(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069835
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】海底構造物検出システムおよび海底構造物検出方法
(51)【国際特許分類】
G01V 3/08 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
G01V3/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181995
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】馬島 八世
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB05
2G105DD02
2G105EE01
2G105FF13
2G105HH04
2G105KK06
(57)【要約】
【課題】海底構造物から発せられる磁気の大きさが小さいこと、および、海底構造物の周囲の磁気ノイズに起因して、海底構造物の検出が困難になることを抑制することが可能な海底構造物検出システムを提供する。
【解決手段】この海底構造物検出システム100は、海底81に設けられた海底構造物90を検出する海底構造物検出システムであって、海底構造物90に設けられた電線1と、一方の端子2aが電線1と接続する電流源2と、海中の磁気に基づく磁気信号30を出力する磁気センサ3と、電流源2によって電線1に電流が流れた状態において、電流に起因する磁気信号30に基づいて海底構造物90の有無を判別する判別部10aと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底に設けられた海底構造物を検出する海底構造物検出システムであって、
前記海底構造物に設けられた電線と、
一方の端子が前記電線と接続する電流源と、
海中の磁気に基づく磁気信号を出力する磁気センサと、
前記電流源によって前記電線に電流が流れた状態において、電流に起因する前記磁気信号に基づいて前記海底構造物の有無を判別する判別部と、を備える、海底構造物検出システム。
【請求項2】
前記電流源は、前記電線に印加する電流を時間毎に変化させるように構成されており、
前記判別部は、電流に起因する前記磁気信号の変化に基づいて、前記海底構造物の有無を判別するように構成されている、請求項1に記載の海底構造物検出システム。
【請求項3】
前記電流源は、前記電線に対して交流電流を印加するように構成されており、
前記磁気センサは、前記電線から発せられる交流電流に起因する交流磁界を検知するように構成されている、請求項1または2に記載の海底構造物検出システム。
【請求項4】
前記判別部は、前記磁気センサが検知した前記交流磁界と、前記電流源から前記電線に対して印加される前記交流電流の周波数とに基づいて、前記交流磁界のうちの前記交流電流に起因する成分の信号である同期検波信号を取得するとともに、取得した前記同期検波信号に基づいて、前記海底構造物の有無を判別するように構成されている、請求項3に記載の海底構造物検出システム。
【請求項5】
前記電流源の他方の端子と接続され、海中に設けられる金属板をさらに備え、
前記電線のうち、前記電流源と接続されていない端部は、被覆が剥がされた状態で海中に設けられており、
海水を介して、前記電流源と接続されていない端部と前記金属板との間で電流が流れるように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の海底構造物検出システム。
【請求項6】
前記金属板は、前記電線とは異なる大きさのイオン化傾向を有する金属によって形成される、請求項5に記載の海底構造物検出システム。
【請求項7】
前記海底構造物は、海底に沿って延びる長尺物であり、
前記電線は、前記海底構造物が延びる方向に沿って、前記海底構造物の外表面において直線状に設けられている、請求項1~6のいずれか1項に記載の海底構造物検出システム。
【請求項8】
前記海底構造物は、海底に沿って延びる長尺物であり、
前記電線は、前記海底構造物が延びる軸線周りの回転方向に巻き回すように、前記海底構造物の外表面に設けられている、請求項1~6のいずれか1項に記載の海底構造物検出システム。
【請求項9】
前記磁気センサが設けられ、前記磁気センサを移動させる移動体をさらに備え、
前記磁気センサは、前記移動体によって移動されながら測定した前記磁気信号を出力するように構成されており、
前記判別部は、前記磁気センサが移動されながら測定した前記磁気信号に基づいて、前記海底構造物の配置状態を取得するように構成されている、請求項5または6に記載の海底構造物検出システム。
【請求項10】
前記海底構造物は、海底に設けられたパイプラインであり、
前記判別部は、前記パイプラインの有無を判別するように構成されている、請求項7~9のいずれか1項に記載の海底構造物検出システム。
【請求項11】
前記判別部は、前記磁気信号の大きさに基づいて、前記海底構造物の深さ位置を検知するように構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の海底構造物検出システム。
【請求項12】
海底に設けられた海底構造物を検出する海底構造物検出方法であって、
電流源の一方の端子と接続され、前記海底構造物に設けられた電線に対して電流を流すステップと、
前記電流源から前記電線に対して電流が流れた状態において、海中に設けられた磁気センサによって出力された、海中の磁気に基づく磁気信号を取得するステップと、
