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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069620
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20230511BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H01L29/78 301S
H01L29/78 301D
H01L29/78 301R
H01L29/78 301G
H01L29/06 301D
H01L29/06 301S
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181635
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 隆弘
【テーマコード(参考)】
5F140
【Fターム(参考)】
5F140AA25
5F140AC21
5F140BA01
5F140BD05
5F140BF04
5F140BF51
5F140BF53
5F140BG08
5F140BG12
5F140BH02
5F140BH03
5F140BH30
5F140BH47
5F140BJ08
5F140CB04
(57)【要約】
【課題】半導体装置の耐圧低下を抑制する。
【解決手段】LDMOSFET100では、高濃度ドレイン領域10と高濃度ドレイン領域10を内包するドリフト領域12とを含むドレイン領域内に設けられた「STI構造11」がx方向に延在するスリット領域11Aを有し、平面視において、スリット領域11Aと高濃度ドレイン領域10との間には、「STI構造11」が介在する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレイン領域と、
前記ドレイン領域から離れて設けられたソース領域と、
前記ドレイン領域と前記ソース領域の間に位置するチャネル領域と、
前記チャネル領域上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、
前記ドレイン領域内に設けられた絶縁領域と、
を備える、半導体装置であって、
前記ドレイン領域は、
高濃度ドレイン領域と、
前記高濃度ドレイン領域を内包する低濃度ドレイン領域と、
を含み、
平面視において、前記絶縁領域は、第1方向に延在するスリット領域を有し、
平面視において、前記スリット領域と前記高濃度ドレイン領域との間には、前記絶縁領域が介在する、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記スリット領域は、前記高濃度ドレイン領域から離れている、半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記絶縁領域は、複数の前記スリット領域を有し、
複数の前記スリット領域は、前記第1方向と交差する第2方向に並んで配置されている、半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記スリット領域は、前記ゲート電極から露出している、半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
平面視において、前記スリット領域から露出するスリット拡散領域のソース領域側の端部と前記低濃度ドレイン領域との接続領域は、ゲート電極から露出している、半導体装置。
【請求項6】
請求項3に記載の半導体装置において、
平面視において、複数の前記スリット領域は、一体的に前記ゲート電極から露出している、半導体装置。
【請求項7】
請求項3に記載の半導体装置において、
平面視において、複数の前記スリット領域のうち、前記第2方向において互いに隣り合うスリット領域の間には、導体パターンが配置される結果、複数の前記導体パターンが前記第2方向に並んで配置されている、半導体装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置において、
複数の前記導体パターンのそれぞれは、プラグを介して、前記ゲート電極と電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項9】
ドレイン領域と、
前記ドレイン領域から離れて設けられたソース領域と、
前記ドレイン領域と前記ソース領域の間に位置するチャネル領域と、
前記チャネル領域上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、
前記ドレイン領域内に設けられた絶縁領域と、
を備える、半導体装置であって、
前記ドレイン領域は、
高濃度ドレイン領域と、
前記高濃度ドレイン領域を内包する低濃度ドレイン領域と、
を含み、
平面視において、前記絶縁領域は、第1方向に延在するスリット領域を有し、
平面視において、前記スリット領域から露出するスリット拡散領域のソース領域側の端部と前記低濃度ドレイン領域との接続領域は、ゲート電極から露出している、半導体装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置において、
