(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069622
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】X線測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/205 20180101AFI20230511BHJP
【FI】
G01N23/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181637
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】中原 良太
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA25
2G001CA01
2G001KA07
2G001LA20
2G001SA29
(57)【要約】
【課題】測定部と測定対象物との相対距離を適切に補正する。
【解決手段】X線測定装置1は、一方向Aに沿って移動可能な可動ユニット4と、可動ユニット4に取り付けられ、コイルばね20の表面に接しながら、表面の高さ方向Zに沿った変位に応じて高さ方向Zに沿って移動する端子部6と、可動ユニット4に取り付けられ、端子部6の移動に応じて高さ方向Zに沿って移動すると共に、コイルばね20に向けてX線を照射し、コイルばね20にて回折されたX線を測定するX線測定部10と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の一端から他端に向かう一方向に沿って移動可能な可動部と、
前記可動部に取り付けられ、前記測定対象物の表面に接しながら、前記表面の前記一方向に交差する高さ方向に沿った変位に応じて前記高さ方向に沿って移動する端子部と、
前記可動部に取り付けられ、前記端子部の移動に応じて前記高さ方向に沿って移動すると共に、前記測定対象物に向けてX線を照射し、前記測定対象物にて回折されたX線を測定する測定部と、
を備えるX線測定装置。
【請求項2】
前記端子部の前記高さ方向に沿った移動量を検出する検出部と、
検出された前記移動量に基づき前記測定部を前記高さ方向に沿って移動させる制御部と、
を更に備える、
請求項1に記載のX線測定装置。
【請求項3】
前記測定部は、一対の前記端子部に挟み込まれており、一対の前記端子部と共に移動する、
請求項1に記載のX線測定装置。
【請求項4】
前記端子部は、前記測定対象物の表面に接する側の面に形成された溝を有し、前記可動部に対して着脱可能に構成されている、
請求項1~3の何れか一項に記載のX線測定装置。
【請求項5】
前記測定対象物は、螺旋状であり、
前記測定対象物を回転させる回転機構を更に備える、
請求項1~4の何れか一項に記載のX線測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線を用いて測定対象物を測定するX線測定装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、測定対象物にX線を照射し、測定対象物の表面から発生した蛍光X線の強度を測定するX線測定装置が記載されている。また、下記特許文献2には、測定対象物にX線を照射して、測定対象物にて回折された回折X線の強度を測定するX線測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-317465号公報
【特許文献2】特許第6492388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のX線測定装置においては、例えば測定対象物の表面の位置が高さ方向に沿って変化した場合に、測定部と測定対象物との相対距離が測定目標値からずれてしまい、精度良くX線測定を行うことができないという問題がある。
【0005】
これに対し、上記特許文献1に記載のX線測定装置では、測定対象物の表面の位置の高さ方向での変化量に基づき、X線強度の分析データの補正を行う。しかしながら、この場合には、補正値の確からしさを別途保証しなければならない。また、上記特許文献2に記載のX線測定装置では、実際のX線照射点と基準照射点とのずれ距離を検出し、当該ずれ距離が無くなるように測定部の高さを変化させる。しかしながら、当該ずれ距離はレーザ光の受光強度に基づき検出しており測定対象物の表面状態の影響を受けるため、測定部と測定対象物との相対距離を適切に補正することができない可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、測定部と測定対象物との相対距離を適切に補正することができるX線測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一態様に係るX線測定装置は、測定対象物の一端から他端に向かう一方向に沿って移動可能な可動部と、前記可動部に取り付けられ、前記測定対象物の表面に接しながら、前記表面の前記一方向に交差する高さ方向に沿った変位に応じて前記高さ方向に沿って移動する端子部と、前記可動部に取り付けられ、前記端子部の移動に応じて前記高さ方向に沿って移動すると共に、前記測定対象物に向けてX線を照射し、前記測定対象物にて回折されたX線を測定する測定部と、を備える。