電流に起因する前記磁気信号に基づいて、前記海底構造物の有無を判別するステップと、を備える、海底構造物検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底構造物検出システムおよび海底構造物検出方法に関し、海底に沿って磁気センサを移動させながら海底に設けられた海底構造物を検出する海底構造物検出システム、および、海底構造物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海底に沿って磁気センサを移動させながら、海底に設けられた海底構造物を検出する海底構造物検出システム、および、海底構造物検出方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、海底に沿って移動しながら、海底に設けられた海底構造物を磁気を用いて検出する磁気探査装置(海底構造物検出システム)が開示されている。上記特許文献1に開示されている磁気探査装置は、磁気センサが上下2段以上に組み合わされた組センサを備えている。上記特許文献1に開示されている磁気探査装置は、組センサを少なくとも1対互いに同一平面上で平行に対向するように配置する。また、上記特許文献1に開示されている磁気探査装置は、調査船によって曳航されることによって海底に沿って移動しながら海底に埋設された海底パイプラインから発せられる磁気を検出することにより、海底パイプラインを検出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている構成では、海底パイプライン(海底構造物)から発せられる磁気に基づいて、海底構造物の検出を行うため、海底構造物から発せられる磁気の大きさが小さい場合、海底構造物の検出が困難になるという不都合がある。また、上記特許文献1に開示されている構成では、海底構造物の周囲の磁気ノイズの大きさが大きい場合、海底構造物から発せられる磁気の大きさが相対的に小さくなるため、海底構造物の検出が困難になるという不都合がある。したがって、海底構造物から発せられる磁気の大きさが小さいこと、および、海底構造物の周囲の磁気ノイズに起因して、海底構造物の検出が困難になるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、海底構造物から発せられる磁気の大きさが小さいこと、および、海底構造物の周囲の磁気ノイズに起因して、海底構造物の検出が困難になることを抑制することが可能な海底構造物検出システム、および、海底構造物検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における海底構造物検出システムは、海底に設けられた海底構造物を検出する海底構造物検出システムであって、海底構造物に設けられた電線と、一方の端子が電線と接続する電流源と、海中の磁気に基づく磁気信号を出力する磁気センサと、電流源によって電線に電流が流れた状態において、電流に起因する磁気信号に基づいて海底構造物の有無を判別する判別部と、を備える。
【0008】
この発明の第2の局面における海底構造物検出方法は、海底に設けられた海底構造物を検出する海底構造物検出方法であって、電流源の一方の端子と接続され、海底構造物に設けられた電線に対して電流を流すステップと、電流源から電線に対して電流が流れた状態において、海中に設けられた磁気センサによって出力された、海中の磁気に基づく磁気信号を取得するステップと、電流に起因する磁気信号に基づいて、海底構造物の有無を判別するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記第1の局面における海底構造物検出システム、および、上記第2の局面における海底構造物検出方法では、海底構造物に設けられた電線に対して電流を流し、電流に起因する磁気信号に基づいて、海底構造物の有無を判別する。したがって、電線に印加された電流に起因する比較的大きい磁気信号を用いて海底構造物の有無を判別するため、海底構造物から発せられる磁気に基づく磁気信号が小さい場合でも、海底構造物の有無を判別することができる。また、電線に印加する電流を大きくすることにより、電流に起因する磁気信号の大きさを海底構造物の周囲の磁気ノイズよりも大きくすることができる。これらの結果、海底構造物から発せられる磁気の大きさが小さいこと、および、海底構造物の周囲の磁気ノイズに起因して、海底構造物の検出が困難になることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態による海底構造物検出システムの全体構成を示した図である。
【
図2】一実施形態による海底構造物検出システムの構成を示したブロック図である。
【
図3】一実施形態による電線が海底構造物に設けられる位置を説明するための模式図である。
【
図4】電線に交流電流を流したことにより生じる交流磁界を説明するための模式図である。
【
図5】一実施形態による判別部が海底構造物の有無を判別する構成を説明するための機能ブロック図である。
【
図6】一実施形態による判別部が、海底構造物の深さ位置を取得する構成を説明するための模式図である。
【
図7】電流源が電線に交流電流を印加しない場合における磁気信号を説明するためのグラフである。
【
図8】電流源が電線に交流電流を印加する場合における磁気信号を説明するためのグラフである。
【
図9】一実施形態による参照波形生成部が生成する参照波形を説明するためのグラフである。
【
図10】一実施形態による判別部が生成する同期検波信号を説明するためのグラフである。
【
図11】一実施形態による判別部が、海底構造物の有無を判別する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図12】第1変形例による海底構造物検出システムの構成を示したブロック図である。
【
図13】第1変形例による電流源が電線に直流電流を印加した際の磁気信号を説明するためのグラフである。
【
図14】第2変形例による電線が海底構造物に設けられる位置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1~
図10を参照して、一実施形態による海底構造物検出システム100の構成について説明する。
【0013】
(海底構造物検出装置の構成)
まず、
図1を参照して、一実施形態による海底構造物検出システム100の構成について説明する。
【0014】
海底構造物検出システム100は、海底81に設けられた海底構造物90を検出する海底構造物検出システムである。海底構造物90は、海底81に沿って延びる長尺物である。具体的には、海底構造物90は、海底81に設けられたパイプラインである。すなわち、海底構造物検出システム100は、海底81に設けられたパイプラインを検出するように構成されている。パイプラインは、たとえば、錆びを防ぐための防食層(図示せず)が外表面90a(
図3参照)を覆うように設けられた鋼管を含む。防食層は、たとえば、ゴムやポリ塩化ビニルなどの絶縁体を含む。なお、パイプラインは、特許請求の範囲の「海底構造物」の一例である。
【0015】
図1に示すように、海底構造物検出システム100は、電線1と、電流源2と、磁気センサ3と、コンピュータ4と、を備える。本実施形態では、海底構造物検出システム100は、金属板5を備える。また、本実施形態では、海底構造物検出システム100は、移動体6を備える。