平面視において、前記スリット領域と前記高濃度ドレイン領域との間には、前記絶縁領域が介在する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、例えば、横方向拡散MOSFET(LDMOSFET:Lateral Defused Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を含む半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、LDMOSFETの構造を工夫して、電界集中領域での電界緩和を図ることにより、LDMOSFETの耐圧を向上する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J. Jang, K. Cho et al., “Interdigitated LDMOS,” Proceedings of The 25th International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs, pp. 245-248.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LDMOSFETにおいては、ドリフト領域に「STI構造」を形成することによって、耐圧を向上する技術がある。ところが、「STI構造」を採用すると、耐圧を向上することができる一方、オン抵抗が増加する。このことから、オン抵抗を低減するために、「STI構造」にスリット領域を設ける技術が検討されている。この点に関し、スリット領域を形成することによってオン抵抗を低減できる一方、スリット領域から露出するドリフト領域に電界強度が大きい電界集中領域が形成される結果、この電界集中領域に起因して、LDMOSFETの耐圧低下が顕在化する。
【0005】
この点に関し、スリット領域から露出するドリフト領域に生じる電界集中領域での電界を緩和することができれば、LDMOSFETの耐圧低下を抑制することができると考えられる。したがって、耐圧低下を抑制する観点から、スリット領域から露出するドリフト領域に生じる電界集中領域での電界を緩和するための工夫が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態における半導体装置(LDMOSFET)では、高濃度ドレイン領域と高濃度ドレイン領域を内包する低濃度ドレイン領域とを含むドレイン領域内に設けられた絶縁領域が第1方向に延在するスリット領域を有し、平面視において、スリット領域と高濃度ドレイン領域との間には、絶縁領域が介在する。
【0007】
一実施の形態における半導体装置(LDMOSFET)では、高濃度ドレイン領域と高濃度ドレイン領域を内包する低濃度ドレイン領域とを含むドレイン領域内に設けられた絶縁領域が第1方向に延在するスリット領域を有し、平面視において、スリット領域から露出するスリット拡散領域のソース領域側の端部と低濃度ドレイン領域との接続領域がゲート電極から露出している。
【発明の効果】
【0008】
一実施の形態によれば、半導体装置の耐圧低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1関連技術におけるLDMOSFETの平面レイアウトを示す図である。
図2図1のA-A線で切断した断面図である。
図3】第2関連技術におけるLDMOSFETの平面レイアウトを示す図である。
図4図3のA-A線で切断した断面図である。
図5】スリット拡散領域の電界分布を模式的に示す図である。
図6】第1基本思想のコンセプトを説明する図である。
図7】第2基本思想のコンセプトを説明する図である。
図8】実施の形態におけるLDMOSFETの平面レイアウトを示す図である。
図9図8のA-A線で切断した断面図である。
図10図8のB-B線で切断した断面図である。
図11】第1特徴点だけを採用した場合における寸法「D」とLDMOSFETの耐圧との関係を示すグラフである。
図12】第1特徴点だけを採用した場合における寸法「D」とLDMOSFETのオン抵抗との関係を示すグラフである。
図13】第1特徴点と第2特徴点の両方を採用した場合における寸法「D」とLDMOSFETの耐圧との関係を示すグラフである。
図14】第1特徴点と第2特徴点の両方を採用した場合における寸法「D」とLDMOSFETのオン抵抗との関係を示すグラフである。
図15】変形例1におけるLDMOSFETの平面レイアウトを示す図である。
図16】変形例2におけるLDMOSFETの平面レイアウトを示す図である。
図17】変形例3におけるLDMOSFETの平面レイアウトを示す図である。
図18】スリット拡散領域におけるインパクトイオン化現象の発生頻度のシミュレーション結果を示す図である。
図19】変形例4におけるLDMOSFETの平面レイアウトを示す図である。
図20】実施の形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図21図20に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図22図21に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図23図22に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図24図23に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図25図24に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図26図25に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0011】
<改善の検討>
まず、本実施の形態における技術的思想を想到するための前提となる関連技術について説明する。本明細書でいう「関連技術」とは、公知技術ではないが、本発明者が見出した課題を有する技術であって、本願発明の前提となる技術である。
【0012】
図1は、第1関連技術におけるLDMOSFET100Aの平面レイアウトを示す図である。図1において、LDMOSFET100Aは、y方向(第2方向)に延在する高濃度ドレイン領域10を有しており、この高濃度ドレイン領域10には、複数のプラグPLG1が接続されている。そして、LDMOSFET100Aは、高濃度ドレイン領域10を囲むように形成されたドリフト領域(低濃度ドレイン領域)12を有している。このドリフト領域12の不純物濃度は、高濃度ドレイン領域10の不純物濃度よりも低い。
【0013】
さらに、LDMOSFET100Aは、高濃度ドレイン領域10およびドリフト領域12と接し、かつ、平面視において、y方向と交差するx方向(第1方向)におけるドリフト領域12の端部領域12Aと高濃度ドレイン領域10とに挟まれるように形成された絶縁領域を有している。この絶縁領域が「STI構造11」である。
【0014】
