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特開2023-69754推定装置、推定方法及び推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069754
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法及び推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/16 20060101AFI20230511BHJP
   H04L 43/0876 20220101ALI20230511BHJP
【FI】
G06F17/16 Z
H04L43/0876
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181863
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓑輪 和生
(72)【発明者】
【氏名】浅野 秀平
【テーマコード(参考)】
5B056
【Fターム(参考)】
5B056BB31
(57)【要約】
【課題】処理対象の回線の通信の用途を簡易に推定することができる。
【解決手段】推定装置10は、処理対象の回線のトラヒックを周波数分解によってスペクトログラムに変換する第2の周波数分解部1423と、一つの因子を、予め取得された所定用途に応じた時間成分の因子のテンプレートに固定し、第2の周波数分解部1423によって変換されたスペクトログラムを非負値テンソル因子分解によって、時間成分を時間テンソルに分解する第2の非負値テンソル因子分解部1424と、第2の非負値テンソル因子分解部1424による分解結果を基に、処理対象の回線について時間ごとの用途を推定する用途推定部1425と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の回線のトラヒックを周波数分解によってスペクトログラムに変換する第1の分解部と、
一つの因子を、予め取得された所定用途に応じた時間成分の因子のテンプレートに固定し、前記第1の分解部によって変換されたスペクトログラムを非負値テンソル因子分解によって、時間成分を時間テンソルに分解する第2の分解部と、
前記第2の分解部による分解結果を基に、前記処理対象の回線について時間ごとの用途を推定する推定部と、
を有することを特徴とする推定装置。
【請求項2】
複数の回線のトラヒックを周波数分解によってスペクトログラムに変換する第3の分解部と、
前記第3の分解部によって変換されたスペクトログラムを非負値テンソル因子分解によって時間成分を時間テンソルに分解する第4の分解部と、
前記分解された時間テンソルから、前記所定用途に対応する時間成分の因子を特定する特定情報の入力を受け付ける受付部と、
前記受付部が入力を受け付けた特定情報を基に、前記所定用途に対応する時間成分の因子を、前記所定用途に応じた時間成分の因子のテンプレートとして登録する登録部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記処理対象の回線について、前記第2の分解部によって分解された各因子に対し、因子ごとにトラヒックを再構成し、該再構築したトラヒックに、推定した時間ごとの用途を対応付けて出力することを特徴とする請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記所定用途は、人間による業務用途、または、機械によるデータ処理用途であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の推定装置。
【請求項5】
前記テンプレートとして、同じ用途の異なる時間帯に活性を持つテンプレートが複数登録されており、
前記第2の分解部は、固定するテンプレートとして、前記所定用途の異なる時間帯に活性を持つ複数のテンプレートを用いることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の推定装置。
【請求項6】
推定装置が実行する推定方法であって、
処理対象の回線のトラヒックを周波数分解によってスペクトログラムに変換する第1の分解工程と、
一つの因子を、予め取得された所定用途に応じた時間成分の因子のテンプレートに固定し、前記第1の分解工程において変換されたスペクトログラムを非負値テンソル因子分解によって、時間成分を時間テンソルに分解する第2の分解工程と、
前記第2の分解工程における分解結果を基に、前記処理対象の回線について時間ごとの用途を推定する推定工程と、
を含んだことを特徴とする推定方法。
【請求項7】
処理対象の回線のトラヒックを周波数分解によってスペクトログラムに変換する第1の分解ステップと、
一つの因子を、予め取得された所定用途に応じた時間成分の因子のテンプレートに固定し、前記第1の分解ステップにおいて変換されたスペクトログラムを非負値テンソル因子分解によって、時間成分を時間テンソルに分解する第2の分解ステップと、
前記第2の分解ステップにおける分解結果を基に、前記処理対象の回線について時間ごとの用途を推定する推定ステップと、
