(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069742
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20230511BHJP
G01M 11/00 20060101ALI20230511BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20230511BHJP
【FI】
H01L21/66 X
G01M11/00 T
G01R31/26 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181845
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】594157142
【氏名又は名称】オー・エイチ・ティー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】小林 和久
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕一
(72)【発明者】
【氏名】安田 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】須川 成利
(72)【発明者】
【氏名】黒田 理人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 哲也
【テーマコード(参考)】
2G003
2G086
4M106
【Fターム(参考)】
2G003AA06
2G003AA10
2G003AB07
2G003AF06
2G003AG17
2G003AH05
2G086EE03
4M106AA01
4M106BA04
4M106CA02
4M106CA11
4M106CA17
4M106DH31
4M106DJ27
(57)【要約】
【課題】微細な検査対象の電気的特性を高精度に判定することができる検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】一実施形態の検査装置は、光源部と、容量センサ装置と、判定回路と、を備える。光源部は、検査対象に向けて光を照射する。容量センサ装置は、光源部からの光によって検査対象に生じる電圧を、検査対象との間の静電容量に基づいて検出する。判定回路は、検出された電圧に基づいて検査対象の電気的特性を判定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象に向けて光を照射する光源部と、
前記光源部からの光によって前記検査対象に生じる電圧を、前記検査対象との間の静電容量に基づいて検出する容量センサ装置と、
前記検出された電圧に基づいて前記検査対象の電気的特性を判定する判定回路と、
を備えた、検査装置。
【請求項2】
前記容量センサ装置は、各々が前記検査対象と対向する面内に2次元状に配置された複数の容量センサ素子を含み、
前記複数の容量センサ素子の各々は、前記面内に2次元状に配置された複数の画素を含み、
前記複数の画素の各々は、前記検査対象における対向部分との間の静電容量に基づいて、前記電圧を検出するように構成された、
請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記光源部は、前記検査対象に向けて照射する光の強度及び波長の少なくとも一方を変化させるように構成された、
請求項1又は請求項2記載の検査装置。
【請求項4】
前記光源部は、前記検査対象に向けて照射する光の強度を変化させるように構成され、
前記容量センサ装置は、
第1強度を有する光によって前記検査対象に生じる第1電圧を検出し、
第2強度を有する光によって前記検査対象に生じる第2電圧を検出し、
前記判定回路は、前記第1電圧及び前記第2電圧の差に基づいて、前記検査対象の電気的特性を判定する、
請求項1又は請求項2記載の検査装置。
【請求項5】
検査対象に向けて光を照射することと、
前記照射された光によって前記検査対象に生じる電圧を、前記検査対象との間の静電容量に基づいて検出することと、
前記検出された電圧に基づいて前記検査対象の電気的特性を判定することと、
を備えた、検査方法。
【請求項6】
