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特開2023-69683キャニスター収容器具、及びキャニスター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069683
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】キャニスター収容器具、及びキャニスター
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/20 20060101AFI20230511BHJP
   A61J 3/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B65D25/20 Z
B65D25/20 P
A61J3/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181738
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】516275583
【氏名又は名称】SPLine株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】小椋 哲
【テーマコード(参考)】
3E062
4C047
【Fターム(参考)】
3E062AA01
3E062BA20
3E062DA02
3E062DA04
3E062JB01
4C047AA05
4C047AA40
4C047CC04
(57)【要約】
【課題】凍結保存容器の中で凍結保存されている凍結保存対象物が入れ替えられてしまう不都合を抑制する。
【解決手段】キャニスター10は、薬液(凍結保存対象物)を収納したバイアル(収納体)を保持し、且つシャフト部12の下部に固定される試料容器保持部と、シャフト部12の上部に固定されるキャニスター側被締結片13(第一被締結部)と、を備え、キャニスター収容器具20は、胴部21の上部開口21aの一部を覆う上部カバー22と、上部カバー22の上面に設けられ、且つ試料容器保持部が胴部22内の各収容室に収容された状態で締結具41(締結手段)によりキャニスター側被締結片13と締結される複数の収容器具側被締結部222a(第二被締結部)と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキャニスターを収容した状態で凍結保存容器の内部に格納されるキャニスター収容器具であって、
前記キャニスターは、
凍結保存対象物を収納した収納体を保持する収納体保持部と、
下部が前記収納体保持部に固定されたシャフト部と、
前記シャフト部の上部に固定され、且つ締結手段により前記キャニスター収容器具に締結される第一被締結部と、を備え、
前記キャニスター収容器具は、
上部開口を有する筒状の胴部と、
前記収納体保持部を前記胴部の中空部内に出し入れする出入口を有し、且つ前記胴部の前記上部開口の一部を覆う上部カバーと、
前記胴部の前記中空部内に形成され、各前記キャニスターの前記収納体保持部を夫々収容する複数の収容室と、
各前記収納体保持部を各前記収容室に収容した状態で前記締結手段により各前記キャニスターの前記第一被締結部と夫々締結される複数の第二被締結部と、を備えることを特徴とするキャニスター収容器具。
【請求項2】
前記胴部は、円筒状又は正多角筒状であり、
各前記収容室は、前記胴部の軸線を中心とする回転対称の位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のキャニスター収容器具。
【請求項3】
前記凍結保存容器は、前記キャニスター収容器具を格納する格納空間を、該格納空間の外周側に貯留された液体状の冷媒によって冷却する構成を備え、
前記収容室の底面を構成する底板部は、前記胴部の下端縁よりも上方に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載のキャニスター収容器具。
【請求項4】
前記出入口に面した前記上部カバーの周縁部には、各前記収容室に夫々収容された各前記キャニスターの前記シャフト部を夫々受け入れる複数の切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のキャニスター収容器具。
【請求項5】
前記第一被締結部は、前記締結手段の一部分が挿通可能な第一挿通空所を備え、
各前記第二被締結部は、各前記収納体保持部が各前記収容室に収容された状態で各前記第一挿通空所の夫々と位置が整合され、且つ前記締結手段の一部分が挿通可能な複数の第二挿通空所を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のキャニスター収容器具。
【請求項6】
各前記第二被締結部は、前記上部カバーの上面から上方に突設された突出片対を備え、
1の前記突出片対を構成する2つの突出片は、1の前記第一被締結部を受け入れ可能な間隙を有して対向配置されており、
2つの前記突出片には、前記第二挿通空所が夫々貫通形成されていることを特徴とする請求項5に記載のキャニスター収容器具。
【請求項7】
キャニスター収容器具に収容された状態で凍結保存容器に格納されるキャニスターであって、
凍結保存対象物を収納した収納体を保持する収納体保持部と、
下部が前記収納体保持部に固定されたシャフト部と、
前記シャフト部の上部に固定され、且つ締結手段により前記キャニスター収容器具に締結される被締結部と、を備えることを特徴とするキャニスター。
【請求項8】
前記被締結部は、前記締結手段の一部分が挿通可能な挿通空所を備えることを特徴とする請求項7に記載のキャニスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャニスター収容器具、及びキャニスターに関する。
【背景技術】
【0002】
凍結保存対象物(例えば薬液)を収納した試料容器(例えばバイアル)を保持し、該試料容器を凍結保存容器(例えば凍結保存ボトル)の内部空間に格納するキャニスターが知られている。
例えば、特許文献1には、試料容器を保持する試料容器保持部と、下部が試料容器保持部に固定されたシャフト部と、シャフト部の上部に設けられ、凍結保存容器の上部開口に懸架される上部懸架部と、を備えたキャニスターが開示されている。
