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特開2023-69826複合体、二酸化炭素捕捉剤、及び複合体の製造方法
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  • 特開-複合体、二酸化炭素捕捉剤、及び複合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069826
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】複合体、二酸化炭素捕捉剤、及び複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20230511BHJP
   C07C 63/307 20060101ALI20230511BHJP
   C07F 5/06 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B01J20/22 A
C07C63/307
C07F5/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181977
(22)【出願日】2021-11-08
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆也
(72)【発明者】
【氏名】朝野 剛
(72)【発明者】
【氏名】酒井 求
(72)【発明者】
【氏名】松方 正彦
(72)【発明者】
【氏名】堀 隼太
【テーマコード(参考)】
4G066
4H006
4H048
【Fターム(参考)】
4G066AA20A
4G066AA20C
4G066AB07A
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066BA22
4G066BA32
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA01
4G066FA05
4G066FA21
4G066FA37
4G066FA40
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB80
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BS70
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB80
4H048VA80
4H048VB70
(57)【要約】
【課題】 金属有機構造体を金属酸化物の構造体に担持させた新規な複合体などの提供。
【解決手段】 金属酸化物の構造体と金属有機構造体とを有する複合体であって、
前記金属有機構造体が前記金属酸化物の構造体の表面に形成されており、
前記金属有機構造体を構成する金属元素(M1)のうちの少なくとも1種の金属元素(M1a)と、前記金属酸化物の構造体を構成する金属元素(M2)のうちの少なくとも1種の金属元素(M2a)とが、同じ金属元素である、
複合体。
【選択図】図9A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物の構造体と金属有機構造体とを有する複合体であって、
前記金属有機構造体が前記金属酸化物の構造体の表面に形成されており、
前記金属有機構造体を構成する金属元素(M1)のうちの少なくとも1種の金属元素(M1a)と、前記金属酸化物の構造体を構成する金属元素(M2)のうちの少なくとも1種の金属元素(M2a)とが、同じ金属元素である、
複合体。
【請求項2】
前記金属有機構造体の金属源の少なくとも1種が、前記複合体を製造する際に使用された前記金属酸化物の構造体である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記金属有機構造体の金属源の少なくとも90mol%が、前記複合体を製造する際に使用された前記金属酸化物の構造体である、請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記金属有機構造体を構成する前記金属元素(M1)が1種類であり、
前記金属酸化物の構造体を構成する前記金属元素(M2)が1種類であり、
前記金属元素(M1)と前記金属元素(M2)とが、同じ金属元素である、
請求項1から3のいずれかに記載の複合体。
【請求項5】
前記金属酸化物の構造体が、細孔を有する多孔構造体である、請求項1から4のいずれかに記載の複合体。
【請求項6】
前記金属酸化物の構造体における金属酸化物が、アルミナである、請求項1から5のいずれかに記載の複合体。
【請求項7】
前記金属元素(M1)が、Mg、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、及びZrの少なくともいずれかである、請求項1から5のいずれかに記載の複合体。
【請求項8】
前記金属元素(M1)及び前記金属元素(M2)が、Alであり、
前記金属酸化物の構造体における金属酸化物が、アルミナである、
請求項1から7のいずれかに記載の複合体。
【請求項9】
前記金属有機構造体が、MIL-96である、請求項1から8のいずれかに記載の複合体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の複合体を有する、二酸化炭素捕捉剤。
【請求項11】
金属酸化物の構造体が存在する溶液中で有機金属構造体が形成される工程を含む、複合体の製造方法であって、
前記溶液が、前記金属酸化物の構造体を構成する金属元素(M2)のうちの少なくとも1種の金属元素(M2A)の金属を、前記金属酸化物の構造体から溶出可能な溶液であり、
前記金属有機構造体を構成する金属元素(M1)のうちの少なくとも1種の金属元素(M1a)と、前記金属元素(M2A)のうちの少なくとも1種の金属元素(M2a)とが、同じ金属元素である、
複合体の製造方法。
【請求項12】
前記金属有機構造体の金属源の少なくとも1種が、前記複合体を製造する際に使用された前記金属酸化物の構造体である、請求項11に記載の複合体の製造方法。
【請求項13】
前記溶液中に存在し前記金属有機構造体の金属源となる金属の少なくとも90mol%が、前記金属酸化物の構造体に由来する金属である、請求項11又は12に記載の複合体の製造方法。
【請求項14】
前記金属有機構造体の金属源の少なくとも90mol%が、前記複合体を製造する際に使用された前記金属酸化物の構造体である、請求項11から13のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項15】
前記溶液が、配位子を含有する、請求項11から14のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項16】
