(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069704
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】香気増強剤
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20230511BHJP
【FI】
A23L27/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181774
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池上 侑希
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LB08
4B047LG05
4B047LG08
4B047LG09
4B047LG13
4B047LG17
4B047LG18
4B047LG20
4B047LG31
4B047LG32
4B047LG37
4B047LP02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】酪酸、デカン酸、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、ジアセチル、2-ノナノン、及び2-ウンデカノンよりなる群から選択される少なくとも1種の香気成分の香りを増強する剤(香気増強剤)、当該香気増強剤を含有する香気成分含有飲食物、香気成分含有飲食物について香気成分の香りを増強する方法を提供する。
【解決手段】スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、香気増強剤を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する香気増強剤であって、
前記香気が、酪酸、デカン酸、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、ジアセチル、2-ノナノン、及び2-ウンデカノンよりなる群から選択される少なくとも1種の香気成分の香りである、前記香気増強剤。
【請求項2】
請求項1に記載する香気増強剤、並びに酪酸、デカン酸、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、ジアセチル、2-ノナノン、及び2-ウンデカノンよりなる群から選択される少なくとも1種の香気成分を含有する、飲食物用フレーバーまたは飲食物。
【請求項3】
酪酸、デカン酸、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、ジアセチル、2-ノナノン、及び2-ウンデカノンよりなる群から選択される少なくとも1種の香気成分を含有する飲食物用フレーバーまたは飲食物を、スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種と共存させる工程を有する、前記香気成分の香りが増強された飲食物用フレーバーまたは飲食物の製造方法。
【請求項4】
酪酸、デカン酸、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、ジアセチル、2-ノナノン、及び2-ウンデカノンよりなる群から選択される少なくとも1種の香気成分を含有する飲食物用フレーバーまたは飲食物を、スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種と共存させることを特徴とする、前記香気成分の香りを増強する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香気増強剤に関する。より詳細には、酪酸、デカン酸、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、ジアセチル、2-ノナノン、及び2-ウンデカノンよりなる群から選択される少なくとも1種の香気成分の香りを増強するために使用される製剤に関する。また本発明は前記香気成分の香りが増強されてなる飲食物用フレーバー又は飲食物、及びそれらの製造方法に関する。さらに本発明は前記香気成分を含有する飲食物用フレーバー又は飲食物について前記香気成分の香りを増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酪酸、デカン酸、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、ジアセチル、2-ノナノン、及び2-ウンデカノンはいずれも植物性または動物性の天然由来の飲食物に含まれる公知の香気成分である。例えば、酪酸は漬け物及びラベンダーの精油に;デカン酸はココナッツ、ヤシ油やパーム油などの食用油、及び洋酒に;δ-デカラクトンはピーチ、マンゴー、ビール、及びラム酒に;δ-ドデカラクトンはパパイヤ、ピーチ、ストロベリー、チキン及びマトンに;ジアセチルは紅茶、ブランデー、ラム酒、及び赤ワインに;2-ノナノン及び2-ウンデカノンはストロベリー、及びココナッツに含まれていることが知られている(非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、従来、これらの香気成分の香りを増強させるための方法やそのために有効な成分は知られておらず、ましてや、高甘味度甘味料に、これらの香気成分の香りを増強する作用があることは知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本国特許庁編集「特許庁公報周知・慣用技術集(香料)第II部 食品用香料 」(平成12年1月14日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、酪酸、デカン酸、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、ジアセチル、2-ノナノン、及び2-ウンデカノンよりなる群から選択される少なくとも1種の香気成分を含有する飲食物用フレーバーまたは飲食物について、前記香気成分の香りを増強する技術を提供することを目的とする。より詳細には、第1に、本発明は香気増強剤を提供することを目的とする。第2に、前記香気成分の香りが増強されてなる飲食物用フレーバー又は飲食物、及びその製造方法を提供することを目的とする。第3に、前記香気成分を含有する飲食物用フレーバー又は飲食物について、当該前記香気成分の香りを増強する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねていたところ、スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームといった従来甘味料として使用されている成分に、前記香気成分の香りを増強する作用があることを見出し、またその作用は甘味を呈する量だけでなく、甘味を呈さない量でも発揮することを確認した。また、これらの成分によれば、香気成分を香りの閾値レベルの微量含む場合であっても、その香りが増強されることも確認された。これらの知見から、これらの成分を香気増強剤として、前記香気成分に共存させることで、当該香気成分の香りが増強されたフレーバー又は飲食物が得られることを確認して本発明を完成した。本発明はかかる知見に基づいて、さらに研究を重ねて完成したものであり、下記の実施形態を有するものである。