特許文献1に記載されたキャニスターを用いることにより、凍結保存容器の内部空間に複数個の試料容器を格納して凍結保存対象物を凍結保存することができ、且つ各試料容器を個別に凍結保存容器の内部空間から取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-180306公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、キャニスターの上部懸架部は凍結保存容器の上部開口に懸架されているが、固定されていないために凍結保存容器からの取り出しが自由に行える。このため、キャニスターを出し入れする過程でどのキャニスターにどのような凍結保存対象物が保持されているのか不明になることがある。また、凍結保存容器内のどの位置にどのキャニスターが配置されているのかが不明になることもある。
さらに、凍結保存容器からキャニスターを取り出すことにより、凍結保存容器の中で凍結保存されている試験対象物を別の物に入れ替えることもできるし、凍結保存容器内における試験対象物の格納位置を入れ替えることもできる。
【0005】
二重盲検法による試験では、試験の実施者と被験者には試験対象物(凍結保存対象物)の内容や性質は知らされない。このため、試験対象物の凍結保存容器への格納は、試験の実施者と被験者に知られない環境で行われる。従って、凍結保存容器に格納した試験対象物が運搬中や保管中に別の物に入れ替えられたり、試験対象物の格納位置が入れ替えられたとしても、試験の実施者や被験者は気づくことができない。
例えば、悪意のある第三者が試験の妨害を目的として、試験の実施者の知らないうちに、一旦取り出したキャニスターを本来の収容位置とは異なる位置に戻したり、試験対象物そのものを入れ替える場合が想定される。試験対象物について、試験の実施者が意図しない入れ替えが行われても、試験の実施者や被験者は気づくことができないため、試験の結果についての信頼性が著しく低下するという問題を惹起する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、凍結保存容器の中で凍結保存されている凍結保存対象物が入れ替えられてしまう不都合を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、複数のキャニスターを収容した状態で凍結保存容器の内部に格納されるキャニスター収容器具であって、前記キャニスターは、凍結保存対象物を収納した収納体を保持する収納体保持部と、下部が前記収納体保持部に固定されたシャフト部と、前記シャフト部の上部に固定され、且つ締結手段により前記キャニスター収容器具に締結される第一被締結部と、を備え、前記キャニスター収容器具は、上部開口を有する筒状の胴部と、前記収納体保持部を前記胴部の中空部内に出し入れする出入口を有し、且つ前記胴部の前記上部開口の一部を覆う上部カバーと、前記胴部の前記中空部内に形成され、各前記キャニスターの前記収納体保持部を夫々収容する複数の収容室と、各前記収納体保持部を各前記収容室に収容した状態で前記締結手段により各前記キャニスターの前記第一被締結部と夫々締結される複数の第二被締結部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、凍結保存容器の中で凍結保存されている凍結保存対象物が入れ替えられてしまう不都合を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)はキャニスターを右斜め前方から見た斜視図、(b)はキャニスターの背面図、(c)は薬液を封入したバイアル、及びバイアルの包装箱を示す斜視図、(d)は紐付きタグの説明図、(e)は締結具の一例を示す斜視図である。
図2】キャニスター収容器具の斜視図である。
図3】キャニスター収容器具の断面図である。
図4】キャニスターの試料容器保持部を収容室内に収容した状態を説明する図である。
図5】キャニスター側被締結片と収容器具側突出片対とを、締結具によって締結した状態を説明する図である。
図6】複数のキャニスターを収容したキャニスター収容器具を、凍結保存容器の上部空間に差し入れた状態を説明する図である。
図7】複数のキャニスターを収容したキャニスター収容器具を、凍結保存容器の格納空間に格納した状態を説明する図である。
図8】凍結保存容器の内部構造を説明する斜視図である。
図9】凍結保存容器が備える容器本体の平面図である。
図10】凍結保存容器が備える容器本体の断面図である。
図11】キャニスター収容器具が備える収容室を説明する横断面図である。
図12】収容室を説明する部分拡大断面図である。
図13】キャニスター収容器具が備える把手を説明する斜視図である。
図14】バイアルの凍結保存容器への格納手順を説明する図であり、キャニスターの試料容器保持部にバイアルを収納した包装箱を保持させ、キャニスター側被締結片に紐付きタグを取り付け、且つ締結具、薬液の箱、及びタグの夫々に識別用の番号が記載されたラベルを貼付した状態を説明する図である。
図15】バイアルの凍結保存容器への格納手順を説明する図であり、キャニスターの試料容器保持部をキャニスター収容器具の上方に位置付けた状態を説明する図である。
図16】バイアルの凍結保存容器への格納手順を説明する図であり、キャニスターの試料容器保持部をキャニスター収容器具の内部に差し入れた状態を説明する図である。
図17】バイアルの凍結保存容器への格納手順を説明する図であり、キャニスターを傾けて試料容器保持部をキャニスター収容器具内の壁面付近に位置付けた状態を説明する図である。
図18】バイアルの凍結保存容器への格納手順を説明する図であり、キャニスターの試料容器保持部を収容室の直上に位置付けた状態を説明する図である。
図19】バイアルの凍結保存容器からの取り出し手順を説明する図である。
図20】(a)は第1変形例のキャニスターを説明する図、(b)は第1変形例のキャニスター収容器具の上部を説明する図、(c)は第1変形例のキャニスターとキャニスター収容器具とを、締結具によって締結した状態を説明する図である。
図21】第2変形例のキャニスター収容器具が備える収容室を説明する横断面図である。
図22】第2変形例のキャニスター収容器具が備える収容室を説明する部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<キャニスター10、及びキャニスター収容器具20の特徴>
最初に、キャニスター10、及びキャニスター収容器具20の特徴について説明する。
