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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069808
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】多層基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/11 20060101AFI20230511BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20230511BHJP
   H05K 3/40 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H05K1/11 N
H05K3/46 N
H05K3/40 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181950
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】504112447
【氏名又は名称】FICT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】酒井 泰治
【テーマコード(参考)】
5E316
5E317
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA04
5E316CC04
5E316CC09
5E316FF07
5E316FF08
5E316FF09
5E316FF10
5E316FF12
5E316GG08
5E316GG15
5E316HH07
5E316HH11
5E316HH18
5E317AA24
5E317BB02
5E317BB12
5E317BB13
5E317BB14
5E317BB15
5E317CC25
5E317CD32
5E317GG05
(57)【要約】
【課題】衝撃に強く、クラックの発生を防止することにより、抵抗値変動を抑制できる多層基板を提供する。
【解決手段】複数の絶縁層22とパターン状に形成された複数の金属層24とが交互に積層される多層基板20において、絶縁層22を貫通して金属層24同士を電気的に接続するビアは、導電性ペーストが充填されてなるペーストビア26であって、ペーストビア26は、網目状に形成された樹脂30と、網目状の樹脂の隙間に入り込んだ金属粒子32とから構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層とパターン状に形成された複数の金属層とが交互に積層される多層基板において、
前記絶縁層を貫通して前記金属層同士を電気的に接続するビアは、導電性ペーストが充填されてなるペーストビアであって、
前記ペーストビアは、網目状に形成された樹脂と、網目状の樹脂の隙間に入り込んだ金属粒子とから構成されていることを特徴とする多層基板。
【請求項2】
前記網目状の樹脂は伸縮性を有することを特徴とする請求項1記載の多層基板。
【請求項3】
前記網目状の樹脂の熱膨張係数は、前記絶縁層の熱膨張係数と略同一であることを特徴とする請求項2記載の多層基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品をコンパクトに電子機器に組み込むためにプリント配線板などの回路基板が一般に広く使用されている。プリント配線板は、積層板に張り合わせた銅箔を電子回路パターンに従ってエッチングしたものであって、高密度に電子部品を実装することは困難であるが、コスト面で有利である。
【0003】
一方、電子機器に対する小型化、高性能化、低価格化などの要求に伴い、回路基板の電子回路の微細化、多層化、及び電子部品の高密度実装化が急速に進み、回路基板に対し、多層基板の検討が活発化してきた。
【0004】
特許文献1(特開2004-158671号公報)では、多層基板における各層の電気的接続は、各層を貫通して形成したスルーホールビアにめっき加工を施し、各層の電気的接続はめっき加工を施したスルーホールビアによって行われることが開示されている。
【0005】
また、特許文献2(特開2006-66738号公報)では、多層基板における各層の電気的接続は、接着樹脂層及び硬質絶縁層を貫通して回路に接するビア穴を形成し、このビア穴に熱硬化性樹脂をバインダー樹脂として用いた導電性ペーストを充填して、ビア穴に導電性を付与する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-158671号公報
【特許文献2】特開2006-66738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように、めっきビアを用いた多層基板の場合、多層基板が高温の場所で使用されたり、高温に晒された場合には、多層基板の絶縁層が基板の厚さ方向に熱膨張することもある。
絶縁層が基板の厚さ方向に熱膨張すると、絶縁層と比較して膨張率が小さいめっきビアと絶縁層表面又は裏面の金属層との境界部分に応力が集中してしまい、めっきビアと絶縁層表面又は裏面の金属層との境界部分にクラック(断線)が生じるおそれがある。
【0008】
また、上述した特許文献2のように、導電性ペーストをビア穴に充填したペーストビアを用いた多層基板の場合、多層基板を製造する際に、ビア穴に導電性ペーストを充填した複数の基板を加熱及び加圧すると、樹脂成分がプリプレグ側に移動し、導電性ペーストに混錬されている金属粒子がバルク化してしまうため、ペーストビアが脆くなってしまうおそれがある。
【0009】