【0016】
電線1は、海底構造物90に設けられている。電線1は、電流を流す導体と、導体の外周を覆う絶縁被覆とによって形成される。電線1は、たとえば、ケーブル、絶縁電線、コードなどを含む。電線1が海底構造物90に設けられる位置などについては、後述する。
【0017】
電流源2は、端子2aおよび端子2bを備える。電流源2は、一方の端子2aが電線1と接続する。電流源2は、電線1に対して電圧を印加することにより、破線矢印60に示すように、電線1に電流を流すように構成されている。また、電流源2は、他方の端子2bが、金属板5と接続する。本実施形態では、電流源2は、電線1に印加する電流を時間毎に変化させるように構成されている。具体的には、電流源2は、電線1に対して交流電流を印加するように構成されている。電流源2は、たとえば、交流電源装置を含む。
【0018】
磁気センサ3は、海中の磁気を検知するように構成されている。また、磁気センサ3は、海中の磁気に基づく磁気信号30(
図2参照)を出力するように構成されている。磁気センサ3は、移動体6に設けられている。本実施形態では、磁気センサ3は、移動体6によって移動されながら測定した磁気信号30を出力するように構成されている。磁気センサ3は、移動体6における上下方向と、上下方向と直交する平面内において互いに直交する2方向との磁気信号30を出力するように構成されている。磁気センサ3は、たとえば、3軸の磁気計を含む。
【0019】
コンピュータ4は、電流源2を制御することにより、電線1に対して電流を流すように構成されている。また、コンピュータ4は、磁気センサ3から出力される磁気信号30に基づいて、海底構造物90の検出を行うように構成されている。また、コンピュータ4は、移動体6を移動させる制御を行うように構成されている。コンピュータ4が海底構造物90の検出を行う構成の詳細については、後述する。
【0020】
金属板5は、電流源2の他方の端子2bと接続され、海中に設けられる。すなわち、金属板5は、海水80と接触している。金属板5は、電線1とは異なる大きさのイオン化傾向を有する金属によって形成される。本実施形態では、金属板5は、イオン化傾向の大きさが銅以上の金属材料によって形成される。本実施形態では、金属板5は、たとえば、銅板である。
【0021】
移動体6は、磁気センサ3が設けられ、磁気センサ3を移動させるように構成されている。また、移動体6には、海中における移動体6の深さ情報を取得する深度計(図示せず)、および、移動体6から測定対象までの距離を取得する距離センサ(図示せず)が設けられている。移動体6は、海中を自律走行可能に構成されている。また、移動体6は、無人で海中を移動可能に構成されている。移動体6は、いわゆるAUV(Autonomous Underwater Vehicle:自律型無人潜水機)である。移動体6の詳細な構成については、後述する。
【0022】
図1に示すように、電線1のうちの一部、電流源2、および、コンピュータ4は、陸上に設けられている。また、電線1のうちの大部分、金属板5、および、移動体6は、海中に設けられている。
【0023】
図2に示すように、コンピュータ4は、プロセッサ10と、記憶部11と、信号取得部12と、報知部13とを備える。コンピュータ4は、移動体6に設けた磁気センサ3から出力された磁気信号30に基づいて、海底構造物90の有無を判別する。また、コンピュータ4は、電流源2から電線1に対して電流を流す制御を行う。
【0024】
プロセッサ10は、判別部10aおよび参照波形生成部10bを機能ブロックとして備える。言い換えると、プロセッサ10は、記憶部11に記憶されたプロブラムを実行することにより、判別部10aおよび参照波形生成部10bとして機能する。プロセッサ10は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、マイクロプロセッサ、海底構造物90の位置判定用に構成されたFPGA(Field-Programmable Gate Array)などを含む。
【0025】
判別部10aは、電流源2によって電線1に電流が流れた状態において、電流に起因する磁気信号30に基づいて海底構造物90の有無を判別するように構成されている。本実施形態では、判別部10aは、電線1に電流を流す前の磁気信号30と、電線1に電流を流した状態の磁気信号31(
図8参照)とにおける信号波形の変化に基づいて、海底構造物90の有無を判別するように構成されている。本実施形態では、判別部10aは、パイプラインの有無を判別するように構成されている。また、判別部10aは、磁気センサ3が移動されながら測定した磁気信号30に基づいて、海底構造物90の配置状態を取得するように構成されている。判別部10aが海底構造物90の有無を判別する構成の詳細については、後述する。
【0026】
参照波形生成部10bは、判別部10aが海底構造物90の有無を判別する際に用いる参照波形22(
図4参照)を生成するように構成されている。
【0027】
記憶部11は、周波数データ20および基準波形21を記憶する。また、記憶部11は、プロセッサ10が実行する各種プログラムを記憶する。記憶部11は、不揮発性記憶装置を含む。不揮発性記憶装置は、たとえば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブなどである。
【0028】
周波数データ20は、電流源2から電線1に対して印加される交流電流の周波数である。基準波形21は、海底構造物90が敷設された際に、予め取得され、記憶部11に記憶されている。基準波形21は、移動体6を海底構造物90から所定の距離で移動させながら、磁気センサ3によって出力された磁気信号30の波形である。なお、基準波形21は、海底構造物90がある場合において、海底構造物90の深さ位置52(
図6参照)の取得に用いられる。すなわち、基準波形21は、海底構造物90の有無の判別には用いられない。
【0029】
信号取得部12は、移動体6に設けられた磁気センサ3から、磁気信号30を取得するように構成されている。また、信号取得部12は、取得した磁気信号30を、プロセッサ10に対して出力するように構成されている。信号取得部12は、無線通信装置および入出力インタフェースを含む。
【0030】
報知部13は、判別部10aの判別結果40(