図1はキャニスター10、バイアル52、紐付きタグ30、及び締結具41を説明する図、図2はキャニスター収容器具20の斜視図、図3はキャニスター収容器具20の断面図、図4はキャニスター10の試料容器保持部11を収容室SP2内に収納した状態を説明する図、図5はキャニスター側被締結片13と収容器具側突出片対222とを、締結具41によって締結した状態を説明する図、図6は複数のキャニスター10を収容したキャニスター収容器具20を、凍結保存容器100の上部空間SP32に差し入れた状態を説明する図、図7は複数のキャニスター10を収容したキャニスター収容器具20を、凍結保存容器100の格納空間SP31に格納した状態を説明する図である。
【0011】
図1に示すように、キャニスター10は、薬液51(凍結保存対象物、試料)を収納したバイアル52(収納体、試料容器)を、当該バイアル52を収納した包装箱53のまま保持可能な試料容器保持部11(収納体保持部)と、金属製の丸棒等の棒状部材によって構成され、且つ下部12dが試料容器保持部11に固定されたシャフト部12と、シャフト部12の上部12uに固定された有孔板片によって構成され、締結具41(締結手段)によってキャニスター収容器具20(図2を参照)に締結されるキャニスター側被締結片13(第一被締結部)と、を備えている。
図2乃至図5に示すように、キャニスター収容器具20は、上部開口21aを有する筒状の胴部21と、キャニスター10の試料容器保持部11を胴部21の中空部SP1内に出し入れする出入口221を有し、且つ胴部21の上部開口21aの一部を覆う上部カバー22と、胴部21の中空部SP1内の下側部分に形成され、各キャニスター10の試料容器保持部11を個別に収容する複数の収容室SP2と、各試料容器保持部11を各収容室SP2に収容した状態で締結具41(締結手段)により各キャニスター側被締結片13と夫々締結される複数の収容器具側突出片対222(第二被締結部)と、を備えている。
図6、及び図7に示すように、凍結保存容器100は、キャニスター収容器具20を格納する格納空間SP31、及び格納空間SP31の上方に格納空間SP31と一連に設けられた上部空間SP32を備え、格納空間SP31よりも外周側の部分が液体状の冷媒LQ(液体窒素や液体空気)で満たされている容器本体110と、容器本体110に対して着脱自在に装着され、上部空間SP32を塞ぐ蓋部材120と、を備えている。
【0012】
以上のキャニスター10、及びキャニスター収容器具20を用いて薬液51入りのバイアル52を凍結保存容器100の格納空間SP31に格納する手順について概略を説明する。
最初に、薬液51入りのバイアル52を包装箱53ごとキャニスター10の試料容器保持部11に保持させる。次に、図4に示すように、キャニスター収容器具20の収容室SP2にキャニスター10の試料容器保持部11を収容し、その後、図5に示すように、キャニスター側被締結片13と収容器具側突出片対222とを締結具41によって締結する。
【0013】
各収容室SP2のそれぞれにキャニスター10を収容し、且つ各キャニスター側被締結片13と各収容器具側突出片対222とをそれぞれ締結具41によって締結したならば、キャニスター収容器具20を凍結保存容器100の容器本体110の内部に形成された格納空間SP31に格納する。
例えば、図6に示すように、各キャニスター10を収容したキャニスター収容器具20を、容器本体110の上部空間SP32内に入れる。次に、図7に示すように、当該キャニスター収容器具20を格納空間SP31の内部に載置した後、容器本体110の上部空間SP32を蓋部材120によって塞ぐ。これによって、格納空間SP31の温度が冷媒LQによって極低温に維持され、バイアル52(収納体)に収納された薬液51(凍結保存対象物)が凍結保存される。
【0014】
そして、キャニスター収容器具20に収容されているキャニスター10は、キャニスター側被締結片13と収容器具側突出片対222とが締結具41によって締結されているため、キャニスター収容器具20から取り出すことが困難である。このため、凍結保存容器100の中で凍結保存されている薬液51入りのバイアル52が入れ替えられてしまう不都合を抑制できる。
例えば、二重盲検法による試験において、試験の実施者と被験者は、締結具41による締結状態が維持されていることに基づき、キャニスター10や包装箱53(バイアル52、薬液51)の取り出しや入れ替えが行われていないことを認識できる。
【0015】
<実施形態の説明>
以下、本発明に係るキャニスター10、及びキャニスター収容器具20の実施形態について詳しく説明する。
但し、以下に説明する実施形態の構成要素、各部寸法、手順、種類、組み合わせなどは、特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0016】
<凍結保存容器100>
キャニスター10、及びキャニスター収容器具20の説明に先立ち、凍結保存容器100について説明する。図8は凍結保存容器100の内部構造を説明する斜視図、図9は凍結保存容器100が備える容器本体110の平面図、図10は凍結保存容器100が備える容器本体110の断面図である。
【0017】
図8に示すように、凍結保存容器100は、内側空間SP3(格納空間SP31、上部空間SP32、冷媒室SP33)を有する容器本体110と、容器本体110に対して着脱自在であり、上部空間SP32を塞ぐ蓋部材120とを備えている。
容器本体110は横断面が円形であって、上端部分の直径が他の部分の直径よりも小さいボトル形状である。容器本体110は、外周壁111と内周壁112を備えた二重壁構造を採っている。外周壁111と内周壁112との間は密閉されており、密閉空間SP4を形成している。密閉空間SP4は減圧されており、外周壁111と内周壁112との間で熱が伝わり難い断熱構造を形成している。
【0018】
図8乃至図10に示すように、内側空間SP3は内周壁112よりも内側に設けられている。内側空間SP3における下側半部には、四角筒形状の隔壁113が設けられている。隔壁113によって、内側空間SP3の下側半部は、隔壁113よりも外側の冷媒室SP33と、隔壁113よりも内側の格納空間SP31とに液密状態で仕切られている。格納空間SP31には、キャニスター収容器具20が取り出し自在に格納される。また、内側空間SP3の上側半部は、格納空間SP31に連通した上部空間SP32である。
