IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎エナジーシステム株式会社の特許一覧

特開2023-69859休憩地情報提示装置、労務管理装置、休憩地提示車載器、休憩地情報提示システム、及び休憩地提示プログラム
<>
  • 特開-休憩地情報提示装置、労務管理装置、休憩地提示車載器、休憩地情報提示システム、及び休憩地提示プログラム 図1
  • 特開-休憩地情報提示装置、労務管理装置、休憩地提示車載器、休憩地情報提示システム、及び休憩地提示プログラム 図2
  • 特開-休憩地情報提示装置、労務管理装置、休憩地提示車載器、休憩地情報提示システム、及び休憩地提示プログラム 図3
  • 特開-休憩地情報提示装置、労務管理装置、休憩地提示車載器、休憩地情報提示システム、及び休憩地提示プログラム 図4
  • 特開-休憩地情報提示装置、労務管理装置、休憩地提示車載器、休憩地情報提示システム、及び休憩地提示プログラム 図5
  • 特開-休憩地情報提示装置、労務管理装置、休憩地提示車載器、休憩地情報提示システム、及び休憩地提示プログラム 図6
  • 特開-休憩地情報提示装置、労務管理装置、休憩地提示車載器、休憩地情報提示システム、及び休憩地提示プログラム 図7
  • 特開-休憩地情報提示装置、労務管理装置、休憩地提示車載器、休憩地情報提示システム、及び休憩地提示プログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069859
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】休憩地情報提示装置、労務管理装置、休憩地提示車載器、休憩地情報提示システム、及び休憩地提示プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/0968 20060101AFI20230511BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230511BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20230511BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20230511BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20230511BHJP
   G06Q 50/30 20120101ALI20230511BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G08G1/0968 B
G08G1/09 F
G01C21/26 C
G08G1/13
G08G1/00 D
G06Q50/30
G07C5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182031
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏明
【テーマコード(参考)】
2F129
3E138
5H181
5L049
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB20
2F129CC19
2F129DD35
2F129DD39
2F129DD40
2F129EE93
2F129FF02
2F129FF20
2F129FF57
2F129FF60
2F129GG17
3E138AA07
3E138BA02
3E138BB04
3E138MA04
3E138MB08
3E138MB10
3E138MB12
3E138MC01
3E138MD05
5H181AA07
5H181BB04
5H181CC04
5H181FF05
5H181FF10
5H181FF13
5L049CC41
(57)【要約】
【課題】休憩が必要なときに車種に応じた適切な休憩地の情報を運転手に与えること。
【解決手段】各車両51の車載器10は、休憩の発生を検知して、位置、進行方向、車種、時間を含む休憩実績のデータをサーバ60に送信する。サーバ60は実績データを各車両51から収集して車種毎に区分された実績データベースを作る。各車両51の運転手が休憩の必要な状態になると、対象車両の現在位置、進行方向、車種等に基づき、サーバ60が実績データベースを検索して最適な休憩地の情報を選定し車載器10に送信する。車載器10は受信した休憩地の情報を運転手に提示する。対象車両の運行予定経路上以外の場所にある休憩地も提示できる。進行方向に適した休憩地を選定することで、大型車両でも利用しやすい休憩地を優先的に提示できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各車両に搭載された車載器を含む休憩地情報提示装置であって、
複数の車両の車載器からそれぞれ送信される休憩地を含む運行実績情報を収集して、車種毎に区分された休憩地実績データを生成する休憩地実績管理部と、
少なくとも各車両の車種情報、及び各車両の現在位置に基づいて、前記休憩地実績データの中から所定の条件を満たす特定休憩地を選定する休憩地選定部と、
前記休憩地選定部が選定した前記特定休憩地の情報を各車両の運転手に対して提示する休憩地提示部と、
を備えた休憩地情報提示装置。
【請求項2】
前記休憩地選定部は、少なくとも対象車両の現在の進行方向の違いを、前記特定休憩地の選定に反映する、
請求項1に記載の休憩地情報提示装置。
【請求項3】
各車両に搭載された車載器を含み、各車両の運転手を管理する労務管理装置であって、
各車両の運転手における休憩の有無を検知すると共に、休憩が終了した後の連続走行時間が所定の条件を満たす場合に予告警報を発生する警報出力部と、
前記予告警報が発生した場合に、事前に用意した所定のデータベースの休憩地実績データの中から、対象車両の現在位置、及び車種情報に基づいて所定の条件を満たす特定休憩地を選定する休憩地選定部と、
前記休憩地選定部が選定した前記特定休憩地の情報を対象車両の運転手に対して提示する休憩地提示部と、
を備えた労務管理装置。
【請求項4】
各車両に搭載された車載器を含み、各車両の運転手を管理する労務管理装置であって、
各車両の運転手における出勤時点からの拘束時間を管理する拘束時間管理部と、
各運転手の前記拘束時間が所定時間を超えた場合に、該当する車両の現在位置の情報を取得し、事前に用意した所定のデータベースの休憩地実績データの中から、対象車両の現在位置、及び車種情報に基づいて所定の条件を満たす特定休憩地を選定する休憩地選定部と、
