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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069830
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】支援システム
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/40 20060101AFI20230511BHJP
   E21D 9/093 20060101ALI20230511BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
E21D11/40 B
E21D9/093 B
G01B11/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181981
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】505466295
【氏名又は名称】株式会社イクシス
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 文敬
(72)【発明者】
【氏名】狩野 高志
(72)【発明者】
【氏名】柳川 正和
(72)【発明者】
【氏名】宮岡 香苗
【テーマコード(参考)】
2D054
2D155
2F065
【Fターム(参考)】
2D054AC01
2D054AD19
2D054GA17
2D054GA25
2D054GA65
2D054GA82
2D054GA91
2D155BA01
2D155LA11
2D155LA13
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA53
2F065BB08
2F065CC40
2F065DD03
2F065FF12
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065MM16
2F065MM26
2F065MM28
2F065PP04
2F065PP22
2F065QQ18
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】シールド工法において構築されたセグメントリングに関する良否を高い精度で解析することによって、シールド工法を支援する支援システムを提供する。
【解決手段】支援システムは、セグメントリングの内周面をスキャンして三次元点群を取得する計測手段と、三次元点群を解析する解析手段と、を備え、解析手段は、基準位置から離間している距離が所定範囲に収まる点群を抽出して、セグメントリングに相当する円筒モデルを生成し、円筒モデルの周回方向、当該周回方向に対する垂直方向、及び基準位置からの離間方向のそれぞれを、三次元空間における三軸方向のそれぞれに変換することによって、円筒モデルを平面展開し、平面展開した点群を解析して、前記セグメントリングの良否判定に関する解析結果を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機が掘削することによって形成された空洞内にセグメントを組み合わせてセグメントリングを構築してトンネルを延伸するシールド工法を支援する支援システムであって、
前記セグメントリングの内周面をスキャンして、前記内周面に係る三次元点群を取得する計測手段と、
前記計測手段によって取得された前記三次元点群を解析する解析手段と、
を備え、
前記解析手段は、
前記セグメントリングの中心位置又はスキャン時における前記計測手段の存在位置のいずれかである基準位置から離間している距離が所定範囲に収まる点群を前記三次元点群の中から抽出して、前記セグメントリングに相当する円筒モデルを生成し、
前記円筒モデルの周回方向、当該周回方向に対する垂直方向、及び前記基準位置からの離間方向のそれぞれを、三次元空間における三軸方向のそれぞれに変換することによって、前記円筒モデルを平面展開し、
前記円筒モデルを平面展開した点群を解析して、前記セグメントリングの良否判定に関する解析結果を出力する、
ことを特徴とする支援システム。
【請求項2】
前記解析手段は、
前記円筒モデルを平面展開した点群を解析して、前記セグメントリングを構成する複数の前記セグメントのそれぞれに相当する点群を識別し、
識別した前記セグメントに相当する点群のそれぞれについて、前記基準位置からの離間距離を表した分布図を生成し、
生成した分布図を前記解析結果として出力する、
請求項1に記載の支援システム。
【請求項3】
前記解析手段は、
前記円筒モデルを平面展開した点群を解析して、前記セグメントリングを構成する複数の前記セグメントのそれぞれに相当する点群を識別し、
