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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069736
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】情報管理システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20230511BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20230511BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181830
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(72)【発明者】
【氏名】大場 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】千葉 勝久
(72)【発明者】
【氏名】植木 浩貴
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA03
3C100AA16
3C100AA22
3C100AA29
3C100AA36
3C100AA43
3C100AA59
3C100BB12
3C100BB15
3C100BB33
3C100BB38
3C100BB39
3C100CC03
5L049AA20
5L049CC04
(57)【要約】
【課題】複数の各工場で独立して管理されている生産・製造に関する情報の円滑な情報共有又は情報連携を行うことができる環境を実現する。
【解決手段】実施形態の情報管理システムは、各工場が、生産管理計画に基づく製造計画と、連携する他工場からの調達に関する入荷計画と、製造計画及び入荷計画に対応する各実績とを保持し、工場における製造の計画及び実績を独自に管理する既設の製造管理システムを備えている前提の下で、工場別に生産要求データモデル、生産指示データモデル、及び入荷計画データモデルを記憶する記憶装置と、工場の製造管理システムを通じて得られる製造計画及び製造実績を、所定のデータ構造定義テンプレートを用いて各データモデルに構造化して蓄積するデータ蓄積管理装置と、データモデルを通じて他の工場の製造の計画及び実績に関連する情報を参照する情報管理装置と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工場が連携して生産する製品の生産管理のための情報管理システムであって、
各工場は、生産管理計画に基づく製造スケジュール及び製造指示を含む製造計画と、連携する他工場からの調達に関する入荷計画と、前記製造計画及び入荷計画に対応する各実績と、を保持し、工場における製造の計画及び実績を独自に管理する既設の製造管理システムを備えており、
工場別に、工場における製造の計画及び実績を蓄積する領域であるデータモデルであって、前記生産管理計画に対応する生産要求データモデル、前記製造計画に対応する生産指示データモデル、及び前記入荷計画に対応する入荷計画データモデルを記憶する記憶装置と、
工場の前記製造管理システムを通じて得られる前記製造計画及び前記製造実績を、所定の項目から構成されるデータ構造定義テンプレートを用いて、前記各データモデルに構造化して蓄積するデータ蓄積管理装置と、
前記データモデルを通じて他の工場の製造の計画及び実績に関連する情報を参照する情報管理装置と、
を有することを特徴とする情報管理システム。
【請求項2】
自工場のユーザに対する情報開示範囲である第1参照制限情報と、他工場に対する情報開示範囲である第2参照制限情報と、を設定するデータ参照管理部をさらに備え、
前記データ参照管理部は、前記第1参照制限情報に基づいて、前記データモデルを通じた工場の製造の計画及び実績に関連する情報の内部参照制限処理を行い、前記第2参照制限情報に基づいて、前記データモデルを通じた工場の製造の計画及び実績に関連する情報の外部参照制限処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項3】
前記情報管理システムは、各工場それぞれに設けられ、
各工場の前記情報管理システムの宛先IPアドレスを格納し、各工場から他の工場に対する情報参照要求を受け付け、該当の前記宛先IPアドレスを用いて参照要求先の前記情報管理システムに接続する接続制御と、参照要求先の前記情報管理システムから提供される前記データモデルに基づく製造計画及び製造実績の情報を取得し、前記情報参照要求をした工場の前記情報提供システムに、取得した前記情報を送信する中継制御と、を行う中継管理装置をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報管理システム。
【請求項4】
前記中間管理装置は、各工場の前記情報管理システムのいずれか1つに設けられることを特徴とする請求項3に記載の情報管理システム。
【請求項5】
複数の工場が連携して生産する製品の生産管理のための情報管理システムであって、
各工場は、生産管理計画に基づいて作成された製造計画と、前記製造計画に対応する製造実績とを保持し、工場における製造の計画及び実績を独自に管理する既設の製造管理システムを備えており、
工場別に、工場における製造の計画及び実績を蓄積する領域であるデータモデルであって、前記製造計画に対応する生産指示データモデルを記憶する記憶装置と、
工場の前記製造管理システムを通じて得られる前記製造計画及び前記製造実績を、所定の項目から構成されるデータ構造定義テンプレートを用いて、前記生産指示データモデルに構造化して蓄積するデータ蓄積管理装置と、
各工場の前記データモデルそれぞれから、連携する複数の各工場の製造の計画及び実績を参照する情報管理装置と、
を有することを特徴とする情報管理システム。
【請求項6】
複数の製造工程を経て製造される製品の製造管理のための情報管理システムであって、
各製造工程は、生産管理計画に基づく製造スケジュール及び製造指示を含む製造計画と、前記製造計画に対応する各実績と、を保持し、製造工程毎の製造の計画及び実績を独自に管理する既設の製造管理システムを備えており、
