(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069629
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ガバナ付き比例弁
(51)【国際特許分類】
F23K 5/00 20060101AFI20230511BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
F23K5/00 301D
F16K31/06 310F
F23K5/00 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181645
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】大稲 高裕
【テーマコード(参考)】
3H106
3K068
【Fターム(参考)】
3H106DA04
3H106DA13
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD05
3H106EE07
3H106FA03
3H106KK12
3K068FC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガス供給路等に介設されるガバナ付き比例弁において、一次圧が変動しても二次圧が一定に維持されるガバナ本来の機能を確実に実現する。
【解決手段】一次圧室11と、二次圧室12と、弁孔13が開設された弁座14とを有する弁筺1と、一次圧室11の端面を閉塞するダイヤフラム2と、ダイヤフラム2に連結され、弁孔13を開閉する弁体3とを有するガバナG、及び弁体3が、弁座14から離れる開き方向への押圧力を可変にして弁体3に付与する電磁ソレノイドSを備え、電磁ソレノイドSに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値に関して定常時の基準範囲と、当該実効電流値の周波数に関して定常時の基準周波数とが設定されるガバナ付き比例弁Aにおいて、電磁ソレノイドSに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を基準範囲から小さくする場合、当該直流電流の周波数を基準周波数よりも高くする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次圧室と、二次圧室と、一次圧室と二次圧室の間に存し、弁孔が開設された弁座とを有する弁筺と、弁座とは反対側に位置する一次圧室の端面を閉塞するダイヤフラムと、ダイヤフラムに連結され、弁座の二次圧室側の面に対向し、弁孔を開閉する弁体とを有するガバナ、及び弁座から離れる開き方向への押圧力を弁体に付与すると共に、その押圧力を可変する電磁ソレノイドを備え、電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を変化させることによって、弁体による弁孔の開度を調節し、一次圧室から二次圧室に流入する流体の流量を可変するガバナ付き比例弁であって、
電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値に関して定常時の基準範囲と、当該直流電流の周波数に関して定常時の基準周波数とが設定されるものにおいて、
電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を基準範囲よりも小さくする場合、当該直流電流の周波数を基準周波数よりも高くすることを特徴とするガバナ付き比例弁。
【請求項2】
一次圧室と、二次圧室と、一次圧室と二次圧室の間に存し、弁孔が開設された弁座とを有する弁筺と、弁座とは反対側に位置する一次圧室の端面を閉塞するダイヤフラムと、ダイヤフラムに連結され、弁座の二次圧室側の面に対向し、弁孔を開閉する弁体とを有するガバナ、及び弁座から離れる開き方向への押圧力を弁体に付与すると共に、その押圧力を可変する電磁ソレノイドを備え、電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を変化させることによって、弁体による弁孔の開度を調節し、一次圧室から二次圧室に流入する流体の流量を可変するガバナ付き比例弁であって、
電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値に関して定常時の基準範囲と、当該直流電流の周波数に関して定常時の基準周波数とが設定されるものにおいて、