続いて、図1に示すように、LDMOSFET100Aは、ドリフト領域12から離れて配置されたボディ領域14を有するとともに、ボディ領域14の外側に設けられたソース領域15を有している。このとき、ドリフト領域12とソース領域15の間に位置する領域がチャネル領域13として機能する。そして、LDMOSFET100Aは、さらに、ソース領域15と外側に設けられたボディコンタクト領域16を有している。
【0015】
ここで、ソース領域15には、複数のプラグPLG2が接続されており、ボディコンタクト領域16には、複数のプラグPLG3が接続されている。そして、図1に示すように、LDMOSFET100Aは、「STI構造11」の一部、ドリフト領域12の端部領域12Aおよびチャネル領域13と平面的に重なるように形成されたゲート電極20(図1の斜線領域)を有している。
【0016】
図2は、図1のA-A線で切断した断面図である。
【0017】
図2において、半導体基板SUBには、高濃度ドレイン領域10が形成されており、この高濃度ドレイン領域10を内包するようにバッファ領域10A(中濃度ドレイン領域)が形成されている。さらに、このバッファ領域10Aを内包するようにドリフト領域12が形成されている。ここで、高濃度ドレイン領域10とバッファ領域10Aとドリフト領域12とによって「ドレイン領域」が構成される。
【0018】
そして、高濃度ドレイン領域10とドリフト領域12の端部領域12Aとの間に挟まれるように「STI構造11」が形成されている。さらに、ドリフト領域12の端部領域12Aから離れた領域にボディ領域14が形成されており、このボディ領域14に内包されるようにソース領域15およびボディコンタクト領域16が形成されている。ここで、ドリフト領域12の端部領域12Aとソース領域15で挟まれた半導体基板SUBの表面領域がチャネル領域13となる。
【0019】
次に、「STI構造11」の一部上、ドリフト領域12の端部領域12A上およびチャネル領域13上にゲート電極20が形成されており、特に、ドリフト領域12の端部領域12A上およびチャネル領域13上においては、ゲート絶縁膜17を介してゲート電極20が形成されている。続いて、ゲート電極20を覆うように半導体基板SUB上に層間絶縁層ILが形成されており、この層間絶縁層ILには、層間絶縁層ILを貫通する複数のプラグが形成されている。例えば、図2に示すように、複数のプラグには、高濃度ドレイン領域10と電気的に接続されるプラグPLG1と、ソース領域15と電気的に接続されるプラグPLG2と、ボディコンタクト領域16と電気的に接続されるプラグPLG3とが含まれる。そして、例えば、プラグPLG1は、層間絶縁層IL上に形成された配線WL1と電気的に接続されている。一方、プラグPLG2およびプラグPLG3は、層間絶縁層IL上に形成された配線WL2と電気的に接続されている。
【0020】
このようにして、第1関連技術におけるLDMOSFET100Aが構成されている。ここで、LDMOSFET100Aでは、図2に示すように、ドリフト領域12内に絶縁領域を構成する「STI構造11」が設けられている。このことから、高濃度ドレイン領域10からソース領域15に至る電流経路Aは、「STI構造11」を迂回する経路(図2の矢印参照)を通過することになる。この結果、第1関連技術におけるLDMOSFET100Aによれば、高濃度ドレイン領域10とソース領域15との間の電流経路が長くなるため、高濃度ドレイン領域10とソース領域15との間の耐圧を確保できる。
【0021】
ただし、高濃度ドレイン領域10とソース領域15との間の電流経路が長くなるということは、オン抵抗が増加することも意味する。したがって、第1関連技術におけるLDMOSFET100Aは、高濃度ドレイン領域10とソース領域15との間の耐圧を向上することができる一方、オン抵抗が増加するデメリットも存在することになる。つまり、LDMOSFETでは、耐圧の向上とオン抵抗の低減とは、互いにトレードオフの関係にあり、第1関連技術におけるLDMOSFET100Aでは、耐圧の向上とオン抵抗の低減を両立しながらも、オン抵抗をさらに低減したい要求に対して、改善の余地がある。
【0022】
そこで、耐圧の向上とオン抵抗の低減を両立しながらも、オン抵抗をさらに低減することができるLDMOSFETの構造が検討されている。
【0023】
図3は、第2関連技術におけるLDMOSFET100Bの平面レイアウトを示す図である。図3において、第2関連技術におけるLDMOSFET100Bでは、「STI構造11」にスリット領域11Aが形成されている。そして、このスリット領域11Aは、x方向に延在して、高濃度ドレイン領域10とドリフト領域12の端部領域12Aとに接続されている。このスリット領域11Aからはドレイン領域が露出している。特に、本明細書では、スリット領域11Aから露出するドレイン領域をスリット拡散領域30(ドットを付した領域)と呼ぶことにする。
【0024】
図4は、図3のA-A線で切断した断面図である。
【0025】
図4に示すように、第2関連技術では、高濃度ドレイン領域10とドリフト領域12の端部領域12Aとの間にスリット拡散領域30が形成されている。この結果、第2関連技術では、図2に示す第1関連技術と同様の電流経路Aだけでなく、図4に示すスリット拡散領域30を通過する電流経路Bも存在することになる。これにより、第2関連技術では、基本的に電流経路Aによる迂回経路によって、耐圧の向上を図ることができるとともに、補助的な電流経路B(最短経路)は、オン抵抗の低減に寄与する。すなわち、第2関連技術によれば、耐圧の向上とオン抵抗の低減を両立しながらも、オン抵抗をさらに低減したい要求に対応することができる。つまり、第2関連技術は、第1関連技術に存在する改善の余地を克服する構造として有用であると考えられる。
【0026】
<<本発明者が見出した知見>>
ところが、本発明者は、第2関連技術におけるLDMOSFET100Bの構造を検討した結果、高濃度ドレイン領域10とドリフト領域12の端部領域12Aとを接続するスリット拡散領域30に電界強度が大きい電界集中領域が形成される結果、この電界集中領域に起因して、LDMOSFETの耐圧低下が顕在化することを新規に見出した。
