(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069726
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ポリイミドの微細パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
B29C 59/02 20060101AFI20230511BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B29C59/02 Z
H01L21/30 502D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181810
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山田 紘子
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA40
4F209AF01
4F209AG05
4F209PA02
4F209PA08
4F209PB01
4F209PJ06
4F209PN07
4F209PN09
4F209PQ09
5F146AA31
(57)【要約】
【課題】ポリイミド膜の表面に形状精度及び寸法精度の高い微細パターンを形成することが可能な方法を提供する。
【解決手段】
本発明によれば、ポリイミド膜の表面に微細な凹凸パターンを形成するポリイミドの微細パターン形成方法であって、基板上にポリアミック酸を含むポリイミド前駆体を塗布してポリイミド前駆体膜を形成する塗布工程と、ポリイミド前駆体膜の表面に凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成工程と、凹凸パターンに樹脂が埋め込まれた状態で、加熱しイミド化を行う焼成工程と、を含むことを特徴とするポリイミドの微細パターン形成方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド膜の表面に微細な凹凸パターンを形成するポリイミドの微細パターン形成方法であって、
基板上にポリアミック酸を含むポリイミド前駆体を塗布してポリイミド前駆体膜を形成する塗布工程と、
前記ポリイミド前駆体膜の表面に凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成工程と、
前記凹凸パターンに樹脂が埋め込まれた状態で、加熱しイミド化を行う焼成工程と、
を含むことを特徴とするポリイミドの微細パターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のポリイミドの微細パターン形成方法であって、
前記凹凸パターン形成工程では、前記樹脂からなる凹凸形成層と、基材とが設けられた凹凸フィルムを前記ポリイミド前駆体膜に押し当てることによって、前記凹凸パターンを形成し、
前記方法は、前記凹凸フィルムの前記基材を除去する除去工程を備え、
前記焼成工程では、前記凹凸パターンに前記凹凸形成層が埋め込まれた状態で、加熱しイミド化を行う、ポリイミドの微細パターン形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載のポリイミドの微細パターン形成方法であって、
前記除去工程では、前記凹凸フィルムの基材を剥離して除去する、ポリイミドの微細パターン形成方法。
【請求項4】
請求項1に記載のポリイミドの微細パターン形成方法であって、
前記凹凸パターンに前記樹脂を塗布により埋め込む埋込工程を備える、ポリイミドの微細パターン形成方法。
【請求項5】
ポリイミド膜の表面に微細な凹凸パターンを形成するポリイミドの微細パターン形成方法であって、
樹脂からなる凹凸形成層と、基材とが設けられた凹凸フィルム上にポリアミック酸を含むポリイミド前駆体を塗布する工程と、
前記ポリイミド前駆体の凹凸パターンに前記樹脂が埋め込まれた状態で、加熱しイミド化を行う焼成工程と、
を含むことを特徴とするポリイミドの微細パターン形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載のポリイミドの微細パターン形成方法であって、
前記ポリイミド前駆体から、溶媒を除去させる溶媒除去工程を備える、ポリイミドの微細パターン形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載のポリイミドの微細パターン形成方法であって、
前記溶媒除去工程後に前記凹凸フィルムの前記基材を除去する除去工程を備える、ポリイミドの微細パターン形成方法。
【請求項8】
請求項2、請求項3、及び請求項5~請求項7の何れか1項に記載のポリイミドの微細パターン形成方法であって、