【0007】
(I)香気増強剤
スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する香気増強剤であって、
前記香気が、酪酸、デカン酸、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、ジアセチル、2-ノナノン、及び2-ウンデカノンよりなる群から選択される少なくとも1種の香気成分の香りである、前記香気増強剤。
【0008】
(II)飲食物用フレーバー又は飲食物、及びそれらの製造方法
(II-1)前記(I)に記載する香気増強剤、並びに酪酸、デカン酸、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、ジアセチル、2-ノナノン、及び2-ウンデカノンよりなる群から選択される少なくとも1種の香気成分を含有する、飲食物用フレーバーまたは飲食物。
(II-2)酪酸、デカン酸、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、ジアセチル、2-ノナノン、及び2-ウンデカノンよりなる群から選択される少なくとも1種の香気成分を含有する飲食物用フレーバーまたは飲食物を、スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種と共存させる工程を有する、前記香気成分の香りが増強された飲食物用フレーバーまたは飲食物の製造方法。
【0009】
(III)香気成分の香り増強方法
酪酸、デカン酸、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、ジアセチル、2-ノナノン、及び2-ウンデカノンよりなる群から選択される少なくとも1種の香気成分を含有する飲食物用フレーバーまたは飲食物を、スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種と共存させることを特徴とする、前記香気成分の香りを増強する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の香気増強剤は、酪酸、デカン酸、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、ジアセチル、2-ノナノン、及び2-ウンデカノンからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有する飲食物用フレーバー又は飲食物に配合することで、前記香気成分の香りを増強することができる。つまり、本発明の香気増強剤およびそれを用いた香り増強方法によれば、前記香気成分含有飲食物用フレーバー又は飲食物に対して、当該香気成分の香りを増強する効果を発揮し、当該香りが増強されてなる飲食物用フレーバー又は飲食物を調製し提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中、語句「含む」又は語句「含有する」は、語句「からなる」、及び語句「のみからなる」を包含することを意図して用いられる。本明細書中に記載の操作、及び工程は、特に記載のない限り、室温で実施され得る。本明細書中、用語「室温」は、技術常識に従って理解され、例えば15~25℃の範囲内の温度を意味することができる。
【0012】
本発明において、香りを増強するとは、前述する香気成分に起因して感じられる香りの強さを増大(エンハンス)することを意味する。香りは、鼻で直接感じる香り(オルソネーザルアロマ)と、口に含んだとき、または飲み込んだときに、喉の奥から鼻腔内で感じる香り(レトロネーザルアロマ)の2種類がある。本発明で対象とする香りは、後者の、口に含んだとき、または飲み込んだときに、喉の奥から鼻腔内で感じる香りである。
【0013】
(I)香気増強剤
本発明の香気増強剤(以下、「本香気増強剤」とも称する)は、スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0014】
(スクラロース)
スクラロース(化学名: 1,6-Dichloro-1,6-dideoxy-β-D-fructofuranosyl-4-chloro-4-deoxy-α-D-galactopyranoside)は、ショ糖(砂糖)の約600倍の甘味度を有していることが知られている甘味成分である。水に溶けやすく、安定性に優れているため、甘味料としてだけでなく、従来広く様々な用途で食品に使用されている成分である。ちなみにスクラロースの甘味の閾値は約5ppmである。これは商業的に入手することができ、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社から市販されている。
【0015】
(ソーマチン)
ソーマチンは、西アフリカ原産のクズウコン科の植物Thaumatococcus
daniellii(Benn.)Benth. & Hook. f.の種子に多く含まれる分子量約21000の蛋白質(植物性蛋白)であり、ショ糖(砂糖)の3000~8000倍もの甘味度を有するため天然甘味料として使用されている。ソーマチンの甘味の閾値は約1ppmである。これは、簡便には、実施例に記載の通り、商業的に入手することができる。
【0016】
(ラカンカ抽出物)
羅漢果(学名:Siraitia grosvenoriigrosvenorii(Swingle)C.Jeffrey ex A.M.Lu & Zhi Y.Zhang (Momordica grosvenorii Swingle))は、中国を原産地とするウリ科ラカンカ属のつる性の多年生植物である。本発明が対象とするラカンカ抽出物は、産地の別を問わず、羅漢果の果実、好ましくは羅漢果の生果実から、水又はエタノール等の有機溶媒を用いて抽出されたモグロシドVを含有する抽出物である。モグロシドVは、ラカンカ抽出物に含まれているトリテルペン系配糖体であり、ショ糖(砂糖)の約300~500倍の甘味度を有していることが知られている甘味成分でもある。
