(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069776
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ミスト濃度の定量化方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
G01N21/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181896
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】米村 建哉
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB02
2G059CC11
2G059EE01
2G059EE02
2G059FF01
2G059GG02
2G059HH01
2G059JJ02
2G059KK04
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】局所的なミスト濃度の分布に影響を受けず測定ができ、広い濃度範囲を再現性良く定量化することができる、ミスト濃度の定量化方法及び装置を提供する。
【解決手段】ミスト105が噴霧された空間に投光部101が光106を照射し、投光部101と対向で設置した撮像部102が投光部101より照射された光のミスト105による透過光を複数の露光時間で撮像し、演算部103が撮像部102より取得した画像データを構成する画素の輝度値を基に空間内のミスト濃度の面内分布を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミストが噴霧された空間に光を照射する投光部と、
前記空間内に前記投光部に対し対向で設置され、前記光のうち前記ミストを透過した透過光を複数の露光時間で画像データとして取得する撮像部と、
前記画像データを構成する画素の輝度値を基に前記空間内のミスト濃度の面内分布を計算する演算部とを備え、
前記演算部は、
前記取得した画像データのうち輝度が飽和していないものの中で輝度最大値の最も大きい画像データを選択する選択部と、
選択した画像データ中の輝度値を所定の露光時間の輝度に換算する換算部と、
換算した輝度のうち輝度最大値を抽出する抽出部と、
抽出された輝度最大値を利用してミスト濃度を算出するとともに、前記投光部を光軸と垂直な方向に動かして前記撮像部による撮像を行い、取得した画像データに対し前記演算部を行ってミスト濃度の面内分布を取得する濃度面内分布算出部と、
を含むミスト濃度の定量化装置。
【請求項2】
ミストが噴霧された空間に投光部から光を照射し、前記投光部から照射された前記光の前記ミストからの透過光を複数の露光時間で撮像部で撮像する撮像工程と、
前記撮像部より画像データを演算部で取得し、取得した前記画像データを構成する画素の輝度値を基に前記空間内のミスト濃度の面内分布を前記演算部で計算する演算工程とを備え、
前記演算工程は、
前記取得した画像データのうち輝度が飽和していないものの中で輝度最大値の最も大きい画像データを前記演算部で選択する選択工程と、
選択した画像データ中の輝度値を所定の露光時間の輝度に前記演算部で換算する換算工程と、
換算した輝度のうち輝度最大値を前記演算部で抽出する抽出工程と、
抽出された輝度最大値を利用してミスト濃度を算出するとともに、前記投光部を光軸と垂直な方向に動かして前記撮像部による撮像を行い、取得した画像データに対し前記演算工程を行ってミスト濃度の面内分布を取得する濃度算出工程と、
を含むミスト濃度の定量化方法。
【請求項3】
前記換算工程と前記抽出工程との間において、前記演算部が、前記撮像部より取得した前記画像データに平均化処理を行う平滑化工程をさらに備える、請求項2に記載のミスト濃度の定量化方法。
【請求項4】
前記濃度算出工程において、前記演算部が、前記撮像部より取得した輝度値に対しランベルト・ベールの法則及びミー散乱理論を用いミスト濃度を定量化する、請求項2又は請求項3のいずれか一項に記載のミスト濃度の定量化方法。
【請求項5】
前記撮像工程において、前記投光部が前記ミストに赤外光を照射する、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のミスト濃度の定量化方法。
【請求項6】