識別した前記セグメントに相当する点群のそれぞれを、個別の剛体平板として推定した平面モデルを生成し、
生成した前記平面モデルのそれぞれについて、前記基準位置からの離間距離を表した分布図を生成し、
生成した分布図を前記解析結果として出力する、
請求項1又は2に記載の支援システム。
【請求項4】
前記解析手段は、
前記円筒モデルを平面展開した点群を解析して、前記セグメントリングの良否判定に用いる判定値を算出し、
算出した前記判定値の分布図を生成し、
生成した分布図を前記解析結果として出力する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の支援システム。
【請求項5】
前記判定値は、隣接する前記セグメント間における目開きの寸法又は目違いの寸法のうち少なくとも一方である、
請求項4に記載の支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法によるトンネルの施工を支援する支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シールドマシンと呼ばれる機械を用いて地山を掘削し、掘削して形成された穴の周囲に、セグメントと呼ばれるブロック状の壁をリング状に組み立ててトンネルを施工する工法が一般的に知られており、当該工法はシールド工法と呼ばれる。
上記のシールド工法によるトンネルの施工に適用される測量技術として、特許文献1及び特許文献2に開示されている技術がある。
【0003】
特許文献1には、組み立てたセグメントに対して、組み付け状態に関わる物理量を検出するセンサ部を着脱可能に取り付け、無線回線を介してデータ収集を行うことにより、適正にセグメントが組み立てられていることを管理する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、シールド工法によってリング状に組み立てられたセグメント(セグメントリング)内に三次元計測器を設置し、計測点の中からセグメントリングの内周面に相当する点群を抽出し、抽出した点群の座標位置に基づいて内周面の真円度を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-327172号公報
【特許文献2】特開2020-12764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に例示したように、レーザースキャナ等の三次元計測器を用いてセグメントリングの内周面を測量した場合、その内周面に相当する点群の座標位置の精度は、それぞれの点によってバラツキがあり、計測対象となるセグメントリングの形状を適正に捉えることができず、測量の精度が低下する場合があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、シールド工法において構築されたセグメントリングに関する良否を解析することによって、シールド工法によるトンネルの施工を支援する支援システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、シールド機が掘削することによって形成された空洞内にセグメントを組み合わせてセグメントリングを構築してトンネルを延伸するシールド工法を支援する支援システムであって、前記セグメントリングの内周面をスキャンして、前記内周面に係る三次元点群を取得する計測手段と、前記計測手段によって取得された前記三次元点群を解析する解析手段と、を備え、前記解析手段は、前記セグメントリングの中心位置又はスキャン時における前記計測手段の存在位置のいずれかである基準位置から離間している距離が所定範囲に収まる点群を前記三次元点群の中から抽出して、前記セグメントリングに相当する円筒モデルを生成し、前記円筒モデルの周回方向、当該周回方向に対する垂直方向、及び前記基準位置からの離間方向のそれぞれを、三次元空間における三軸方向のそれぞれに変換することによって、前記円筒モデルを平面展開し、前記円筒モデルを平面展開した点群を解析して、前記セグメントリングの良否判定に関する解析結果を出力する、ことを特徴とする支援システムが提供される。
【0009】
上記の発明は、セグメントリングに相当する点群を抽出して円筒モデルを生成した後に、その円筒モデルを平面展開してから、そのセグメントリングの良否判定に関する解析結果を出力するので、その解析精度を担保することができる。
また、解析者が、容易に解析結果を認識可能となる形式によって解析結果を出力することができる。
【発明の効果】
【0010】