図5参照)を報知するように構成されている。報知部13は、たとえば液晶表示装置である。報知部13は、エレクトロルミネッセンス表示装置、プロジェクタであってもよい。
【0031】
移動体6は、制御部6aと、通信部6bと、推進機構6cとを含む。
【0032】
制御部6aは、移動体6を制御するように構成されている。制御部6aは、たとえば、CPUを含む。
【0033】
通信部6bは、制御部6aの制御の下、コンピュータ4と通信するように構成されている。具体的には、通信部6bは、コンピュータ4から、移動体6を移動させる方向の情報を受信したり、コンピュータ4に対して、磁気センサ3が出力する磁気信号30を送信したりするように構成されている。通信部6bは、たとえば、無線接続可能な送受信装置を含む。
【0034】
推進機構6cは、制御部6aの制御の下、移動体6に対して推進力を与えるように構成されている。推進機構6cは、プロペラ(図示せず)と、プロペラを駆動する駆動源(図示せず)とを含む。推進機構6cは、プロペラを回転させることによって水をかき推進力を得る、いわゆるスクリュー構成であってもよいし、後方に高圧の水流を噴出することにより推進力を得る、いわゆるウォータージェット推進機構であってもよい。
【0035】
〈電線の配置〉
次に、
図3を参照して、海底構造物90に対する電線1の配置について説明する。なお、
図3に示す例では、説明のため、電線1と海底構造物90とが離間した状態で図示しているが、実際には、電線1は、海底構造物90の外表面90aに接触した状態で設けられている。
【0036】
図3に示すように、電線1は、海底構造物90の軸線90bが延びる方向に沿って海底構造物90の外表面90aに設けられている。具体的には、電線1は、海底構造物90が延びる方向に沿って、海底構造物90の外表面90aにおいて直線状に設けられている。また、電線1のうち、電流源2と接続されていない端部1aは、絶縁被覆が剥がされた状態で海中に設けられている。すなわち、電線1のうち、電流源2と接続されていない端部1aは、導体がむき出しとなり、導体が海水80(
図1参照)と接触した状態で、海中に設けられている。これにより、海水80(
図1参照)を介して、電流源2と接続されていない端部1aと金属板5(
図1参照)との間で電流が流れるように構成されている。
【0037】
なお、
図1において、電線1と金属板5とによって電流が流れる状態をイメージしやすくするために破線矢印60を図示しているが、実際には、電線1の端部1aおよび金属板5によって、海水80が電気分解されることにより、電線1に対して電流が流れる。すなわち、
図1に示した破線矢印60のように、電線1の端部1aと、金属板5との間に、電流経路が形成されるわけではない。
【0038】
〈磁気センサが検知する交流磁界〉
次に、
図4を参照して、磁気センサ3が検知する交流磁界30aについて説明する。
図4は、海底構造物90および電線1の断面図である。
【0039】
電線1に電流が流れると、電線1を中心として、磁界が生じる。具体的には、電線1を中心として、同心円状に磁界が生じる。本実施形態では、電線1に交流電流が流れるため、交流電流に起因して、交流磁界30aが生じる。本実施形態では、磁気センサ3(
図1参照)は、電線1から発せられる交流電流に起因する交流磁界30aを検知するように構成されている。なお、電流源2は、交流磁界30aの大きさが、海底構造物90から発せられる磁気の大きさよりも大きくなるように、電線1に対して電流を印加する。また、電流源2は、交流磁界30aの大きさが、海底構造物90の周囲の磁気ノイズの大きさよりも大きくなるように、電線1に対して電流を印加する。
【0040】
〈海底構造物の検出〉
次に、
図5を参照して、プロセッサ10が海底構造物90(
図1参照)の有無を判別する構成について説明する。
【0041】
参照波形生成部10bは、記憶部11から、周波数データ20を取得する。参照波形生成部10bは、電流源2から電線1に対して印加される交流電流の周波数(周波数データ20)に基づいて、参照波形22を生成する。なお、周波数データ20は、ユーザによって設定され得る。その場合、周波数データ20は、海底構造物90の周囲の交流磁界の周波数と異なる周波数に設定することが好ましい。また、電流源2が商用電源の場合、周波数データ20は、50Hz(ヘルツ)または60Hzであり得る。参照波形22は、交流電流の周波数に基づいて生成される交流磁界の波形である。参照波形生成部10bは、生成した参照波形22を、判別部10aに対して出力する。
【0042】
判別部10aは、電流に起因する磁気信号30の変化に基づいて、海底構造物90の有無を判別するように構成されている。具体的には、判別部10aは、磁気センサ3が検知した交流磁界30aと、参照波形22とに基づいて、交流磁界30aのうちの交流電流に起因する成分の信号である同期検波信号32(
図10参照)を取得する。判別部10aは、参照波形22と磁気信号30とを乗算するとともに、ローパスフィルタ処理を行うことにより、磁気信号30に含まれる交流磁界30aの振幅に比例する直流成分を、同期検波信号32として取得する。
【0043】
また、判別部10aは、取得した同期検波信号32に基づいて、海底構造物90の有無を判別するように構成されている。また、判別部10aは、同期検波信号32に基づいて海底構造物90の有無を判別した判別結果40を、報知部13に対して出力する。本実施形態では、判別部10aは、海底構造物90があると判定した場合には、海底構造物90が検知された旨のメッセージを、報知部13に対して出力する。また、判別部10aは、海底構造物90がないと判定した場合には、海底構造物90が検知されなかった旨のメッセージを、報知部13に対して出力する。
【0044】
報知部13は、判別部10aから入力された判別結果40を表示する。
【0045】
〈海底構造物の深さ位置の検知〉
次に、
図6を参照して、判別部10a(
図2参照)が海底構造物90の深さ位置52を取得する構成について説明する。本実施形態では、判別部10aは、磁気信号30の大きさに基づいて、海底構造物90の深さ位置52を検知するように構成されている。具体的には、判別部10aは、基準波形21と、磁気信号30とを比較することにより、海底構造物90と移動体6との間の距離50を取得する。なお、基準波形21は、海底構造物90の敷設時における交流磁界30aの波形である。また、基準波形21を取得する際には、移動体6に設けられた距離センサなどによって、移動体6と海底構造物90との間の距離が取得され、基準波形21とともに記憶部11に記憶される。なお、基準波形21は、移動体6と海底構造物90との間の距離を変化させることにより、複数取得されてもよい。