【0027】
以下では、本発明者が見出した新規な知見について説明する。
【0028】
図5は、例えば、シミュレーションによるスリット拡散領域の電界分布を模式的に示す図である。図5において、高濃度ドレイン領域10とソース領域(図示せず)との間に高電圧を印加した場合、高濃度ドレイン領域10とドリフト領域12の端部領域12Aとを接続するスリット拡散領域30において、「黒領域」で示す電界集中領域CP1と「黒領域」で示す電界集中領域CP2が存在することがわかる。
【0029】
このような電界集中領域CP1および電界集中領域CP2が存在する第2関連技術では、上述した電界集中領域CP1および電荷集中領域CP2が「ウィークポイント」となって、LDMOSFET100Bの耐圧低下が顕在化する。すなわち、第2関連技術では、LDMOSFET100Bのオン抵抗を低減するために、スリット拡散領域30を設けているが、本発明者の検討によると、このスリット拡散領域30には、電界集中領域が形成される結果、LDMOSFET100Bの耐圧低下を招くことが明らかとなった。
【0030】
この点に関し、スリット拡散領域30に生じる電界集中領域CP1および電界集中領域CP2での電界を緩和することができれば、LDMOSFET100Bの耐圧低下を抑制することができると考えられる。したがって、LDMOSFET100Bの耐圧低下を抑制する観点から、スリット拡散領域30に生じる電界集中領域CP1および電界集中領域CP2での電界を緩和するための工夫が望まれている。
【0031】
そこで、本実施の形態では、第2関連技術に存在する改善の余地を克服するための工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想を説明する。
【0032】
<実施の形態における基本思想>
本実施の形態における基本思想は、第1基本思想と第2基本思想とを含むので、以下では、第1基本思想および第2基本思想のそれぞれについて説明する。
【0033】
<<第1基本思想>>
第1基本思想は、電界集中が生じる電界集中領域をスリット拡散領域から削除する思想である。すなわち、第1基本思想は、電界集中が生じるスリット拡散領域の一部分を除去する思想である。これにより、スリット拡散領域から電界集中領域が取り除かれるため、スリット拡散領域に電界集中領域が存在しなくなる。このことは、スリット拡散領域に耐圧低下の「ウィークポイント」となる領域が存在しなくなることを意味し、これによって、LDMOSFETの耐圧低下を抑制することができる。
【0034】
図6は、第1基本思想のコンセプトを説明する図である。
【0035】
まず、図5に示すように、スリット拡散領域30には、電界集中領域CP1が生じる。そこで、第1基本思想では、例えば、図6に示すように、電界集中領域CP1を含むスリット拡散領域30の一部分を除去する。つまり、第1基本思想のコンセプトは、電界集中領域CP1を含むスリット拡散領域30の一部分を除去することにより、電界集中領域CP1に起因する耐圧低下を抑制するものである。
【0036】
<<第2基本思想>>
次に、第2基本思想は、スリット拡散領域と平面的に重なるゲート電極の一部分を除去する思想である。言い換えれば、第2基本思想は、スリット拡散領域と平面的に重なるゲート電極に切り欠き部を設ける思想とも言える。これにより、スリット拡散領域とゲート電極との電位差に基づく急峻な電位勾配を要因とする電界集中を抑制できる。
【0037】
図7は、第2基本思想のコンセプトを説明する図である。
【0038】
図7の上図に示すように、スリット拡散領域30は、高濃度ドレイン領域10とドリフト領域12の端部領域12Aとを接続するように設けられる。このとき、ドリフト領域12の端部領域12Aとスリット拡散領域30の接続領域は、ゲート電極20で覆われる。
【0039】
ここで、高濃度ドレイン領域10には、高い正電圧が印加されることから、高濃度ドレイン領域10と接続されているスリット拡散領域30にも正電圧が印加される。一方、例えば、LDMOSFETのオフ時には、ゲート電極20に0V(グランド電位)が印加される。したがって、LDMOSFETのオフ時においては、図7の上図に示すスリット拡散領域30とドリフト領域12の端部領域12Aとの接続領域においては、接続領域自体に高い正電圧が印加されるとともに、接続領域を覆うゲート電極20に0Vが印加される。
【0040】
この結果、ゲート電極20で覆われた接続領域では、接続領域を覆うゲート電極20との間に大きな電位差が生じる。このことから、ドリフト領域12の端部領域12Aとスリット拡散領域30の接続領域では、上述した大きな電位差に基づく急峻な電位勾配が生じる。これにより、例えば、図5に示すような電界集中領域CP2が生じる。
【0041】
そこで、第2基本思想では、例えば、図7の下図に示すように、ドリフト領域12の端部領域12Aとスリット拡散領域30の接続領域が、ゲート電極20で覆われないように、ゲート電極20の一部分を除去する(切り欠き部を設ける)。つまり、第2基本思想のコンセプトは、接続領域と平面的に重なるゲート電極20の一部分を除去することにより、接続領域を覆うゲート電極20との間に大きな電位差が発生することを抑制するものである。これにより、基本思想によれば、接続領域において、急峻な電位勾配に起因する電界集中領域CP2の発生を抑制することができ、これによって、電界集中領域CP2に起因する耐圧低下を抑制することができる。
【0042】
なお、本明細書では、ドリフト領域12の端部領域12Aとスリット拡散領域30の接続領域が、ゲート電極20で覆われないということを「ドリフト領域12の端部領域12Aとスリット拡散領域30の接続領域が、ゲート電極20から露出している」という場合がある。すなわち、本明細書では、「ドリフト領域12の端部領域12Aとスリット拡散領域30の接続領域が、ゲート電極20で覆われていない」という表現と、「ドリフト領域12の端部領域12Aとスリット拡散領域30の接続領域が、ゲート電極20から露出している」という表現は、同じ意味を意図して使用している。
【0043】
<LDMOSFETの具体的構成>