シールド工法において構築されたセグメントリングに関する良否を解析することによって、シールド工法によるトンネルの施工を支援する支援システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る測量のアルゴリズムを示すフローチャートである。
図2】測量ロボットとセグメントリングの位置関係を示す模式図である。
図3】測量ロボットの構成図である。
図4】測定対象として切り出したセグメントリングの具体例を示す図である。
図5】生成されるマップの具体例を示す図である。
図6】生成されるマップの具体例を示す図である。
図7】セグメント間における目開きと目違いを示す模式図である。
図8】目開きと目違いの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0013】
本発明の実施について、図1に図示した実行手順(アルゴリズム)に沿って説明する。
図1は、本発明に係る測量のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【0014】
本発明に係る測量は、シールド機が掘削することによって形成された空洞内にセグメントを組み合わせてセグメントリングを構築してトンネルを延伸するシールド工法を支援するものであり、測量ロボット100と解析装置200によって実行される。
測量ロボット100は、レーザースキャナ10を搭載しており、対象となるセグメントリングの内周面をスキャンして、その内周面に係る三次元点群を取得することができ、本発明に係る計測手段に相当する。
解析装置200は、測量ロボット100による計測によって取得された三次元点群を解析するコンピュータであり、本発明に係る解析手段に相当する。
なお、解析装置200は後述するステップS2~ステップS8の処理を実行するコンピュータの総称であり、必ずしも一の装置によって全ての処理が実行される必要はなく、複数の装置によって各処理の実行を分担してもよい。
【0015】
ステップS1において、トンネル内に配置された測量ロボット100が、トンネル内に構築されたセグメントリングの内周面を計測する。ステップS1の計測結果は、上述したように、三次元点群として取得される。
【0016】
図2は、測量ロボット100とセグメントリングの位置関係を示す模式図である。より具体的には、図2(a)は昇降装置20が収縮している状態においてレーザースキャナ10がセグメントリングにレーザーを照射している様子が描かれており、図2(b)は昇降装置20が伸長している状態においてレーザースキャナ10がセグメントリングにレーザーを照射している様子が描かれている。
図3は、測量ロボット100の構成図である。
測量ロボット100は、レーザースキャナ10と、昇降装置20と、アウトリガ30と、台車40と、を組み合わせた装置である。
昇降装置20は、伸縮することによって、レーザースキャナ10の位置を昇降させる。
アウトリガ30は、レーザースキャナ10の位置が高くなる(昇降装置20が伸長する)ことに伴って重心が高くなった際に、測量ロボット100の機体を安定させる機構である。また、アウトリガ30は、脚部の長さを調整自在に構成されており、仮に接地面が傾斜していても、測量ロボット100の機体を水平にすることができる。
台車40は、レーザースキャナ10、昇降装置20、アウトリガ30を搭載して移動するための車輪が付いた機構である。図3では、手押しによって走行する態様の台車を図示するが、遠隔操作によって走行する態様又は自律走行する態様の台車に代えてもよい。
【0017】
ステップS1において測量ロボット100が三次元点群を取得する際、図2(a)に図示するようにレーザースキャナ10が低い位置(地面に近い位置)にある場合、当該位置からレーザーを照射すると、セグメントリングの天頂付近の測定点に対する入射角θは概ね垂直になるものの、他の測定点に対する入射角θ~θは鋭角になり、それぞれの入射角にバラツキが生じる。また、図2(a)には図示しないが、実際の施工現場には、地面に様々な物体が置かれており、レーザースキャナ10から測定対象となるセグメントリングまでの間にレーザーを遮蔽する物体が存在すると、その物体の影になる部分にはレーザーが届かず、計測ができない。
上記のような要因のために、低い位置におけるレーザースキャナ10の計測は精度が低くなりがちである。
【0018】
一方で、ステップS1において測量ロボット100が三次元点群を取得する際、図2(b)に図示するようにレーザースキャナ10が高い位置(セグメントリングの中心位置の近傍)にある場合、当該位置からレーザーを照射すると、セグメントリングの測定点に対する入射角θ'~θ'はいずれも概ね垂直になり、入射角の均一性を担保できる。また、高い位置からのレーザーの照射は、レーザースキャナ10から測定対象となるセグメントリングまでの間にレーザーを遮蔽する物体が少なくなり、計測不能となる場所が減る。