前記検査対象は、光透過性基板と、前記光透過性基板上に設けられた発光素子と、を含み、
前記照射することは、前記光透過性基板を透過させて前記発光素子に光を照射することを含む、
請求項5記載の検査方法。
【請求項7】
前記照射することは、前記検査対象に向けて照射する光の強度及び波長の少なくとも一方を変化させることを含む、
請求項5又は請求項6記載の検査方法。
【請求項8】
前記照射することは、前記検査対象に向けて照射する光の強度を変化させることを含み、
前記検出することは、
第1強度を有する光によって前記検査対象に生じる第1電圧を検出することと、
第2強度を有する光によって前記検査対象に生じる第2電圧を検出することと、
を含み、
前記判定することは、前記第1電圧及び前記第2電圧の差に基づいて前記検査対象の電気的特性を判定することを含む、
請求項5又は請求項6記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子、例えばLED(Light Emitting Diode)の電気的特性を判定する種々の手法が提案されている。
【0003】
例えば、プローブを介してLEDに電流を流すことにより、LEDの電流-電圧特性を計測する手法が知られている。
【0004】
エレクトロルミネッセンス(Electro-luminescence)を利用した手法では、プローブを介してLEDに電流を流した際の発光を計測することにより、LEDの電気的特性が判定される。
【0005】
フォトルミネッセンス(Photo-luminescence)を利用した手法では、LEDに励起光を照射した際の発光を計測することにより、LEDの電気的特性が判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-129120号公報
【特許文献2】特開2018-132308号公報
【特許文献3】特開2015-10834号公報
【特許文献4】特表2020-502825号公報
【特許文献5】特開2020-80358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
LEDの微細化に伴い、LEDの端子にプローブを接触させることは難易度が高くなっている。このため、マイクロLED等の電気的特性を判定する場合、LEDの電流-電圧特性を計測する手法、及びエレクトロルミネッセンスを利用した手法を用いることは、困難な場合がある。
【0008】
また、フォトルミネッセンスを利用した手法では、LEDの電気的な特性を計測することができない。このため、フォトルミネッセンスを利用した手法では、不良の見逃し、及び誤検出が発生する可能性がある。
【0009】
本発明は、上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、微細な検査対象の電気的特性を高精度に判定する検査装置及び検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様の検査装置は、光源部と、容量センサ装置と、計測回路と、判定回路と、を備える。上記光源部は、検査対象に向けて光を照射する。上記容量センサ装置は、上記光源部からの光によって上記検査対象に生じる電圧を、上記検査対象との間の静電容量に基づいて検出する。上記判定回路は、上記検出された電圧に基づいて上記検査対象の電気的特性を判定する。
【0011】
本発明の第2の態様の検査方法は、検査対象に向けて光を照射することと、上記照射された光によって上記検査対象に生じる電圧を、上記検査対象との間の静電容量に基づいて検出することと、上記検出された電圧に基づいて上記検査対象の電気的特性を判定することと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、微細な検査対象の電気的特性を高精度に判定する検査装置及び検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る容量センサ装置の構成の一例を示す図。
【
図2】実施形態に係る容量センサ素子の画素と検査対象との関係の一例を示す図。
【
図3】実施形態に係る容量センサ装置の画素と検査対象とで構成される回路の一例を示す図。
【
図4】実施形態に係る検査対象の構成の一例を示す図。
【