【0046】
また、判別部10aは、移動体6に設けられた深度計に基づいて、海面82から移動体6までの距離51を取得する。そして、判別部10aは、海底構造物90と移動体6との間の距離50、および、海面82から移動体6までの距離51を加算することにより、海底構造物90の深さ位置52を取得する。すなわち、海底構造物90の深さ位置52とは、海面82から海底構造物90までの距離である。このように構成することにより、たとえば、海底81の砂などによって海底構造物90が埋没し、距離センサなどによって移動体6と海底構造物90との間の距離50が取得できない場合でも、海底構造物90の深さ位置52を取得することができる。
【0047】
〈各信号波形〉
次に、
図7~
図10を参照して、磁気センサ3が検知する磁気信号30、および、判別部10aが生成する同期検波信号32について説明する。
【0048】
図7は、電流源2から電線1に対して交流電流が印加される前の磁気信号30の波形を示すグラフ70である。グラフ70は、縦軸が全磁力であり、横軸が時間である。なお、全磁力とは、磁気センサ3によって取得される各軸方向の磁力を合成した磁力である。
【0049】
グラフ70に示すように、磁気信号30には、海底構造物90(
図1参照)から発せられる磁気成分および海底構造物90の周囲の直流磁気成分を含む磁気成分30bと、海底構造物90の周囲の交流磁気成分30cとを含む。すなわち、磁気センサ3(
図1参照)は、電流源2(
図1参照)によって電線1(
図1参照)に電流を印加していない状態において、海底構造物90から発せられる磁気、および、海底構造物90の周囲の磁気による磁気成分を含む磁気信号30を出力している。
【0050】
図8は、電流源2(
図1参照)から電線1(
図1参照)に対して交流電流を印加する場合の磁気信号30の波形を示すグラフ71である。グラフ70は、縦軸が全磁力であり、横軸が時間である。
図8に示す例では、時間60において、電流源2から電線1に対して交流電流が印加されている。
【0051】
グラフ71に示すように、電線1に交流電流が印加された後の磁気信号31においても、海底構造物90(
図1参照)から発せられる磁気成分および海底構造物90の周囲の直流磁気成分を含む磁気成分30bを含む。また、電線1に交流電流が印加された後の磁気信号31は、海底構造物90の周囲の交流磁気成分と、交流電流に起因する交流磁界30a(
図4参照)とを含む交流磁気成分30dを含む。すなわち、磁気センサ3は、交流電流が印加されることにより、交流電流に起因する磁気成分を含む磁気を検知する。したがって、磁気センサ3から出力される磁気信号30が、磁気信号31に変化する。
【0052】
図9は、参照波形22を示すグラフ72である。グラフ72は、縦軸が全磁力であり、横軸が時間である。参照波形22は、電流源2(
図1参照)から電線1(
図1参照)に対して印加される交流電流によって生成される交流磁界である。すなわち、参照波形22は、電流源2から電線1に対して印加される交流電流の周波数データ20(
図2参照)によって、参照波形生成部10bによって生成される磁気信号の波形である。
【0053】
図10は、判別部10a(
図2参照)によって生成される同期検波信号32を示すグラフ73である。グラフ73は、縦軸が全磁力であり、横軸が時間である。
【0054】
同期検波信号32は、磁気信号30(
図2参照)において、交流電流に起因して生じる交流磁界30a(
図4参照)の磁気成分が含まれるか否かを示す信号である。同期検波信号32は、交流電流に起因して生じる交流磁界30aの磁気成分が含まれる場合には、交流磁界30aの振幅に比例する直流成分の大きさの出力値が出力される。また、同期検波信号32は、たとえば、交流電流に起因する磁気成分が含まれていない場合には「0(ゼロ)」となる。本実施形態では、時間60(
図8参照)において、電線1(
図1参照)に対して交流電流が印加されるので、時間60までは、同期検波信号32の値が0(ゼロ)となる。また、時間60より後では、同期検波信号32は、交流磁界30aの振幅に比例する直流成分の大きさの出力値となる。
【0055】
〈海底構造物の検出処理〉
次に、
図11を参照して、海底構造物検出システム100が、海底構造物90を検出する処理について説明する。なお、
図11に示す処理は、海中に金属板5(
図1参照)が配置された状態において行われる。
【0056】
ステップ101において、電流源2(
図1参照)は、電流源2の一方の端子2a(
図1参照)と接続され、海底構造物90に設けられた電線1に対して電流を流す。なお、電流源2は、海底構造物90の有無の判別を行う間中、電線1に対して電流を印加する。
【0057】
ステップ102において、信号取得部12(
図2参照)は、電流源2から電線1(
図1参照)に対して電流が流れた状態において、海中に設けられた磁気センサ3(
図1参照)によって出力された、海中の磁気に基づく磁気信号30(
図2参照)を取得する。
【0058】
ステップ103において、判別部10a(
図2参照)は、同期検波信号32(
図10参照)を取得する。具体的には、判別部10aは、参照波形生成部10b(
図2参照)によって生成された参照波形22(
図9参照)と、信号取得部12によって取得された磁気信号30とに基づいて、同期検波信号32を生成する。
【0059】
ステップ104において、判別部10aは、海底構造物90(
図1参照)の有無を判別する。具体的には、判別部10aは、電流に起因する磁気信号30に基づいて、海底構造物90の有無を判別する。より具体的には、判別部10aは、同期検波信号32(
図10参照)に基づいて、海底構造物90の有無を判別する。判別部10aが、海底構造物90があったと判別した場合、処理は、ステップ105へ進む。判別部10aが、海底構造物90がなかったと判別した場合、処理は、ステップ108へ進む。
【0060】
ステップ105において、判別部10aは、海底構造物90が検知された旨の判別結果40(
図2参照)を取得する。
【0061】
ステップ106において、判別部10aは、
図6に示すように、海底構造物90の深さ位置52を取得する。
【0062】
ステップ107において、報知部13(
図2参照)は、海底構造物90の深さ位置52および海底構造物90が検知された旨の判別結果40を報知する。その後、処理は、終了する。
