(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069852
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】塩化ビニル系シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20230511BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230511BHJP
E04F 15/16 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B32B27/30 C
B32B27/18 Z
E04F15/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182024
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000010010
【氏名又は名称】ロンシール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】庄司 剛章
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA11
2E220AA33
2E220AB01
2E220FA01
2E220GA22X
2E220GA24X
2E220GA28X
2E220GB11X
2E220GB32X
2E220GB34X
2E220GB35X
4F100AJ04
4F100AJ04C
4F100AK15
4F100AK15A
4F100AK42
4F100AK42C
4F100AT00B
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4F100GB07
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4F100JJ03
4F100JN01
4F100JN01B
4F100JN28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】屋外での長期使用における変色を抑えた透明層を有する塩化ビニル系シートを提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するために本発明が用いた手段は、透明層と基材層とが積層された塩化ビニル系シートであって、前記透明層は最表面に配置され塩化ビニル系重合体と可塑剤と光安定剤とを含有し、さらに前記透明層は界面活性剤、滑剤、ブルーム防止剤から選ばれる少なくとも一つを含有することを特徴とする塩化ビニル系シートとしたことである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明層と基材層とが積層された塩化ビニル系シートであって、
前記透明層は最表面に配置され塩化ビニル系重合体と可塑剤と光安定剤とを含有し、
さらに前記透明層は界面活性剤、滑剤、ブルーム防止剤から選ばれる少なくとも一つを含有することを特徴とする塩化ビニル系シート。
【請求項2】
前記界面活性剤がカチオン界面活性剤である請求項1に記載の塩化ビニル系シート。
【請求項3】
前記滑剤が外部滑剤である請求項1に記載の塩化ビニル系シート。
【請求項4】
前記透明層に意匠付与材が添加されている請求項1~3に記載の塩化ビニル系シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明層を有する塩化ビニル系シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル樹脂にフタル酸エステル等の可塑剤を添加した軟質ポリ塩化ビニルシートなどの塩化ビニル系シートは、建築材料、工業用フィルム等として使用されている。また、このような塩化ビニル系シートは柔軟性を有し、施工性や接着性に優れる等の点から、建築物、鉄道車輌、航空機等の内装材として広く用いられている。
【0003】
塩化ビニル系シートを内装材として使用する場合、外観として観察される面に透明性を有する透明層を配し、その下に着色や印刷模様を施した基材層を積層することで、耐久性に優れ高意匠な内装材を提供することができる。特許文献1には、透明または半透明の着色熱可塑性樹脂シートと不透明熱可塑性樹脂エンボスベースシートとを積層一体化した、立体感のある濃淡模様を有する熱可塑性樹脂シートが開示されている。
【0004】
一方、マンションの開放廊下やベランダといった床仕上げにも、内装材と同様に意匠性の高いシートが望まれており、このような屋外での使用においては耐候性が必要となる。特許文献2には紫外線吸収剤を含有する半透明の表層を積層した塩化ビニル樹脂製床材が開示されているが、透明層は隠蔽性がないためより光の影響を受けて黄変しやすく、紫外線吸収剤を用いるだけでは不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-136392号公報
【特許文献2】特開2015-40456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は屋外での長期使用における変色を抑えた透明層を有する塩化ビニル系シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明が用いた手段は、透明層と基材層とが積層された塩化ビニル系シートであって、前記透明層は最表面に配置され塩化ビニル系重合体と可塑剤と光安定剤とを含有し、さらに前記透明層は界面活性剤、滑剤、ブルーム防止剤から選ばれる少なくとも一つを含有することを特徴とする塩化ビニル系シートとしたことである。