図5】実施形態に係る容量センサ装置を含む検査装置の概念的な構成の一例を示す図。
【
図6】実施形態に係る検査装置における検査方法の一例を示すフローチャート。
【
図7】変形例に係る容量センサ装置を含む検査装置の概念的な構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0015】
1. 構成
図1は、実施形態に係る容量センサ装置の構成の一例を示す図である。容量センサ装置1は、検査対象と近接して配置されることにより、検査対象との間の静電容量に応じた信号を出力するように構成されたセンサ装置である。容量センサ装置1は、プリント配線基板10上に容量センサ素子20が間隔を開けて2次元状に配置、すなわちタイリングされることで構成される。プリント配線基板10は、例えば、セラミック基板、シリコン基板等の平面状の基板である。容量センサ素子20は、複数の画素21からなるセンサチップである。複数の画素21の各々は、対向した検査対象との間の静電容量を利用して、電圧を検出する機能を有する。つまり、容量センサ素子20は、素子単体で検査対象の面での電圧分布を検出することができる。
【0016】
画素21は、センサ電極22と、画素回路23とを有している。センサ電極22は、検査対象との間の静電容量を利用して電圧を出力するように構成された、例えば正方状の電極である。センサ電極22によって検出エリア22aが構成されている。画素回路23は、センサ電極22において発生した電圧信号の読み出しを行う。画素回路23は、検出エリア22aの外側に形成された周辺回路に接続される。周辺回路は、複数の画素21の各々の画素回路23からの出力を束ねる回路等である。具体的には、例えば、周辺回路は、後段の判定処理のための前処理として、複数の画素21の各々の画素回路23の出力電圧信号の読み出し、ノイズ除去、増幅等の処理を実行する。周辺回路とプリント配線基板10との接続は、例えばワイヤボンディング、バンプボンディング、フリップチップボンディングといった種々の手法で行われ得る。
【0017】
例えば、
図1の例では、8個の容量センサ素子20が矩形状に配置される場合が示される。ここで、容量センサ素子20の幅、高さ、及び間隔がそれぞれW、H、及びCIであるとする。検出エリア22aの幅、高さ、及び間隔がそれぞれPW、PH、及びPIであるとする。この場合、例えば、容量センサ素子20の間隔CIは、検出エリア22aの間隔PIが検出エリア22aのサイズ、すなわち検出エリア22aの幅PW及び高さPHと等しくなるように決められてよい。実際には、容量センサ素子20の間隔CIは、検出エリア22aのサイズ以下であることが好ましい。また、センサ電極22が正方状でなく、検出エリア22aの幅PWと高さPHとが等しくない場合には、検出エリア22aの間隔PIは、幅方向と高さ方向とで異なっていてもよい。容量センサ素子20が配置されていない区間では、信号が検出できない。信号が検出できなかった区間で信号を得るためには、実際にその場所まで容量センサ素子20を移動させる必要がある。容量センサ素子20の間隔CIが検出エリア22aのサイズ以下であることにより、検出エリアのサイズ相当分だけ容量センサ装置1を移動させることで、信号が検出できなかった区間の場所に容量センサ素子20を位置させることができる。
【0018】
なお、
図1の例では、8個の容量センサ素子20が配置される場合について説明したが、容量センサ素子20の数は、8個に限定されるものではない。例えば、2個、4個、6個といった容量センサ素子20が矩形状に配置されていてもよい。10個以上の容量センサ素子20が配置されていてもよい。また、容量センサ素子20の数は、必ずしも偶数でなく、奇数であってもよい。もしくは、容量センサ素子20は、1個だけであってもよい。また、
図1の例では、2つの行に4個ずつの容量センサ素子20が配置されている。容量センサ素子20の行数は、2行に限るものではない。さらには、
図1の例では、容量センサ素子20が矩形状に配置される場合について説明したが、これに限られない。容量センサ素子20は、2次元に配置されていればよく、例えば正方状に配置されてもよいし、千鳥状に配置されてもよい。
【0019】
