(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069648
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】液体種菌接種機
(51)【国際特許分類】
A01G 18/50 20180101AFI20230511BHJP
【FI】
A01G18/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181675
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】391047880
【氏名又は名称】オギワラ精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯本 雅行
【テーマコード(参考)】
2B011
【Fターム(参考)】
2B011BA05
2B011DA01
2B011JA01
2B011MA11
2B011NA03
2B011NA04
(57)【要約】
【課題】キャップ脱着機構を簡素化して製造コストを低減し、係合爪によるキャップ保持が不十分なことによる動作停止が生じても、短時間で動作復旧が可能な液体種菌接種機を提供すること。
【解決手段】培地22が充填され、瓶口24にキャップ26を装着した栽培瓶20を行列配置で収容したコンテナ10を搬送する搬送部30と、接種位置SAにおいてキャップ26を瓶口24から脱着するキャップ脱着ユニット40と、培地22に液体種菌を接種する種菌接種部50とを具備し、キャップ脱着ユニット40は、キャップ26に対し2箇所で係合する係合爪43が複数配設された係合爪集合体42と、係合爪集合体42の高さ位置を昇降移動させる昇降移動部44と、係合爪集合体42を水平方向に往復移動させる水平方向往復移動部46と、瓶肩押さえ部49と、を有していることを特徴とする液体種菌接種機100である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地が充填され、瓶口にキャップが装着された栽培瓶を行列配置で収容したコンテナを搬送する搬送部と、
前記搬送部の搬送経路上における所定位置において前記キャップを前記瓶口から脱着するキャップ脱着ユニットと、
前記キャップが取り外された前記瓶口のそれぞれに対応するノズルから前記培地に液体種菌を接種する種菌接種部と、を具備し、
前記キャップ脱着ユニットは、
各前記キャップに対し2箇所で係合する係合爪が複数取り付けられた係合爪集合体と、
前記コンテナの前記キャップの配設間隔位置において、前記係合爪の高さ位置が前記種菌接種部よりも上方高さ位置と前記キャップの下端面高さ位置との間で前記係合爪集合体を昇降移動させる昇降移動部と、
前記係合爪が前記キャップの前記配設間隔位置と前記キャップに係合する位置との間で前記係合爪集合体を水平方向に往復移動させる水平方向往復移動部と、を有していることを特徴とする液体種菌接種機。
【請求項2】
前記昇降移動部は、モータと、前記モータの出力軸の回動動作を昇降動作に動作変換する動作変換機構と、を有し、
前記係合爪集合体には、昇降方向に延びるシャフトが設けられており、
前記シャフトには、前記動作変換機構への載置部が取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の液体種菌接種機。
【請求項3】
前記載置部は、前記動作変換機構への載置部分が交換可能であることを特徴とする請求項2記載の液体種菌接種機。
【請求項4】
前記キャップ脱着ユニットへの前記係合爪集合体の取り付けと、前記種菌接種部への前記ノズルの取り付けとのうち、少なくとも一方はキャッチクリップによりなされていることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の液体種菌接種機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体種菌接種機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、きのこ栽培用培地が充填された栽培瓶に液体種菌を接種するための液体種菌接種機が提案されている。このような液体種菌接種機としては、例えば特許文献1(特許文献1:特許第4598101号公報)に開示されているような構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている液体種菌接種機は、搬送部により栽培瓶が収容されたコンテナを所定位置まで搬送し、コンテナ上方位置から栽培瓶の瓶口に装着されているキャップを取り外した後に、瓶口からノズルにより液体種菌を接種する構成を有している。