前記休憩地選定部が選定した前記特定休憩地の情報を対象車両の運転手に対して提示する休憩地提示部と、
を備えた労務管理装置。
【請求項5】
自車両の車種を表す車種情報を保持する車種情報保持部と、
自車両の現在位置を表す情報を取得する現在位置取得部と、
自車両の運転手における休憩の有無を検知する休憩検知部と、
自車両の休憩状態が発生した場所を表す休憩位置情報を休憩実績として送信する休憩実績送信部と、
少なくとも休憩がない状態で所定時間を経過した場合に、自車両の現在位置および車種情報に応じて所定の実績データベースの中から選定された特定休憩地の情報を取得する休憩地情報取得部と、
前記休憩地情報取得部が取得した前記特定休憩地の情報を自車両の運転手に対して提示する休憩地提示部と、
を備えた休憩地提示車載器。
【請求項6】
各車両に搭載された車載器と、前記各車載器との間で通信が可能な後方端末とを含む休憩地情報提示システムであって、
前記後方端末は、複数の車両の車載器からそれぞれ送信される休憩地を含む運行実績情報を収集して、車種毎に区分された休憩地実績データを生成する休憩地実績管理部と、少なくとも各車両の車種情報、及び各車両の現在位置に基づいて、前記休憩地実績データの中から所定の条件を満たす特定休憩地を選定する休憩地選定部と、を有し、
前記各車載器は、前記休憩地選定部が選定した前記特定休憩地の情報を各車両の運転手に対して提示する休憩地提示部と、を有する、
休憩地情報提示システム。
【請求項7】
各車両に搭載された車載器と、前記各車載器との間で通信が可能な後方端末とを含むシステムを制御するコンピュータが実行可能な休憩地提示プログラムであって、
前記後方端末が、複数の車両の車載器からそれぞれ送信される休憩地を含む運行実績情報を収集して、車種毎に区分された休憩地実績データを生成するための休憩地実績管理手順と、
前記後方端末が、少なくとも各車両の車種情報、及び各車両の現在位置に基づいて、前記休憩地実績データの中から所定の条件を満たす特定休憩地を選定するための休憩地選定手順と、
前記各車載器が選定された前記特定休憩地の情報を各車両の運転手に対して提示するための休憩地提示手順と、
を有する、休憩地提示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、休憩地情報提示装置、労務管理装置、休憩地提示車載器、休憩地情報提示システム、及び休憩地提示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、運送会社や製造業などの企業においては、様々な種類の荷物を様々な種類のトラックを用いて出発地から目的地まで運送する業務を日常的に行っている。また、このような運送業務を行う企業においては、車両の安全な運転状態を維持するための管理や、運転手の健康を維持するための労務管理を行う必要がある。
【0003】
例えば、厚労省が定めた規則においては、長距離運送では「連続運転時間4時間毎に30分の休憩を確保すること」となっている。また、国土交通省が定めた「事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準」によれば、運転者の拘束時間、休息時間、最大運転時間、連続運転時間、休日労働などの基準が定められている。
【0004】
したがって、運転者の安全運転や労務管理を支援するための技術が従来より提案されている。特許文献1には、車載器が車両の休憩位置を検出してサーバへ送信することが開示されている。また、車載器がエリアマップを受信して、エリアマップの経路上に休憩地点がある場合にそれを乗務員に通知することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-21840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際にトラック等の車両が事前に定めた経路に沿って走行している場合に、運転手が「連続運転時間」や「拘束時間」の規制を遵守するために休憩しようとしても、休憩可能な適当な場所が見つからない場合がある。
【0007】
特に、大型のトラックや大型のトレーラなどの車両の場合には、駐車するために広いスペースを必要としたり、対向車線側に駐車スペースがあったとしても道路で容易にUターンできないので、適当な駐車場所を見つけるのが難しい。
【0008】
また、「拘束時間」等の規制を遵守するために、事前に指定された時間帯に事前に指定された休憩場所で休息するように、運行計画に従って車両が運行される場合もある。しかし、例えば道路の渋滞や道路工事などの状況に起因して、運行計画により指定された特定の休憩場所に所定時刻までに車両がたどり着けない場合もある。そのような場合、運転手は指定とは異なる別の休憩場所を地図などから探してその場所まで走行する必要がある。しかし、運転手が自分で見つけた休憩場所のスペースが自車両のサイズに比べて狭かったり満車状態であると、その休憩場所の利用をあきらめて、運行計画により指定された本来の休憩場所まで走行を続けざるを得ない。その結果、当該運転手の「拘束時間」等が規制値(例えば13時間)を超過してから休息に移行する状況が発生してしまう。
【0009】
また、特許文献1の技術を採用する場合には、事前に定めた経路上の休憩地点のみを管理しているので、実際に利用可能な休憩地点が近くに存在する場合でも、その休憩地点の情報を運転手に知らせることができない。更に、それぞれの車両が実際に駐車可能な広さの空間が休憩地点に存在するのか否かを知ることができない。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、休憩が必要なときに車種に応じた適切な休憩地の情報を運転手に与えるために役立つ休憩地情報提示装置、労務管理装置、休憩地提示車載器、休憩地情報提示システム、及び休憩地提示プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
各車両に搭載された車載器を含む休憩地情報提示装置であって、
複数の車両の車載器からそれぞれ送信される休憩地を含む運行実績情報を収集して、車種毎に区分された休憩地実績データを生成する休憩地実績管理部と、
少なくとも各車両の車種情報、及び各車両の現在位置に基づいて、前記休憩地実績データの中から所定の条件を満たす特定休憩地を選定する休憩地選定部と、
前記休憩地選定部が選定した前記特定休憩地の情報を各車両の運転手に対して提示する休憩地提示部と、
を備えた休憩地情報提示装置。
【0012】
各車両に搭載された車載器を含み、各車両の運転手を管理する労務管理装置であって、
