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特開2023-69874塗装アルミニウム製容器、塗装アルミニウム製容器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069874
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】塗装アルミニウム製容器、塗装アルミニウム製容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20230511BHJP
   B65D 23/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B32B15/08 F
B65D23/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182055
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】川村 康晴
【テーマコード(参考)】
3E062
4F100
【Fターム(参考)】
3E062AA04
3E062AC03
3E062DA01
3E062DA02
3E062DA09
3E062JA04
3E062JA08
3E062JB23
3E062JC02
3E062JD10
4F100AA20B
4F100AB10A
4F100AC00B
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK25B
4F100AK35B
4F100AK41B
4F100AK51B
4F100AK52B
4F100AK53B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DE01B
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ54
4F100EJ86
4F100GB16
4F100JB13B
4F100JB14B
4F100JB14C
4F100JK06
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】容器本体の表面を覆う第1樹脂層と、重合性材料を含む複数の樹脂膜を重合によって一体化させた第2樹脂層と、を強固に結合させた、高い耐久性を有する塗装アルミニウム製容器、およびこの塗装アルミニウム製容器の製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム製の容器本体と、前記容器本体の表面を覆うように形成された第1樹脂層と、前記第1樹脂層の表面の一部に形成された第2樹脂層と、を有し、前記第1樹脂層は熱硬化性樹脂と光重合性材料を含み、前記第2樹脂層は、光重合性材料を含む複数の樹脂膜を光重合によって一体化させたものからなり、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との界面は、光重合性材料を光重合させることによって結合されていることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製の容器本体と、
前記容器本体の表面を覆うように形成された第1樹脂層と、
前記第1樹脂層の表面の一部に形成された第2樹脂層と、を有し、
前記第1樹脂層は熱硬化性樹脂と光重合性材料を含み、
前記第2樹脂層は、光重合性材料を含む複数の樹脂膜を光重合によって一体化させたものからなり、
前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との界面は、光重合性材料を光重合させることによって結合されていることを特徴とする塗装アルミニウム製容器。
【請求項2】
前記光重合性材料は、光ラジカル重合または光カチオン重合する光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーであることを特徴とする請求項1に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項3】
前記第2樹脂層は、光ラジカル重合型紫外線硬化樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項4】
前記第1樹脂層は、メタクリル樹脂を含むアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルアミノ樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂のうち、少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項5】
前記第1樹脂層は、前記光重合性材料として、前記第1樹脂層の固形分全量に対して、光重合性アクリロイル基を持つ化合物、または、グリシジル基を持つ化合物を1質量%以上、10質量%以下の範囲で含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項6】
前記光重合性アクリロイル基を持つ化合物は、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、グリシジルアクリレートのうち、少なくともいずれか1つを含み、
前記グリシジル基を持つ化合物は、グリシジルエーテル、グリシジルシランのうち、少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項5に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項7】
前記第1樹脂層は、ヒュームドシリカ、アクリルビーズ、珪藻土のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項8】
前記第1樹脂層は、表面張力が22mN/m以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項9】