【0017】
本香気増強剤で用いられるラカンカ抽出物のモグロシドV含有量は、本発明の効果を奏することを限度として、特に制限されない。言い換えれば、本香気増強剤において、モグロシドVは、ラカンカ抽出物から精製された状態で使用することもできるし、また、ラカンカ抽出物に含まれるモグロシドV以外のトリテルペン系配糖体(モグロール、モグロシドIE1、モグロシドIA1、モグロシドIIE、モグロシドIII、モグロシドIV、モグロシドIVE、シメノシドI、11-オキソモグロシドV、5α,6α-エポキシモグロシド)と混合した状態で使用することもできる。本発明において「ラカンカ抽出物」の用語には、これらの両方の意味が包含される。ラカンカ抽出物中のモグロシドVの含有量は、全体の10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは40質量%以上であり、とりわけ好ましくは50質量%以上である。
【0018】
こうしたラカンカ抽出物は、羅漢果の果実から抽出し、さらに必要に応じて精製処理することで調製することも可能であるが、簡便には商業的に入手することができる。例えば、市販されているラカンカ抽出物として「サンナチュレ(登録商標) M30」(30質量%モグロシドV含有品)、「サンナチュレ(登録商標) M50」(50質量%モグロシドV含有品)[以上、いずれも三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製]を例示することができる。
【0019】
(アセスルファムカリウム)
アセスルファムカリウムは、6-メチル-1,2,3-オキサチアジン-4(3H)-オン-2,2-ジオキシド(6-methyl-1,2,3-oxathiazine-4(3H)-one 2,2-dioxide) のカリウム塩であり、ショ糖(砂糖)の200倍もの甘味度を有する高甘味度甘味料である。ちなみにアセスルファムカリウムの甘味の閾値は約15ppmである。これは、簡便には、実施例に記載の通り、商業的に入手することができる。
【0020】
(ステビア抽出物)
ステビアレバウディアナ・ベルトニ(学名:Stevia rebaudiana(Bertoni)Bertoni)(本発明では「ステビア」と略称する)は、南米パラグアイを原産地とするキク科ステビア属に属する植物である。本発明が対象とするステビア抽出物は、製造の別を問わず、例えばステビアの葉又は茎などから、水またはエタノール等の有機溶媒を用いて抽出された物が含まれる。また、本発明が対象とするステビア抽出物には、任意のステビオール配糖体を多くまたは精製された状態で含むように、前記抽出処理後、濃縮や分画などの精製処理を施したものであってもよい。つまり、本発明が対象とするステビア抽出物は、ステビオール配糖体を粗精製された状態で含むものであってもよいし、また精製された状態で含むものであってもよい。当該ステビオール配糖体は、ステビオール骨格を有する配糖体であればよく、制限されないものの、例えば、ステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、レバウディオサイドE、レバウディオサイドF、レバウディオサイドG、レバウディオサイドH、レバウディオサイドI、レバウディオサイドJ、レバウディオサイドK、レバウディオサイドL、レバウディオサイドN、レバウディオサイドO、ズルコサイドA、ズルコサイドB、レブソサイド、ステビオ―ルモノサイド、ステビオールビオサイド等が例示される。なお、レバウディオサイドAは、ショ糖(砂糖)の300~450倍の甘味度を有していることが知られている甘味成分でもある。また、本発明が対象とするステビア抽出物は、ステビオール骨格を有する配糖体またはそれを含む限り、前記天然物から抽出または精製されたものに限らず、発酵技術を用いて調製されるステビオール配糖体またはそれを含むものであってもよい。
【0021】
本発明において、前記の各種ステビオール配糖体は、2種以上のステビオール配糖体が混合した状態で使用することもできる。ステビア抽出物中のステビオール配糖体の含有量は、本発明の効果を奏することを限度として制限されないが、全体の90質量%以上であることが好ましい。より好ましくは95質量%以上である。なお、本発明が対象とするステビア抽出物には、α-グルコシルトランスフェラーゼ等を用いて、上記ステビア抽出物にグルコースやフルクトース等の糖を転移した酵素処理ステビア抽出物も含まれる。当該酵素処理ステビア抽出物には、α-グルコシル化ステビオール配糖体を主成分としたステビア抽出物も含まれる。
【0022】
こうしたステビア抽出物は、ステビアの葉や茎等を原料として抽出し、さらに必要に応じて精製処理することで調製することも可能であるが、簡便には、実施例に記載の通り、商業的に入手することができる。
【0023】
(アスパルテーム)
アスパルテーム(化学名:N-(L-α-Aspartyl)-L-phenylalanine, 1-methyl ester)は、ショ糖(砂糖)の100~200倍の甘味度を有するアミノ酸に由来する甘味成分であり、フェニルアラニンのメチルエステルと、アスパラギン酸とがペプチド結合した構造を持つジペプチドのメチルエステルである。ちなみにアスパルテームの甘味の閾値は約25ppmである。これは商業的に入手することができ、例えば味の素株式会社から市販されている。
【0024】
(本香気増強剤)
本香気増強剤は、前述するスクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種を含有するものであればよく、1種単独で含有するものであっても、また2種以上を組み合わせて含有するものであってもよい。なお、本香気増強剤に含まれる各成分の割合は、対象とする香気成分と共存させることで、当該香気成分の香りを増強するという目的に適うものであればよく、その限りにおいて、100質量%を限度として適宜設定することができる。
【0025】
2種以上を組み合わせる態様として、制限されないものの、好ましくはステビア抽出物とラカンカ抽出物とが少なくとも含まれる組み合わせを例示することができる。この場合、制限されないものの、ステビア抽出物として、好ましくはレバウディオサイドAの含有量が90質量%以上、より好ましくは95質量%以上のものを用い、またラカンカ抽出物として、好ましくはモグロシドVの含有量が30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上のものを用いることが望ましい。ステビア抽出物とラカンカ抽出物との配合比は、本発明の効果を奏することを限度として特に制限されないものの、一例を挙げると、本香気増強剤に含まれるレバウディオサイドAとモグロシドVとの配合比が質量比(以下、同じ)で50:50~99:1となるような組み合わせを挙げることができる。