電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を基準範囲よりも大きくする場合、当該直流電流の周波数を基準周波数よりも低くすることを特徴とするガバナ付き比例弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ガス供給路等に介設されるガバナ付き比例弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガバナ付き比例弁として、一次圧室と、二次圧室と、一次圧室と二次圧室の間に存し、弁孔が開設された弁座とを有する弁筺と、弁座とは反対側に位置する一次圧室の端面を閉塞するダイヤフラムと、ダイヤフラムに連結され、弁座の二次圧室側の面に対向し、弁孔を開閉する弁体とを有するガバナ、及び弁座から離れる開き方向への押圧力を弁体に付与すると共に、その押圧力を可変する電磁ソレノイドを備え、電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を変化させることによって、弁体による弁孔の開度を調節し、一次圧室から二次圧室に流入する流体の流量を可変するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなガバナ付き比例弁では、流体の供給先で要求される流体の流量に応じて二次圧室内の流体の圧力(以降、二次圧と記す)を所定の値で一定に保持させる調圧の一方策として、電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値に関して定常時の基準範囲と、当該直流電流の周波数に関して定常時の基準周波数とが設定されるのが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、そのように調圧しても、ガバナ付き比例弁では、一次圧室内に流入する流体の流量を変動させたときに、一次圧室内の圧力(以降、一次圧と記す)が変動すると、流体の圧力から生じるダイヤフラムの反力と電磁ソレノイドの押圧力とのバランスの変動等に起因して二次圧が変動するという現象が見出された。したがって、従来のガバナ付き電磁比例弁では、一次圧の変動に対して二次圧を一定に維持するというガバナ本来の機能を実現することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、一次圧が変動しても二次圧を一定に維持するガバナ本来の機能を確実に実現することができるガバナ付き比例弁を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、一次圧室と、二次圧室と、一次圧室と二次圧室の間に存し、弁孔が開設された弁座とを有する弁筺と、弁座とは反対側に位置する一次圧室の端面を閉塞するダイヤフラムと、ダイヤフラムに連結され、弁座の二次圧室側の面に対向し、弁孔を開閉する弁体とを有するガバナ、及び弁座から離れる開き方向への押圧力を弁体に付与すると共に、その押圧力を可変する電磁ソレノイドを備え、電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を変化させることによって、弁体による弁孔の開度を調節し、一次圧室から二次圧室に流入する流体の流量を可変するガバナ付き比例弁であって、電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値に関して定常時の基準範囲と、当該直流電流の周波数に関して定常時の基準周波数とが設定されるものにおいて、電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を基準範囲よりも小さくする場合、当該直流電流の周波数を基準値よりも高くすることを特徴とする。
【0008】
弁体の開き方向への移動に伴ってダイヤフラムには、弁体を閉じ方向に戻す反力が発生する。したがって、電磁ソレノイドの押圧力は、弁孔の開度に応じたダイヤフラムの反力につり合う大きさが必要とされる。ところで、電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を基準範囲よりも小さくする場合、一次圧の上昇に伴い二次圧が徐々に上昇する傾向が現れる(以降、上がりガバナ傾向と記す)。そこで、本発明では、当該直流電流の実効電流値を基準範囲よりも小さくする場合、当該直流電流の周波数を基準周波数よりも高くし、当該直流電流の振幅を小さくして電磁ソレノイドの押圧力を低下させる。ガバナでは、一次圧が上昇すると、弁孔の開度が小さくなり、これに伴いダイヤフラムの反力が低下するが、ダイヤフラムの反力の低下度合いよりも電磁ソレノイドの押圧力の低下度合いの方が大きいため、ダイヤフラムの反力の方が電磁ソレノイドの押圧力よりも大きくなる。その結果、弁孔の開度はより小さくなり、一次圧の上昇に伴い二次圧が徐々に低下する、上記上がりガバナ傾向とは逆の下がりガバナ傾向が生じる。