隔壁113は、伝熱性が高く、且つ極低温下においても使用可能な素材で作製されている。本実施形態において、隔壁113は、ステンレス鋼板で構成されているが、他の素材で作製してもよい。隔壁113の外周面には隔壁113の側方に延びる消波板114を設けている。消波板114は、上下方向に沿って間隔を空けた多段構成(例えば3段構成)であり、凍結保存容器100の移動時における冷媒室SP33内の冷媒LQ(図6図7を参照)の波打ちを抑制する。
【0019】
図9及び図10に示すように、容器本体110には、冷媒室SP33内の冷媒LQの液面を計測する液面計115と、冷媒室SP33内に冷媒LQを供給するための供給管116とが設けられている。
図8に示すように、蓋部材120は、容器本体110の上部空間SP32に対して着脱自在に嵌合される蓋本体121と、蓋本体121の上面に取り付けられた円盤形状の天板122と、を備えている。蓋本体121は、例えば、円柱形状の断熱材(発泡樹脂等)によって構成されている。天板122は、例えばステンレス鋼板等の金属によって構成されており、外周縁部は下向きに屈曲されている。
蓋部材120を容器本体110に取り付けることにより、格納空間SP31や冷媒室SP33の冷気が凍結保存容器100の外部に逃げ難くなり、冷媒室SP33に充填された冷媒LQの量が減り難くなる。
なお、凍結保存容器100は一例であり、キャニスター10を収容したキャニスター収容器具20を格納する格納空間SP31を有しており、且つ格納空間SP31においてキャニスター10に保持された薬液51を凍結保存できれば、他の構成を採ってもよい。
【0020】
<キャニスター10>
次に、キャニスター10について説明する。図1(a)、(b)に示すように、キャニスター10は、薬液51入りのバイアル52やバイアル52が収納された包装箱53を着脱自在に保持する試料容器保持部11と、ステンレス鋼の丸棒によって構成され、試料容器保持部11が下部に固定されたシャフト部12と、ステンレス鋼板によって構成され、シャフト部12の上部に固定されたキャニスター側被締結片13と、を備えている。
【0021】
試料容器保持部11は、例えば、厚さ1mmのステンレス鋼板によって構成されており、四角形状の底板部11aと、底板部11aの後縁から上方に立ち上がった後壁部11bと、底板部11aの左側縁から上方に立ち上がった左側壁部11cと、底板部11aの右側縁から上方に立ち上がった右側壁部11dと、左側壁部11cの前縁から右側に延出された左前壁部11eと、右側壁部11dの前縁から左側に延出された右前壁部11fと、を備えている。また、左側壁部11cには上端から下向きに四角形状に切り欠かれた左切り欠き部11gが設けられており、右側壁部11dには上端から下向きに四角形状に切り欠かれた右切り欠き部11hが設けられている。
底板部11aは、例えば、左右方向の幅、及び前後方向の長さが、それぞれ28mmの正方形状である。後壁部11bは、左右方向の幅が30mm、高さが60mmの縦長長方形状である。左側壁部11c、及び右側壁部11dは、前後方向の幅が30mm、高さが60mmの縦長長方形状である。左切り欠き部11g、及び右切り欠き部11hは、前後方向の幅、及び高さが、それぞれ20mmであり、且つ各切り欠き部11g,11hの前端は試料容器保持部11の前端から5mm後方に位置している。また、左前壁部11e、及び右前壁部11fの左右方向の幅はそれぞれ5mm、高さは60mmである。
なお、試料容器保持部11は、バイアル52やバイアル52が入った包装箱53を一つずつ着脱自在に保持できれば、上記の形状や大きさに限定されない。
【0022】
シャフト部12は、直径が5mm、長さが215mmのステンレス鋼製の丸棒によって構成されている。シャフト部12の下部12dは、試料容器保持部11の背面(後壁部11bの外表面)に溶接等によって固定されている。なお、シャフト部12は、この構成に限定されない。例えば、シャフト部12を、ステンレス鋼製の角棒によって構成してもよいし、途中に屈曲部を有する棒状部材によって構成してもよい。さらに、シャフト部12を、極低温下での耐性を有する樹脂によって構成してもよい。
キャニスター側被締結片13は、長方形状のステンレス鋼板によって構成されている。例えば、キャニスター側被締結片13は、厚さが2mm、短辺方向の高さが15mm、長辺方向の長さ(前後方向の長さ)が30mmのステンレス鋼板を用いて作製されている。キャニスター側被締結片13の後端部13cは、短辺方向に沿った角溝形状に屈曲されており、後端部13cの角溝内にはシャフト部12の上部12uが嵌合されている。そして、キャニスター側被締結片13の後端部13cとシャフト部12の上部12uとの間は、例えば溶接やカシメによって固定されている。
キャニスター側被締結片13には、円形の挿通空所13a(第一挿通空所)が貫通形成されている。例えば、挿通空所13aの直径は10mmである。なお、挿通空所13aは四角形状などの他の形状であってもよい。キャニスター側被締結片13の前側上部には紐付きタグ30を係止するための係止孔13bが貫通形成されている。係止孔13bは例えば直径が3mmである。
【0023】
図1(d)に示すように、紐付きタグ30は、細い紐状部材によって構成された連結紐31と、連結紐31の一端に取り付けられたフック32と、連結紐31の他端に取り付けられたタグ33と、を備えている。連結紐31は、極低温下でも柔軟性を有し、且つバイアル52等を保持したキャニスター10を吊り下げ可能な強度を有する紐状部材によって構成される。連結紐31は、金属製であってもよく、樹脂製であってもよい。
なお、連結紐31の長さは、キャニスター10がキャニスター収容器具20とともに凍結保存容器100の格納空間SP31に格納され、且つフック32がキャニスター側被締結片13に取り付けられた状態で、タグ33を凍結保存容器100の外側に位置付け可能な長さに定められる。
フック32は、キャニスター側被締結片13の係止孔13bに対して着脱自在であって、取り外し時には人による操作を必要とし、且つ極低温下であっても使用できるものが使用される。例示したフック32は、ステンレス鋼によって構成されており、釣り針形状のフック本体32aと、閉止位置と開放位置とに移動可能であってバネによって閉止位置に位置付けられる可動片32bと、を備えている。
タグ33には、バイアル52内の薬液51を識別するための識別情報(文字、数字、記号等)が付与される。識別情報の付与は、種々の方法を採ることができる。例えば、識別情報が描かれたラベルをタグ33の表面に貼付してもよいし、識別情報をタグ33の表面に直接記載してもよい。
【0024】