【0008】
また、前記界面活性剤がカチオン界面活性剤である塩化ビニル系シートとすることができる。前記滑剤が外部滑剤である塩化ビニル系シートとすることができる。これにより、耐候性がより優れ、さらに長期間変色を抑えることができる。
また、前記透明層に意匠付与材が添加されている塩化ビニル系シートとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、屋外での長期使用における透明層の変色を抑えることができ、よって意匠性の高い屋外用シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明の塩化ビニル系シートは、透明層と基材層とを積層した積層シートで構成される。透明層は塩化ビニル系重合体と可塑剤と光安定剤とを含有し、さらに界面活性剤、滑剤、ブルーム防止剤から選ばれる少なくとも一つを含有する。透明層は、塩化ビニル系シートの最表面に配置され、積層した基材層を透明層の上から視認できる程度の透明性を有するものである。
【0012】
本発明に用いる塩化ビニル系重合体としては、塩化ビニル単量体の単独重合体であるポリ塩化ビニルや、エチレン‐塩化ビニル共重合体、プロピレン‐塩化ビニル共重合体、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル‐塩化ビニリデン共重合体などを用いることができる。
【0013】
本発明に用いる可塑剤は、塩化ビニル系重合体の柔軟化や加工性の向上等を目的として添加されるものであって、DOP(ジ‐2‐エチルヘキシルフタレート)、DINP(ジイソノニルフタレート)、DIDP(ジイソデシルフタレート)、DUP(ジウンデシルフタレート)などのフタル酸エステル系可塑剤、DOA(ジ‐2‐エチルヘキシルアジペート)、DIDA(ジイソデシルアジペート)などのアジピン酸エステル系可塑剤、DOS(ジ‐2‐エチルヘキシルセバケート)などのセバシン酸エステル系可塑剤、DOZ(ジ‐2‐エチルヘキシルアゼレート)などのアゼライン酸エステル系可塑剤といった脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリス(イソプロピル化フェニル)、リン酸トリス(ジクロロプロピル)などのリン酸エステル系可塑剤、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などのエポキシ系可塑剤、アジピン酸系やフタル酸系のポリエステル系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤等を用いることができる。これら可塑剤は、単独または二種以上の可塑剤を併用して用いることができる。
【0014】
可塑剤の添加量は特に制限はないが、塩化ビニル系重合体100重量部に対し可塑剤を5重量部~100重量部添加することが好ましく、20重量部~80重量部がより好ましい。複数の可塑剤を用いる場合は、各種可塑剤の添加量の合計が前述の範囲内であることが好ましい。
【0015】
本発明に用いる光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)や、各種紫外線吸収剤を使用できる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジル-4-ベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)オキザレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)マロネート、(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アジペート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ホスファイト、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)トリアジン-2,4,6-トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ニトロトリアセテート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3-トリカルボキシレート、1,3,8-トリアザ-7,7,9,9-テトラメチル-3-n-オクチルスピロ[4.5]デカン-2,4-ジオン、1,2,3,4-テトラ(4-カルボニルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)-ブタン、1,3,8-トリアザ-7,7,9,9-テトラメチル-2,4-ジオキソ-スピロ[4.5]デカン、トリ(4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)アミン、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンジルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-フェニルカルバモイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-p-トルエンスルホニルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)テレフタレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル) -2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物等が挙げられる。