前記赤外光のうち地表において太陽光が測定に影響しない波長帯の、波長1350~1410nm、1820~1930nmの近赤外光、中赤外光、又は遠赤外光を使用する、請求項5に記載のミスト濃度の定量化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミストが噴霧された空間中で投光部より光を照射し、ミストからの透過光を画像データとして取得し、画像データを構成する画素の輝度値から空間内のミスト濃度を計算することにより、装置の精密な調整を必要とせず、ミスト濃度の面内分布を広い濃度範囲で精度良く定量化するミスト濃度の定量化方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を微粒化したミストを空間に噴霧し、ミスト及び空間に画像又は映像を散乱させることにより、幻想的で心地良い空間を作り出すことが可能となる。また、ミストを用いた演出は、人体又は自然との親和性も高く、近年、その利用可能性が広がっている。
【0003】
しかし、空間に浮遊するミストは、温湿度又は風などの外乱の影響を受けやすく、安定的に生成すること又は拡散を制御することは難しいため、演出に用いた場合に意図する演出が実現されないなどの課題を有する。そのため、演出空間のミスト濃度を定量化し、制御できるようにすることが期待されている。
【0004】
例えば、演出に用いるミスト濃度が安定せず、意図するような演出が実現されないということに対して、ミスト濃度を測定することで、ミスト濃度が所定の範囲となるよう制御する発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。その投影装置は、二流体ノズルと、投影装置側気体流路と、投影装置側液体流路と、液体圧力調整器と、気体用弁と、液体用弁と、気体供給源と、液体供給源と、ミスト濃度測定部とで、ミストを噴霧するように構成されている。また、投影装置の制御部では、投影部からスクリーンに投影される画像又は映像に基づいて、気体用弁と液体用弁とを開閉制御してミストの噴霧の開始及び停止を行い、かつ、ミスト濃度測定部からのミスト濃度の信号を受信し、受信信号に基づき気体用弁と液体用弁とを開閉制御してミスト濃度が所定の範囲となるように、ミストの噴霧の開始及び停止を行う。この投影装置を用いることにより、室内空間のミストの濃度を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の投影装置は、ミスト濃度測定部からのミスト濃度の信号を受信し、受信信号に基づき気体用弁と液体用弁とを開閉制御してミスト濃度が所定の範囲となるように、ミストの噴霧の開始及び停止を行うことができる。
【0007】
しかし、この投影装置では、ミストが噴霧された空間に対し投光部より光を照射し、受光部で検出された散乱光の強度からミスト濃度を測定しているため、局所的なミスト濃度の影響を受けやすく、空間的に一様でない分布を持つ場合に正確なミスト濃度を測定できなかった。
【0008】
本発明は、投光部と撮像部との位置及び角度の精密な調整を必要とせず、ミスト濃度の面内分布を捉えることで、局所的なミスト濃度の分布に影響を受けず測定ができ、広い濃度範囲を再現性良く定量化することができる、ミスト濃度の定量化方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の1つの態様にかかるミスト濃度の定量化装置は、
ミストが噴霧された空間に光を照射する投光部と、
前記空間内に前記投光部に対し対向で設置され、前記光のうち前記ミストを透過した透過光を複数の露光時間で画像データとして取得する撮像部と、
前記画像データを構成する画素の輝度値を基に前記空間内のミスト濃度の面内分布を計算する演算部とを備え、
前記演算部は、
前記取得した画像データのうち輝度が飽和していないものの中で輝度最大値の最も大きい画像データを選択する選択部と、
選択した画像データ中の輝度値を所定の露光時間の輝度に換算する換算部と、
換算した輝度のうち輝度最大値を抽出する抽出部と、
抽出された輝度最大値を利用してミスト濃度を算出するとともに、前記投光部を光軸と垂直な方向に動かして前記撮像部による撮像を行い、取得した画像データに対し前記演算部を行ってミスト濃度の面内分布を取得する濃度面内分布算出部と、
を含む。
【0010】
上記目的を達成するために本発明の1つの態様にかかるミスト濃度の定量化方法は、
ミストが噴霧された空間に投光部から光を照射し、前記投光部から照射された前記光の前記ミストからの透過光を複数の露光時間で撮像部で撮像する撮像工程と、
前記撮像部より画像データを演算部で取得し、取得した前記画像データを構成する画素の輝度値を基に前記空間内のミスト濃度の面内分布を前記演算部で計算する演算工程とを備え、