キャップの取り外しおよび再装着を行う際には、コンテナ上方位置から係止爪を栽培瓶の配設間隔位置に下降させた後に、2つの係止爪が取り付けられた保持板を2枚用い、栽培瓶1本当たり4本の係止爪を用いてキャップを脱着する構成が採用されている。このため、係止爪をキャップ位置に水平移動させる際には、2枚の保持板を駆動させる必要があり、キャップ脱着機構の動作が複雑になり、製造コストの増大を招いていた。また、キャップ脱着装置にキャップが不十分な状態で保持されてしまった状態で液体種菌接種機の動作が一時停止した場合、キャップに4つの係合爪が係合しているため、キャップの取り外しが煩雑になり、動作復旧までに時間がかかるといった課題も有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明においては、キャップ脱着機構を簡素化することで、製造コストの低減を可能にすると共に、係合爪によるキャップ保持が不十分なことによる動作停止が生じても、短時間で動作復旧が可能な液体種菌接種機の提供を目的としている。
【0006】
すなわち本発明は、培地が充填され、瓶口にキャップが装着された栽培瓶を行列配置で収容したコンテナを搬送する搬送部と、前記搬送部の搬送経路上における所定位置において前記キャップを前記瓶口から脱着するキャップ脱着ユニットと、前記キャップが取り外された前記瓶口のそれぞれに対応するノズルから前記培地に液体種菌を接種する種菌接種部と、を具備し、前記キャップ脱着ユニットは、各前記キャップに対し2箇所で係合する係合爪が複数取り付けられた係合爪集合体と、前記コンテナの前記キャップの配設間隔位置において、前記係合爪の高さ位置が前記種菌接種部よりも上方高さ位置と前記キャップの下端面高さ位置との間で前記係合爪集合体を昇降移動させる昇降移動部と、前記係合爪が前記キャップの前記配設間隔位置と前記キャップに係合する位置との間で前記係合爪集合体を水平方向に往復移動させる水平方向往復移動部と、を有していることを特徴とする液体種菌接種機である。
【0007】
これにより、キャップ脱着機構を簡素化することで、製造コストの低減が可能になると共に、係合爪によるキャップ保持が不十分なことによる動作停止が生じても、係合爪からのキャップの取り外しが容易になるため、短時間での動作復旧が可能になる。
【0008】
また、前記昇降移動部は、モータと、前記モータの出力軸の回動動作を昇降動作に動作変換する動作変換機構と、を有し、前記係合爪集合体には、昇降方向に延びるシャフトが設けられており、前記シャフトには、前記動作変換機構への載置部が取り付けられていることが好ましい。
【0009】
これにより、係合爪集合体が栽培瓶に向けて下降する際に係合爪集合体の下降動作が妨げられても、モータの出力軸の回転を空転させることにより係合爪集合体が無理矢理下降することがなく、モータ、係合爪集合体および栽培瓶の破損等を防止することができる。
【0010】
また、前記載置部は、前記動作変換機構への載置部分が交換可能であることが好ましい。
【0011】
これにより、載置部が摩耗した際における交換が容易になり、載置部の摩耗による動作不良の発生を防止することができる。
【0012】
また、前記キャップ脱着ユニットへの前記係合爪集合体の取り付けと、前記種菌接種部への前記ノズルの取り付けとのうち、少なくとも一方はキャッチクリップによりなされていることが好ましい。
【0013】
これにより、係合爪やノズルのメンテンナンスを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、キャップ脱着機構が簡素化され、液体種菌接種機の製造コスト低減が可能になると共に、係合爪からのキャップの取り外しが容易になるため、短時間での動作復旧が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態における液体種菌接種機の正面図である。
【
図10】係合爪集合体を下降させた状態を示す昇降移動部の正面図である。
【
図11】係合爪集合体を下降させた状態における液体種菌接種機の正面図である。
【
図13】水平方向往復移動部により係合爪をキャップに係合させた状態を示す液体種菌接種機の右側面図である。
【
図14】瓶口からキャップを取り外した状態を示す液体種菌接種機の右側面図である。
【