脆くなったペーストビアを用いた多層基板の場合、多層基板が高温の場所で使用されたり、高温に晒された場合には、多層基板の絶縁層が基板の厚さ方向への熱膨張に耐え切れず、ペーストビアにクラックが生じるおそれがある。
また、バルク化して脆くなったペーストビアは衝撃に弱いため、衝撃が与えられた多層基板のペーストビアはクラックが発生してしまい、クラックにより抵抗値が変動してしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、衝撃に強く、クラックの発生を防止することにより、抵抗値変動を抑制できる多層基板を提供することにある。
【0011】
本発明にかかる多層基板によれば、複数の絶縁層とパターン状に形成された複数の金属層とが交互に積層される多層基板において、前記絶縁層を貫通して前記金属層同士を電気的に接続するビアは、導電性ペーストが充填されてなるペーストビアであって、前記ペーストビアは、網目状に形成された樹脂と、網目状の樹脂の隙間に入り込んだ金属粒子とから構成されていることを特徴としている。
この構成を採用することによって、金属が網目状の樹脂に入り込んでいるためバルク化せずに衝撃に強い構成とすることができる。このため、衝撃が与えられてもクラックが発生せずに抵抗値の変動を抑えることができる。
【0012】
また、前記網目状の樹脂は伸縮性を有することを特徴としている。
この構成によれば、高温時に絶縁層が膨張したとしてもペーストビアの網目状の樹脂が絶縁層の膨張に伴って膨張するため、ペーストビアと金属層の境界でのクラックの発生を防止し、抵抗値の変動を抑えることができる。
【0013】
また、前記網目状の樹脂の熱膨張係数は、前記絶縁層の熱膨張係数と略同一であることを特徴としている。
この構成によれば、高温時に絶縁層が膨張したときの寸法変化とペーストビアの網目状の樹脂の寸法変化が略同一のため、ペーストビアと金属層の境界でのクラックの発生を防止し、抵抗値の変動を抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、衝撃に強く、クラックの発生を防止することにより、抵抗値変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】多層基板の一例を示す概略断面図である。
図2】ペーストビアの概略説明図である。
図3】ペーストビアの断面顕微鏡写真である。
図4】(A)比較例としてのめっきビアの室温状態の概略断面図である。(B)比較例としてのめっきビアの高温状態の概略断面図である。(C)比較例としてのめっきビアの高温状態から室温状態に戻ったときの概略断面図である。
図5】多層基板の他の実施例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(多層基板)
図1に多層基板の概略断面図を示す。
本実施形態における多層基板20は、複数の絶縁層22と、パターン化された複数の金属層24とが交互に接着層無しで積層されて構成されている。多層基板20の表面は一例として銅などの金属層25が積層されている。
【0017】
本実施形態では、接着層無しで複数層積層させているが、積層させる直前の絶縁層22の硬化を半硬化の状態とすることで接着層が不要となる。このように、接着層を不要とすることで、接着層を形成する際の工程の短縮及び多層に積層した際の接着層に起因する反りを防止できる。
【0018】
各絶縁層22には、層の厚さ方向に沿って各絶縁層22の両面の各金属層24同士を電気的に接続するペーストビア26が設けられている。
ペーストビア26は、各絶縁層22の両面の各金属層24の表面に開口する貫通穴28内に導電性ペーストを充填して構成されている。本実施形態では、貫通穴28は、下方から上方に向けて徐々に大径となるように形成されており、ペーストビア26はコーン形状となっている。
【0019】
なお、各金属層24は、一般的な銅箔を採用することができるが、特に銅箔に限定するものではない。各金属層24としては、ニッケルなど目的に応じて様々な金属箔を適宜選択することができる。
【0020】
各絶縁層22としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。例えばプリプレグ(ガラス繊維等の不織布基材や織布基材に、エポキシ樹脂などを含侵させたもの)を採用することができる。ただし、絶縁層22の樹脂としては、一般的に回路基板で用いられる絶縁性の基材であれば、例えば熱硬化性樹脂であるビスマレイミドトリアジン樹脂、または熱可塑性樹脂である変形ポリフェニレンエーテル樹脂などであってもよい。
【0021】
導電性ペーストとしては、導電性フィラーとバインダー樹脂とを含有するものを採用する。
導電性フィラーとしては、例えば銅、金、銀、パラジウム、ニッケル、錫、ビスマスなどの金属粒子が挙げられる。これらの金属粒子は、1種類で用いるか、または2種類以上を混合させてもよい。
バインダー樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂の一種であるエポキシ樹脂を採用することができる。ただし、エポキシ樹脂に限定するものではなく、ポリイミド樹脂などを採用してもよい。また、後述するように、バインダー樹脂の熱膨張係数と絶縁層の熱膨張係数とが略同一となるような材質を選択することが好ましい。
【0022】
なお、貫通穴28の形成方法としては、レーザを用いて形成する方法があるが、レーザによる形成方法に限定するものではない。
レーザで貫通穴28を形成する場合のレーザの種類としては、CO2レーザ、YAGレーザなどがあげられるが、適宜選択することができる。また、レーザ出力についても特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0023】
図2に、本実施形態のペーストビアの概略説明図を示し、図3に、本実施形態のペーストビアの断面顕微鏡写真を示す。