をコンピュータに実行させるための推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、推定方法及び推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信事業者や企業内の情報システム管理者にとって、ネットワーク上を流れる通信の目的・用途を分析することは、ネットワークの保守・運用を行う上で重要である。従来、ネットワークを流れる通信の用途、目的に対する分析には、パケット内部のペイロードを直接解析するDPI(Deep Packet Inspection)装置などを用いた方法が広く用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-141236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このDPI装置は、コストの負担が大きい上に、パケット内部を分析する機能により大量のトラヒックを処理するのには不向きであるため、ネットワーク構成上のボトルネックとなる。
【0005】
また、従来、DPI装置などの収集装置及び解析装置を導入することで、通信の用途を推定していたが、パケットを直接解析できない場合には、DPI装置を用いる方法では用途を推定できない。
【0006】
そこで、DPI装置がない場合には、利用者(またはネットワーク管理者)から用途を聞き出す、或いは、専門家がトラヒックの波形などから用途を推定する、という煩雑な処理を行うことで通信の用途を求めていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、処理対象の回線の通信の用途を簡易に推定することができる推定装置、推定方法及び推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る推定装置は、処理対象の回線のトラヒックを周波数分解によってスペクトログラムに変換する第1の分解部と、一つの因子を、予め取得された所定用途に応じた時間成分の因子のテンプレートに固定し、第1の分解部によって変換されたスペクトログラムを非負値テンソル因子分解によって、時間成分を時間テンソルに分解する第2の分解部と、第2の分解部による分解結果を基に、処理対象の回線について時間ごとの用途を推定する推定部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、処理対象の回線の通信の用途を簡易に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係る推定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、テンプレートデータのデータ構成の一例を示す図である。
図3図3は、事前処理部の処理の流れを説明する図である。
図4図4は、推定部の処理の流れを説明する図である。
図5図5は、実施の形態における事前処理の処理手順を示すフローチャートである。
図6図6は、実施の形態に係る推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図7図7は、テンプレートデータのデータ構成の他の例を示す図である。
図8図8は、プログラムを実行するコンピュータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願に係る推定装置、推定方法及び推定プログラムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本願に係る推定装置、推定方法及び推定プログラムが限定されるものではない。
【0012】
以下の実施の形態では、実施の形態における推定装置及び推定処理の流れを順に説明し、最後に実施の形態による効果を説明する。
【0013】
[実施の形態]
まず、実施の形態について説明する。実施の形態では、パケットやflow(5タプル)の情報から用途を推定するのではなく、通信量の波形を基に、各時刻における通信の用途を推定する。実施の形態では、トラヒックを非負値テンソル因子分解によっていくつかの因子に分解し、分解後の因子の特徴から用途を推定する。
【0014】
この際、本実施の形態では、一つの因子を、予め取得された所定用途に応じた時間成分の因子のテンプレートに固定し、トラヒックのスペクトログラムを非負値テンソル因子分解によって、時間成分を時間テンソルに分解する。
【0015】
このように、実施の形態では、分析したい用途のテンプレートに固定した状態で、非負値テンソル因子分解を行うことで、波形を、分析したい用途の因子と、その他の用途の因子とに分離する。そして、実施の形態では、この分離結果を基に、時間ごとに、分析したい用途とその他用途との因子のいずれが支配的かを判別することで、その時刻における用途を推定する。
【0016】
[推定装置の構成]
実施の形態における推定装置の構成を説明する。図1は、実施の形態に係る推定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、実施の形態における推定装置10は、通信部11、入出力部12、記憶部13及び制御部14を有する。
【0018】
通信部11は、ネットワークを介して接続された他の装置(例えば、転送装置等のネットワーク装置)との間で、各種情報を送受信する通信インタフェースである。
【0019】
入出力部12は、推定装置10のユーザの操作によって情報の入力を受け付けるとともに、情報を表示出力して、ユーザに情報を提示する。入出力部12は、例えば、ディスプレイ、スピーカー、キーボード、マウス、マイク、タッチパネル等の入出力デバイスである。
【0020】