【0008】
本発明の第二態様に係るX線測定装置では、前記端子部の前記高さ方向に沿った移動量を検出する検出部と、検出された前記移動量に基づき前記測定部を前記高さ方向に沿って移動させる制御部と、を更に備える。
【0009】
本発明の第三態様に係るX線測定装置では、前記測定部は、一対の前記端子部に挟み込まれており、一対の前記端子部と共に移動する。
【0010】
本発明の第四態様に係るX線測定装置では、前記端子部は、前記測定対象物の表面に接する側の面に形成された溝を有し、前記可動部に対して着脱可能に構成されている。
【0011】
本発明の第五態様に係るX線測定装置では、前記測定対象物は、螺旋状であり、前記測定対象物を回転させる回転機構を更に備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、測定部と測定対象物との相対距離を適切に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第一実施形態に係るX線測定装置の全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図1のX線測定装置における部分領域Rを拡大して示す部分拡大図である。
【
図3】
図1の可動ユニットの内部構成を概略的に示す概略構成図である。
【
図4】コイルばねの回転に伴い移動する端子部と共に、可動ユニット及びX線測定部が一方向に沿って移動することについて概念的に説明する図である。
【
図5】端子部の高さ方向に沿った移動に応じてX線測定部が移動する様子を概念的に説明する図である。
【
図6】第二実施形態に係るX線測定装置における部分領域Rを拡大して示す部分拡大図である。
【
図7】
図6の可動ユニットの内部構成を概略的に示す概略構成図である。
【
図8】一対の端子部の高さ方向に沿った移動に応じてX線測定部が移動する様子を概念的に説明する図である。
【
図9】変形例に係るX線測定装置における可動ユニットの内部構成を概略的に示す概略構成である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第一実施形態>
以下、添付図面を参照して、本発明の第一実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一要素又は同一機能を有する要素には可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0015】
<全体構成>
図1は、第一実施形態に係るX線測定装置1の全体構成の一例を示す図である。
図2は、
図1のX線測定装置1における部分領域Rを拡大して示す部分拡大図である。部分領域Rは、X線測定装置1における可動ユニット4、端子部6、及びX線測定部10を含む部分領域である。
【0016】
X線測定装置1は、測定対象物としてコイルばね20にX線を照射し、コイルばね20にて回折されたX線の測定を行う装置である。コイルばね20は、螺旋状の弾性体であって、例えばN回巻きの直線形の圧縮コイルばねである。コイルばね20は、例えば直径が10cm程度であり、軸方向での長さが30~50cm程度の大きさを有する。X線測定装置1は、例えば、レール2と、可動ユニット4と、端子部6と、回転機構8と、X線測定部10と、コンピュータ12と、を備える。
【0017】
レール2は、例えばコイルばね20の上方に、コイルばね20の一端から他端にかけて架け渡されている。レール2は、コイルばね20の各端よりも外側に立設された一対の脚部2aと、一対の脚部2aの間においてコイルばね20の軸心に沿って延在するガイド部2bと、を有する。ガイド部2bは、棒状であって、可動ユニット4のレール溝4aに嵌合することで当該可動ユニット4を支持する。また、ガイド部2bは、コイルばね20の一端から他端に向かう一方向Aに沿って、可動ユニット4を案内する。
【0018】
