(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069623
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】法面吹付工法及び吹付用機械
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
E02D17/20 104B
E02D17/20 106
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181638
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石垣 幸整
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044DC05
2D044EA00
(57)【要約】
【課題】機械的に吹付作業を施工出来、吹付装置を一品製作でなく、吹付材を法面の表面上に均一厚さに正確に吹き付け出来る法面吹付工法及び吹付用機械の提供。
【解決手段】本発明は、車両にアタッチメント(1)を取り付け、アタッチメント(1)は、長手方向に移動可能で且つ直交する方向に延在する板状部材(2)、板状部材(2)に沿って移動可能な吹付用ノズル(3)を備え、吹付用ノズル(3)を法面の表面形状に追随、移動し、吹付用ノズル(3)の移動に先立って、吹付用ノズルから吹付材を吹き付ける位置の軌跡を予め設定し、吹付用ノズル(3)の移動の際には、吹付用ノズルから吹付材を吹き付けた位置の軌跡が、予め設定された軌跡と同一になる様に制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両にアタッチメントを取り付ける工程を有し、
当該アタッチメントは、その長手方向に移動可能で且つ長手方向と直交する方向(横方向)に延在する板状部材と、当該板状部材に沿って移動可能な吹付用ノズルを備えており、
吹付用ノズルを法面の表面形状に追随して移動するノズル移動工程を有し、
当該ノズル移動工程では、
アタッチメントを長手方向に伸縮する工程と、
前記アタッチメントを揺動する工程と、
前記板状部材をアタッチメントの長手方向に移動する工程と、
前記板状部材に沿って吹付用ノズルを移動する工程と、
前記板状部材を回動する工程と、
吹付用ノズル(3)を回動する工程、の何れかを含み、
ノズル移動工程に先立って、吹付用ノズルから吹付材を吹き付ける位置の軌跡を予め設定する工程を含み、
前記ノズル移動工程では、吹付用ノズルから吹付材を吹き付けた位置の軌跡が、予め設定された軌跡と同一になる様に制御されることを特徴とする法面吹付工法。
【請求項2】
予め設定される吹付用ノズルから吹付材を吹き付ける位置の軌跡は、施工法面の水平面に対して傾斜した方向(斜め方向)に延在する軌跡である請求項1の法面吹付工法。
【請求項3】
予め設定される吹付用ノズルから吹付材を吹き付ける位置の軌跡は、特定の吹付開始位置と吹付終了位置を有し、当該吹付開始位置と吹付終了位置の間が途切れることなく且つ同一経路を重複することなく連続している請求項1の法面吹付工法。
【請求項4】
車両に設けられているブームに取り付け及び/又は当該ブームから取り外すためのアタッチメント側接続手段を有するアタッチメントと制御装置を含み、
前記アタッチメントは、
最長な形状を有する第1の部材及び第2の部材を有し、第2の部材(1-2)を第1の部材に摺動することにより長手方向に伸縮可能に構成され、
第2の部材の長手方向に移動可能で且つ長手方向と直交する方向(横方向)に延在する板状部材と、当該板状部材に沿って吹付用ノズルを移動させる横方向移動用部材と、
第2の部材の長手方向に延在する回転中心に対して、前記板状部材を回動する第1の回動用部材と、
吹付用ノズルを回動する第2の回動用部材を含んでおり、
前記車両には第1の部材を揺動する車両側揺動部材が設けられており、
前記制御装置は、
吹付用ノズルから吹付材を噴射する以前に、吹付材を吹き付ける位置の軌跡を予め設定する機能と、
吹付用ノズル(2)から吹付材を吹き付けた位置の軌跡が、予め設定された軌跡と同一になる様に調整する機能を有することを特徴とする吹付用機械。
【請求項5】
前記制御装置は、予め設定される吹付用ノズルから吹付材を吹き付ける位置の軌跡として、施工法面の水平面に対して傾斜した方向に延在する軌跡を設定する機能を有する請求項4の吹付用機械。
【請求項6】
前記制御装置は、予め設定される吹付用ノズルから吹付材を吹き付ける位置の軌跡として、特定の吹付開始位置と吹付終了位置を有し、当該吹付開始位置と吹付終了位置の間が途切れることなく且つ同一経路を重複することなく連続している軌跡を設定する機能を有する請求項4の吹付用機械。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記第2の部材を前記第1の部材に摺動して前記アタッチメントの長手方向寸法を伸縮する機能と、
直交する方向に延在する板状部材を第2の部材の長手方向の目標位置まで移動する機能と、
横方向移動用部材を駆動して前記板状部材に沿って吹付用ノズルを移動する機能と、
第1の回動用部材により、第2の部材の長手方向或いはそれと平行に延在する回転中心周りに前記板状部材を回動する機能と、
第2の回動用部材により吹付用ノズルを回動する機能と、
前記車両に設けられた車両側揺動部材を作動して第1の部材を揺動する機能を有している請求項4~6の何れか1項の吹付用機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面表面に吹付材を吹き付ける法面吹付工法と、それに用いられる吹付用機械に関する。
【背景技術】
【0002】
不陸の多い法面の表面に吹付材を吹き付ける法面吹付工法は、作業員が吹付用ノズルを持って、所定箇所に吹付材を吹き付けることにより実行される作業(人手による作業)が多かった。
人手による吹付作業は転落その他の危険があり、また、人手により吹付用ノズルを把持しなければならないため、ホース閉塞時には作業員が危険に晒されてしまう。さらに作業効率が低い(例えば、作業員一人当たりの作業面積が100m2/日)という問題があった。
これに対して、機械を用いて吹付作業を行えば、人手による作業に比較して、遥かに作業効率が向上する。そして、作業員の危険が減少する。
そのため、自走可能な法面吹付装置(例えば、特許文献1)が提案されている。
【0003】
しかし、係る法面吹付装置(特許文献1)は、いわゆる「一品製作」で製造される場合があり、一品製作された場合には価格が高く、導入コストが高騰するという問題を有している。
また、吹付作業時に装置を固定するため、車両のアウトリガーを張り出さなければならず、アウトリガーによる固定作業に時間を費やしてしまう。
それに加えて、吹付用ノズルの位置や噴射方向の自由度が低いため、不陸の大きい法面の表面に、均一厚さで吹付材を吹き付けることが困難であった。
【0004】
ここで、吹付作業においては、ノズルから吹付材を吹き付けた吹付位置の軌跡(吹付作業を行うコース)を作業前に予め設定し、設定された軌跡(或いはコース)通りに吹付作業を施工すれば、作業効率を大幅に向上することが出来る。
しかし、吹付作業前に吹付位置の軌跡(或いはコース)を予め設定し、当該設定された軌跡の通りに吹付作業を行うことは、非常に精度の高い制御技術が必要であり、従来技術においては行われていない。
そして、例えば、施工法面において水平面に対して傾斜した方向(斜め方向)に延在する軌跡を描く(斜め方向の軌跡を描く)様に吹付材を噴射することは、従来技術において、作業員が吹付ノズルを保持して噴射する吹付や、上述した法面吹付装置(特許文献1)による吹付では不可能である。
その他の従来技術として、市販の計測装置により、施工対象の法面の凹凸形状をレーザー光により計測しつつ、リアルタイムで対象法面の吹付の状況や吹付厚を確認する技術が提案されている(特許文献2参照)。しかし、係る従来技術(特許文献2)では、吹付作業前に吹付位置の軌跡(或いはコース)を予め設定し、当該設定された軌跡の通りに吹付作業を行うことは意図しておらず、また、吹付位置の軌跡が斜め方向に延在する様な吹付作業を行うことは不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6454123号公報
【特許文献2】特開2017-197942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、機械により吹付作業を施工することが出来て、吹付材を法面の表面上に均一厚さにて正確に吹き付けることが出来て、吹付作業前に吹付位置の軌跡(或いはコース)を予め設定し、当該設定された軌跡の通りに吹付作業を行うことが出来る法面吹付工法及び吹付用機械の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の法面吹付工法は、
車両(30:無限軌道帯により進行する機械を含む)にアタッチメント(1)を取り付ける工程を有し、
当該アタッチメント(1)は、その長手方向に移動可能で且つ長手方向と直交する方向(横方向)に延在する板状部材(2)と、当該板状部材(2)に沿って移動可能な吹付用ノズル(3)を備えており、
吹付用ノズル(3)を法面(F)の表面形状に追随して移動するノズル移動工程を有し、
当該ノズル移動工程では、
アタッチメント(1)を長手方向(軸方向)に伸縮する工程と、
前記アタッチメント(1)を揺動する工程と、
前記板状部材(2)をアタッチメント(1)の長手方向に移動する工程と、
前記板状部材(2)に沿って吹付用ノズル(3)を移動する工程と、
(アタッチメント(1)の長手方向或いは当該長手方向と平行に延在する回転中心に対して)前記板状部材(2)を回動する(揺動及び/又は回転する場合を含む)工程と、
吹付用ノズル(3)を回動する(揺動及び/又は回転する場合を含む)(吹付用ノズル3を前記板状部材2に対して回動する場合を含む)工程の何れかを含み、
ノズル移動工程に先立って、吹付用ノズル(3)から吹付材を吹き付ける位置(吹付位置)の軌跡(設定された軌跡、経路)を予め設定する工程を含み、
