している。この姿勢変更機構27は、第2ロードセル22でブレーカー1の平面荷重を計測する際に、ブレーカー1を軸方向と直交する方向に移動可能に支持するブレーカー支持機構としての役割も有している。
【0067】
ロードセル移動機構40は、第1ブーム3におけるブレーカー1とは反対側の他端部、すなわち軸方向の他端部に設けられている。そして、ロードセル移動機構40は、第2ロードセル22を第1ブーム3の軸方向に沿って移動させる。第2ロードセル22は、複数の検出素子をリング状に配置することで構成されている。第2ロードセル22は、ロードセル移動機構40により第1ブーム3の軸方向の先端部側に移動した際に、ブレーカー1の被検出部23の周方向を囲むようにして配置される。
【0068】
第1ストッパ24は、第1ブーム3の軸方向の他端部に配置される。第1ストッパ24は、第1ブーム3の内部に向けて突出及び内部から引っ込むストッパーピン24aを有している。そして、第1ストッパ24は、被検出部23と対向して配置される。
【0069】
第2ストッパ25は、第1ブーム3におけるブレーカー1側の先端部、すなわち軸方向の先端部に配置される。第2ストッパ25は、第1ストッパ24と同様に、ストッパーピン25aを有している。そして、第2ストッパ25は、延長軸29と対向して配置される。この第1ストッパ24と第2ストッパ25により延長軸29及びブレーカー1が任意の傾斜角度で固定される。
【0070】
球面軸受21は、第1ストッパ24と第2ストッパ25の間に配置されている。そして、球面軸受21は、球面軸20を回転可能に支持している。また、球面軸受21は、球面軸20を延長軸29の軸方向周りにも回転可能に支持する。
【0071】
次に、第3の実施の形態例にかかる削岩装置100Bの動作例について説明する。
図14Aに示すように、第1ブーム3及び第2ブーム4を移動させて、チゼル2を被破砕物Q1に接触させる。このとき、第1ストッパ24と第2ストッパ25のストッパーピン24a、25aが突出し、被検出部23及び延長軸29を保持している。第2ロードセル22は、ロードセル移動機構40により被検出部23と対向する位置まで移動している。そのため、ブレーカー1の傾斜範囲は、被検出部23と第2ロードセル22との間隔となる。
【0072】
第1ロードセル7が計測した反力F1が所定の荷重L1に達すると、第1ストッパ24及び第2ストッパ25のストッパーピン24a、25aが第1ブーム3の内部から半径方向の外側に引っ込む。そのため、ブレーカー1の傾斜動作が開放され、ブレーカー1には、反力F2によって回転モーメントMが作用する。そして、ブレーカー1が、球面軸20を中心に回動し、被検出部23が第2ロードセル22に接触する。
【0073】
被検出部23が第2ロードセル22の複数の検出素子に接触することで、図15の黒点に示すように、ブレーカー1の全周にわたって平面荷重の分布を得ることができる。
【0074】
次に、複数の計測値のうち、最も荷重が大きい第1荷重X1とその第1方位β1及び第2荷重X2とその第1方位β2を検出する。そして、第1荷重X1と第2荷重X2の平均値を算出することで、ブレーカー1の後端部である被検出部23に最も荷重がかかる方位α3とその荷重L3を同定することができる。
【0075】
次に、図14Bに示すように、ロードセル移動機構40を駆動し、第2ロードセル22の第1ブーム3の後端側に移動させる。すなわち、第2ロードセル22を被検出部23から離反させる。これにより、被検出部23及びブレーカー1を所定の傾斜角θ3で回動させた際に、被検出部23が第2ロードセル22と干渉することを防ぐことができる。
【0076】
さらに、同定した方位α3及び荷重L3に基づいて、第1ストッパ24及び第2ストッパ25のストッパーピン24a、25aの突出量を調整し、被検出部23及び延長軸29に向けて突出させる。これにより、ブレーカー1が、球面軸20を中心に回動する。その結果、チゼル2の向きを被破砕物Q1に対して滑りにくい向きにすることができる。このとき、ブレーカー1の回動動作の軸線は、方位α3と直交する。また、ブレーカー1の傾斜角θ3は、同定した荷重L3に基づいて設定される。
【0077】
このように、第3の実施の形態例にかかる削岩装置100Bによれば、ブレーカー1や第1ブーム3等を軸方向周りに回転動作させることなく、平面荷重を計測することができる。その結果、削岩作業の作業効率を向上させることができる。
【0078】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する削岩装置100Bによっても、上述した第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と同様の作用効果を得ることができる。
【0079】
4.第4の実施の形態例
次に、図16を参照して第4の実施の形態例にかかる削岩装置について説明する。
図16は、削岩装置を示す図である。
【0080】