可動ユニット4は、一方向Aに沿ってレール2上を移動可能な可動部である。可動ユニット4は、レール2上に支持されることにより、コイルばね20の上方に位置する。可動ユニット4は、略直方体状であって、一面における略中心位置に直線状に形成されたレール溝4aを有する。可動ユニット4のレール溝4aは、レール2のガイド部2bに対して摺動可能に嵌合する。可動ユニット4は、端子部6の一方向Aに沿った移動に連動し、ガイド部2bによって案内されて一方向Aに沿って移動する。
【0019】
端子部6は、可動ユニット4に取り付けられている。端子部6は、コイルばね20の表面に接しながら、当該表面の高さ方向Zに沿った変位に応じて高さ方向Zに沿って移動する。高さ方向Zは、例えば一方向Aに直交する方向である。なお、高さ方向Zは、一方向Aに必ずしも直交していなくてもよく、一方向Aに対して交差する方向であればよい。端子部6は、コイルばね20の表面における高さ方向Zで端子部6の直下にある点、すなわち端子部6からの距離が最短距離となる点を接点として接する。以下、コイルばね20における端子部6が接する接点を「端子接点」という。
【0020】
端子部6は、略直方体形状であり、可動ユニット4に取り付けられる側の端面である取付面と、当該取付面とは反対側の端面であってコイルばね20に接する側の面である先端面と、を有する。端子部6は、先端面に形成された溝6aを有する。溝6aは、コイルばね20の表面形状に対応した形状とされている。例えば、溝6aは、コイルばね20の線材の表面の曲率に対応する曲率となる半円状に形成されている。
【0021】
端子部6は、溝6aによって高さ方向Zに沿って上側からコイルばね20の表面を覆うように接し、コイルばね20の動きに連動して動く。例えば、コイルばね20が回転すると、コイルばね20における端子接点が一方向Aに沿って移動するため、これに付き従って端子部6も一方向Aに沿って移動する。また、コイルばね20における端子接点が、弾性力や振動等によって高さ方向Zに沿って変位すると、端子部6もこれに付き従って高さ方向Zに沿って移動する。
【0022】
また、端子部6は、可動ユニット4に対して着脱可能に構成されている。例えば、端子部6は、ボルト等の締結部品によって着脱可能とされている。この場合、端子部6には、例えばシャフト孔及びボルト孔が形成されている。シャフト孔は、可動ユニット4側に設けられたシャフトを挿入するための孔であって、端子部6における溝6aとは反対側の端面に形成されている。ボルト孔は、当該シャフト孔に挿入された状態のシャフトを固定するボルトを挿入するための孔であって、端子部6におけるシャフト孔が形成された端面に直交する側面に形成されている。端子部6を可動ユニット4に取り付ける際には、作業者が、端子部6のシャフト孔に可動ユニット側のシャフトを挿入すると共に、端子部6のボルト孔にボルトを挿入して固定する。これに対し、端子部6を可動ユニット4から取り外す際には、作業者が、固定したボルトを取り外し、シャフト孔からシャフトを抜くようにして取り外す。なお、端子部6は、このような着脱方法に限らず、例えば可動ユニット4に対してワンタッチで着脱可能な着脱機構を有していてもよい。
【0023】
回転機構8は、コイルばね20を回転させる回転機構であって、コイルばね20の両端を一方向Aで挟持可能な一対の保持部材14と、保持部材14に固定され保持部材14を介してコイルばね20を回転させる回転モータ16と、を有する。回転モータ16は、コンピュータ12の制御によって回転し、保持部材14と共にコイルばね20を回転させる。回転モータ16は、回転モータ16の回転角を検出してエンコーダ値としてコンピュータ12に送信するエンコーダ18を有する。
【0024】
X線測定部10は、可動ユニット4に取り付けられている。X線測定部10は、コイルばね20に向けてX線を照射し、コイルばね20にて回折されたX線を測定する測定部である。X線測定部10は、例えば1枚当たり任意の露光時間(数mms~100mms程度)で回折環画像を取得する。X線測定部10は、端子部6の移動に応じて高さ方向Zに沿って移動すると共にX線を測定する。
【0025】
第一実施形態において、X線測定部10は、端子部6に対してレール2を間に介して離間しており、端子部6に対して直接接続されていない別々の構成とされている。なお、X線測定部10は、端子部6に対してレール2を間に介して離間していなくてもよく、X線測定部10及び端子部6が共にレール2に対して一方側又は他方側に位置していてもよい。
【0026】
コンピュータ12は、可動ユニット4、回転機構8、及びX線測定部10のそれぞれに通信可能に接続されており、これらの動作を制御する。コンピュータ12は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等を備えた汎用的なコンピュータで構成されている。コンピュータ12の機能は、CPUの制御のもとで、メモリに記憶されているプログラムを実行し、X線測定装置1が備える各構成を動作させることで実現される。