製造工程別に製造の計画及び実績を蓄積する領域であるデータモデルであって、前記生産管理計画に対応する生産要求データモデル及び前記製造計画に対応する生産指示データモデルを記憶する記憶装置と、
前記各製造管理システムを通じて得られる前記製造計画及び前記製造実績を、所定の項目から構成されるデータ構造定義テンプレートを用いて、前記各データモデルに構造化して蓄積するデータ蓄積管理装置と、
前記データモデルを通じて他の製造工程の製造の計画及び実績に関連する情報を参照する情報管理装置と、
を有することを特徴とする情報管理システム。
【請求項7】
前記所定の項目は、「主体物(Who)」、「対象物(Whome)」、「事象(What)」、「時間(When)」、「場所(Where)」、「状況(How)」で構成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数の工場が連携して生産する製品の生産管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生産管理技術として従来から、ERP(Enterprise Resources Planning)やMRP(Material Resource Planning)などの様々な管理システムが活用されている。また、工場などの製造現場では、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)が導入され、製造計画及び製造実績が管理されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-9188号公報
【特許文献2】特許6921904号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つの製品の製造に関係する複数の各工場で独立して管理されている生産・製造に関する情報の円滑な情報共有、情報連携を行うことができる環境を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の情報管理システムは、複数の工場が連携して生産する製品の生産管理に適用される。各工場は、生産管理計画に基づく製造スケジュール及び製造指示を含む製造計画と、連携する他工場からの調達に関する入荷計画と、前記製造計画及び入荷計画に対応する各実績と、を保持し、工場における製造の計画及び実績を独自に管理する既設の製造管理システムを備えている。本情報管理システムは、工場別に、工場における製造の計画及び実績を蓄積する領域であるデータモデルであって、前記生産管理計画に対応する生産要求データモデル、前記製造計画に対応する生産指示データモデル、及び前記入荷計画に対応する入荷計画データモデルを記憶する記憶装置と、工場の前記製造管理システムを通じて得られる前記製造計画及び前記製造実績を、所定の項目から構成されるデータ構造定義テンプレートを用いて、前記各データモデルに構造化して蓄積するデータ蓄積管理装置と、前記データモデルを通じて他の工場の製造の計画及び実績に関連する情報を参照する情報管理装置と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の情報管理システムの概念図である。
図2】第1実施形態の情報管理システムの適用例を説明するための図である。
図3】第1実施形態の情報管理システムの適用例を説明するための図である。
図4】第1実施形態の情報管理システムの機能構成図である。
図5】第1実施形態の生産指示データモデルの一例を示す図である。
図6】第1実施形態の情報管理システムによる情報プラットフォームの説明図である。
図7】第1実施形態の情報管理システムデータ参照機能を説明するための図である。
図8】第1実施形態の情報管理システムデータ参照機能を説明するための図である。
図9】第1実施形態の、PC全体の組立工程に関する製造計画及び製造シリアルの一例を示している。
図10】第1実施形態の生産要求データモデル、生産指示データモデル、入荷(調達)計画データモデルの一例を示す図である。
図11】第1実施形態の製造・稼働実績データ、製造レシピ実績データ、製造品質検査データ、及び調達実績データの一例を示す図である。
図12】第1実施形態の情報管理システムの処理フローを示す図である。
図13】第1実施形態の情報管理システムのデータ参照処理フローを示す図である。
図14】第1実施形態の工場間比較画面の一例を示す図である。
図15】第1実施形態の工場間の情報連携の一例を示す図である。
図16】第1実施形態の情報管理システムの変形例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0008】
上述のようにERPやMESなどのシステムは、情報を管理し、経営及び生産(製造)の効率化を図るものであるが、その実情は、情報共有や情報連携が難しい課題を有している。
【0009】
例えば、製品は、経営層で月にいくつ製品を市場に供給するかという観点で生産管理計画を作成し、製造現場層(工場)は、経営層で作成された生産管理計画に対し、今日はいくつ作るかという生産指示(製造スケジュール及び製造指示)を作成し、製品の製造タイムラインの計画(製造計画)を作成する。製造現場層は、工場における製造の計画及び実績を独自に管理する既設の製造管理システムを導入しており、その代表的なシステムにMESがある。
【0010】
しかしながら、MESは、導入している各工場で同じデータベース構造、データ種別、データ項目、単位等で管理しているわけではなく、また、製造する物が違えば、管理する情報も異なったり、同じ情報でもデータ種別や項目、タイムスパン(日別、時間別など)、単位が異なったりすることもある。
【0011】
つまり、一概にMESといっても、各工場では、それぞれ独立したMESで製造工程を管理しており、各工場で製造効率を上げる努力がなされ、必要に応じたシステムのカスタマイズも行われている。このため、各工場の製造現場は、独自に製造管理を行っている態様が多いのが実情である。
【0012】