この第4の実施の形態例にかかる削岩装置100Cは、第3の実施の形態例にかかる削岩装置100Bから第2ロードセル22及びロードセル移動機構40の構成を変更したものである。そのため、ここでは、第1の実施の形態例にかかる削岩装置100及び第3の実施の形態例にかかる削岩装置100Bと共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0081】
図16に示すように、削岩装置100の第1ブーム3には、第2ロードセル22と、ロードセル回転装置30と、検出部退避機構を示すロードセル移動機構37が配置されている。第2ロードセル22は、アーム42を介してロードセル回転装置30に支持されている。第2ロードセル22は、被検出部23の側面部と対向して配置される。そして、ロードセル回転装置30は、駆動することで、アーム42及び第2ロードセル22を被検出部23の側面部に沿って回転させる。その結果、一つの第2ロードセル22でブレーカー1及び被検出部23における全周の平面荷重を計測することができる。
【0082】
なお、第4の実施の形態例では、第2ロードセル22を1つだけ設けた例を説明したが、第2ロードセル22を2つ以上設けてもよい。これにより、検出の信頼性の確認や、他の第2ロードセル22が故障した際の予備とすることができる。
【0083】
また、ロードセル回転装置30は、ロードセル移動機構37により第1ブーム3の軸方向に沿って移動可能に支持されている。これにより、平面荷重の計測が終わった後に、第2ロードセル22及びアーム42を被検出部23と干渉する位置から退避させることができる。
【0084】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する削岩装置100Cによっても、上述した第1の実施の形態例にかかる削岩装置100や、第2の実施の形態例にかかる削岩装置100A、第3の実施の形態例にかかる削岩装置100Bと同様の作用効果を得ることができる。
【0085】
また、第3の実施の形態例にかかる削岩装置100B及び第4の実施の形態例にかかる削岩装置100Cでは、第2ロードセル22を球面軸20よりも第1ブーム3の後端側に配置した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第2ロードセル22を球面軸20よりも第1ブーム3の先端側に配置してもよく、あるいはブレーカー1の側面部と対向する位置に配置してもよい。なお、ブレーカー1の側面部と対向する位置に第2ロードセル22を配置する場合、平面荷重の計測が終了し、ブレーカー1を所定の傾斜角θ3に傾斜させる際に、第2ロードセル22をブレーカー1と干渉しない位置まで退避させることが好ましい。
【0086】
5.第5の実施の形態例
次に、図17Aから図21を参照して第5の実施の形態例にかかる削岩装置について説明する。
図17A及び図17Bは、削岩装置を示す図、図19から図21は、削岩装置の動作例を示す図である。
【0087】
この第5の実施の形態例にかかる削岩装置100Dが第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と異なる点は、ブレーカー支持機構である第1回動軸5が姿勢変更機構を兼ねる点である。そのため、ここでは、第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0088】
図17A及び図17Bに示すように、削岩装置100Dは、ブレーカー1と、チゼル2と、第1ブーム3及び第2ブーム4と、回動軸5と、ブレーカー基部10と、ブレーカー支持板11とを備えている。また、削岩装置100Dは、第1ロードセル7と、第2ロードセル8と、検出部退避機構を示す支持板回転部26と、を備えている。
【0089】
図17A及び図17Bに示すように、ブレーカー1は、ブレーカー支持板11を介してブレーカー基部10に接続されている。また、ブレーカー1は、回動軸5を介してブレーカー支持板11に回動可能に支持されている。回動軸5には、ブレーカー1の回動動作を制御する回動軸駆動部15が設けられている。
【0090】
第2ロードセル8a、8bは、ロードセル支持板17a、17bの先端部に取り付けられている。そして、第2ロードセル8a、8bは、ブレーカー1の側面部と対向して配置される。また、ロードセル支持板17a、17bにおける第2ロードセル8a、8bが設けられた先端部とは反対側の後端部は、支持板回転部26(26a、26b)を介してブレーカー基部10に取り付けられている。そして、ロードセル支持板17a、17bは、支持板回転部26a、26bにより回転可能に支持される。
【0091】
次に、図18から図21を参照して第5の実施の形態例にかかる削岩装置100Dの動作例について説明する。
まず、まず、図18に示すように、第1ブーム3及び第2ブーム4を移動させて、チゼル2を被破砕物Q1に接触させる。このとき、回動軸駆動部15により回動軸5が固定されている。被破砕物Q1の表面に傾斜や脆い部分が存在すると、その傾斜や脆さに応じて第3の方向Zと直交する向きの反力F2がチゼル2及びブレーカー1に作用する。
【0092】