上述したように、ペーストビア26は、導電性ペーストが絶縁層22の貫通穴28内に充填された後に積層時に加圧・加熱されて硬化し、絶縁層22の表面及び裏面に配置された金属層24同士を電気的に接続している。
【0024】
ペーストビア26は、網目状に形成された樹脂30と、網目状の樹脂30の隙間に入り込んだ金属粒子32とから構成されている。
網目状に形成された樹脂30は、上記のバインダー樹脂が硬化して形成される。金属粒子32は積層時の加熱によって溶融して網目状に形成された樹脂30の網目の隙間に入り込んでおり、金属粒子32同士が接触していることにより電気的に接続している。
【0025】
図4に比較例として、めっきビアの概略説明図を示す。
図4(A)が室温状態、図4(B)が高温状態、図4(C)が高温状態から室温状態に戻ったところである。なお、比較例としてのめっきビアとしては、例えばフィル銅めっきビアとする。
図4(A)の室温状態から、図4(B)のように高温状態となった場合、絶縁層22は厚さ方向に膨張するが、めっきビア40は厚さ方向に膨張しない。このため、めっきビア40と金属層24との接合部分が歪み、めっきビア40と金属層24との接合部分において応力が集中する。
そして、図4(B)の高温状態から、図4(C)のように室温状態に戻った場合、めっきビア40と金属層24との接合部分における応力集中の影響でクラック42が生じる可能性がある。クラック42が生じると、ビアの抵抗値が変動するという問題が生じる。
【0026】
一方、本実施形態のペーストビア26では、網目状に形成された樹脂30は、網目状のため伸縮性を有している。このため、高温時において絶縁層22が膨張したとしても、網目状に形成された樹脂30は、それに追従して伸縮でき、ペーストビア26と金属層24の接合部分が歪むことなく応力集中が生じない。
したがって、ペーストビア26と金属層24の境界でのビアが膨張しなかったときのクラックの発生を防止できる。ビアにクラックが発生してしまうとビアの抵抗値が変化してしまうが、本実施形態によればクラックの発生を防止することができ、ビアの抵抗値の変動を抑えることができる。
【0027】
さらに、本実施形態では、網目状に形成された樹脂30の熱膨張係数が、絶縁層22の熱膨張係数と略同一である。一例として、網目状に形成された樹脂30の主材料としてエポキシ樹脂を採用し、絶縁層22の主材料もエポキシ樹脂を採用することでそれぞれの熱膨張係数が略同一となる。
網目状に形成された樹脂30の熱膨張係数が、絶縁層22の熱膨張係数と略同一のため、高温時において絶縁層22が膨張した場合において、網目状に形成された樹脂30も同様に膨張するため、ペーストビア26と金属層24の接合部分が歪むことなく応力集中が生じない。
したがって、ペーストビア26と金属層24の境界部分でのビアが膨張しなかったときのクラックの発生を防止できる。ビアにクラックが発生してしまうとビアの抵抗値が変化してしまうが、本実施形態によればクラックの発生を防止することができ、ビアの抵抗値の変動を抑えることができる。
【0028】
(他の多層基板)
図1に示した実施形態では、各層の積層において接着層を介さずに積層した多層基板について説明したが、図5に示すように各層の積層において接着層44を介して積層した多層基板20であってもよい。
接着層44を用いて積層する場合は、積層直前の絶縁層22が硬化した状態となっている。このように、積層直前の絶縁層22が硬化した状態であることにより、寸法安定性が良好となるとともに、導電性ペーストが充填された各絶縁層の厚みを均一にすることができる。
【0029】
図5に示すような接着層44を介して積層した多層基板20においても、ペーストビア26は、導電性ペーストが絶縁層22の貫通穴28内に充填された後に積層時に硬化し、絶縁層22の表面及び裏面に配置された金属層24同士を電気的に接続している。
【0030】
ペーストビア26は、網目状に形成された樹脂30と、網目状の樹脂30の隙間に入り込んだ金属粒子32とから構成されている。
網目状に形成された樹脂30は、上記のバインダー樹脂が硬化して形成される。金属粒子32は積層時の加熱によって溶融して網目状に形成された樹脂30の網目の隙間に入り込んでおり、金属粒子32同士が接触していることにより電気的に接続している。
【0031】
なお、図5に示すように各層の積層において接着層44を介して積層した多層基板20においても、ペーストビア26の網目状に形成された樹脂30は、網目状のため伸縮性を有しており、高温時においても絶縁層22の膨張に追従できる。
また、ペーストビア26の網目状に形成された樹脂30の熱膨張係数が、絶縁層22の熱膨張係数と略同一のため、高温時において絶縁層22が膨張した場合において、網目状に形成された樹脂30も同様に膨張することができる。
【0032】
このため、ペーストビア26と金属層24の境界部分での応力の集中を防ぎ、高温状態から室温状態に戻ったときであっても、ペーストビア26と金属層24の境界部分でのクラックの発生を防止できる。クラックの発生を防止することで、ビアの抵抗値の変動を抑えることができる。
【0033】
なお、上述してきた多層基板のペーストビアとしては、層間接続のビアに限定するものではなく、例えば複数層の基板同士を積層する(Board to Board Connection)場合のビアとしても採用することができる。
【0034】
また、本発明の多層基板については、特に特定の製造方法によって製造されたものに限定するものではない。
【符号の説明】
【0035】
20 多層基板
22 絶縁層
24 金属層
25 金属層
26 ペーストビア
28 貫通穴
30 網目状に形成された樹脂
32 金属粒子
40 めっきビア
42 クラック
44 接着層
図1
図2
図3
図4
図5