【0026】
本香気増強剤は、香気成分を含有する飲食物用フレーバー(香気成分含有フレーバー)または飲食物(香気成分含有飲食物)に対して、その香気成分の香りを増強するために用いられる。具体的には、香気成分含有フレーバー又は香気成分含有飲食物を製造する際に成分の一つとして配合する方法を例示することができる。また、香気成分含有飲食物を調理する際に配合して一緒に調理するか、または調理された香気成分含有飲食物を摂取する際に、これに添加するなどの態様で用いることができる。こうすることで香気成分含有飲食物を摂取したときに感じる、当該香気成分の香りを増強することができる。
このような使用態様で用いることができるものであれば、本香気増強剤の形態は特に問わないが、一つの態様として、粉末状、顆粒状、タブレット状、及びカプセル剤状などの固体の製剤形態、ならびに液状(水溶液、分散液状、懸濁液状を含む)、乳液状、シロップ状、ペースト状、及びジェル状などの半固体又は液体の製剤形態を挙げることができる。
【0027】
本香気増強剤は、本発明の効果を妨げないことを限度として、スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「本有効成分」と総称する場合がある)を前述する製剤形態に調製する際に、その形態に応じて、飲食物用フレーバー又は飲食物に配合可能な可食性の担体(基剤)、可食成分、及び添加剤を適宜配合することもできる。
【0028】
本香気増強剤を製剤形態に調製する場合、担体や添加剤を用いることで、前述する固体、半固体または液体の剤型など、任意の剤型にすることができる。制限されないものの、一例として、本有効成分を溶解又は分散した水溶液にデキストリン等の賦形剤を配合し、噴霧乾燥又は凍結乾燥等の定法に従って粉末化することで粉末製剤として調製することができるし、さらに造粒されることで顆粒製剤として調製することもできる。また、他の一例として、または前記の固形製剤を少量の水やアルコールで溶解することで、シロップ形状を有する製剤に調製することができる。また、本香気増強剤は、一剤の形態のほか、二剤の形態(例えば、ラカンカ抽出物を含有する製剤とステビア抽出物を含有する製剤との組み合わせ物など)を有するものであってもよい。
【0029】
香気成分含有フレーバー又は飲食物に対する本香気増強剤の使用量としては、香気成分の香りを増強するという本発明の効果を奏する量であればよく、本香気増強剤の有効成分(本有効成分)に起因する甘味を考慮して、目的に応じて選択設定することができる。例えば、スクラロースの甘味度はショ糖(スクロース)の600倍、ソーマチンの甘味度はショ糖の3000~8000倍、モグロシドVの甘味度はショ糖の300~500倍、アセスルファムKの甘味度はショ糖の200倍、レバウディオサイドAの甘味度はショ糖の300~450倍、アスパルテームの甘味度はショ糖の100~200倍である。このため、例えば、本香気増強剤を、甘味を有するように調製する場合は、本有効成分を甘味を発揮する量(甘味の閾値以上の量)で配合することが好ましい。具体的には、例えばスクラロースの配合量としては0.0005質量%以上、ソーマチンの配合量としては0.0001質量%以上、モグロシドVの配合量としては0.001質量%以上、アセスルファムKの配合量としては0.0015質量%以上、レバウディオサイドAの配合としては0.001質量%以上、アスパルテームの配合量としては0.0025質量%以上となるような範囲で適宜調整することができる。一方、本香気増強剤を、甘味を有しないように調製する場合は、本有効成分を甘味を呈さない量(甘味の閾値未満の量)で配合する。具体的には、スクラロースの配合量としては0.0005質量%未満、ソーマチンの配合量としては0.0001質量%未満、モグロシドVの配合量としては0.001質量%未満、アセスルファムKの配合量としては0.0015質量%未満、レバウディオサイドAの配合としては0.001質量%未満、アスパルテームの配合量としては0.0025質量%未満となるような範囲で適宜調整することができる。なお、実際の甘味の閾値(認知閾値)は、適用する香気成分含有フレーバー又は飲食物毎に設定することが好ましく、この場合、閾値の設定は極限法に従って行うことが好ましい。
【0030】
本発明において、「香気増強」又は「香気成分の香りを増強する」とは、各香気成分に起因して感じる香りをエンハンスすることを意味する。つまり、香気増強とは、香気成分含有フレーバー又は飲食物に本香気増強剤を配合することで、香気成分の香りが、本香気増強剤を配合しない場合に感じる香りと比較して増大したと感じさせる作用効果である。こうした作用効果は、通常、訓練された専門パネルによる官能試験によって評価判定することができる。具体的には、対象とする香気成分含有フレーバー又は飲食物に香気増強剤(候補物を含む)を添加した場合に、添加していない香気成分含有フレーバー又は飲食物の香りと比較して、その香りが増強したと感じられる場合には、当該香気増強剤(候補物)は、本香気増強剤に該当すると判断することができる。
【0031】
(II)香気成分含有フレーバー又は飲食物、及びその製造方法
本発明の香気成分含有フレーバー又は飲食物は、前述する香気成分と前述する本香気増強剤を含有するフレーバー又は飲食物である。
【0032】
香気成分含有フレーバー又は飲食物に対する本香気増強剤の配合割合は、本香気増強剤を配合することによって調製される香気成分含有フレーバー又は飲食物が、本発明の効果を奏するものであればよく、その限りにおいて特に制限されない。具体的には、香気成分含有フレーバー又は飲食物に配合する本香気増強剤の種類などに応じて適宜設定調整することができ、制限されないものの、香気成分含有飲食物に適用する本香気増強剤の割合としては、下記に記載する割合を例示することができる。
【0033】
[スクラロース]
本香気増強剤としてスクラロースを用いる場合、香気成分含有飲食物中のスクラロースの含有量(摂食時の飲食物の湿重量物換算)としては1ppm(質量百万分率を意味する。以下同じ)以上の範囲を例示することができる。なお、上限は特に制限されないが、スクラロースを、甘味を呈さない量で使用する場合は、甘味の閾値未満になるように調整することが好ましい。実際の甘味の閾値(認知閾値)は、適用する飲食物毎に個別に設定することが好ましく、閾値の設定は極限法に従って行うことができる。また、一般にスクラロースは濃度が5ppmを超えると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。スクラロースを甘味を呈する量で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば飲食物中のスクラロースの濃度が1000ppm以下になるように調整することができる。