そして、製品は、1つの工場だけで製造されるわけではなく、工場Aで製造された部品を工場Bで組み立てたりする。また、経営層での生産管理計画に対する進捗状況等を把握するためには、各工場から情報を取得する必要がある。しかしながら、上述のように各工場別で独自に管理されている情報の情報共有及び情報連携を困難にしている側面を有する。
【0013】
例えば、同じ情報が保持されるデータ項目の名称が各工場で異なって管理されているケースがある。工場Aでは「製造品」のデータ項目、工場Bでは「Serial No」のデータ項目、工場Cでは「ユニーク番号」のデータ項目で管理されているが、これら各データ項目には同じ識別情報が格納されていることがある。この場合、当該情報に辿り着くには、工場Aでは「製造品」のデータ項目、工場Bでは「Serial No」のデータ項目、工場Cでは「ユニーク番号」のデータ項目で同じ識別情報が管理されていることを事前に把握しなければならない。
【0014】
また、他の例としては、時間管理も同様に、工場Aでは「時刻」のデータ項目で管理され、工場Bでは「作業開始時間」のデータ項目で管理されることがある。特に、時間の場合は、時間のフォーマットや考え方が異なることがあり、これによって情報の取り方(管理の仕方)が異なることがある。例えば、作業開始時間が重要視されている場合、作業終了時間がデータ項目として管理されていなかったり、製造工程の時系列データを保持しているだけで、一目見ただけではどこからが作業開始時間であるかを把握できなかったりすることもある。
【0015】
さらに他の例としては、数値情報がある。例えば、A工場では、電流値がミリアンペア単位で管理され、B工場では、マイクロアンペア単位で管理されていることがあり、単に数値だけでは正確にその情報を把握することができない。
【0016】
したがって、複数の工場が関係する場合、各製造現場で独自に管理される各情報に辿り着いて正しく情報を取得するためには、予め各製造現場で異なる情報の管理形態を把握し分析する必要があり、多大な労力が必要となる。経営層の生産管理計画と、製造現場層での生産指示(製造計画)とは、簡単に連動できるように見えるがその実は連動させることが難しい。
【0017】
また、工場Bが工場Aで製造された部品を使用する場合、工場Bでの製造計画は、工場Aから納入されるスケジュール、言い換えれば、工場Aの製造計画及びその実績の影響を受ける。したがって、工場Bでは、製造計画を立案する際に、工場Aの進捗状況を加味することができれば、効率よく製造計画を作成することができるが、情報取得先の工場の情報の管理形態を予め把握し分析しなければならず、互いの工場間で情報を共有することが難しい。
【0018】
従来から情報共有及び情報連携を促進する様々なシステムが提案されているが、各工場は、製造効率や品質向上の観点において独自に創意工夫したMESなどの製造管理システムを使用しており、また、1つの工場で管理形態の異なる複数の製品や部品を取り扱うこともある。このため、各工場の製造管理は、製造する物や管理手法に応じて独自に管理するする必要があり、情報共有や情報連携がしやすいように、各工場に対して統一されたMESを導入して管理することは現実的ではない。
【0019】
このような従来の課題に対し、本実施形態の情報管理システムは、工場における製造の計画及び実績を独自に管理する既設のMESなどの製造管理システムを前提とした中で、円滑な情報共有又は情報連携を行うことができる環境を実現する。
【0020】
また、各工場の製造関連の各種データを、秘密として管理している技術、ノウハウ、情報であることが多く、各工場で閉じて管理され、外部への情報提供に気を配っている。したがって、工場間で円滑な情報共有又は情報連携を行う場合、情報リソースへのアクセス権限、すなわち、データ参照制限コントロールが必要となる。本実施形態の情報管理システムは、データ参照制限制御機能を提供すると共に、複数の各工場に対する情報共有又は情報連携を中継する機能(ハブ機能)も提供する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る情報管理システムの概念図である。製品のライフサイクルは、経営層における製品の企画、設計等から始まり、製造現場層(工場)で製品が生産(製造)され、市場での製品の稼働、利用、保守(フィールド・製品利用)に至る。製品ライフサイクル全体は、生産計画エリア(経営層)、製造計画・実績エリア(工場などの製造現場層)、及びフィールド・製品利用エリア(製品の利用状態(使われ方)を示す情報やその環境情報等を含む)の3つに区分けすることができ、各エリアにおいてデータソースから各種情報を収集する。また、図1に示す製品のライフサイクルは、国内に限らず海外を含む国内外を含むものであり、本実施形態の情報管理システムの適用範囲も、ネットワークを介し、国内及び海外に点在する各工場が含まれる。
【0022】
そして、本実施形態の情報管理システムは、製品ライフサイクル全体をカバーする管理システムの一部として実現したり、製品ライフサイクル全体のうちで生産計画エリア(経営層)及び製造計画・実績エリアをカバーするシステムとして実現したりすることができ、経営層と製造現場層、及び製造現場層間の円滑な情報共有又は情報連携を行うための情報プラットフォームを提供する。
【0023】
なお、生産計画エリアは、主に「ビジネスデータ」の領域であり、経営層で取り扱う情報が管理される。上述のように、経営層では、月にいくつ製品を市場に供給するかという観点で生産管理計画(製造現場層に対する生産要求)を作成する。また、作成した生産管理計画に対する、資材・部品などの調達先を管理する調達管理、製品仕様に基づく製造パラメータ、製造レシピ等の計画・基準情報を管理する。
【0024】
製造計画・実績エリアとフィールド・製品利用エリアは、「ファクトデータ」のデータ領域である。「ファクトデータ」は、製造プロセスの事実・実績情報やフィールド・製品利用プロセスの事実・実績情報である。なお、フィールド・製品利用プロセスとは、製造販売された製品の運用保守サービス(フィールドサービス)と、製品の利用状態や製品が利用される環境情報などを収集して監視する監視サービスと、を含むことができ、市場に出た製品のその後の追跡、言い換えれば、市場に出た製品から製造計画・実績エリアに遡ることができる追跡ルートを構築することができる。