前記第2樹脂層の表面を覆う第3樹脂層を更に有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項10】
前記第2樹脂層の厚みは、0.03mm以上、1mm以下の範囲であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の塗装アルミニウム製容器の製造方法であって、
前記容器本体の表面に前記第1樹脂層を形成する第1樹脂層形成工程と、
前記第1樹脂層の一部が露出するように、前記第1樹脂層に重ねて前記第2樹脂層を形成する第2樹脂層形成工程と、を有し、
前記第2樹脂層形成工程は、液滴吐出装置によって樹脂液を吐出して、前記樹脂膜を複数重ねて形成する際に、少なくとも最下層の樹脂膜を前記第1樹脂層に対して光重合させる工程であることを特徴とする塗装アルミニウム製容器の製造方法。
【請求項12】
前記樹脂液は光重合性材料を含み、前記第2樹脂層形成工程において、前記液滴吐出装置によって前記樹脂液を吐出させた後、紫外線を照射して前記第1樹脂層と最下層の前記樹脂膜とを重合させることを特徴とする請求項11に記載の塗装アルミニウム製容器の製造方法。
【請求項13】
前記第1樹脂層形成工程は、前記容器本体の表面に光重合性材料を含む熱硬化性塗料をロールコートで塗布し、焼き付け乾燥することで前記第1樹脂層を形成する工程であり、
前記第2樹脂層形成工程は、前記第1樹脂層の上に、光ラジカル重合型紫外線硬化塗料を液滴吐出して複数の前記樹脂膜を積層し、積層した複数の前記樹脂膜を紫外線硬化させて前記第2樹脂層を形成する工程であること特徴とする請求項11または12に記載の塗装アルミニウム製容器の製造方法。
【請求項14】
前記第1樹脂層および前記第2樹脂層の上面に、紫外線硬化塗料を液滴吐出して紫外線硬化させるか、または熱硬化型塗料をロールコートにより塗布して焼き付け乾燥させることにより、オーバーコート層を形成するオーバーコート層形成工程を更に備えることを特徴とする請求項13に記載の塗装アルミニウム製容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム製容器に塗装を施した塗装アルミニウム製容器、および塗装アルミニウム製容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、飲料などの販売用として、各種のアルミニウム製容器、特にアルミ缶が幅広く利用されている。こうしたアルミ缶の容器本体には、外面塗装及び内面塗装が行われる。外面塗装では、通常、下地塗料による下地塗装が行われ、下地塗装の焼付・乾燥の後、任意のデザインの印刷、および外面仕上げ塗装が行われる。
【0003】
近年、こうしたアルミ缶の容器本体などの湾曲した金属面に任意のデザインを印刷する際に、液滴吐出装置、例えばインクジェットプリンターを用いたインクジェット印刷法を適用することが考えられている(例えば、特許文献1を参照)。インクジェット印刷法は、ノズルヘッドを増やすことで多色表現が容易であり、鮮やかな色調のデザインを印刷することができる。また、インクジェット印刷法は印刷版を作成せずに印刷をすることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-68361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された発明では、胴体部に下地となるプライマー層を形成した後、このプライマー層の一部に、任意のデザインを表現する厚膜の多層塗膜部を形成している。しかしながら、インクジェット印刷法によって塗膜層を複数積層して厚みを増した多層塗膜部は、内部応力も高く、外部応力によって下地となるプライマー層から剥離しやすいという課題があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、容器本体の表面を覆う第1樹脂層と、重合性材料を含む複数の樹脂膜を重合によって一体化させた第2樹脂層と、を強固に結合させた、高い耐久性を有する塗装アルミニウム製容器、およびこの塗装アルミニウム製容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明の塗装アルミニウム製容器は、アルミニウム製の容器本体と、前記容器本体の表面を覆うように形成された第1樹脂層と、前記第1樹脂層の表面の一部に形成された第2樹脂層と、を有し、前記第1樹脂層は熱硬化性樹脂と光重合性材料を含み、前記第2樹脂層は、光重合性材料を含む複数の樹脂膜を光重合によって一体化させたものからなり、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との界面は、光重合性材料を光重合させることによって結合されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、容器本体の表面を覆う第1樹脂層と、光重合性材料を含む複数の樹脂膜を重合によって一体化させた第2樹脂層と、を強固に結合させた、高い耐久性を有する塗装アルミニウム製容器を実現することができる。
【0009】
また、本発明では、前記光重合性材料は、光ラジカル重合または光カチオン重合する光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーであってもよい。
【0010】
また、本発明では、前記第2樹脂層は、光ラジカル重合型紫外線硬化樹脂から構成されていてもよい。
【0011】
また、本発明では、前記第1樹脂層は、メタクリル樹脂を含むアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルアミノ樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂のうち、少なくともいずれか1つを含んでいてもよい。
【0012】
また、本発明では、前記第1樹脂層は、前記光重合性材料として、前記第1樹脂層の固形分全量に対して、光重合性アクリロイル基を持つ化合物、または、グリシジル基を持つ化合物を1質量%以上、10質量%以下の範囲で含んでいてもよい。
【0013】