【0034】
より詳細には、飲食物に含まれる香気成分の種類とその割合に応じて、飲食物に対して下記の割合で用いることができる(飲食物100質量%とした割合)。
a.酪酸を0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%。
b.デカン酸を1~1000ppmの割合で含む飲食物:
0.1~100質量%、好ましくは0.001~0.01質量%。
c.δ-デカラクトンを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%。
d.δ-ドデカラクトンを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%。
e.ジアセチルを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%。
f.2-ノナノンを0.1~300ppmの割合で含む飲食物:
0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%。
g.2-ウンデカノンを0.1~300ppmの割合で含む飲食物:
0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%。
【0035】
本発明が対象とする香気成分含有フレーバーは、好ましくは香気成分の香りを飲食物に付与するために飲食物に対して使用されるものである。通常、飲食物に対するフレーバーの添加量は0.01~1質量%である。このため、香気成分含有フレーバー中のスクラロース及び各種香気成分の含量は、当該フレーバーを前記の添加量で飲食物に配合した場合にスクロースと各種香気成分の含有量が上記範囲になるように、適宜設定することができる。
【0036】
[ソーマチン]
本香気増強剤としてソーマチンを用いる場合、香気成分含有飲食物中のソーマチンの含有量(摂食時の飲食物の湿重量物換算)としては0.0015ppm以上の範囲を例示することができる。なお、上限は特に制限されないが、ソーマチンを、甘味を呈さない量で使用する場合は、甘味の閾値(認知閾値)未満になるように調整することが好ましい。また、一般にソーマチンは濃度が約1ppmを超えると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。ソーマチンを甘味を呈する量で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば飲食物中のソーマチンの濃度が15ppm以下になるように調整することができる。
【0037】
より詳細には、飲食物に含まれる香気成分の種類とその割合に応じて、飲食物に対して下記の割合で用いることができる(飲食物100質量%とした割合)。
a.酪酸を0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.00000015~0.0015質量%、好ましくは0.0000015~0.00015質量%。
b.デカン酸を1~1000ppmの割合で含む飲食物:
0.00000015~0.0015質量%、好ましくは0.0000015~0.00015質量%。
c.δ-デカラクトンを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.00000015~0.0015質量%、好ましくは0.0000015~0.00015質量%。
d.δ-ドデカラクトンを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.00000015~0.0015質量%、好ましくは0.0000015~0.00015質量%。
e.ジアセチルを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.00000015~0.0015質量%、好ましくは0.0000015~0.00015質量%。
f.2-ノナノンを0.1~300ppmの割合で含む飲食物:
0.00000015~0.0015質量%、好ましくは0.0000015~0.00015質量%。
g.2-ウンデカノンを0.1~300ppmの割合で含む飲食物:
0.00000015~0.0015質量%、好ましくは0.0000015~0.00015質量%。
【0038】
香気成分含有フレーバー中のソーマチン及び各種香気成分の含量は、香気成分含有フレーバーを、例えば0.01~1質量%の添加量で飲食物に配合した場合にソーマチンと各種香気成分の含有量が上記範囲になるように、適宜設定することができる。
【0039】
[ラカンカ抽出物]
本香気増強剤としてラカンカ抽出物を用いる場合、香気成分含有飲食物中のラカンカ抽出物の含有量(摂食時の飲食物の湿重量物換算)は、モグロシドVの濃度に換算して、1ppm以上の範囲を例示することができる。上限は特に制限されないが、ラカンカ抽出物を、甘味を呈さない量で使用する場合は、前記と同様に甘味の閾値(認知閾値)未満で調整することが好ましい。また、一般にモグロシドVは10ppmを超えると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。ラカンカ抽出物を甘味を呈する量で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば飲食物中のモグロシドVの濃度が1000ppm以下になるように調整することができる。
【0040】
より詳細には、飲食物に含まれる香気成分の種類とその割合に応じて、飲食物に対して下記の割合で用いることができる(飲食物100質量%としたモグロシドVの割合)。
a.酪酸を0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%。
b.デカン酸を1~1000ppmの割合で含む飲食物:
0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%。
c.δ-デカラクトンを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%。
d.δ-ドデカラクトンを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%。
e.ジアセチルを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%。
f.2-ノナノンを0.1~300ppmの割合で含む飲食物:
0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%。