前記ノズル移動工程では、吹付用ノズル(3)から吹付材を吹き付けた位置の軌跡(吹付の軌跡)が、予め設定された軌跡(設定された軌跡)と同一になる様に制御されることを特徴としている。
【0008】
本発明の法面吹付工法において、
予め設定される吹付用ノズル(3)から吹付材を吹き付ける位置の軌跡(設定された軌跡)は、施工法面の水平面に対して傾斜した方向(斜め方向)に延在する軌跡(斜め方向の軌跡)であることが好ましい。
或いは、本発明の法面吹付工法において、
予め設定される吹付用ノズル(3)から吹付材を吹き付ける位置の軌跡(設定された軌跡)は、
特定の吹付開始位置(設定された軌跡の始点)と吹付終了位置(設定された軌跡の終点)を有し、当該吹付開始位置と吹付終了位置の間が途切れることなく且つ同一経路を重複することなく且つ同一経路を重複することなく連続している(いわゆる「一筆書き」である)のが好ましい。
【0009】
本発明の法面吹付工法において、
吹付材を吹き付ける場所が車両(30:例えばバックホウの様に、無限軌道帯により進行する機械を含む)に設けられたブーム(31)の最高到達点よりも低い位置にある場合には、前記アタッチメント(1)を取り付けることなく、前記車両(30)に設けられたブーム(31)の車両(30)と反対側の先端に吹付用ノズル(3)を取り付けて、当該ブーム(31)を動かしつつ吹付用ノズル(3)から吹付材を噴射し、
吹付材を吹き付ける場所が車両(30:無限軌道帯により進行する機械を含む)に設けられたブーム(31)の最高到達点よりも高い位置にある場合には、前記車両(30)に設けられたブーム(31)の車両(30)と反対側の先端にアタッチメント(1)を取り付けるのが好ましい。
また、吹付材を吹付用ノズル側に供給する吹付材供給系統(20)は吹付固化材用ポンプ(21:例えばコンクリートポンプ)を備え、吹付固化材用ポンプ(21)は移動可能な台車(22)に載置されており、
(ポンプ圧送距離に施工範囲が限定されてしまうことを可能な限り避けるため)吹付用ノズル(3)から吹付材を噴射する際には当該吹付用ノズル(3)に近接する位置に台車(22)を移動する工程を有することが好ましい。
【0010】
本発明の吹付用機械(100)は、
車両(30:無限軌道帯により進行する機械を含む)に設けられているブーム(31)に取り付け及び/又は当該ブーム(31)から取り外すためのアタッチメント側接続手段(4)を有するアタッチメント(1)と制御装置(CU:例えば吹付用機械側の制御盤やPC等)を含み、
前記アタッチメント(1)は、
最長な形状を有する第1の部材(1-1:車両側部材)及び第2の部材(1-2:吹付用ノズル側部材)を有し、第2の部材(1-2)を第1の部材(1-1)に摺動(スライド)することにより長手方向に伸縮可能に構成され、
第2の部材(1-2:吹付用ノズル側部材)の長手方向に移動可能で且つ長手方向と直交する方向(横方向)に延在する板状部材(2)と、当該板状部材(2)に沿って吹付用ノズル(3)を移動させる横方向移動用部材(5)と、
第2の部材(1-2:吹付用ノズル側部材)の長手方向に延在する回転中心に対して、前記板状部材(2)を回動する第1の回動用部材(6)と、
吹付用ノズル(3)を回動する(吹付用ノズル3を前記板状部材2に対して回動することを含む)第2の回動用部材(7)を含んでおり、
前記車両(30)には第1の部材(1-1:車両側部材)を揺動する車両側揺動部材(8)が設けられており、
前記制御装置(CU)は、
吹付用ノズル(3)から吹付材を噴射する以前に、吹付材を吹き付ける位置の軌跡(設定された軌跡)を予め設定する機能と、
吹付用ノズル(2)から吹付材を吹き付けた位置の軌跡(吹付の軌跡)が、予め設定された軌跡(設定された軌跡)と同一になる様に調整する(制御する)機能を有することを特徴としている。
【0011】
本発明の吹付用機械(100)において、
前記制御装置(CU)は、予め設定される吹付用ノズル(2)から吹付材を吹き付ける位置の軌跡(設定された軌跡)として、施工法面の水平面に対して傾斜した方向(斜め方向)に延在する軌跡(斜め方向の軌跡)を設定する機能を有することが好ましい。
或いは、本発明の吹付用機械(100)において、
前記制御装置(CU)は、予め設定される吹付用ノズル(2)から吹付材を吹き付ける位置の軌跡(設定された軌跡)として、特定の吹付開始位置(設定された軌跡の始点)と吹付終了位置(設定された軌跡の終点)を有し、当該吹付開始位置と吹付終了位置の間が途切れることなく且つ同一経路を重複することなく連続している(いわゆる「一筆書き」である)軌跡を設定する機能を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明の吹付用機械(100)において、前記制御装置(CU)は、
前記第2の部材(1-2)を前記第1の部材(1-1)に摺動(スライド)して前記アタッチメント(1)の長手方向寸法を伸縮する機能と、
直交する方向(横方向)に延在する板状部材(2)を第2の部材(1-2)の長手方向の目標箇所まで移動する機能と、
横方向移動用部材(5)を駆動して前記板状部材(2)に沿って吹付用ノズル(3)を移動する機能と、
第1の回動用部材(6)により、第2の部材(1-2)の長手方向或いはそれと平行に延在する回転中心周りに前記板状部材(2)を回動する機能と、
第2の回動用部材(7)により吹付用ノズル(3)を回動する(吹付用ノズル3を前記板状部材2に対して回動することを含む)機能と、
前記車両(30)に設けられた車両側揺動部材(8)を作動して第1の部材(1-1)を揺動する機能を有しているのが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の吹付用機械(100)において、
吹付材を吹付用ノズル側に供給する吹付材供給系統(20)を備え、
当該吹付材供給系統(20)には吹付固化材用ポンプ(21:例えばコンクリートポンプ)が介装されており、
吹付用ノズル(3)から吹付材を噴射する際に当該吹付用ノズル(3)と前記吹付固化材用ポンプ(21)との距離を短縮するため、当該吹付固化材用ポンプ(21)は移動可能な台車(22)に載置されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上述の構成を具備する本発明によれば、人手によらず機械により吹付作業を施工できるので、従来の手作業に比較して作業者の危険が少ない。
また、ブーム(31)を有する既存の車両(30)における当該ブーム(31)にアタッチメント(1)を取り付けることにより、吹付装置(100)を一品製作することなく用意することが出来るので、施工コストが節約される。
そして、アタッチメント(1)を取り付けるべき車両(30)を適宜選択して、吹付作業の施工高さに対応した車両(30)を選択することにより、施工範囲が限定されることがない。
同様に、適切な作業を選択することにより、車両のアウトリガーの張り出しによる固定作業を省略することが可能となる。
そして、大容量の吹付材を施工するべき法面(F)に対して吹き付けることが出来る。
【0015】
それに加えて本発明によれば、吹付用ノズル(3)を法面(F)の表面形状に追随して移動し、ノズルを移動するに際しては、アタッチメント(1)を長手方向(軸方向)に伸縮し、前記アタッチメント(1)を揺動し、前記板状部材(2)をアタッチメント(1)の長手方向に移動し、前記板状部材(2)に沿って吹付用ノズル(3)を移動し、アタッチメント(1)の長手方向に延在する回転中心に対して前記板状部材(2)を回動し、或いは、吹付用ノズル(3)を回動するので、吹付用ノズル(3)の位置及び吹付材の吹付方向の自由度が大きくなり、その制御が高精度で行われる。そのため、吹付用ノズル(3)が移動する際における自由度が大きく、法面(F)の表面形状に対して吹付用ノズル(3)を高精度にて追随して移動することが出来る。そのため、不陸(凹凸)が多く複雑な形状の法面であっても、吹付用ノズル(3)から噴射される吹付材を法面(F)の表面上に、均一厚さにて正確に吹き付けることが出来る。その結果、法面(F)の表面に均一厚さの吹付層を正確に形成することが出来る。
本発明において、各々の領域における吹付材の吹付厚さは、吹付工法を施工するべき法面に目印標(例えば、プラスチックの目印標)を設置し、その目印標の施工法面からの高さを所定の吹付厚さに設定し、計測装置(M)の計測に基づいて作成した映像データにおいて目印標が視認できなければ所定の吹付厚さとなったことが確認できる。
或いは、計測装置(M)により得られた吹付直前の画像と吹付直後の画像とを比較することにより、従来公知の方法で演算することが出来る(例えば特許文献2参照)。
さらに、目印標と、計測装置(M)による前記演算とを併用して、確認しつつ吹付作業を行うことも可能である。
【0016】
本発明では、吹付用ノズル(3)を移動して吹付材を噴射するのに先立って、吹付用ノズル(3)から吹付材を吹き付ける位置の軌跡(設定された軌跡)を予め設定し、吹付用ノズル(3)を移動して吹付材を噴射する(ノズル移動工程)に際しては、吹付用ノズル(3)から吹付材を吹き付けた位置の軌跡(吹付の軌跡)が、予め設定された軌跡(設定された軌跡)と同一になる様に制御され、予め設定される吹き付ける位置の軌跡(設定された軌跡)を、例えば施工法面の水平面に対して傾斜した方向(斜め方向)に延在する軌跡(斜め方向の軌跡)にすることにより、従来技術では不可能であった斜め方向に吹付位置を移動しつつ、吹付作業を実行することが可能となる。
或いは、予め設定される吹き付ける位置の軌跡(設定された軌跡)を、例えば、特定の吹付開始位置(設定された軌跡の始点)と吹付終了位置(設定された軌跡の終点)を有し、当該吹付開始位置と吹付終了位置の間が途切れることなく且つ同一経路を重複することなく連続している(いわゆる「一筆書き」である)軌跡に設定すれば、吹付作業現場における吹付開始位置(設定された軌跡の始点)と吹付終了位置(設定された軌跡の終点)を設定することにより、特定の範囲について(作業員の労力によらない)完全自動制御によって吹付作業を実行することが可能である。
【0017】
