(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006965
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】蛇行修正システム
(51)【国際特許分類】
B65H 23/038 20060101AFI20230111BHJP
B65H 26/02 20060101ALI20230111BHJP
B65H 43/08 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B65H23/038 Z
B65H26/02
B65H43/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109866
(22)【出願日】2021-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】508171228
【氏名又は名称】株式会社エリアデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】川崎 美智雄
【テーマコード(参考)】
3F048
3F104
3F105
【Fターム(参考)】
3F048AB01
3F048AB05
3F048AB07
3F048AC02
3F048BA20
3F048BA22
3F048BB02
3F048CC05
3F048DA06
3F048DB02
3F048DB06
3F048DC14
3F048EB24
3F104AA01
3F104AA03
3F104AA05
3F104CA11
3F104CA15
3F104JA03
3F104JB01
3F104JB05
3F104JC06
3F105AA01
3F105AA04
3F105AA08
3F105BA20
3F105CA13
3F105DA29
3F105DA68
3F105DB11
3F105DC13
(57)【要約】
【課題】 本発明は、極薄のワークや、柔らかいワークに対応可能である蛇行修正装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、一方向に連続して流れるシート状のワーク2を挟持する一対のローラ3,4と、該一対のローラ3,4のワーク進行方向両側にかかる負荷のバランスを調整するバランス調整機構5とを少なくとも具備する蛇行修正装置1において、前記一対のローラ3,4は、それぞれ弾性部材で形成されること、前記一対のローラ3,4は、シート状のワークの幅よりも狭い幅を有すること、および、前記一対のローラ3,4は、それぞれの両端部に円弧状の曲面3a,3b,4a,4bが形成されることにある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に連続して流れるシート状のワークを挟持する一対のローラと、該一対のローラのワーク進行方向両側にかかる負荷のバランスを調整するバランス調整機構とを少なくとも具備する蛇行修正装置において、
前記一対のローラは、それぞれ弾性部材で形成されること、
前記一対のローラは、シート状のワークの幅よりも狭い幅を有すること、および、
前記一対のローラは、それぞれの両端部に円弧状の曲面が形成されることを特徴とする蛇行修正装置。
【請求項2】
前記一対のローラの一方は、該ローラを回転自在に保持する第1の回転軸を有し、該第1の回転軸が、その両端が固定壁部に回転自在に固定され、
前記一対のローラの他方は、該ローラを回転自在に保持する第2の回転軸を有し、
前記バランス調整機構が、前記第2の回転軸の両端部を回転自在に保持する第1および第2の支持アームと、該第1および第2の支持アームを橋架する橋架ロッドと、前記橋架ロッドに負荷をかけつつ移動可能な負荷部と、該負荷部を前記橋架ロッド上で移動させる移動手段と、前記ワークの両端部の位置を検出する検出手段と、該検出手段の検出結果にしたがって、前記ワークの両端部の位置が均一となるように、前記移動手段を制御する制御手段とを具備することを特徴とする請求項1記の記載の蛇行修正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙、樹脂、金属等の特に薄いシート状(帯状)のワークを搬送する場合に生じるワークの蛇行を修正するための蛇行修正システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特公昭62-10892号公報)は、処理液を使用して鋼板の表面処理をする工程を備えた連続走行ラインにおいて、前記表面処理工程から出て走行する鋼板の両側面を、ロール表面をゴム等の軟質材で形成した上下一対の絞りロールでその絞りロールの両端部を個別に加圧することにより鋼板全巾にわたって加圧して、鋼板表面に付着した前記処理液を常時脱液するようにするとともに、前記絞りロールの上流側または下流側の近傍に設けた蛇行量検出手段で前記鋼板の蛇行量を検出し、この検出値に応じて前記絞りロールの両端部の加圧度合いを個別に調整して前記鋼板の蛇行を修正するようにしたことを開示する。
【0003】