g.2-ウンデカノンを0.1~300ppmの割合で含む飲食物:
0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%。
【0041】
香気成分含有フレーバー中のソーマチン及び各種香気成分の含量は、香気成分含有フレーバーを、例えば0.01~1質量%の添加量で飲食物に配合した場合にモグロシドVと各種香気成分の含有量が上記範囲になるように、適宜設定することができる。
【0042】
[アセスルファムK]
本香気増強剤としてアセスルファムKを用いる場合、香気成分含有飲食物中のアセスルファムKの含有量(摂食時の飲食物の湿重量物換算)としては3ppm以上の範囲を例示することができる。なお、上限は特に制限されないが、アセスルファムKを、甘味を呈さない量で使用する場合は、前記と同様に甘味の閾値(認知閾値)未満で調整することが好ましい。また、一般にアセスルファムKは濃度が15ppmを超えると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。アセスルファムKを甘味を呈する量で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば飲食物中のアセスルファムKの濃度が3000ppm以下になるように調整することができる。
【0043】
より詳細には、飲食物に含まれる香気成分の種類とその割合に応じて、飲食物に対して下記の割合で用いることができる(飲食物100質量%とした割合)。
a.酪酸を0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0003~0.3質量%、好ましくは0.003~0.03質量%。
b.デカン酸を1~1000ppmの割合で含む飲食物:
0.0003~0.3質量%、好ましくは0.003~0.03質量%。
c.δ-デカラクトンを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0003~0.3質量%、好ましくは0.003~0.03質量%。
d.δ-ドデカラクトンを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0003~0.3質量%、好ましくは0.003~0.03質量%。
e.ジアセチルを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0003~0.3質量%、好ましくは0.003~0.03質量%。
f.2-ノナノンを0.1~300ppmの割合で含む飲食物:
0.0003~0.3質量%、好ましくは0.003~0.03質量%。
g.2-ウンデカノンを0.1~300ppmの割合で含む飲食物:
0.0003~0.3質量%、好ましくは0.003~0.03質量%。
【0044】
香気成分含有フレーバー中のアセスルファムK及び各種香気成分の含量は、香気成分含有フレーバーを、例えば0.01~1質量%の添加量で飲食物に配合した場合にアセスルファムKと各種香気成分の含有量が上記範囲になるように、適宜設定することができる。
【0045】
[ステビア抽出物]
本香気増強剤としてステビア抽出物を用いる場合、香気成分含有飲食物中のステビア抽出物の含有量(摂食時の飲食物の湿重量物換算)は、レバウディオサイドAの濃度に換算して2ppm以上の範囲を例示することができる。上限は特に制限されないが、ステビア抽出物を、甘味を呈さない量で使用する場合は、前記と同様に甘味の閾値(認知閾値)未満になるように調整することが好ましい。また、一般にレバウディオサイドAは10ppmを超えると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。ステビア抽出物を甘味を呈する量で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば飲食物中のレバウディオサイドAの濃度が2000ppm以下になるように調整することができる。
【0046】
より詳細には、飲食物に含まれる香気成分の種類とその割合に応じて、飲食物に対して下記の割合で用いることができる(飲食物100質量%としたレバウディオサイドAの割合)。
a.酪酸を0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0002~0.2質量%、好ましくは0.002~0.02質量%。
b.デカン酸を1~1000ppmの割合で含む飲食物:
0.0002~0.2質量%、好ましくは0.002~0.02質量%。
c.δ-デカラクトンを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0002~0.2質量%、好ましくは0.002~0.02質量%。
d.δ-ドデカラクトンを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0002~0.2質量%、好ましくは0.002~0.02質量%。
e.ジアセチルを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0002~0.2質量%、好ましくは0.002~0.02質量%。
f.2-ノナノンを0.1~300ppmの割合で含む飲食物:
0.0002~0.2質量%、好ましくは0.002~0.02質量%。
g.2-ウンデカノンを0.1~300ppmの割合で含む飲食物:
0.0002~0.2質量%、好ましくは0.002~0.02質量%。
【0047】
香気成分含有フレーバー中のレバウディオサイドA及び各種香気成分の含量は、香気成分含有フレーバーを、例えば0.01~1質量%の添加量で飲食物に配合した場合にレバウディオサイドAと各種香気成分の含有量が上記範囲になるように、適宜設定することができる。
【0048】
[アスパルテーム]
本香気増強剤としてアスパルテームを用いる場合、香気成分含有飲食物中のアスパルテームの含有量(摂食時の飲食物の湿重量物換算)としては3ppm以上の範囲を例示することができる。なお、上限は特に制限されないが、アスパルテームを、甘味を呈さない量で使用する場合は、前記と同様に甘味の閾値(認知閾値)未満で調整することが好ましい。また、一般にアスパルテームは濃度が25ppmを超えると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。アスパルテームを甘味を呈する量で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば飲食物中のアスパルテームの濃度が3000ppm以下になるように調整することができる。
【0049】