図2は、実施形態に係る容量センサ装置の画素と検査対象との関係の一例を示す図である。例えば、検査対象Tに電圧が発生した状態でセンサ電極22が検査対象Tに近接すると、センサ電極22とセンサ電極22に対応する検査対象Tの部分との間でキャパシタ24が形成される。
【0020】
図2に示すような画素21において、キャパシタ24の静電容量Csは、Cs=εS/dである。ここで、dは、センサ電極22と検査対象Tとの距離である。Sは、センサ電極22の検査対象Tと向き合う面の面積である。εは、センサ電極22と検査対象Tとの間に介在する媒質、例えば空気の誘電率である。このとき、センサ電極22は、キャパシタ24の静電容量Csを利用して、検査対象Tで発生した電圧を画素回路23に出力する。なお、センサ電極22の表面は、保護膜によって覆われていてもよい。これにより、センサ電極22が直接的に検査対象Tに接触してしまうことによるセンサ電極22及び検査対象Tの各々の損傷、摩耗、及び汚染が抑制される。
【0021】
図3は、実施形態に係る容量センサ装置と検査対象とで構成される回路の一例を示す図である。
図3では、検査対象Tに電圧Vinが発生したことにより、キャパシタ24が形成された場合における1個の画素21あたりの等価回路の一例が示される。
図3に示すように、容量センサ素子20は、内部に構成されたキャパシタ25及びアンプ26を用いて電圧Vpを検出する。キャパシタ25は静電容量Ccを有し、キャパシタ24を構成するセンサ電極22とグラウンドとの間に接続される。アンプ26は、増幅率Aを有する。アンプ26の入力端は、キャパシタ24とキャパシタ25との間に接続される。
【0022】
図3に示すような等価回路において、アンプ26の出力電圧Vpは、Vp=A×(Cs/(Cc-Cs))×Vinである。ここで、増幅率Aは定数である。静電容量Csが更に定数であると見なせる場合、電圧Vpを検出することにより、電圧Vinの大きさを評価することができる。
【0023】
図4は、実施形態に係る検査対象の構成の一例を示す図である。検査対象Tは、例えば、LEDディスプレイ等の製造段階におけるウェハである。具体的には、検査対象Tは、基板Subと、基板Subの表面上に設けられた複数の発光素子R、G、及びBと、複数の発光素子R、G、及びBの各々の表面上に設けられた少なくとも2個のパッド電極Padと、を含む。
【0024】
基板Subは、例えば、サファイア基板又はガラス基板等の光透過性基板である。すなわち、基板Subは、裏面から照射された光を表面に透過する性質を有する。複数の発光素子R、G、及びBは、例えば、EL(Electro - luminescence)素子である。例えば、複数の発光素子R、G、及びBはそれぞれ、パッド電極Padに印加された電圧に応じて赤、緑、及び青に発光する。また、複数の発光素子R、G、及びBはそれぞれ、対応する発光スペクトルのピーク波長以下の波長を有する励起光に応じて発光する。これに伴い、励起光によって発光した発光素子R、G、及びB上の少なくとも2個のパッド電極の間には、光励起電圧が発生する。すなわち、パッド電極Padは、キャパシタ24の画素21側の電極の対となる、検査対象T側の電極として機能する。
【0025】
図5は、実施形態に係る容量センサ装置を含む検査装置の概念的な構成の一例を示す図である。検査装置は、容量センサ装置1と、光源2と、複数のバンドパスフィルタ3と、を有している。また、検査装置は、駆動機構4と、メカ制御回路5と、計測回路6と、判定回路7と、表示装置8と、制御回路9とを含む信号処理装置を有する。ここで、メカ制御回路5と、計測回路6と、判定回路7と、制御回路9とは、必ずしもハードウェアで構成されている必要はない。メカ制御回路5と、計測回路6と、判定回路7と、制御回路9と同等の動作がCPU等によって実行されるソフトウェアによって実現されてもよい。
【0026】
容量センサ装置1は、メカ制御回路5の制御の下、検査対象Tのパッド電極Padと対向する位置に配置される。そして、容量センサ装置1のそれぞれの容量センサ素子20は、検査対象Tのパッド電極Padとの静電容量Csに応じた電圧信号を計測回路6に出力する。
【0027】
光源2は、例えば、白色光源である。光源2は、制御回路9の制御の下、検査対象Tに向けて白色光を照射する。光源2は、検査対象Tに対して、容量センサ装置1と反対側に配置される。例えば、光源2から照射される光の強度は、制御回路9によって制御できるように構成される。