図1(e)に示すように、締結具41(締結手段)は、U字形状に湾曲された棒材によって構成され、キャニスター側被締結片13の挿通空所13a等に挿通されるツル部41aと、ツル部41aの両端を固定可能であって表面に識別情報(文字、数字、記号等)が付与可能な本体部41bと、を備えている。
本実施形態において、締結具41は、使い捨てタイプであり、極低温下でも使用可能な樹脂によって構成されている。ツル部41aは略U形状に折り返されており、締結具41は、ツル部41aの両端部が本体部41bに固定されることによって締結状態になる。そして、締結具41は、刃物によってツル部41aが切断されると締結状態が解かれる。
なお、締結具41は、キャニスター側被締結片13とキャニスター収容器具20(収容器具側突出片対222、図2等を参照)とを締結できれば、他の構成を採ってもよい。
【0025】
<キャニスター収容器具20>
次に、キャニスター収容器具20について説明する。図11はキャニスター収容器具20が備える収容室SP2を説明する横断面図、図12は収容室SP2を説明する部分拡大断面図、図13はキャニスター収容器具20が備える把手を説明する斜視図である。
図2図3図11、及び図12に示すように、キャニスター収容器具20は、円筒形状の胴部21と、キャニスター10の出入口221となる開口部が中心に設けられた円板形状であって、胴部21の上部開口21aの一部を覆う上部カバー22と、胴部21の中空部SP1内に形成され、各キャニスター10の試料容器保持部11を夫々収容する複数の収容室SP2と、を備えている。
胴部21は、厚さ1mmのステンレス鋼板によって構成されており、直径は140mm、高さは209mmであるが、この寸法に限定されない。上部カバー22も厚さ1mmのステンレス鋼板によって構成されており、直径は胴部21の内径と等しい138mmである。上部カバー22の開口部(キャニスター10の出入口221)は胴部21と同心に設けられており、直径が60mmである。
【0026】
上部カバー22の上面には、複数の収容器具側突出片対222(以下、単に突出片対222ともいう)が上方に向けて突設されている。1つの突出片対222を構成する2つの突出片222aは、略正方形状の金属板片である。例えば、厚さが1mm、横幅が15mm、高さが15mmのステンレス鋼板が用いられている。各突出片222aには、円形の挿通空所222b(第二挿通空所)が板厚方向に沿って貫通形成されている。例えば、挿通空所222bの直径は10mmであり、突出片222aの中心部に設けられている。なお、挿通空所222bは四角形状などの他の形状であってもよい。
2つの突出片222aは、キャニスター側被締結片13を受け入れ可能な間隔を空けて設けられている。例えば、2つの突出片222aは、互いに6mmの間隔を空けて平行に設けられている。
各突出片対222は、胴部21の軸線CL上に位置する上部カバー22の中心CP(図2を参照)を基点にする回転対称の位置に設けられている。具体的には、各突出片対222は、8回対象の位置(周方向に沿って45度間隔の位置)に設けられている。
【0027】
各突出片対222の上部カバー22の中心CPからの距離は、キャニスター側被締結片13の位置に応じて定められる。具体的には、キャニスター10を収容したときに、キャニスター側被締結片13を突出片222a同士の間に受け入れ可能であって、且つキャニスター側被締結片13の挿通空所13aと各突出片222aの挿通空所222bとが整合する位置(言い換えれば、締結具41のツル部41aが挿通可能な位置)に定められる。
上部カバー22の中心部に設けたキャニスター10の出入口221(出入口221に面した上部カバー22の内周縁部)には、キャニスター10のシャフト部12を受け入れ可能な切り欠き223が形成されている。切り欠き223は、複数の突出片対222のそれぞれに対応しており、各突出片対222よりも中心CP寄りの位置に形成されている。切り欠き223を設けてシャフト部12を受け入れることにより、キャニスター収容器具20へのキャニスター10の収容時において、キャニスター10の位置決めが容易になる。
【0028】
図2に示すように、上部カバー22には一対の把手26が設けられている。把手26は、キャニスター収容器具20を移動させるときに用いられ、周方向に沿って180度間隔を空けて設けられている。
図13に示すように、使用状態において把手26は、持ち手部分が上部カバー22よりも上方に引き出される。作業者は、持ち手部分を手で握ることにより、キャニスター収容器具20を移動させることができる。なお、図2に示すように、非使用状態において把手26は、持ち手部分が上部カバー22の表面に位置付けられており、作業の邪魔にならないように構成されている。
【0029】
図3図11図12に示すように、胴部21の中空部SP1の下側部分には、キャニスター10の試料容器保持部11が収容される収容室SP2が形成されている。
収容室SP2は、中心部分に正八角形状の中央空所が形成された円盤形状の底板部23と、底板部23の内周縁から上方に延びる筒状の中央隔壁筒24と、底板部23の上面と胴部21の内周面との間に、周方向に沿って所定間隔を空けて複数個設けられた周囲隔壁部25と、によって形成されている。各部23乃至25は、例えば厚さ1mmのステンレス鋼板によって構成される。
【0030】
図12に示すように、底板部23は、胴部21の下端縁よりも上方の位置に取り付けられている。例えば、底板部23は、胴部21の下端縁よりも10mm上方の位置に溶接等によって固定されている。このように、底板部23を胴部21の下端縁よりも上方の位置に取り付けることにより、格納空間SP31における温度が安定し易い範囲に薬液51(バイアル52、包装箱53)を配置できる。
図11に示すように、底板部23の中心部分に設けられた中央空所は正八角形状である。この中央空所は底板部23と同心に設けられている。底板部23の中心から中央空所の各頂点までの距離は例えば29mmである。
【0031】
中央隔壁筒24は、底板部23の中央空所と同じ正八角形の筒体によって構成されている。中央隔壁筒24の各外表面の幅は例えば23mm、中央隔壁筒24の高さはキャニスター10の試料容器保持部11の高さと同じ(例えば60mm)である。
周囲隔壁部25は、平面視がV字形状の屈曲板で構成されている。周囲隔壁部25の各外表面の幅は例えば25mm、周囲隔壁部25の高さはキャニスター10の試料容器保持部11の高さと同じ(例えば60mm)、周囲隔壁部25の中心角は45度である。