各車両の運転手における休憩の有無を検知すると共に、休憩が終了した後の連続走行時間が所定の条件を満たす場合に予告警報を発生する警報出力部と、
前記予告警報が発生した場合に、事前に用意した所定のデータベースの休憩地実績データの中から、対象車両の現在位置、及び車種情報に基づいて所定の条件を満たす特定休憩地を選定する休憩地選定部と、
前記休憩地選定部が選定した前記特定休憩地の情報を対象車両の運転手に対して提示する休憩地提示部と、
を備えた労務管理装置。
【0013】
各車両に搭載された車載器を含み、各車両の運転手を管理する労務管理装置であって、
各車両の運転手における出勤時点からの拘束時間を管理する拘束時間管理部と、
各運転手の前記拘束時間が所定時間を超えた場合に、該当する車両の現在位置の情報を取得し、事前に用意した所定のデータベースの休憩地実績データの中から、対象車両の現在位置、及び車種情報に基づいて所定の条件を満たす特定休憩地を選定する休憩地選定部と、
前記休憩地選定部が選定した前記特定休憩地の情報を対象車両の運転手に対して提示する休憩地提示部と、
を備えた労務管理装置。
【0014】
自車両の車種を表す車種情報を保持する車種情報保持部と、
自車両の現在位置を表す情報を取得する現在位置取得部と、
自車両の運転手における休憩の有無を検知する休憩検知部と、
自車両の休憩状態が発生した場所を表す休憩位置情報を休憩実績として送信する休憩実績送信部と、
少なくとも休憩がない状態で所定時間を経過した場合に、自車両の現在位置および車種情報に応じて所定の実績データベースの中から選定された特定休憩地の情報を取得する休憩地情報取得部と、
前記休憩地情報取得部が取得した前記特定休憩地の情報を自車両の運転手に対して提示する休憩地提示部と、
を備えた休憩地提示車載器。
【0015】
各車両に搭載された車載器と、前記各車載器との間で通信が可能な後方端末とを含む休憩地情報提示システムであって、
前記後方端末は、複数の車両の車載器からそれぞれ送信される休憩地を含む運行実績情報を収集して、車種毎に区分された休憩地実績データを生成する休憩地実績管理部と、少なくとも各車両の車種情報、及び各車両の現在位置に基づいて、前記休憩地実績データの中から所定の条件を満たす特定休憩地を選定する休憩地選定部と、を有し、
前記各車載器は、前記休憩地選定部が選定した前記特定休憩地の情報を各車両の運転手に対して提示する休憩地提示部と、を有する、
休憩地情報提示システム。
【0016】
各車両に搭載された車載器と、前記各車載器との間で通信が可能な後方端末とを含むシステムを制御するコンピュータが実行可能な休憩地提示プログラムであって、
前記後方端末が、複数の車両の車載器からそれぞれ送信される休憩地を含む運行実績情報を収集して、車種毎に区分された休憩地実績データを生成するための休憩地実績管理手順と、
前記後方端末が、少なくとも各車両の車種情報、及び各車両の現在位置に基づいて、前記休憩地実績データの中から所定の条件を満たす特定休憩地を選定するための休憩地選定手順と、
前記各車載器が選定された前記特定休憩地の情報を各車両の運転手に対して提示するための休憩地提示手順と、
を有する、休憩地提示プログラム。
【発明の効果】
【0017】
本発明の休憩地情報提示装置、労務管理装置、休憩地提示車載器、休憩地情報提示システム、及び休憩地提示プログラムは、休憩が必要なときに車種に応じた適切な休憩地の情報を運転手に与えるために役立てることが可能である。
【0018】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態に係る休憩地情報提示システムの構成例を示すブロック図である。
図2図2は、車載器のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3図3は、休憩地の実績データを生成するための各部の処理を示すフローチャートである。
図4図4は、運行実績データベースの構成例を示す模式図である。
図5図5は、連続走行時間の予告警報が発生する場合の各部の動作を示すフローチャートである。
図6図6は、拘束時間を管理するための各部の動作を示すフローチャートである。
図7図7は、休憩実績データの処理に関する詳細を示すフローチャートである。
図8図8は、大型駐車場に関連する休憩実績データの処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る休憩地情報提示システム100の構成例を示すブロック図である。
【0022】
図1に示した車両51は、例えば日常的に様々な荷物の運送業務を行う運送会社により管理されている。車両51の車種としては、大型トラック、大型トレーラ、中型トラック、小型トラックなどが想定される。すなわち、運送会社は、運送する荷物の種類、それぞれの荷物の大きさ、1回で運送する荷物の数量などに応じて適切な車種の車両51を適宜使い分ける。
【0023】
運送会社が管理している各車両51は、運転席の近傍の位置に車載器10を搭載している。この車載器10は、一般的なデジタルタコグラフと同様に、車両51の運行状況の実績データを自動的に記録する機能を搭載している。更に、本実施形態の車載器10は、適切な休憩地の情報を運転者に対して提示するための機能を備えている。
【0024】
また、車載器10は、無線通信機能を有し、アンテナ52を介して広域通信網53との間でデータ通信することができる。
【0025】
一方、各車両51及びそれを運転する乗務員を管理する運送会社等の事務所には、事務所PC(パーソナルコンピュータ)70が設置されている。事務所PC70は、各乗務員の労務管理などを行うために必要な各種のアプリケーションソフトウェアを搭載している。例えば、事務所PC70は、各乗務員が出勤した時にその時刻を把握したり、退勤する時にその時刻を把握することができる。事務所PC70は、通信機能を備えており、必要に応じてインターネット網54と接続することができる。
【0026】
一方、サーバ60は、所定のデータセンタなどに設置されている。サーバ60は、インターネット網54と接続され、インターネット網54を介して事務所PC70との間で通信することができる。また、サーバ60は、広域通信網53を介して各車両51の車載器10との間で通信することができる。
【0027】
本実施形態の休憩地情報提示システム100においては、サーバ60は、次のような機能を備えている。
(1)各車両51の車載器10から運行実績のデータを収集し、休憩地の履歴に基づいて適切な休憩地のデータベースを作成する。