続いて、上述した第1基本思想および第2基本思想を具現化したLDMOSFETの構成について、図面を参照しながら説明する。
【0044】
図8は、本実施の形態におけるLDMOSFET100の平面レイアウトを示す図である。図8において、LDMOSFET100は、y方向(第2方向)に延在する高濃度ドレイン領域10を有しており、この高濃度ドレイン領域10には、複数のプラグPLG1が接続されている。そして、LDMOSFET100は、高濃度ドレイン領域10を囲むように形成されたドリフト領域12を有している。さらに、LDMOSFET100は、高濃度ドレイン領域10およびドリフト領域12と接し、かつ、平面視において、y方向と交差するx方向(第1方向)におけるドリフト領域12の端部領域12Aと高濃度ドレイン領域10とに挟まれるように形成された絶縁領域を有している。この絶縁領域が「STI構造11」である。
【0045】
続いて、図8に示すように、LDMOSFET100は、ドリフト領域12から離れて配置されたボディ領域14を有するとともに、ボディ領域14の外側に設けられたソース領域15を有している。このとき、ドリフト領域12とソース領域15の間に位置する領域がチャネル領域13として機能する。そして、LDMOSFET100は、さらに、ソース領域15と外側に設けられたボディコンタクト領域16を有している。
【0046】
ここで、ソース領域15には、複数のプラグPLG2が接続されており、ボディコンタクト領域16には、複数のプラグPLG3が接続されている。そして、図8に示すように、LDMOSFET100は、少なくとも「STI構造11」の一部およびチャネル領域13と平面的に重なるように形成されたゲート電極20(図8の斜線領域)を有する。
【0047】
そして、本実施の形態では、図8に示すように、「STI構造11」には、x方向に延在するスリット領域11Aが設けられており、このスリット領域11Aからは、x方向に延在してドリフト領域12の端部領域12Aと接するスリット拡散領域30が露出している。このとき、本実施の形態におけるLDMOSFET100では、スリット領域11Aと高濃度ドレイン領域10の間には、「STI構造11」の一部分が介在している。すなわち、本実施の形態において、スリット領域11Aから露出するスリット拡散領域30は、例えば、図3に示す第2関連技術とは異なり、ドリフト領域12の端部領域12Aとは接続されている一方、高濃度ドレイン領域10とは接続されていない。言い換えれば、スリット拡散領域30は、平面的に高濃度ドレイン領域10と離れている。
【0048】
次に、図8に示すように、少なくとも、ドリフト領域12の端部領域12Aとスリット拡散領域30との接続領域は、平面視において、ゲート電極20から露出している。言い換えれば、ドリフト領域12の端部領域12Aとスリット拡散領域30との接続領域は、ゲート電極20と平面的に重なっていない。
【0049】
さらに、本実施の形態におけるLDMOSFET100では、「STI構造11」に複数のスリット領域11Aが形成されており、平面視において、複数のスリット領域11Aは、y方向(第2方向)に並んで配置されている。そして、平面視において、複数のスリット領域11Aのそれぞれからは、スリット拡散領域30が露出している。このとき、複数のスリット領域11Aのそれぞれから露出しているスリット拡散領域30は、平面視において、ゲート電極20から露出している。
【0050】
図9は、図8のA-A線で切断した断面図である。
【0051】
図9において、半導体基板SUBには、高濃度ドレイン領域10が形成されており、この高濃度ドレイン領域10を内包するようにバッファ領域10A(中濃度ドレイン領域)が形成されている。さらに、このバッファ領域10Aを内包するようにドリフト領域12(低濃度ドレイン領域)が形成されている。ここで、高濃度ドレイン領域10とバッファ領域10Aとドリフト領域12とによって「ドレイン領域」が構成される。
【0052】
そして、高濃度ドレイン領域10とドリフト領域12に接するように「STI構造11」が形成されており、この「STI構造11」とドリフト領域12の端部領域12Aとに挟まれるようにスリット拡散領域30が露出している。
【0053】
さらに、ドリフト領域12の端部領域12Aから離れた領域にボディ領域14が形成されており、このボディ領域14に内包されるようにソース領域15およびボディコンタクト領域16が形成されている。ここで、ドリフト領域12の端部領域12Aとソース領域15で挟まれた半導体基板SUBの表面領域がチャネル領域13となる。
【0054】
次に、「STI構造11」の一部上およびチャネル領域13上にゲート電極20が形成されており、特に、チャネル領域13上においては、ゲート絶縁膜17を介してゲート電極20が形成されている。一方、本実施の形態においては、ドリフト領域12の端部領域12Aとスリット拡散領域30との接続領域を含むスリット拡散領域30上には、ゲート電極20が形成されていない。すなわち、本実施の形態では、ドリフト領域12の端部領域12Aとスリット拡散領域30との接続領域を含むスリット拡散領域30は、ゲート電極20から露出している。
【0055】
続いて、ゲート電極20を覆うように半導体基板SUB上に層間絶縁層ILが形成されており、この層間絶縁層ILには、層間絶縁層ILを貫通する複数のプラグが形成されている。例えば、図9に示すように、複数のプラグには、高濃度ドレイン領域10と電気的に接続されるプラグPLG1と、ソース領域15と電気的に接続されるプラグPLG2と、ボディコンタクト領域16と電気的に接続されるプラグPLG3とが含まれる。そして、例えば、プラグPLG1は、層間絶縁層IL上に形成された配線WL1と電気的に接続されている。一方、プラグPLG2およびプラグPLG3は、層間絶縁層IL上に形成された配線WL2と電気的に接続されている。
【0056】
図10は、図8のB-B線で切断した断面図である。
【0057】
図10において、半導体基板SUBには、高濃度ドレイン領域10が形成されており、この高濃度ドレイン領域10を内包するようにバッファ領域10A(中濃度ドレイン領域)が形成されている。さらに、このバッファ領域10Aを内包するようにドリフト領域12(低濃度ドレイン領域)が形成されている。そして、高濃度ドレイン領域10とドリフト領域12の端部領域12Aとに接するように「STI構造11」が形成されている。