前記溶液が、無機酸を含有する、請求項11から15のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項17】
前記無機酸が、硝酸を含む、請求項16に記載の複合体の製造方法。
【請求項18】
前記金属有機構造体を構成する前記金属元素(M1)が1種類であり、
前記金属酸化物の構造体を構成する前記金属元素(M2)が1種類であり、
前記金属元素(M1)と前記金属元素(M2)とが、同じ金属元素である、
請求項11から17のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項19】
前記金属酸化物の構造体が、細孔を有する多孔構造体である、請求項11から18のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項20】
前記金属酸化物の構造体における金属酸化物が、アルミナである、請求項11から19のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項21】
前記金属元素(M1)が、Mg、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、及びZrの少なくともいずれかである、請求項11から19のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項22】
前記金属元素(M1)及び前記金属元素(M2)が、Alであり、
前記金属酸化物の構造体における金属酸化物が、アルミナである、
請求項11から21のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項23】
前記金属有機構造体が、MIL-96である、請求項11から22のいずれかに記載の複合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体、二酸化炭素捕捉剤、及び複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素循環型社会の実現に向けて二酸化炭素の回収又は貯蔵のための素材の開発が急務となっている。
【0003】
その材料として金属イオンと有機多座配位子で構成され多孔質物質である金属有機構造体(Metal-organic framework, MOF)もしくは細孔性ネットワーク錯体(Porous Coordination Network, PCN)が注目されている(以降、MOFと総称する)。MOFは金属と有機配位子の組み合わせによる設計の柔軟性に富み、細孔構造や吸着特性を制御することが可能であり、設計可能性が高い。そこで、MOFは触媒やガス貯蔵、分離材料としての利用の可能性を秘めている(特許文献1、非特許文献1参照)。また、現在までに二酸化炭素吸着能を示すMOFが数多く報告されている(例えば、非特許文献2、3、4及び5参照)。
【0004】
MOFは、通常粉体または微結晶として得られる固体である。吸着材や固体触媒としての工業的な利用を考えた場合、一般的に粉体は取扱いが困難である。粉体を触媒として用いる場合であれば、固体物質に担持した固体触媒として調製する事で、反応後の生成物と触媒との分離を容易に行うことができる。
【0005】
固体吸着材を用いてガス分離を行う典型的な方法として、圧力スイング吸着方式(Pressure Swing Adsorption, PSA)や温度スイング吸着方式(Temperature Swing Adsorption, TSA)が挙げられる。これらはガス流通系システムであるため、吸着材として用いるためにはガス流で飛散しないように、賦形化されている事が必須である。PSAで吸着材として用いられる既存ゼオライトも製造直後は微粉体であるため、通常顆粒や柱状物などとして賦形化される。
【0006】
MOFの賦形化技術として、いくつかの方法が知られている。
例えば、非特許文献6には、マクロ細孔を有するシリカモノリスの細孔内にMOF(この場合、Cu(BTC)(ここで、BTCは1,3,5-ベンゼントリカルボン酸),Cu-BTC)を合成して得られる複合体が開示されている。
非特許文献7には、ベントナイト粘土とMOF(この場合、[CrO(OH)(-HO)(BDC)]・nHO(ここで、BDCは1,4-ベンゼンジカルボン酸),MIL-101(Cr))とのペーストを固めて成形することで得られる複合体が開示されている。
非特許文献8には、ポリマー(polyacrylonitrile, polystyreneおよびpolyvinylpyrrolidone)とMOF(この場合、ZIF-8, Mg-MOF-74, UiO-66-NH, MOF-199)との複合体が開示されている。
特許文献2には2官能基以上のアルコキシシランの共重合体いわゆるマシュマロゲルを用いたMOF(この場合、PCP-1(硝酸銅三水和物, 5-ヘプタフルオロプロピルイソフタル酸およびピリジンから合成))の複合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-109493号公報
【特許文献2】国際公開第2018/062504号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】北川進,集積型金属錯体,講談社サイエンティフィク,214-218頁(2001年)
【非特許文献2】Benoit, V. et al., J. Mater. Chem. A, 6 (2018) 2081-2090.
【非特許文献3】Chem. Eng. J. 2014, 239, 75-86.
【非特許文献4】Zhong Li et al, ACS Sustainable Chem.Eng. 8, 41, 15378-15404 (2020)
【非特許文献5】Calogero Giancarlo Piscopo et al, ChemPlusChem 85, 538-547 (2020).
【非特許文献6】Song et al.,“Porous Cu-BTC silica monoliths as efficient heterogeneous catalysts for the selective oxidation of alkylbenzenes”、RSC adv., 2014, 4, 30221-30224.
【非特許文献7】Hong et al.,“Manufacturing of metal-organic framework monoliths and their application in CO2 adsorption”、Micropor. Mesopor. Mater., 2015, 214, 149-155.