【0028】
複数のバンドパスフィルタ3の各々は、制御回路9の制御の下、光源2と検査対象Tとの間に選択的に配置される。複数のバンドパスフィルタ3はそれぞれ、光源2から照射された白色光のうち、互いに異なる波長帯の光を透過する特性を有する。例えば、複数のバンドパスフィルタ3はそれぞれ、複数の発光素子R、G、及びBの各々の発光スペクトルのピーク波長以下の波長の光を透過する特性を有する。これにより、検査対象Tに、複数の発光素子R、G、及びBの各々の励起光を入射させることができる。
【0029】
上述の通り、検査対象Tの基板Subは、光透過性基板である。このため、バンドパスフィルタ3を介して所定の波長帯にフィルタリングされた光は、検査対象Tの基板Subを透過して複数の発光素子R、G、及びBに到達する。これにより、複数の発光素子R、G、及びBは励起されて、パッド電極Padに光励起電圧を発生させることができる。
【0030】
駆動機構4は、容量センサ装置1を検査対象Tとしてのパッド電極Padと平行な面方向であるXY方向、及びパッド電極Padと垂直な方向であるZ方向に移動させるように構成されている。駆動機構4は、例えば、Z移動機構と、Y移動機構と、支持部と、X移動機構とを有している。Z移動機構は、Z方向に伸縮することによってY移動機構をZ方向に移動させるアクチュエータを備えた機構である。Y移動機構は、Y方向に伸縮することによって支持部をY方向に移動させるアクチュエータを備えた機構である。支持部は、X移動機構を支持している部材である。X移動機構は、X方向に伸縮することによって容量センサ装置1をX方向に移動させるアクチュエータを備えた機構である。なお、上述した駆動機構4の構成は、一例であり、上述の構成に限るものではない。駆動機構4の構成は、検査対象Tに応じて決定されてよい。
【0031】
メカ制御回路5は、容量センサ装置1を、検査対象Tに対向する検査位置に移動させるように、駆動機構4を制御する。例えば、メカ制御回路5は、制御回路9によって指定される座標に容量センサ装置1が移動するように駆動機構4に指令を出す。
【0032】
計測回路6は、容量センサ装置1内の全ての容量センサ素子20から出力される電圧信号に基づき、計測のための処理を行う。例えば、計測回路6は、検査画像を生成する。検査画像は、各容量センサ素子20の各画素21の出力に基づいて生成される値を画素値とする画像である。例えば、計測回路6は、各容量センサ素子20から出力された電圧信号を多値化する。そして、計測回路6は、多値化された信号に画素の座標と輝度の値を割り当てることによって、検査画像を生成する。
【0033】
判定回路7は、検査画像に基づく種々の手法で、発光素子の電気的特性を判定する。判定回路7は、例えば、強度判定部7a、変動量判定部7b、及び変化率判定部7cを含む。
【0034】
強度判定部7aは、検査画像と基準画像とを比較することにより、発光素子の電気的特性を判定する。基準画像は、例えば、不良な発光素子がない場合の画像である。強度判定部7aは、検査画像と基準画像との間の画素の値の差が第1閾値以上となる箇所を、不良な電気的特性を有する箇所として判定する。
【0035】
変動量判定部7bは、検査画像の同じ位置における画素の値の経時的な変動量に基づき、発光素子の電気的特性を判定する。変動量判定部7bは、例えば、検査画像の画素の値の変動量が第2閾値以上となる箇所を、不良な電気的特性を有する箇所として判定する。
【0036】
変化率判定部7cは、異なる強度の光を照射した場合の画素の値の変化率に基づき、発光素子の電気的特性を判定する。変化率判定部7cは、例えば、検査画像と基準画像と間の変化率の差が第3閾値以上となる箇所を、不良な電気的特性を有する箇所として判定する。
【0037】
表示装置8は、液晶ディスプレイ等の表示装置である。表示装置8は、例えば、判定回路7による判定結果を表示する。判定結果は、不良な電気的特性を有すると判定された箇所が、正常な電気的特性を有すると判定された箇所に対して強調された画像である。表示装置8は、信号処理装置とは別体で設けられていてもよい。
【0038】