【0027】
具体的には、コンピュータ12は、回転モータ16によりコイルばね20を回転させながら、回転モータ16の回転角に対応する所定のタイミングでX線測定部10によりX線を測定させる。また、コンピュータ12は、X線測定部10によるX線測定の結果得られた回折環画像に基づき、例えばcоsα法を用いてコイルばね20の残留応力値を算出する。
【0028】
<可動ユニット4の内部構成>
次に、
図3を参照して、可動ユニット4の内部構成について詳細に説明する。
図3は、
図1の可動ユニット4の内部構成を概略的に示す概略構成図である。
図3では、可動ユニット4を一方向Aに沿った方向で見た場合を示し、レール2の図示を省略する。
【0029】
図3に示すように、可動ユニット4は、ばね部材32と、ロードセル34と、制御部36と、アクチュエータ38と、ピストン40と、を有する。ばね部材32は、一端が端子部6に接続されていると共に、他端がロードセル34に接続されている。ばね部材32は、端子部6の高さ方向Zに沿った移動に伴い伸縮する。
【0030】
ロードセル34は、ばね部材32と制御部36との間に接続されている。ロードセル34は、ばね部材32の伸縮に伴う圧力変化を検出し、検出値を電圧に変換して制御部36に出力する。ロードセル34は、端子部6の高さ方向Zに沿った移動量を検出する検出部として機能する。
【0031】
制御部36は、外部のコンピュータ12と通信可能に接続されたマイクロコンピュータであって、ロードセル34とアクチュエータ38との間に接続されている。制御部36は、ロードセル34から出力された電圧に基づき、ピストン40を伸縮する指令をアクチュエータ38に出力する。制御部36は、ロードセル34によって圧力変化として検出された端子部6の移動量に基づき、X線測定部10を高さ方向Zに沿って移動させる制御部として機能する。
【0032】
アクチュエータ38は、制御部36とピストン40との間に接続されている。アクチュエータ38は、制御部36から出力された指令に基づき、ピストン40を伸縮させる。このピストン40の伸縮によって、X線測定部10は、端子部6が高さ方向Zに沿って移動した距離と同じ距離を、端子部6が高さ方向Zに沿って移動した方向と同じ方向に、高さ方向Zに沿って移動する。
【0033】
<X線測定装置1の動作>
次に、X線測定時におけるX線測定装置1の動作について説明する。X線測定時には、まず、作業者がコイルばね20の両端を回転機構8に取り付け、コイルばね20の一端(測定開始点)に端子部6の位置を合わせる。X線測定を開始すると、コンピュータ12は、回転機構8を制御してコイルばね20を回転させながら、回転モータ16の回転角に対応する所定のタイミングでX線測定部10によりX線を測定させる。
【0034】
図4は、コイルばね20の回転に伴い移動する端子部6と共に、可動ユニット4及びX線測定部10が一方向Aに沿って移動することについて概念的に説明する図である。
図4に示すように、コイルばね20の回転に伴い、コイルばね20における端子接点が一方向Aに沿って移動し、これに付き従って端子部6も一方向Aに沿って移動する。この端子部6の移動に伴い、可動ユニット4がX線測定部10と共にレール2のガイド部2b上を一方向Aに沿って移動する。コンピュータ12は、ガイド部2b上を移動する可動ユニット4がコイルばね20の一端側から他端側に到達するまで、回転機構8によりコイルばね20を回転させながら、X線測定部10によりX線を測定させる。
【0035】
また、このX線測定の際、X線測定部10は、端子部6の高さ方向Zに沿った移動に応じて、高さ方向Zに移動する。
図5は、端子部6の高さ方向Zに沿った移動に応じてX線測定部10が移動する様子を概念的に説明する図である。コイルばね20における測定点は、コイルばね20の弾性力や振動等により、高さ方向Zに沿って変位する場合がある。例えば、
図5の(a)に示す場合を基準位置とした場合に、
図5の(b)に示す場合のように基準位置よりも高さ方向Zで高い上側に位置する場合や、
図5の(c)に示す場合のように基準位置よりも高さ方向Zで低い下側に位置する場合がある。ここで、コイルばね20における測定点とは、コイルばね20の表面上の点であって、X線測定部10によりX線が照射される照射点である。
【0036】
コイルばね20における測定点が、
図5の(a)に示すような基準位置から、