特許文献2(実開昭57-136517号公報)は、鋼板巻取り機の巻ずれ防止装置を開示する。この巻ずれ防止装置は、入口側にピンチロールを備えた鋼板巻取り機において、ピンチロールにロールペンディング装置を備えるとともに、ピンチロールの直前または直後に鋼板蛇行検出器を設け、上記蛇行検出器の出力に応じて上記ピンチロールのペンディングを制御するものである。
【0004】
特許文献3(特開2019-18971号公報)は、極薄のワークや、柔らかなワークに対応可能であり、また遅い搬送スピードにも対応可能な蛇行修正システムに関するもので、一方向に連続して流れるシート状のワークを挟持する一対のローラを具備し、一対のローラのそれぞれが、弾性材料によって形成され、それぞれのローラの両端が、それぞれ独立してワーク方向に移動可能であり、それぞれのローラの両端を、ワーク方向に向かって適宜移動させることによって、一対のローラとワークとの接触面をワークの移動方向に垂直な方向において変化させて蛇行を防止するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭62-10892号公報
【特許文献2】実開昭57-136517号公報
【特許文献3】特開2019-18971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体業界において、ワーク、例えば基板用のベースフィルムは、従来100μmであった厚みが今や50μm、25μmと薄くなり、今後さらに5μm~10μmと薄くすることが求められており、現存する設備では対応できなくなること等の問題が想定される。これらの問題の中で、特にネックとなる問題は、ワークが薄く柔らかいことから蛇行修正が難しいことである。
【0007】
上述した引用文献1および2では、対象が所定の厚さを有する鋼板であることから、上述した課題は、引用文献1および2では解決できない。このため、本出願人は、特許文献3を開発した。薄すぎるワークの場合、進行方向を変化させようとすると、厚手の鋼板の場合と異なり、折れや皺となり、また側端部が折りたたまれてしまうという不具合が生じたが、この特許文献3では、ワークをニップする蛇行修正用のローラに駆動力を与えることによって、ローラの前後のワークの張力を、下流側に対して上流側を大きくすることによって解決するようにした。
【0008】
さらに、薄すぎるワークにおいては、弾性部材からなる上下2本のローラ、例えばゴムローラに挟んで蛇行修正を行う場合、ゴムローラの幅内にワークが納まっていると、ローラの一方の端部に押圧力が加わった時に、一方の側のローラ端部が押し塞がれるため、ワークの側端の行き先が塞がれるという不具合が生じる。
【0009】
また、従来のエッジポジションコントロール(EPC)は、±2~3mmの範囲で調整幅が許容されていたが、将来的には0.5mm~1.0mmの範囲内の調整幅が求められている。
【0010】
また、特許文献1乃至3に記載の蛇行修正装置においては、ローラを回転自在に支持する回転軸の両端部それぞれに直接荷重をかける場合、ワークの薄さに対して荷重の変動が大きいため、適切な蛇行修正制御ができないという不具合が生じる。
【0011】
このため、本発明は、極薄のワークや、柔らかいワークに対応可能である蛇行修正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、一方向に連続して流れるシート状のワークを挟持する一対のローラと、該一対のローラのワーク進行方向両側にかかる負荷のバランスを調整するバランス調整機構とを少なくとも具備する蛇行修正装置において、前記一対のローラは、それぞれ弾性部材で形成されること、前記一対のローラは、シート状のワークの幅よりも狭い幅を有すること、および、前記一対のローラは、それぞれの両端部に円弧状の曲面が形成されることにある。
【0013】
これによって、非常に薄いシート状のワークの蛇行を修正する蛇行修正装置において、ワークの蛇行を調整するバランス調整機構による負荷のバランス調整により、シート状のワークの外方向へ移動する場合に、ワークの端部がローラによる押圧力によって生じる端部の折れや皺を防止できるものである。
【0014】
さらに、前記一対のローラの一方は、該ローラを回転自在に保持する第1の回転軸を有し、該第1の回転軸が、その両端が固定壁部に回転自在に固定され、前記一対のローラの他方は、該ローラを回転自在に保持する第2の回転軸を有し、前記バランス調整機構が、前記第2の回転軸の両端部を回転自在に保持する第1および第2の支持アームと、該第1および第2の支持アームを橋架する橋架ロッドと、前記橋架ロッドに負荷をかけつつ移動可能な負荷部と、該負荷部を前記橋架ロッド上で移動させる移動手段と、前記ワークの両端部の位置を検出する検出手段と、該検出手段の検出結果にしたがって、前記ワークの両端部の位置が均一となるように、前記移動手段を制御する制御手段とを具備することが望ましい。
【0015】