前記凹凸フィルムの残膜厚さが50nm以下である、ポリイミドの微細パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドの微細パターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術による微細パターンの形成方法として、特許文献1には、熱硬化性材料を主成分とする薄膜に対し、モールドとしてのスタンパを押し当てた状態で加熱又は光照射といった外部刺激を付与することで、基板表面に凹凸パターンを形成する方法が開示されている。凹凸パターンを構成する材料として、ポリイミドが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリイミドは高耐熱性樹脂であり、ポリイミドに微細パターンを形成する場合には300℃以上の高温高圧状態でモールドを押し付ける必要がある。このため、付着物との剥離性の向上を目的としてモールド表面に形成される離型層が劣化し、その都度離型層の形成のための処理が必要となり煩雑であった。
【0005】
特許文献1においては、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を用いて形成した薄膜にスタンパを押し当てて凹凸パターンを形成した後に、スタンパを剥離して350℃前後において焼成を行いイミド化させている。このように微細パターンの形成後に焼成してイミド化を行う場合、凹凸パターンの寸法変化や変形が起こりやすいという問題があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ポリイミド膜の表面に形状精度及び寸法精度の高い微細パターンを形成することが可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ポリイミド膜の表面に微細な凹凸パターンを形成するポリイミドの微細パターン形成方法であって、基板上にポリアミック酸を含むポリイミド前駆体を塗布してポリイミド前駆体膜を形成する塗布工程と、前記ポリイミド前駆体膜の表面に凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成工程と、前記凹凸パターンに樹脂が埋め込まれた状態で、加熱しイミド化を行う焼成工程と、を含むことを特徴とするポリイミドの微細パターン形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るポリイミドの微細パターン形成方法においては、ポリイミド前駆体膜上の凹凸パターンに樹脂が埋め込まれた状態で焼成が行われるため、埋め込まれた樹脂によって焼成時のパターン面内方向の寸法変化及び変形を抑制できる。また、当該樹脂の材料を適宜選択することで、焼成時に酸化分解して容易に除去することができる。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記凹凸パターン形成工程では、前記樹脂からなる凹凸形成層と、基材とが設けられた凹凸フィルムを前記ポリイミド前駆体膜に押し当てることによって、前記凹凸パターンを形成し、前記方法は、前記凹凸フィルムの前記基材を除去する除去工程を備え、前記焼成工程では、前記凹凸パターンに前記凹凸形成層が埋め込まれた状態で、加熱しイミド化を行う。
好ましくは、前記除去工程では、前記凹凸フィルムの基材を剥離して除去する。
好ましくは、前記方法は、前記凹凸パターンに前記樹脂を塗布により埋め込む埋込工程を備える。
好ましくは、前記凹凸フィルムの残膜厚さが50nm以下である。
【0010】
本発明の別の観点によれば、ポリイミド膜の表面に微細な凹凸パターンを形成するポリイミドの微細パターン形成方法であって、樹脂からなる凹凸形成層と、基材とが設けられた凹凸フィルム上にポリアミック酸を含むポリイミド前駆体を塗布する工程と、前記ポリイミド前駆体の凹凸パターンに前記樹脂が埋め込まれた状態で、加熱しイミド化を行う焼成工程と、を含むことを特徴とするポリイミドの微細パターン形成方法が提供される。
【0011】
本発明に係るポリイミドの微細パターン形成方法においては、埋め込まれた樹脂によって上述の効果が得られる他、凹凸フィルム上にポリイミド前駆体を塗布する方式であるため工程が簡略であり連続式の生産が可能である。
【0012】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記方法は、前記ポリイミド前駆体から、溶媒を除去させる溶媒除去工程を備える。
好ましくは、前記方法は、前記溶媒除去工程後に前記凹凸フィルムの前記基材を除去する除去工程を備える。
好ましくは、前記凹凸フィルムの残膜厚さが50nm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1Aは、第1実施形態の塗布工程における基板1及びポリイミド前駆体膜2の断面図である。
図1B及び
図1Cは、第1実施形態の凹凸パターン形成工程を説明するための断面図である。
【
図2】凹凸フィルム3の作製方法を説明するための図である。
【
図3】
図3Aは、第1実施形態の除去工程において基材4を剥離した状態を示す断面図である。
図3Bは、第1実施形態の焼成工程後に得られる構造体7の断面図である。
【
図4】
図4Aは、第2実施形態の凹凸パターン形成工程においてモールド8をポリイミド前駆体膜2に押し当てた状態を示す断面図である。
図4Bは、モールド8を取り外した状態を示す断面図である。
図4Cは、第2実施形態の埋込工程において樹脂12を塗布した状態を示す断面図である。
【
図5】
図5Aは、第3実施形態の凹凸フィルム3の断面図である。
図5Bは、第3実施形態の前駆体塗布工程において凹凸フィルム3にポリイミド前駆体を塗布した状態を示す断面図である。