【0058】
さらに、ドリフト領域12の端部領域12Aから離れた領域にボディ領域14が形成されており、このボディ領域14に内包されるようにソース領域15およびボディコンタクト領域16が形成されている。ここで、ドリフト領域12の端部領域12Aとソース領域15で挟まれた半導体基板SUBの表面領域がチャネル領域13となる。
【0059】
次に、「STI構造11」の一部上およびチャネル領域13上にゲート電極20が形成されており、特に、チャネル領域13上においては、ゲート絶縁膜17を介してゲート電極20が形成されている。一方、本実施の形態においては、ドリフト領域12の端部領域12Aと「STI構造11」との接続領域上には、ゲート電極20が形成されていない。すなわち、本実施の形態では、ドリフト領域12の端部領域12Aと「STI構造11」との接続領域は、ゲート電極20から露出している。なお、図10においても、層間絶縁層ILに関する構造(プラグ構造など)は、図9と同様であるため、その説明は省略する。
【0060】
このようにして、本実施の形態におけるLDMOSFET100が構成されている。
【0061】
なお、LDMOSFET100を構成する半導体領域は、例えば、以下の通りである。
(1)半導体基板SUB→p型半導体基板
(2)高濃度ドレイン領域10→n型半導体領域
(3)バッファ領域10A→n型半導体領域
(4)ドリフト領域12→n型半導体領域
(5)ボディ領域14→p型半導体領域
(6)ソース領域15→n型半導体領域
(7)ボディコンタクト領域16→p型半導体領域
【0062】
<実施の形態における特徴>
続いて、本実施の形態における特徴点について説明する。
【0063】
本実施の形態における第1特徴点は、例えば、図9に示すように、スリット拡散領域30が高濃度ドレイン領域10と接続するように延在しているのではなく、高濃度ドレイン領域10とは離れており、高濃度ドレイン領域10とスリット拡散領域30との間に「STI構造11」の一部分が介在している点にある。これにより、上述した第1基本思想が具現化され、スリット領域から露出するスリット拡散領域30のうちの電界集中領域が形成される部分が取り除かれて、「STI構造11」の一部分に置き換えられている。このことから、本実施の形態における第1特徴点によれば、スリット領域から露出するスリット拡散領域30に電界集中領域が形成されることを抑制できる。つまり、第1特徴点によれば、スリット拡散領域30に耐圧低下の「ウィークポイント」となる領域の形成が抑制される結果、LDMOSFET100の耐圧低下を抑制できる。
【0064】
次に、本実施の形態における第2特徴点は、例えば、図8に示すように、ドリフト領域12の端部領域12Aとスリット拡散領域30の接続領域が、ゲート電極20で覆われないように、ゲート電極20の一部分が除去されている点にある。言い換えれば、本実施の形態における第2特徴点は、ドリフト領域12の端部領域12Aとスリット拡散領域30の接続領域が、ゲート電極20から露出している点にあると言える。
【0065】
これにより、第2特徴点によれば、接続領域を覆うゲート電極20(0V:オフ時)と接続領域(正電圧)の間に大きな電位差が発生することを抑制することができる。この結果、接続領域において、急峻な電位勾配に起因する電界集中領域の発生を抑制することができ、これによって、電界集中領域に起因する耐圧低下を抑制することができる。
【0066】
<効果の検証>
以下では、本実施の形態によれば、オン抵抗を低減するためのスリット拡散領域を設けながらも、上述した第1特徴点および第2特徴点を採用することにより、オフ時におけるソース領域とドレイン領域との間の耐圧を向上できる検証結果について説明する。
【0067】
図11は、第1特徴点だけを採用した場合における寸法「D」とLDMOSFETの耐圧との関係を示すグラフである。また、図12は、第1特徴点だけを採用した場合における寸法「D」とLDMOSFETのオン抵抗との関係を示すグラフである。
【0068】
ここで、寸法「D」とは、図6に示す「D」を示しており、除去するスリット拡散領域の部分の長さを表している。一方、LDMOSFETの耐圧とは、オフ時におけるソース領域とドレイン領域との間の耐圧を示しており、LDMOSFETのオン抵抗とは、オン時におけるLDMOSFETの抵抗を示している。
【0069】
図11に示すように、寸法「D」を大きくするほど、耐圧が向上することがわかる。すなわち、除去するスリット拡散領域の部分を大きくすることによって、耐圧を向上させることができる。ただし、図12に示すように、寸法「D」を大きくすると、オン抵抗が高くなることがわかる。これは、寸法「D」を大きくすると、オン抵抗の低減に寄与するスリット拡散領域の残存部分が減少することから、オン抵抗が上昇すると考えられる。
【0070】
次に、図13は、第1特徴点と第2特徴点の両方を採用した場合における寸法「D」とLDMOSFETの耐圧との関係を示すグラフである。また、図14は、第1特徴点と第2特徴点の両方を採用した場合における寸法「D」とLDMOSFETのオン抵抗との関係を示すグラフである。
【0071】
図13に示すように、第1特徴点と第2特徴点の両方を採用すると、寸法「D」を大きくした場合、耐圧をさらに向上させることができることがわかる。したがって、耐圧を向上させる観点からは、第1特徴点と第2特徴点の両方を採用することが望ましい。
【0072】
ただし、図14に示すように、第1特徴点と第2特徴点の両方を採用すると、オン抵抗がさらに高くなることがわかる。これは、以下の理由が考えられる。すなわち、第2特徴点を採用しない場合、例えば、図4に示すように、ドリフト領域12の端部領域12A上にゲート電極20が存在する。ここで、LDMOSFETをオンさせる際には、ゲート電極20に正電圧を印加する。すると、n型半導体領域である端部領域12Aの表面には、多数キャリアである電子がゲート電極20に引き寄せられて蓄積領域が形成される。つまり、高濃度ドレイン領域10からソース領域15への電流経路に抵抗の低い蓄積領域が含まれる。この結果、第2特徴点を採用しない場合には、オン抵抗が低くなる。