記憶部13は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、光ディスク等の記憶装置である。なお、記憶部13は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、NVSRAM(Non Volatile Static Random Access Memory)等のデータを書き換え可能な半導体メモリであってもよい。記憶部13は、テンプレート登録または用途推定のために収集されたトラヒックを含むトラヒックデータ131及びテンプレートデータ132を記憶する。
【0021】
テンプレートデータ132は、各種用途に応じた時間成分の因子のテンプレートを含む。図2は、テンプレートデータ132のデータ構成の一例を示す図である。テンプレートデータ132は、テンプレートを格納するテンプレートの項目、及び、テンプレートに対応する用途の項目を有する。
【0022】
例えば、テンプレートT1は、人間による処理、具体的には、業務処理の用途に対応し、具体的には、人間による一般的な業務としての使用であり、例えば、日中に活性が見られるという特徴が含まれた成分である。また、例えば、テンプレートT2は、人間以外の機械によるデータ処理の用途に対応し、具体的には、機械によるバッチ処理、決まったタイミングでの通信(アップデートなど)であり、日中や夜間を問わず活性が見られるという特徴が含まれた成分である。
【0023】
制御部14は、推定装置10全体を制御する。制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路である。また、制御部14は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、内部メモリを用いて各処理を実行する。また、制御部14は、各種のプログラムが動作することにより各種の処理部として機能する。制御部14は、事前処理部141及び推定部142を有する。
【0024】
事前処理部141は、所定用途に応じた時間成分の因子のテンプレートを、事前に登録する処理を行う。事前処理部141は、第1の収集部1411、第1の周波数分解部1412(第3の分解部)、第1の非負値テンソル因子分解部1413(第4の分解部)、登録情報受付部1414(受付部)及びテンプレート登録部1415(登録部)を有する。図3は、事前処理部141の処理の流れを説明する図である。
【0025】
第1の収集部1411は、テンプレート登録のため、複数の回線のトラヒックを収集する。例えば、第1の収集部1411は、複数の回線のトラヒックをある一定期間にわたって収集する(図3の(1))。ここで、複数の回線は、それぞれ様々な用途に用いられている回線であることが望ましい。
【0026】
第1の周波数分解部1412は、第1の収集部1411によって収集された複数の回線のトラヒックを、周波数分解によってスペクトログラムに変換する。第1の周波数分解部1412は、収集したトラヒックを正規化した上で周波数分解によって、スペクトログラムに変換する(図3の(2))。ここで、最終的なデータの形式は、回線軸×周波数軸×時間軸のテンソルとして表される。なお、このとき時間軸を、日にち、時刻、月、年などの複数の軸に分けてもよい。これは一般的にトラヒックの活性は、日付に応じて変化するのではなく時刻に応じて変化しているためである。
【0027】
第1の非負値テンソル因子分解部1413は、第1の周波数分解部1412によって変換されたスペクトログラムを非負値テンソル因子分解によって時間成分を時間テンソルに分解する。非負値テンソル因子分解とは、非負値テンソルデータのパターンを抽出する手法である。テンソルとは、多次元の配列のことを表すものである。非負値テンソル因子分解では、データ構造を2次以上のテンソルとして表現することによって、トラヒックのスペクトログラムを、回線、周波数、時間の粒度で因子分解を行う。
【0028】
第1の非負値テンソル因子分解部1413は、非負値テンソル因子分解によって、回線テンソル、周波数テンソル、時間テンソルとして、各成分を複数の因子に分解する(図3の(3))。第1の非負値テンソル因子分解部1413は、因子分解結果として、回線テンソル、周波数テンソル、時間テンソルを入出力部12から出力する。
【0029】
登録情報受付部1414は、分解された時間テンソルから、所定用途に対応する時間成分の因子を特定する特定情報の入力を受け付ける。例えば、専門家が、推定装置10から出力された時間テンソルを解析し、各因子のうち、因子W1を、人間による業務用途として考えられる活性のパターンを持つ因子として特定する(図3の(4))。そして、専門家は、この因子W1を、人間による処理(業務処理)に対応する時間成分の因子のテンプレートとして特定する特定情報を、入出力部12を介して、推定装置10に入力する。
【0030】
テンプレート登録部1415は、登録情報受付部1414が入力を受け付けた特定情報を基に、所定用途に対応する時間成分の因子を、所定用途に応じた時間成分の因子のテンプレートとして登録する。具体的には、テンプレート登録部1415は、因子W1(図3参照)を、人間による処理(業務処理)に対応する時間成分の因子のテンプレートT1としてテンプレートデータ132に登録する(図3の(4))。また、機械によるバッチ処理による用途を分離したい場合、専門家は、予め、機械によるバッチ処理として考えられる活性のパターンを持つ因子を特定し、推定装置10に、この因子を機械によるバッチ処理に対応するテンプレートT2として登録すればよい。
【0031】