(2)連続走行時間の予告警報などにより、各車両51の車載器10が休憩地の情報を必要とする場合に、適切な休憩地点の情報を車載器10に送信する。
(3)乗務員毎の拘束時間を管理し、拘束時間が法令などの基準を超える前に、適切な休憩地点の情報を車載器10に送信する。
(4)作成した休憩地のデータベースの信頼性を高めるための処理を行う。
上記(1)~(4)の各機能は、休憩地情報提示システム100を実現するためのアプリケーションソフトウェアをサーバ60のコンピュータに組み込むことで実現される。
【0028】
図2は、車載器10のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態に係る車載器10は、CPU11、速度信号処理部12、エンジン信号処理部13、GPS受信機14、アナログ信号処理部15、外部入力処理部16、広域通信モジュール17、不揮発性メモリ18、揮発性メモリ19、SDカード20、SW入力部21、及び液晶表示部22を備えている。
【0029】
CPU11は、マイクロコンピュータの主要な機能を搭載した集積回路により構成されている。このCPU11は、予め用意されたプログラムを実行することにより、車載器10に必要とされる様々な機能を実現するための処理を状況に応じて行う。
【0030】
速度信号処理部12は、車両側から出力される車速バルス信号を入力し、CPU11が自車両の走行速度(車速:km/h)を把握するために必要な信号を生成する。
エンジン信号処理部13は、車両側から出力されるエンジン回転信号を入力し、CPU11が自車両のエンジンの回転速度(rpm)を把握するために必要な信号を生成する。
【0031】
GPS受信機14は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの電波をそれぞれ受信して、受信した電波の時刻情報に基づいて自車両の現在位置を表す緯度/経度を算出することができる。
【0032】
アナログ信号処理部15は、例えば温度センサなどが出力する各種のアナログ信号を入力して、CPU11により処理可能なデジタル信号を生成することができる。
外部入力処理部16は、例えば図示しない車載カメラの出力する映像などの信号を入力してCPU11に与えることができる。また、車両51側から出力されるイグニッション信号IGNがCPU11に入力される。
【0033】
広域通信モジュール17は、例えばLTE(Long Term Evolution)などの通信規格に対応した無線データ通信を可能にするモジュールである。CPU11は、広域通信モジュール17を利用することで、アンテナ52を介して広域通信網53と接続することができる。
【0034】
不揮発性メモリ18は、車載器10の機能を実現するために必要な予め用意されたプログラム、定数データ、テーブルなどのデータを保持している。また、本実施形態では車種情報18aが不揮発性メモリ18の所定領域に保持されている。
【0035】
この車種情報18aは、この車載器10を搭載した車両51の種類を表すものであり、例えば大型トラック、大型トレーラ、中型トラック、小型トラックなどの区分を識別可能なデータである。
【0036】
揮発性メモリ19は、CPU11が一時的に使用するデータや、車載カメラで撮影した画像のデータなどを一時的に保持するために利用される記憶領域を有している。
SDカード20は、車載器10に組み込まれたカードリーダのスロットに着脱自在に取り付けられている。例えば、車両51の乗務員がSDカード20を取り外して持ち運び、事務所PC70との間でデータ転送を行うことが可能である。SDカード20の記憶領域は、乗務員毎の管理情報を保持したり、車両51の運行経路上にある危険性の高い場所を表すハザードマップのデータなどを格納するために利用される。
【0037】
SW(スイッチ)入力部21は、運転席に着座している乗務員(運転手)等が操作可能な位置にある各種ボタンに対する入力操作を受付可能な複数のスイッチを備えている。
液晶表示部(LCD)22は、CPU11の制御により各種文字、記号、数字、図形、イメージなどの可視情報を必要に応じて表示可能な画面を有している。また、案内用の音声を出力する機能も液晶表示部22に含まれている。
【0038】
図3は、休憩地の実績データを生成するための各部の処理を示すフローチャートである。図3の処理について以下に説明する。
【0039】
車載器10のCPU11は、所定のSDカード20が車載器10に装着され、イグニッション信号IGNがオンになり、車両51が動き始めたことを認識すると、車両51の運行が開始されたものとみなす(S11)。なお、SDカード20は例えば企業がそれぞれの乗務員に割り当てたIDなどの管理情報等を保持している。
【0040】
この後、車載器10のCPU11は、車速やイグニッション信号IGNのオンオフを例えば定期的に監視することで、自車両における運転者が「休憩」を開始した状態および「休憩」を終了した状態を検知できる。
【0041】
「休憩」状態が発生し、それが終了すると、CPU11の処理はS12からS13に進む。そして、CPU11は今回の「休憩」を表す1組の実績データをS13でサーバ60に送信する。ここで送信する1組の実績データの中には、休憩開始時刻、休憩地点の緯度/経度、休憩終了時刻(又は休憩時間の長さ)、及び車種の情報が含まれている。
【0042】
なお、「休憩開始時刻」等の時刻は、例えばGPS受信機14が把握している現在時刻に基づいて特定できる。また、緯度/経度の情報は、自車両が「休憩」状態で停車している時にGPS受信機14が算出した現在位置である。車種の情報は、不揮発性メモリ18が保持している車種情報18aと同じ内容である。
【0043】
車載器10のCPU11は、1組の実績データを送信した後、車両51が動き始めたことを認識すると、車両51の運行が再開されたものとみなす(S14)。
この後、車載器10のCPU11は、再び車速やイグニッション信号IGNのオンオフを監視することで、「休憩」の発生を検知できる。そして、「休憩」の発生を検知すると、上記S12、S13と同じ処理をCPU11が再び行う。
【0044】
一方、サーバ60は、車載器10がS13で送信した1組の実績データをS21で受信すると、その内容の解析を実施する。すなわち、休憩開始時刻、緯度/経度、休憩終了時刻(又は休憩時間の長さ)、及び車種の情報をそれぞれ抽出してその休憩実績の内容を把握する。
【0045】
サーバ60は、今回の休憩に関する休憩時間の長さをS22、S24でそれぞれ事前に定めた閾値と比較する。そして、休憩時間の長さが10分未満の場合はS23に進む。この場合は、休憩時間が短すぎるので今回の実績データを休憩の実績として採用せず無効化するように扱う。