図15】退避位置における種菌接種部の正面図である。
【
図17】瓶口の直上位置(接種位置)にノズルを位置合わせした状態を示す種菌接種部の正面図である。
【
図19】キャップを取り外した後に退避位置に退避させた状態を示す液体種菌接種機の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる液体種菌接種機100について図面を参照しながら説明を行う。なお、本実施形態においては、コンテナ10には培地22が充填され、瓶口24にキャップ26が装着された栽培瓶20が4行4列の行列配置で収容されている形態を例示しているが、コンテナ10への栽培瓶20の収容本数や配列形態は特に限定されるものではない。
【0017】
図1~
図3に示すように本実施形態における液体種菌接種機100は、搬送部30と、搬送部30の上方位置に配設されたキャップ脱着ユニット40と、搬送部30とキャップ脱着ユニット40との間の高さ位置に配設された種菌接種部50と、動作制御部60と、を具備している。なお、本明細書に添付した図面は、表示を簡略化するため一部の構成の表示を省略した図面を用いることがある。このため、互いの図面において整合しない部分がある。
【0018】
本実施形態における搬送部30は、搬送用モータ31により作動するローラコンベアに代表される公知の構成を採用することができる。搬送部30は本体フレーム101に配設されている。なお、搬送部30は図示した範囲だけではなく、コンテナ10の搬送方向の上流側および下流側における図示しない範囲にも配設することができる。搬送部30の搬送経路脇における所定位置には、接種位置SAと接種待機位置TAが設けられている。ここで、接種位置SAとは、栽培瓶20(培地22)に液体種菌を接種する位置にあるときのコンテナ10の搬送方向先端部位置のことを指し、接種待機位置TAとは、接種位置SAからコンテナ10の1個分の長さよりもわずかに長い距離を搬送方向上流側へ離れた位置のことを指している。
【0019】
接種位置SAおよび接種位置SAの直前位置である接種待機位置TAには、コンテナ10を待機させるための接種位置ストッパ32および接種待機位置ストッパ33が配設されている。搬送用モータ31、接種位置ストッパ32および接種待機位置ストッパ33は、いずれも本体フレーム101に取り付けられており、接種位置ストッパ32および接種待機位置ストッパ33に配設されたコンテナ検出センサCSの検出信号に基づいて動作制御部60によって動作制御されている。
【0020】
接種位置ストッパ32と接種待機位置ストッパ33は、予め設定された位置に配設されたコンテナ検出センサCSによるコンテナ検出信号に基づいて動作制御部60によって接種位置ストッパ32と接種待機位置ストッパ33のオンオフ動作が切り替えられている。また、動作制御部60は、接種位置ストッパ32と接種待機位置ストッパ33のオンオフ動作に連動(同期)させて、搬送用モータ31のオンオフ動作を制御することもできる。本実施形態においては、接種位置ストッパ32および接種待機位置ストッパ33としてストッパシリンダを用いているが、接種位置ストッパ32および接種待機位置ストッパ33は、ストッパシリンダに限定されるものではない。
【0021】
キャップ脱着ユニット40は、係合爪集合体42と、係合爪集合体42を昇降移動させる昇降移動部44と、係合爪集合体42を水平方向に往復移動させる水平方向往復移動部46と、キャップ押圧部48と、瓶肩押さえ部49と、を有している。係合爪集合体42は、接種位置SAで待機するコンテナ10の上方位置を待機位置としており、ベース部40Aにスライド可能に保持された保持板42Aの下面から複数の係合爪43が吊り下げ保持されている(
図4~
図6参照)。本実施形態における係合爪43は、コンテナ10に収容されている栽培瓶20どうしの配設間隔位置に形成された隙間部分の中央位置に上方から進退可能な寸法の長方形状に形成されており、1つのキャップ26に対し直径方向の2箇所で係合可能になっている。このような係合爪43が取り付けられた保持板42Aは、キャッチクリップCCによりベース部40A(キャップ脱着ユニット40)から取り外し可能な状態で取り付けられている。
【0022】
また、保持板42Aの上方位置には、シャフト取付板40Bが取り付けられており、シャフト取付板40Bには係合爪集合体42の昇降方向に延びるシャフト40Cが立設されている。シャフト40Cの上端部には、後述する動作変換機構44Bへの載置部40Dが取り付けられている(