ここで、本発明ではアタッチメント(1)における第1の部材(1-1)及び第2の部材(1-2)は相互に摺動(スライド)して伸縮するので、固化材搬送用の配管として可撓性の高いゴムホース(11)を使用し、アタッチメント(1)の収縮時と伸長時の長手方向長さの差を、ゴムホース(11)を弛ませることによって吸収する必要がある。しかし、剛性のある配管に比較して、可撓性の高いゴムホース(11)は配管抵抗が高いことが知られている。そして、ゴムホース(11)を弛ませることによりアタッチメント(1)の収縮時と伸長時の長手方向長さの差を吸収するので、ゴムホース(11)を弛ませる分だけゴムホース(11)の全長を、固定配管に比較して長くする必要がある。そのため、ゴムホース(11)により構成されている吹付材供給系統(20)では配管抵抗が大きく、従来のエア圧送に比較して配管が閉塞する可能性が高い。
それに対して、本発明で、吹付材供給系統(20)に吹付固化材用ポンプ(21)を介装し、吹付固化材用ポンプ(21)を移動可能な台車(22)に載置すれば、台車(22)を移動して吹付固化材用ポンプ(21)吐出口から吹付用ノズル(3)までの距離(吹付固化材用ポンプ21吐出口から吹付用ノズル3までのゴムホース11の長さ)を短くして、吹付材供給系統(20)における配管抵抗を小さくすることが出来る。その結果、ゴムホース(11)の閉塞を抑制することが出来る。それに加えて、吹付固化材用ポンプ(21)を移動可能な台車(22)に載置しているので、ポンプ圧送距離に施工範囲が限定されてしまうことを可能な限り避けることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態の概要を示す説明図である。
【
図2】実施形態において、アタッチメントを長手方向に伸縮する工程を示す説明図である。
【
図3】アタッチメントを揺動する工程を示す説明図である。
【
図4】板状部材に沿って吹付用ノズルを横方向に移動する工程を示す説明図である。
【
図5】板状部材に沿って吹付用ノズルを横方向に移動する機構の一例を示す説明図である。
【
図6】前記板状部材を回動する工程を示す説明図である。
【
図7】板状部材を回動する機構の一例を示す説明図である。
【
図8】板状部材を回動する機構の
図7とは異なる例を示す説明図である。
【
図10】ノズルを揺動する機構の一例を示す説明図である。
【
図12】ノズルを揺動する機構であって、
図10、
図11で示すのとは別の例を示す説明図である。
【
図13】ノズル先端を回転する機構の一例を示す説明図である。
【
図14】吹付用機械の制御装置の機能ブロック図である。
【
図15】
図14のノズル位置調整ブロックB2の詳細を示す機能ブロック図である。
【
図16】斜め方向に延在する吹付位置の軌跡の説明図である。
【
図17】特定の吹付開始位置と吹付終了位置を有し、その間が途切れることなく且つ同一経路を重複することなく連続している軌跡の説明図である。
【
図18】
図17で説明した軌跡を応用して形成された法枠の説明図である。
【
図21】図示の実施形態における吹付工法の手順を示すフローチャートである。
【
図23】実施形態における吹付材供給系統の要部を示す説明図である。
【
図24】実施形態における吹付材供給系統における変形例を示す説明図である。
【
図25】実施形態において、アタッチメントを用いることなく吹付を行う態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に
図1を参照して、本発明の実施形態の概要を説明する。
図1において、本発明の実施形態に係る吹付用機械100は、車両30(例えば、軌道帯を有する車両)と、車両30のブーム31に取り付け可能/取り外し可能なアタッチメント1を有している。そしてアタッチメント1は、アタッチメント側接続手段4によりブーム31に接続されている。
後述する様に、アタッチメント1は第1の部材1-1(車両側部材)及び第2の部材1-2(吹付用ノズル側部材)を有しており、第1の部材1-1と第2の部材1-2が相対的に摺動(スライド)することにより、アタッチメント1は長手方向に伸縮可能である。すなわち、第1の部材1-1に対して、第2の部材1-2は移動(摺動)可能である。
アタッチメント1には、長手方向と直交する方向(横方向)に延在する板状部材2と、板状部材2に沿って移動可能な吹付用ノズル3が設けられている。そして、吹付用ノズル3は、吹付作業が行われるべき法面F(施工法面)の表面形状に追随して移動する(ノズル移動工程を実行する)ように構成されている。なお
図1において、吹付用ノズル3に吹付材(固化材)を供給するゴムホース(供給ホース)が符号11で示されている。
【0020】
詳細を後述するように、
図1の吹付用機械100は、
アタッチメント1を長手方向(軸方向)に伸縮する工程(
図2参照)、
前記アタッチメント1を揺動する工程(
図3参照)、
前記板状部材2をアタッチメント1の長手方向に移動させる工程(
図2参照)、
前記板状部材2に沿って吹付用ノズル3を移動する工程(
図4、
図5参照)、
アタッチメント1の長手方向に延在する回転中心に対して、前記板状部材2を回動する(揺動及び/又は回転する場合を含む)工程(
図6~
図8参照)、
吹付用ノズル3を(吹付用ノズルを前記板状部材に取り付ける取付機構において)回動する(揺動及び/又は回転する場合を含む)工程(
図9~
図13参照)、
が実行可能である様に構成されている。上記の工程の何れかにより、吹付用ノズル3を法面Fの表面形状に追随して移動するノズル移動工程が構成される。
図1において、連接ロッド33を介して、車両30と台車22が接続されており、台車22にはコンクリートポンプ21が載置されている。
図23を参照して後述するように、コンクリートポンプ21から吐出される吹付材(固化材)をゴムホース11で吹付用ノズル3(図示しない)に圧送する距離を短くして、ゴムホース11内の閉塞の危険性を減少するためである。
【0021】
図1において、計測装置Mから法面Fに照射されるレーザー光が、矢印Lで示されている。
図14、
図21を参照して後述するが、計測装置Mの制御装置MCUで作成された映像データは、信号ラインSL1(有線または無線)を介して吹付用機械100の制御装置CUに送信される。さらに、吹付用機械100の制御装置CUの制御信号が、信号ラインSL10を介してコンクリートポンプ21に送信される。
また、
図14を参照して後述するが、制御装置CUは、コンクリートポンプ21への制御信号の他、吹付用ノズル3の位置を調整する各部材(アタッチメント1等)への制御信号、吹付材に混入するエアの供給装置(コンプレッサー等)や急結剤の供給装置への制御信号等を送信する(
図14参照)。
図1において、第2の部材1-2は第1の部材1-1に対して摺動(スライド)可能であり、以て、アタッチメント1の長手方向寸法を伸縮可能である。そして、板状部材2は第2の部材1-2の長手方向にスライド移動可能である。当該スライド移動により、吹付用ノズル3は、アタッチメント1の長手方向を往復動して、同一の吹付位置を複数回、図示の実施形態では例えば4回、通過する。同一吹付位置を通過する度毎に、吹付用ノズル3からは、吹付作業で吹き付けるべき吹付量の1/4ずつが噴射される。
【0022】
吹付用ノズル3を法面Fの表面形状に追随して移動し、吹付用ノズル3を移動するに際しては、アタッチメント1を長手方向(軸方向)に伸縮して板状部材2をアタッチメント1の長手方向に移動し、アタッチメント1を揺動し、板状部材2に沿って吹付用ノズル3を移動し、アタッチメント1の長手方向に延在する回転中心に対して板状部材2を回動し、或いは、吹付用ノズル3を回動する。
係る複数種類の動作を組み合わせて吹付用ノズル3を移動するため、吹付用ノズル3の位置及び吹付材の吹付方向の自由度が大きくなり、その制御が高精度で行われる。吹付用ノズル3が移動する際における自由度が大きくなるため、法面Fの表面形状に対して、吹付用ノズル3を高精度にて追随して移動することが出来る。そのため、不陸(凹凸)が多く複雑な形状の法面であっても、吹付用ノズル3から噴射される吹付材を法面Fの表面上に、均一厚さにて正確に吹き付けることが出来て、法面Fの表面に均一厚さの吹付層を正確に形成することが出来る。
【0023】
ここで、法面Fの各々の領域における吹付材の吹付厚さを計測するために、吹付工法を施工するべき法面に目印標(図示せず:例えばプラスチック製の黒色の目印標)を設置する。図示しない目印標の施工法面からの高さ方向寸法は、所定の吹付厚さと同一に設定されている。
吹付作業に際して、計測装置Mの計測に基づいて作成した映像データにおいて前記目印標が視認できなければ所定の吹付厚さとなったことが確認できる。
前記目印標を用いない場合には、計測装置(M)により得られた吹付直前の画像と吹付直後の画像とを比較することにより、従来公知の方法で演算することが出来る(例えば特許文献2参照)。
さらに、目印標と、計測装置(M)による前記演算とを併用して、吹付厚さを確認しつつ吹付作業を行うことも可能である。
図示の実施形態において、計測装置Mとしては、レーザー光を照射して計測を行う市販の計測装置を用いることができる。
図1において、吹付用機械100の制御装置は、例えば吹付用機械側の制御盤やPC等の情報処理装置であるが、制御盤を操作するオペレーターを意味する場合もある。
【0024】
図示の実施形態においては、
図14~
図21を参照して説明する様に、ノズル移動工程に先立って、吹付用ノズル3から吹付材を吹き付ける位置(吹付位置:吹付エリア)の軌跡を予め設定する工程を有し、前記ノズル移動工程では、吹付用ノズル3から吹付材を吹き付けた位置の軌跡(吹付の軌跡)が、予め設定された軌跡と同一になる様に制御している。
例えば、予め設定される吹付材の吹付位置の軌跡(設定された軌跡)を、後述する
図16に示す様に、施工法面の水平面に対して傾斜した方向(斜め方向)に延在する軌跡(斜め方向の軌跡)にすれば、従来技術では不可能であった斜め方向に吹付位置を移動しつつ、吹付作業を実行することが可能となる。
或いは、予め設定される吹付材の吹付位置の軌跡(設定された軌跡)を、後述する
図17(A)、