本発明では、この下がりガバナ傾向を利用して上がりガバナ傾向を相殺し、二次圧の変動を十分に抑制する。こうして、一次圧の変動に関わりなく、二次圧を一定に維持させて、ガバナ本来の機能を確実に実現する。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明は、一次圧室と、二次圧室と、一次圧室と二次圧室の間に存し、弁孔が開設された弁座とを有する弁筺と、弁座とは反対側に位置する一次圧室の端面を閉塞するダイヤフラムと、ダイヤフラムに連結され、弁座の二次圧室側の面に対向し、弁孔を開閉する弁体とを有するガバナ、及び弁座から離れる開き方向への押圧力を弁体に付与すると共に、その押圧力を可変する電磁ソレノイドを備え、電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を変化させることによって、弁体による弁孔の開度を調節し、一次圧室から二次圧室に流入する流体の流量を可変するガバナ付き比例弁であって、電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値に関して定常時の基準範囲と、当該直流電流の周波数に関して定常時の基準周波数とが設定されるものにおいて、電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を基準範囲よりも大きくする場合、当該直流電流の周波数を基準周波数よりも低くすることを特徴とする。
【0010】
電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を基準範囲よりも大きくする場合、一次圧の上昇に伴って二次圧が徐々に低下する、下がりガバナ傾向が実際に現れる。
【0011】
したがって、下がりガバナ傾向に対しては、上がりガバナ傾向で相殺し、二次圧の変動を十分に抑制する。そこで、本発明では、電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を基準範囲よりも大きくする場合、当該直流電流の周波数を基準周波数よりも低くして当該直流電流の振幅を大きくし、電磁ソレノイドの押圧力を増大させる。このときの電磁ソレノイドの押圧力は、ダイヤフラムの反力よりも大きいため、弁孔が開き、上がりガバナ傾向が生じるため、下がりガバナ傾向が相殺され、二次圧の変動を十分に抑制することができる。こうして、一次圧の変動に関わりなく、二次圧を一定に維持することができ、ガバナ本来の機能を確実に実現する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のガバナ付き比例弁の一実施形態を示す断面図。
【
図2】パルス波形の直流電流の周波数を基準周波数で一定にし、実効電流値を基準範囲内にしたときと、基準範囲よりも小さくしたとき及び大きくしたときとの一次圧の二次圧への影響を比較して例示したグラフ。
【
図3】本発明のガバナ付き比例弁における一次圧と二次圧の関係を例示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して本発明の一実施形態であるガバナ付き比例弁Aについて説明する。ガバナ付き比例弁Aは、ガスバーナに対する燃料ガスのガス供給路に介設される。ガバナ付き比例弁Aは、ガバナGと電磁ソレノイドSを備えている。ガバナGは弁筺1を有し、弁筺1の内部は、燃料ガス入口11aを介してガス供給路の上流側の部分に連通する流入側の一次圧室11と、一次圧室11の上方に位置し、図外の燃料ガス出口を介してガス供給路の下流側の部分に連通する流出側の二次圧室12とに画成されている。また、ガバナGは、一次圧室11と二次圧室12の間に存し、弁孔13が開設された弁座14を有している。
【0014】
弁筺1の上端には上蓋部15が取り付けられ、上蓋部15は二次圧室12の上面を覆い、弁筺1の下端にはダイヤフラム2が取り付けられ、ダイヤフラム2は一次圧室11の下面を覆っている。さらに、ガバナGは、弁座14の二次圧室12側の面に対向する、弁孔13を開閉する弁体3を有している。
【0015】
ダイヤフラム2の外周部分は、弁筺1の下面に締結された押え板21によって、一次圧室11の下面外周部に挟圧固定されている。ダイヤフラム2と押え板21の間には、大気に開放される背圧室22が画成されている。また、ダイヤフラム2の下側には、ダイヤフラム2の下面に座金23を介して接する、上端にフランジ部24aを有する筒状のバルブホルダ24が設けられている。
【0016】
弁体3は、下方にのびる弁軸31を有している。弁軸31の下端部には、ダイヤフラム2の上面に接する肩面から下方に突出する小径軸部31aが突設され、小径軸部31aは、ダイヤフラム2の中心に形成された孔を通じてバルブホルダ24に嵌合固定されている。このようにして、弁軸31は、ダイヤフラム2に連結されている。