また、本発明では、前記光重合性アクリロイル基を持つ化合物は、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、グリシジルアクリレートのうち、少なくともいずれか1つを含み、前記グリシジル基を持つ化合物は、グリシジルエーテル、グリシジルシランのうち、少なくともいずれか1つを含んでいてもよい。
【0014】
また、本発明では、前記第1樹脂層は、ヒュームドシリカ、アクリルビーズ、珪藻土のうち、少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0015】
また、本発明では、前記第1樹脂層は、表面張力が22mN/m以上であってもよい。
【0016】
また、本発明では、前記第2樹脂層の表面を覆う第3樹脂層を更に有していてもよい。
【0017】
また、本発明では、前記第2樹脂層の厚みは、0.03mm以上、1mm以下の範囲であってもよい。
【0018】
本発明の塗装アルミニウム製容器の製造方法は、前記各項に記載の塗装アルミニウム製容器の製造方法であって、前記容器本体の表面に前記第1樹脂層を形成する第1樹脂層形成工程と、前記第1樹脂層の一部が露出するように、前記第1樹脂層に重ねて前記第2樹脂層を形成する第2樹脂層形成工程と、を有し、前記第2樹脂層形成工程は、液滴吐出装置によって樹脂液を吐出して、前記樹脂膜を複数重ねて形成する際に、少なくとも最下層の樹脂膜を前記第1樹脂層に対して光重合させる工程であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明では、前記樹脂液は光重合性材料を含み、前記第2樹脂層形成工程において、前記液滴吐出装置によって前記樹脂液を吐出させた後、紫外線を照射して前記第1樹脂層と最下層の前記樹脂膜とを重合させてもよい。
【0020】
また、本発明では、前記第1樹脂層形成工程は、前記容器本体の表面に光重合性材料を含む熱硬化性塗料をロールコートで塗布し、焼き付け乾燥することで前記第1樹脂層を形成する工程であり、前記第2樹脂層形成工程は、前記第1樹脂層の上に、光ラジカル重合型紫外線硬化塗料を液滴吐出して複数の前記樹脂膜を積層し、積層した複数の前記樹脂膜を紫外線硬化させて前記第2樹脂層を形成する工程であってもよい。
【0021】
また、本発明では、前記第1樹脂層および前記第2樹脂層の上面に、紫外線硬化塗料を液滴吐出して紫外線硬化させるか、または熱硬化型塗料をロールコートにより塗布して焼き付け乾燥させることにより、オーバーコート層を形成するオーバーコート層形成工程を更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、容器本体の表面を覆う第1樹脂層と、重合性材料を含む複数の樹脂膜を重合によって一体化させた第2樹脂層と、を強固に結合させた、高い耐久性を有する塗装アルミニウム製容器、およびこの塗装アルミニウム製容器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態の塗装アルミニウム製容器を示す外観斜視図である。
図2図1の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
図3】第2実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
図4】第3実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
図5】第4実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
図6】第5実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
図7】第2樹脂層形成工程に用いるインクジェットプリンタ(液滴吐出装置)の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を適用した一実施形態である塗装アルミニウム製容器、およびこの塗装アルミニウム製容器の製造方法について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0025】
(塗装アルミニウム製容器:第1実施形態)
本発明の第1実施形態の塗装アルミニウム製容器について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の塗装アルミニウム製容器を示す外観斜視図である。また、図2は、図1の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
本実施形態の塗装アルミニウム製容器10は、アルミニウム製の容器本体11と、この容器本体11の表面に形成された第1樹脂層12と、この第1樹脂層12の表面の一部に形成された第2樹脂層13とを有する。
容器本体11は、一方が開口した有底筒状を成し、例えば、アルミニウム合金板に絞りしごき加工に施すことによって形成される。
【0026】
第1樹脂層12は、容器本体11の表面を保護したり、塗装を施す層であり、透明なサイズコートや、白色など有色のベースコートであればよい。
【0027】
第1樹脂層12は、この第1樹脂層12に重ねて形成される第2樹脂層13に対して、光重合、例えば光ラジカル重合または光カチオン重合によって互いの界面が結合されている。これにより、第2樹脂層13に外部応力が加わっても、第1樹脂層12から剥離することを防止する。
【0028】
第2樹脂層13を形成する前(重合前)の第1樹脂層12は、熱硬化性樹脂を含む樹脂基材と、第2樹脂層13に対して光重合させる光重合性材料とを含んでいる。
第1樹脂層12を構成する樹脂基材としては、例えば、ポリエステル樹脂およびアミノ樹脂を必須成分とする塗膜を硬化させたものであればよい。また、こうした樹脂に、更にエポキシ樹脂、イソシアネート樹脂などを含んでいても良い。また、エポキシ樹脂を必須成分とし、尿素系樹脂またはフェノール樹脂の少なくとも一つを含む塗膜を硬化させたものであればよい。また、アクリル系樹脂を必須成分とする塗膜を硬化させたものであればよい。
【0029】