【0025】
図2は、本実施形態の情報管理システム100の適用例を説明するための図である。図2に示すように、各工場は、製造の計画及び実績を独自に管理する既設の製造管理システム(例えば、MES)を備えており、経営層で作成された生産管理計画に基づいて、生産指示及び入荷計画を作成し、既設のMESでこれらを管理する。生産指示は、製造スケジュール及び製造指示を含む製造計画である。MESは、作成された製造計画を保持し、製造工程(製造工程の設備機器、装置など)から上がってくる製造実績が入力され、製品の計画及び実績を管理する。
【0026】
入荷計画は、自工場で使用する資材や他工場で製造される部品の調達計画であり、入荷計画とその実績を管理する。なお、図2の例のように、工場Bが工場Aで製造された部品を使用するなどの複数の工場が連携する場合、工場Aの製造計画に基づいて工場Bの入荷計画が生成され、工場Aの製造実績に基づいて工場Bの入荷実績が生成されるという関係となり、一方の工場の情報を他方の工場の情報と関連付けることができる。
【0027】
そして、各工場は、工場AにMES(A)に対応する情報管理システム100Aが設けられ、工場BにMES(B)に対応する情報管理システム100Bが設けられる。情報管理システム100A,100Bは、相互にネットワークで接続されている。このように、各工場の既設のMESに対し、情報管理システム100A,100Bが、共通の情報プラットフォーム階層として設けられる。これにより、各工場から取得する情報、又は工場間でやり取りする情報が、各工場のMESに関係なく、共通のプラットフォーム上で取り扱われるようになり、情報共有及び情報連携を容易に行うことができる。
【0028】
なお、図3は、工場で導入されるMESの別態様に対応した情報管理システム100の適用例を示す図である。工場では、複数の製造工程(製造ライン)があり、製造工程毎に、製造する物や管理手法が異なることがある。この場合、各製造工程に対して異なる複数のMESを導入しているケースがある。図3の例では、工場Aにおいて、製造工程AがMES(C)で管理され、製造工程BがMES(D)で管理された一例を示している。このような場合であっても、図2と同様に各製造工程別のMESそれぞれに情報管理システム100を適用したり、図3に示すように、1つの情報管理システム100に複数のMESが対応付けられるように構成したりすることができる。
【0029】
図4は、情報管理システム100の機能構成図である。情報管理システム100は、通信装置110、制御装置120、記憶装置130を含んで構成されている。
【0030】
通信装置110は、工場のMESや製造工程の設備機器、装置などに接続し、データ通信制御を行う。
【0031】
制御装置120は、情報管理部121、データ参照管理部122、データ蓄積管理部123を備える。
【0032】
記憶装置130は、データモデル連携情報131、データ参照制御情報132、生産要求データモデル133、生産指示データモデル134、入荷(調達)計画データモデル135、製造・稼働データモデル136をそれぞれ記憶している。
【0033】
まず、情報プラットフォームの基盤となる本実施形態のデータ蓄積の仕組みについて説明する。本実施形態では、工場における製造の計画及び実績を蓄積する領域であるデータモデルを、記憶装置130に用意する。そして、MESで蓄積・管理されている製造の計画及び実績の各情報を所定の項目である「主体物(Who)」、「対象物(Whome)」、「事象(What)」、「時間(When)」、「場所(Where)」、「状況(How)」(5W1H)から構成されるデータ構造定義を用いて抽出(選別)し、各データモデルに構造化して蓄積する。なお、製品や設備に不具合が生じた場合の情報を蓄積する「原因(Why)」を加えて、6W1Hのデータ構造定義とすることもできる。ここでは、6W1Hのデータ構造定義のデータモデルを一例に説明する。
【0034】
例えば、図5は、MES(Manufacturing Execution System)に蓄積されている製造計画、製造実績の各データを、データ構造定義に関連付けをして整理し、生産指示データモデルとして蓄積した例を示している。データ構造定義は、データソースの主体を「主体物」として、「主体物」がどの対象物に対して何をしたのか(「事象」)を整理し、蓄積するためのテンプレートである。情報管理システム100は、MESを介してデータソースである設備1から情報を収集する。設備1は、製造計画に基づく製造プロセスで稼働しており、稼働実績がリアルタイムでMESに収集される。このとき、設備1における製造プロセスで行われた事実とそのときの状態、状況が、データ構造定義テンプレートを使用して整理され、図5に示すように、設備1が(主体物)、ある製造品番の製品を対象に(対象物)、基板組立(事象)を行った実績が生成される。
【0035】
そして、データ構造定義に基づいて生成されるレコードは、時系列にデータモデルに蓄積される。すなわち、本実施形態では、製造プロセスの実績情報を、データ構造定義を用いて整理されたレコード(6W1H)の時間変動として記録する。
【0036】
なお、データ構造定義として、6W1Hの項目を規定しているが、生成されるレコードが、これらすべての項目を含まなくてもよい。例えば、図5の生産指示データモデルでは、「原因(Why)」、「状況(How)」項目自体を含まないレコードとして生成することができる。また、すべての項目を含むようにレコードを生成しておき、データソースから収集された情報をその都度該当する項目に埋めていき、ブランクの項目を含むレコードを生成するように構成してもよい。
【0037】
そして、情報管理システム100のデータ蓄積管理部123は、工場のMES(既設製造管理システム)を通じて得られる製造計画及び製造実績を、データ構造定義テンプレートを用いて、各データモデル133、134、135、136に構造化して蓄積する。このとき、情報管理システム100は、MESに蓄積されるデータのデータベース構造やデータ項目、単位などの情報を予めデータモデル連携情報131として保持しており、データ蓄積管理部123は、データモデル連携情報131を参照して、各データモデル133、134、135、136へのデータ構造定義テンプレートに従うデータ蓄積を行う。