図19(B)に示す様に、吹付領域RA、RBにおいて、特定の吹付開始位置A1、B1(設定された軌跡の始点)と吹付終了位置A2、B2(設定された軌跡の終点)を有し、当該吹付開始位置A1、B1と吹付終了位置A2、B2の間が途切れることなく且つ同一経路を重複することなく連続した軌跡(いわゆる「一筆書き」の軌跡)に設定すれば、吹付作業現場における吹付開始位置(設定された軌跡の始点)と吹付終了位置(設定された軌跡の終点)のみ設定すれば、吹付材を吹き付けるべき特定の範囲について、均一の吹付厚さで且つ吹付材で被覆されていない箇所が存在しない態様で、(作業員の労力によらない)完全自動制御によって吹付作業を実行することが可能である。
ノズル移動工程において、計測装置Mにより吹付材を吹き付けるべき法面の個々の領域(吹付位置、吹付エリア)の位置情報を包含する映像データ(例えば3Dマップ)を取得し、当該映像データを活用或いは参照して、吹付用ノズル3を法面Fの表面形状に対して高精度で追随して移動させ、吹付材を吹き付けつけている状態を観察しつつ、吹付作業を実行することが可能である。
【0025】
アタッチメント1を長手方向に伸縮する工程が
図2で示されている。
図2において、アタッチメント1は、長手方向に延在する形状を有する第1の部材1-1(車両側部材)及び第2の部材1-2(吹付用ノズル側部材)を有し、第2の部材1-2を第1の部材1-1に対して、矢印S方向にスライド(摺動)することにより、アタッチメント1(第1の部材1-1、第2の部材1-2)は長手方向に伸縮することが出来る。
アタッチメント1は、第1の部材1-1の車両側端部近傍にアタッチメント側接続手段4を有しており、アタッチメント側接続手段4を介して、(アタッチメント1は)車両30のブーム31に取り付け及び/又は取り外し自在に構成されている。
図2は、アタッチメント1を最も伸長した状態を示しており、第2の部材1-2の下端部は第1の部材1-1の上端部近傍に位置している。一方、図示しないが、アタッチメント1が最短となるように収縮した状態では、第2の部材1-2の上端部は第1の部材1-1の上端部近傍に位置する。
図2において、矢印Sの長さが、第2の部材1-2の上端部の移動範囲を示している。
アタッチメント1の第2の部材1-2を第1の部材1-1に対してスライドするための機構としては、例えばフォークリフトで用いられている公知の機構を採用することが出来る。
【0026】
図2において、アタッチメント1の第2の部材1-2には、第2の部材1-2の長手方向にスライド可能(移動可能)であって、且つ長手方向と直交する方向(横方向)に延在(
図4参照)する板状部材2が取り付けられている。
図2では、単一の板状部材2が第2の部材1-2の最上方に移動した状態と、最下方に移動した状態と、最上方と最下方の中間位置に移動した状態とが示されているが、板状部材2は1個のみ設けられ、3個設けられている訳ではない。
アタッチメント1が最短となるように収縮した状態(図示せず)を含めると、板状部材2がアタッチメント1の長手方向について移動可能な範囲は、
図2に示す3つの位置の範囲の概略2倍以上の範囲となる。板状部材2を第2の部材1-2の長手方向に移動するための機構として、従来公知の機構を用いることが出来る。
板状部材2には吹付用ノズル3が取り付けられ、吹付用ノズル3は板状部材2に沿って横方向(
図2で紙面に垂直な方向)に移動可能である(
図4、
図5参照)。なお、
図2において、吹付用ノズル3に固化材(吹付材)を供給する供給ホースが符号11で示されている。
【0027】
アタッチメント1を揺動する工程が
図3で示されている。
図3において、車両30のブーム31には、アタッチメント1(の第1の部材1―1)を揺動する車両側揺動部材8が設けられている。
図3では、車両側揺動部材8によりアタッチメント1を最大15°の範囲で揺動(矢印A3参照)するように設定されるが、「最大15°」は例示であり、矢印A3方向に揺動する範囲はその他の角度に設定することが出来る。
アタッチメント1を揺動する車両側揺動部材8として、従来公知の機構を用いることが出来る。
【0028】
板状部材2に沿って吹付用ノズル3がスライド(摺動:移動)する工程が
図4に示されている。
図4において、吹付用ノズル3は板状部材2に沿って、アタッチメント1の長手方向と直交する方向(矢印A4方向)にスライド(移動)する。
図4において、板状部材2には、単一の吹付用ノズル3が、板状部材2の長手方向(矢印A4方向)の両端位置及び中央位置に位置した状態で表示されているが、吹付用ノズル3は1個のみ設けられており、3個設けられている訳ではない。
吹付用ノズル3には供給ホース11が接続されている。
吹付用ノズル3は、
図5で示す横方向移動用部材5により板状部材2に沿って移動する。
【0029】
図5において、板状部材2に配置される横方向移動用部材5は、一対のスプロケット5A、5A、スプロケット5Aにより駆動されるチェーン5B、チェーン5Bに固定されたノズル取付部材5Cを有している。ノズル取付部材5Cはチェーン5Bに固定されていると共に、板状部材2に取り付けられている角状パイプ(図示せず)に回転ローラー(図示せず)を介して取り付けられている。そしてノズル取付部材5Cには吹付用ノズル3が取り付けられている。
板状部材2に沿って吹付用ノズル3を移動する際は、一対のスプロケット5Aのうち一方を駆動源(例えば、図示しない油圧モータ)により正転或いは逆転し、それによりチェーン5Bが左右に走行する。そして、チェーン5Bに固定されたノズル取付部材5Cと共に吹付用ノズル3が
図5の左右方向(矢印A5)に移動する。ここで、
図4における矢印A4と、
図5における矢印A5は共に、吹付用ノズル3が板状部材2の長手方向(
図4、
図5の左右方向)に移動する方向を示している。
吹付用機械100のオペレーターの操作により図示しない油圧モータを停止すれば、ノズル取付部材5Cに取り付けられた吹付用ノズル3は、任意の位置に停止、固定する。
なお、
図5では吹付用ノズル3は、板状部材2の長手方向に対して垂直方向(
図5で紙面に垂直な方向)を向いて配置されているが、
図9~
図13を参照して後述する様に、吹付用ノズル3を回動(揺動及び/又は回転する場合も含む)することが出来る。
【0030】
図6は、板状部材2の回転中心軸C6を中心とした回動(矢印R1)が示されている。回転中心軸C6は、アタッチメント1の第2の部材1-2の長手方向に延在している。図示の煩雑を防ぐために、
図6ではノズル3の図示は省略している。なお、回転中心軸C6は、アタッチメント1の第2の部材1-2の長手方向と平行な方向に延在させることも可能である。
板状部材2の回動は、
図7、
図8を参照して後述する第1の回動用部材6、6-1により実行される。
【0031】
図7で模式的に示す第1の回動用部材6は、伸縮自在な第1のシリンダ6A及び第2のシリンダ6Bを備え、第1のシリンダ6Aはシリンダ取付部6Cと板状部材2における回動自在な軸支点2aを連結し、第2のシリンダ6Bはシリンダ取付部6Cと板状部材2における回動自在な軸支点2bとを連結している。
第1及び第2のシリンダ6A、6Bの伸縮量を等しい場合には、板状部材2は実線で示す回動位置P1となり、第1のシリンダ6Aを伸長して第2のシリンダ6Bを収縮すると板状部材2は回動し(矢印R2)、例えば破線で示す回動位置P2となる。第1のシリンダ6Aの伸縮量を調整することにより、板状部材2を様々な位置に固定することが出来る。矢印R2で示す回動は、
図6の矢印R1で示す回動の一態様である。
【0032】
第1の回動用部材の変形例6-1を示す
図8において、第2の部材1-2(
図8では図示せず)に取り付けられた第1の回動用部材6―1は、板状部材支持部6-1A及び取付部2cにより、板状部材2を回動自在に軸支している。板状部材支持部6-1Aは第1の回動用部材6―1の本体部の先端近傍に設けられ、取付部2cは板状部材2側の取付ブラケット2Aに設けられている。
第1の回動用部材6-1には伸縮自在なシリンダ6―1Bが設けられている。シリンダ6―1Bは、第1の回動用部材6-1本体部のシリンダ取付部6-1Cとシリンダ取付部2dとを連結している。シリンダ取付部2dは、板状部材2側の取付ブラケット2Aに設けられている。
【0033】
図8に示す様に、板状部材2のシリンダ取付部2dは、取付ブラケット2Aに設けられた取付部2c(本体部の板状部材支持部6-1A)とは、シリンダ取付部6-1Cのシリンダ伸縮方向に対してオフセットしている。そのため、シリンダ6-1Bを伸縮すると、板状部材2を回動させることが出来る(矢印R3)。矢印R3で示す回動も、
図6の矢印R1で示す回動の一態様である。
例えば、シリンダ6-1Bを実線で示す様に圧縮すると、板状部材2を
図8において実線で示す回動位置P3とすることが出来る。或いは、シリンダ6-1Bを点線で示す様に伸長すると、板状部材2を
図8において破線で示す回動位置P4とすることが出来る。そしてシリンダ6-1Bの伸縮量を調整することにより、板状部材2を様々な回動位置に固定することが出来る。
【0034】
図9は、吹付用ノズル3の回動(或いは揺動)を示している。
図9において、吹付用ノズル3は、図示しない板状部材2に取付機構9により移動可能に設けられており、矢印R4で示す様に回動(揺動及び/又は回転する場合を含む)する。
図9で符号11は吹付用ノズル3に固化材を供給する供給ホースを示す。
吹付用ノズル3は第2の回動用部材7(
図9では図示せず)により回動され、第2の回動用部材7について
図10~
図13を参照して説明する。
【0035】
図10で示す第2の回動用部材7は、吹付用ノズル3を回動する機構の一例である。
図10において、第2の回動用部材7は、本体部7Aに設けられた回転軸7Bにより円盤部7Cが回転し、円盤部7Cにはロッド7Dの一端部7DAが回動自在に軸支されている。ロッド7Dの他端部7DBは、吹付用ノズル3の基部近傍において、連結部材7Eを介して接続部材3Dに連結されている。接続部材3Dは、吹付用ノズル3と供給ホース11を接続している。
明確には図示されていないが、ロッド7Dの他端部7DBは、連結部材7Eに対して、例えば、
図11において上下方向には移動可能であるが、左右方向には移動しない様に軸支されている。他端部7DBをその様に軸支した場合には、第2の回動用部材7の円盤部7Cを回転させると(
図11の矢印R5)、円盤部7Cの回転は、ロッド7D、連結部材7E、接続部材3Dを介して吹付用ノズル3に伝達され、吹付用ノズル3は、例えば