前記演算工程は、
前記取得した画像データのうち輝度が飽和していないものの中で輝度最大値の最も大きい画像データを前記演算部で選択する選択工程と、
選択した画像データ中の輝度値を所定の露光時間の輝度に前記演算部で換算する換算工程と、
換算した輝度のうち輝度最大値を前記演算部で抽出する抽出工程と、
抽出された輝度最大値を利用してミスト濃度を算出するとともに、前記投光部を光軸と垂直な方向に動かして前記撮像部による撮像を行い、取得した画像データに対し前記演算工程を行ってミスト濃度の面内分布を取得する濃度算出工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の前記態様によれば、ミストを噴霧している空間に投光部と撮像部とを対向で設置し、投光部より光を照射し、透過光を複数の露光時間で画像データとして取得することにより、光学系の精密な位置及び角度調整を必要とせず、空間的に一様でない濃度分布による測定誤差を低減し、広い濃度範囲でミスト濃度を測定できる。すなわち、投光部と撮像部との位置及び角度の精密な調整を必要とせず、ミスト濃度の面内分布を捉えることで、局所的なミスト濃度の分布に影響を受けず測定ができ、広い濃度範囲を再現性良く定量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る測定装置の構成図
【
図2】本発明の実施の形態1に係る演算部での解析処理の一例を示すフローチャート
【
図3】本発明の実施の形態1に係る演算部での解析処理の一例を示す模式図
【
図4】本発明の実施の形態1に係る演算部の構成の例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態に係るミスト濃度の定量化方法を実施可能なミスト濃度の定量化装置の一例としてのミスト濃度測定装置の構成を説明する図である。
【0015】
図1において、ミスト濃度測定装置は、投光部101と、撮像部102と、演算部103とで構成されている。
【0016】
投光部101は、ミスト105が噴霧された空間104に光106を照射する。
【0017】
撮像部102は、空間104内に投光部101に対し対向で設置され、照射光106のうちミスト105を透過した透過光を複数の露光時間で画像データとして取得する。
【0018】
演算部103は、画像データを構成する画素の輝度値を基に空間104内のミスト濃度の面内分布を計算する。
【0019】
<投光部101>
投光部101としては、LEDランプ、HID(High Intensity Discharge)ランプ、又は蛍光ランプなどを用いることができる。
【0020】
また、一例として投光部101から照射される光106は、赤外光を用いることができ、投光部101としては、赤外線LEDランプなどを用いることができる。
【0021】
光が波長より十分小さなミストに当たると、散乱光が波長の影響を受ける、レイリー散乱を起こす。レイリー散乱では、散乱光の強さは波長が短い方が大きく、波長が長いと小さくなる。また、光が波長より十分大きなミストに当たると、波長依存性がなくすべての波長の光が同様に散乱する、ミー散乱を起こす。空間演出に用いるミストはナノオーダのものからマイクロオーダーのものまで広く分布を持つため、空間104内はレイリー散乱とミー散乱とが共に発生する。
【0022】
投光部101として赤外光を使用するときは、赤外光は人の目で感知できないため、演出に影響を与えることなく、ミスト濃度を判定することができる。
【0023】
また、一例として投光部101から照射される光106は、地表において太陽光が測定に影響しない波長帯の近赤外光(波長1350~1410nm、1820~1930nm)、中赤外光、又は遠赤外光を用いることができ、投光部101が発する光以外の波長帯の光の撮像部102への入射をフィルタにより遮断することで、屋外でのミスト濃度の測定において太陽光による濃度の測定誤差を低減することができる。投光部101としては、赤外線LEDランプなどを用いることができる。
【0024】
<撮像部102>
撮像部102は、レンズ及び複数の画素を有するイメージセンサから構成され、ミスト105が噴霧された空間104に投光部101に対して対向で配置し、フォーカスを投光部101に合わせる。
【0025】