【0038】
情報管理部121は、各データモデル133、134、135、136を通じて情報を参照する画面アプリケーション機能を備えている。なお、情報管理部121は、他工場の各データモデル133、134、135、136から得られた情報を参照する画面アプリケーションとしても機能する。
【0039】
図6は、複数の工場が連携して生産する製品の生産管理に、本実施形態の情報管理システム100を適用した情報プラットフォームの説明図である。
【0040】
工場別に情報管理システム100A,100B、・・・100Nが設けられ、各工場の製造の計画及び実績を蓄積する領域であるデータモデルが用意される。工場別に、経営層で作成される生産管理計画に対応する生産要求データモデル、工場で作成される製造計画に対応する生産指示データモデル及び入荷計画に対応する入荷計画データモデルが、各記憶装置130にそれぞれ記憶されている。
【0041】
この各データモデル133,134,135は、同じデータ構造定義テンプレートを用いて情報を構造化して蓄積する「器」であり、各工場同士、言い換えれば、各情報管理システム100A、100B同士で、統一されたデータ構造定義テンプレートを用いて情報を構造化して蓄積しているので、共通化された情報プラットフォームを形成している。
【0042】
工場毎にMESで独立管理される各種データが同一のデータ構造定義で整理されることで、予め各工場で異なる情報の管理形態を把握し分析しなくても、各工場から情報を容易に集約することができる。また、同様に、工場間で情報連携を行う場合であっても、情報取得先の工場の情報の管理形態を予め把握し分析する必要がないため、容易に情報連携を行うことができ、参照が可能となる。
【0043】
図7及び図8は、情報管理システム100のデータ参照機能を説明するための図である。まず、図7及び図8に共通するデータ参照機能について説明する。情報管理システム100のデータ参照管理部122は、自分のデータに対し、誰がどこまで参照できるのかを予め設定し、参照制限制御(自データアクセス制御)を行う。具体的には、自工場のユーザに対する情報開示範囲である第1参照制限情報と、他工場に対する情報開示範囲である第2参照制限情報と、を設定する。設定された各参照制限情報は、記憶装置130に記憶される。
【0044】
第1参照制限情報の例としては、「製造ラインの工程Aは参照OKだが、工程Bの参照はNG」、「管理者Aは参照OKだが、出向従業員は参照NG」、「従業員〇〇は、製造ラインの工程Aは参照OKだが、工程Bの参照はNG」などが挙げられる。
【0045】
第2参照制限情報の例としては、「工場Bは参照OK。ただし、製造ライン〇〇のデータ参照はNG」、「工場Cは原則NG。ただし、工場長であれば参照OK」、「工場Dは、製造ラインの工程Aのデータ参照はOKだが、工程Bのデータ参照はNG」などが挙げられる。
【0046】
本実施形態のデータ参照管理部122は、自工場(自工場の各データモデル)のユーザが情報管理部121を通じて、特定の製造工程などの製造計画や製造実績を閲覧したい場合、第1参照制限情報を用いてユーザ認証を行い、参照制限制御を行う。ユーザ認証の結果、参照OKと判断されれば、情報管理部121での画面表示処理に使用されるデータ(一部又は全部)を各データモデルから取得することを許可する。一方、ユーザ認証の結果、参照NGと判断されれば、情報管理部121での画面表示処理に使用されるデータ(一部又は全部)を各データモデルから取得できないようにする。例えば、情報管理部121での画面表示処理において、全てのデータ参照がNGの場合は、特定のデータ分析結果すべてが表示されないように制御し、一部のデータ参照がNGの場合は、データ分析結果の一部を非表示に制御したりすることができる。
【0047】
また、本実施形態のデータ参照管理部122は、自らがデータ参照を希望する他工場に対して情報参照要求を送信すると共に、データ参照を希望する他工場からの情報参照要求を受け取った場合、第2参照制限情報を用いた参照制限制御を行う。第2参照制限情報を用いた参照制限制御は、外部通信に対するアクセス制御であり、自工場が他工場に対する情報開示範囲を自ら設定し、制御することで、秘密として管理している技術、ノウハウ、情報に対する情報管理を工場側の裁量で行うことができる。
【0048】
このように、データ参照管理部122は、第1参照制限情報に基づいて、データモデルを通じた工場の製造の計画及び実績に関連する情報の内部参照制限処理を行い、第2参照制限情報に基づいて、データモデルを通じた工場の製造の計画及び実績に関連する情報の外部参照制限処理を行う。その具体的な態様として、図7は、各工場の情報管理システム100A、100Bが、ネットワークを介して直接、情報連携する態様を例示している。
【0049】
一方、図8は、複数の各工場に対する情報共有又は情報連携を中継するハブ機能を備えた態様を例示している。例えば、情報管理システム100は、中継管理装置150を備えるように構成することができる。中継管理装置150は、各工場の情報管理システム100A,100B,・・・・、100Nの各宛先IPアドレス(接続先情報151)を格納する。そして、中継管理部152は、各工場から他の工場に対する情報参照要求を受け付け、該当の宛先IPアドレスを用いて参照要求先の情報管理システム100に接続する接続制御を行う。
【0050】
また、中継管理部152は、参照要求先による上述したデータ参照制限処理の結果、参照OKであれば、当該参照要求先の情報管理システム100から提供される前記データモデルに基づく製造計画及び製造実績の情報を受信し、情報参照要求をした工場の情報提供システム100に、取得した情報を送信する中継制御を行う。なお、参照要求先による上述したデータ参照制限処理の結果、参照NGであれば、照会結果として参照NGである旨を、情報参照要求をした工場の情報提供システム100に送信する。
【0051】
なお、中継管理装置150は、図8に示すように、情報管理システム100に対して外付けの装置として構成したり、各工場の情報管理システム100のいずれか1つに組み込まれるように構成したりすることができる。
【0052】