【0063】
また、ステップ104からステップ108へ処理が進んだ場合、ステップ108において、判別部10aは、海底構造物90が検知されなかった旨の判別結果40を取得する。
【0064】
ステップ109において、報知部13は、海底構造物90が検知されなかった旨の判別結果40を報知する。その後、処理は、終了する。
【0065】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0066】
本実施形態では、上記のように、海底構造物検出システム100は、海底81に設けられた海底構造物90を検出する海底構造物検出システムであって、海底構造物90に設けられた電線1と、一方の端子2aが電線1と接続する電流源2と、海中の磁気に基づく磁気信号30を出力する磁気センサ3と、電流源2によって電線1に電流が流れた状態において、電流に起因する磁気信号30に基づいて海底構造物90の有無を判別する判別部10aと、を備える。
【0067】
これにより、判別部10aは、海底構造物90に設けられた電線1に対して電流を流し、電線1に印加された電流に起因する比較的大きい磁気信号30を用いて、海底構造物90の有無を判別するので、海底構造物90から発せられる磁気に基づく磁気信号が小さい場合でも、海底構造物90の有無を判別することができる。また、電線1に印加する電流を大きくすることにより、電流に起因する磁気信号30の大きさを海底構造物90の周囲の磁気ノイズよりも大きくすることができる。これらの結果、海底構造物90から発せられる磁気の大きさが小さいこと、および、海底構造物90の周囲の磁気ノイズに起因して、海底構造物90の検出が困難になることを抑制することができる。
【0068】
また、たとえば、錆を防ぐための防食層が設けられた海底構造物90に対して電流を流すことにより生じる磁界を検出する構成の場合、海底構造物90の防食層に剥がれなどがあると、防食層が剥がれた箇所から先には電流が流れなくなる。上記実施形態による海底構造物検出システム100では、海底構造物90に設けた電線1に対して電流を印加するため、海底構造物90の防食層に剥がれが生じた場合でも、電線1から発せられる磁気によって、海底構造物90の検出を行うことができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、海底構造物検出方法は、海底81に設けられた海底構造物90を検出する海底構造物検出方法であって、電流源2の一方の端子2aと接続され、海底構造物90に設けられた電線1に対して電流を流すステップと、電流源2から電線1に対して電流が流れた状態において、海中に設けられた磁気センサ3によって出力された、海中の磁気に基づく磁気信号30を取得するステップと、電流に起因する磁気信号30に基づいて、海底構造物90の有無を判別するステップと、を備える。
【0070】
これにより、上記海底構造物検出システム100と同様に、海底構造物90から発せられる磁気の大きさ、および、海底構造物90の周囲の磁気ノイズに起因して、海底構造物90の検出が困難になることを抑制することが可能な海底構造物検出方法を提供することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0072】
すなわち、本実施形態では、上記のように、電流源2は、電線1に印加する電流を時間毎に変化させるように構成されており、判別部10aは、電流に起因する磁気信号30の変化に基づいて、海底構造物90の有無を判別するように構成されている。これにより、判別部10aは、海底構造物90から発せられる磁気、および、地磁気などに基づくノイズが磁気信号30に含まれる場合でも、電流を時間毎に変化させることに起因して変化する磁気信号30によって、海底構造物90の有無を効果的に判別することができる。その結果、海底構造物90から発せられる磁気、および、地磁気などのノイズによって、海底構造物90の判別精度が低下することを抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、電流源2は、電線1に対して交流電流を印加するように構成されており、磁気センサ3は、電線1から発せられる交流電流に起因する交流磁界30aを検知するように構成されている。これにより、海底構造物90から直流磁界が発せられている場合でも、磁気センサ3は、交流磁界30aに基づく磁気信号30を出力することができる。その結果、判別部10aに出力する磁気信号30において、海底構造物90から発せられる直流磁界、および、地磁気などに基づくノイズの影響を低減させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、判別部10aは、磁気センサ3が検知した交流磁界30aと、電流源2から電線1に対して印加される交流電流の周波数(周波数データ20)とに基づいて、交流磁界30aのうちの交流電流に起因する成分の信号である同期検波信号32を取得するとともに、取得した同期検波信号32に基づいて、海底構造物90の有無を判別するように構成されている。これにより、判別部10aは、同期検波信号32を用いて海底構造物90の有無を判別するため、海底構造物90の判別精度が低下することをより一層抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、電流源2の他方の端子2bと接続され、海中に設けられる金属板5をさらに備え、電線1のうち、電流源2と接続されていない端部1aは、被覆が剥がされた状態で海中に設けられており、海水80を介して、電流源2と接続されていない端部1aと金属板5との間で電流が流れるように構成されている。これにより、電線1をUターンさせることにより、電流源2の一方の端子2aと、他方の端子2bとに電線1を接続することなく、電線1に電流を流すことができる。その結果、電流源2の両方の端子に電線1を接続する構成と比較して、海底構造物90に設ける電線1の長さを小さくすることができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、金属板5は、電線1とは異なる大きさのイオン化傾向を有する金属によって形成される。これにより、海水80を介して、電流源2と接続されていない端部1aと金属板5との間で、電流を容易に流すことができる。