図10において矢印R6で示す様に揺動する。揺動角度は、例えば片側で45°である。
なお、ロッド7Dの一端部7DAの円盤部7Cにおける位置(回転中心7C1との位置関係)等を調整し、且つ、ロッド7Dの他端部7DBは連結部材7Eに対して回転自在に固定(軸支)することにより、吹付用ノズル3の先端は、
図10において矢印R7で示す様に回転させることが出来る。
【0036】
吹付用ノズル3を回動する機構は
図10、
図11で示す機構に限定される訳ではなく、例えば、
図12で示すような機構であっても良い。
図12は吹付用ノズル3を回動する機構である第2の回動用部材の変形例7-1を示している。
図12において、第2の回動用部材7-1は、伸縮自在な第1のシリンダ7-1A及び第2のシリンダ7-1Bを備え、第1のシリンダ7-1Aは第1のシリンダ取付部7―1Cと吹付用ノズル3側のブラケット3Aにおける取付部3aとを連結しており、第2のシリンダ7-1Bは第2のシリンダ取付部7―1Dと吹付用ノズル3側のブラケット3Aにおける取付部3bとを連結している。
【0037】
第1及び第2のシリンダ7-1A、7-1Bの伸縮量に応じて、吹付用ノズル3は回動中心3Bに対して回動(揺動)し(矢印R8)、所定の揺動角度に保持される。第1及び第2のシリンダ7-1A、7-1Bの伸縮量を等しくすると、吹付用ノズル3は
図12における実線の位置(位置P5)に保持される。
第1のシリンダ7-1Aを収縮し、第2のシリンダ7-1Bを伸長すると、吹付用ノズル3は揺動中心3Aに対して左側(
図12で)に移動し、破線で示す揺動位置(位置P6)に位置する。一方、第1のシリンダ7-1Aを伸長し、第2のシリンダ7-1Bを収縮すると、吹付用ノズル3は揺動中心3Aに対して右側(
図12で)に移動し、破線で示す揺動位置(位置P7)となる。そして、第1のシリンダ7-1A、第2のシリンダ7-1Bの伸縮量を調整することにより、吹付用ノズル3を様々な揺動位置とすることが出来る。
図12において、吹付用ノズル3の揺動角度は、例えば片側で15°(両側合計で30°の揺動範囲)である。
【0038】
吹付用ノズル3を回動については、
図10~
図12で示す様な揺動に加えて、吹付用ノズル3の先端が小円の軌跡を描くように回転させる場合も含む。
図13は、吹付用ノズル3の先端が小円の軌跡を描くように回転させる第2の回動用部材の第2の変形例7-2を示している。
図13において、第2の回動用部材7-2は、本体部7-2Aに設けられた回転軸7-2Bに第1の円盤部7-2Cが回転自在に軸支され、第1の円盤部7-2Cには第2の円盤部7-2Dが軸部7-2DAで回転自在に軸支されている。第1の円盤部7-2Cの回転中心7-2CAは第1の円盤部7-2Cの中心(円形の中心点)に対してオフセットされている。
第2の円盤部7-2Dの端部7-2DB(
図13で上端)は接続部材7-2Eに連結されており、接続部材7‐2Eには吹付用ノズル3の支持部材3Eが固定されている。
【0039】
図13において、第1の円盤部7-2Cが回転軸7-2CAを中心に回転すると(矢印R9)、第2の円盤部7-2Dが偏芯回転し、当該偏芯回転は、接続部材7-2E、支持部材3Eを介して吹付用ノズル3に伝達され、吹付用ノズル3の先端は小円の軌跡を描くように回転する(矢印R12)。
第1の円盤部7-2Cの回転中心7-2CAのオフセット量、第2の円盤部7-2Dの軸支位置7-2DA等を調整することにより、吹付用ノズル3の先端の回転R12の回転半径等を調整することが出来る。
なお、図示の簡略化と説明を平易にするため、
図10と
図13では、実機に対して上下逆の状態で表示されている。
【0040】
次に、機能ブロック図である
図14を参照して、吹付用機械100の制御装置CUについて説明する。
上述した様に、吹付用機械100の制御装置CUは、ノズル移動工程に先立ち吹付用ノズル3から吹付材を吹き付ける位置の軌跡(設定された軌跡、経路)を予め設定する機能を有し、ノズル移動工程において、吹付用ノズル3から吹付材を吹き付けた位置の軌跡(吹付位置の軌跡、実際の軌跡)が、前記予め設定された軌跡(経路)と同一になる様に制御する機能を有する。
そして、制御装置CUは、アタッチメント1の長手方向寸法の伸縮、板状部材2の第2の部材1-2における長手方向の移動、板状部材2の長手方向における吹付用ノズル3の移動、板状部材2の回動、吹付用ノズル3の回動、第1の部材1-1の揺動を実行する機能を有し、アタッチメント1等の部材、吹付材等の供給手段に制御信号を送信する機能を有している。
図14において、吹付用機械100の制御装置CUは、吹付エリア特定ブロックB1、軌跡設定ブロックB10、ノズル位置調整ブロックB2、吹付量チェックブロックB3、吹付量決定ブロックB4、エア増減決定ブロックB5、制御信号発生ブロックB6を有している。ノズル位置調整ブロックB2の詳細については、
図15を参照して後述する。
【0041】
吹付エリア特定ブロックB1は、計測装置Mから、信号ラインSL1を介して、吹付材を吹き付けるべき法面F或いはその個々の領域(エリア)の映像データ(例えば3Dマップ)を取得する機能を有する。当該映像データには当該吹付領域(エリア)の位置情報が包含されている。
吹付エリア特定ブロックB1は、取得した前記映像データに基づいて吹付位置を特定する機能を有している。当該吹付位置の特定に際しては、従来公知の技術を採用することが出来る。
吹付エリア特定ブロックB1により特定された吹付位置の情報は、信号ラインSL2を介してノズル位置調整ブロックB2に送信される。
【0042】
制御装置CUの外部には、吹付作業に先立ち「吹付位置の軌跡を設定するための情報(軌跡の設定に関する情報)」を入力する入力装置CU1が設けられている。入力装置CU1はPC等の情報処理装置により構成されている。なお、入力装置CU1は
図1には図示されていない。
「吹付位置の軌跡の設定に関する情報」として、例えば、吹付の範囲、軌跡のパターン、吹付開始位置(始点)、吹付終了位置(終点)、必要な吹付材の吹付厚さに応じた単位時間当たりの吹付量、ノズル移動速度、その他である。軌跡のパターンとしては例えば、後述する
図16に示す斜め方向に吹付位置の軌跡が延在するパターン、
図17(A)に示すパターン、
図18、
図19(B)、
図20に示すパターン、その他がある。
軌跡設定ブロックB10は、入力装置CU1から、信号ラインSL13を介して、事前に作業者が入力した「吹付位置の軌跡の設定に関する情報」を取得する。そして、軌跡設定ブロックB10は、取得した「吹付位置の軌跡の設定に関する情報」に基づき、吹付材を吹き付ける位置の軌跡を予め設定する機能を有している。吹付位置の軌跡の設定については、
図17~
図20を参照して後述する。
軌跡設定ブロックB10により設定された吹付材を吹き付ける位置の軌跡の情報は、信号ラインSL14を介してノズル位置調整ブロックB2に送信される。
【0043】
ノズル位置調整ブロックB2は、軌跡設定ブロックB10により設定された吹付材吹付位置の軌跡の情報と、吹付エリア特定ブロックB1により特定された吹付位置の情報に基づき、吹付位置の軌跡(実際の吹付の軌跡)が、予め設定された軌跡と同一になる様に調整する(制御する)機能を有している。
そして、当該吹付を実行するために最適なノズル位置に調整する(制御する)機能を有している。具体的には、最適なノズル位置に調整するため、アタッチメント1等の各部材(
図1~
図13に示す部材)の動作、位置を決定し、アタッチメント1等の各部材に制御信号を送信する機能を有している。
アタッチメント1等の各部材の動作、位置は、部材毎に、ノズル位置調整ブロックB2の各構成ブロック(
図15のアタッチメント長手方向位置調整ブロックB21~車両移動ブロックB27)によりそれぞれ決定される。
なお、ノズル位置調整ブロックB2(及び/或いは吹付量チェックブロックB3)による制御において、吹付エリア特定ブロックB1から取得した吹付位置の情報は、吹付位置における吹付厚さが所定の厚さに達したこと、すなわち、当該吹付位置の吹付状況を確認し、当該吹付位置に更に吹付を行うことが必要か否かを確認するため等に利用される。
【0044】
図14に示す吹付量チェックブロックB3~制御信号発生ブロックB6の説明に先立ち、
図15に示すノズル位置調整ブロックB2(の各構成B21~B27)における各機能ブロックについて説明する。
図15において、ノズル位置調整ブロックB2は、アタッチメント長手方向位置調整ブロックB21、アタッチメント揺動角度調整ブロックB22、板状部材位置調整ブロックB23、ノズル横方向位置調整ブロックB24、板状部材回動調整ブロックB25、ノズル回動調整ブロックB26、車両移動ブロックB27を有している。
アタッチメント長手方向位置調整ブロックB21は、アタッチメント1の第2の部材1-2を第1の部材1-1にスライド(摺動)して(
図2の矢印S方向)、アタッチメント1(第1の部材1-1、第2の部材1-2)を長手方向に伸縮させて、アタッチメント1の長手方向位置を調整する機能を有している。アタッチメント1(第2の部材1-2)の長手方向位置を調整することにより、第2の部材1-2に取り付けられる板状部材2(における吹付用ノズル3)のアタッチメント長手方向位置を調整している。
【0045】
アタッチメント揺動角度調整ブロックB22は、車両30に設けられた車両側揺動部材8(
図3)を作動して、第1の部材1-1(及び第1の部材1-2に接続される第2の部材1-2)を揺動し(
図3の矢印A3)、その揺動角度を調整する機能を有している。第1の部材1-1を揺動する角度範囲は、例えば
図3に示す様に最大15°の範囲である。但し、前記揺動する角度範囲は、15°に限定される訳でなく、その他の角度に設定することも出来る。第1の部材1-1の揺動角度を調整することにより、(第2の部材1-2の)板状部材2における吹付用ノズル3の揺動位置、すなわち、アタッチメント1が車両30のブーム31に対してどの程度折れ曲がる(或いは傾く)のかを調整することが出来る。
【0046】
図2、
図4を参照して上述した様に、アタッチメント1の第2の部材1-2には板状部材2が取り付けられており、板状部材2はアタッチメント1の長手方向にスライド可能(移動可能)で、且つ、アタッチメント1の長手方向と直交する方向(横方向)に延在(