このように情報共有及び情報連携のハブ機能を設けることで、工場間で互いの接続先情報を知らなくても、相互にデータ参照が可能なる。また、中継管理装置150からの参照要求に対して、データモデルに格納された製造の計画と実績を、データ参照制限処理を通じて返すだけなので、複数の工場それぞれに対する各データ通信を行う必要がなく、情報管理システム100側の情報提供機能が簡素化される。
【0053】
図9から図11を参照して、本実施形態のデータモデルについて詳細に説明する。
【0054】
製品は、図1及び6に示すように、経営層で製品の企画及び設計を行い、製品の生産管理計画を立案する。そして、製造現場層の工場が、生産管理計画に基づいて製造計画を立案する。製造計画では、主に、製品を製造する各製造プロセス、製品を構成する構成品、各製造プロセスで使用する設備機器、設備機器での製造パラメータ(製造レシピ)が決定される。
【0055】
MESでは、製品の生産管理計画及び製造計画の各情報を管理すると共に、工場が保有する製造設備(製造ライン)などの資源情報を管理している。製造現場の各資源は、場所及び設備(又は製造ライン)毎に割り当てられる設備シリアルIDを含むマスタ情報を用いて管理することができる。
【0056】
製造計画は、製品が作られるまでの仕様書であり、製造計画に対して製造設備などの資源情報を割り当てることで、「どこのどの設備で」、「何を対象に」、「どのように何をするのか」を決定することができる。また、製造計画は、資材や連携する他工場から供給される部品の調達に関する入荷計画を含み、「どの工場から」、「いつまでに」資材や部品が入荷するのかを計画値として決定することができる。そして、経営層の生産管理計画(受注オーダー)に基づいて、「いつから」各製造プロセスを開始するのかが最適化されて、製造現場での製造プロセスが開始される。
【0057】
図9は、PC全体の組立工程に関する製造計画の一例を示している。図9の例において、ノートPCの組立工程は、主に、本体組立工程とディスプレイ組立工程とを含み、本体組立工程は、さらに基板組立工程を含んでいる。各工程には、構成品(部品)が階層構造で紐付けられている。
【0058】
図10は、生産要求データモデル133、生産指示データモデル134、入荷(調達)計画データモデル135の一例を示す図である。生産要求データモデル133は、経営層の生産管理計画が蓄積されるデータ領域に相当し、生産指示データモデル134及び入荷計画データモデル135は、製造計画が蓄積されるデータ領域に相当する。
【0059】
そして、製造計画に対し、実際の製造実績や設備機器の稼働実績が蓄積される。図11は、製造実績モデルに蓄積される実績レコードの一例を示す図である。図11の上段は、製造・稼働実績データの一例を示している。
【0060】
ここで、計画と実績との関係について説明する。製造・稼働実績データにおいて、MESで管理される設備機器から収集及び蓄積される情報は、「対象物」及び「時間」であり、それ以外の「主体物」、「事象」、「場所」は、製造計画において予め生成された情報である。つまり、設備1における製造プロセスとして、設備1(主体物)がマザーボードの基板組立(事象)を、第1ラインの第3ステーション(場所)で「2016年9月2日10:30」(時間)に開始する製造・稼働に関する製造計画が予め生成され、この計画に対して実績値である「対象物」及び「時間」が、実績レコードとして蓄積されることになる。また、設備2における製造プロセスとして、設備2(主体物)がノートPCの全体組立(事象)を、第1ラインの第1ステーション(場所)で「2016年9月2日12:30」(時間)に開始する製造・稼働に関する製造計画が予め生成される。
【0061】
すなわち、製造品番(A―001)、シリアルID(12345)のノートPCの製造に関して、図11の製造・稼働実績データに示す「対象物」が、設備1によって(主体物)、計画通りに2016年9月2日10:30に構成品品番(D-001)、シリアルID(31235)のマザーボードを製造し、構成品品番(E―001)、シリアルID(41234)のCPU実装と、構成品品番(F-001)、シリアルID(41235)のメモリ実装と、が完了した情報が保存される。さらに、設備2によって(主体物)、計画通りに2016年9月2日12:30に製造品番(A―001)、シリアルID(12345)のノートPCを製造し、構成品品番(B-001)、シリアルID(21234)の本体ケースと、構成品品番(I-001)、シリアルID(21235)のディスプレイとの組立が完了した情報が保存される。このように、製造計画の際に立案された情報を活用して、「6W1H」に基づくデータ構造定義によるデータ整理及び蓄積を行うことができる。なお、上述のように、製造プロセスの実績情報を、データ構造定義を用いて整理された実績レコード(6W1H)の時間変動として記録できればよく、データ整理及び蓄積の手法は任意である。
【0062】
実績値である「対象物」には、製造品番とシリアルID(固体識別情報)とを含む識別情報が蓄積される。製造品番とは、図9の例で説明すると、「ノートPC」であり、デスクトップPCであれば、他の製造品番が割り当てられる。シリアルIDは、複数のノートPCを固有に識別するための固体識別情報であり、ノートPC毎に異なる番号が割り当てられる。同様に、構成品品番は、構成品に共通の品番であり、構成品のシリアルIDは、構成品毎に異なる固有のIDである。
【0063】
製造品番とシリアルID(固体識別情報)とをセットにすることで、製品及び各構成品を一意に特定することができる。また、シリアルIDは、実績値として各実績データに蓄積されるときに読み取られたり、付与されたりするものである。例えば、CPUをマザーボードに実装する際に、CPU毎に予め割り当てられた固有のシリアルIDを設備1がバーコードで読み取り、読み取ったシリアルIDを製造品番と関連付けて実績データに蓄積することができる。
【0064】