周囲隔壁部25は、V字部分の頂点が底板部23の中心と中央隔壁筒24の各頂部とを通る直線上に位置付けられ、且つV字部分の内角が当該直線によって二分割される向きに配置されている。そして、各周囲隔壁部25は、胴部21の軸線CLを基点に8回対象の位置(周方向に沿って45度間隔の位置)に設けられている。
【0032】
図3図11図12に示すように、胴部21の中空部SP1の下側部分には、複数の収容室SP2が、底板部23、中央隔壁筒24、及び周囲隔壁部25によって、胴部21の軸線CLを中心とする回転対称の位置に形成される。例えば、8個の収容室SP2が8回対象の位置に形成される。この例において、各収容室SP2は、奥行きLSP2が42mm、幅WSP2が34mm、高さHSP2が60mmである。
なお、各収容室SP2に関し、キャニスター10の試料容器保持部11が収容できれば、この構成に限定されない。
【0033】
図4で説明したように、各収容室SP2には、バイアル52入りの包装箱53を保持した試料容器保持部11が収容される。
各収容室SP2は、底板部23、中央隔壁筒24、及び周囲隔壁部25によって仕切られた状態で胴部21内に設けられているため、キャニスター収容器具20の底面側から試料容器保持部11に保持されている包装箱53を取り出すことはできない。
さらに、上部カバー22の中心部に設けられた出入口221が直径60mmと小径であり、且つキャニスター10の収容状態においてシャフト部12が胴部21内の中心側に位置付けられていることから、出入口221から手やトングを差し入れて試料容器保持部11に保持されている包装箱53を取り出すことも難しい。
従って、キャニスター10がキャニスター収容器具20に収容され、且つ締結具41によってキャニスター10がキャニスター収容器具20に締結されると、試料容器保持部11に保持された包装箱53(薬液51入りのバイアル52)をキャニスター収容器具20の外側に取り出すことは困難である。
【0034】
また、複数の収容室SP2が回転対称の位置に形成されているため(図11を参照)、収容位置の基準になる収容室SP2がなく、キャニスター10(バイアル52)を収容している収容室SP2の位置が特定され難い。
【0035】
<バイアル52に入った薬液51の凍結保存手順>
次に、バイアル52(収納体、試料容器)に収容された薬液51(凍結保存対象物、試料)の凍結保存手順について説明する。図14乃至図18はバイアル52(キャニスター10)の凍結保存容器100への格納手順を説明する図、図19はバイアル52(キャニスター10)の凍結保存容器100からの取り出しを説明する図である。
【0036】
図14に示すように、薬液51を凍結保存するにあたり、包装箱53、紐付きタグ33、及び締結具41のそれぞれに、共通の識別情報ID(例えば数字)が描かれたラベルLB1、LB2、LB3を貼付する。なお、包装箱53には、薬液51入りのバイアル52が収納されている。
次に、包装箱53をキャニスター10の試料容器保持部11に保持させ、紐付きタグ33のフック32をキャニスター側被締結片13の係止孔13bに取り付ける。
【0037】
図15、及び図16に示すように、包装箱53を試料容器保持部11に保持したキャニスター10を、試料容器保持部11を下側にしたままキャニスター収容器具20の直上(出入口221の真上)に移動させ、その後、キャニスター10を下降させて試料容器保持部11をキャニスター収容器具20の内部(中空部SP1)に位置付ける。
図17、及び図18に示すように、キャニスター10を斜めに傾けて試料容器保持部11の底板部11aを対応する収容室SP2の直上に位置付け、その後、キャニスター10を直立させる。このとき、キャニスター10のシャフト部12を上部カバー22の切り欠き223に嵌め込む。
次に、図4に示すようにキャニスター10を下降させ、試料容器保持部11を収容室SP2に収容し、キャニスター側被締結片13を2つの突出片222aの間に差し入れ、キャニスター側被締結片13の挿通空所13aと各突出片222aの挿通空所222bの位置を整合させる。その後、図5に示すように、締結具41のツル部41aを、キャニスター側被締結片13の挿通空所13aと各突出片222aの挿通空所222bとに挿通し、締結具41によってキャニスター側被締結片13と突出片対222とを締結する。
以上の操作を、複数のキャニスター10のそれぞれについて行うことにより、各キャニスター10のキャニスター収容器具20への収容が終了する。
【0038】
図6、及び図7に示すように、各キャニスター10のキャニスター収容器具20への収容が終了したならば、各キャニスター10を収容したキャニスター収容器具20を凍結保存容器100の格納空間SP31に格納し、蓋部材120によって凍結保存容器100の上部空間SP32を塞ぐ。これにより、バイアル52に入った薬液51の凍結保存が行える。
前述したように、格納空間SP31に格納されたキャニスター収容器具20では、締結具41によってキャニスター10がキャニスター収容器具20に締結されているため、締結具41による締結を解かないと、試料容器保持部11に保持された包装箱53(薬液51入りのバイアル52)をキャニスター収容器具20の外側に取り出すことは困難である。従って、包装箱53(バイアル52、薬液51)が別の物に入れ替えられる不都合を抑制できる。同様に、キャニスター10(包装箱53)を本来の収容位置とは異なる位置に収容する不都合も抑制できる。
【0039】
なお、図7に示すように、蓋部材120によって凍結保存容器100の上部空間SP32を塞ぐときに、紐付きタグ33が有するタグ33を凍結保存容器100の外側に出しておく。タグ33を凍結保存容器100の外側に出しておくことにより、凍結保存容器100の中から所望のキャニスター10(薬液51入りのバイアル52)を容易に取り出すことができる。
【0040】
凍結保存容器100の中から所望のキャニスター10を取り出す場合には、最初に、凍結保存容器100の外に出ているタグ33を確認して取り出し対象のキャニスター10を定める。取り出し対象のキャニスター10を定めたならば、紐付きタグ33の連結紐31を辿ることにより、対象のキャニスター10を締結している締結具41を特定する。
次に、特定した締結具41のツル部41aをニッパー等の切断具で切断し、連結紐31を操作してキャニスター10をキャニスター収容器具20から引き上げる。この場合、図19に示すように、連結紐31を引っ張ってキャニスター10の試料容器保持部11を収容室SP2よりも上方に引き上げる。そして、試料容器保持部11を中空部SP1の中心部(出入口221の下方)に位置させた状態で連結紐31を引っ張り、キャニスター10を凍結保存容器100の外に取り出す。