図5Cは、基材4を剥離した状態を示す断面図である。
図5Dは、第3実施形態の焼成工程後に得られる構造体7の断面図である。
【
図6】実施例及び比較例における凹凸パターン6aの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の各実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0015】
1.第1実施形態
第1実施形態に係るポリイミドの微細パターン形成方法は、塗布工程と、凹凸パターン形成工程と、除去工程と、焼成工程とを備える。以下、各工程について詳細に説明する。
【0016】
1.1.塗布工程
塗布工程では、
図1Aに示すように、基板1上にポリイミド前駆体を塗布してポリイミド前駆体膜2を形成する。
【0017】
基板1には、イミド化のための焼成時の高温に耐え得る材質が用いられ、例えば、ガラスが用いられる。基板1の厚さは、0.5~3.0mmの範囲であることが好ましい。
【0018】
基板1の表面に塗布するポリイミド前駆体は、ポリアミック酸を含む。また、塗布しやすいようにポリアミック酸を有機溶媒、水、又は有機溶媒と水の混合溶液等の溶媒に溶解させたポリアミック酸溶液をポリイミド前駆体として用いてもよい。有機溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が例示される。ポリアミック酸溶液中のポリイミド前駆体の割合は、好ましくは15~35wt%である。ポリアミック酸溶液を用いる場合、塗布後に乾燥させ溶媒を除去することでポリイミド前駆体膜2を形成することができる。ポリイミド前駆体膜2の厚さは、インプリント加工のし易さの観点から、乾燥厚で5~500μmの範囲であることが好ましい。ポリイミド前駆体の塗布方法としては、公知の塗付方法が利用でき、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スリットスキャン法等を挙げることができる。
【0019】
1.2.凹凸パターン形成工程
凹凸パターン形成工程では、ポリイミド前駆体膜2の表面に凹凸パターン2aを形成する。凹凸パターン2aは、凹凸が一定の周期で繰り返されるパターンであり、好ましくは、周期が100nm~50μm、凸部の幅(直径)が50nm~100μm、凸部の高さが50nm~10μmの微細パターンである。本実施形態では、
図1B及び
図1Cに示すように、凹凸フィルム3の凹凸形成層5を被転写体であるポリイミド前駆体膜2に押し当てることによって凹凸パターン形成工程を実施することができる。一例では、凹凸フィルム3をポリイミド前駆体膜2に押し当てた状態で加熱するか、又はあらかじめポリイミド前駆体膜2を加熱した状態で、熱インプリントすることにより凹凸形成層5のパターンをポリイミド前駆体膜2に転写し、その後冷却することで凹凸パターン2aの形成が行われる。この際、20~60℃まで冷却することが好ましい。熱インプリントにおいて、凹凸フィルム3をポリイミド前駆体膜2に押し当てる押圧力は、好ましくは5MPa~40MPaであり、加熱温度は、好ましくは80~150℃である。
【0020】
(凹凸フィルム3の構成)
第1実施形態の凹凸フィルム3は、
図1Bに示すように、基材4と、基材4上に形成された樹脂製の凹凸形成層5とを有する。基材4の材質は、特に限定されず、樹脂基材、石英基材、サファイア基材等を用いることができる。可撓性の観点からは樹脂基材であることが好ましく、樹脂基材として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、及び環状ポリオレフィンからなる群から選ばれる1種を用いることができる。樹脂基材を用いる場合、除去工程において基材4を凹凸形成層5から容易に剥離できるよう、表面に易接着処理を行っていない未処理表面を有する樹脂基材を用いることが好ましい。また、基材4の厚さは、25~500μmの範囲であることが好ましい。
【0021】
凹凸形成層5には、ポリイミド前駆体膜2に形成すべき凹凸パターン2aの反転パターン5aが形成されている。凹凸パターン2aの具体的な形状としては、ピラー形状、ホール形状、及びラインアンドスペース形状、ハニカム形状、円錐形状、四角柱形状、四角錘形状、三角柱形状、三角錘形状、多角柱形状、多角錘形状、格子形状が挙げられる。本実施形態においてポリイミド前駆体膜2に形成される凹凸パターン2aはピラー形状であり、凹凸形成層5には当該ピラー形状を反転したホール形状のパターンが形成されている。なお、パターンの形状は本実施形態の例に限定されず、例えば、ポリイミド前駆体膜2の凹凸パターン2aをホール形状とし、凹凸形成層5の反転パターン5aをピラー形状としてもよい。
【0022】
凹凸形成層5の材質は樹脂であり、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂の何れでもよく、具体的には、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂の混合物等が挙げられる。凹凸フィルム3の作製しやすさの観点からは光硬化性樹脂が好ましい。
【0023】