上述したポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸などから選ばれる1 種以上の二塩基酸およびこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて安息香酸、クロトン酸、p-tert-ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用されればよい。
【0030】
上述したポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル1,3-プロパンジオール、3-メチルペンタンジオール、1,4ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4ジメチロールシクロヘキサンなどの二価アルコールが用いられればよい。更に必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することもできる。これらのアルコール成分は単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
上述したアミノ樹脂は、特に制限はないが、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミドなどのアミノ成分とメチロール成分とから構成されるメチロール化アミノ樹脂などを用いることができる。こうしたアミノ成分と反応してメチロール成分を形成する化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。
【0032】
また、第1樹脂層12を構成する樹脂基材は、第1樹脂層12の絞り加工性、付着性、耐傷付き性、耐熱水性および光沢を高める観点から、上述したメチロール化アミノ樹脂のメチロール成分の少なくとも一部を1価のアルコールでエーテル化したアルコキシ化アミノ樹脂を用いることができる。特に、アミノ成分としてはベンゾグアナミンが好ましく、メチロール成分の少なくとも一部はブタノールによりエーテル化されていることが好ましい。具体的には、ブトキシ化ベンゾグアナミン樹脂が特に好ましい。
【0033】
上述したイソシアネート化合物は、特に制限はないが、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジメチルビフェニレンジイソシアネート、ジメトキシビフェニレンジイソシアネート、ジクロロビフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート化合物、テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加キシリレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート化合物などが挙げられる。また、上述したイソシアネート化合物の二量体、三量体なども用いることができる。脂肪族イソシアネート化合物は、芳香族イソシアネート化合物に比べて黄変性が少ない観点から好ましい。
【0034】
重合前の第1樹脂層12は、上述した樹脂基材とともに、第2樹脂層13に対して光重合させる光重合性材料を含んでいる。光重合性材料としては、光ラジカル重合または光カチオン重合する光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーが挙げられる。例えば、(メタ)アクリレートを含む各種オリゴマーもしくはポリマーが挙げられる。これらを用いることで、第1樹脂層12に重ねて第2樹脂層13を形成する際に、第1樹脂層12と第2樹脂層13との界面を光重合によって強固に結合させることができる。
【0035】
光ラジカル重合性材料はアクリロイル基を持つ化合物を用いることができる。オリゴマーとしては、例えば、アクリルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、およびグリシジルアクリレートなどを用いることができる。また、分岐構造を持つような多官能アクリレートを用いることもできる。また、光カチオン重合性材料は、グリシジル基、オキセタン基を持つ化合物を用いることもでき、脂環式エポキシ、グリシジル型エポキシ、オキセタン化合物などのオリゴマーを用いることもできる。
【0036】
例えば、重合前の第1樹脂層12は、第1樹脂層12の固形分全体、例えば上述した樹脂基材に対して、アクリロイル基、またはグリシジル基を持つ化合物を1質量%以上、10質量%以下の範囲で含んでいればよい。
【0037】
また、第1樹脂層12に、アクリル樹脂ビーズ、ヒュームドシリカ、珪藻土などの固形物を用いて第2樹脂層13側の表面に微小な凹凸を形成し、第1樹脂層12と第2樹脂層13との密着性を高めるような構成にすることも好ましい。こうした固形物を用いて第1樹脂層12に微細な凹凸を形成することによって、成膜時に第2樹脂層13の吐出液が着弾した際の移動(位置ズレ)を抑制することもできる。
【0038】
また、第1樹脂層12には、アクリル樹脂ビーズ、ヒュームドシリカ、珪藻土などの固形物の表面に、更にメタクリルシリル、アクリルシリルなどの光重合性官能基を持つ材料で表面処理を行ったものを用いることもできる。
【0039】
また、第1樹脂層12には、BET法で測定された比表面積が20~410m/gの親水性フュームドシリカもしくは表面を有機化合物で修飾された疎水性ヒュームドシリカのいずれか一種類以上を0.1~5質量%の範囲で含ませることもできる。
【0040】
第1樹脂層12には、更に潤滑剤を含むことも好ましい。こうした潤滑剤を含むことにより、容器本体11の加工や搬送の際に、第1樹脂層12の傷付きを効果的に防止することができる。潤滑剤は、特に限定されるものではないが、例えば、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックス、脂肪酸エステル系ワックス、シリコーン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。また、これらワックスを2種類以上併用することもできる。
【0041】
上述した植物系ワックスとしては、例えば、カルナウバワックス、綿ワックス、木ロウなどが挙げられ、動物系ワックスとしては、ラノリンワックス、ゲイロウ、蜜ろうなどが挙げられ、鉱物系ワックスとしてはオゾケライト、モンタンワックスなどが挙げられる。