【0073】
これに対し、第2特徴点を採用すると、図9に示すように、ドリフト領域12の端部領域12A上にゲート電極20が存在しない。したがって、LDMOSFETをオンさせる際においても、n型半導体領域である端部領域12Aの表面に蓄積領域は形成されない。この結果、高濃度ドレイン領域10からソース領域15への電流経路に抵抗の低い蓄積領域が形成されないため、オン抵抗が高くなると考えられる。
【0074】
以上のことから、オン抵抗に関係なく耐圧の向上に着目すると、第1特徴点だけを採用した場合(図11参照)や、第1特徴点と第2特徴点の両方を採用した場合(図13参照)のいずれの場合であっても、LDMOSFETの耐圧を向上できることがわかる。
【0075】
<変形例1>
図15は、本変形例1におけるLDMOSFET200の平面レイアウトを示す図である。図15に示すように、y方向に並んで配置されている複数のスリット拡散領域30は、一体的にゲート電極20から露出するように構成されていてもよい。つまり、互いに隣り合うスリット拡散領域30の間にゲート電極20の一部分が配置されていなくてもよい。
【0076】
<変形例2>
図16は、本変形例2におけるLDMOSFET300の平面レイアウトを示す図である。図16に示すように、互いに隣り合うスリット拡散領域30の間に設けられている導体パターン40は、ゲート電極20と一体的に形成されていなくてもよい。この場合、例えば、導体パターン40とゲート電極20は、プラグPLG4を介して電気的に接続される。このとき、平面視において、複数のスリット拡散領域30のうち、y方向において互いに隣り合うスリット拡散領域30の間には、導体パターン40が配置される結果、複数の導体パターン40がy方向に並んで配置されている。
【0077】
<変形例3>
図17は、本変形例3におけるLDMOSFET400の平面レイアウトを示す図である。ここで、実施の形態における第1特徴点と第2特徴点を比べると(図11図14参照)、第1特徴点は、第2特徴点よりも耐圧を向上させる観点から有用である。一方で、第1特徴点は、第2特徴点よりも、オン抵抗の上昇が大きくなる。このことから、第2特徴点による耐圧向上で充分なデバイスの場合は、オン抵抗の低減を図るため、例えば、図17に示すように、第2特徴点だけを採用するように構成してもよい。
【0078】
図18は、スリット拡散領域30におけるインパクトイオン化現象の発生頻度のシミュレーション結果を示す図である。特に、図18(a)は、第2特徴点を採用しない構成(第2関連技術に相当)でのシミュレーション結果であり、図18(b)は、第2特徴点を採用した構成(本変形例3に相当)でのシミュレーション結果である。
【0079】
図18(a)に示すように、第2特徴点を採用しない第2関連技術の場合、スリット拡散領域30とドリフト領域12の端部領域12Aとの接続領域に着目すると、この接続領域において、インパクトイオン化現象の発生頻度が高い領域が存在していることがわかる。ここで、インパクトイオン化現象の発生頻度が高い領域は、電界集中領域であることを意味するから、図18(a)に示すシミュレーション結果から、第2特徴点を採用しない第2関連技術では、上述した電界集中領域が「ウィークポイント」となって、LDMOSFETの耐圧低下が顕在化するおそれが高いことがわかる。
【0080】
これに対し、図18(b)に示すように、第2特徴点を採用した本変形例3の場合、スリット拡散領域30とドリフト領域12の端部領域12Aとの接続領域に着目すると、この接続領域において、インパクトイオン化現象の発生頻度が分散して、インパクトイオン化現象の発生頻度が高い領域が低減されている。ここで、インパクトイオン化現象の発生頻度が高い領域は、電界集中領域であることを意味するから、図18(b)に示すシミュレーション結果から、第2特徴点を採用した本変形例3では、電界集中領域の発生が抑制される結果、LDMOSFETの耐圧低下を抑制できることがわかる。
【0081】
このように、第2特徴点を採用した本変形例3によれば、スリット拡散領域30とドリフト領域12の端部領域12Aとの接続領域での電界集中を緩和できる結果、LDMOSFETの耐圧低下を抑制できることになる。
【0082】
<変形例4>
図19は、本変形例4におけるLDMOSFET500の平面レイアウトを示す図である。ここで、例えば、第2特徴点だけでは、耐圧の向上が不充分なデバイスでは、耐圧の向上を図る観点から、例えば、図19に示すように、第1特徴点だけを採用するように構成してもよいし、もちろん、図8に示す実施の形態のように、第1特徴点と第2特徴点の組み合わせを採用するように構成してもよい。
【0083】
<半導体装置の製造方法>
次に、本実施の形態における半導体装置の製造方法について、図20図26を参照しながら説明する。図20図26においては、図8のA-A線での断面図、図8のB-B線での断面図および図8のC-C線での断面図が図示されている。
【0084】
まず、図20に示すように、p型の半導体基板SUBを用意した後、半導体基板SUBに「STI構造11」を形成する。「STI構造11」は、例えば、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、半導体基板SUBの表面に溝を形成した後、この溝に絶縁膜を埋め込むことにより形成することができる。このとき、「STI構造11」を形成する際のパターニングを調整することにより、「STI構造11」にスリット領域11Aが形成される(図20のA-A断面図参照)。このスリット領域11Aから露出するドリフト領域12がスリット拡散領域30である。
【0085】
そして、例えば、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、n型不純物(ドナー)を半導体基板SUBに導入する。これにより、半導体基板SUBにn型半導体領域からなるドリフト領域12を形成する。
【0086】