【0016】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系、シアノアクリレート系等の従来ポリ塩化ビニル系樹脂に配合しているようなものが挙げられる。酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の無機系紫外線吸収剤、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸エステル系、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系の有機系紫外線吸収剤が利用できる。上記の紫外線吸収剤の中でも、ブルームが少ないとの点からベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系が好適に用いられる。また、これらの紫外線吸収剤は一種または二種以上組み合わせて使用することができる。
【0017】
これらの光安定剤は一種または二種以上組み合わせて使用することができる。光安定剤の添加量は特に限定されないが、耐候性、耐久性、ブリードおよびブルームの発生を考慮すると、塩化ビニル系重合体100重量部に対する光安定剤の添加量の合計は0.05重量部~5重量部程度が好ましい。
【0018】
透明層には、さらに界面活性剤、滑剤、ブルーム防止剤から選ばれる少なくとも一つが含有されている。これらを含有していることにより、屋外での長期使用においても、透明層の変色を抑えることが可能となる。
【0019】
界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤などのイオン性界面活性剤や非イオン界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、カチオン界面活性剤や非イオン界面活性剤が、耐候性がより優れ、さらに長期間変色を抑えることができ好ましい。カチオン界面活性剤としては、脂肪酸アミドアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩エチレンオキシド付加物などのアミン塩やモノアルキル型四級アンモニウム塩、ジアルキル型四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型四級アンモニウム塩などの第四級アンモニウム塩がある。非イオン界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル系化合物、ソルビタン脂肪酸エステル系化合物、しょ糖脂肪酸エステル系化合物、アミン系化合物、アミド系化合物およびこれらの化合物でオキシアルキレン、ポリオキシアルキレン、ヒドロキシル基を有する化合物、オキシアルキレン、ポリオキシアルキレン、ヒドロキシル基を有するアルキルエーテル系の化合物、オキシアルキレン、ポリオキシアルキレン、ヒドロキシル基を有するアルキルフェニルエーテル系の化合物などが挙げられる。
【0020】
滑剤としては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、流動パラフィンなどの炭化水素、ステアリン酸、ベヘン酸などの脂肪酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの脂肪酸アミド、ブチルステアレート、グリセリンエステル、ソルビタンエステルなどのエステル類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉛などの金属石鹸が挙げられる。これらの中でも、成型加工時の樹脂と成形機表面との摩擦を低下させる作用がある外部滑剤が、耐候性がより優れ、さらに長期間変色を抑えることができ好ましい。外部滑剤としては、前述の各種炭化水素、各種脂肪酸、金属石鹸の亜鉛塩または鉛塩が挙げられる。
【0021】
ブルーム防止剤としては、高分子量脂肪族カルボン酸の複合化エステル体、特殊高分子量有機アミン誘導体、アルコキシグリコール誘導体などがあり、エチレン-飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体けん化物のアルキレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレンアミン、ポリエチレングリコール(ポリエーテル化合物)が挙げられる。
【0022】
これら界面活性剤、滑剤、ブルーム防止剤は単独または併用して使用することができ、透明層に適宜添加されている。界面活性剤、滑剤、ブルーム防止剤の添加量は特に限定されないが、耐候性とコスト性、ブリードおよびブルームの発生を考慮すると、塩化ビニル系重合体100重量部に対する界面活性剤、滑剤、ブルーム防止剤の添加量の合計は0.05重量部~5重量部程度が好ましい。
【0023】
透明層には、必要に応じて安定剤、顔料、充填剤、紫外線遮蔽剤、帯電防止剤、難燃剤、衝撃改良剤、加工助剤など各種配合剤を添加してもよい。さらに透明層には、本発明の塩化ビニル系シートの意匠性を高めるため、意匠付与材を添加することができる。
【0024】