また、撮像部102に光学フィルタを取り付けることで、投光部101より照射される光以外の波長帯の光の入射を遮断し、測定への影響を低減できる。ミスト105が噴霧された空間104に対し投光部101より光106を照射すると、ミスト105で光106の散乱及び吸収が生じ、散乱及び吸収により減衰した透過光を撮像部102で画像データとして検出する。撮像部102で検出される透過光の強度は、空間104のミスト濃度に依存するため、撮像部102より得られた画像データを演算部103で解析することによりミスト濃度を計算することができる。
【0026】
撮像部102より得られた画像データに対して行う演算部103での解析については後述する。
【0027】
撮像部102としては、CМOSカメラ、CCDカメラ、又は赤外線カメラなどを用いることができる。
【0028】
撮像部102と投光部101との位置関係については、ミスト105の透過光を検出するためにミスト105を挟んで対向で配置する。
【0029】
この投光部101と撮像部102とを使用して、ミスト105が噴霧された空間104に投光部101から光106を照射し、投光部101から照射された光106のミスト105からの透過光を複数の露光時間で撮像部102で撮像する撮像工程を行う。
【0030】
<演算部103>
演算部103は、撮像部102から画像データを受信し、受信した画像データを解析することにより、ミスト濃度を算出する。すなわち、撮像部101より画像データを演算部103で取得し、取得した画像データを構成する画素の輝度値を基に空間104内のミスト濃度の面内分布を演算部103で計算する。
【0031】
このような動作を行うため、
図4に示すように、演算部103は、以下のように、輝度値取得部103aと、選択部103bと、換算部103cと、平滑化部103dと、抽出部103eと、濃度面内分布算出部103j(係数算出部103fと、ミスト濃度算出部103gと、面内分布取得部103hとを含む。)とを備えている。
【0032】
<演算部103での演算工程>
図2は演算部103での解析処理の一例を示すフローチャートである。
図3は
図2のステップS1からステップS3の解析処理の例を示す模式図である。
【0033】
まず、ステップS1の輝度値取得部103aによる輝度値取得工程で、撮像部102から複数の露光時間でそれぞれ取得した各画像データを受信する。
図3では、例として、3つの異なる露光時間20μs、40μs、及び80μsで撮像部102よりそれぞれ取得した大きさ5pixel×5pixelの画像データを示す。升目の中の数字は各画素の輝度値を表す。この工程では、撮像部102より取得した画像データ毎に各画素の輝度値を数値化している。
【0034】
次いで、ステップS2の選択部103bによる選択工程で、撮像部102より得られた画像データのうち、画像データ内の輝度値が飽和していないものの中で、輝度最大値が最も大きい画像データを選択し、選択した画像データを以降の解析処理に用いる。一例として、
図3では、撮像部102より得られた3つの露光時間20μs、40μs、80μsの画像データのうち、露光時間80μsで取得した画像データの輝度最大値が最も大きいため、これを選択し、ステップS3で用いている。
【0035】
次いで、ステップS3の換算部103cによる換算工程で、露光時間と輝度値とが線形関係であることから、ステップS2で選択された画像データの各画素における輝度値を、次式の比例計算により、予め決められた基準となる、所定の露光時間の場合に換算する。
【0036】
I´=I×t´/t
【0037】
Iは換算前の輝度値、I´は換算後の輝度値、tは画像データを取得した際の露光時間、t´は輝度値を換算する所定の露光時間を表す。例として、
図3では、露光時間80μsで取得した画像データの各画素の輝度値を、所定の露光時間の一例としての露光時間100μsの場合に換算するため、各画素値を100/80倍している。
【0038】
次いで、ステップS4の平滑化部103dによる平滑化工程で、換算された画像データに対し平均化フィルタによる平滑化を行う。平均化フィルタにより、投光部101又は撮像部102の位置変動によって生じる輝度値の変動を抑制することができる。
【0039】
次いで、ステップS5の抽出部103eによる抽出工程で、平滑化された画像データ中の輝度の最大値を抽出し、抽出した輝度最大値を以降のステップに用いる。すなわち、ステップS6~S8で、濃度面内分布算出部103jにより、画像データを構成する画素の輝度値を基に空間104内のミスト濃度の面内分布を計算する。
【0040】
具体的には、濃度面内分布算出部103jにおいて、撮像部101より取得した輝度値に対しランベルト・ベールの法則及びミー散乱理論を用いミスト濃度を定量化する。
【0041】