第1ロードセル7が計測した反力F1が所定の荷重L1に達すると、回動軸駆動部15を開放する。そのため、図18Bに示すように、ブレーカー1には、反力F2によって回転モーメントMが作用する。そして、ブレーカー1が、回動軸5を中心に回動し、ブレーカー1の軸方向に対して傾斜する。なお、図18Aに示すように、第2ロードセル8a、8bは、支持板回転部26a、26bによりブレーカー1の側面部と対向する位置に配置される。そのため、ブレーカー1が回転モーメントMにより傾斜した際に生じる平面荷重が第2ロードセル8a、8bによって計測される。
【0093】
次に、ブレーカー回転装置12(図6参照)によりブレーカー1をチゼル2の軸方向を中心に回転、すなわち第3の方向Z周りに回転させる。その結果、第2ロードセル8a、8bによってブレーカー1における全周の平面荷重の分布を計測することができる。
【0094】
平面荷重の計測が終了すると、図19に示すように、支持板回転部26a、26bを駆動し、ロードセル支持板17a、17bを回転させる。これにより、図20に示すように、第2ロードセル8a、8bがブレーカー基部10まで移動し、ブレーカー1の側面部と対向する位置から退避する。
【0095】
次に、第2ロードセル8が計測した平面荷重から最も荷重がかかる方位α2と、その荷重L2を同定する。そして、荷重L2の大きさに基づいて、傾斜角θ2を算出する。そして、図21に示すように、ブレーカー回転装置12によりブレーカー1及びブレーカー基部10、第1ブーム3及び第2ブーム4を、回動軸5の軸線が方位α2と直交するように、ブレーカー1の軸方向周りに回転させる。次に、回動軸駆動部15を駆動して回動軸5を開放し、ブレーカー1の傾斜角が算出した傾斜角θ2となるように、回動軸5を中心にブレーカー1を回動させる。これにより、チゼル2の向きを被破砕物Q1に対して滑りにくい向きにすることができる。
【0096】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する削岩装置100Dによっても、上述した第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と同様の作用効果を得ることができる。
【0097】
また、第5の実施の形態例にかかる削岩装置100Dによれば、第1の実施の形態例かかる削岩装置100から第2回動軸6を削除することができる。これにより、部品点数の削減を図ることができるとともに、第1ブーム3よりも先端側の重量の軽減を図ることができる。また、ブレーカー1の姿勢を変更する際に、ブレーカー基部10を動かす必要がなくなるため、回動軸5に加わる重量を軽減することができる。
【0098】
さらに、削岩作業時には、第2ロードセル8a、8bがブレーカー1から離れた位置に配置されている。そのため、ブレーカー1の振動がブレーカー1の側面部から第2ロードセル8a、8bに伝達されることを防ぐことができ、第2ロードセル8a、8bの性能劣化や破損を防止することができる。
【0099】
6.第6の実施の形態例
次に、図22から図23を参照して第6の実施の形態例にかかる削岩装置について説明する。
図22は、削岩装置を示す図、図23は、平面荷重検出部を示す断面図である。
【0100】
この第6の実施の形態例にかかる削岩装置100Eが第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と異なる点は、平面荷重検出部の構成であるである。そのため、ここでは、平面荷重検出部について説明し、第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0101】
図22に示すように、削岩装置100Eは、平面荷重検出部50を備えている。平面荷重検出部50は、2つのシリンダ部51a、51bと、シリンダ部51a、51bに連通される液圧パイプ52a、52bと、を有している。シリンダ部51a、51bは、ロードセル支持板17a、17bに支持されたブレーカー1の側面部と対向して配置される。
【0102】
図23に示すように、平面荷重検出部50は、シリンダ部51内を摺動するピストン53を有している。ピストン53は、ブレーカー1の側面部に接触している。シリンダ部51内部には、作動液54が内包されている。そして、作動液54は、シリンダ部51の内部と連通する液圧パイプ52を満たしている。
【0103】
液圧パイプ52としては、可動性の高いフレキシブルパイプを用い、圧力の伝送に損失がないように内部の体積変化が少ないものを用いることが好ましい。そして、液圧パイプ52におけるシリンダ部51とは反対側の端部には、液圧計測部が接続される。液圧計測部は、ブレーカー1が作用する現場の環境の影響が比較的少ない場所に設置される。そして、液圧計測部としては、例えば、半導体歪ゲージや圧力伝送器等が挙げられる。
【0104】
上述した平面荷重検出部50を備えた削岩装置100Eでは、ブレーカー1の平面荷重を計測する際、ブレーカー1が第1回動軸5を中心に回動すると、ブレーカー1の側面部によりピストン53が押圧される。このピストン53の押圧する力が作動液54を介して液圧パイプ52内に伝わる。その結果、液圧パイプ52に接続された液圧計測部に液圧を計測することで、平面荷重を計測することができる。