図7参照)。本実施形態における載置部40Dは、コンテナ10の搬送方向の上流側位置および下流側位置でそれぞれ向かい合うシャフト40Cどうしに掛け渡された基部40Eと、基部40Eに着脱可能に取り付けられた載置部分40Fと、を有している。載置部40Dは、交換可能な載置部分40Fを介して動作変換機構44Bに取り付けられたローラーベアリング44Cに直接当接した状態で載置されている。
【0023】
図7~
図10に示すように、本実施形態における昇降移動部44は、昇降モータ44Aと、昇降モータ44Aの出力軸に連結された動作変換機構44Bを有している。動作変換機構44Bは、昇降モータ44Aの出力軸の回動動作を係合爪集合体42の昇降動作に動作変換するものであり、本実施形態においては、動作変換機構44Bとしてクランク板を採用している。また、動作変換機構44Bの先端部にローラーベアリング44Cを配設することもできる。ローラーベアリング44Cの上には先述の載置部40D(載置部分40F)が非連結状態で載置されている。このような機構により昇降移動部44は、昇降モータ44Aの出力軸を半回転させる毎に、係合爪集合体42を
図7に示す待機位置と
図10に示すキャップ取り外し高さ位置との間で昇降移動(往復移動)させている。
【0024】
また、昇降モータ44Aの出力軸の回動量を検出する回動量検出センサKSと、動作変換機構44Bの上端部位置および下端部位置を検出する上端部センサUSおよび下端部センサLSを配設し、動作制御部60にそれぞれの検出信号を送信させることもできる。動作制御部60は、受信した回動量検出センサKSによる出力軸の回動量の検出信号および上端部センサUSおよび下端部センサLSの検出信号に基づいて昇降モータ44Aの出力軸の空転を検出して昇降モータ44Aの動作を一時停止させることができる。
【0025】
具体的には、上端部センサUSによる動作変換機構44Bの検出後に昇降モータ44Aの出力軸が予め設定した回動量になっても下端部センサLSにより動作変換機構44Bの検出がなされないときは、動作制御部60は昇降モータ44Aの出力軸が空転していると判断して、昇降モータ44Aの動作を一時停止させる制御を行っている。また、動作制御部60が昇降モータ44Aの出力軸が空転していると判断した場合、液体種菌接種機100の全体動作を停止させるように動作制御してもよい。さらに動作制御部60は、作業者に対し動作異常発生の警報を発するために、警報装置(図示省略)を作動させる制御を行うこともできる。
【0026】
このように、載置部40D(係合爪集合体42)が動作変換機構44Bの先端部のローラーベアリング44Cに単に載置されている形態を採用することで、係合爪集合体42の下降がストップした際には、昇降モータ44Aの出力軸が空転して係合爪集合体42の強制下降を防止することができる。これにより、キャップ脱着ユニット40やキャップ26等の破損を防ぐことができ、液体種菌接種機100の復旧作業も容易になる。
【0027】
水平方向往復移動部46は、ベース部40Aに取り付けられている(
図5、
図6等参照)。本実施形態においては、水平方向往復移動部46として流体シリンダを採用しているが、流体リシンダに限定されるものではない。水平方向往復移動部46は、動作制御部60によって動作が制御されている。具体的には
図11、
図12に示すように、昇降移動部44により係合爪43をキャップ26の下面高さ位置よりわずかに下方位置まで下降させた係合爪43の当初位置と、
図13に示す搬送部30の搬送方向に水平面内で直交する方向の最寄りのキャップ26において搬送方向に平行なキャップ26の直径位置との間で係合爪43を水平方向に往復移動させるものである。本実施形態におけるベース部40Aには、少なくとも保持板42Aに吊り下げ保持された係合爪43の水平方向の往復移動範囲に貫通孔や切欠部による爪回避部TKが穿設されている(
図5参照)。よって、水平方向往復移動部46がベース部40Aの上側に配設された保持板42Aを水平方向に往復移動させても、保持板42Aに吊り下げ保持された係合爪43とベース部40Aとが干渉することはない。
【0028】
動作制御部60は、
図13に示すように、水平方向往復移動部46によって一枚のキャップ26に対して直径方向の2箇所で係合爪43を係合させた後、昇降移動部44を作動させて
図14に示すように係合爪集合体42を上昇移動させることで、栽培瓶20の瓶口24からキャップ26を取り外す。このようにして取り外されたキャップ26は、少なくとも種菌接種部50よりも上方位置まで退避させることが好ましい。
【0029】