制御回路9は、CPU等のプロセッサ、ASIC、FPGA等であり、信号処理装置の全体を制御する。例えば、制御回路9は、容量センサ装置1の動作の制御のための信号を出力する。また、制御回路9は、メカ制御回路5及び計測回路6に容量センサ装置1の座標を指定するための信号を出力する。また、制御回路9は、光源2が照射する光の強度を選択する。また、制御回路9は、検査対象Tに照射される光の波長帯に応じて、光源2と検査対象Tとの間に配置されるバンドパスフィルタ3を選択する。
【0039】
2. 動作
図6は、実施形態に係る検査装置における検査方法の一例を示すフローチャートである。
【0040】
ユーザから検査開始の指示を受けると(開始)、制御回路9は、メカ制御回路5に対して容量センサ装置1の配置を指示する(S1)。具体的には、まず、制御回路9は、メカ制御回路5に対して容量センサ装置1による検査位置のX方向及びY方向の座標を指定する。メカ制御回路5は、容量センサ装置1が指定された検査位置まで移動するように駆動機構4を制御する。容量センサ装置1を指定された検査位置まで移動させた後、制御回路9は、メカ制御回路5に対して容量センサ装置1を検査対象Tに近接させるように指示する。メカ制御回路5は、容量センサ装置1が検査対象Tに近接するように駆動機構4を制御する。
【0041】
容量センサ装置1を検査対象Tの所定の検査位置に近接させた後、制御回路9は、光源2から照射させる光の強度を選択する(S2)。
【0042】
S2の処理の後、制御回路9は、検査対象Tに入射させる励起光の波長帯を選択する(S3)。具体的には、制御回路9は、選択された波長帯を選択的に透過するバンドパスフィルタ3を選択し、光源2と検査対象Tとの間に配置させる。
【0043】
S3の処理の後、光源2は、指定された照射強度の光を検査対象Tの裏面に向けて照射を開始する。S2の処理で選択された照射強度の光は、S3の処理で選択されたバンドパスフィルタ3を通過することによって、所定の波長帯にフィルタリングされる。そして、所定の波長にフィルタリングされた光は、基板Subを透過して発光素子R、G、及びBに達する。発光素子R、G、及びBは、入射した光の波長に応じて、パッド電極Padに光励起電圧を発生させる。
【0044】
例えば、発光素子Rの光励起電圧を発生させる場合、光源2からの光を発光素子Rの発光スペクトルのピーク波長以下の波長帯を透過させるバンドパスフィルタ3が選択される。同様に、発光素子G及びBの光励起電圧を発生させる場合、光源2からの光を発光素子G及びBの発光スペクトルのピーク波長以下の波長帯を透過させるバンドパスフィルタ3がそれぞれ選択される。これにより、発光素子R、G、及びB毎に、適切な波長帯の励起光が生成される。
【0045】
計測回路6は、光励起電圧が発生した状態の検査対象Tに容量センサ装置1が近接したことによって各容量センサ素子20の各画素21の画素回路23から出力される電圧信号に対する信号処理をする(S4)。計測回路6は、信号処理の結果に基づいて、検査画像を生成する。
【0046】
S4の処理の後、制御回路9は、全ての波長帯を選択したか否かを判定する(S5)。
【0047】
選択されていない波長帯がある場合(S5;no)、制御回路9は、未選択の波長帯を選択する(S3)。具体的には、制御回路9は、選択された波長帯を選択的に透過するバンドパスフィルタ3に代えて、未選択の波長帯を選択的に透過するバンドパスフィルタ3を選択し、光源2と検査対象Tとの間に配置する。そして、後続するS4及びS5の処理が実行される。このように、或る検査位置で、或る強度の光が照射される場合において、全ての波長帯が選択されるまで、S3~S5の処理が繰り返される。なお、計測回路6は、選択された波長帯毎に生成された検査画像(例えば、発光素子R、G、及びB毎に生成された3枚の検査画像)を、1枚の検査画像に合成してもよい。
【0048】
全ての波長帯が選択された場合(S5;yes)、制御回路9は、全ての照射強度を選択したか否かを判定する(S6)。
【0049】
選択されていない照射強度がある場合(S6;no)、制御回路9は、未選択の照射強度を選択する(S2)。そして、後続するS3~S6の処理が実行される。このように、或る検査位置で、全ての照射強度が選択されるまで、S2~S6の処理が繰り返される。
【0050】
全ての照射強度が選択された場合(S6;yes)、制御回路9は、走査が完了したか否かを判定する(S7)。
【0051】