このように、キャニスター10に紐付きタグ33を取り付けているため、キャニスター10の凍結保存容器100からの取り出し作業を容易に行うことができる。
【0041】
<第1変形例>
前述の実施形態において、キャニスター10はキャニスター側被締結片13を備え、キャニスター収容器具20は収容器具側突出片対222を備えていたが、この構成に限定されない。
図20は第1変形例のキャニスター10A、第1変形例のキャニスター収容器具20Aの上部、及び第1変形例のキャニスター10Aとキャニスター収容器具20Aとを、締結具41Aによって締結した状態を説明する図である。
図20に示すように、第1変形例は、締結具41Aがタグ42a’付きの結束用バンド41a’によって構成されている点と、キャニスター側被締結部13A(第一被締結部)、及び収容器具側被締結部222A(第二被締結部)としてU字形状に屈曲された金属棒が用いられている点が特徴的である。なお、他の構成は前述の実施形態と同じであるため、同じ符号を付して説明は省略する。
【0042】
図20(a)に示すキャニスター10Aにおいて、シャフト部12の上端部に設けられたキャニスター側被締結部13AはU字形状に屈曲された金属製丸棒で構成されており、キャニスター側被締結部13Aの両端部は溶接等によってシャフト部12に固定されている。また、シャフト部12の上端面には、金属製の係止リング13Bが固定されている。係止リング13Bには、紐付きタグ33のフック32が係止される。
図20(b)に示すキャニスター収容器具20Aにおいて、上部カバー22Aの上面に設けられた収容器具側被締結部222AはU字形状に屈曲された一対の金属製丸棒222a’(以下、U字形丸棒222a’という)で構成されている。各U字形丸棒222a’は、キャニスター側被締結部13Aを受け入れ可能な間隔を空けて並列に取り付けられている。そして、収容器具側被締結部222Aは、前述した実施形態の収容器具側突出片対222と同様に、上部カバー22の中心CPを基点にする回転対称の位置(例えば8回対象の位置)に設けられている。
【0043】
図20(c)に示すように、キャニスター10Aの収容状態において、キャニスター側被締結部13Aは一対のU字形丸棒222a’同士の間に受け入れられる。そして、締結具41Aの結束用バンド41a’を、キャニスター側被締結部13A、及び収容器具側被締結部222A内を挿通させてロックすることにより、締結具41Aによる締結が行える。そして、締結具41Aによる締結を解くためには、ニッパー等の切断具で結束用バンド41a’を切断する。
以上のように構成された第1変形例でも、前述の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0044】
<第2変形例>
前述の実施形態において、キャニスター収容器具20の胴部21は円筒形状であったが、この構成に限定されない。図21図22は、第2変形例のキャニスター収容器具20Bが備える収容室SP2を説明する横断面図、及び部分拡大断面図である。
図21図22に示すように、第2変形例のキャニスター収容器具20Bの胴部21Bは、正八角形の金属製筒体によって構成されている。なお、第2変形例において、他の構成は前述した実施形態と同じであるため、説明は省略する。第2変形例のキャニスター収容器具20Bであっても、前述した実施形態と同様の作用効果を奏する。
なお、例示したキャニスター収容器具20Bの胴部21Bは正八角形の金属製筒体であったが、他の種類の正多角形筒体であってもよい。例えば、正五角形の金属製筒体であってもよいし、正六角形の金属製筒体であってもよい。そして、正五角形の金属製筒体とした場合には、5個の収容室SP2を5回対象の位置に形成し、正六角形の金属製筒体とした場合には、6個の収容室SP2を6回対象の位置に形成する。
【0045】
<その他の変形例>
前述の実施形態において、凍結保存対象物は薬液51を例示したが、薬液51に限定されない。凍結保存対象物は、例えば薬液51以外の液体試料、粉体試料、或いは固体試料であってもよい。
前述の実施形態において、収納体は包装箱53に入った薬液51入りのバイアル52であったが、バイアル52に限定されない。
前述の実施形態において、キャニスター10には、紐付きタグ33のフック32が係止される係止孔13bや係止リング13Bが設けられていたが、この構成に限定されない。紐付きタグ33のフック32が係止されれば係止孔13bや係止リング13B以外の構成を採ってもよい。
【0046】
[本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ]
<第1の実施態様>
本態様は、複数のキャニスター10、10Aを収容した状態で凍結保存容器100の格納空間SP31(内部)に格納されるキャニスター収容器具20、20A、20Bであって、キャニスター10、10Aは、薬液51(凍結保存対象物)を入れたバイアル52(収納体)を保持する試料容器保持部11(収納体保持部)と、棒状部材によって構成され、且つ下部12dが試料容器保持部11に固定されたシャフト部12と、シャフト部12の上部12uに固定され、且つ締結具41(締結手段)によりキャニスター収容器具20に締結されるキャニスター側被締結片13(第一被締結部)、又はキャニスター側被締結部13A(第一被締結部)と、を備え、キャニスター収容器具20、20A、20Bは、上部開口21aを有する筒状の胴部21、21Bと、試料容器保持部11を胴部21、21Bの中空部SP1内に出し入れする出入口221を有し、且つ胴部21、21Bの上部開口21aの一部を覆う上部カバー22、22Aと、胴部21、21Bの中空部SP1内に形成され、各キャニスター10、10Aの試料容器保持部11を夫々収容する複数の収容室SP2と、各試料容器保持部11を各収容室SP2に収容した状態で締結具41、41Aにより各キャニスター10、10Aのキャニスター側被締結片13、キャニスター側被締結部13Aと夫々締結される複数の収容器具側突出片対222(第二被締結部)、収容器具側被締結部222A(第二被締結部)と、を備えることを特徴とする。