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、海底構造物90は、海底81に沿って延びる長尺物であり、電線1は、海底構造物90が延びる方向に沿って、海底構造物90の外表面90aにおいて直線状に設けられている。これにより、海底構造物90の設ける電線1の長さを最小にすることができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、磁気センサ3が設けられ、磁気センサ3を移動させる移動体6をさらに備え、磁気センサ3は、移動体6によって移動されながら測定した磁気信号30を出力するように構成されており、判別部10aは、磁気センサ3が移動されながら測定した磁気信号30に基づいて、海底構造物90の配置状態を取得するように構成されている。これにより、海底構造物90から発せられる磁気が小さい場合であっても、海底構造物90が海底81のどのような位置でどのような方向に向けて延びるように配置されているかを表す、海底構造物90の配置状態を容易に取得することができる。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、海底構造物90は、海底81に設けられたパイプラインであり、判別部10aは、パイプラインの有無を判別するように構成されている。これにより、パイプラインの有無の判別に適した海底構造物検出システム100を提供することができる。
【0080】
また、本実施形態では、上記のように、判別部10aは、磁気信号30の大きさに基づいて、海底構造物90の深さ位置52を検知するように構成されている。これにより、たとえば、海底構造物90が海底81の砂などに埋まり、目視できない場合でも、海底構造物90の深さ位置52を取得することが可能となるので、海底構造物90の位置を精度よく取得することができる。
【0081】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0082】
たとえば、上記実施形態では、海底構造物検出システム100が、電線1に対して交流電流を印加する電流源2を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図12に示す第1変形例のように、海底構造物検出システム200は、電線1に対して直流電流を印加する電流源14を備えていてもよい。
【0083】
海底構造物検出システム200は、電流源2の代わりに電流源14を備える点以外は、上記実施形態における海底構造物検出システム100と同様の構成である。
【0084】
電流源14は、電線1に対して、直流電流を印加するように構成されている。電流源14は、たとえば、直流電源装置を含む。
【0085】
図13に示すグラフ74は、電流源14によって電線1に対して直流電流が印加された後の磁気信号30を示している。グラフ74は、縦軸が全磁力であり、横軸が時間である。なお、
図13に示す例では、時間61において、直流電流が印加されている。
【0086】
グラフ74に示すように、磁気信号30には、海底構造物90から発せられる磁気成分および海底構造物90の周囲の直流磁気成分を含む磁気成分30bを含む。また、電線1に直流電流が印加された後の磁気信号33は、直流電流に起因する直流磁界の成分30eが、加算された状態となる。
【0087】
判別部10aは、たとえば、直流電流を印加した後の磁気信号33と、直流電流を印加する前の磁気信号30とにおける波形の変化に基づいて、海底構造物90の有無を判別するように構成すればよい。具体的には、判別部10aは、直流電流を印加した後の磁気信号30の振幅と、直流電流を印加する前の磁気信号30の振幅との差に基づいて、海底構造物90の有無を判別するように構成すればよい。
【0088】
また、上記実施形態では、電線1が、海底構造物90が延びる方向に沿って、海底構造物90の外表面90aにおいて直線状に設けられる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図14に示す第2変形例のように、電線1は、海底構造物90が延びる軸線周りの回転方向に巻き回わすように、海底構造物90の外表面90aに設けられていてもよい。すなわち、電線1は、海底構造物90の外表面90aにおいて、らせん状に設けられていてもよい。
【0089】
第2変形例では、上記のように、海底構造物90は、海底81に沿って延びる長尺物であり、電線1は、海底構造物90が延びる軸線周りの回転方向に巻き回わすように、海底構造物90の外表面90aに設けられている。ここで、海底構造物90の外表面90aにおいて、電線1が直線状に設けられる構成の場合、海底構造物90の配置によっては、電線1が海底構造物90と海底81との間に配置される場合がある。この場合、電線1と磁気センサ3との間の距離が大きくなり、磁気センサ3によって検知される磁気の大きさが小さくなる。一方、電線1を海底構造物90に巻き回すように設けた電線1に対して電流を流した場合、海底構造物90が延びる方向に沿う方向に、電流に起因する磁界が生じる。すなわち、海底構造物90に対する電線1の配置によって電流に起因する磁界が発生する位置が変化することを抑制することができる。したがって、上記のように構成することにより、海底構造物90における電線1の配置に起因して、電流に起因する磁界が発生する位置が変化することにより、磁気センサ3が検知する磁界の大きさが変化することを抑制することができる。
【0090】
また、上記実施形態では、電線1に印加する電流を時間毎に変化させる例として、電流源2が電線1に対して交流電流を印加する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、電流源2は、パルス状の直流電流を電線1に印加することにより、電線1に印加する電流を時間毎に変化させてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、判別部10aが、同期検波信号32を用いて海底構造物90の有無を判別する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、判別部10aは、同期検波信号32を用いずに、海底構造物90の有無を判別してもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、海底構造物検出システム100が、金属板5を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、海底構造物検出システム100は、金属板5を備えていなくてもよい。しなしながら、海底構造物検出システム100が金属板5を備えていない場合、電線1の長さが大きくなる。したがって、海底構造物検出システム100は、金属板5を備えていることが好ましい。