次に、図21に示すように、半導体基板SUB上にゲート絶縁膜17およびゲート電極20を形成する。ゲート絶縁膜17は、酸化シリコン膜から形成され、例えば、熱酸化法により形成することができる。また、ゲート電極20は、ポリシリコン膜から形成され、例えば、CVD法(Chemical Vapor Deposition)によってポリシリコン膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用してポリシリコン膜をパターニングすることにより形成することができる。ここで、スリット拡散領域30とドリフト領域12の端部領域12Aの接続領域がゲート電極20から露出するように、ポリシリコン膜のパターニングが行われる(図21のA-A断面図参照)。これにより、スリット拡散領域30とドリフト領域12の端部領域12Aの接続領域がゲート電極20から露出するという本実施の形態における第2特徴点が実現される。
【0087】
続いて、図22に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、n型不純物(ドナー)を半導体基板SUBに導入する。これにより、ドリフト領域12に内包されるn型半導体領域からなるバッファ領域10Aを形成する。
【0088】
さらに、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、p型不純物(アクセプタ)を半導体基板SUBに導入する。これにより、ドリフト領域12から離れたp型半導体領域からなるボディ領域14を形成する。
【0089】
その後、図23に示すように、ゲート電極20の側壁にサイドウォール50を形成する。サイドウォール50は、例えば、半導体基板SUB上に酸化シリコン膜などからなる絶縁膜を形成した後、この絶縁膜に対して異方性エッチングを施すことにより形成できる。
【0090】
次に、図24に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、n型不純物(ドナー)を半導体基板SUBに導入する。これにより、バッファ領域10Aに内包されるn型半導体領域からなる高濃度ドレイン領域10を形成する。同様に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、n型不純物(ドナー)を半導体基板SUBに導入する。これにより、ボディ領域14に内包されるn型半導体領域からなるソース領域15を形成する。
【0091】
ここで、スリット拡散領域30は高濃度ドレイン領域10から離れており、高濃度ドレイン領域10とスリット拡散領域30との間に「STI構造11」の一部分が介在しているという本実施の形態における第1特徴点が実現される。
【0092】
続いて、図25に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、p型不純物(アクセプタ)を半導体基板SUBに導入する。これにより、ボディ領域14に内包され、かつ、ソース領域15と接するp型半導体領域からなるボディコンタクト領域16を形成する。
【0093】
そして、図26に示すように、ゲート電極20を形成した半導体基板SUB上に絶縁膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、この絶縁膜をパターニングして、シリサイドブロック膜60を形成する。その後、シリサイドブロック膜60で覆われていない領域に対してシリサイド処理が行われる。
【0094】
その後、図示はしないが、通常の半導体製造技術を使用して配線工程を実施する。
【0095】
以上のようにして、本実施の形態における半導体装置を製造することができる。
【0096】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0097】
例えば、前記実施の形態では、高濃度ドレイン領域10とバッファ領域10A(中濃度ドレイン領域)とドリフト領域12(低濃度ドレイン領域)から「ドレイン領域」を構成する例について説明したが、バッファ領域10Aはなくてもよい。すなわち、高濃度ドレイン領域10とドリフト領域12から「ドレイン領域」を構成することもできる。
【0098】
また、例えば、図8に示すように、前記実施の形態では、y方向に延在するソース領域15とy方向に延在するボディコンタクト領域16が、x方向(チャネル方向)に並んで配置される例が示されているが、前記実施の形態における基本思想は、この構成に限らず、例えば、x方向に延在する複数のソース領域15とx方向に延在する複数のボディコンタクト領域16が、y方向に交互に配置される構成などにも適用することができる。
【0099】
さらに、前記実施の形態では、絶縁領域として「STI構造11」を例に挙げて説明しているが、前記実施の形態における基本思想は、この構成に限らず、例えば、絶縁領域として「LOCOS構造」を採用する場合にも適用することができる。
【0100】
なお、例えば、図8では、平面視においてゲート電極20が高濃度ドレイン領域10を囲む「ゲート環状構造」をしている例が示されているが、前記実施の形態における基本思想は、この構成に限らず、平面視においてゲート電極20が高濃度ドレイン領域10全体を囲んでいない「ゲート非環状構造」をしている場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
10 高濃度ドレイン領域
11 「STI構造」
11A スリット領域
12 ドリフト領域
12A 端部領域
13 チャネル領域
14 ボディ領域
15 ソース領域
16 ボディコンタクト領域
17 ゲート絶縁膜
20 ゲート電極
30 スリット拡散領域
40 導体パターン
50 サイドウォール
60 シリサイドブロック膜
100 LDMOSFET
100A LDMOSFET
100B LDMOSFET
200 LDMOSFET
300 LDMOSFET
400 LDMOSFET
500 LDMOSFET
CP1 電界集中領域
CP2 電界集中領域
IL 層間絶縁層
PLG1 プラグ
PLG2 プラグ
PLG3 プラグ
SUB 半導体基板
WL1 配線
WL2 配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26