【非特許文献8】Y. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc. 138 (2016) 5785-5788.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、金属有機構造体を金属酸化物の構造体に担持させた新規な複合体、及びその製造方法、並びに当該複合体を有する二酸化炭素捕捉剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決する為、鋭意検討を行った結果、上記の課題を解決出来ることを見出し、以下の要旨を有する本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 金属酸化物の構造体と金属有機構造体とを有する複合体であって、
前記金属有機構造体が前記金属酸化物の構造体の表面に形成されており、
前記金属有機構造体を構成する金属元素(M1)のうちの少なくとも1種の金属元素(M1a)と、前記金属酸化物の構造体を構成する金属元素(M2)のうちの少なくとも1種の金属元素(M2a)とが、同じ金属元素である、
複合体。
[2] 前記金属有機構造体の金属源の少なくとも1種が、前記複合体を製造する際に使用された前記金属酸化物の構造体である、[1]に記載の複合体。
[3] 前記金属有機構造体の金属源の少なくとも90mol%が、前記複合体を製造する際に使用された前記金属酸化物の構造体である、[1]又は[2]に記載の複合体。
[4] 前記金属有機構造体を構成する前記金属元素(M1)が1種類であり、
前記金属酸化物の構造体を構成する前記金属元素(M2)が1種類であり、
前記金属元素(M1)と前記金属元素(M2)とが、同じ金属元素である、
[1]から[3]のいずれかに記載の複合体。
[5] 前記金属酸化物の構造体が、細孔を有する多孔構造体である、[1]から[4]のいずれかに記載の複合体。
[6] 前記金属酸化物の構造体における金属酸化物が、アルミナである、[1]から[5]のいずれかに記載の複合体。
[7] 前記金属元素(M1)が、Mg、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、及びZrの少なくともいずれかである、[1]から[5]のいずれかに記載の複合体。
[8] 前記金属元素(M1)及び前記金属元素(M2)が、Alであり、
前記金属酸化物の構造体における金属酸化物が、アルミナである、
[1]から[7]のいずれかに記載の複合体。
[9] 前記金属有機構造体が、MIL-96である、[1]から[8]のいずれかに記載の複合体。
[10] [1]から[9]のいずれかに記載の複合体を有する、二酸化炭素捕捉剤。
[11] 金属酸化物の構造体が存在する溶液中で有機金属構造体が形成される工程を含む、複合体の製造方法であって、
前記溶液が、前記金属酸化物の構造体を構成する金属元素(M2)のうちの少なくとも1種の金属元素(M2A)の金属を、前記金属酸化物の構造体から溶出可能な溶液であり、
前記金属有機構造体を構成する金属元素(M1)のうちの少なくとも1種の金属元素(M1a)と、前記金属元素(M2A)のうちの少なくとも1種の金属元素(M2a)とが、同じ金属元素である、
複合体の製造方法。
[12] 前記金属有機構造体の金属源の少なくとも1種が、前記複合体を製造する際に使用された前記金属酸化物の構造体である、[11]に記載の複合体の製造方法。
[13] 前記溶液中に存在し前記金属有機構造体の金属源となる金属の少なくとも90mol%が、前記金属酸化物の構造体に由来する金属である、[11]又は[12]に記載の複合体の製造方法。
[14] 前記金属有機構造体の金属源の少なくとも90mol%が、前記複合体を製造する際に使用された前記金属酸化物の構造体である、[11]から[13]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[15] 前記溶液が、配位子を含有する、[11]から[14]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[16] 前記溶液が、無機酸を含有する、[11]から[15]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[17] 前記無機酸が、硝酸を含む、[16]に記載の複合体の製造方法。
[18] 前記金属有機構造体を構成する前記金属元素(M1)が1種類であり、
前記金属酸化物の構造体を構成する前記金属元素(M2)が1種類であり、
前記金属元素(M1)と前記金属元素(M2)とが、同じ金属元素である、
[11]から[17]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[19] 前記金属酸化物の構造体が、細孔を有する多孔構造体である、[11]から[18]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[20] 前記金属酸化物の構造体における金属酸化物が、アルミナである、[11]から[19]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[21] 前記金属元素(M1)が、Mg、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、及びZrの少なくともいずれかである、[11]から[19]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[22] 前記金属元素(M1)及び前記金属元素(M2)が、Alであり、
前記金属酸化物の構造体における金属酸化物が、アルミナである、
[11]から[21]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[23] 前記金属有機構造体が、MIL-96である、[11]から[22]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属有機構造体を金属酸化物の構造体に担持させた新規な複合体、及びその製造方法、並びに当該複合体を有する二酸化炭素捕捉剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】比較例1で得られたMOF(MIL-96(Al))のPXRD測定結果である。
図2】実施例1で得られた複合体1のPXRD測定結果である。
図3】実施例1で得られた複合体1のガス吸着等温線である。
図4】実施例2で得られた複合体2のPXRD測定結果である。