図4参照)している。
図15において、板状部材位置調整ブロックB23は、板状部材2を第2の部材1-2の長手方向(
図2の矢印S方向)に移動し、アタッチメント1の長手方向における板状部材2の位置を調整する機能を有している。これにより、板状部材2に取り付けられる吹付用ノズル3のアタッチメント1の長手方向位置も調整される。
上述した様に、吹付用ノズル3は板状部材2に取り付けられ、横方向移動用部材5を作動することにより、吹付用ノズル3を板状部材2の長手方向に沿って(
図4で矢印A4の方向)に移動可能である。ノズル横方向位置調整ブロックB24は、
図4、
図5で示す様に、吹付用ノズル3を板状部材2の長手方向に沿って移動した際に、板状部材2の長手方向における吹付用ノズル3の位置を調整する機能を有している。
【0047】
図15において、板状部材回動調整ブロックB25は、に示す様に、第1の回動用部材6或いは第1の回動用部材6-1を作動して、アタッチメント1の長手方向に延在する回転中心に対して、板状部材2を回動し(
図6~
図8の矢印R1~R3)(揺動及び/又は回転する場合を含む)、板状部材2の回動方向における位置を調整し、以て、吹付用ノズル3の(アタッチメント1の長手方向に延在する回転中心に対する)回動方向位置を調整する機能を有している。
ノズル回動調整ブロックB26は、第2の回動用部材7、7-1或いは7-2を作動して、吹付用ノズル3を回動し(揺動及び/又は回転する場合を含む)、吹付用ノズル3の回動方向における位置を調整する機能を有している。
上述した様に、吹付用ノズル3は板状部材2に取付機構9により移動可能に取り付けられており(
図9参照)、第2の回動用部材7、第2の回動用部材7-1或いは第2の回動用部材7-2を作動することにより回動し(揺動及び/又は回転する場合を含む)、以て、吹付用ノズル3の回動方向位置を調整する。ここで、吹付用ノズル3の回動は、
図10~
図13に例示した通りであり、例えば
図10において矢印R6で示す揺動(揺動角度は、例えば片側で45°)、
図10において矢印R7で示す回転、
図12において矢印R8で示す揺動(揺動角度は、例えば片側で15°)、
図13において矢印R12で示す回転の何れかである。
【0048】
図15において、車両移動ブロックB27は、吹付用機械100を車両30により移動する機能を有している。当該機能を実行するに際して、吹付用機械100(及び車両30)のオペレーターが運転しても良いし、或いは、車両30が自動運転を行う様に構成することも可能である。
ノズル位置調整ブロックB2を構成する各機能ブロックB21~B27で調整し、決定したノズル位置を、軌跡設定ブロックB10で設定した吹付位置の軌跡と同一になるノズル位置に調整するための制御信号は、信号ラインSL3(
図14)を介してアタッチメント1等の各対象部材(
図1~
図13に示す各部材)に送信される。
【0049】
再び
図14において、ノズル位置調整ブロックB2は、吹付エリアにおける吹付を実行するためノズル位置、移動速度に関する信号を、信号ラインSL4を介して制御信号発生ブロックB6(
図14)に送信する機能を有している。
図14において、吹付量チェックブロックB3は、信号ラインSL5を介して、吹付材を吹き付けるべき法面の個々の領域(エリア)の映像データ(例えば3Dマップ、当該エリアの位置情報が包含される)を計測装置Mから取得する機能を有する。
また、吹付量チェックブロックB3は、取得した前記映像データに基づき当該吹付エリアの吹付状況を確認し、当該吹付エリアに更に吹付を行うことが必要か否かをチェックする機能を有している。
更に吹付を行うことが必要か否かをチェックする際には、
図1を参照して上述した様に、例えば、吹付工法を施工するべき法面Fに所定の(目標の)吹付厚さに応じて設置された目印標(プラスチック製の黒色の目印標)が視認できない場合には、所定の吹付厚さであると判断して、更なる吹付は不要と判断する。或いは、更に吹付を行うことが必要か否かをチェックする際には、計測装置Mにより得られた前記映像データに基づいて、従来技術を用いて判断することも出来る。
吹付量チェックブロックB3によるチェック結果(更に吹付を行うことが必要か否かの判断結果)は、信号ラインSL6を介して吹付量決定ブロックB4に送信される。
【0050】
図14において、吹付量決定ブロックB4は、吹付量チェックブロックB3から当該吹付位置に更に吹付を行うことが必要か否かの結果に関する情報を取得し、併せて吹付材を吹き付けるべき法面の領域(エリア)の映像データを取得し、吹付量を決定する機能を有している。
当該吹付量決定の際には、吹付直前の画像と吹付直後の画像とを比較することにより、従来技術に係る方法で演算することが出来る。さらに、目印標の視認状況と前記演算とを併用して、吹付量を決定することも出来る。吹付量決定の結果、吹付量の維持、増加或いは減少、吹付量をゼロにする(吹付を停止する)の何れかが決定される(吹付量の決定)。吹付量決定ブロックB4により決定された吹付量の情報(吹付量の決定)は、信号ラインSL7を介して制御信号発生ブロックB6に送信される。
【0051】
図22を参照して後述するが、供給ホース11(
図1、
図22、他)により圧送されて吹付用ノズル3から噴射される吹付材(固化材、コンクリート等)は、スランプ値を大きく設定しているので、そのままの状態では法面Fに付着しない。そのため、吹付材供給系統20における吹付用ノズル3の噴射直前で、エアと急結剤を吹付材に混入して噴射している。急結剤を混入することにより、吹付材のスランプ値が大きくても吹付用ノズル3から吹き付けられた材料は法面に付着して、固化する。
図14において、エア増減決定ブロックB5は、計測装置Mから、信号ラインSL8を介して吹付位置(領域:エリア)の映像データ(吹付位置の位置情報等を包含する)を取得し、当該映像データに基づき、吹付材にエアと急結剤を混入する必要があるか否かを決定する機能と、エアと急結剤を混入する必要がある場合にはエア及び急結剤混入量の増減や混入量を決定する機能を有している。
吹付材にエアと急結剤を混入させる必要があるか否かを決定する際、及び/又は、エアと急結剤を混入させる必要がある場合における混入量の増減、混入量を決定する際には、計測装置Mからの前記映像データ(例えば3Dマップ)で吹付位置における吹付材の付着状況を確認し、当該付着状況に基づいて実行される。
エア増減決定ブロックB5による決定結果(エアと急結剤を混入するか否かの決定結果、エアと急結剤を混入させる必要がある場合における混入量の増減と混入量の決定結果)は、信号ラインSL9を介して制御信号発生ブロックB6に送信される。
【0052】
上述した様に、制御信号発生ブロックB6はノズル位置調整ブロックB2から、吹付エリアの吹付を実行するためのノズル位置、移動速度に関する信号を受信し、吹付量決定ブロックB4から決定された吹付量の情報(吹付停止に関する情報を含む)を受信し、さらに、エア増減決定ブロックB5から決定結果(エアと急結剤を混入するか否かの決定結果、エアと急結剤を混入させる必要がある場合における混入量の増減と混入量の決定結果)を受信する。
【0053】
図14において、制御信号発生ブロックB6は、ノズル位置調整ブロックB2から「吹付エリアの吹付を実行するためのノズル位置、移動速度に関する信号」を受信した場合に、吹付量決定ブロックB4からの吹付量の決定結果も踏まえ、吹付材供給系統20のコンクリートポンプ21に対する制御信号を、信号ラインSL10を介して送信する機能を有している。当該制御信号を受信したコンクリートポンプ21は、固化材配管11(ゴムホース)を介して所定量(吹付量決定ブロックB4で決定された量)の吹付材(固化材)を吹付用ノズル3に供給する。
また、制御信号発生ブロックB6は、ノズル位置調整ブロックB2から「吹付エリアの吹付を実行するためのノズル位置、移動速度に関する信号」を受信した場合、コンクリートポンプ21に制御信号を送信すると共に、エア供給装置24に対する制御信号を信号ラインSL11を介して送信すると共に、急結剤供給装置25を作動する制御信号を信号ラインSL12を介して送信する機能を有している。
明確には図示されていないが、エア供給装置24は、例えばコンプレッサーで構成される。
【0054】
図14において、制御信号発生ブロックB6からの前記制御信号に基づき、エア供給装置24は、エア配管13(ゴムホース、
図22参照)を介して、エア増減決定ブロックB5で決定された所定量のエアを供給し、急結剤供給装置25は、急結剤配管14(ゴムホース、
図22参照)を介して、エア増減決定ブロックB5で決定された所定量の急結剤を供給する。
エア供給装置24から供給されたエアと急結剤供給装置25から供給された急結剤は、
図22を参照して後述する様に、吹付材供給系統20における吹付用ノズル3の直前(直ぐ上流側)で、急結剤リング12を介して吹付材に混入される。
【0055】
次に
図16を参照して、吹付用ノズル3からの吹付位置の軌跡(吹付の軌跡、実際の軌跡)が、施工法面の水平面に対して傾斜した方向(斜め方向)に延在する場合(吹付位置が斜め方向の移動する場合)について説明する。
図16に示す軌跡(斜め方向の軌跡)も「軌跡のパターン」の一態様である。
図16において、施工法面における水平方向をH、施工法面における上下方向をV、(吹付用ノズル3が移動する)軌跡が延在する方向の傾斜角度θ、吹付用ノズル3の施工法面の水平方向の移動速度V
X、吹付用ノズル3の施工法面の上下方向の移動速度V
Yとした場合、以下の関係が成立する。
軌跡が延在する方向の傾斜角度 θ=tan
-1(Vy/Vx)
吹付用ノズル3の上下方向の移動速度 Vy=Vxtanθ
吹付用ノズル3の水平方向の移動速度 Vx=Vy/tanθ
従って、吹付用ノズル3の水平方向の移動速度Vxと上下方向の移動速度Vyを調整、制御すれば、軌跡が延在する方向の傾斜角度θを調整、制御することが出来る。換言すれば、パラメータθ、Vx、Vyの何れか二つを設定すれば、残り一つのパラメータは、上記式により演算することが出来る。
吹付用ノズルの上下方向の移動速度Vyは、例えば板状部材2の(アタッチメント2)第2の部材1-2に対する移動速度(
図2参照)、水平方向の移動速度Vxは、吹付用ノズル3の板状部材2に対する移動速度(