凹凸形成層5を光硬化性樹脂で構成する場合、凹凸形成層5は、モノマー及び光重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物をUV光、可視光、又は電子線等の活性エネルギー線の照射によって硬化させることで形成される。モノマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等を形成するための光重合性のモノマーが挙げられる。
【0024】
光重合開始剤は、光によりモノマーの重合を促進するために添加される成分である。光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、適切な活性種を発生させるものを用いる。特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アントラキノン系光重合開始剤等が挙げられる。光重合開始剤は単独で適用することも可能であるが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。このほか公知の光重合促進剤及び増感剤等と組み合わせて適用することもできる。本発明の光重合開始剤の配合比は光重合性のモノマー固形分100重量部に対して0.1~15重量部の範囲であることが好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。本実施形態の光硬化性樹脂組成物は種々の目的に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、更なる添加成分を含有していてもよい。このような添加成分としては、溶媒、増感剤、光重合促進剤、酸化防止剤、レベリング剤、重合禁止剤、連鎖移動剤等が挙げられる。
【0025】
また、被転写体へ押し当てた際の凹凸パターン2aの形成しやすさの観点からは、剛性が高い樹脂を用いることが好ましい。また、後述するように、凹凸形成層5を被転写体のポリイミド前駆体膜2に埋め込んだ状態でイミド化のための焼成が行われ、埋め込まれた凹凸形成層5の樹脂の存在により凹凸パターン2aの変形及び面内方向の寸法変化が抑制される。従って、加熱時にある程度の温度までその形状を維持できる一方、焼成の進行に伴い酸化分解されるものが好ましい。このような樹脂として、(メタ)アクリル樹脂が好ましい。本発明の(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマーの単重合体又は2種以上の共重合体が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない範囲で前記以外の(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートモノマー以外のモノマー、又はオリゴマー、ポリマー等を含有してもよい。前記(メタ)アクリレートモノマーを含む光硬化性樹脂組成物において、塗液の粘度調整のため、モノマーや溶剤等を添加することができる。光硬化性樹脂組成物の粘度は、添加するモノマー及び溶剤の種類や含有量を調節することで調整できる。
【0026】
凹凸フィルム3は、基材4と凹凸形成層5との間に中間層を有してもよい。中間層は、基材4と凹凸形成層5との密着性を制御するために設けられ、これにより基材4の除去工程において基材4を容易に剥離することが可能となる。中間層の材質は、凹凸パターン形成工程が行われる温度である100℃前後のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂が好ましく、このような熱可塑性樹脂として、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸イソブチルが挙げられる。
【0027】
図1Bに示すように、凹凸形成層5上の反転パターン5aの凹部51の底面には、残膜52が存在する。後述するように、残膜52は基材4の除去工程において基材4に付着して剥離されることが好ましい。そのような場合、残膜52の厚さdは300nm以下、好ましくは50nm以下、20nm以下であることがさらに好ましい。厚さdが50nm以下の範囲であれば、凹凸形成層5の残膜52のみを基材4とともに容易に剥離することができる。なお、厚さdは、パターンエリアの任意の箇所をテープで基材から剥離して基材表面を露出させた場合の基材表面の高さと、凹凸形成層5上の反転パターン5aにおいて連続する所定数の凸部の間の凹部51との高さの差について平均値をとることで算出される。例えば、連続する5個の凸部の間の4個の凹部51に存在する残膜52の厚さdの平均値が、残膜52の厚さdとなる。
【0028】
残膜52の厚さdの測定は、例えば、株式会社日立ハイテクフィールディング製走査型プローブ顕微鏡L-trace、オリンパス株式会社製SPM用カンチレバーOMCL―AC160TS-R3を用いて実施可能である。これらの測定機器を用いる場合、測定条件は、例えばオートリニアライズ:CL ON、SISモード:ON、回転角度:90°、Iゲイン:0.05333、Pゲイン:0.0134、Aゲイン:0、Sゲイン:0は共通条件とし、走査エリアは連続する7個の凸部が測定できるようにパターンサイズに応じて変更可能である。解析は、測定ソフトに内蔵されている「表面粗さ解析」にて実施し、測定範囲の7個の凸部のうち連続する5個の凸部の間に存在する4個の残膜52の厚さdの平均値を、残膜52の厚さdとすることが可能である。