図5】実施例2で得られた複合体2のガス吸着等温線である。
図6】実施例3で得られた複合体3のPXRD測定結果である。
図7】実施例3で得られた複合体3のガス吸着等温線である。
図8A】実施例1に用いた管状α-Alモノリスの表面SEM写真である。
図8B】実施例1に用いた管状α-Alモノリスの断面SEM写真である。
図9A】実施例1で得られた複合体の表面SEM写真である。
図9B】実施例1で得られた複合体の断面SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(複合体)
本発明の複合体は、金属酸化物の構造体と金属有機構造体とを有する。
複合体において、金属有機構造体は金属酸化物の構造体の表面に形成されている。
本発明の複合体おいては、金属有機構造体を構成する金属元素(M1)のうちの少なくとも1種の金属元素(M1a)と、金属酸化物の構造体を構成する金属元素(M2)のうちの少なくとも1種の金属元素(M2a)とが、同じ金属元素である。
【0014】
金属有機構造体の金属源の少なくとも1種は、複合体を製造する際に使用された金属酸化物の構造体であることが好ましい。これは、例えば、本発明の複合体が後述する本発明の複合体の製造方法により得られることを意味する。本発明の複合体の製造方法によると、金属酸化物の構造体中の金属を金属有機構造体の金属源として、金属酸化物の構造体の表面に金属有機構造体を形成する。その場合、金属酸化物の構造体と金属有機構造体との結合が強くなることが予想される。そのため、担体となる金属酸化物の構造体の表面から金属有機構造体が剥がれ落ちにくくなる点において、耐久性に優れる複合体であることが期待される。
この点において、複合体における金属有機構造体の金属源は、実質的に金属酸化物の構造体のみであることが好ましい。そのため、金属有機構造体の金属源の少なくとも90mol%が複合体を製造する際に使用された金属酸化物の構造体であることが好ましく、95mol%以上がより好ましく、99mol%以上が更により好ましく、100mol%が特に好ましい。
なお、ここでのmol%は金属換算のmol%を意味する。
【0015】
複合体においては、金属元素(M1)の全てが金属元素(M2)の全てと同じ金属元素であってもよい。
【0016】
金属有機構造体を構成する金属元素(M1)としては、特に限定されないが、例えば、Mg、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Tiが挙げられる。これらの中でも、Mg、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zrが好ましい。
金属有機構造体を構成する金属元素(M1)は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0017】
金属有機構造体を構成する金属元素(M1)は、好ましくは1種類である。この場合、金属元素(M1a)は金属元素(M1)である。
金属酸化物の構造体を構成する金属元素(M2)は、好ましくは1種類である。この場合、金属元素(M2a)は金属元素(M2)である。
この場合、金属元素(M1)と金属元素(M2)とは、同じ金属元素である。
【0018】
複合体における金属有機構造体(金属有機構造体粒子)の全て(全種及び全量)は金属酸化物の構造体の表面に形成されていることが好ましい。
なお、金属酸化物の構造体が細孔を有する場合、ここでの表面とは、細孔を形成する金属酸化物の表面も含む。
【0019】
<金属酸化物の構造体>
金属酸化物の構造体は、例えば、複合体における金属有機構造体の担体である。
金属酸化物の構造体が金属有機構造体の担体であることで、本発明の複合体は、有機ポリマーを金属有機構造体の担体とする複合体と比べて、耐熱性に優れる。
【0020】
金属酸化物の構造体を構成する金属元素(M2)としては、特に限定されないが、例えば、Mg、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Tiが挙げられる。これらの中でも、Mg、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zrが好ましい。
金属酸化物の構造体を構成する金属元素(M2)は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0021】
金属酸化物としては、例えば、MgO、Al3、Cr、Fe、Co、NiO、CuO、ZnO、ZrO、TiOなどが挙げられる。金属酸化物は複合酸化物であってもよい。複合酸化物としては、例えば、CaTiO、MgAl、2MgO・2Al・5SiOなどが挙げられる。
これらの中でも、金属酸化物は、アルミナ(Al)が好ましく、α-アルミナ(α-Al)がより好ましい。
【0022】
金属酸化物の構造体は、金属酸化物微粒子とは異なり、例えば、その形状が目視で認識できるような大きさを有している。
金属酸化物の構造体は、例えば、モノリスである。モノリスとは、骨格(材料部分)と空間とが連続的に一体型となった構造をいう。モノリス中の空間は、独立細孔であってもよいし、連続した貫通孔であってもよいし、それらが混在したものであってもよい。
金属酸化物の構造体は、細孔を有する多孔構造体であることが好ましい。
細孔の直径の平均値(平均細孔径)としては、特に制限されないが、10nm~10mmが好ましく、100nm~100μmがより好ましい。平均細孔径は、例えば、窒素ガスの吸着量測定により得られる吸着等温線から種々の計算式で導かれる。
また、金属酸化物の構造体は、ハニカム構造体であってもよい。ハニカム構造体とは、一方向に延びる複数の貫通孔を備えたハニカム構造を有する材料である。ハニカム構造は、多角形中空柱や円形中空柱を隙間なく並べた構造と考えることもできる。
【0023】
金属酸化物の構造体の形状(外形)としては、特に限定されないが、例えば、柱状、粒状、管状などが挙げられる。
【0024】
金属酸化物の構造体の大きさとしては、特に制限されないが、金属酸化物の構造体に外接する球の体積が、0.008mm以上であることが好ましく、0.06mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることが特に好ましい。
金属酸化物の構造体の大きさとしては、特に制限されないが、金属酸化物の構造体に外接する球の体積が、4,000,000,000mm以下であることが好ましく、1,500,000,000mm以下であることがより好ましく、500,000,000mm以下であることが特に好ましい。