【0042】
また、上述した石油系ワックスとしては、例えば、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどが挙げられ、脂肪酸エステル系ワックスとしては、脂肪酸蔗糖エステルポリグリセリンエーテルと脂肪酸とのエステル化物などが挙げられる。
【0043】
上述したフッ素系ワックスとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンワックスなどが挙げられ、ポリオレフィン系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
【0044】
これら第1樹脂層12を構成する潤滑剤の添加量としては、例えば、第1樹脂層12のベースとなる樹脂である、上述した樹脂基材100質量部に対し、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。
【0045】
こうした第1樹脂層12は、更に充填剤を含むことができる。充填剤としては特に制限はないが、例えば、容器本体11の金属色を隠して意匠性を高めるために、酸化チタン、アルミニウムペースト、パール粉末、高輝度無機化合物などを用いることができる。
【0046】
例えば、充填剤として酸化チタンを含む下塗り塗料はホワイトと称され、容器本体11に対する接合性を高めるプライマーとしての作用と共に、容器本体11の金属色を隠す白色の第1樹脂層12を形成し、この第1樹脂層12に重ねて形成される第2樹脂層13の意匠を高める着色層の役割を果たす。
【0047】
以上のような構成の第1樹脂層12は、例えば、膜厚が例えば0.5μm~15μm程度になるように形成されればよい。第1樹脂層12は、例えば、ロールコーターによって上述した樹脂基材と光重合性材料からなる樹脂を容器本体11の表面に塗布し、樹脂基材を例えば160℃~240℃で熱硬化させることで形成される。こうした熱硬化後も、光重合性材料の重合反応点は維持される。
【0048】
また、第1樹脂層12は、20℃での表面張力が22mN/m以上、72N/m以下になるように形成されることが好ましい。第1樹脂層12の表面張力を22mN/m以上にすることによって、第1樹脂層12に重ねて第2樹脂層13を形成する際に、液滴噴射装置を用いて噴射形成する樹脂膜14が第1樹脂層12の表面で弾かれることを防止し、意図した部位、形状で第2樹脂層13の厚みを増して立体的に形成することができる。
【0049】
第2樹脂層13は、全体が重合性化合物で構成されるか、あるいは一部に重合性化合物を含む樹脂、例えば、光ラジカル重合型紫外線硬化樹脂からなる樹脂膜14を、液滴噴射装置、例えばインクジェットプリンターを用いて第1樹脂層12の表面に形成し、各層ごとにUV照射による光重合反応で硬化させながら順次積層させるか、積層された複数の樹脂膜14,14…を光重合反応によって一体化させることで形成する。
【0050】
樹脂膜14の形成時に各層ごとにUV光を照射をする場合、UV光の照射強度を低くしたり、照射時間を短くすることなどで、反応を一定割合で抑えれば、次に積層される樹脂膜14に対して光重合反応を行い、積層される全ての樹脂膜14を一体化して第2樹脂層13を形成することができる。
【0051】
こうした第2樹脂層13の形成過程で、最下層の樹脂膜14に含まれる光重合性材料と、第1樹脂層12に含まれる光重合性材料とを光重合させることで、第2樹脂層13は第1樹脂層12に対して強固に結合される。
【0052】
第2樹脂層13を形成するための重合前の樹脂膜14(液滴噴射装置から噴射する樹脂液)は、光重合性材料を含んでいる。重合前の樹脂膜14に含まれる光重合性材料としては、例えば、アクリル樹脂(メタクリル樹脂を含む)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂(塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂を含む)、ポリエステル樹脂、ポリエステルアミノ樹脂、シリコン樹脂、ポリオレフィン樹脂のうち、少なくともいずれか1つのモノマーまたはオリゴマーが挙げられる。
【0053】
より具体的には、重合前の樹脂膜14に含まれる光重合性材料としては、アクリルモノマー、メタクリルモノマー及びビニル化合物として、単官能からオリゴ官能、プレポリマーを用いることができる。そのほか、光重合性オリゴマーとして、例えば、エポキシアクリレート、脂肪族及び芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルオリゴマーなどを用いることができる。
【0054】
特に、第1樹脂層12に対して密着性の良い光重合性材料として、ポリエステル系樹脂、例えばポリエステルアクリレート(紫外線重合性オリゴマー)を0.1%~2%含んだ樹脂塗料によって樹脂膜14を形成すれば、重合前の第1樹脂層12に含まれる光重合性材料との間で光重合させることができる。
【0055】
また、複数の樹脂膜14を光重合性材料による光重合で一体化して第2樹脂層13を形成することによって、例えば、水性塗料や油性塗料のような乾燥時の溶媒蒸発分による収縮を防止することができる。
【0056】
第2樹脂層13を形成する際の重合前の樹脂膜14は、上述した樹脂を水性溶媒に溶解させた水性塗料や、上述した樹脂を有機溶媒に溶解させた油性塗料を液滴噴射装置、例えばインクジェットプリンターのイングジェットヘッドから第1樹脂層12に向けて吐出することによって形成することができる。
【0057】
このような第2樹脂層13は、任意のデザイン、例えば、文字や図形を象るように形成されていればよい。本実施形態では、第2樹脂層13は第1樹脂層12から突出するように形成された漢字を立体的にデザインしたものとなっている。
【0058】
本実施形態の第2樹脂層13は、断面が例えば略半円形に形成されており、表面が滑らかな湾曲面を成している。第2樹脂層13の表面を滑らかな湾曲面にすることで、光線の乱反射が抑制される。このため、第2樹脂層13を可視光非透過性の色調にすれば、メタリック調の外観を得ることができる。また、第2樹脂層13を可視光透過性の透明な色調にすれば、レンズ効果によって、第2樹脂層13が象るデザインを立体的に浮き上がらせることができる。