【0029】
(凹凸フィルム3の作製方法)
本実施形態の凹凸フィルム3は、光インプリントにより作製される。
図2に示すように、フィルム状の基材4の表面41に光硬化性樹脂組成物を塗布し、台9上に載置されたマスターモールド10に対してロール11を一方向に進行させることにより光硬化性樹脂組成物が塗布された面を押し当てる。マスターモールド10は、反転パターン5aが反転されたパターン、すなわち、ポリイミド前駆体膜2に形成すべき微細な凹凸パターン2aと同様のパターンを有する。マスターモールド10に押し当てられた状態で活性エネルギー線を照射し光硬化性樹脂組成物を硬化させることによって、反転パターン5aを有する凹凸形成層5が形成される。
【0030】
1.3.除去工程
除去工程では、凹凸フィルム3の基材4を除去する。具体的には、
図3Aに示すように、ポリイミド前駆体膜2に押し当てられた凹凸フィルム3から、基材4を除去する。本実施形態では、凹凸フィルム3から基材4を剥離することにより、除去工程を実施することができる。この際、基材4の材質として未処理表面を有する未処理PETを用いる場合にはテープを貼り付け、引っ張ることで容易に剥離可能であり、また基材4と凹凸形成層5との間に中間層を設置する場合には中間層樹脂のガラス転移温度以上に加熱したり、良溶媒で溶解することにより容易に剥離できる。
【0031】
基材4を除去した後のポリイミド前駆体膜2は、凹凸パターン2aに凹凸形成層5の樹脂53の少なくとも一部が埋め込まれた状態となる。ここで、凹凸形成層5の残膜52も基材4に付着して剥離されることがより好ましい。これにより、凹凸パターン2aの凹部に凹凸形成層5の樹脂53が埋め込まれる一方、凸部の頂部21は外部に露出した状態となり、焼成工程においてイミド化に伴い生成するガスが露出部分から排出され、凸部の変形を抑制することが可能となる。また、焼成時に凹凸形成層5の一部が酸化分解されずに残渣としてポリイミド膜上に残る場合があるが、残膜52を剥離した状態で焼成を行うことで、凸部上の残渣を少なくすることができる。
【0032】
なお、本実施形態においては、凹凸フィルム3の基材4を剥離により除去したが、他の方法により除去してもよい。例えば、ポリイミド前駆体膜2に押し当てられた凹凸フィルム3を上面(基材4側の面)から所定の厚さだけ削って基材4を除去してもよい。
【0033】
1.4.焼成工程
焼成工程では、凹凸パターン2aに樹脂が埋め込まれた状態で、加熱しイミド化を行う。本実施形態では、基材4の剥離後、
図3Aに示すように凹凸形成層5の樹脂53が埋め込まれた状態で、ポリイミド前駆体膜2を加熱しイミド化を行うことで焼成工程を実施することができる。加熱は、400~500℃で60~90分間行うことが好ましい。凹凸パターン2aは、イミド化の進行とともに収縮して寸法が変化する。凹凸パターン2aに凹凸形成層5の樹脂53が埋め込まれている場合、凹凸パターン2aと樹脂53との界面における接着力により基板1の面内方向の収縮が抑制される。また、樹脂53の材質として上述の加熱温度において酸化分解されるものを選択することで、樹脂53のみを容易に除去することも可能となる。
【0034】
焼成の完了により、
図3Bに示すように、基板1上のポリイミド膜6の表面に微細な凹凸パターン6aが形成された構造体7が得られる。このような構造体7の用途は特に限定されないが、音響振動板等に特に好適に利用可能である。
【0035】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係るポリイミドの微細パターン形成方法について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0036】
第1実施形態では、凹凸パターン形成工程後に除去工程において凹凸フィルム3から基材4を除去した。一方、第2実施形態では、凹凸パターン形成工程後に埋込工程を備える。
【0037】
第2実施形態の凹凸パターン形成工程は、
図4Aに示すように、モールド8をポリイミド前駆体膜2に押し当てることによって実施することができる。モールド8は、基材81及び凹凸形成層82を有し、凹凸形成層82には第1実施形態の反転パターン5aと同様の反転パターン8aが形成されている。凹凸パターン2aの形成は、一例では、熱インプリントにより反転パターン8aをポリイミド前駆体膜2に転写し、その後冷却することで行われる。冷却後、
図4Bに示すように、モールド8全体をポリイミド前駆体膜2から取り外す。
【0038】
モールド8は、第1実施形態と同様の構成としてもよいし、異なる構成としてもよい。第2実施形態においてはモールド8から基材81を剥離等により除去する必要がないため、基材81と凹凸形成層82の接着性が高い方が好ましい。また、凹凸パターン形成工程後にモールド8全体を取り外しやすくするために、凹凸形成層82に離型処理がされてもよい。離型処理の方法としては、凹凸形成層82の表面に離型剤からなる離型層を形成する、又は凹凸形成層82を離型性樹脂で形成する方法が挙げられる。
【0039】
凹凸パターン形成工程後の埋込工程において、