金属酸化物の構造体の大きさとしては、特に制限されないが、金属酸化物の構造体に外接する球の体積が、0.008mm~4,000,000,000mmであることが好ましく、0.06mm~1,500,000,000mmであることがより好ましく、0.5mm~500,000,000mmであることが特に好ましい。
【0025】
金属酸化物の構造体の調製方法としては、特に限定されず、例えば、燃焼法、沈殿法等、公知のプロセスが挙げられる。
金属酸化物の構造体が成型体である場合、その調製方法としては、例えば、押し出し成型、鋳造、射出成型、プレス成型、3Dプリンティング等、公知の成型プロセスにより形成することができる。
【0026】
複合体における金属酸化物の構造体の含有量としては、特に限定されないが、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
複合体における金属酸化物の構造体の含有量としては、特に限定されないが、99.9質量%以下が好ましく、99.5質量%以下がより好ましく、99質量%以下が特に好ましい。
複合体における金属酸化物の構造体の含有量としては、特に限定されないが、50質量%~99.9質量%が好ましく、70質量%~99.5質量%がより好ましく、90質量%~99質量%が特に好ましい。
【0027】
<金属有機構造体>
金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framework)は、多孔質配位高分子(PCP:Porous Coordination Polymer)としても知られている。
金属有機構造体は、金属イオンと配位子の配位結合によって構成され、規則的な結晶構造を形成し、内部に多数の細孔を有する。金属イオンと配位子の組み合わせが多数存在するため、極めて多くの構造種類が報告されているが、この中から適切な種類の金属有機構造体を選択して使用することができる。
【0028】
金属有機構造体は、例えば、フレームワークを有する。フレームワークは、結節点となる金属又は金属化合物に配位子が配位結合を介して結合することにより構築される。
【0029】
金属有機構造体が含む金属イオンとしては、例えば、Mg2+、Al3+、Cr3+、Mn2+、Fe3+、Co3+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Zr4+、Ti4+などが挙げられる。これらの中でも、Mg2+、Al3+、Cr3+、Mn2+、Fe3+、Co3+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Zr4+が好ましい。
金属有機構造体が含む金属イオンは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0030】
配位子としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、モノアミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、アザベンゾイミダゾール及びこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種とすることができる。
モノカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、ピルビン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニレンジカルボン酸などが挙げられる。
トリカルボン酸としては、例えば、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸などが挙げられる。
テトラカルボン酸としては、例えば、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸などが挙げられる。
配位子は、必要に応じて骨格中に別の置換基として、ヒドロキシル基、アミノ基、メトキシ基、メチル基、ニトロ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基などを有することができる。
これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、トリカルボン酸が好ましく、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)がより好ましい。
【0031】
金属有機構造体としては、特に制限されず、例えば、ZIF-7、ZIF-7、ZIF-9、ZIF-22、MMOF、SIM-1、ZIF-90、ZIF95、ZIF78、ZIF-71、ZIF-69、MIL-96、MIL-100、MIL-53、HKUST-1(Cu-BTC)、MOF-5(IRMOF-1)、MIL-47、UiO-66などが挙げられる。これらの中でも、MIL-96が好ましい。MIL-96は、例えば、Al12O(OH)16(HO)[BTC]で表される(BTC:1,3,5-ベンゼントリカルボン酸)。
【0032】
金属有機構造体の大きさとしては、特に制限されないが、0.1μm~200μmであってもよいし、10μm~150μmであってもよいし、20μm~100μmであってもよい。
金属有機構造体の大きさは、例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)観察により求めることができる。例えば、複合体の表面をSEM観察し、得られたSEM写真から金属有機構造体粒子の外接円及びその直径を求める。そして、複数個(例えば、任意の50個)の金属有機構造体粒子の外接円の直径の算術平均値を金属有機構造体の大きさとすることができる。
【0033】
複合体における金属有機構造体の含有量としては、特に限定されないが、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が特に好ましい。
複合体における金属有機構造体の含有量としては、特に限定されないが、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
複合体における金属有機構造体の含有量としては、特に限定されないが、0.1質量%~50質量%が好ましく、0.5質量%~30質量%がより好ましく、1質量%~10質量%が特に好ましい。
【0034】
複合体における金属有機構造体(MOF)と金属酸化物の構造体(MO)との質量比率(MOF:MO)としては、特に限定されないが、0.1:99.9~50:50が好ましく、0.5:99.5~30:70がより好ましく、1:99~10:90が特に好ましい。
【0035】