【0046】
今回の休憩に関する休憩時間の長さが10分以上、且つ4時間未満の場合は、サーバ60の処理はS24からS25に進む。この場合は、サーバ60は今回の実績データを「休憩」が可能な実績として採用しS25で運行実績データベース61に登録する。
【0047】
また、今回の休憩に関する休憩時間の長さが4時間以上の場合は、サーバ60の処理はS24からS26に進む。この場合は、サーバ60は今回の実績データを「休息」が可能な実績として採用しS26で運行実績データベース61に登録する。
【0048】
図4は、運行実績データベース61の構成例を示す模式図である。
図4に示した例では、運行実績データベース61は複数の休憩地実績データD01、D02を保持している。また、それぞれの休憩地実績データD01、D02は、データ番号61a、緯度61b、経度61c、地名61d、ステータス61e、及び車種区分61fの各データ項目を含んでいる。
【0049】
また、図4中の休憩地実績データD01は、ステータス61eが「休憩」、車種区分61fが「大型」として運行実績データベース61に登録されている。これは、この休憩実績が発生した特定の車両51の車種が大型車であり、その車両51に搭載された車載器10の不揮発性メモリ18に保持されている車種情報18aの内容が「大型」であることを意味している。また、この休憩実績における休憩時間の長さが、10分以上、且つ4時間未満であることを意味している(図3の処理を行う場合)。
【0050】
また、休憩地実績データD02は、ステータス61eが「休息」、車種区分61fが「大型トレーラ」として運行実績データベース61に登録されている。これは、この休憩実績が発生した特定の車両51の車種が大型トレーラであり、その車両51に搭載された車載器10の不揮発性メモリ18に保持されている車種情報18aの内容が「大型トレーラ」であることを意味している。また、この休憩実績における休憩時間の長さが、4時間以上であることを意味している(図3の処理を行う場合)。
【0051】
図5は、連続走行時間の予告警報が発生する場合の各部の動作を示すフローチャートである。
【0052】
例えば、厚労省が定めた規則においては、長距離運送では「連続運転時間4時間毎に30分の休憩を確保すること」となっている。すなわち、運転者が長距離運送の途中で休憩し、連続的に長時間に亘って運転するのを避けることで安全な運転状態の維持が容易になる。
【0053】
この規則の遵守を支援するために、図1の休憩地情報提示システム100は、連続運転時間が規則に違反する状態になる前に、連続走行時間の予告警報を自動的に発生し、運転者に対して「休憩」が可能な場所を案内することができる。図5に示した動作について以下に説明する。
【0054】
車載器10のCPU11は、休憩が発生した後(S14以降)の連続運転時間の長さを常時把握している。そして、連続運転時間が4時間に到達する前に、S15で連続走行時間の予告警報を発生する。具体的には、自車両の現在位置(緯度/経度)、進行方向、平均走行速度、及び自車両の車種の情報を含む予告警報をサーバ60に送信する。
【0055】
なお、自車両の進行方向は、例えば自車両の現在位置の変化に基づいて特定可能である。また、平均走行速度は把握している車速を平均化処理することで算出できる。また、自車両の車種の情報は不揮発性メモリ18から車種情報18aとして取得できる。
【0056】
サーバ60は、各車両51の車載器10から連続走行時間の予告警報を受信すると、この予告警報に含まれている現在位置、進行方向、平均速度、車種の情報に基づいて、運行実績データベース61に登録されている休憩地の実績データの中から、最適な休憩地点を検索して特定する。
【0057】
ここで、サーバ60が該当車両の現在位置を考慮して検索することで、現在位置に近い場所にある休憩地点を優先的に選定できる。また、該当車両の進行方向を考慮して検索することで、休憩地点に向かうために該当車両がUターンをする必要のない方向にある休憩地点を優先的に選定できる。例えば、大型車両の場合は一般的な道路上ではUターンが難しい場合が多いので、反対側の車線に沿って存在する休憩地点の選択を抑制することが望ましい。また、サーバ60が該当車両の平均速度を考慮して検索することで、それぞれの休憩地点に到着する予定時刻の推定が可能になり、連続走行時間が規制値を超えるのを防止するために最適な休憩地点の選択が容易になる。
【0058】
また、他の車両が過去に休憩地点として実際に利用した場所であっても、大型の車両は十分な広さのスペースがないと駐車できないので、全ての実績データの休憩地点が実際に利用できるわけではない。したがって、サーバ60が該当車両の車種、特に大きさ等を考慮して検索することで、該当する車両が利用不可能な休憩地点の選択を排除できる。
【0059】
サーバ60は、連続走行時間の予告警報が発生した車両にとって最適な休憩地点を表すS27の検索結果を、予告警報の送信元の車載器10に向けてS28で送信する。
連続走行時間の予告警報が発生した車両の車載器10は、該当する車両を適切な休憩地点に案内するための処理PR1を実施する。
【0060】
すなわち、車載器10のCPU11は、サーバ60から送信される休憩地点の情報をS16で受信して、その休憩地点の地名や現在地点から休憩地点までの距離を把握する。更に、車載器10のCPU11は、液晶表示部22を用いた画面表示や音声出力を利用して、目的地である休憩地点の地名や現在地点から休憩地点までの距離の情報をS17で報知し運転者を案内する。
【0061】
また、車載器10のCPU11は、自車両の走行距離の増加分を逐次減算することにより、現在地点から休憩地点までの残りの距離を繰り返し算出し、休憩地点に到着して残りの距離が0になるとS18からS19の処理に進む。そして、車載器10のCPU11は、自車両が目的の休憩地点に到着したことを液晶表示部22を用いた画面表示や音声出力を利用して運転者に知らせる(S19)。
【0062】
なお、サーバ60は、連続走行時間の予告警報を車載器10から受信した場合に、それを事務所PC70に送信する。また、事務所PC70は、受信した予告警報を画面上に表示できる。したがって、事務所PC70を操作する管理者は、連続走行時間の車両毎の予告警報を事務所PC70の画面表示により確認できる。
【0063】
図6は、拘束時間を管理するための各部の動作を示すフローチャートである。
国土交通省が定めた「事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準」によれば、運転者の拘束時間、休息時間、最大運転時間、連続運転時間、休日労働などの基準が定められている。