【0017】
電磁ソレノイドSは、弁体3に上方の押圧力を付与すると共に、この押圧力を可変する。そのために、電磁ソレノイドSは、押え板21の下面に取り付けられるヨーク4と、ヨーク4に接するボビン5に巻回したコイル6と、ヨーク4の内周の筒状ガイド7の内部を上下方向に移動自在に挿通されたプランジャ8と、プランジャ8を上方に付勢してプランジャ8の自重をキャンセルするスプリング9とを有している。プランジャ8は、弁軸31の小径軸部31aの下端に当接し、コイル6に通電するパルス波形の直流電流の実効電流値に比例した押圧力で弁体3を上方に押圧する。
【0018】
このようなガバナ付き比例弁Aでは、ガバナGは、一次圧に関わりなく、二次圧は、電磁ソレノイドSの押圧力によって一定にすることができる。このことは、力学的に説明することができる。すなわち、一次圧をP1、二次圧をP2、電磁ソレノイドSの押圧力をFとし、ダイヤフラム2の有効面積をSd、弁孔13の開口面積をSgとすると、ガバナGに発生する弁体3の開き方向である上向きの力と、閉じ方向である下向きの力とがつり合うため、次式(1)が成り立つ。
【0019】
P1・Sg+F=P1・Sd+P2・Sg (1)
【0020】
ここで、Sd=Sgとなるように設計されるため、
P2=F/Sd (2)
となる。上記式(2)は、二次圧P2は、一次圧P1に関わらず、電磁ソレノイドSの押圧力Fによって一定になることを示す。
【0021】
現象的に説明すると、ガバナGでは、一次圧P1の時に、電磁ソレノイドSの押圧力Fがプランジャ8を介して弁軸31に伝達され、弁体3に作用すると、弁体3は弁座14から上方に離れる開き方向に移動し、弁孔13が開き、二次圧P2に調節される。
【0022】
ここで、例えば、一次圧P1が上昇すると、その瞬間、二次圧P2は、一次圧P1の上昇に伴って上昇するが、弁体3は閉じ方向に移動する。この弁体3の閉じ方向の移動によって弁孔13の開度が小さくなり、ダイヤフラム2の反力Fdが小さくなるため、二次圧P2は、次第に元の大きさに戻る。
【0023】
ところで、電磁ソレノイドSにPWM駆動方式等によるパルス波形の直流電流を通電する場合、上記の通り、パルス波形の直流電流は、周波数が低いと振幅が大きくなり、その結果、電磁ソレノイドSの押圧力Fは大きくなる。つまり、パルス波形の直流電流の実効電流値を同じにしても周波数が低いと振幅が大きくなるため、電磁ソレノイドSの押圧力Fは大きくなる。逆に、電磁ソレノイドSに通電するパルス波形の直流電流は、周波数が高いと振幅が小さくなり、その結果、電磁ソレノイドSの押圧力Fは小さくなる。これらのことを踏まえ、ガバナ付き比例弁Aにおける一次圧P1の二次圧P2への影響を改めて実験的に検証した。
【0024】
実験的検証では、定常時の一次圧P1に対応する、実効電流値の基準範囲を150mA~500mA、周波数を150Hzに設定し、
図1に示す一次圧室11に流入する燃料ガスの流量を、電磁ソレノイドSに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を変化させて変化させ、一次圧P1が変動したときの二次圧P2を調べた。実効電流値には、定常時の基準範囲の上限値である500mA及び下限値である150mAと、基準範囲よりも小さい100mAと、基準範囲よりも大きい600mAとを選択した。なお、上記の各数値は、あくまで例示あり、全てのガバナ付き比例弁に普遍的なものではない。
【0025】
図2に示すように、弁孔13が開となる、一次圧P1が定常時よりも低い低圧側と、弁孔13が閉となる、一次圧P1が定常時よりも高い高圧側とでは、実効電流値が基準範囲内にある500mA及び150mAの場合、一次圧P1の二次圧P2への影響はほとんどないことが確認された。これに対し、実効電流値が基準範囲よりも小さい100mAの場合、二次圧P2が低圧側で小さく、高圧側で大きくなる、上がりガバナ傾向が確認された。
【0026】
この結果に基づくと、ガバナGの本来の機能を確実に実現するために、電磁ソレノイドS、具体的にはコイル6に通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を基準範囲よりも低くする場合、当該直流電流の周波数を基準周波数よりも高くし(例えば、500Hz)、振幅を小さくして電磁ソレノイドSの押圧力Fを小さくすることが考えられる。ガバナGでは、一次圧P1が上昇すると、弁孔13の開度が小さくなり、これに伴いダイヤフラム2の反力Fdが低下するが、ダイヤフラム2の反力Fdの低下度合いよりも電磁ソレノイドSの押圧力Fの低下度合いの方が大きいため、ダイヤフラム2の反力Fdの方が電磁ソレノイドSの押圧力Fよりも大きくなる。その結果、弁孔13の開度はより小さくなり、一次圧P1の上昇に伴い二次圧P2が徐々に低下する、下がりガバナ傾向が生じる。したがって、この下がりガバナ傾向を利用すれば、上がりガバナ傾向を相殺することができ、二次圧P2の変動を十分に抑制するのに有効であると結論付けられる。