複合体における金属酸化物の構造体と金属有機構造体の合計の含有量としては、特に制限されないが、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上%が特に好ましい。
複合体における金属酸化物の構造体と金属有機構造体の合計の含有量としては、特に制限されないが、90質量%~100質量%が好ましく、95質量%~100質量%がより好ましく、99質量%~100質量%が特に好ましい。
【0036】
複合体の大きさとしては、特に制限されないが、複合体に外接する球の体積が、0.008mm以上であることが好ましく、0.06mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることが特に好ましい。
複合体の大きさとしては、特に制限されないが、複合体に外接する球の体積が、4,000,000,000mm以下であることが好ましく、1,500,000,000mm以下であることがより好ましく、500,000,000mm以下であることが特に好ましい。
複合体の大きさとしては、特に制限されないが、複合体に外接する球の体積が、0.008mm~4,000,000,000mmであることが好ましく、0.06mm~1,500,000,000mmであることがより好ましく、0.5mm~500,000,000mmであることが特に好ましい。
【0037】
本発明の複合体を製造する方法としては、特に制限されないが、後述する本発明の複合体の製造方法が好ましい。
【0038】
<用途>
複合体の用途としては、特に限定されないが、例えば、ガス捕捉剤が挙げられる。ガス捕捉剤としては、例えば、二酸化炭素捕捉剤が挙げられる。
【0039】
(二酸化炭素捕捉剤)
本発明の二酸化炭素捕捉剤は、本発明の複合体を有する。二酸化炭素捕捉剤は、本発明の複合体自体であってもよい。
【0040】
二酸化炭素捕捉剤は、二酸化炭素を貯蔵することができる二酸化炭素貯蔵システムに好適に用いることができる。
【0041】
(複合体の製造方法)
本発明の複合体の製造方法は、金属酸化物の構造体が存在する溶液中で有機金属構造体が形成される工程(以下、「金属有機構造体形成工程」と称することがある)を含む。
【0042】
溶液は、金属酸化物の構造体を構成する金属元素(M2)のうちの少なくとも1種の金属元素(M2A)の金属を、金属酸化物の構造体から溶出可能な溶液である。
ここで、溶出可能とは、有機金属構造体が形成される工程の少なくともどこかの時点で、溶液中に、金属酸化物の構造体から溶出した金属元素(M2A)の金属(例えば、金属イオン)が存在していることを指す。溶液中の金属の存否は、例えば、溶液のICP(Inductively coupled. Plasma)発光分光分析を行うことで確認できる。
【0043】
金属有機構造体を構成する金属元素(M1)のうちの少なくとも1種の金属元素(M1a)と、金属酸化物の構造体を構成する金属元素(M2A)のうちの少なくとも1種の金属元素(M2a)とは、同じ金属元素である。
【0044】
なお、溶液中に溶解している成分は、例えば、配位子、金属(金属イオン)、酸などである。溶液中の金属酸化物の構造体については、金属酸化物の構造体から金属が溶出するものの、金属酸化物の構造体自体は溶液に溶解せず、その立体的構造をほぼ維持している。
【0045】
金属有機構造体の金属源の少なくとも1種は、複合体を製造する際に使用された金属酸化物の構造体であることが好ましい。本発明の複合体の製造方法によると、金属酸化物の構造体を金属有機構造体の金属源として、金属酸化物の構造体の表面に金属有機構造体を形成する。その場合、金属酸化物の構造体と金属有機構造体との結合が強くなることが予想される。そのため、担体となる金属酸化物の構造体の表面から金属有機構造体が剥がれ落ちにくくなる点において、耐久性に優れる複合体であることが期待される。
この点において、複合体における金属有機構造体の金属源は、実質的に金属酸化物の構造体のみであることが好ましい。そのため、金属有機構造体の金属源の少なくとも90mol%が複合体を製造する際に使用された金属酸化物の構造体であることが好ましく、95mol%以上がより好ましく、99mol%以上が更により好ましく、100mol%が特に好ましい。
なお、ここでのmol%は金属換算のmol%を意味する。
【0046】
上記のとおり複合体における金属有機構造体の金属源は、実質的に金属酸化物の構造体のみであることが好ましい。そのため、溶液中に存在し金属有機構造体の金属源となる金属は、実質的に金属酸化物の構造体中の金属のみでよい。その点から、溶液中に存在し金属有機構造体の金属源となる金属の少なくとも90mol%が金属酸化物の構造体に由来する金属であることが好ましく、95mol%以上がより好ましく、99mol%以上が更により好ましく、100mol%が特に好ましい。
言い換えれば、溶液は、金属酸化物の構造体以外の金属有機構造体の金属源を実質的に含有しないことが好ましい。例えば、溶液における、金属酸化物の構造体以外の金属有機構造体の金属源の割合は、溶液中に存在する金属有機構造体の全金属源の10mol%以下であることが好ましく、5mol%以下であることがより好ましく、1mol%以下であることが更により好ましく、0mol%であることが特に好ましい。
なお、ここでのmol%は金属換算のmol%を意味する。
ここで、溶液中に存在する金属とは、溶液中に存在するあらゆる状態の金属を意味し、金属そのものの状態で存在していてもよいし、金属塩又は金属化合物の状態で存在していてもよいし、イオンの状態でもよい。また、溶解していてもよいし、不溶解の状態で存在していてもよい。
【0047】
金属酸化物の構造体の具体例及び好適例としては、例えば、本発明の複合体の説明において挙げた金属酸化物の構造体の具体例及び好適例が挙げられる。
金属有機構造体の具体例及び好適例としては、例えば、本発明の複合体の説明において挙げた金属有機構造体の具体例及び好適例が挙げられる。
【0048】
溶液は、水溶液であることが好ましい。水溶液は、水と相溶する有機溶媒を含有していてもよい。水と相溶する有機溶媒としては、例えば、炭素数1~4のアルコールなどが挙げられる。
溶液は、溶媒以外に、例えば、配位子、酸などを含有する。なお、本明細書において、酸には、酸性の配位子は含まれない。
本発明の複合体の製造方法においては、通常、金属酸化物の構造体中の金属が金属有機構造体を構成する金属として利用される。そのため、溶液には、通常、金属有機構造体の金属源となる金属等を、金属酸化物の構造体以外に添加する必要はない。しかし、このことは、溶液に、金属酸化物の構造体以外の金属源が含有されていることを否定するものではない。