意匠付与材は、雲母や炭酸カルシウムなどの無機材料や各種樹脂や繊維などの有機材料又はこれらの混合物を顔料や染料により着色したものからなり、大きさは数百μm~数mm程度であり、形状はチップ状や繊維状のものである。透明層にこれらを少量添加することにより透明層中に意匠付与材が分散した状態となり、意匠性を高めることができる。意匠付与材は透明層の加工温度において溶融しないものが好ましく、樹脂など有機材料においては、ポリエステルやナイロンなどが好ましく使用でき、繊維においてはレーヨンやセルロースなど天然繊維も好ましく用いられる。意匠付与材は一種または二種以上のものを混合して用いてもよい。
【0025】
透明層への意匠付与材の添加量は適宜調整すればよく、塩化ビニル系重合体100重量部に対し、意匠付与材の添加量の合計が0.05重量部~10重量部程度が通常好ましく利用できる。
【0026】
基材層については、特に限定されないが、不透明な有色層であり、樹脂組成物からなることが好ましく、透明層と同様の塩化ビニル系樹脂組成物からなる樹脂層を含むことが好ましい。また基材層は単層でも複数の層からなるものでも良い。基材層が複数の層からなる場合には、例えば発泡樹脂層や、ガラス繊維やポリエステル繊維などの織布や不織布などの補強層など、塩化ビニル系シートの用途により適宜選択できる。また基材層の、少なくとも透明層が積層される面には、顔料による着色や印刷等による意匠が設けられていることが好ましい。
【0027】
塩化ビニル系シートを構成する透明層や、基材層に含まれる樹脂層等の各層は、所定の材料を混合し押出機やカレンダー等の成形機によって成形することで得られる。そして、塩化ビニル系シートはこれらの各層と必要に応じたその他の層を、熱や接着剤でラミネートすることで得ることができる。また、多層押出機を用いて各層を一度に成形するとともに積層を行うことでも得ることができる。
【0028】
また、塩化ビニル系シートの透明層の上面に、エンボス加工などによって凹凸を形成することもできる。凹凸加工を形成することにより、意匠性を付与できるとともに、例えば塩化ビニル系シートを床材用途に使用する場合には、防滑性を付与することもできる。
【実施例0029】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
実施例および比較例に使用した各配合剤は以下の通りである。
塩化ビニル系共重合体A-1:ポリ塩化ビニル (平均重合度1000)
可塑剤B-1:フタル酸エステル系可塑剤
光安定剤C-1:ベンゾフェノン系紫外線吸収剤
光安定剤C-2:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
界面活性剤D-1:カチオン界面活性剤
界面活性剤D-2:非イオン界面活性剤
滑剤E-1:ステアリン酸(外部滑剤)
滑剤E-2:ソルビタンエステル(内部滑剤)
ブルーム防止剤F-1:アルコキシグリコール誘導体
熱安定剤G-1:金属石鹸系複合安定剤
意匠付与材H-1:PBT樹脂チップとセルロース繊維の混合物
充填剤I-1:炭酸カルシウム
【0031】
実施例および比較例の耐候性試験用の試料作製は以下の手順で行った。
表1および2に記載の配合剤を撹拌して混合した後、180℃に設定した二本ロールにて混錬し、厚さ0.3mmの透明シートを成形した。この透明シートを予め用意した塩化ビニル樹脂製の有色シート(表3配合1、厚さ1.7mm)の上に重ね、170℃に設定した電気プレスで3分加圧後に3分冷却する工程を5回繰り返し、厚さ2.0mmの積層シートとした。
【0032】
耐候性試験は以下の手順で行った。
(1)試料(4cm×5cm)を60℃温水に6時間浸漬して取り出した後、室温で乾燥させる。
(2)70℃のオーブンに1時間入れ、取り出して室温まで冷却する。
(3)試料を促進耐候性試験機(ダイプラ・ウィンテス(株)製、型式:KW-R6TP-A、光源:メタルハライドランプ)に透明シート側が照射面となるように入れ、放射照度60W/m2、パネル温度63℃、槽内湿度50%RH、シャワーリング2時間間隔120秒噴射の条件にて、促進試験を168時間行う。
(4)試験後の、試料の透明シートの変色の有無を確認する。
<評価> ○:変色無し △:わずかに変色 ×:変色あり
(5)(1)~(4)を1サイクルとし、試料が変色するまで繰り返す。
【0033】
実施例3~10および比較例2の透明層の耐熱性試験(加工中の耐熱性を想定)は以下の手順で行った。
表1および2に記載の配合剤を撹拌して混合した後、180℃に設定した二本ロールにて混錬し、コンパウンドがロールに粘着するまでの時間を計測した。(計測時間は最長120分とし、120分で粘着しなかった場合も結果は120分としている。)
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
実施例1および2と比較例1、意匠付与材を添加した実施例3~10と比較例2の結果を対比すると、それぞれ実施例は耐候性が改善されており、変色し難いことが分かる。実施例3~6を比べると、界面活性剤の中でもカチオン界面活性剤が耐候性の向上効果が高いことが分かる。実施例7および8を比較すると、滑剤の中でも外部滑剤が耐候性の向上効果が高いことが分かる。カチオン界面活性剤は添加量が増えるとともに加工中の耐熱性は低下する傾向がありコストも上がるが、添加量の調整や滑剤との併用によって耐候性と耐熱性、コストのバランスの取れた塩化ビニル系シートとすることができる。
また、比較例1と比較例2とから意匠付与材を添加することで耐候性が低下していることが分かる。このように透明層に添加する意匠付与材によっては透明層の耐候性が低下する場合がある。しかし、本発明では意匠付与材を添加しても耐候性は添加しない場合と同等である(実施例1と実施例5、実施例2と実施例10)。よって本発明によれば意匠付与材を添加しても耐候性を維持できるため、屋外で使用可能な意匠性の高い塩化ビニル系シートとすることができる。