【0027】
また、
図2に示すように、電磁ソレノイドS(コイル6)に通電するパルス波形の直流電流の実効電流値が基準範囲よりも大きい600mAにする場合、二次圧P2は、100mAの場合とは逆に、低圧側で大きく、高圧側では小さくなる、下がりガバナ傾向が確認された。
【0028】
この結果に基づくと、下がりガバナ傾向を解消するためには、電磁ソレノイドSに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を基準範囲よりも大きくする場合、当該直流電流の周波数を基準周波数よりも低くし(例えば、100Hz)、振幅を大きくして電磁ソレノイドSの押圧力Fを大きくすることが考えられる。この場合、電磁ソレノイドSの押圧力Fは、ダイヤフラム2の反力Fdよりも大きいため、弁孔13が開き、上がりガバナ傾向が生じ、この上がりガバナ傾向を利用すれば、下がりガバナ傾向を相殺することができ、二次圧P2の変動を十分に抑制するのに有効であると結論付けられる。
【0029】
以上の結論を検証するために、パルス波形の直流電流の実効電流値、周波数を夫々100mA、500Hzにしたときと、150mA、150Hzにしたときと、500mA、150Hzにしたときと、600mA、100Hzにしたときの4つの場合を比較した。その結果、
図3に示すように、いずれの場合も、一次圧P1が低圧側と高圧側に変動しても二次圧P2の変動が十分に抑制されることが確認され、結論が正しいことが実証された。
【0030】
すなわち、ガバナ付き比例弁Aでは、電磁ソレノイドSに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を基準範囲よりも小さくする場合、当該直流電流の周波数を基準周波数より高くして当該直流電流の振幅を小さくする。そして、電磁ソレノイドSの押圧力Fを低下させ、二次圧P2の変動を十分に抑制することができる。したがって、一次圧P1の変動に関わりなく、二次圧P2を一定に維持することができ、ガバナGの本来の機能が確実に実現される。
【0031】
また、ガバナ付き比例弁Aでは、電磁ソレノイドSに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を基準範囲よりも大きくする場合、直流電流の周波数を基準周波数よりも低くして当該直流電流の振幅を大きくする。そして、電磁ソレノイドSの押圧力Fを増大させ、二次圧P2の変動を十分に抑制することができる。したがって、一次圧P1の変動に関わりなく、二次圧P2を一定に維持することができ、ガバナGの本来の機能がより確実に実現される。
【0032】
近年、給湯器には、出湯量に応じて最小能力の低減と最大能力の増大とが求められる。したがって、給湯器のガス供給路に介設されるガバナ付き比例弁では、電磁ソレノイドに通電するパルス波形の直流電流の実効電流値を基準値よりも小さくするか又は大きくする必要がある。この場合、従来のガバナ付き比例弁を適用すると、前述の通り、一次圧の二次圧への影響が大きいため、二次圧が変動してしまう。したがって、そのような給湯器の最小能力の低減と最大能力の増大という要求に対して、本実施形態のガバナ付き比例弁Aは有効になる。
【0033】
以上、本発明を一実施形態に関して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、ガバナG及び電磁ソレノイドSの構成及び構造、電磁ソレノイドSの直流電源の仕様等については、特に限定的ではない。また、パルス波形の直流電流の実効電流値に対する周波数の設定は、上記実施形態では、100Hz、150Hz、及び500Hzのように段階的に行っているが、実効電流値に応じて無段階に設定することもできる。さらに、ガス種や適用される機器等に応じて適宜変更が可能でもある。そして、ガバナ付き比例弁は、ガバナGと電磁ソレノイドSが上下反転したものであってもよい、この場合、プランジャ8の自重をキャンセルするスプリング9は設ける必要はなく、スプリング9は、弁体3及び弁軸31の自重をキャンセルするために、弁軸31の下端と上蓋部15(実際には下蓋部)の上面との間に介設することができる。
【符号の説明】
【0034】
A…ガバナ付き比例弁、G…ガバナ、S…電磁ソレノイド、1…弁筺、11…一次圧室、12…二次圧室、13…弁孔、14…弁座、2…ダイヤフラム、3…弁体。