図4参照)である。
【0056】
次に
図17を参照して、特定の吹付開始位置(設定された軌跡の始点)と吹付終了位置(設定された軌跡の終点)を有し、当該吹付開始位置と吹付終了位置の間が途切れることなく且つ同一経路を重複することなく連続している(いわゆる「一筆書き」である)軌跡について説明する。
図17(A)において、施工領域αCを吹付材で被覆するに際して、吹付開始位置A1から水平方向(
図17(A)における左右方向)の経路H12を辿って、符号A2で示す位置まで吹付位置が移動する。吹付位置が経路H12(A1からA2までの軌跡)を移動する間に、経路H12に沿った幅W(
図17(A)における上下方向の幅)の範囲は、厚さtの吹付材で被覆される。ここで、符号Wは、吹付用ノズル3から吹付材を噴射した際に施工法面に衝突して広がる吹付材の幅方向寸法である。
ここで、設定された軌跡に沿って吹き付ける作業が一回のみであれば、吹付材の厚さtが施工領域αCの吹付材被覆層の設計厚さ以上にする。一方、設定された軌跡に沿って吹き付ける作業を複数回繰り返すのであれば(例えば4回)、一回で吹き付けられる吹付材の厚さtは、施工領域αCの吹付材被覆層の設計厚さctに対して、
t≧(ct/作業の繰り返し回数) となり、
繰り返し回数が4回であれば t≧ct/4 である。
【0057】
吹付用ノズル3による吹付位置が符号A2で示す位置(施工領域αCの水平方向縁部)に到達したならば、吹付材の吹付を一時中止して吹付用ノズル3を
図17(A)における上下方向下方の符号A3で示す位置まで、符号Lで示す距離だけ移動する。すなわち、位置A2~A3間の距離Lの経路V23においては、吹付材の吹付は行わない。
ここで、経路V23の距離L(吹付用ノズル3の移動距離)は、施工法面に衝突して広がる吹付材の幅方向寸法W以下である(L≦W)。施工領域αCに吹付材で被覆されていない領域が生じるのを防止するためである。
位置A3に到達したならば、吹付材の噴射を再開しつつ、吹付用ノズル3を水平方向(
図17(A)の左右方向の左方)に位置A4まで移動して(経路H34に沿って移動し)、幅Wの領域を吹付材で厚さ寸法tだけ被覆する。位置A4に到達したならば、吹付材の噴射を停止して、
図17(A)の上下方向を下方に経路V45に沿って距離Lだけ移動し、位置A5まで移動する。
【0058】
位置A5に到達したならば、吹付材の噴射を再開しつつ、経路H56に沿って吹付用ノズル3を水平方向(
図17(A)の左右方向の右方)に吹付終了位置である位置A6まで移動して、幅Wの領域を吹付材で厚さ寸法tだけ被覆する。
位置A6に到達し、設定された軌跡に沿って吹き付ける作業が一回のみであれば、施工領域αCの吹付作業が終了する。
一方、設定された軌跡に沿って吹き付ける作業を複数回(例えば4回)繰り返す場合には、繰り返し回数が所定回数に到達していなければ、再び吹付開始位置A1に戻り、経路H12、V23、H34、V45、H56に沿った軌跡で吹付用ノズル3を移動しつつ、施工領域αCに吹付材を吹き付ける。
図17(A)を参照して説明した吹付用ノズル3の移動軌跡は、
図17(B)で示す通りである。
【0059】
図17では、施工法面の一部領域である施工領域αCの全面を吹付材で被覆しているが、図示の実施形態では、法枠を形成するのに適用することが可能である。
図17において、経路V23、V45においても幅Wの領域を被覆する様に吹付材を噴射し、且つ、V23、V45における移動距離
図18(A)において、法枠間の上下方向距離を
図17(A)における寸法Lに設定すれば、吹付用ノズル3が
図17で示す様に位置A1~A6まで移動すれば、
図18(A)において、ハッチングを付して示す領域に幅W、厚さtの吹付材が被覆される。これにより、
図18(A)において、ハッチングを付して示す幅W、厚さtの法枠N1が形成される。
そして、吹付開始位置A1を適宜設定することで、
図18(A)で示す法枠Nが形成される。
【0060】
図18(A)の法枠Nは、水平方向(
図18(A)の左右方向)と垂直方向(
図18(A)の上下方向)に延在しているが、
図18(B)で示す様に、斜め方向に延在した法枠を形成することが可能である。
図16を参照して説明した様に、吹付用ノズル3の移動方向を水平方向或いは垂直方向に対して斜め方向に設定し、幅Wの領域を被覆する様に吹付材を噴射する様に設定し、且つ、
図18における経路V23、V45における移動距を寸法Lに設定すれば、
図18(B)で示す様に、法枠N2は斜め方向に延在する。
【0061】
図17、
図18で示す軌跡においては、一つの軌跡を辿る間に、紙面の上下方向に延在する経路V23、V45においては吹付用ノズル3からの吹付材の噴射を停止する必要がある。
しかし、
図19、
図20で示す様な経路であれば、一つの軌跡を辿る間であれば吹付材の噴射を停止する必要は無い。
図19(A)において、吹付材を吹き付ける位置の軌跡KA(設定された軌跡)は、吹付開始位置A1(設定された軌跡の始点)と吹付終了位置A2(設定された軌跡の終点)を有している。そして、吹付開始位置A1と吹付終了位置A2の間が途切れることなく且つ同一経路を重複することなく連続した軌跡(一筆書き状の軌跡)を描いて、吹付作業を行うべき範囲RA(吹付領域)全体を、均一に吹付材で被覆する。
また、
図20で示す軌跡のパターンも、吹付材を吹き付ける位置の軌跡KB(設定された軌跡)は、吹付開始位置B1(設定された軌跡の始点)と吹付終了位置B2(設定された軌跡の終点)を有しており、吹付開始位置B1と吹付終了位置B2の間が途切れることなく且つ同一経路を重複することなく連続する(一筆書き状の軌跡を描く)。それにより、吹付作業を行うべき範囲RB(吹付領域)全体を、均一に吹付材で被覆する。
【0062】
図19(A)において、吹付材を吹き付けた吹付位置(吹付材で被覆された箇所)は概略円形になるが、その曲率半径W/2は、
図17、
図18における吹付材が広がる幅Wの1/2である。吹付作業を行うべき領域RCを決定して、噴射開始位置A1、噴射終了位置A2、距離L1~L6を設定することにより、吹付位置の軌跡KAを決定することが出来る。
噴射開始位置A1、噴射終了位置A2、距離L1~L6を設定するに際しては、領域RCにおいて吹付材が被覆しない部分が生じることを防止しなければならない。
図19(A)において、噴射開始位置A1と領域RAの隅部RA1との距離L1がW/2よりも大きければ、隅部RA1近傍には吹付材が到達しない。そのため、噴射開始位置A1と領域RAの隅部RA1との距離L1を設定する際には、条件 L1≦W/2 を充足する必要がある。
また、領域RAの上縁部RAe(
図19(B)参照)から噴射位置(軌跡KA)までの距離L2はW/2以下(L2≦W/2)でないと、上縁部RAe近傍に吹付材で被覆されない部分が出来てしまう。
【0063】
軌跡KAの折り返す位置KAdについては、
図19(B)で示す様に、領域RAの右縁部RArから距離W/2だけ離れていると、領域RAの右隅部RAreに、吹付材が被覆されない部分VA2が出来てしまう。従って、軌跡KAの折り返す位置KAdは、領域RAの隅部が吹付材で確実に被覆される様に設定されることが好ましい。例えば、領域RAの右隅部RAreから折り返し位置KAdまでの距離Ld(
図19(A)参照)は、W/2以下であれば(Ld≦W/2)であれば、領域RAの右隅部RAreは確実に吹付材で被覆される。その場合、噴射開始位置A1、距離L1、L2も、
Ld≦W/2 という条件を充足する様に設定される。
軌跡KAにおいて、
図19(A)、
図19(B)の左右方向の経路の間隔L4については、吹付材が被覆されない部分や厚さ寸法が所定の寸法未満にならない様に、
L4≦W/2 とする。
【0064】
噴射終了位置A2についても、噴射開始位置A1と同様に、
図19(A)において、領域RAの隅部RAcとの距離L6が L6≦W/2 の条件を充足する様に設定されるのが好ましい。
この様に設定すれば、吹付位置の軌跡が
図19(A)で示す様な一筆書き状の軌跡を描くことにより、吹付領域RAの全域に吹付材を吹き付けることが出来る。
なお、吹付材で被覆された箇所の曲率半径W/2は、必要な吹付材の吹付厚さに応じた単位時間当たりの吹付量、ノズル移動速度を決定することにより行うことが可能である。
【0065】
図19(A)において、吹付開始位置A1(始点)と、吹付終了位置A2(終点)は、図示とは逆にすることが出来る。
例えば、
図19(A)では軌跡は最上部では左側から右側に移動し、その直下では右側から左側に移動しているが、吹付開始位置A1(始点)と吹付終了位置A2(終点)の位置を変更しても良い。また、最上部の軌跡は右側から左側に移動し、その直下の軌跡は左側から右側へ移動しても良い。
さらに
図20で示す様に、吹付領域RBにおける最も左側では下から上に吹付用ノズル3を移動し、その右側では上から下に移動することも出来る。或いは、吹付開始位置B1(始点)と吹付終了位置B2(終点)の位置を変更しても良い。そして、最も左側では上から下に移動し、その右側では下から上に移動する様に設定しても良い。
図20において、吹付領域RBの隅部RB1から吹付開始位置B1までの距離L7は L7≦W/2 に設定し、
経路間の幅L8も L8≦W/2 に設定し、
折り返し位置KBdと領域RBの下縁部RBeとの距離L9(上方の折り返し位置と上縁部との距離と同じ)も L9≦W/2 に設定し、
隅部RB2から吹付終了位置B2までの距離L10も L10≦W/2 に設定するのが好ましい。
【0066】
図示の実施形態における吹付用機械100を用いた吹付工法の手順について、主として
図21を参照して説明する。
図21において、ステップS1では、吹付材を吹き付けるべき領域(エリア)を特定する。吹付エリアの特定に際しては、施工開始時点で既に決定されている場合は、決定されたエリアとなる。
吹付エリアの特定に際して、吹付用機械100の制御装置CU(
図14)が計測装置Mで作成したされた映像データに基づき特定することも出来る。吹付エリアの特定は、制御装置CUの吹付エリア特定ブロックB1(
図14)で行われる。
ステップS2では、吹付用ノズル3から吹付材を吹き付ける(吹付位置の)軌跡を設定する。ステップS2の軌跡の設定は、制御装置CUの軌跡設定ブロックB10(