【0059】
こうした第2樹脂層13の第1樹脂層12の表面から突出する突出厚みは、例えば、0.03mm以上、1mm以下となるようにすればよい。第2樹脂層13の突出厚みが0.03mmmm未満では、第2樹脂層13の立体感が得られない懸念がある。また、第2樹脂層13の突出厚みが1mmを超えると、第1樹脂層12からの突出量が大きくなりすぎるため、第2樹脂層13の部分的な剥離などが生じやすくなる懸念がある。
【0060】
本実施形態では、第2樹脂層13は、第1樹脂層12の一部を覆うように形成されている。即ち、第1樹脂層2の一部(第2樹脂層13が形成されない部分)は、外部に露出している。このため、第1樹脂層12のうち、外部に露出している部分は、容器本体11の保護膜の役割を果たしている。
【0061】
以上の様な構成の本実施形態の塗装アルミニウム製容器10によれば、第1樹脂層12と第2樹脂層13を光重合性材料を含む樹脂から構成し、第1樹脂層12と第2樹脂層13との界面を光重合、例えば紫外線重合させることによって、第1樹脂層12と第2樹脂層13ととを強固に結合させることができる。これにより、第1樹脂層12の上に立体的な厚みのある第2樹脂層13を形成しても、外部応力等によって第2樹脂層13が第1樹脂層12から剥離する懸念の無い、高い耐久性を有する塗装アルミニウム製容器10を実現することができる。
【0062】
また、光重合性材料を含む樹脂を用いて樹脂膜14を形成し、これら樹脂膜14を光重合によって一体化させて第2樹脂層13を形成することにより、立体的な厚みのあるように第2樹脂層13を形成しても、高い耐久性を有する第2樹脂層13を有する塗装アルミニウム製容器10を実現することができる。
【0063】
また、本実施形態の塗装アルミニウム製容器10によれば、従来のような、立体性に乏しい平坦な塗膜によってデザインされた塗装アルミニウム製容器と比較して、第1樹脂層12から突出するように形成された第2樹脂層13によって、立体的なデザインで、高い意匠性を備えた塗装アルミニウム製容器10を実現することができる。
【0064】
また、本実施形態の塗装アルミニウム製容器10によれば、第1樹脂層12の一部を外部に露出させる構成にしたことによって、第2樹脂層13や第1樹脂層12の露出部分を覆う保護膜の形成が不要になり、オフセット印刷など比較して印刷に時間が掛かるインクジェット印刷法によって第2樹脂層13を形成しても、保護膜を形成するためのプリント時間を省略することができるため、塗装アルミニウム製容器10の生産性の低下を防止することができる。
【0065】
(塗装アルミニウム製容器:第2実施形態)
本発明の第2実施形態の塗装アルミニウム製容器について説明する。
図3は、第2実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
なお、第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の塗装アルミニウム製容器20は、容器本体11と、この容器本体11に形成された第1樹脂層12と、この第1樹脂層12の一部に形成された第2樹脂層23とを有する。
【0066】
第2樹脂層23は、光重合性材料を含む複数の樹脂膜24,24を光重合によって一体化させたものからなる。本実施形態の樹脂膜24は、その断面において、第1樹脂層12に接する部分から上方に向かって幅を段階的に狭めるように形成している。これにより、第2樹脂層23の外面には、複数の段差が形成され、その断面形状は略台形とされている。そして、第1樹脂層12と第2樹脂層23とは、光重合によって互いに結合されている。
【0067】
本実施形態の塗装アルミニウム製容器20によれば、第1樹脂層12の表面から突出する第2樹脂層23は、断面が例えば略台形に形成されており、両側の傾斜部には複数の段差が形成されている。これにより、第2樹脂層23に光が当たると、この複数の段差によって光が乱反射され、マッド調の外観を得ることができる。また、第2樹脂層23を顔料によって任意の色調に着色することで、光沢を抑えた任意の色調の文字などを立体的に浮き上がるように表現することができる。
【0068】
また、本実施形態では、第2樹脂層23の上部のエッジ部分が直接外部に露出するので、保護膜などで覆う場合と比較して、第2樹脂層23の輪郭をよりシャープに表現することができる。
【0069】
このような第2実施形態の塗装アルミニウム製容器20においても、光重合性材料を含む材料で第1樹脂層12を形成し、第1樹脂層12と第2樹脂層23との界面を光重合にさせることによって、第1樹脂層12と第2樹脂層23とを強固に結合させることができる。これにより、第1樹脂層12の上に、例えば立体的な厚みのある第2樹脂層23を形成しても、外部応力等によって第2樹脂層23が第1樹脂層12から剥離する懸念の無い、高い耐久性を有する塗装アルミニウム製容器20を実現することができる。
【0070】
また、光重合性材料を含む複数の樹脂膜24を重合によって一体化させることで第2樹脂層23を形成することによって、第2樹脂層23を立体的な厚みのある塗膜になるように形成しても、高い耐久性を有する第2樹脂層23を有する塗装アルミニウム製容器20を実現することができる。
【0071】
(塗装アルミニウム製容器:第3実施形態)
本発明の第3実施形態の塗装アルミニウム製容器について説明する。
図4は、第3実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
なお、第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の塗装アルミニウム製容器30は、容器本体11と、この容器本体11に形成された第1樹脂層12と、この第1樹脂層12の一部に形成された、複数の樹脂膜14,14…を積層して光重合によって一体化させた第2樹脂層13と、容器本体と第1樹脂層12の間に形成された印刷層31とを有する。第1樹脂層12と第2樹脂層13とは、光重合によって互いに結合されている。
【0072】