これによって、一対のローラの一方、例えば下部ローラは、移動しない回転軸によって回転自在に支持されるとともに、一対のローラの他方、例えば上部ローラがバランス調整機構によって、ワークの両側において下部ローラにかかる負荷を調整されるため、ワークの蛇行が修正される。具体的には、ワークの両側の位置を検出手段によって検出し、ワークがずれていることが検出された場合に、制御手段によって負荷部を橋架ロッド上で所定の方向に移動させて上部ローラの下部ローラに対する両端部の負荷のバランスを変更し、蛇行を修正することができるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ローラの幅をワークの幅よりも小さくするとともに、それぞれのローラの両端部の円弧状の曲面を有したことによって、ワークの両端の皺等の発生を防止することができるものである。
【0017】
さらに、従来の場合と異なり、例えば上部ローラによる下部ローラの両端にかかる負荷を、上部ローラの回転軸を支持するそれぞれの支持アームを橋架する橋架ロッドの一点に負荷をかける負荷部を移動させることによって上部ローラの回転軸の両端端にかかる負荷のバランスを調整するため、負荷の微細な制御が可能になるため、極薄のワーク厚さにも対応することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施例に係る蛇行修正装置の一例を示した説明正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例に係る蛇行修正装置の一例を示した説明平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例に係る蛇行修正装置の一例を示した説明側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例に係る蛇行修正装置のローラの端部部分を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例について、図面により説明する。
【実施例0020】
図1乃至
図3に示される本発明の実施例に係る蛇行修正装置1は、一方向に連続して流れるシート状のワーク2を挟持する一対のローラ3,4と、該一対のローラ3,4のワーク進行方向両側にかかる負荷のバランスを調整するバランス調整機構5とを少なくとも具備する。この蛇行修正装置1において、前記一対のローラ3,4は、それぞれ天然ゴム、合成樹脂等の弾性部材で形成され、シート状のワーク2の幅よりも狭い幅を有し、さらに、それぞれの両端部に円弧状の曲面3a,3b,4a,4bが形成される。
【0021】
前記一対のローラの一方である下部ローラ3は、この下部ローラ3を回転自在に保持する第1の回転軸30を有し、この第1の回転軸30が、その両端が固定壁部6a,6bに回転自在に固定される。これによって、第1の回転軸30は、固定壁部6a,6bに移動不能に且つ回転自在に保持される。
【0022】
さらに、前記一対のローラの他方である上部ローラ4は、この上部ローラ4を回転自在に保持する第2の回転軸40を有する。
【0023】
前記バランス調整機構5は、前記第2の回転軸40の両端部を回転自在に保持する第1および第2の支持アーム7a,7bと、該第1および第2の支持アーム7a,7bを橋架する橋架ロッド8と、前記橋架ロッド8に負荷をかけつつ移動可能な負荷部10と、該負荷部10を前記橋架ロッド8上で移動させる移動装置11と、前記ワーク2の両端部の位置を検出する検出センサー12a,12bと、この検出装置12a,12bの検出結果にしたがって、前記ワーク2の両端部の位置が均一となるように、前記移動装置11を制御する図示しない制御装置を具備する。
【0024】
前記負荷部10は、前記橋架ロッド8に移動可能に保持される移動部10aと、この移動部10aを前記橋架ロッド8側に付勢するシリンダ10bとによって構成される。前記負荷部10は、補助ロッド8aと、移動装置11が移動するための移動ロッド8bとによって支持される(
図2参照)。前記移動装置11は、移動ロッド8b上を移動するための電動モータ11aを具備する。
【0025】
以上の構成により、検出センサー12a,12bによってワーク2のずれが検出された場合、そのずれに対応するように制御装置が、前記移動装置11を作動させ、前記負荷部10を橋架ロッド8に沿って移動させ、前記支持アーム7a,7bを介して前記上部ローラ4の両端に係る負荷のバランスを変化させ、ワーク2の偏りを調整し、ワーク2の蛇行修正が達成できるものである。
【0026】
さらに、ローラ3,4の端部を、曲面3a,3b,4a,4bとしたことによって、
図4(a)で示す通常の状態(均等に負荷がかかった状態)から、
図4(b)で示すローラ3,4の端部の負荷バランスが偏った状態(一方の端部で負荷が増大し他方の端部で負荷が減少した状態)でも、ワーク2の端部には、余分な負荷がかからないため、ワーク2の端部3a,3b,4a,4bでの皺や折れ込みを防止できるものである。
【0027】
さらにまた、
図3に示すように、下部ローラ3を電動モータで回転力を与え、上部ローラ4と下部ローラ3でワーク2が挟持される箇所の上流側でワーク2にかかる張力W1と下流側でワーク2にかかる張力W2の間に、W1>W2の関係が生じるようにするものである。これによって、ローラ3,4に挟まれるワーク2を引く状態において蛇行修正が可能となるものである。