推定部142は、処理対象の回線について、所定用途のテンプレートを用いて、所定用途の因子と、その他の用途の因子に分離し、時間ごとの用途が、所定用途またはその他の用途であるかを推定する。推定部142は、第2の収集部1421、用途選択部1422、第2の周波数分解部1423(第1の分解部)、第2の非負値テンソル因子分解部1424(第2の分解部)及び用途推定部1425(推定部)を有する。図4は、推定部142の処理の流れを説明する図である。
【0032】
第2の収集部1421は、処理対象の回線のトラヒックを収集する。第2の収集部1421は、ある一回線について、トラヒックを一定期間にわたって収集する(図4の(1))。
【0033】
用途選択部1422は、処理対象の回線に対して、分離したい用途の選択を受け付ける。用途選択部1422は、受け付けた用途に対応する因子のテンプレートを、テンプレートデータ132から選択し、非負値テンソル因子分解の初期値として組み込んで固定する。
【0034】
例えば、推定装置10のユーザが、処理対象の回線に対し、人間による業務処理の用途で使用されているかを確認したい場合、用途として、人間による業務処理を入力する。これによって、用途選択部1422は、テンプレートデータ132から、人間による業務処理に対応する因子のテンプレートT1を選択し、非負値テンソル因子分解の初期値として組み込んで固定する。また、ユーザが、機械によるバッチ処理の用途の成分を確認するために、用途として、人間以外によるデータ処理の用途を入力した場合、用途選択部1422は、テンプレートT2を選択し、非負値テンソル因子分解の初期値として組み込んで固定する。
【0035】
第2の周波数分解部1423は、第2の収集部1421によって収集された処理対象の回線のトラヒックを、周波数分解によってスペクトログラムに変換する。第2の周波数分解部1423は、第1の周波数分解部1412と同様に、収集したトラヒックを正規化した上で周波数分解によって、スペクトログラムに変換する(図4の(2))。第2の周波数分解部1423によって変換されたデータは、周波数×時間のテンソルとして表される。
【0036】
第2の非負値テンソル因子分解部1424は、一つの因子を、予め取得された所定用途に応じた時間成分の因子のテンプレートに固定し、第2の周波数分解部によって変換されたスペクトログラムを非負値テンソル因子分解によって、時間成分を時間テンソルに分解する。
【0037】
第2の非負値テンソル因子分解部1424は、非負値テンソル因子分解によってスペクトグラムを複数の因子に分解する際に、用途選択部1422によって選択されたテンプレート(例えば、人間による業務処理を用途とするテンプレートT1)を、初期値として組み込んだ状態で固定し、分解する(図4の(3))。これによって、人間による業務処理として保存されたテンプレートT1の因子W11は、人間による業務処理用途の因子として分離される(図4の(4))。また、因子W11以外の因子W12は、人間による業務処理でない、すなわち、機械によるデータ処理用途の因子として分離される(図4の(5))。
【0038】
用途推定部1425は、第2の非負値テンソル因子分解部1424による分解結果を基に、処理対象の回線について時間ごとの用途を推定し、推定結果を出力する。具体的には、用途推定部1425は、処理対象の回線について、第2の非負値テンソル因子分解部1424によって分解された各因子に対し、因子ごとにトラヒックを再構成する(図4の(6))。
【0039】
用途推定部1425は、各時刻において支配的な因子を、その時刻における用途と推定する(図4の(7))。例えば、用途推定部1425は、人間による業務処理として保存されたテンプレートT1の因子W11が支配的である時刻は、処理対象の回線が、人間による業務処理用途に使用されたと推定する。また、用途推定部1425は、因子W12が支配的である時刻は、処理対象の回線が、人間以外のデータ処理用途に使用されたと推定する。例えば、用途推定部1425は、○月○日の8時から18時までは業務用途、それ以外の時間はデータ処理用途で、処理対象の回線が使用されたと推定する。
【0040】
用途推定部1425は、時刻ごとの通信の用途を推定する(図4の(8))。そして、用途推定部1425は、この再構築したトラヒックに、推定した時間ごとの用途を対応付けて出力する。
【0041】
例えば、用途推定部1425は、推定結果として、再構築したトラヒックの波形のうち、人間による業務処理用途の時刻と、機械によるデータ処理用途の時刻とで色分けしたグラフG1を、入出力部12を介して、表示出力する(図4の(9))。ユーザは、このグラフG1を認識することで、処理対象の回線のどの時刻が、人間による業務処理用途と機械によるデータ処理用途とのいずれかで使用されたのかを認識することができる。
【0042】
[事前処理の処理手順]
次に、事前処理部141による事前処理の処理手順について説明する。図5は、実施の形態における事前処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0043】
図5に示すように、事前処理部141では、第1の収集部1411が、複数の回線のトラヒックを収集する(ステップS1)。第1の周波数分解部1412は、第1の収集部1411によって収集された複数の回線のトラヒックを、周波数分解によってスペクトログラムに変換する(ステップS2)。
【0044】
第1の非負値テンソル因子分解部1413は、第1の周波数分解部1412によって変換されたスペクトログラムを非負値テンソル因子分解によって時間成分を時間テンソルに分解する(ステップS3)。第1の非負値テンソル因子分解部1413は、因子分解結果を入出力部12から出力する(ステップS4)。
【0045】