より詳細には、飲食物に含まれる香気成分の種類とその割合に応じて、飲食物に対して下記の割合で用いることができる(飲食物100質量%とした割合)。
a.酪酸を0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0003~0.3質量%、好ましくは0.003~0.03質量%。
b.デカン酸を1~1000ppmの割合で含む飲食物:
0.0003~0.3質量%、好ましくは0.003~0.03質量%。
c.δ-デカラクトンを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0003~0.3質量%、好ましくは0.003~0.03質量%。
d.δ-ドデカラクトンを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0003~0.3質量%、好ましくは0.003~0.03質量%。
e.ジアセチルを0.1~100ppmの割合で含む飲食物:
0.0003~0.3質量%、好ましくは0.003~0.03質量%。
f.2-ノナノンを0.1~300ppmの割合で含む飲食物:
0.0003~0.3質量%、好ましくは0.003~0.03質量%。
g.2-ウンデカノンを0.1~300ppmの割合で含む飲食物:
0.0003~0.3質量%、好ましくは0.003~0.03質量%。
【0050】
香気成分含有フレーバー中のアスパルテーム及び各種香気成分の含量は、香気成分含有フレーバーを、例えば0.01~1質量%の添加量で飲食物に配合した場合にアスパルテームと各種香気成分の含有量が上記範囲になるように、適宜設定することができる。
【0051】
なお、スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムK、ステビア抽出物、又は/及びアスパルテームは、香気成分と共存していればよく、香気成分含有フレーバー又は飲食物の製造過程の任意の段階で添加することができるし、また香気成分含有飲食物を摂取する前に添加することができる。香気成分含有飲食物の好適な製造方法の詳細は後述する。
【0052】
斯くして本発明の香気成分含有フレーバー又は飲食物は、スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムK、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種を含む本香気増強剤を含有していることで、これらをいずれも含有しない香気成分含有フレーバー又は飲食物と比較して、各香気成分に起因する香りが増強されてなることを特徴とする。
【0053】
香気成分含有フレーバー又は飲食物について香気成分の香りが増強されているか否かは、本香気増強剤が配合された香気成分含有フレーバー又は飲食物(被験試料)の香気成分の香りを、本香気増強剤が配合されていない以外は前記被験試料と同じ組成からなる香気成分含有フレーバー又は飲食物(比較試料)の香りと比較することで評価することができる。この評価において、比較試料と比較して被験試料のほうが香気成分に起因する香りが増大している場合に、被験試料について本香気増強剤の配合により香気成分の香りが増強されていると判断することができる。具体的な評価方法は、制限されないものの、後述する実施例の記載に従って行うことができる。
【0054】
このように、香気成分含有フレーバー又は飲食物の製造工程で本香気増強剤を添加配合するか、または香気成分含有フレーバー又は飲食物を摂取するまえに本香気増強剤を添加配合するという簡便な方法で、香気成分に起因する香りを増強することができ、その結果、香気成分の香りが増強した香気成分含有フレーバー又は飲食物を調製し提供することができる。
【0055】
前述する本発明の香気成分含有フレーバー又は飲食物は、最終の香気成分含有フレーバー又は飲食物に本香気増強剤が含まれていればよく、その限りにおいて、本香気増強剤の配合時期や配合方法など、本発明のフレーバー及び飲食物の製造方法は特に制限されない。つまり、本発明の香気成分含有フレーバー又は飲食物の製造方法は、香気成分を、スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種と共存させる工程を含むものであればよい。
【0056】
(III)香気増強方法
本発明の香気増強方法は、香気成分を含むフレーバー又は飲食物を、スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種と共存させることで実施することができる。スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームは、香気成分含有フレーバー又は飲食物に対するそれらの配合割合を含めて、前記(I)~(II)で説明した通りであり、前記の記載はここに援用することができる。
【0057】
香気成分含有フレーバー又は飲食物について、それにスクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種(本有効成分)と共存させることで香気成分の香りが増強されたか否かは、本有効成分が配合された香気成分含有フレーバー又は飲食物(被験試料)の香気成分の香りを、本有効成分が配合されていない以外は前記被験試料と同じ香気成分含有フレーバー又は飲食物(比較試料)の香りと比較することで評価することができる。この評価において、比較試料と比較して被験試料のほうが香気成分の香りが増大している場合に、被験試料について本有効成分の配合により香気成分の香りが増強されていると判断することができる。具体的な評価方法は、制限されないものの、後述する実施例の記載に従って行うことができる。
【0058】
このように、本有効成分を配合するという簡便な方法により前述する香気成分に起因する香りを増強することができ、その結果、当該香りが増強した香気成分含有フレーバー又は飲食物を調製し提供することができる。
【実施例0059】
本発明の内容を以下の実験例や実施例を用いて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び室温条件下で行っている。また各実験例で採用したパネルは飲食品の風味やフレーバーの官能評価に従事し訓練して社内試験に合格した官能評価適格者であり、対象とする経口組成物の官能評価についてよく訓練したうえで、本実験を実施した。また特に言及する場合を除いて、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0060】
以下の実験例において、評価成分として使用した原料は下記の通りである。なお、後述する表には、原料(製品そのもの)の配合量を記載する。併せて、括弧書きで原料(製品)に含まれている甘味成分の換算値を併記する。