製造・稼働実績データの対象物それぞれの詳細な実績は、図11に示す製造レシピ実績データに格納されている。製造レシピ実績データにおいて、MESで管理される設備機器から収集及び蓄積される情報は、「対象物」、「時間」、及び「状況(製造パラメータ)」の実測値であり、それ以外の「主体物」、「事象」、「場所」は、予め生成された製造計画に準じている。つまり、製造計画として、設備1は、基板組立ラインであり、「マザーボードへのCPU実装」、「マザーボードへのメモリ実装」の各製造プロセスを、第3ステーションで所定の時刻に開始し、各実装や組み付けに必要な手法でそれぞれ行うことが規定されている。この製造計画に対して実績値である「対象物」、「時間」、「状況」がデータ構造定義に従って整理・蓄積されることで、製造レシピ実績データとなる。
【0065】
具体的には、図11の製造レシピ実績データに示すように、製造・稼働実績データの対象物である構成品品番(E-001)、シリアルID(41234)のCPUは、2016年9月2日10:30(時間)に流量△△で半田が塗布されてマザーボードに半田付けされて(状況)、構成品品番(D-001)、シリアルID(31235)のマザーボードに対して実装された実績が格納される。
【0066】
製造レシピ実績データにおいて、「状況」には、リアルタイムに検出されるセンサ値が蓄積される。センサ値は、設備1に設けられたセンサ機器から出力されるセンサ情報や設備1とは個別に設けられた設備1の状況を把握するためのセンサ機器から出力されるセンサ情報である。
【0067】
センサ情報は、所定の時間間隔で時系列に検出されたセンサ値群を含んで構成される。製造レシピ実績データの「状況」には、時系列に連続したセンサ値群の平均値や中央値、又は所定のタイミングで検出された代表値などが用いられ、センサ値群の各データは、「CPU実装」、「メモリ実装」の各製造プロセスと対応付けて記憶装置130に記憶することができる。センサ情報は、各製造プロセスで設備機器から出力されるセンサ値や製造や検査で必要なセンサ値を含んでおり、時系列の要素を含んでいる。
【0068】
図9に戻り、このような製造・稼働実績データの蓄積により、図10に示した製造計画(生産指示データ)に対して製品毎の製造シリアルBOM(Bill of materials)が生成される。製造シリアルBOMは、製品毎に構成品の詳細なシリアルIDが階層構造で一意に関連付けられており、製造シリアルBOMで製品を構成する複数の構成品の家系図が把握できる。
【0069】
また、製造・稼働実績データは、検査設備1による検査プロセスも含んでいる。すなわち、図11の製造・稼働実績データの対象物である製造品番(D―001)、シリアルID(31235)のマザーボードのCPU及びメモリの実装検査である検査設備1における検査プロセスとして、検査設備1がCPU及びメモリ実装検査を、第1ラインの検査ステーションで「2016年9月2日11:00」に開始する製造・稼働に関する製造計画が予め生成され、この計画に対して実績値である「対象物」及び「時間」と、検査結果である「状況」が蓄積されることで、製造・稼働実績データとなる。
【0070】
製造品質検査データにおいて、設備機器から収集及び蓄積される情報は、「対象物」、「時間」、「状況(検査結果)」の実績値であり、それ以外の「主体物」、「事象」、「場所」は、予め生成された製造計画に準じている。つまり、検査設備1は、検査ラインであり、「CPU実装検査」、「メモリ実装検査」の各検査プロセスを、検査ステーションで所定の時刻に開始することが規定されている。この計画に対して実績値である「対象物」、「時間」、「状況」が蓄積されることで、製造品質検査データとなる。
【0071】
具体的には、図11の製造品質検査データに示すように、製造・稼働実績データの対象物である製造品番(D-001)、シリアルID(31235)に対して実装される構成品品番(E-001)、シリアルID(41234)のCPUのマザーボードへの実装検査が2016年9月2日11:00に実施され、その結果、実装確認に問題無しの実績(状況)に格納される。同様にメモリ取り付けについても実績が格納される。
【0072】
また、本実施形態では、製造プロセスで使用される製品の構成品の調達実績データとして、図11に示すように調達実績データが格納される。この調達実績データは、入荷計画データモデルに対応している。
【0073】
図11の例では、図10で示した入荷計画データに対し、製造・稼働実績データの対象物である構成品品番(E-001)、シリアルID(312~)のCUPを(対象物)、2016年9月1日に、CPU製造工場から調達した実績(入荷された実績)が格納される。メモリの調達実績データについても同様である。
【0074】
図12は、本実施形態の情報管理システム100の処理フローを示す図である。図12に示すように、工場は、製品の企画及び設計を行う経営層から立案された生産管理計画を受け取り、生産管理計画に基づいて製造計画、入荷計画を立案し、MESに製造計画及び入荷計画を登録する(S1)。また、MESは、登録された製造計画に基づいて実行された製造実績が入力されるとともに、入荷実績も登録される(S2)。
【0075】
工場の情報管理システム100は、記憶装置130に、生産管理計画に対応する生産要求データモデル、製造計画に対応する生産指示データモデル、及び入荷計画に対応する入荷計画データモデルがそれぞれ予め用意されており、データ蓄積管理部123が、MESを通じて得られる製造計画及び製造実績を、「主体物(Who)」、「対象物(Whome)」、「事象(What)」、「時間(When)」、「場所(Where)」、「状況(How)」から構成されるデータ構造定義テンプレートを用いて、各データモデルに構造化して蓄積する(S3)。
【0076】
図13は、本実施形態の情報管理システムによる情報プラットフォーム上でのデータ参照処理フローを示す図である。
【0077】
まず、各工場の情報管理システム100A,100Bでは、データ参照権限情報を設定する(S101A,S101B)。経営層では、経営層側の所定の経営管理システムを通じて、生産計画及び/又は実績情報の取得要求を、対象の各工場の情報管理システム100A,100Bに送信する(S10)。
【0078】
情報管理システム100A,100Bはそれぞれ、データ参照管理部122がデータ参照制限処理を行う。参照OKであれば、情報管理システム100A,100Bそれぞれが各データモデルから該当の情報を抽出して、経営層側の所定の経営管理システムに送信する(S102A,S102B)。