検査対象Tにおいて検査画像の生成が完了していない検査位置がある場合(S7;no)、制御回路9は、メカ制御回路5に対して、未走査の検査位置に容量センサ装置1を配置させる(S1)。そして、後続するS2~S7の処理が実行される。このように、全ての検査位置に対して検査画像が生成されるまで、S1~S7の処理が繰り返される。
【0052】
検査対象Tにおける全ての検査位置における検査画像の生成が完了した場合(S7;yes)、判定回路7は、それぞれの検査位置について計測回路6で生成された検査画像を合成して、1枚の合成検査画像を生成する。そして判定回路7は、各種の判定処理を行う。
【0053】
具体的には、強度判定部7aは、強度判定処理を行う(S8)。強度判定部7aは、合成検査画像と基準画像との間の画素の値の差が第1閾値以上であるか否かを判定する。そして、第1閾値以上となる箇所を、不良な電気的特性を有する箇所と判定する。
【0054】
変動量判定部7bは、変動量判定処理を行う(S9)。変動量判定部7bは、同じ位置の画素について、同じ強度の光が照射されている期間内で生成された複数の合成検査画像間の画素の値の変動量が第2閾値以上であるか否かを判定する。そして、第2閾値以上となる箇所を、不良な電気的特性を有する箇所と判定する。
【0055】
変化率判定部7cは、変化率判定処理を行う(S10)。変化率判定部7cは、同じ位置の画素について、異なる強度の光が照射されて生成された複数の合成検査画像間の画素の値の変化率と、基準画像の変化率との差が第3閾値以上であるか否かを判定する。そして、第3閾値以上となる箇所を、不良な電気的特性を有する箇所と判定する。
【0056】
S8~S10の各種判定処理の後、判定回路7は、各種判定処理の総合的な判定結果を例えば表示装置8に表示する(S11)。S11の処理が終了すると、検査方法は終了となる(終了)。総合的な判定結果の表示は、例えば、S8~S10の各種判定処理によって不良な電気的特性を有すると判定された箇所が、正常な電気的特性を有すると判定された箇所に対して強調された画像の表示である。例えば、S8、S9、及びS10の判定結果は、別々の画像において表示されてもよい。
【0057】
3. 効果
実施形態によれば、検査対象Tとして、光透過性を有する基板Sub上に複数の発光素子R、G、及びBが設けられた、ウェハが用いられる。このような検査対象Tが、容量センサ装置1と光源2との間に配置される。これにより、光源2から照射された光を、基板Subを介して、複数の発光素子R、G、及びBに入射させることができる。
【0058】
また、検査装置は、互いに異なる波長帯を透過させる複数のバンドパスフィルタ3を備える。制御回路9は、励起させる発光素子の波長帯に応じて、光源2と検査対象Tとの間に配置するバンドパスフィルタ3を選択する。選択されるバンドパスフィルタ3は、励起させる発光素子の発光スペクトルのピーク波長以下の波長の光を選択的に透過する。これにより、検査対象T上に発光スペクトルのピーク波長が異なる発光素子が設けられる場合においても、それぞれの発光素子の光励起電圧を発生させることができる。
【0059】
また、複数の発光素子R、G、及びB上には、パッド電極Padが、容量センサ装置1のセンサ電極22と対向するように配置される。これにより、パッド電極Padとセンサ電極22との間でキャパシタ24が形成される。このため、容量センサ装置1は、複数の発光素子R、G、及びBが所定の強度の励起光に応じて所定の強度の光励起電圧を発生させたか否かを、キャパシタ24の静電容量を利用することによって、判定することができる。
【0060】
具体的には、強度判定部7aは、検査画像と基準画像との画素の値の差が第1閾値以上の場合に、該当箇所が不良であると判定する。これにより、検査対象T上に形成された微細な発光素子の電気的特性を、プローブ等を使用することなく評価することによって、高精度な良否判定を実現することができる。
【0061】
また、変動量判定部7bは、当該複数の検査画像における画素の値の変動量が第2閾値以上の場合に、該当箇所が不良であると判定する。これにより、発光素子の経時的な光励起電圧特性についても評価することができる。
【0062】
また、変化率判定部7cは、照射強度に応じた検査画像間の画素の値の変化率と、基準画像間の画素の値の変化率との差が第3閾値以上の場合に、該当箇所が不良であると判定する。これにより、より詳細な光励起電圧特性に基づき、発光素子の良否を判定することができる。