図4Cに示すようにポリイミド前駆体膜2の凹凸パターン2aに樹脂12を塗布により埋め込む。埋め込む樹脂12は、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、又は熱硬化性樹脂の何れでもよく、具体的には、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂の混合物等が挙げられる。塗布による埋め込みやすさの観点からは、熱可塑性樹脂あるいは光硬化性樹脂を用いることが好ましい。塗布方法としては、公知の塗付方法が利用でき、第1実施形態のポリイミド前駆体と同様の方法が挙げられる。また、光硬化性樹脂を用いる場合には、モノマー及び光重合開始剤を含有する樹脂組成物を塗布し、光硬化させることで樹脂12を埋め込んでもよい。この場合のモノマー及び光重合開始剤については、第1実施形態の凹凸形成層5と同様の物質及び配合比が好適である。光硬化させる際には、酸素による硬化阻害を抑制するために不活性ガス環境下あるいはフィルム等で被覆して光を照射することが好ましい。
【0040】
樹脂12は、少なくとも凹凸パターン2aの凹部22が樹脂で充填されるように塗布される。また、凹凸パターン2aの全面に樹脂12を塗布してもよいが、凹凸パターン2aの凸部の頂部21上の樹脂12の厚さが300nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下となるように調整するか、又は凸部の頂部21以外の部分に塗布することが好ましい。これにより、凸部の頂部21が外部にほぼ露出した状態となり、イミド化に伴い生成するガスが露出部分から排出され、凸部の変形を抑制することが可能となる。
【0041】
3.第3実施形態
第3実施形態に係るポリイミドの微細パターンの形成方法について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0042】
第1実施形態では
図1Aに示すように、基板1上にポリイミド前駆体を塗布してポリイミド前駆体膜2を形成する。一方、第3実施形態では、凹凸フィルム3の表面にポリイミド前駆体を塗布する前駆体塗布工程を備える。第3実施形態は、凹凸フィルム3上に塗布する方式であるため、工程が簡略であり連続式の生産が可能である点で工程上の優位性がある。
【0043】
第3実施形態の前駆体塗布工程では、
図5A及び
図5Bに示すように反転パターン5aを有する凹凸フィルム3上にポリイミド前駆体を塗布する。具体的には、凹凸フィルム3の凹凸形成層5上にポリイミド前駆体を塗布して、ポリイミド前駆体膜2を形成する。そして、
図5Cに示すように、第1実施形態と同様に凹凸形成層5の樹脂53が埋め込まれた状態で焼成工程を行い、これにより、
図5Dに示すようにポリイミド膜6の表面に微細な凹凸パターン6aが形成された構造体7が得られる。
【0044】
この際用いる凹凸フィルム3は第1実施形態と同様の構成としてもよい。第3実施形態においては、凹凸フィルム3から基材4を剥離等により除去する必要があるため、基材4と凹凸形成層5の接着性が低い方が好ましく、第1実施形態と同様に中間層を設けても良い。
【0045】
第3実施形態で用いるポリイミド前駆体は、第1実施形態と同様の組成であり、ポリアミック酸を溶媒に溶解させたポリアミック酸溶液を用いてもよい。ポリイミド前駆体の塗布方法としては、公知の塗付方法が利用でき、第1実施形態のポリイミド前駆体の塗布と同様の方法が挙げられる。ポリイミド前駆体膜2の厚さは、インプリント加工のし易さの観点から、乾燥厚で5~500μmの範囲であることが好ましい。厚さが、5μm未満ではポリイミド前駆体膜2の強度が低く、500μmより大きいとフレキシブル性がなくなる。第3実施形態におけるポリイミド前駆体膜2の厚さは、
図5Bにおいて凹凸形成層5の凹部51の底面に接するポリイミド前駆体膜2の下面からポリイミド前駆体膜2の上面までの距離を指す。
【0046】
前駆体塗布工程を経た後は、そのまま焼成工程を形成してもよい。しかしながら、塗布膜中に溶媒分が多量に残留している場合は、自然乾燥により溶媒分をある程度揮発させた後に焼成工程を実施するか、あるいは、焼成工程の実施前に溶媒除去工程を実施することが好ましい。溶媒除去工程では、塗布膜の流動性が失われる程度の条件でポリイミド前駆体に乾燥処理を行う。乾燥処理は、加熱乾燥や減圧乾燥などを適宜選択することができる。条件は、ポリイミド前駆体膜2の厚さや、ポリイミド前駆体膜2中に含まれる溶媒の含有量や沸点、蒸気圧、固形分の硬化温度等に応じて適宜選択することができる。3~15wt%程度まで溶媒を除去することが好ましい。
【0047】
また、溶媒除去工程後に、第1実施形態と同様に凹凸フィルム3の基材4を剥離等により除去する除去工程を実施することができる。除去工程においては、
図5Cに示すように、凹凸形成層5の残膜52も基材4に付着して除去されることが好ましく、これにより凹凸パターン2aの凹部に凹凸形成層5の樹脂53が埋め込まれ、凸部の頂部21が外部に露出した状態となる。基材4除去後はポリイミド前駆体膜2をピンテンター、クリップ等で固定することが好ましい。
【実施例0048】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。
【0049】
(実施例1~5)