【0049】
金属有機構造体形成工程においては、通常、溶液は、金属有機構造体を構成するための配位子を含有する。
配位子の具体例及び好適例としては、例えば、本発明の複合体の説明において挙げた配位子の具体例及び好適例が挙げられる。
【0050】
溶液中の配位子の濃度としては、特に制限されないが、0.001mol/L(M)~10Mが好ましく、0.005M~5.0Mがより好ましく、0.01M~1.0Mが特に好ましい。
ここでの溶液中の配位子の濃度は、金属有機構造体形成工程が開始される際の濃度を指す。また、ここでの濃度は、例えば、25℃及び1atmでの濃度を指す。
【0051】
溶液は、好ましくは、酸を含有する。
配位子が酸性の場合、溶液は、酸を含有していなくても、金属元素(M2A)の金属を金属酸化物の構造体から溶出可能な溶液となりうる。しかし、配位子が弱酸性である場合や配位子の濃度が低い場合は、溶液は酸を含有することが好ましい。そうすることで、金属有機構造体の形成速度が速くなること、及び金属有機構造体の形成量が多くなることが期待できる。
【0052】
酸としては、有機酸、無機酸が挙げられる。
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸などが挙げられる。
無機酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、炭酸などが挙げられる。
【0053】
溶液中の酸の濃度としては、特に制限されないが、0mol/L(M)~10Mが好ましく、0.01M~5Mがより好ましく、0.1M~1.0Mが特に好ましい。
ここでの溶液中の酸の濃度は、金属有機構造体形成工程が開始される際の濃度を指す。また、ここでの濃度は、例えば、25℃及び1atmでの濃度を指す。
【0054】
溶液のpHとしては、特に制限されないが、7.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましい。
溶液のpHの下限値としては、特に制限されないが、溶液のpHは、0以上が好ましい。
ここでのpHは、金属有機構造体形成工程が開始される際の溶液のpHを指す。
本明細書において溶液のpHは、25℃及び1atmでの溶液のpHを指す。
【0055】
金属有機構造体形成工程中の溶液のpHの変化としては、特に制限されないが、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.0以下が特に好ましい。
金属有機構造体形成工程中の溶液のpHの変化とは、以下の式で表される。
pHの変化=B-A
A:金属有機構造体形成工程が開始される際の溶液のpH
B:金属有機構造体形成工程が終了した際の溶液のpH
【0056】
金属有機構造体形成工程は、金属有機構造体を形成する反応の進行が早い点で、高温高圧下で行うことが好ましい。その点において、金属有機構造体形成工程は、ソルボサーマル法で行うことが好ましい。ソルボサーマル法としては、ハイドロサーマル法(水熱合成法)が安価で製造できかつ環境適合性が高い点で好ましい。
【0057】
金属有機構造体形成工程における反応温度としては、特に限定されないが、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、150℃以上が特に好ましい。
また、金属有機構造体形成工程における反応温度としては、250℃以下が好ましく、220℃以下がより好ましく、200℃以下が特に好ましい。
【0058】
金属有機構造体形成工程における反応温度としては、特に限定されないが、加熱の時間としては、例えば、反応を完全に完成させる観点から、6時間以上、10時間以上、12時間以上、18時間以上、24時間以上、30時間以上、36時間以上、42時間以上、48時間以上、54時間以上、又は60時間以上であってよく、また96時間以下、84時間以下、72時間以下、60時間以下、48時間以下、24時間以下、12時間以下、又は10時間以下であってよい。
【0059】
反応終了後、得られた生成物に対して、適宜に後処理を行ってよい。
後処理として、例えば、得られた生成物を洗浄及びろ過することを行ってよい。
洗浄は、例えば、水、又は水とアルコールとの混合液を用いて行うことができる。
【0060】
また、ろ過後は適宜に乾燥させることによって、目的の複合体を得ることができる。ここで、乾燥は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよいが、効率向上の観点から減圧下で行うことが好ましい。また、乾燥する場合の温度は、例えば20℃以上、25℃以上、40℃以上、50℃以上、又は60℃以上であってよく、また100℃以下、90℃以下、80℃以下、又は60℃以下であってよい。乾燥する場合の乾燥時間は、例えば1時間以上、2時間以上、6時間以上、10時間以上、又は12時間以上であってよく、また24時間以下、又は16時間以下であってよい。
【実施例0061】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
<ガス吸着測定>
二酸化炭素(298K)の吸脱着等温線の測定にはマイクロトラック・ベルの全自動ガス吸着測定装置BELSORP MAX IIを用いた。具体的には以下のようにして測定を行った。
実施例1~3で合成したMIL-96(Al)モノリスをガラスの測定容器に入れ、測定装置に取り付けた。ロータリーポンプとターボ分子ポンプにより容器内を真空引きして、1kPa以下において423Kで3時間加熱することで細孔内の溶媒を取り除いた。
そのまま容器を装置から取り外さずに定容量型ガス吸着法により吸着量の測定を行った。実験結果の解析には解析プログラムBELMaster7(TM)を用いた。
【0063】
<粉末X線回折(PXRD)測定>
粉末X線回折測定にはリガク(Rigaku)試料水平型多目的X線回折装置 (Rigaku Ultima IV)を用いた。室温において、粉末試料にCuK特性X線(λ=1.5418Å)を照射した。
【0064】
<SEM測定>
SEM測定には走査型電子顕微鏡(S-480 HITACHI S-4800)を用いた。
【0065】
<MIL-96(Al)複合体中のAl転化率の算出方法>
A:原材料の管状α-AlモノリスのAl重量
ΔW:合成前後の全体重量変化量
MIL-96(Al)分子式:Al12O(OH)16(HO)[BTC]
(BTC=Trimesic acid)(MW:210.14g/mol)
Al:26.98g/mol
Al:Al以外の原子=1:4.51
MIL-96(Al)モノリスとして取り込まれたトリメシン酸量 B=(ΔW+D+F)