従って、高い位置(セグメントリングの中心位置の近傍)におけるレーザースキャナ10の計測は、比較的精度が高くなる。
【0019】
ステップS2において、解析装置200が、ステップS1で取得した三次元点群の中から、測定対象となるセグメントリングが存在する範囲の点群を切り出す。なお、本実施形態において測定対象となる指標には、セグメント間の目開き及び目違いの寸法が含まれているので、ステップS2において、解析装置200は、少なくとも1枚分のセグメントリング1枚分の幅寸法(トンネルの延伸方向の寸法)を超える範囲、すなわち測定対象となるセグメントリングと、それに隣接するセグメントリングの縁を含む範囲を含む点群を切り出す必要がある。
ステップS2の処理によって、ステップS3以降に処理される点群を減らすことができ、解析装置200の処理負荷を低減することができる。
【0020】
図4は、測定対象として切り出したセグメントリングの具体例を示す図である。
図4に図示されるとおり、本実施形態ではトンネルの延伸方向に隣接する5枚分のセグメントリングに相当する点群が切り出されている。また、切り出された点群は、組み立てられたセグメントリングの他に、施工現場に設置されている他の物体に係る点群も含まれている。
【0021】
ステップS3において、解析装置200は、ステップS2において切り出された点群からセグメントリングの形状(円筒形状)を構成する点群を抽出し、セグメントリング以外の物体に係る点群を排除する。ステップS3において抽出される点群を、以下の説明において円筒モデルと呼称する。
ステップS3において円筒モデルを抽出する処理には、トンネル内径の設計値が用いられる。具体的には、解析装置200は、トンネルの中心位置(すなわち、セグメントリングの中心位置)を基準位置とし、その基準位置から離間している距離が所定範囲(トンネル内径の設計値の±数センチの範囲)に収まる点群を、ステップS2において切り出した点群から抽出して、セグメントリングに相当する点群からなる円筒モデルを生成する。
なお、上記の処理は、セグメントリングの中心位置を基準位置としてもよいが、ステップS1における測定時においてレーザースキャナ10が存在した位置が、セグメントリングの中心位置と同一と見做せるほどに近しい場合には、レーザースキャナ10の存在位置を基準位置として扱ってもよい。
【0022】
ステップS4において、解析装置200は、ステップS3において抽出された円筒モデルを平面状に展開する。
ステップS4において平面展開する処理は、平面展開する前の点群(すなわち、円筒モデルに相当する点群)の座標情報を、平面上の座標情報に変換する処理である。より具体的には、解析装置200は、円筒モデルの周回方向、当該周回方向に対する垂直方向、及び基準位置からの離間方向のそれぞれを、三次元空間における三軸方向のそれぞれに変換する。
このとき、円筒モデルに相当する点群に係る基準位置からの離間方向の座標が、後述する平面モデルの厚さ方向の座標に変換される点が本発明の実施において重要であり、ステップS4の処理は三次元の座標情報を有する点群を二次元に次元圧縮する処理ではない点に留意する必要がある。後述する目違いの寸法は、平面モデルの厚さ方向の寸法に相当するからである。
【0023】
ステップS5において、解析装置200は、ステップS4において平面展開された点群を解析して、セグメントリングを構成する複数のセグメントのそれぞれに相当する点群を識別し、識別したセグメントごとに識別情報(ID)を割り当てる。
【0024】
ステップS6において、解析装置200は、ステップS5において識別されたセグメントのそれぞれに相当する点群を、個別の剛体平板と見做す推定処理を実行する。ステップS6において剛体平板として推定されたセグメントのそれぞれを、以下の説明において平面モデルと呼称する。
平面モデルは、剛体平板と見做された仮想的な三次元モデルであるため、点群を対象とする解析とは異なり、面としての解析(サーフェス解析)又は線としての解析(ライン解析)の対象にすることが可能である。
【0025】
ステップS7において、解析装置200は、ステップS5において識別されたセグメントのうち対象となるセグメントに相当する点群又は当該セグメントに対応する平面モデル(ステップS6において生成されたもの)を解析して、所定の形式の分布図を生成し、生成した分布図を出力する。ステップS7において生成される分布図のそれぞれを、以下の説明においてマップと呼称する。
本実施形態に係る解析装置200が生成するマップは4種類あり、それぞれ図5及び図6に図示する。なお、ここで図示する各マップは、解析装置200によって出力される解析結果の出力形式の具体例に過ぎない。従って、本発明の実施において、解析装置200は上記図面に図示した全ての形式を必ずしも出力可能である必要はない。また、本発明の実施において、解析装置200は図示しない別の形式の解析結果を出力してもよい。