【0064】
したがって、運転者の労務管理を行う企業は、例えば各運転者の当日の「拘束時間」が基準値(例えば13時間、又は16時間)を超えないように管理しなければならない。休憩地情報提示システム100は、この「拘束時間」の管理を支援する機能を備えている。すなわち、図6に示した動作により各運転者の「拘束時間」が基準値を超過しないように労務管理を支援できる。図6の動作について以下に説明する。
【0065】
それぞれの乗務員(車両の運転者)は、企業の事務所に出勤すると、所定の出勤手続きを行う。この手続きにより事務所PC70はそれぞれの乗務員が出勤した時刻を把握できる。そして、事務所PC70はそれぞれの乗務員が出勤した時刻を表す情報をS31でサーバ60に送信する。
【0066】
サーバ60は、事務所PC70からの出勤の情報をS41で受信すると、次のS42で乗務員毎に「拘束時間」のカウントを開始する。ここで、「拘束時間」は出勤時刻からの経過時間としてカウントされるが、サーバ60は、車両毎に「休憩」が発生した時間の長さ(休憩時間)をS21で把握できるので、「休憩」を検出する度に、今回の休憩時間を差し引くように「拘束時間」を自動的に修正する。
【0067】
サーバ60は、乗務員毎の「拘束時間」を定期的に確認し、規則で定められた基準値(例えば13時間)よりも小さい事前に定めた閾値の「12時間」と「拘束時間」をS43で比較する。そして、「拘束時間」が「12時間」に到達すると次のS44の処理に進む。
【0068】
サーバ60は、該当する乗務員が運転している車両51に搭載された車載器10に対して、現在の位置情報、進行方向、平均走行速度、及び車種の各情報の送信を要求する(S44)。
【0069】
一方、各車両51に搭載された車載器10は、自車両の運行開始をS51で検知した後で、現在位置、進行方向、平均走行速度などの運行状況を常時把握している。また、自車両の車種は、車種情報18aにより把握できる。したがって、車載器10は、サーバ60からの送信要求をS52で受信すると、それに応答して、現在の位置情報(緯度/経度)、進行方向、平均走行速度、及び車種の情報をS53で送信する。
【0070】
サーバ60は、要求先の車載器10からの情報をS45で受信した後、受信した情報に含まれている現在位置、進行方向、平均走行速度、及び車種に基づいて運行実績データベース61を検索し、最適な休憩地点(休息が可能な場所)の情報をS46で抽出する。
【0071】
ここで、サーバ60が該当車両の現在位置を考慮して検索することで、現在位置に近い場所にある休憩地点を優先的に選定できる。また、該当車両の進行方向を考慮して検索することで、休憩地点に向かうために該当車両がUターンをする必要のない方向にある休憩地点を優先的に選定できる。例えば、大型車両は、一般的な道路上ではUターンが難しいので、サーバ60は、反対側の車線に沿って存在する休憩地点の選択を抑制することが望ましい。また、サーバ60が該当車両の平均速度を考慮して検索することで、それぞれの休憩地点に到着する予定時刻の推定が可能になり、該当する運転者の「拘束時間」が規制値を超えるのを防止するために最適な休憩地点の選択が容易になる。
【0072】
また、他の車両が過去に休憩地点として実際に利用した場所であっても、大型の車両は十分な広さのスペースがないと駐車できないので、全ての実績データの休憩地点が実際に利用できるわけではない。したがって、サーバ60は、該当車両の車種、特に大きさ等を考慮して検索することで、該当する車両が利用不可能な休憩地点の選択を排除できる。また、サーバ60は、運行実績データベース61におけるステータス61eが「休息」になっている休憩地点を優先的に選択することで、長時間の休息が必要な運転者にとって利便性の高い場所を選択できる。
【0073】
サーバ60は、該当する乗務員が運転している車両51に搭載された車載器10に対して、S46で選択した特定の休憩地点を表す情報をS47で送信する。
【0074】
車載器10は、S54でサーバ60から休憩地点の情報を受信すると、図5に示した処理PR1と同様の動作を実行する。したがって、該当する運転者の「拘束時間」が規制値を超える前に、長時間の「休息」が可能な休憩地点に向かうように運転者を案内することができる。
【0075】
図7は、休憩実績データの処理に関する詳細を示すフローチャートである。
運行実績データベース61に登録してある各休憩地の実績データについては、実際に各車両の運転者が休憩や休息のための駐車スペースとして利用可能な信頼できるものであることが望ましい。図7に示した処理を例えばサーバ60が実施することにより、運行実績データベース61上の各休憩地の実績データの信頼性を向上することができる。
【0076】
なお、図7に示した処理においては、車載器10に車載カメラが接続され、車両が休憩状態になった時に車両の前方又は後方を撮影した画像のデータを取得可能な場合を想定している。図7に示した処理をサーバ60が実行する場合について以下に説明する。
【0077】
サーバ60は、例えば図3に示したS21で車載器10から休憩実績のデータを取得できる。この休憩実績のデータを受信した時に、サーバ60は、図7のS101からS102の処理に進む。そして、サーバ60は、休憩中に車載カメラで撮影した画像を車載器10から更に取得し、この画像をS102で解析して路上駐車か否かをS102で識別する。なお、サーバ60の代わりに車載器10が路上駐車か否かの識別を行ってもよい。
【0078】
サーバ60は、路上駐車を検知した場合はS103からS104の処理に進み、今回の休憩実績を休憩地点の対象から除外する。したがって、運転者が道路上に車両51を止めた状態で休憩した場合には、その休憩地点は運行実績データベース61に登録されない。
【0079】
サーバ60は、路上駐車ではないことを検知した場合はS103からS105の処理に進む。そして、今回の休憩実績を運行実績データベース61に休憩地点として登録する。また、サーバ60は、場所がほぼ同じ休憩地点の休憩実績が既に運行実績データベース61に登録されている場合には、同じ休憩地点の休憩実績を1つに纏めると共に、その検出回数を管理する。また、運行実績データベース61に登録されている休憩実績のうち、検出回数が所定回数(N回)以上になったもののみを有効な休憩地のデータとして扱う。
【0080】
例えば、運転者が路上駐車の状態で休憩したような場合には、同じ地点で休憩実績が繰り返し発生する可能性は小さい。したがって、検出回数が所定回数以上の休憩実績のみを有効な休憩地として扱うことにより、路上駐車の休憩地を運行実績データベース61から排除することが可能になる。