印刷層31は、任意の模様などを容器本体11の表面にプリントした層であり、インクジェットプリント以外にも、オフセット印刷やスクリーン印刷などによって形成することができる。
【0073】
第2樹脂層13は、印刷層31と重なる位置に形成すればよい。そして、例えば、第2樹脂層13を、第1実施形態と同様に、可視光透過性の無色透明な色調で、表面が平滑な断面半円形に形成すれば、第2樹脂層13のレンズ効果によって、外部から見ると第2樹脂層13の下層にある印刷層31の模様などが拡大して見えるようになる。
【0074】
このように、本実施形態の塗装アルミニウム製容器30では、容器本体11の表面に形成した印刷層31によって、第1樹脂層12から突出するように形成される第2樹脂層13自体を加飾できるので、より一層、意匠性に優れた立体的なデザインの塗装アルミニウム製容器30を実現することができる。
【0075】
(塗装アルミニウム製容器:第4実施形態)
本発明の第4実施形態の塗装アルミニウム製容器について説明する。
図5は、第4実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
なお、第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の塗装アルミニウム製容器40は、容器本体11と、この容器本体11に形成された第1樹脂層12と、この第1樹脂層12の一部に形成された、複数の樹脂膜14,14…を積層して光重合によって一体化させた第2樹脂層13と、第1樹脂層12と第2樹脂層13の間に形成された印刷層41とを有する。そして、第1樹脂層12と第2樹脂層13とは、光重合によって互いに結合されている。
【0076】
印刷層41は、任意の模様などを第1樹脂層12の表面にプリントした層であり、インクジェットプリント以外にも、オフセット印刷やスクリーン印刷などによって形成することができる。
【0077】
第2樹脂層13は、印刷層41と重なる位置に形成すればよい。そして、例えば、第2樹脂層13を、第1実施形態と同様に、可視光透過性の無色透明な色調で、表面が平滑な断面半円形に形成すれば、第2樹脂層13のレンズ効果によって、外部から見ると第2樹脂層13の下層にある印刷層41の模様などが拡大して見えるようになる。
【0078】
このように、本実施形態の塗装アルミニウム製容器40では、第1樹脂層12の表面に形成した印刷層41によって、第1樹脂層12から突出するように形成される第2樹脂層13自体を加飾できるので、より一層、意匠性に優れた立体的なデザインの塗装アルミニウム製容器30を実現することができる。
【0079】
(塗装アルミニウム製容器:第5実施形態)
本発明の第5実施形態の塗装アルミニウム製容器について説明する。
図6は、第5実施形態の塗装アルミニウム製容器の要部拡大断面図である。
なお、第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の塗装アルミニウム製容器50は、容器本体11と、この容器本体11に形成された第1樹脂層12と、この第1樹脂層12の一部に形成された、複数の樹脂膜14,14…を積層して光重合によって一体化させた第2樹脂層13と、第2樹脂層13および第1樹脂層12の表面を覆う第3樹脂層55とを有する。そして、第1樹脂層12と第2樹脂層13とは、光重合によって互いに結合されている。
【0080】
本実施形態の第3樹脂層55は、例えばオーバーバーニッシュなどの保護膜であり、外部応力に対して耐久性のある樹脂、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルアミノ樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂などによって形成されていればよい。
【0081】
また、こうした第3樹脂層55の形成材料に光重合性材料を含ませることもできる。これにより、第1樹脂層12や第2樹脂層13との間で第3樹脂層55を光重合させることができ、第3樹脂層55を第1樹脂層12や第2樹脂層13に対して強固に結合させることもできる。
【0082】
本実施形態のように、第1樹脂層12や第2樹脂層13を覆うように第3樹脂層55を形成することによって、第1樹脂層12や第2樹脂層13を確実に外部応力などから保護することができ、より一層耐久性に優れた第2樹脂層13を有する塗装アルミニウム製容器50を実現することができる。
【0083】
(塗装アルミニウム製容器の製造方法)
本発明の一実施形態の塗装アルミニウム製容器の製造方法について説明する。
例えば、上述した第1実施形態の塗装アルミニウム製容器10を製造する際には、アルミニウム合金板に絞りしごき加工に施すことによって形成した容器本体11を用意し、まず、容器本体11の表面に第1樹脂層12を形成する(第1樹脂層形成工程)。
【0084】
第1樹脂層12の形成材料としては、樹脂基材と、次工程で第2樹脂層13に対して光重合させる光重合性材料とを含んだ材料を用いればよい。光重合性材料としては、光ラジカル重合性材料や光カチオン重合性材料が挙げられる。例えば、(メタ)アクリレートを含む各種オリゴマーもしくはポリマーが挙げられる。これらを用いることで、第1樹脂層12に重ねて第2樹脂層13を形成する際に、第1樹脂層12と第2樹脂層13との界面を光重合によって強固に結合させることができる。
【0085】
第1樹脂層12の形成は、例えば、ロールコーターを用いて、第1樹脂層12の形成材料を含む塗液を容器本体11の表面に、膜厚が例えば3μm~10μm程度になるように塗布し、第1樹脂層12の形成材料に含まれる樹脂基材を例えば160℃~240℃で熱硬化させることで形成される。こうした熱硬化後も、光重合性材料の重合反応点は維持される。
【0086】
次に、第1樹脂層12を形成した容器本体11に、液滴噴射装置、例えばインクジェットプリンタを用いて複数の樹脂膜14を積層して重合によって一体化させ、第2樹脂層13を形成する(第2樹脂層形成工程)。この第2樹脂層形成工程では、第1樹脂層12の表面に樹脂液を吐出して、重合前の樹脂膜14を形成した後、例えば、紫外線を照射することによって、第1樹脂層12の表面に対して光重合によって結合させた第2樹脂層13を形成する。
【0087】