【0079】
なお、経営管理システムは、例えば、各工場の情報を閲覧できるシステムや装置であり、経営層や各工場の生産計画や製造に責任を持つ人などが、所定の画面(又は情報を可視化するツール)を通じて各種情報を閲覧(表示)するためのシステムや装置であればよい。また、経営管理システムに限らず、情報管理システム100に対してネットワーク接続可能な他のシステムからの情報閲覧等の要求に対しても同様の構成及び処理を適用することができる。
【0080】
さらに、経営管理システムの別態様として、情報管理システム100がその役割を担うように構成することもできる。例えば、上述のように情報管理部121は、自工場の各データモデルを通じて情報を参照する画面アプリケーション機能を備えていると共に、他工場の各データモデルから得られた情報を参照する画面アプリケーションとしても機能する。そこで、経営層や各工場の生産計画や製造に責任を持つ人などが所定の端末装置を通じて連携する工場(情報管理システム100)のいずれか1つにアクセスし、各工場の情報を閲覧できるように情報管理部121が情報表示アプリケーションとして機能するように構成することもできる。
【0081】
このとき、参照要求に対して抽出される情報の蓄積場所は、共通のデータ構造定義テンプレートを用いて構造化して蓄積されたデータモデルであるため、情報取得先の工場の情報の管理形態を予め把握し分析しなくても、経営層に対して情報共有を行うことができる。図14は、工場間比較画面の一例を示す図である。
【0082】
次に、図13に示すように、工場Aが工場Bに対してデータ参照要求を行うことができる。この場合、情報管理システム100Aは、データ参照要求を工場Bの情報管理システム100Bに送信する(S103A)。工場Bでは、データ参照管理部122が、データ参照制限処理を行い、工場Aのデータ参照権限を確認する(S103B)。工場Bのデータ参照管理部122は、工場Aのデータ参照権限があると判定された場合、参照要求されたデータを各データモデルから抽出して、工場Aに送信する(S104B)。工場Aは、工場Bの情報管理システム100Bから提供されたデータを受信し、該当のデータモデルに蓄積する(S104A)。
【0083】
図15は、工場間の情報連携の一例を示す図である。工場Aは、工場Bで製造された部品の供給を受けて、その部品が組み込まれた製品を製造するので、工場Aの情報管理システム100Aは、工場Bの生産計画/実績を参照し、自分の入荷計画データのデータモデルに、工場Bから提供される情報(情報管理システム100Bのデータモデルに蓄積された情報)を蓄積する。
【0084】
このような工場間の情報連携においても、参照要求に対して抽出される情報の蓄積場所は、共通のデータ構造定義テンプレートを用いて構造化して蓄積されたデータモデルであるため、情報取得先の工場の情報の管理形態を予め把握し分析しなくても、共通のデータ構造定義に基づく参照情報の対応関係を把握するだけで、実現することができる。
【0085】
なお、図13の例において、図8に示した中継管理装置150を介した工場間の情報連携は、点線で示した流れとなる。図13では、工場間の情報連携の際に中継装置150を介して行う例を示しているが、これに限らず、経営管理システムから各工場に対してデータ参照要求を行う場合にも中継管理装置150を介して行うことができる。その場合は、工場間の情報連携と同様、データ参照要求、該当データの提供など、中継管理装置150を介して行われる。
【0086】
図16は、情報管理システムの変形例を示す図である。図16の示す情報管理システム1000は、複数の工場が連携して生産する製品の生産管理を集約した集約型のシステム構成を採用している。
【0087】
つまり、情報管理システム1000は、複数の各工場とネットワークを介してそれぞれ接続されると共に、記憶装置130に保持される各種情報及びデータモデルは、工場別に区分けされた蓄積領域が設けられて管理される。データ蓄積管理部123は、工場別にMESを通じて得られる情報をデータモデルに構造化して蓄積し、データ参照管理部122も、工場別にデータ参照制御情報の設定及びデータ参照制御処理を行うことができる。図16に示す変形例は、各工場で個別にシステム管理をする必要がなく、所謂、クラウド型のシステム構成となっている。
【0088】
また、上述の情報管理装置100を構成する各機能は、プログラムによって実現可能であり、各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムが補助記憶装置に格納され、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出された該プログラムを制御部が実行することで、各部の機能を動作させることができる。
【0089】
また、上記プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された状態で、コンピュータに提供することも可能である。コンピュータ読取可能な記録媒体としては、CD-ROM等の光ディスク、DVD-ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magnet Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやリムーバブルハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
【0090】
なお、本発明の実施形態を説明したが、当該実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
100 情報管理システム
110 通信装置
120 制御装置
121 情報管理部
122 データ参照管理部
123 データ蓄積管理部
130 記憶装置
131 データモデル連携情報
132 データ参照制御情報
133 生産要求データモデルDB
134 生産指示データモデルDB
135 入荷(調達)計画データモデルDB
136 製造・稼働データモデルDB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16