【0081】
サーバ60は、休憩地点情報の送信履歴をS106で参照する。例えば、サーバ60が特定の車両51に対して図5のS28で休憩地点P1の情報を送信した場合に、それを履歴として記憶しておき、次に同じ車両51から休憩地点P2の休憩実績データが送信された場合に、休憩地点P1の情報をS106で取得する。そして、サーバ60は次のS107で休憩地点P1、P2が一致するか否かを識別する。
【0082】
休憩地点P1、P2が不一致であることを検知した場合は、サーバ60は、S107からS108の処理に進む。そして、直前にサーバ60が送信した休憩地点P1の情報に割り当てた不使用回数Nzに「1」を加算してそれを運行実績データベース61で記憶する。更に、サーバ60は、S108で加算した後の不使用回数Nzを事前に定めた閾値Nmaxと比較し、不使用回数Nzが閾値Nmaxを超えた場合はS110の処理に進む。
【0083】
サーバ60は、不使用回数Nzが閾値Nmaxを超えた休憩地点P1について、運行実績データベース61に登録されている内容をS110で無効化あるいは削除する。
【0084】
つまり、S107で不一致が発生した場合には、適切な休憩地としてサーバ60が判断した休憩地点P1に当該車両が向かわずに別の場所で運転者が休憩したことになるので、休憩地点P1の信頼性に問題がある可能性がある。また、サーバ60が選択した同じ休憩地点P1が休憩に利用されなかった回数が閾値Nmaxを超えた場合には、休憩地点P1は休憩地として不適切である可能性が高いので運行実績データベース61の登録から除外する。例えば、過去に利用できた駐車場であっても、様々な要因により閉鎖されて利用できなくなる場合がある。そのような休憩地点は、この先も休憩に利用できない可能性が高いので運行実績データベース61の登録から抹消するのが望ましい。
【0085】
図8は、大型駐車場に関連する休憩実績データの処理の詳細を示すフローチャートである。
【0086】
例えば、比較的大型のサービスエリアのような駐車場を利用する場合には、共通の場所であるにもかかわらず、互いに距離が近い様々な休憩位置で、休憩の実績データが各車両51の車載器10からサーバ60に送信される可能性が高い。したがって、同じ休憩地の実績データが運行実績データベース61上に多数重複した状態で登録される可能性が高い。サーバ60が、図8に示した処理を実行することで、共通の休憩地の多数の実績データが1つに纏められる。これにより、運行実績データベース61におけるデータ量を減らすと共に処理の効率を改善することが可能になる。
【0087】
図8の処理について以下に説明する。
サーバ60は、運行実績データベース61に登録されている様々な休憩地点のそれぞれについてS111で順番に位置データPxを取得する。
【0088】
サーバ60は、位置データPxの位置が道路地図などに登録されている大型駐車場の近傍である場合に、該当する大型駐車場の領域の範囲と位置データPxとをS112で比較する。そして、位置データPxが大型駐車場の領域の範囲内に存在する場合には、S113からS114の処理に進み、該当する休憩地点の実績データと大型駐車場の領域とを対応付ける。
【0089】
運行実績データベース61上の全ての休憩地についてS111~S114の処理が終了すると、サーバ60は、S115からS116の処理に進む。そして、サーバ60は、共通の大型駐車場に対応付けられた複数の休憩地点の実績データを1つに纏めて運行実績データベース61に登録し直す。
【0090】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0091】
例えば、図1に示した休憩地情報提示システム100においては、休憩地の運行実績データベース61を管理するためにサーバ60が必要不可欠であるが、事前に作成した運行実績データベース61と共通のデータを例えばSDカード20を用いて車載器10上に配置することもできる。このデータベースがSDカード20上にある場合は、運行実績データベースを検索する機能(S27)を車載器10側にも搭載することで、サーバ60との間で通信しなくても車載器10が単独で休憩地の情報を運転手に提示できる。
【0092】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る休憩地情報提示装置、労務管理装置、休憩地提示車載器、休憩地情報提示システム、及び休憩地提示プログラムの特徴をそれぞれ以下[1]~[7]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 各車両に搭載された車載器(10)を含む休憩地情報提示装置であって、
複数の車両の車載器からそれぞれ送信される休憩地を含む運行実績情報を収集して(S21)、車種毎に区分された休憩地実績データ(運行実績データベース61)を生成する(S25、S26)休憩地実績管理部(サーバ60)と、
少なくとも各車両の車種情報、及び各車両の現在位置に基づいて、前記休憩地実績データの中から所定の条件を満たす特定休憩地を選定する(S27)休憩地選定部(サーバ60)と、
前記休憩地選定部が選定した前記特定休憩地の情報を各車両の運転手に対して提示する(S17)休憩地提示部(車載器10)と、
を備えた休憩地情報提示装置。
【0093】
上記[1]の構成の休憩地情報提示装置によれば、休憩地の実績を車種毎に区分した状態で管理しているので、それぞれの車両に適した休憩地で運転手が休憩するように案内することができる。例えば、大型トラックであっても、大型トラックが実際に駐車可能な条件を満たす特定の休憩地のみを自動的に選定して運転手に提示することができる。また、各車両の走行予定経路上に存在しない休憩地であっても、過去の休憩実績に基づいて選定し案内することができる。
【0094】
[2] 前記休憩地選定部は、少なくとも対象車両の現在の進行方向の違いを、前記特定休憩地の選定に反映する(S27)、
上記[1]に記載の休憩地情報提示装置。
【0095】
上記[2]の構成の休憩地情報提示装置によれば、対象車両の現在の進行方向に適した休憩地を自動的に選定できる。例えば、大型車の場合は一般的な道路上でUターンすることが難しいが、対象車両がUターンすることなくそのまま走行してたどり着ける休憩地を優先的に選定することで、休憩地に到着するまでの所要時間や走行距離を短縮すると共に運転手の利便性を改善できる。
【0096】
[3] 各車両に搭載された車載器を含み、各車両の運転手を管理する労務管理装置であって、
各車両の運転手における休憩の有無を検知すると共に、休憩が終了した後の連続走行時間が所定の条件を満たす場合に予告警報を発生する(S15)警報出力部(車載器10)と、