【0093】
また、上記実施形態では、判別部10aが、海底構造物90の深さ位置52を取得する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、判別部10aは、海底構造物90の深さ位置52を取得しなくてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、移動体6が、海中を自立走行するAUVの例を示したが、本発明たとえば、移動体6を、船舶などによって曳航することにより、海中を移動させてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、海底構造物検出システム100が、移動体6を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、海底構造物検出システム100は、移動体6を備えていなくてもよい。海底構造物検出システム100が移動体6を備えていない場合、人が海に潜り、磁気センサ3を移動させればよい。しかしながら、海底構造物90が配置されている深さによっては、人が潜ることができない場合もある。したがって、海底構造物検出システム100は、移動体6を備えていることが好ましい。
【0096】
また、上記一実施形態では、説明の便宜上、判別部10aの制御処理を、処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、判別部10aの制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【0097】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0098】
(項目1)
海底に設けられた海底構造物を検出する海底構造物検出システムであって、
前記海底構造物に設けられた電線と、
一方の端子が前記電線と接続する電流源と、
海中の磁気に基づく磁気信号を出力する磁気センサと、
前記電流源によって前記電線に電流が流れた状態において、電流に起因する前記磁気信号に基づいて前記海底構造物の有無を判別する判別部と、を備える、海底構造物検出システム。
【0099】
(項目2)
前記電流源は、前記電線に印加する電流を時間毎に変化させるように構成されており、
前記判別部は、電流に起因する前記磁気信号の変化に基づいて、前記海底構造物の有無を判別するように構成されている、項目1に記載の海底構造物検出システム。
【0100】
(項目3)
前記電流源は、前記電線に対して交流電流を印加するように構成されており、
前記磁気センサは、前記電線から発せられる交流電流に起因する交流磁界を検知するように構成されている、項目1または2に記載の海底構造物検出システム。
【0101】
(項目4)
前記判別部は、前記磁気センサが検知した前記交流磁界と、前記電流源から前記電線に対して印加される前記交流電流の周波数とに基づいて、前記交流磁界のうちの前記交流電流に起因する成分の信号である同期検波信号を取得するとともに、取得した前記同期検波信号に基づいて、前記海底構造物の有無を判別するように構成されている、項目3に記載の海底構造物検出システム。
【0102】
(項目5)
前記電流源の他方の端子と接続され、海中に設けられる金属板をさらに備え、
前記電線のうち、前記電流源と接続されていない端部は、被覆が剥がされた状態で海中に設けられており、
海水を介して、前記電流源と接続されていない端部と前記金属板との間で電流が流れるように構成されている、項目1~4のいずれか1項に記載の海底構造物検出システム。
【0103】
(項目6)
前記金属板は、前記電線とは異なる大きさのイオン化傾向を有する金属によって形成される、項目5に記載の海底構造物検出システム。
【0104】
(項目7)
前記海底構造物は、海底に沿って延びる長尺物であり、
前記電線は、前記海底構造物が延びる方向に沿って、前記海底構造物の外表面において直線状に設けられている、項目1~6のいずれか1項に記載の海底構造物検出システム。
【0105】
(項目8)
前記海底構造物は、海底に沿って延びる長尺物であり、
前記電線は、前記海底構造物が延びる軸線周りの回転方向に巻き回すように、前記海底構造物の外表面に設けられている、項目1~6のいずれか1項に記載の海底構造物検出システム。
【0106】
(項目9)
前記磁気センサが設けられ、前記磁気センサを移動させる移動体をさらに備え、
前記磁気センサは、前記移動体によって移動されながら測定した前記磁気信号を出力するように構成されており、
前記判別部は、前記磁気センサが移動されながら測定した前記磁気信号に基づいて、前記海底構造物の配置状態を取得するように構成されている、項目5または6に記載の海底構造物検出システム。
【0107】
(項目10)
前記海底構造物は、海底に設けられたパイプラインであり、
前記判別部は、前記パイプラインの有無を判別するように構成されている、項目7~9のいずれか1項に記載の海底構造物検出システム。
(項目11)
前記判別部は、前記磁気信号の大きさに基づいて、前記海底構造物の深さ位置を検知するように構成されている、項目1~10のいずれか1項に記載の海底構造物検出システム。
【0108】
(項目12)
海底に設けられた海底構造物を検出する海底構造物検出方法であって、
電流源の一方の端子と接続され、前記海底構造物に設けられた電線に対して電流を流すステップと、
前記電流源から前記電線に対して電流が流れた状態において、海中に設けられた磁気センサによって出力された、海中の磁気に基づく磁気信号を取得するステップと、
電流に起因する前記磁気信号に基づいて、前記海底構造物の有無を判別するステップと、を備える、海底構造物検出方法。
【符号の説明】
【0109】
1 電線
1a 端部(電線のうち電流源と接続されていない端部)
2、14 電流源
2a 端子(電流源の一方の端子)
2b 端子(電流源の他方の端子)
3 磁気センサ
5 金属板
6 移動体
10a 判別部
30、31 磁気信号
30a 交流磁界
32 同期検波信号
52 深さ位置
80 海水
81 海底
90 海底構造物(パイプライン)
90a 外表面(海底構造物の外表面)
100、200 海底構造物検出システム