登録情報受付部1414は、分解された時間テンソルから、所定用途に対応する時間成分の因子を特定する特定情報の入力を受け付ける(ステップS5)。テンプレート登録部1415は、登録情報受付部1414が入力を受け付けた特定情報を基に、所定用途に対応する時間成分の因子を、所定用途に応じた時間成分の因子のテンプレートとして登録する(ステップS6)。
【0046】
[推定処理の処理手順]
次に、推定部142による事前処理の処理手順について説明する。図6は、実施の形態に係る推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0047】
図6に示すように、推定部142では、処理対象の回線のトラヒックを収集する(ステップS11)。用途選択部1422は、処理対象の回線に対して、分離したい用途の選択を受け付け(ステップS12)、受け付けた用途に対応する因子のテンプレートを選択し、非負値テンソル因子分解の初期値として組み込んで固定する(ステップS13)。
【0048】
第2の周波数分解部1423は、第2の収集部1421によって収集された処理対象の回線のトラヒックを、周波数分解によってスペクトログラムに変換する(ステップS14)。
【0049】
第2の非負値テンソル因子分解部1424は、一つの因子を、用途選択部1422によって選択された因子のテンプレートに固定し、第2の周波数分解部によって変換されたスペクトログラムを非負値テンソル因子分解によって、時間成分を時間テンソルに分解する(ステップS15)。
【0050】
用途推定部1425は、第2の非負値テンソル因子分解部1424による分解結果を基に、処理対象の回線について時間ごとの用途を推定し(ステップS16)、推定結果を出力する(ステップS17)。
【0051】
[実施の形態の効果]
実施の形態では、処理対象の回線のトラヒックを周波数分解によってスペクトログラムに変換し、一つの因子を、予め取得された所定用途に応じた時間成分の因子のテンプレートに固定し、変換されたスペクトログラムを非負値テンソル因子分解によって、時間成分を時間テンソルに分解し、この分解結果を基に、処理対象の回線について時間ごとの用途を推定する。
【0052】
すなわち、実施の形態では、所定用途に対応する時間成分の因子をテンプレートとして予め取得しておき、一つの因子をこのテンプレートに固定して、トラヒックのスペクトログラムに対し非負値テンソル因子分解を行うことだけで、所定用途かその他の用途かを自動的に推定する。このため、実施の形態によれば、回線の通信の用途を取得するために、利用者から用途を聞き出したり、専門家がトラヒックの波形などから用途を推定したりといった煩雑な処理を行う必要がない。
【0053】
また、実施の形態では、所定用途に対応する時間成分の因子をテンプレートの登録は、用途ごとに1度行えば足りるため、回線の時間ごとの用途を簡易に推定することができる。
【0054】
また、実施の形態では、パケットやflow(5タプル)の情報から用途を推定するのではなく、通信量の波形を基に、各時刻における通信の用途を推定する。このため、実施の形態では、DPI装置等のネットワーク装置を必要とせず、簡易な構成で、回線の時間ごとの用途を推定することができる。
【0055】
また、実施の形態では、所定用途に対応する時間成分の因子をテンプレートとして予め取得して非負値テンソル因子分解を行うだけで、所定用途に対応する因子を分離できるため、教師あり学習のモデルを用いた計算量の多い処理を行わずとも、簡易かつ迅速に各時刻における通信の用途を推定できる。
【0056】
なお、実施の形態では、テンプレートとして、人間による処理用途、人間以外による処理用途に応じてテンプレートT1,T2を登録した場合を例に説明したが、同じ用途の異なる時間帯に活性を持つテンプレートが複数登録されていてもよい。第2の非負値テンソル因子分解部1424は、固定するテンプレートとして、所定用途の異なる時間帯に活性を持つ複数のテンプレートを用いることができる。
【0057】
図7は、テンプレートデータ132のデータ構成の他の例を示す図である。事前処理部141は、図7に示すように、例えば、人間による処理を、日中8時から18時の時間帯で活性が見られる業務処理用途のパターンと、土日以外に活性が見られる業務処理用途のパターンとに分けて、テンプレートT1-1,T1-2とを登録する。推定部142は、人間による業務処理用途の選択を受け付けた場合、テンプレートT1-1とテンプレートT1-2とを組み合わせて固定し、非負値テンソル因子分解を行ってもよい。
【0058】
また、事前処理部141は、図7に示すように、例えば、人間以外による処理を、0時から6時の時間帯で活性が見られるバッチ処理等のデータ処理用途のパターンと、所定曜日(例えば水曜日)の8時から12時の時間帯で活性が見られるアプリケーションアップデータ処理用途のパターンとに分けて、テンプレートT2-1,T2-2とを登録する。推定部142は、人間以外によるデータ処理用途の選択を受け付けた場合、テンプレートT2-1とテンプレートT2-2とを組み合わせて固定し、非負値テンソル因子分解を行ってもよい。
【0059】
また、実施の形態では、テンプレートを推定装置10が自動で特定してもよい。この場合、推定装置10は、例えば、人間による業務用途として考えられる活性のパターン、機械によるバッチ処理として考えられる活性のパターンを示す特定ルールを予め保持する。
【0060】