【0026】
図5(a)に係るマップは、測定の対象となるセグメント(同図の中央に図示されるセグメント)及び当該セグメントに隣接するセグメントに相当する点群のそれぞれについて基準位置からの離間距離を算出し、算出された離間距離の分布を表している。当該マップは、色の濃淡で離間距離を示し、濃いほど離間距離が大きいことを示し、淡いほど離間距離が小さいことを示している。なお、当該マップにおいて白抜きの部分は、測定の対象となるセグメント及び当該セグメントに隣接するセグメントのいずれも存在しない部分、セグメント間の継ぎ目部分、又は、ステップS3において抽出されなかった点群(セグメントの組立てに用いられたボルト等が存在するため抽出範囲から外れる点群)が存在する部分のいずれかに該当する。
【0027】
図5(b)に係るマップは、図5(a)に図示されたセグメントに対応する平面モデルのそれぞれについて、基準位置からの離間距離の分布を表している。当該マップは、色の濃淡で離間距離を示し、濃いほど離間距離が大きいことを示し、淡いほど離間距離が小さいことを示している。
なお、同一のセグメントに対応する平面モデル内で、色の濃淡が生じているのは、淡い部分から濃い部分に向けて当該セグメントが傾いていることによるものである。
【0028】
図6(a)に係るマップは、測定の対象となるセグメント(同図の中央に図示されるセグメント)及び当該セグメントに隣接するセグメントの間に生じている目開きの寸法の分布を表している。
図6(b)に係るマップは、図6(a)に図示されたセグメント間に生じている目違いの寸法の分布を表している。
それぞれのマップは、色の濃淡で目開き又は目違いの寸法の大小を示し、濃いほど寸法が大きいことを示し、淡いほど寸法が小さいことを示している。
【0029】
本実施形態において、解析装置200がセグメントリングの良否判定に用いる判定値は、目開きの寸法及び目違いの寸法であるため、図6(a)及び図6(b)のマップは、当該良否判定に用いる判定値の分布図であるものと言える。
ただし、セグメントリングの良否判定に用いる判定値は、上記の例に限られず、例えば、各セグメントの基準位置からの離間距離を、セグメントリングの良否判定に用いてもよく、この変形例においては、図5(a)及び図5(b)に係るマップが、当該良否判定に用いる判定値の分布図であるものと言える。
【0030】
ここで目開き及び目違いの概念について、図7を用いて説明する。
シールド工法において、シールド機によって掘削されて形成された空洞内にセグメントリングを組み立ててトンネルが施工されることは上述したとおりである。ここで、セグメントリングを組み立てる際には、セグメント間には間隙と段差が生じる。
【0031】
図7(a)は、セグメントに対向する側からの視点で図示した模式図である。
図7(a)に図示されるセグメント間に生じる間隙W1は、この技術分野において、継ぎ手部目開きと呼ばれる。実際の施工において、隣接するセグメントが完全に平行となることはないため、継ぎ手部目開き(間隙W1)の寸法は同じセグメント間であっても測定点によって変化する。
図7(b)は、図7(a)に図示した間隙W1付近におけるセグメントの断面を図示した模式図である。図7(b)に図示されるセグメント間に生じる段差W2は、この技術分野において、目違いと呼ばれる。継ぎ手部目開き(間隙W1)の寸法と同様に、実際の施工において、目違い(段差W2)の寸法は同じセグメント間であっても測定点によって変化する。
図7(b)は、継ぎ手部目開き(間隙W1)と目開き(間隙W3)の関係も図示している。同図に図示されているとおり、目開き(間隙W3)の寸法に対してセグメントと継ぎ手の形状で決まる寸法を足した値が、継ぎ手部目開き(間隙W1)の寸法に等しくなる。
【0032】
なお、本実施形態では、セグメントの継ぎ手部の形状が図7(b)のようになっているので、継ぎ手部目開き(間隙W1)の寸法と目開き(間隙W3)の寸法に差異が認められるが、これらの寸法が概ね同じとなるセグメントの形状も存在する。このようなセグメントを対象として本発明を実施する場合、セグメントリングの内周面側の間隙も、その反対側の間隙も、それぞれ区別なく目開きとして扱うことができる。
【0033】
ステップS8において、解析装置200は、解析者が指定した測定点における目開き及び目違いの解析結果を抽出し、抽出した解析結果を出力する。ステップS8における解析結果とは、ステップS7において生成された図6(a)及び図6(b)に係るマップ生成のために計算された目開き及び目違いの寸法のうち、解析者が指定した測定点に関するものを、解析者が認識容易となる形式で表したものであり、具体的には、図8に図示する表示である。