C=B×1/4.51:MOFに転換したAl量
D:溶液に溶解したAl量のAl換算量
E:粉末として合成されたMOF量(複合体に含まれないMOFの量)
F=E×1/(1+4.51)×101.96/53.96:粉末として合成されたMOF内のAl量のAl換算量
MIL-96(Al)モノリス中のAl 転化率[%]=C/A×100
【0066】
(比較例1)
<MIL-96の合成>
MIL-96の合成には、非特許文献2(Benoit, V. et al., J. Mater. Chem. A, 6 (2018) 2081-2090)に記載のデータを参照した。
【0067】
<PXRD>
MIL-96の粉末X線回折(PXRD)測定結果を、図1に示す。
【0068】
(実施例1)
<複合体1の合成>
MIL-96(Al)モノリス(複合体)の合成には、Al源として管状α-Alモノリス(直径10mm、内径7.0mm、長さ15mm、細孔径150nm)1.5gを用いた。
テフロン容器に蒸留水36.69g、トリメシン酸0.643g、及び70%硝酸1.649gを加え、353K(80℃)で80分間攪拌させた。その後、α-Alモノリス1.5gを入れ、オートクレーブを用いて密閉し、オーブンで453K(180℃)、72時間水熱合成を行った。なお、合成開始時の水溶液のpHは、25℃及び1atmにおいて、0.71であった。
水熱合成後、得られたモノリスをオーブンから取り出し、流水で急冷させた。冷却後、得られたモノリスを取り出し、常温のエタノール水溶液(50vol%)で3~4回すすぎ洗浄し、343Kで乾燥させてMIL-96(Al)モノリス(複合体1)を得た。重量測定の際は、383Kで2時間乾燥させたのちに行った。前記Al転化率算出方法より、複合体1のMOF含有率は5.9質量%であった。
なお、水熱合成後のオートクレーブ中の水溶液におけるAlの量は、132.7mgであった。
また、水熱合成後のオートクレーブ中の水溶液のpHは、25℃及び1atmにおいて、0.97であった。
【0069】
<PXRD>
複合体1の粉末X線回折(PXRD)測定結果を、図2に示す。
PXRDパターンは比較例1のMIL-96の粉体パターンとほぼ一致しており、複合体中のMOFが単一であることが分かった。
【0070】
<ガス吸着等温線>
複合体1の吸着等温線を、図3に示す。合成したMIL-96(Al)モノリスは25℃、100kPaにおいて、MOF1g当たり3.88mmolの二酸化炭素吸着量を示した。
【0071】
(実施例2)
<複合体2の合成>
MIL-96(Al)モノリス(複合体)の合成には、Al源として管状α-Alモノリス(直径10mm、内径7.0mm、長さ15mm、細孔径150nm)1.5gを用いた。
テフロン容器に蒸留水36.69g及びトリメシン酸0.643gを加え、353K(80℃)で80分間攪拌させた。その後、70%硝酸1.649g及びα-Alモノリス1.5gを入れ、オートクレーブを用いて密閉し、オーブンで453K(180℃)、72時間水熱合成を行った。なお、合成開始時の水溶液のpHは、25℃及び1atmにおいて、0.71であった。
水熱合成後、得られたモノリスをオーブンから取り出し、流水で急冷させた。冷却後、得られたモノリスを取り出し、常温のエタノール水溶液(50vol%)で3~4回すすぎ洗浄し、343Kで乾燥させてMIL-96(Al)モノリス(複合体2)を得た。重量測定の際は、383Kで2時間乾燥させたのちに行った。前記Al転化率算出方法より、複合体2のMOF含有率は4.2質量%であった。
なお、水熱合成後のオートクレーブ中の水溶液におけるAlの量は、126.9mgであった。
また、水熱合成後のオートクレーブ中の水溶液のpHは、25℃及び1atmにおいて、1.1であった。
【0072】
<PXRD>
複合体2の粉末X線回折(PXRD)測定結果を、図4に示す。
PXRDパターンは比較例1のMIL-96の粉体パターンとほぼ一致しており、複合体中のMOFが単一であることが分かった。
【0073】
<ガス吸着等温線>
複合体2の吸着等温線を、図5に示す。合成したMIL-96(Al)モノリスは25℃、100kPaにおいて、MOF1g当たり4.81mmolの二酸化炭素吸着量を示した。
【0074】
(実施例3)
<複合体3の合成>
MIL-96(Al)モノリス(複合体)の合成にはAl源として、管状α-Alモノリス(NS-1,直径10mm、内径7.0mm、長さ15mm、細孔径150nm)1.5gを用いた。
テフロン容器に蒸留水36.69g及びトリメシン酸0.643gを加え、353K(80℃)で80分間攪拌させた。その後、α-Alモノリス1.5gを入れ、アスピレーターを用いて脱気を行った。脱気後、70%硝酸1.649gを加え、オートクレーブを用いて密閉し、オーブンで453K(180℃)、72時間水熱合成を行った。なお、合成開始時の水溶液のpHは、25℃及び1atmにおいて、0.73であった。
水熱合成後、得られたモノリスをオーブンから取り出し、流水で急冷させた。冷却後、得られたモノリスを取り出し、常温のエタノール水溶液(50vol%)で3~4回すすぎ洗浄し、343Kで乾燥させてMIL-96(Al)モノリス(複合体3)を得た。重量測定の際は、383Kで数時間乾燥させたのちに行った。前記Al転化率算出方法より、複合体3のMOF含有率は9.1質量%であった。
なお、水熱合成後のオートクレーブ中の水溶液におけるAlの量は、66.3mgであった。
また、水熱合成後のオートクレーブ中の水溶液のpHは、25℃及び1atmにおいて、1.16であった。
【0075】
<PXRD>
複合体3の粉末X線回折(PXRD)測定結果を、図6に示す。
PXRDパターンは比較例1のMIL-96の粉体パターンとほぼ一致しており、複合体中のMOFが単一であることが分かった。
【0076】
<ガス吸着等温線>
複合体3の吸着等温線を、図7に示す。合成したMIL-96(Al)モノリスは25℃、100kPaにおいて、MOF1g当たり2.62mmolの二酸化炭素吸着量を示した。
【0077】
表1に結果をまとめた。
【0078】
【表1】
【0079】
また、実施例1に用いた管状α-Alモノリスの表面SEM写真を図8Aに示した。
実施例1に用いた管状α-Alモノリスの断面SEM写真を図8Bに示した。
実施例1で得られた複合体の表面SEM写真を図9Aに示した。
実施例1で得られた複合体の断面SEM写真を図9Bに示した。
これらから、実施例1で得られた複合体においては、金属酸化物の構造体(管状α-Alモノリス)の表面にMOFが形成されていることが確認できた。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B