前記予告警報が発生した場合に、事前に用意した所定のデータベースの休憩地実績データの中から、対象車両の現在位置、及び車種情報に基づいて所定の条件を満たす特定休憩地を選定する(S27)休憩地選定部(サーバ60)と、
前記休憩地選定部が選定した前記特定休憩地の情報を対象車両の運転手に対して提示する(S17)休憩地提示部(車載器10)と、
を備えた労務管理装置(休憩地情報提示システム100)。
【0097】
上記[3]の構成の労務管理装置によれば、連続走行時間が法令に違反した状態になる前に、自動的に予告警報を発生すると共に、休憩に利用可能な適切な休憩地を運転手に対して提示できる。したがって、法令の遵守を支援し、車両運行の安全を確保することが容易になる。
【0098】
[4] 各車両に搭載された車載器を含み、各車両の運転手を管理する労務管理装置であって、
各車両の運転手における出勤時点からの拘束時間を管理する(S31、S41~S43)拘束時間管理部(サーバ60)と、
各運転手の前記拘束時間が所定時間を超えた場合に、該当する車両の現在位置の情報を取得し(S44、S45)、事前に用意した所定のデータベースの休憩地実績データの中から、対象車両の現在位置、及び車種情報に基づいて所定の条件を満たす特定休憩地を選定する(S46)休憩地選定部(サーバ60)と、
前記休憩地選定部が選定した前記特定休憩地の情報を対象車両の運転手に対して提示する(S17)休憩地提示部(10)と、
を備えた労務管理装置(休憩地情報提示システム100)。
【0099】
上記[4]の構成の労務管理装置によれば、各車両の運転手の拘束時間が法令に違反した状態になる前に、休息のために利用可能な適切な休憩地を運転手に対して提示できる。したがって、法令の遵守を支援し、車両運行の安全も確保できる。
【0100】
[5] 自車両の車種を表す車種情報(18a)を保持する車種情報保持部(不揮発性メモリ18)と、
自車両の現在位置を表す情報を取得する現在位置取得部(GPS受信機14)と、
自車両の運転手における休憩の有無を検知する(S12)休憩検知部(CPU11)と、
自車両の休憩状態が発生した場所を表す休憩位置情報を休憩実績として送信する(S13)休憩実績送信部(CPU11)と、
少なくとも休憩がない状態で所定時間を経過した場合に、自車両の現在位置および車種情報に応じて所定の実績データベースの中から選定された特定休憩地の情報を取得する(S15、S16)休憩地情報取得部(CPU11)と、
前記休憩地情報取得部が取得した前記特定休憩地の情報を自車両の運転手に対して提示する(S17)休憩地提示部(CPU11)と、
を備えた休憩地提示車載器(車載器10)。
【0101】
上記[5]の構成の休憩地提示車載器によれば、自車両の休憩実績に基づいて、休憩に利用可能な駐車場等の休憩地の収集に役立つ情報をサーバ等に提供できる。特に、自車両の車種を含む実績情報を送信するので、車種毎の休憩実績を区分して管理可能になる。また、自車両の連続走行時間が法令に違反した状態になる前に、休憩に利用可能な適切な休憩地の情報を取得して運転手に提示できる。
【0102】
[6] 各車両に搭載された車載器(10)と、前記各車載器との間で通信が可能な後方端末(サーバ60)とを含む休憩地情報提示システムであって、
前記後方端末は、複数の車両の車載器からそれぞれ送信される休憩地を含む運行実績情報を収集して(S21)、車種毎に区分された休憩地実績データを生成する(S22~S26)休憩地実績管理部(サーバ60)と、少なくとも各車両の車種情報、及び各車両の現在位置に基づいて、前記休憩地実績データの中から所定の条件を満たす特定休憩地を選定する(S27)休憩地選定部(サーバ60)と、を有し、
前記各車載器は、前記休憩地選定部が選定した前記特定休憩地の情報を各車両の運転手に対して提示する(S17)休憩地提示部(CPU11)と、を有する、
休憩地情報提示システム(100)。
【0103】
上記[6]の構成の休憩地情報提示システムによれば、休憩地の実績を前記後方端末が車種毎に区分した状態で管理しているので、それぞれの車両に適した休憩地で運転手が休憩するように前記各車載器が案内することができる。例えば、大型トラックであっても、大型トラックが実際に駐車可能な条件を満たす特定の休憩地を選定して運転手に提示することができる。また、各車両の走行予定経路上に存在しない休憩地であっても、過去の休憩実績に基づいて選定し案内することができる。
【0104】
[7] 各車両に搭載された車載器と、前記各車載器との間で通信が可能な後方端末とを含むシステムを制御するコンピュータが実行可能な休憩地提示プログラムであって、
前記後方端末が、複数の車両の車載器からそれぞれ送信される休憩地を含む運行実績情報を収集して、車種毎に区分された休憩地実績データを生成するための休憩地実績管理手順(S21~S26)と、
前記後方端末が、少なくとも各車両の車種情報、及び各車両の現在位置に基づいて、前記休憩地実績データの中から所定の条件を満たす特定休憩地を選定するための休憩地選定手順(S27)と、
前記各車載器が選定された前記特定休憩地の情報を各車両の運転手に対して提示するための休憩地提示手順(S17)と、
を有する、休憩地提示プログラム。
【0105】
上記[7]の構成の休憩地提示プログラムを前記車載器又は前記後方端末のコンピュータで実行することにより、運転手の休憩が必要になったときに、車両に適した休憩地で運転手が休憩するように前記車載器が案内できる。例えば、車両が大型トラックであっても、大型トラックが実際に駐車可能な条件を満たす特定の休憩地を選定して運転手に提示することができる。また、各車両の走行予定経路上に存在しない休憩地であっても、過去の休憩実績に基づいて選定し案内することができる。
【符号の説明】
【0106】
10 車載器
11 CPU
12 速度信号処理部
13 エンジン信号処理部
14 GPS受信機
15 アナログ信号処理部
16 外部入力処理部
17 広域通信モジュール
18 不揮発性メモリ
18a 車種情報
19 揮発性メモリ
20 SDカード
21 SW入力部
22 液晶表示部
51 車両
52 アンテナ
53 広域通信網
54 インターネット網
60 サーバ
61 運行実績データベース
61a データ番号
61b 緯度
61c 経度
61d 地名
61e ステータス
61f 車種区分
70 事務所PC
100 休憩地情報提示システム
D01,D02 休憩地実績データ
IGN イグニッション信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8