【0063】
4. 変形例
上述の実施形態は、種々の変形を適用することができる。例えば、上述の実施形態では、検査対象Tに入射する光は、光源2から照射される白色光がバンドパスフィルタ3によってフィルタリングされることによって生成される場合について説明したが、これに限られない。特定の波長帯の光が、バンドパスフィルタ3を介することなく検査対象Tに入射してもよい。以下では、実施形態と異なる構成及び動作について主に説明する。実施形態と同等の構成及び動作については、適宜説明を省略する。
【0064】
図7は、変形例に係る容量センサ装置を含む検査装置の概念的な構成の一例を示す図である。
図7は、実施形態における
図5に対応する。
図7における検査装置は、光源2及び複数のバンドパスフィルタ3に代えて、光源2Aを備える。また、
図7における検査装置は、制御回路9に代えて、制御回路9Aを備える。
【0065】
光源2Aは、複数の単色光源、又は離散的発光スペクトルを有する光源である。複数の単色光源としては、例えば、レーザ、及びLED等が想定される。離散的発光スペクトルを有する光源としては、例えば、水銀灯、及びキセノンフラッシュランプ等が想定される。このように、光源2Aは、RGB光源であってもよいし、UV光源であってもよい。光源2Aは、検査対象Tに対して、容量センサ装置1と反対側に配置される。光源2Aは、制御回路9Aの制御の下、検査対象Tに向けて、発光素子R、G、及びBのそれぞれの励起光を選択的に照射する。また、光源2Aから照射される光の強度は、制御回路9Aによって制御できるように構成される。
【0066】
制御回路9Aは、CPU等のプロセッサ、ASIC、FPGA等であり、信号処理装置の全体を制御する。例えば、制御回路9Aは、容量センサ装置1の動作の制御のための信号を出力する。また、制御回路9Aは、メカ制御回路5及び計測回路6に容量センサ装置1の座標を指定するための信号を出力する。また、制御回路9Aは、光源2Aが照射する光の強度を選択する。また、制御回路9Aは、光源2Aから照射される光の波長帯を選択する。
【0067】
以上のように構成されることにより、変形例における検査装置は、実施形態における検査装置と同様に、検査対象Tに対して、複数の発光素子R、G、及びBのそれぞれの励起光を照射することができる。
【0068】
変形例における検査方法は、
図6に示したフローチャートと同等である。なお、変形例における検査方法では、S3の処理において、制御回路9Aが光源2Aから照射される光の波長帯を選択することによって、励起光が選択される。
【0069】
また、上述の実施形態で示した例では、検査装置は、検査対象Tとしての発光素子のパッド電極Padとセンサ電極22とによって形成されるキャパシタ24の静電容量に基づく電圧信号を検出し、検査画像を評価する。実際には、1つの発光素子には少なくとも2個のパッド電極Padが設けられており、検査装置は、それぞれのパッド電極Padとセンサ電極22とによってキャパシタ24の静電容量に基づく電圧信号を検出し、個別に検査画像を評価している。これに対し、検査装置は、それぞれのパッド電極の電圧信号の差分に基づいて検査画像を生成し、この検査画像を評価してもよい。
【0070】
また、上述の実施形態で示した例では、光源2及び2Aからの光を、基板Subの裏側から透過させて複数の発光素子R、G、及びBに照射する場合について説明したが、これに限られない。例えば、光源2及び2Aからの光は、基板Subの横側から透過させて複数の発光素子R、G、及びBに照射してもよい。また、光源2及び2Aからの光は、基板Subを透過させることなく、複数の発光素子R、G、及びBに照射してもよい。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1…容量センサ装置、2,2A…光源、3…バンドパスフィルタ、4…駆動機構、5…メカ制御回路、6…計測回路、7…判定回路、7a…強度判定部、7b…変動量判定部、7c…変化率判定部、8…表示装置、9…制御回路、10…プリント配線基板、20…容量センサ素子、21…画素、22…センサ電極、23…画素回路、24,25…キャパシタ、26…アンプ、T…検査対象、Sub…基板、R,G,B…発光素子、Pad…パッド電極。