すなわち、ステップS6の係数算出部103fによる係数算出工程で、次式のランベルト・ベールの法則を用いて消散係数βを算出する。
【0042】
I´max/I´0、max = exp(-βz)
【0043】
投光部101と撮像部102との距離をz、ミストを噴霧した状態で上記ステップS1からステップS5の処理を行い取得した輝度最大値をI´max、ミストを噴霧していない状態で同様の処理を行って取得した輝度最大値をI´0、maxとすることで、消散係数βを算出できる。
【0044】
次いで、ステップS7のミスト濃度算出部103gによるミスト濃度算出工程で、ミー散乱モデルを用いて、消散係数βからミスト濃度を算出する。すなわち、単位体積当たりのミスト粒子の個数を表すミスト濃度C、粒子断面積S、及びミー散乱理論から得られる消散効率因子Qextより表される次式を用い、ミスト濃度Cを算出する。
【0045】
β = C S Qext
【0046】
また、一例として、さらに、ステップS8の面内分布取得部103hによる面内分布取得工程も行う。すなわち、投光部101を光軸と垂直な方向に動かして撮像部102による撮像を行い、新たに取得した画像データに対し前記の一連の解析処理すなわちステップS1~S7を行うことで、ミスト濃度の面内分布を取得することができる。
【0047】
ここで、隣接する画素に測定点を移動させるために必要な投光部101の移動量は(セルサイズ)/(レンズの横倍率)である。投光部101の最小の移動量は上記の(セルサイズ)/(レンズの横倍率)で、最大の移動量は((2次元エリアセンサであれば、H方向またはV方向)に並んでいる画素数)×(セルサイズ)/(レンズの横倍率)である。投光部101の動かし方については、具体的には図示しないが、例えば、投光部101にベルトをかませたモータ等の駆動部を取り付け、駆動部の駆動により、画素の並んでいる方向(2次元エリアセンサであれば、H方向またはV方向)に沿って投光部101を移動させる。
【0048】
かかる構成によれば、ミスト105が噴霧された空間104に投光部101より光106を照射し、透過光を複数の露光時間で画像データとしてそれぞれ取得し、取得した画像データを構成する画素の輝度値を基に空間104内のミスト濃度の面内分布を計算する。このように構成することにより、局所的な濃度の分布による測定誤差を低減し、広い濃度範囲で精度良くミスト濃度を定量化できる。すなわち、投光部101と撮像部102との位置及び角度の精密な調整を必要とせず、ミスト濃度の面内分布を捉えることで、局所的なミスト濃度の分布に影響を受けず測定ができ、広い濃度範囲を再現性良く定量化することができる
よって、このような定量化装置又は方法を噴霧装置又は方法に利用すれば、透過光強度を利用したミスト濃度測定に複数露光時間での画像取得工程と平均化フィルタ処理とを組み合わせた。複数露光時間での画像取得により、広い測定レンジを持ち、平均化フィルタ処理を行うことでサンプリング点のずれによる輝度値のゆらぎを防ぎ、振動にロバストな計測が可能となる。上記の効果をすべて演算処理でもたらしているため、簡易な構成にて実現可能となる。
【0049】
この結果、再現性良く任意のミスト濃度でミスト噴霧を停止することができる。その結果、空間演出の自由度又は映像表現の価値の向上という大きな効果を奏する。
【0050】
なお、前記様々な変形例のうちの任意の変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施例同士の組み合わせが可能であると共に、異なる実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の前記様態にかかるミスト濃度の定量化装置及び方法は、ミストが噴霧された空間に投光部より光を照射し、複数の画素を有する撮像部が透過光を複数の露光時間で画像データとして取得し、画像データを構成する画素の輝度値を基に空間内のミスト濃度の面内分布を広い濃度範囲で高精度に測定することができる。よって、この定量化装置及び方法を噴霧装置及び方法に利用することにより、再現性良く任意のミスト濃度でミスト噴霧を停止することができる。その結果、空間演出又は映像表現の自由度が向上することができ、アート又はエンタテイメント分野に有用である。
【符号の説明】
【0052】
101 投光部
102 撮像部
103 演算部
103a 輝度値取得部
103b 選択部
103c 換算部
103d 平滑化部
103e 抽出部
103f 係数算出部
103g ミスト濃度算出部
103h 面内分布取得部
103j 濃度面内分布算出部
104 空間
105 ミスト
106 光