本態様に係るキャニスター収容器具20、20A、20Bによれば、キャニスター収容器具20、20A、20Bが凍結保存容器100の格納空間SP31に格納されている状態において、凍結保存容器100の中で凍結保存されている薬液51を凍結保存容器100から取り出すためには、締結具41、41Aによるキャニスター側被締結片13、キャニスター側被締結部13Aと収容器具側突出片対222、収容器具側被締結部222Aとの締結を解く必要がある。
その結果、包装箱53(バイアル52、薬液51)が別の物に入れ替えられる不都合を抑制できる。同様に、キャニスター10を本来の収容位置とは異なる位置に収容する不都合も抑制できる。
【0047】
<第2の実施態様>
本態様に係るキャニスター収容器具20、20A、20Bにおいて、胴部21、21Bは、円筒状又は正八角形の筒体(正多角筒状)であり、各収容室SP2は、胴部21、21Bの軸線CLを中心とする回転対称の位置に設けられていることを特徴とする。
本態様に係るキャニスター収容器具20、20A、20Bによれば、収容位置の基準になる収容室SP2がなくなり、キャニスター10(バイアル52)を収容している収容室SP2の位置が特定され難い。
【0048】
<第3の実施態様>
本態様に係るキャニスター収容器具20、20A、20Bにおいて、凍結保存容器100は、キャニスター収容器具20、20A、20Bを格納する格納空間SP31を、該格納空間SP31の外周側に貯留された液体状の冷媒LQによって冷却する構成を備え、収容室SP2の底面を構成する底板部23は、胴部21,21Bの下端縁よりも上方に位置することを特徴とする。
本態様に係るキャニスター収容器具20、20A、20Bによれば、格納空間SP31における温度が安定し易い範囲に薬液51(凍結保存対象物)を配置できる。
【0049】
<第4の実施態様>
本態様に係るキャニスター収容器具20、20A、20Bは、出入口221に面した上部カバー22、22Aの周縁部には、各収容室SP2に夫々収容された各キャニスター10のシャフト部12を夫々受け入れる複数の切り欠き223が形成されていることを特徴とする。
本態様に係るキャニスター収容器具20、20A、20Bによれば、キャニスター収容器具20、20A、20Bへのキャニスター10、10Aの収容時において、キャニスター10、10Aの位置決めが容易になる。
【0050】
<第5の実施態様>
本態様に係るキャニスター収容器具20において、キャニスター側被締結片13は、締結具41のツル部41a(一部分)が挿通可能な挿通空所13a(第一挿通空所)を備え、収容器具側突出片対222は、試料容器保持部11が各収容室SP2に収容された状態で挿通空所13aと位置が整合され、且つ締結具41のツル部41aが挿通可能な挿通空所222b(第二挿通空所)を備えることを特徴とする。
本態様に係るキャニスター収容器具20によれば、簡単な構成によってキャニスター10とキャニスター収容器具20とを締結できる。
【0051】
<第6の実施態様>
本態様に係るキャニスター収容器具20において、収容器具側突出片対222(第二被締結部)は、上部カバー22の上面から上方に突設された収容器具側突出片対222を備え、1の前記突出片対222を構成する2つの突出片222aは、1のキャニスター側被締結片13(第一被締結部)を受け入れ可能な間隙を有して対向配置されており、2つの突出片222aには、挿通空所222bが夫々貫通形成されていることを特徴とする。
本態様に係るキャニスター収容器具20によれば、簡単な構成によってキャニスター10とキャニスター収容器具20とを締結できる。
【0052】
<第7の実施態様>
本態様は、キャニスター収容器具20、20Aに収容された状態で凍結保存容器100に格納されるキャニスター10、10Aであって、薬液51(凍結保存対象物)を入れたバイアル52(収納体)を保持する試料容器保持部11(収納体保持部)と、棒状部材によって構成され、且つ下部12dが試料容器保持部11に固定されたシャフト部12と、シャフト部12の上部12uに固定され、且つ締結具41、41A(締結手段)によりキャニスター収容器具20に締結されるキャニスター側被締結片13(被締結部)、キャニスター側被締結部13A(被締結部)と、を備えることを特徴とする。
本態様に係るキャニスター10、10Aによれば、凍結保存容器100の格納空間SP31に格納されている状態において、包装箱53(バイアル52、薬液51)が別の物に入れ替えられる不都合を抑制できる。同様に、キャニスター10を本来の収容位置とは異なる位置に収容する不都合も抑制できる。
【0053】
<第8の実施態様>
本態様に係るキャニスター10において、キャニスター側被締結片13は、締結具41のツル部41a(一部分)が挿通可能な挿通空所13aを備えることを特徴とする。
本態様に係るキャニスター10によれば、簡単な構成によってキャニスター収容器具20と締結できる。
【符号の説明】
【0054】
10、10A…キャニスター,11…試料容器保持部(収納体保持部),11a…底板部,11b…後壁部,11c…左側壁部,11d…右側壁部,11e…左前壁部,11f…右前壁部,11g…左切り欠き部,11h…右切り欠き部,12…シャフト部,12u…上部,12d…下部,13…キャニスター側被締結片,13a…挿通空所,13b…係止孔,13A…キャニスター側被締結部,13B…係止リング,20…キャニスター収容器具,20B…キャニスター収容器具,21…胴部,21B…胴部,21a…上部開口,22…上部カバー,221…出入口,222…収容器具側突出片対,222a…突出片,222b…挿通空所,223…切り欠き,222A…収容器具側被締結部,23…底板部,24…中央隔壁筒,25…周囲隔壁部,30…紐付きタグ,31…連結紐,32…フック,32a…フック本体,32b…可動片,33…タグ,41…締結具,41a…ツル部,41b…本体部,41A…締結具,41a’…結束用バンド,42a’…タグ,51…薬液(凍結保存対象物),52…バイアル(収納体),53…包装箱,100…凍結保存容器,110…容器本体,111…外周壁,112…内周壁,113…隔壁,114…消波板,115…液面計,116…供給管,120…蓋部材,121…蓋本体,122…天板,SP1…胴部の中空部,SP2…収容室,SP3…容器本体の内側空間,SP31…格納空間,SP32…上部空間,SP33…冷媒室,SP4…密閉空間,LQ…冷媒,CL…胴部の軸線,CP…上部カバーの中心,LB1…ラベル,LB2…ラベル,LB3…ラベル,ID…識別情報
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