【0034】
図8に図示される各点は、その測定点の近傍に存在する点群(レーザースキャナ10により取得された計測結果)を表している。
図8に図示される右側の直線と左側の直線は、その測定点において隣接するセグメントに対応する平面モデルの表面(元はセグメントリングの内周面に相当する側の面)を表している。
図8に図示される網掛け部分は、縦軸が目違い(図7(b)に図示する段差W2に相当)の寸法を表しており、横軸が継ぎ手部目開き(図7(b)に図示する間隙W1に相当)の寸法を表している。
【0035】
図8に図示するように、点群を基準にして継ぎ手部目開き及び目違いの寸法を算出しようとすると、いずれの点を基準にすると適切に目開き及び目違いの寸法を算出できるのか定めがたく、解析精度を低下させる要因になる。
一方で、平面モデルの表面を基準にすると、継ぎ手部目開き及び目違いの寸法を明確に算出することができ、解析精度を向上させる。
【0036】
本発明に係る解析装置200は、以上のようなアルゴリズムによって本発明に係る測量を実行してセグメントリングの良否判定に関する解析を行うので、高い精度で解析結果を求めることができる。
また、本発明に係る解析装置200は、解析者が認識容易となる形式で、求めた解析結果を出力することができる。
【0037】
<その他の変形例>
本発明の実施は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形、改良等が可能である。以上の説明で記載されていない変形例について、以下に列挙する。
【0038】
上述の実施形態において、継ぎ手部目開きの寸法及び目違いの寸法を、セグメントリングの良否判定に用いる判定値とする解析結果を例示したが、これらに加えて目開きの寸法を当該判定値であるものとして、本発明が実施されてもよい。
【0039】
上述の実施形態において解析装置200が出力する解析結果の形式は、一具体例に過ぎず、本発明の目的を達成する範囲において、他の形式によって解析結果を出力することが許容される。
【0040】
<付記>
本実施形態は、次のような技術思想を包含する。
(1)シールド機が掘削することによって形成された空洞内にセグメントを組み合わせてセグメントリングを構築してトンネルを延伸するシールド工法を支援する支援システムであって、前記セグメントリングの内周面をスキャンして、前記内周面に係る三次元点群を取得する計測手段と、前記計測手段によって取得された前記三次元点群を解析する解析手段と、を備え、前記解析手段は、前記セグメントリングの中心位置又はスキャン時における前記計測手段の存在位置のいずれかである基準位置から離間している距離が所定範囲に収まる点群を前記三次元点群の中から抽出して、前記セグメントリングに相当する円筒モデルを生成し、前記円筒モデルの周回方向、当該周回方向に対する垂直方向、及び前記基準位置からの離間方向のそれぞれを、三次元空間における三軸方向のそれぞれに変換することによって、前記円筒モデルを平面展開し、前記円筒モデルを平面展開した点群を解析して、前記セグメントリングの良否判定に関する解析結果を出力する、ことを特徴とする支援システム。
(2)前記解析手段は、前記円筒モデルを平面展開した点群を解析して、前記セグメントリングを構成する複数の前記セグメントのそれぞれに相当する点群を識別し、識別した前記セグメントに相当する点群のそれぞれについて、前記基準位置からの離間距離を表した分布図を生成し、生成した分布図を前記解析結果として出力する、(1)に記載の支援システム。
(3)前記解析手段は、前記円筒モデルを平面展開した点群を解析して、前記セグメントリングを構成する複数の前記セグメントのそれぞれに相当する点群を識別し、識別した前記セグメントに相当する点群のそれぞれを、個別の剛体平板として推定した平面モデルを生成し、生成した前記平面モデルのそれぞれについて、前記基準位置からの離間距離を表した分布図を生成し、生成した分布図を前記解析結果として出力する、(1)又は(2)に記載の支援システム。
(4)前記解析手段は、前記円筒モデルを平面展開した点群を解析して、前記セグメントリングの良否判定に用いる判定値を算出し、算出した前記判定値の分布図を生成し、生成した分布図を前記解析結果として出力する、(1)から(3)のいずれか一つに記載の支援システム。
(5)前記判定値は、隣接する前記セグメント間における目開きの寸法又は目違いの寸法のうち少なくとも一方である、(4)に記載の支援システム。
【符号の説明】
【0041】
100 測量ロボット
200 解析装置
10 レーザースキャナ
20 昇降装置
30 アウトリガ
40 台車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8