図14)は、入力装置CU1(
図14)から取得した「吹付位置の軌跡の設定に関する情報」に基づいて実行される。「吹付位置の軌跡の設定に関する情報」は予め作業者により入力された情報であり、吹付の範囲、軌跡のパターン(
図16~
図20参照)、吹付開始位置(始点)、吹付終了位置(終点)、必要な吹付材の吹付厚さに応じた単位時間当たりの吹付量、ノズル移動速度、その他である。
図21では明示されていないが、軌跡の設定に際しても、計測装置M(
図1)からの映像データを参照することが出来る。
【0067】
図21において、ステップS3では、ステップS2で設定した吹付位置の軌跡の通りに吹付作業を行う様に、吹付用ノズル3の位置、移動速度等を設定(決定)する。ステップS3の吹付用ノズル3の位置、移動速度等の設定に際して、ノズル位置調整ブロックB2(の各構成ブロックB21~B27、
図14、
図15)は、軌跡設定ブロックB10から取得した吹付位置の軌跡(設定軌跡)に基づいて実行する。
ステップS4では、ステップS3で吹付用ノズル3の位置、移動速度が、設定された吹付位置の軌跡と同一の軌跡を描いて吹付が行われる様に決定されたことに基づいて、ステップS2で設定された吹付位置の軌跡に沿って吹き付けを実行する。
ステップS4の吹き付けに際して、
図14、
図15を参照して上述した様に、制御信号発生ブロックB6は、ノズル位置調整ブロックB2からノズル位置、移動速度に関する信号を受信すると、コンクリートポンプ21、エア供給装置24、急結剤供給装置25のそれぞれに制御信号を送信する。
制御信号を受信したコンクリートポンプ21、エア供給装置24、急結剤供給装置25は、(吹付量決定ブロックB4、エア増減決定ブロックB5で決定された)所定量の吹付材(固化材)、エア、急結剤の各々を、固化材配管11、エア配管13、急結剤配管14にそれぞれ供給し、当該供給されたエア及剤は吹付用ノズル3の噴射直前で吹付材に混入される。当該エア及び急結剤の吹付材への混入については、
図22を参照して詳述する。
【0068】
図21において、ステップS5では、吹付エリア(吹付位置、吹付箇所)における吹き付け厚さを判定する。この判定結果に基づき吹付材を供給するコンクリートポンプ21の制御を実行する。
吹付エリアにおける吹き付け厚さ判定は、吹付量チェックブロックB3、吹付量決定ブロックB4が、吹付箇所(吹付領域、吹付位置)の映像データ(例えば3Dマップ)に基づき実行する。
吹付エリアにおける吹き付け厚さの判定結果等に基づき、吹付量決定ブロックB4は吹付量(吹付量の増減、吹付停止を含む)を決定し、制御信号発生ブロックB6はコンクリートポンプ21に制御信号を送信する。コンクリートポンプ21は、前記制御信号に基づき、固化材を吹付用機械100に供給する。
ステップS6では、吹付材に混入するエアと急結剤の混入量を制御する(混入量の増減、混入不要の場合を含む)。
エア量、急結剤量の制御に際して、
図14を参照して上述した様に、エア増減決定ブロックB5は、吹付箇所の映像データに基づき、吹付材に混入するエアと急結剤の混入量を決定し(混入量の増減或いは維持の決定、混入停止の決定を含む)、制御信号発生ブロックB6はエア供給装置24及び急結剤供給装置25に制御信号を送信する。
エア供給装置24及び急結剤供給装置25は当該制御信号に基づき、決定された量のエア及び急結剤を供給し、当該供給されたエア及び急結剤は、吹付用ノズル3の噴射直前で、吹付材に混入される。そしてステップS7に進む。
【0069】
図21において、ステップS7では、吹付作業を終了するか否かを判断する。当該判断は、吹付目標達成の程度、予定された作業時間、その他を考慮して制御装置CUにより決定される。その場合、吹付目標達成の程度、予定された作業時間、その他の指標は予め吹付用機械100の制御装置CUに入力されており、制御装置CUにより自動的に判断が可能である。ただし、ステップS7については吹付用機械100のオペレーターが判断することも可能である。
ステップS7において、吹付作業を終了する場合(ステップS7が「Yes」)は吹付作業が終了し(「エンド」)、吹付作業を終了しない場合(ステップS7が「No」:吹付作業を継続する)はステップS1に戻り、ステップS1以下を繰り返す。
図21において、ステップS4はステップS5及びステップS6に先行して実行される様に示されているが、ステップS4をステップS5及びステップS6よりも後に実行することが可能である。また、ステップS4、ステップS5、ステップS6を同時に実行することも可能である。
【0070】
次に主として
図22~
図24を参照して、図示の実施形態における吹付材供給系統20について説明する。
図示の実施形態において、コンクリートポンプ21(
図23、
図24参照)から供給ホース11により圧送されて吹付用ノズル3から噴射される固化材(コンクリート等)は、硬化により吹付材供給系統を閉塞することを防止するためスランプ値が大きく、そのままの状態では、法面に付着しない。
そのため、吹付材供給系統20における吹付用ノズル3の噴射直前の位置に急結剤リング12を設け、急結剤リング12でエアと急結剤を固化材に混入して噴射している。急結剤を混入することにより、固化材のスランプ値が大きくても、吹付用ノズル3から吹き付けられた材料が法面で固化する。
【0071】
図22において、吹付材供給系統20は、コンクリートポンプ21から固化材を吹付用ノズル3に供給する固化材配管11(ゴムホース)と、吹付用ノズル3の上流側に隣接する位置で固化材配管11に接続する(合流する)様に配置された急結剤リング12と、エア供給装置24から急結剤リング12の上流側にエアを供給するエア配管13(例えばゴムホース)と、急結剤供給装置25から急結剤リング12の上流側に急結剤を供給する急結剤配管14(例えばゴムホース)を有している。
急結剤リング12は、固化材配管11に合流する合流部12Aと、エア配管13との接続部12Bと、急結剤配管14との合流部12Cを備えている。
コンクリートポンプ21から固化材配管11により圧送される固化材には、急結剤リング12の合流部12Aにおいてエアと急結剤が混入され、当該エアと急結剤が混入された固化材(吹付材)は吹付用ノズル3から施工法面に対して噴射される。
【0072】
図示の実施形態では、
図2で示す様に、アタッチメント1(第1の部材1-1、第2の部材1-2)が伸縮する。アタッチメント伸長時と収縮時の長手方向寸法の差を吸収するため、可撓性の高いゴムホース11(固化材配管)を使用して、アタッチメント収縮時にはゴムホース11を弛ませて対応している。しかし、アタッチメント伸長時に対応して配管抵抗の大きいゴムホース11の全長を長くすると、ゴムホース11内における閉塞の可能性が大きくなる。
そのため図示の実施形態では、
図23で示す様に、ミキサー車23で製造された吹付材(固化材)をゴムホース11で吹付用ノズル3(図示しない)に圧送するためのコンクリートポンプ21(吹付固化材用ポンプ)を台車22に載置している。台車22を吹付工法の施工現場近傍まで移動させて、吹付用ノズル3に近接する位置に台車22を移動すれば、コンクリートポンプ21から吹付用ノズル3までの距離(ゴムホース11の全長)を短くすることが出来て、以て、ゴムホース11内で固化材が固化して閉塞する危険性を減少することが出来る。この場合、例えば
図1で示す様に、連接ロッド33を介して、車両30と台車22を接続することが出来る。
図示の実施形態において、
図24で示す様に、コンクリートポンプ21を台車22に載置しないことが可能である。その場合、固化材用のプラント(コンクリートミキサー車23、コンクリートポンプ21を含む)が、吹付工法の施工現場近傍に設けられることになる。
【0073】
図1~
図24を参照して説明した実施形態では、吹付材を吹き付ける場所(例えば法面F)が車両30に設けられたブーム31の最高到達点よりも低い位置にある場合には、アタッチメント1を取り付けると吹付用ノズル3は吹き付ける場所よりも高い位置となり、吹き付けが困難になる。
吹付材を吹き付けるべき場所がブーム31の最高到達点よりも低い位置にある場合には、
図25で示す様に、車両30に設けられたブーム31にアタッチメント1を取り付けずに、ブーム31の車両30と反対側の先端(最高到達点側の先端)に、吹付用ノズル3を取り付け/取り外し可能なブーム側接続部材32を介して吹付用ノズル3を取り付けて、ブーム31を動かしつつ吹付用ノズル3から吹付材を噴射する。
吹付材を吹き付けるべき箇所がブーム31の最高到達点よりも高い位置にある場合には、
図1~
図24を参照して説明したように、ブーム31にアタッチメント1を取り付けて、吹付作業を行う。
【0074】
図25で示す態様では、ノズル3はブーム側接続部材32に固定されているが、
図26で示す様に、ブーム側接続部材32に板状部材2を取り付け、ノズル3は板状部材2の長手方向(
図26の左右方向:矢印A4方向)に移動可能に構成することが出来る。
ノズル3を板状部材2の長手方向に移動可能とするには、例えば、
図4を参照して説明した工程を実行するための構成を採用することが可能である。
図26で示す態様(
図25で示す態様の変形例)では、吹付材を吹き付ける場所がブーム31の最高到達点よりも低い位置にある場合において、ブーム側接続部材32近傍の領域のみならず、ブーム側接続部材32から板状部材2の長手方向(
図26の左右方向:矢印A4方向)に離隔した個所に対しても吹付材を噴射することが出来る。
【0075】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0076】
1・・・アタッチメント
1-1・・・第1の部材(車両側部材)
1-2・・・第2の部材(吹付用ノズル側部材)
2・・・板状部材
3・・・吹付用ノズル
4・・・アタッチメント側接続手段
5・・・横方向移動用部材
6・・・第1の回動用部材
7・・・第2の回動用部材
8・・・車両側揺動部材
11・・・ゴムホース(固化材用配管)
20・・・吹付材供給系統
21・・・コンクリートポンプ(吹付固化材用ポンプ)
22・・・台車
30・・・車両
31・・・ブーム
32・・・ブーム側接続部材
100・・・吹付用機械
F・・・法面
CU・・・吹付用機械の制御装置