キャップ押圧部48は、コンテナ10に収容されている栽培瓶20の瓶口24(キャップ26)の中央位置に位置合わせした状態でベース部40Aの下面に吊り下げ保持されている。キャップ押圧部48は、係合爪43よりも上方位置に配設されており、キャップ26が瓶口24に再装着(載置)された際にキャップ26の上面に当接する高さ位置に配設されている。動作制御部60は、昇降移動部44を作動させて瓶口24にキャップ26を載置した後に、昇降移動部44によりベース部40Aをさらに下方に移動させることでキャップ26を瓶口24に嵌着(再装着)することができる。なお、瓶口24にキャップ26を再装着する動作は、瓶口24からキャップ26を取り外した後に、種菌接種部50により培地22に液体種菌を接種した後に行われる。
【0030】
瓶肩押さえ部49は、コンテナ10に収容された栽培瓶20の瓶肩部分とキャップ26の下端面より下方位置との間に位置するように本体フレーム101に吊り下げ保持されている。瓶肩押さえ部49は、動作制御部60により動作が制御されている流体シリンダ49Aにより栽培瓶20の瓶肩部分に接離動可能に設けられている。栽培瓶20に対する瓶肩押さえ部49の接離動動作は、流体シリンダ49Aに限定されるものではない。本実施形態における瓶肩押さえ部49は、動作制御部60によって昇降移動部44の動作に連動して昇降移動(
図1、
図11参照)するように動作制御されており、瓶口24からキャップ26を取り外す際の栽培瓶20の持ち上がり(共上がり)を規制している。
【0031】
図15~
図18に示すように本実施形態における種菌接種部50は、複数のノズル52と、液体種菌をノズル52に加圧供給する種菌供給部54と、種菌供給部54から加圧供給された液体種菌をノズル52に供給する前に一時貯留するバッファ部56と、ノズル52を退避位置と接種位置SAとの間で往復移動させる往復移動装置58を有している。ここで、ノズル52の退避位置とは、
図15および
図16に示すノズル52の位置を指し、ノズル52の接種位置とは
図17および
図18に示すノズル52の位置を指している。ノズル52はノズル保持板(図示省略)に保持されていると共に送液チューブ53によってバッファ部56に接続されている。
【0032】
ノズル保持板はキャッチクリップCCにより、接種部本体フレーム51に着脱可能に取り付けることもできる。本実施形態のようにノズル52とバッファ部56との間の送液チューブ53にピンチバルブ55を配設してもよい。動作制御部60が所定のタイミングでピンチバルブ55を開閉動作させることで、バッファ部56に加圧状態で貯留された液体種菌をノズル52から間欠的に噴射させることができる。ピンチバルブ55は公知の構成を用いているためここでの詳細な説明は省略する。また、ノズル52とバッファ部56の間の送液チューブ53の長さを等しくしておけば、全てのノズル52において液体種菌の噴射圧力を均等にすることができる点で好都合である。
【0033】
本実施形態における種菌接種部50は、
図15~
図18に示されているように、接種位置SAで待機しているコンテナ10の上流側半分に対応する上流側部分50Aとコンテナ10の下流側半分に対応する下流側部分50Bがコンテナ10の位置を中心とした対称位置に配設されている。種菌接種部50の動作は、動作制御部60により制御されている。本実施形態における種菌接種部50は、上流側部分50Aと下流側部分50Bのそれぞれに種菌供給部54およびバッファ部56が配設されているが、上流側部分50Aと下流側部分50Bにおいて種菌供給部54およびバッファ部56を共有させた形態を採用することもできる。
【0034】
上流側部分50Aおよび下流側部分50Bは、いずれも往復移動装置58により退避位置と接種位置SAとの間で往復移動する。本実施形態における往復移動装置58は、往復用モータ58Aとリンク機構58Bとを有し、搬送方向に沿って延設されていると共に搬送面に平行な本体フレーム101の一部をガイド体として利用している。これにより、往復用モータ58Aを作動させるとリンク機構58Bにより、上流側部分50Aと下流側部分50Bは退避位置と接種位置SAとの間を搬送方向に往復移動させることができる。なお、ここでは、ガイド体として本体フレーム101の一部を利用しているが、本体フレーム101とは別体のガイド体を配設することもできる。
【0035】
次に、以上に説明した液体種菌接種機100の動作について説明する。作業者が液体種菌接種機100を作動させると、瓶口24にキャップ26が装着され内部空間に培地22が充填されている栽培瓶20が行列配置で収容されたコンテナ10が、