図5の(b)に示すような基準位置よりも上側の位置に変位した場合、この変位に応じて端子部6も同様に上側に移動する。この端子部6の移動に応じて、可動ユニット4におけるばね部材32、ロードセル34、制御部36、アクチュエータ38、及びピストン40が作動することによって、X線測定部10は、端子部6が上側に移動した距離と同じ距離分、高さ方向Zに沿って上側に移動する。よって、コイルばね20における測定点が基準位置よりも上側に変位した場合であっても、X線測定部10とコイルばね20との相対距離Lを一定に保つことができる。
【0037】
また、コイルばね20における測定点が、
図5の(a)に示すような基準位置から、
図5の(c)に示すような基準位置よりも下側の位置に変位した場合、この変位に応じて端子部6も同様に下側に移動する。この端子部6の移動に応じて、可動ユニット4におけるばね部材32、ロードセル34、制御部36、アクチュエータ38、及びピストン40が作動することによって、X線測定部10は、端子部6が下側に移動した距離と同じ距離分、高さ方向Zに沿って下側に移動する。よって、コイルばね20における測定点が基準位置よりも下側に変位した場合であっても、X線測定部10とコイルばね20との相対距離Lを一定に保つことができる。
【0038】
なお、第一実施形態においては、端子部6とX線測定部10とが離間しているため、コイルばね20における端子接点と測定点とは、一致しておらず、位置ずれが生じる。可動ユニット4における制御部36は、この位置ずれを考慮して、X線測定部10を高さ方向Zに沿って移動させてもよい。例えば、制御部36は、端子部6とX線測定部10との離間距離と、コイルばね20の線材の表面の曲率とに基づき、端子接点の高さ方向Zに沿った位置と、測定点の高さ方向Zに沿った位置とにずれが生じないように補正してもよい。
【0039】
<効果>
以上、第一実施形態に係るX線測定装置1は、一方向Aに沿って移動可能な可動ユニット4と、可動ユニット4に取り付けられ、コイルばね20の表面に接しながら、表面の高さ方向Zに沿った変位に応じて高さ方向Zに沿って移動する端子部6と、可動ユニット4に取り付けられ、端子部6の移動に応じて高さ方向Zに沿って移動すると共に、コイルばね20に向けてX線を照射し、コイルばね20にて回折されたX線を測定するX線測定部10と、を備える。
この構成によれば、可動ユニット4の移動により、可動ユニット4と共にX線測定部10を一方向Aに沿って移動させながらX線を測定することができる。この際、可動ユニット4に取り付けられた端子部6が、コイルばね20の表面の高さ方向Zに沿った変位に応じて高さ方向Zに沿って移動する。そして、X線測定部10は、この端子部6の移動に応じて高さ方向Zに沿って移動すると共にX線を測定する。よって、コイルばね20の表面が高さ方向Zに沿って変位した場合であっても、その都度コンピュータ12によって補正や再設定を行うことなく、X線測定部10とコイルばね20との相対距離Lを適切に補正することができるX線測定装置1を提供することができる。
特に、コイルばね20の表面状態が液状付着物(油等)で汚れている場合には、レーザ光の検出センサ等によってはコイルばね20の表面の変位を適切に検出できない可能性がある。X線測定装置1によれば、このような場合であっても、コイルばね20の表面に直接接する端子部6を利用することにより、コイルばね20の表面の変位に応じて適切に相対距離Lを補正することができる。
【0040】
また、第一実施形態に係るX線測定装置1では、端子部6の高さ方向Zに沿った移動量を検出する検出部としてのロードセル34と、検出された移動量に基づきX線測定部10の高さ方向Zに沿って移動させる制御部36と、を更に備える。
この構成によれば、ロードセル34及び制御部36により、端子部6の移動に応じてX線測定部10を高さ方向Zに沿って移動させることができるので、端子部6とX線測定部10とが直接接続されていない別々の構成とされた場合であっても、上記効果を好適に奏する。
【0041】
また、第一実施形態に係るX線測定装置1では、端子部6は、コイルばね20の表面に接する側の先端面に形成された溝6aを有し、可動ユニット4に対して着脱可能に構成されている。
この構成によれば、端子部6の溝6aによって端子部6がコイルばね20の表面に対して引っ掛かり易く、コイルばね20の動きに連動して端子部6が動く際に端子部6がコイルばね20から外れてしまうことを抑制することができる。更に、端子部6が可動ユニット4に対して着脱可能なので、様々な形状や大きさの測定対象物に合わせて適切な端子部6を可動ユニット4に取り付けることができる。
【0042】
また、第一実施形態に係るX線測定装置1では、コイルばね20は、螺旋状であり、コイルばね20を回転させる回転機構8を更に備える。