実施例1~5では、凹凸フィルム3の材質として基材4には未処理PETを用い、凹凸形成層5はトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)と、TMPTMA100重量部に対して、光重合開始剤のイルガキュア184およびイルガキュア819をそれぞれ3および1重量部混合した樹脂組成物を光硬化することによって作成した。ピラー形状の凹凸パターンを有するマスターモールド10(パターン周期:3μm)を用いて、前記樹脂組成物をUV光による光ナノインプリントすることよって、ホール形状である反転パターン5aを有し、且つ残膜52の厚さdが表1に示す値である凹凸フィルム3を作製した。なお、実施例1~3、及び実施例4,5では、残膜52の厚さdが同じ凹凸フィルム3を異なるロットでそれぞれ作製した。
【0050】
【0051】
ガラス製の基板1(縦100mm、横100mm、厚さ1.1mm)上にポリイミド前駆体としてポリアミック酸溶液を塗布した。塗布後に80℃で30分間加熱して溶媒を除去し、厚さ12μmのポリイミド前駆体膜2を形成した。ナノインプリント装置を用いて100℃に加熱したポリイミド前駆体膜2に凹凸フィルム3を30MPaの押圧力で押し当てることにより、ポリイミド前駆体膜2の表面にピラー形状の凹凸パターン2aを形成し、その後ナノインプリント装置の水冷機構によって40℃まで冷却を行った。
【0052】
次に、ポリイミド前駆体膜2に押し当てられた凹凸フィルム3から、基材4を剥離して除去した。実施例1~3では凹凸フィルム3の残膜52の厚さdが10nm以下と小さいため、残膜52が基材4とともに剥離された。実施例4,5では残膜52の厚さdが大きいため、剥離されずに凹凸パターン2aの凸部の頂部21上に残った。基材4の除去後、ポリイミド前駆体膜2を400℃で90分間加熱して焼成し、ポリイミド膜6の表面に微細な凹凸パターン6aが形成された構造体7を得た。
【0053】
(実施例6)
実施例6では、実施例1~5と同様に基板1上にポリイミド前駆体膜2を形成した。実施例1~5と同じマスターモールド10を用いて作製したモールド8によりポリイミド前駆体膜2の表面にピラー形状の凹凸パターン2aを形成した後、モールド8全体を取り外した。
【0054】
次に、ポリイミド前駆体膜2の凹凸パターン2aに実施例1~5と同様の樹脂組成物を酢酸エチルで15wt%に希釈し、スピンコーターにて塗布し、溶剤乾燥後、セパレートフィルムをラミネートし、積算光量3000mJ/cm2のUV照射にて光硬化させることにより樹脂12を埋め込んだ。この際、凹凸パターン2aの凹部22が樹脂12で充填され、凹凸パターン2aの凸部の頂部21上の樹脂12の厚さが10nm以下となるように塗布した。樹脂12の埋め込み後、実施例1~5と同様に焼成を行って構造体7を得た。
【0055】
(実施例7)
実施例7では、実施例1~5と同じ材質及びマスターモールド10を用いて、残膜52の厚さdが10nm以下の凹凸フィルム3を作成した。凹凸フィルム3上にポリイミド前駆体としてポリアミック酸溶液をバーコーターにて乾燥厚で12μmとなるように塗布した。塗布後に80℃で30分間加熱してポリアミック酸溶液中の溶媒を除去した。凹凸フィルム3の基材4を残膜52とともに除去した後、ピンテンターに固定し、ポリイミド前駆体膜2を400℃で90分間加熱して焼成し、ポリイミド膜6の表面に微細な凹凸パターン6aが形成された構造体7を得た。
【0056】
(比較例1)
比較例1では、実施例6と同様のモールド8によりポリイミド前駆体膜2の表面に凹凸パターン2aを形成し、その後モールド8全体を取り外してからポリイミド前駆体膜2を焼成した以外は、実施例1~5と同様の条件で、構造体7を得た。
【0057】
(実施例8)
実施例8では、凹凸フィルム3の材質として基材4には未処理PETを用い、凹凸形成層5は実施例1~5と同様の樹脂組成物を光硬化することによって作成した。ホール形状の凹凸パターン2aを有するマスターモールド10(パターン周期:3μm)を用いて、ピラー形状である反転パターン5aを有し、残膜52の厚さdが表1に示す値である凹凸フィルム3を作製した。
【0058】
実施例1~5と同様に、基板1上にポリイミド前駆体膜2を形成し、作製した凹凸フィルム3によりポリイミド前駆体膜2の表面にホール形状の凹凸パターン2aを形成した。次に、ポリイミド前駆体膜2に押し当てられた凹凸フィルム3から、基材4を剥離して除去した。凹凸フィルム3の残膜52の厚さdが50nm以下と小さいため、残膜52が基材4とともに剥離された。基材4の除去後、実施例1~5と同様に焼成を行った。
【0059】
(比較例2)
比較例2では、実施例8と同じマスターモールド10を用いて作成したモールド8によりポリイミド前駆体膜2の表面にホール形状の凹凸パターン2aを形成した後モールド8全体を取り外してからポリイミド前駆体膜2を焼成した以外は、実施例8と同様の条件で、構造体7を得た。
【0060】
なお、実施例及び比較例で用いた物質の詳細は以下の通りである。
未処理PET:東レ株式会社製、ルミラーU35
TMPTMA:共栄社化学株式会社製、ライトエステルTMP
ポリアミック酸溶液:宇部興産株式会社製、U-ワニス-S-1001(溶媒:NMP、固形分18%)
イルガキュア184:BASF製
イルガキュア819:BASF製
【0061】
(面内方向の寸法変化)