図1に示すように搬送部30の上流から供給される。コンテナ10が接種待機位置TAに到達すると、コンテナ検出センサCSがコンテナ10の検出信号を動作制御部60に送信し、動作制御部60が接種待機位置ストッパ33を作動させる処理を実行し、コンテナ10を接種待機位置TAで待機させる。なお、動作制御部60は液体種菌接種機100の作動後において、接種待機位置TAでの最初に受信した検出信号に対しては、接種待機位置ストッパ33の作動を省略することができる。引き続き搬送部30により搬送されたコンテナ10が接種位置SAに到達すると、コンテナ検出センサCSがコンテナ10の検出信号を動作制御部60に送信し、動作制御部60は接種位置ストッパ32を作動させて、コンテナ10を接種待機位置TAに待機させる。
【0036】
動作制御部60は、接種位置ストッパ32を作動させた後、昇降モータ44Aを作動させ、係合爪集合体42を初期位置(
図1における係合爪集合体42の高さ位置)から
図11に示すようにキャップ26の下端部高さ位置よりわずかに下方位置まで下降させる。本実施形態における動作制御部60は、係合爪集合体42を下降させる際に、瓶肩押さえ部49により栽培瓶20の瓶肩部分を押圧させるように流体シリンダ49Aを栽培瓶20に向けて伸長させる。また、係合爪集合体42を下降させる際、昇降モータ44Aの回動量を検出する回動量検出センサKSと係合爪集合体42(動作変換機構44B)の昇降状態を検出する上端部センサUSおよび下端部センサLSは、それぞれの検出信号を動作制御部60に送信している。
【0037】
動作制御部60は、回動量検出センサKSの検出信号と上端部センサUSおよび下端部センサLSの検出信号とに基づいて、昇降モータ44Aの出力軸の回動量に対する動作変換機構44Bの下端部センサLSによる検出信号の回数の比較を行っている。動作制御部60は、昇降モータ44Aの出力軸の回動量と下端部センサLSの検出信号の検出回数に基づいて、昇降モータ44Aの出力軸が空転していると判断した場合、動作制御部60は少なくとも昇降モータ44Aの動作を停止する処理を実行する。
【0038】
動作制御部60は、下端部センサLSからの検出信号に基づいて係合爪集合体42が所定位置まで下降したと判断した後、水平方向往復移動部46を作動させ、
図12に示す状態から
図13に示す状態のように係合爪集合体42をコンテナ10の搬送方向と水平面内で直交する方向にスライド移動させる処理を実行する。これにより係合爪集合体42に保持された係合爪43がキャップ26の搬送方向における直径位置でキャップ26に係合する。
【0039】
次に動作制御部60は、昇降モータ44Aを作動させることで係合爪集合体42を上昇移動させて、それぞれの係合爪43をキャップ26の下端面に係合させた状態で係合爪集合体42を瓶口24から離反させることで、瓶口24からキャップ26を取り外す。動作制御部60は、キャップ26の下端面の高さ位置が種菌接種部50の配設高さ位置よりも上方位置となるまで係合爪集合体42を上昇させる。係合爪集合体42の上方位置は、係合爪集合体退避高さ位置検出センサ(図示省略)により検出させ、動作制御部60に検出信号を送信し、動作制御部60が受信した検出信号に基づいて昇降モータ44Aを停止させる処理を実行することもできる。
【0040】
次に動作制御部60は、往復用モータ58Aを作動させることで、
図17および
図18に示すように、種菌接種部50の上流側部分50Aと下流側部分50Bを接種位置SAに待機している栽培瓶20の瓶口24の開口面直上位置まで移動させる。このようにして瓶口24の直上位置にノズル52を移動させた後、動作制御部60はピンチバルブ55を作動させて(開いて)、バッファ部56において加圧された液体種菌をノズル52から培地22に向けて噴射して接種する。培地22への液体種菌の接種が完了すると、動作制御部60は往復用モータ58Aを作動させ、
図19に示すように、リンク機構58Bとガイド体(本体フレーム101)によって種菌接種部50の上流側部分50Aと下流側部分50Bを退避位置に退避させる処理を実行する。
【0041】
次に動作制御部60は、昇降モータ44Aを作動させることにより係合爪集合体42を下降させて、
図11に示すように係合爪43の高さ位置が、水平方向往復移動部46により水平移動する直前の高さ位置またはその高さ位置よりも下方位置まで下降させる。係合爪集合体42にはキャップ押圧部48が所定高さ位置に下方に付勢された状態で配設されており、係合爪集合体42の下降動作と同期して瓶口24に載置されたキャップ26の上端面を瓶口24に向けて押圧することで瓶口24にキャップ26が装着される。動作制御部60は水平方向往復移動部46を作動させて、係合爪集合体42を栽培瓶20の配設間隔位置に形成された隙間部分に戻した(