この構成によれば、螺旋状のコイルばね20を回転させると、コイルばね20における端子接点が一方向Aに沿って移動し、これに付き従って端子部6も一方向Aに沿って移動する。この端子部6の移動に伴い、端子部6が取り付けられた可動ユニット4が一方向Aに沿って移動するので、移動する可動ユニット4と共にX線測定部10を一方向Aに沿って移動させながらX線を測定することができる。よって、X線測定部10を作業者の手やロボット等によって一方向Aに移動させなくても、コイルばね20を回転させることによって、X線測定部10を自動的に一方向Aに沿って移動させながらX線を測定することができる。
【0043】
<第二実施形態>
次に、
図6~
図8を参照して、第二実施形態に係るX線測定装置1について説明する。第二実施形態に係るX線測定装置1は、第一実施形態に係るX線測定装置1と同様の各構成を備えるが、端子部6に代えて一対の端子部50を備え、この一対の端子部50がX線測定部10に直接接続されて一体化されている点や、可動ユニット4の内部構成が異なる点で、第一実施形態と異なる。以下、異なる点について説明する。
【0044】
図6は、第二実施形態に係るX線測定装置1における部分領域Rを拡大して示す部分拡大図であって、
図2に対応する図である。第二実施形態においては、可動ユニット4のレール溝4aが、可動ユニット4の一面における略中心位置よりも他方側(後方側)にずれた位置に形成されている。可動ユニット4は、レール溝4aがレール2のガイド部2bに篏合した状態で、当該ガイド部2bによってバランス良く支持されるようにするための錘を有していてもよい。
【0045】
また、第二実施形態においては、一対の端子部50及びX線測定部10が、レール2に対して共に一方側(手前側)に位置する。なお、一対の端子部50及びX線測定部10が、レール2に対して共に他方側(後方側)に位置していてもよい。一対の端子部50は、端子部6と同様の機能を有し、コイルばね20の表面に接しながら、当該表面の高さ方向Zに沿った変位に応じて高さ方向Zに沿って移動する。一対の端子部50は、コイルばね20における測定点と略一致する点で接する。
【0046】
各端子部50は、X線測定部10を間に介して互いに離間して対向する。各端子部50が互いに対向する対向面の間の空間は、X線測定部10から照射されるX線が通過する空間とされる。各端子部50は、略直方体状であり、可動ユニット4に取り付けられる側の端面である取付面と、当該取付面とは反対側の端面であってコイルばね20に接する側の面である先端面と、を有する。各端子部50は、先端面側の角部において形成された溝50aを有する。溝50aは、コイルばね20の表面形状に対応した形状とされている。例えば、溝50aは、コイルばね20の線材の表面の曲率に対応する曲率となる半円状に形成されている。
【0047】
一対の端子部50は、各溝50aによって一方向Aに沿った両側からコイルばね20の表面を挟み込むように接し、コイルばね20の動きに連動して動く。すなわち、一対の端子部50の溝50aは、第一実施形態における端子部6の溝6aと同様の機能を有する。
【0048】
X線測定部10は、一対の端子部50に挟み込まれて位置する。X線測定部10における一方向Aに沿った両側部に、各端子部50が直接接続されている。これにより、X線測定部10は、一対の端子部50と共に移動する。
【0049】
図7は、
図6の可動ユニット4の内部構成を概略的に示す概略構成図であって、
図3に対応する。
図7に示すように、第二実施形態において、可動ユニット4は、内部構成として、ばね部材32、ロードセル34、制御部36、アクチュエータ38、及びピストン40に代えて、ばね部材52を有する。
【0050】
ばね部材52は、一端が一対の端子部50に接続されていると共に、他端が可動ユニット4の本体内面に接続されている。ばね部材52は、一対の端子部50及びこれに接続されるX線測定部10の荷重を支持する。ばね部材52は、一対の端子部50の高さ方向Zに沿った移動に伴い伸縮する。X線測定部10は、一対の端子部50が高さ方向Zに沿って移動すると、当該端子部50と一体的に高さ方向Zに沿って移動する。
【0051】
図8は、一対の端子部50の高さ方向Zに沿った移動に応じてX線測定部10が移動する様子を概念的に説明する図であって、
図5に対応する図である。コイルばね20における測定点の高さ方向Zでの位置は、
図8の(a)に示す場合を基準位置とした場合に、
図8の(b)に示す場合のように基準位置よりも高さ方向Zで高い上側に位置する場合や、
図8の(c)に示す場合のように基準位置よりも高さ方向Zで低い下側に位置する場合がある。
【0052】
コイルばね20における測定点が、
図8の(a)に示すような基準位置から、