【0105】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する削岩装置100Eによっても、上述した第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と同様の作用効果を得ることができる。
【0106】
ここで、削岩装置を原子炉の事故処理や解体作業に使用する際、平面荷重検出部を示す第2ロードセルとして半導体歪ゲージを用いた場合、強い放射線を受けると電子正孔対の発生や格子原子の弾き出しによる変位損傷によってゲージ素子が劣化する。
【0107】
これに対して、第6の実施の形態例にかかる削岩装置100Eの平面荷重検出部50は、強い放射線環境であるブレーカー1の近傍には、シリンダ部51や液圧パイプ52、ピストン53のみが配置される。すなわち、強い放射線環境では、シリンダ部51とピストン53と、作動液54によってブレーカー1との接触圧のみを検出している。そして、液圧パイプ52によって放射線が弱い環境まで圧力で伝送している。これにより、液圧計測部が受ける放射線の影響を軽減することができ、半導体歪ゲージや圧力伝送器が放射線によって劣化することを抑制することができる。
【0108】
7.第7の実施の形態例
次に、図24を参照して第7の実施の形態例にかかる削岩装置について説明する。
図24は、削岩装置を示す図である。
【0109】
この第7の実施の形態例にかかる削岩装置100Fは、第5の実施形態例にかかる削岩装置100Dに防護カバーを設けたものである。そのため、第1の実施の形態例にかかる削岩装置100及び第5の実施の形態例にかかる削岩装置100Dと共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0110】
図24に示すように、削岩装置100Fは、防護カバー46を有している。防護カバー46は、第1ブーム3に設けられている。防護カバー46は、ロードセル支持板17が支持板回転部26を中心に回転し、第2ロードセル8が第1ブーム3に接近した際に、防護カバー46は、第2ロードセル8を覆う。
【0111】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる削岩装置100と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する削岩装置100Fによっても、上述した第1の実施の形態例にかかる削岩装置100や第5の実施の形態例にかかる削岩装置100Dと同様の作用効果を得ることができる。
【0112】
また、第7の実施の形態例にかかる削岩装置100Fによれば、第2ロードセル8が防護カバー46によって覆われるため、第2ロードセル8は、粉塵や放射線によって損傷したり、劣化したりすることを防止することができる。
【0113】
なお、上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。また、ある実施の形態例の構成の一部を他の実施の形態例の構成に置き換えることは可能であり、ある実施の形態例の構成に他の実施の形態例の構成を付け加えることも可能である。さらに、他実施の形態例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることは可能である。
【0114】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0115】
1…ブレーカー、 2…チゼル、 3、4…ブーム、 5…第1回動軸(ブレーカー支持機構)、 6…第2回動軸(姿勢変更機構)、 7…第1ロードセル(軸方向荷重検出部)、 8、8a、8b…第2ロードセル(平面荷重検出部)、 10…ブレーカー基部、 11…ブレーカー支持板、 12…ブレーカー回転装置、 15…回動軸駆動部(第1回動軸駆動部)、 17、17a、17b…ロードセル支持板、 18…回転基部、 19…第2ブレーカー回転装置、 20…球面軸、 21…球面軸受、 22…第2ロードセル(平面荷重検出部)、 23…被検出部、 24…第1ストッパ、 24a、25a…ストッパーピン、 25…第2ストッパ、 26、26a…支持板回転部(検出部退避機構)、 27…姿勢変更機構(ブレーカー支持機構)、 29…延長軸、 30…ロードセル回転装置、 31…送り装置、 32…可動支持棒、 33…装置基部、 34、34a、34b…リンク、 36a…リンク軸、 37…ロードセル移動機構(検出部退避機構)、 38…カウンターウエイト、 39、39A、39B…ブーム支持装置、 40…ロードセル移動機構(検出部退避機構)、 42…アーム、 46…防護カバー、 50…平面荷重検出部、 51、51a、51b…シリンダ部、 52、52a、52b…液圧パイプ、 53…ピストン、 54…作動液、 100、100A、100B、100C、100D、100E、100F…削岩装置、 200…移動機構、 Q1…被破砕物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24