このような第2樹脂層13を形成する際には、金属の湾曲面に対して樹脂膜14を形成するための樹脂液を吐出可能なインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタ(液滴吐出装置)を用いればよい。
【0088】
第2樹脂層13を構成する樹脂膜14を形成するための樹脂液に用いる光重合性材料としては、例えば、アクリルモノマー、メタクリルモノマー及びビニル化合物として、単官能からオリゴ官能、プレポリマーを用いることができる。そのほか、重合性オリゴマーとして、エポキシアクリレート、脂肪族及び芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルオリゴマーなどを用いることができる。
【0089】
本実施形態では、図7に示すように、例えば6個のインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタP(液滴噴射装置)を用いるが、使用するインクジェットヘッドの数を限定して生産性を向上させている。例えば、カラープリントに用いるヘッドとして、C、M、Y、Kのうち、M(マゼンタ)ヘッドだけを用い、更に透明な樹脂膜(バーニッシュ)14を積層させるために、2つのヘッドVを割り当てている。
【0090】
そして、それぞれ第1樹脂層12が形成された容器本体11を回転させつつ、各ヘッドから光重合性材料を含む樹脂液を吐出して重合前の樹脂膜14を形成する。そして、例えば、各ヘッドに対向する位置に形成した紫外線照射部UVから紫外線を照射することによって、各ヘッドで吐出された重合前の樹脂膜14を光重合させて、最下層の樹脂膜14においては第1樹脂層12との間で、それよりも上層の樹脂膜14においては下層の樹脂膜14との間で、それぞれ光重合によって互いに結合させる。これにより、第1樹脂層12に対して光重合によって強固に結合した第2樹脂層13が形成される。
【0091】
なお、第2樹脂層13の形成にあたっては、上述したように、各インクジェットヘッドに対応してそれぞれ紫外線照射部UVを配置し、1つの樹脂膜14を形成するたびに下層の樹脂膜14と重合させてもよく、また、全ての重合前の樹脂膜14を積層した後、一括して重合させてもよい。
こうした何れの方法であっても、最下層の樹脂膜14と第1樹脂層12とを光重合させて、第1樹脂層12に対して強固に結合された第2樹脂層13を形成することができる。例えば、第1樹脂層12に含まれる光重合性材料に対して光重合させることが可能な光重合性材料、例えば、ポリエステル系樹脂の重合性オリゴマーを1~10質量%の範囲で含んだ樹脂液を吐出して最下層の樹脂膜14を形成して紫外線を照射すれば、第1樹脂層12に対して光重合した第2樹脂層13を形成することができる。
【0092】
また、本実施形態のように、多色塗装を行わずに、色数を絞ることによって、第2樹脂層13を形成する時間を短くして、塗装アルミニウム製容器10の生産性を向上させることができる。また、第2樹脂層13の厚みを増すための透明な樹脂膜(バーニッシュ)14を積層するヘッドを例えば2つにして吐出量を増大させることによって、厚みの厚い立体感に富んだ第2樹脂層13を短時間で形成し、塗装アルミニウム製容器10の生産性を向上させることができる。
【0093】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0094】
例えば、実施形態の容器本体は、内容物充填前の一方が開口された容器本体であってもよいし、内容物が充填され缶蓋が巻締られた容器本体(充填済みの缶)であってもよい。また、アルミニウム製の容器本体に代えて、円筒状またはテーパー状の胴部を有するアルミニウム製のカップ状の容器本体であってもよい。
【実施例0095】
本発明の検証例として、第1樹脂層の耐久性及び第1樹脂層に形成する第2樹脂層の撥水性を検証した。検証にあたって、第1樹脂層の樹脂基材としてポリエステル樹脂を用いた(実施例1~5、比較例1~4)。また、第1樹脂層の樹脂基材として樹脂フィルムを用いた(実施例6)。そして、それぞれの実施例、比較例に、表1に示す光重合性材料を、上述した樹脂基材100重量部に対して、1重量部(実施例1)、10重量部(実施例2~6)、5重量部(比較例2~4)それぞれ添加した。比較例1は光重合性材料を添加しなかった。
【0096】
密着性評価は、それぞれの試料をカットして粘着テープ(IEC 60454-2に準拠し、25mmの幅当たり10±1Nの付着強さを持つもの)を貼り付けた後、剥離することで行った。テープによって第1樹脂層から第2樹脂層が剥離したものを×、テープによって第1樹脂層から第2樹脂層が殆ど剥離しなかったものを○、テープによって第1樹脂層から第2樹脂層が全く剥離しなかったものを◎とした。また、撥水性評価として、目視、VJPによる液滴のはじき具合を観察し、撥水性が無かったものを×、撥水性が見られたものを○とした。
各実施例、比較例に用いた材料の種類、および配合割合と、検証結果を表1に纏めて示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に示す結果によれば、第1樹脂層の樹脂基材に添加する光重合性材料として、ポリエステルアクリレートを用いた実施例1,2,6、ウレタンアクリレートを用いた実施例3、グリシジルアクリレートを用いた実施例4、グリシジルシランを用いた実施例5は、密着性評価、および撥水性評価が共に良好であった。
一方、第1樹脂層の樹脂基材に光重合性材料を添加しなかった比較例1、第1樹脂層の樹脂基材に光重合性材料ではないポリエステルポリオールを用いた比較例2、ポリオールアクリレートを用いた比較例3、アミン変性ポリエーテルアクリレートを用いた比較例4は、いずれも第2樹脂層が第1樹脂層から剥離しやすく、密着性に難があった。
こうした結果から、第1樹脂層に用いる光重合性材料として、ポリエステルアクリレートを10重量部以上添加することが特に好ましいことが確認できた。
【符号の説明】
【0099】
10…塗装アルミニウム製容器
11…容器本体
12…第1樹脂層
13…第2樹脂層
14…樹脂膜
55…第3樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7