得られた構造体7のポリイミド膜6に形成された凹凸パターン6aの寸法を、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定した。面内方向の寸法変化の指標として凹凸パターン6aの凸部の半値幅(凸部)を測定し、結果を表1に示した。なお、測定範囲に存在する凸部の凸幅の測定値の平均値を結果として示している。マスターモールド10の凹凸パターンの凸幅の値に近いほど、ポリイミド膜6の凹凸パターン6aの面内方向の寸法変化が小さい。
【0062】
実施例1~7のポリイミド膜6の凸幅は、マスターモールド10の凸幅(1.69μm)に近い値となった。一方、ポリイミド前駆体膜2の凹凸パターン2aに樹脂が埋め込まれていない状態で焼成が行われた比較例1のポリイミド膜6の凸幅は、マスターモールド10の凸幅よりも顕著に小さかった。この結果より、ポリイミド前駆体膜2の凹凸パターン2aに樹脂が埋め込まれた状態で焼成工程を行うことで、面内方向の寸法変化が抑制されることが分かった。また、樹脂の埋め込み方法については、除去工程において凹凸フィルム3から基材4を除去する方法、及び埋込工程において樹脂を塗布する方法の何れにおいても、寸法変化の抑制効果が得られることが分かった。
【0063】
実施例8のポリイミド膜6の凸幅は、マスターモールド10の凸幅(1.23μm)に近い値となった。一方、凹凸パターン2aに樹脂が埋め込まれていない状態で焼成が行われた比較例2のポリイミド膜6の凸幅は、マスターモールド10の凸幅よりも顕著に小さかった。この結果より、凹凸フィルム3及びポリイミド前駆体膜2の凹凸パターン2aの形状を変化させても、面内方向の寸法変化の抑制効果が得られることが分かった。
【0064】
(凹凸パターンの変形)
図6は、実施例1~8及び比較例1,2の構造体7のポリイミド膜6に形成された凹凸パターン6aの断面、及びマスターモールド10の凹凸パターンの断面を、走査型プローブ顕微鏡による測定データに基づき表した断面図である。断面図の白色部分が、ポリイミド膜6又はマスターモールド10の凹凸パターンを表す。また、凹凸パターンの変形の指標として凸部の幅比r[-]を算出し、結果を表1に示した。
図7に示すような高さH[μm]の断面を有する凸部について、高さ0.1H[μm]における凸部の幅をW1[μm]、高さ0.9H[μm]における凸部の幅をW2[μm]とした場合、幅比rは、W2/W1と定義される。なお、測定範囲に存在する凸部の幅W1,W2の平均値を算出し、当該平均値から求めた幅比rを結果として示している。測定は、上述の残膜52の厚さdの測定と同様に、株式会社日立ハイテクフィールディング製走査型プローブ顕微鏡L-trace、オリンパス株式会社製SPM用カンチレバーOMCL―AC160TS-R3を用いて実施した。測定条件は、オートリニアライズ:CL ON、SISモード:ON、回転角度:90°、Iゲイン:0.05333、Pゲイン:0.0134、Aゲイン:0、Sゲイン:0は共通条件とし、走査エリアは連続する7個の凸部が測定できるようにパターンサイズに応じて変更した。解析は、測定ソフトに内蔵されている「断面形状測定」にて評価領域を上限90%、しきい値50%、下限10%に設定し、連続する5個の凸部の線幅の平均値として算出した。
【0065】
実施例1~7及び比較例1で用いたマスターモールド10は、凸部の頂部が略平坦な形状を有していた。実施例1~3,6,7では、凹凸パターン6aの凸部の頂部は略平坦であり、且つ幅比rはマスターモールド10の幅比rに近い値となり、焼成時の凸部の変形が抑制されていることが分かった。実施例1~3,7では残膜52が基材4とともに剥離され、実施例6では凸部の頂部21上の樹脂の厚さが小さくなるように樹脂を塗布したため、これらの実施例においては凹凸パターン2aの凸部の頂部21が外部にほぼ露出した状態であった。これにより、焼成においてイミド化に伴い生成するガスが頂部21付近に滞留することなく排出され、変形が抑制されたものと考えられる。
【0066】
実施例4,5では、凹凸パターン6aの凸部の頂部が丸みを帯びており、幅比rはマスターモールド10の幅比rよりも大きく減少した。実施例4,5では比較的厚い残膜52が凹凸パターン2aの凸部の頂部21上に残った状態で焼成が行われるため、イミド化に伴い生成するガスが残膜52と頂部21との間に滞留し、その圧力により頂部21が大きく変形したものと考えられる。
【0067】
実施例8及び比較例2で用いたマスターモールド10は、凸部の頂部が窪んだ形状を有していた。実施例8では、凹凸パターン6aの凸部の頂部が窪んでおり、且つ幅比rはマスターモールド10の幅比rに近い値となり、焼成時の凸部の変形が抑制されていることが分かった。この結果より、凹凸フィルム3及びポリイミド前駆体膜2の凹凸パターンの形状を変化させても、ポリイミド膜6の凹凸パターンの変形の抑制効果が得られることが分かった。
【0068】
(総合評価)
凹凸パターンの面内方向の寸法変化の抑制効果、及び変形の抑制効果を、以下の基準で総合的に評価し、結果を表1に示した。ここで、マスターモールドを基準とした凸幅の変化率の許容範囲を±10%以内、幅比rの変化率の許容範囲を±15%以内とした。
A:凸幅の変化率、及び幅比rの変化率が許容範囲内
B:凸幅の変化率は許容範囲内であるが、幅比rの変化率が許容範囲外
C:凸幅の変化率が許容範囲外