そして、推定装置10は、この特定ルールを参照して、非負値テンソル因子分解によって分解された因子のうち、人間による業務用途として考えられる活性のパターンを持つ因子を特定し、この因子を人間による業務処理用途に対応する因子のテンプレートとして登録する。または、この特定ルールを参照して、非負値テンソル因子分解によって分解された因子のうち、機械によるバッチ処理として考えられる活性のパターン因子を特定し、子の因子を、機械によるバッチ処理用途に対応する因子のテンプレートとして登録する。
【0061】
[システム構成等]
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUやGPU及び当該CPUやGPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0062】
また、本実施形態において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともでき、あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0063】
[プログラム]
また、上記実施形態において説明した推定装置10が実行する処理をコンピュータが実行可能な言語で記述したプログラムを作成することもできる。例えば、実施形態における推定装置10が実行する処理をコンピュータが実行可能な言語で記述したプログラムを作成することもできる。この場合、コンピュータがプログラムを実行することにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、かかるプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することにより上記実施形態と同様の処理を実現してもよい。
【0064】
図8は、プログラムを実行するコンピュータを示す図である。図8に例示するように、コンピュータ1000は、例えば、メモリ1010と、CPU1020と、ハードディスクドライブインタフェース1030と、ディスクドライブインタフェース1040と、シリアルポートインタフェース1050と、ビデオアダプタ1060と、ネットワークインタフェース1070とを有し、これらの各部はバス1080によって接続される。
【0065】
メモリ1010は、図8に例示するように、ROM(Read Only Memory)1011及びRAM1012を含む。ROM1011は、例えば、BIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムを記憶する。ハードディスクドライブインタフェース1030は、図8に例示するように、ハードディスクドライブ1090に接続される。ディスクドライブインタフェース1040は、ディスクドライブ1100に接続される。例えば磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能な記憶媒体が、ディスクドライブ1100に挿入される。シリアルポートインタフェース1050は、例えばマウス1110、キーボード1120に接続される。ビデオアダプタ1060は、例えばディスプレイ1130に接続される。
【0066】
ここで、図8に例示するように、ハードディスクドライブ1090は、例えば、OS1091、アプリケーションプログラム1092、プログラムモジュール1093、プログラムデータ1094を記憶する。すなわち、上記の、プログラムは、コンピュータ1000によって実行される指令が記述されたプログラムモジュールとして、例えばハードディスクドライブ1090に記憶される。
【0067】
また、上記実施形態で説明した各種データは、プログラムデータとして、例えばメモリ1010やハードディスクドライブ1090に記憶される。そして、CPU1020が、メモリ1010やハードディスクドライブ1090に記憶されたプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094を必要に応じてRAM1012に読み出し、各種処理手順を実行する。
【0068】
なお、プログラムに係るプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、ハードディスクドライブ1090に記憶される場合に限られず、例えば着脱可能な記憶媒体に記憶され、ディスクドライブ等を介してCPU1020によって読み出されてもよい。あるいは、プログラムに係るプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、ネットワーク(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等)を介して接続された他のコンピュータに記憶され、ネットワークインタフェース1070を介してCPU1020によって読み出されてもよい。
【0069】
上記の実施形態やその変形は、本願が開示する技術に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
10 推定装置
11 通信部
12 入出力部
13 記憶部
14 制御部
131 トラヒックデータ
132 テンプレートデータ
141 事前処理部
142 推定部
1411 第1の収集部
1412 第1の周波数分解部
1413 第1の非負値テンソル因子分解部
1414 登録情報受付部
1415 テンプレート登録部
1421 第2の収集部
1422 用途選択部
1423 第2の周波数分解部
1424 第2の非負値テンソル因子分解部
1425 用途推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8