図8の(b)に示すような基準位置よりも上側の位置に変位した場合、この変位に応じて一対の端子部50も同様に上側に移動する。X線測定部10は、この一対の端子部50と一体的に移動することにより、一対の端子部50が上側に移動した距離と同じ距離分、高さ方向Zに沿って上側に移動する。よって、コイルばね20における測定点が基準位置よりも上側に変位した場合であっても、X線測定部10とコイルばね20との相対距離Lを一定に保つことができる。
【0053】
また、コイルばね20における測定点が、
図8の(a)に示すような基準位置から、
図8の(c)に示すような基準位置よりも下側の位置に変位した場合、この変位に応じて一対の端子部50も同様に下側に移動する。X線測定部10は、この一対の端子部50と一体的に移動することにより、一対の端子部50が下側に移動した距離と同じ距離分、高さ方向Zに沿って下側に移動する。よって、コイルばね20における測定点が基準位置よりも下側に変位した場合であっても、X線測定部10とコイルばね20との相対距離Lを一定に保つことができる。
【0054】
<効果>
以上、第二実施形態においても、第一実施形態と同様の効果、すなわち、X線測定部10とコイルばね20との相対距離Lを適切に補正することができるX線測定装置1を提供することができる。
【0055】
また、第二実施形態に係るX線測定装置1では、X線測定部10は、一対の端子部50に挟み込まれており、一対の端子部50と共に移動する。
この構成によれば、X線測定部10が一対の端子部50に挟み込まれて位置することにより、コイルばね20における端子接点の高さ方向Zに沿った位置と、コイルばね20における測定点の高さ方向Zに沿った位置とにずれが生じないようにすることができる。よって、当該位置ずれを考慮しなくても、一対の端子部50の移動に応じてX線測定部10を高さ方向Zに沿って適切に移動させることができる。
【0056】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記の実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0057】
例えば、
図9に示すように、第一実施形態で示すX線測定装置1における可動ユニット4の内部構成が異なっていてもよい。
図9は、変形例に係るX線測定装置1における可動ユニット4の内部構成を概略的に示す概略構成であって、
図3に対応する。この変形例においては、可動ユニット4が、内部構成として、ばね部材32及びロードセル34に代えて、距離センサ33を有する。この場合、距離センサ33は、端子部6の高さ方向Zに沿った移動量を検出し、制御部36に出力する。制御部36は、距離センサ33により検出された端子部6の移動量に基づき、X線測定部10を高さ方向Zに沿って移動させるようにアクチュエータ38を制御する。
【0058】
また、端子部6,50の形状は上記実施形態に限定されず、例えば各溝6a,50aは測定対象物の表面に引っ掛かり易い、又は測定対象物の動きに付き従って動くような形状であれば何れの形状であってもよい。
【0059】
また、測定対象物はコイルばね20に限らず、例えば筒状の物体でもよく、非弾性体でもよい。例えば測定対象物が非弾性体であって、弾性力や振動等が生じない場合であっても、測定対象物が高さ方向Zに沿って変位した場合等も有り得る。このような場合であっても、本発明を適用することで、X線測定部10と測定対象物との相対距離Lを適切に補正することができる。また、測定対象物を回転させずにX線測定を行ってもよい。可動ユニット4は、測定対象物の回転に伴い自動的に一方向Aに沿って移動しなくてもよく、例えば作業者によって手動で又はロボット等によって可動ユニット4を一方向Aに沿って移動してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、レール2、可動ユニット4、端子部6,50、及びX線測定部10が、測定対象物の上方に位置するが、これに限らず、これらの構成を測定対象物に対して左右上下の何れの位置に設けてもよい。また、上記実施形態では、可動ユニット4が検出部としての距離センサ33やロードセル34と、制御部36とを有する例について説明したが、これに限らない。すなわち、端子部6、50の高さ方向Zに沿った移動量を検出する検出部と、検出された移動量に基づきX線測定部10を高さ方向Zに沿って移動させる制御部とを、可動ユニット4以外の構成、例えばX線測定部10等が有していてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1:X線測定装置、4:可動ユニット(可動部)、6,50:端子部、8:回転機構、10:X線測定部(測定部)、33:距離センサ(検出部)、34:ロードセル(検出部)、36:制御部