図12参照)後、昇降モータ44Aを作動させて係合爪集合体42を初期位置まで退避させる(
図1参照)処理を実行する。
【0042】
そして動作制御部60は、接種位置ストッパ32を解除して搬送部30によりコンテナ10を下流側に搬送する処理を実行する。搬送部30には複数のコンテナ10が連続的に供給されているので、以上の動作を繰り返し実行することにより、コンテナ10に収容された栽培瓶20の培地22に連続的に液体種菌を接種することができる。
【0043】
以上に本実施形態における液体種菌接種機100について説明したが、本発明の技術的範囲は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態における液体種菌接種機100は、キャップ押圧部48および瓶肩押さえ部49を有する形態を例示しているが、これらの構成は配設を省略することもできる。また、本実施形態におけるキャップ押圧部48は、係合爪集合体42に係合爪43と同様に吊り下げ保持された形態を例示しているがこの形態に限定されるものではない。キャップ押圧部48は、接種位置SAよりも下流側の搬送経路上に、液体種菌接種機100の構成の一部または別体として、コンテナ10の搬送方向に水平面内で直交する方向に掛け渡されたローラー式のキャップ押圧部48にすることもできる。
【0044】
また、本実施形態における昇降移動部44は、昇降モータ44Aの出力軸に連結した動作変換機構44Bと動作変換機構44Bの先端に配設したローラーベアリング44Cを有する形態を例示しているがこの形態に限定されるものではない。昇降モータ44Aの出力軸にカム板(図示省略)を取り付け、カム板のカム面に載置部40Dを載置した形態を採用することもできる。
【0045】
また、本実施形態における種菌接種部50は、上流側部分50Aと下流側部分50Bの2つにより接種位置SAに待機しているコンテナ10に収容された栽培瓶20への液体種菌の接種に対応しているが、この形態に限定されるものではない。種菌接種部50は、1つであってもよいし、3つ以上に分割することもできる。また、本実施形態における種菌接種部50は、加圧された液体種菌を供給する種菌供給部54とピンチバルブ55とバッファ部56を有する形態を例示しているが、この形態に限定されるものではない。要は、複数のノズル52から任意のタイミングで液体種菌を噴射することができる構成であればよい。さらには、種菌接種部50の上流側部分50Aと下流側部分50Bの往復移動装置58は、往復用モータ58Aとリンク機構58Bを用いた形態を例示しているが、この形態に限定されるものではない。流体シリンダや電磁ソレノイドに種菌接種部50の上流側部分50Aおよび下流側部分50Bを連結し、流体シリンダや電磁ソレノイドを伸縮させることにより往復移動させる形態を採用することもできる。
【0046】
さらには、以上に説明した本実施形態の構成に対し、明細書中に記載されている選択可能な構成については、その構成を省略した形態を採用することもできる。また、明細書中に記載した変形例や、他の公知の構成を適宜組み合わせた形態を採用することもできる。
【符号の説明】
【0047】
10 コンテナ
20 栽培瓶
22 培地,24 瓶口,26 キャップ,
30 搬送部
31 搬送用モータ,32 接種位置ストッパ,33 接種待機位置ストッパ,
40 キャップ脱着ユニット
40A ベース部,40B シャフト取付板,40C シャフト,40D 載置部,
40E 基部,40F 載置部分,
42 係合爪集合体,42A 保持板,43 係合爪,
44 昇降移動部,
44A 昇降モータ,44B 動作変換機構,44C ローラーベアリング,
46 水平方向往復移動部,48 キャップ押圧部,
49 瓶肩押さえ部,49A 流体シリンダ,
50 種菌接種部
50A 上流側部分,50B 下流側部分,
51 接種部本体フレーム,52 ノズル,53 送液チューブ,54 種菌供給部,
55 ピンチバルブ,56 バッファ部,
58 往復移動装置,58A 往復用モータ,58B リンク機構,
60 動作制御部
100 液体種菌接種機
101 本体フレーム
SA 接種位置,TA 接種待機位置
CS コンテナ検出センサ
CC キャッチクリップ
KS 回動量検出センサ
US 上端部センサ,LS 下端部センサ
TK 爪回避部