(1)スクラロース
スクラロース100%純品:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製。ショ糖の約600倍の甘味度を有する甘味料製品。
(2)ソーマチン
ネオサンマルク(登録商標)AG(ソーマチン0.15%含有)(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)。ショ糖の約4.5倍の甘味度を有する高甘味度甘味料。
(3)ラカンカ抽出物
サンナチュレ(登録商標)M50(ラカンカ抽出物100%含有)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製。モグロシドVを50%の割合で含有する、ショ糖の約300倍の甘味度を有する甘味料製品。
(4)アセスルファムカリウム
サネット(登録商標)(アセスルファムカリウム100%純品)(三菱商事ライフサイエンス株式会社製)。ショ糖の約200倍の甘味度を有する高甘味度甘味料。
(5)ステビア抽出物
レバウディオ(登録商標)J-100(乾燥粉末製品、守田化学工業(株)製)。レバウディオサイドA 95%以上含有品。ショ糖の約400倍の甘味度を有する高甘味度甘味料。
(6)アスパルテーム
パルスイート(登録商標)ダイエット(アスパルテーム100%純品)(味の素株式会社製)。ショ糖の約200倍の甘味度を有する高甘味度甘味料。
(7)ステビア抽出物及びラカンカ抽出物の混合物
サンナチュレ(登録商標)MS-R(ステビア抽出物95%+ラカンカ抽出物5%の混合物)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製。
【0061】
実験例1 香気成分含有組成物の香りの評価(その1)
表1に記載する割合で、イオン交換水(溶媒)に各香気成分及び評価成分(香気増強剤)を配合した被験試料を調製し、品温を15℃に調整した後、4名のパネルに各被験試料を摂取してもらい、各被験試料について香気成分の香りの強さを評価してもらった。評価は、同じ溶媒に各香気成分だけを1.0倍量含む試料(比較試料1)、1.1倍量含む試料(比較試料2)及び1.2倍量含む試料(比較試料3)を用意し、それらとの比較により、下記の基準に従って、各パネルにスコアをつけてもらうことで実施した。ちなみに、各パネルには、事前に比較試料1~3の各々を摂取して、各香気成分の香りの程度を把握してもらい、パネル間同士でその香り並びにその程度を確認しあった後、下記の基準をすり合わせて、各自の内的基準が互いに等しくなるように調整した(以下の実験例も同じ。)。なお、香りの評価は、各パネルに被験試料を口に含んでもらい、口腔から鼻腔にかけて感じる臭い(レトロネーザル)を評価してもらうことで実施した。
【0062】
[評価基準:スコア]
0点:比較試料1と同等の強さ
1点:比較試料1と比較試料2の間の強さ
2点:比較試料2と同等の強さ
3点:比較試料2と比較試料3の間の強さ
4点:比較試料3と同等の強さ
5点:比較試料3よりも強い
【0063】
被験試料の評価結果を表1に示す。表1に記載するスコアはパネル4名の平均値である。
【0064】
【0065】
表2に示すように、効果の程度には差があるものの、すべての評価成分に、酪酸、デカン酸、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、ジアセチル、2-ノナノン、及び2-ウンデカノンの香りを増強する効果が認められた。その効果の強さは、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物+ラカンカ抽出物、スクラロース、ソーマチン、ステビア抽出物、アスパルテーム、及びアセスルファムカリウムの順に高かった。また上記添加量はいずれの成分も甘味閾値程度の量であることから、いずれも香気成分含有組成物の味にほとんど影響を与えない量の配合により、香気成分の特有の香りを増強する効果があることが認められた。
【0066】
実験例2 香気成分含有組成物の香りの評価(その2)
評価成分(香気増強剤)として、ステビア抽出物とラカンカ抽出物の混合物、及びソーマチンを用いて、実験例1と同様に、表2及び3に記載する添加量になるように、各香気成分を含有するイオン交換水に添加して被験試料を調製した。これを、実験例1と同様に、品温15℃の状態で、4名のパネルに摂取してもらい、比較試料1~3との比較で、各被験試料の香気成分の香りを評価してもらった。
評価成分としてステビア抽出物とラカンカ抽出物の混合物を用いた結果を表2に、ソーマチンを用いた結果を表3に示す。
【0067】
【0068】
この結果から、ステビア抽出物とラカンカ抽出物の混合物は、評価した全ての香気成分に対して、総量で0.0002~0.2%の範囲で、香りを増強する効果を発揮することが確認された。またこの結果から、好ましくは0.0002~0.02%、より好ましくは0.002~0.02%であると考えられる。
【0069】
【0070】
この結果から、ソーマチンは、評価した全ての香気成分に対して、ソーマチン(純品)の量に換算して0.00000015~0.0015%の範囲で香りを増強する効果を発揮することが確認された。またこの結果から、好ましくは0.0000015~0.00015%、より好ましくは0.000015~0.00015%であると考えられる。
【0071】
実験例3 香気成分含有組成物の香りの評価(その3)
評価成分(香気増強剤)として、ステビア抽出物とラカンカ抽出物の混合物(最終濃度:0.002%)、及びソーマチン(ソーマチンとしての最終濃度:0.00015%)を用いて(いずれも甘味閾値程度)、実験例1と同様に、これらを表4に記載する添加量になるように、香気成分(酪酸、δ-デカラクトン、2-ウンデカノン)を各濃度で含有するイオン交換水に添加して被験試料を調製した。これを、実験例1と同様に、品温15℃の状態で、4名のパネルに摂取してもらい、比較試料1~3との比較で、各被験試料の香気成分の香りを評価してもらった。
酪酸に対する香り増強効果を表4、δ-デカラクトンに対する香り増強効果を表5、及び2-ウンデカノンに対する香り増強効果を表6に、それぞれ示す。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
結果に示すように、ステビア抽出物とラカンカ抽出物の混合物、及びソーマチンは、いずれも、対象とする香気成分の濃度が高くなるほど、その香りを増強する効果が高いことが確認された。また、各香気成分を香りの閾値濃度の微量含む場合でも、その香りを増強する効果を発揮することが確認された。このことから、本香気増強剤には、香気成分を微量含有する組成物に対して用いることでも、その香りを引き出す効果があると考えられる。